説明

基板処理装置

【課題】カップ内のミストが基板に再付着することを防止できるようにした基板処理装置を提供する。
【解決手段】表面上に処理液が供給される基板11を保持するステージ122と、基板11をステージ122とともに回転させ、基板11の表面上に供給した処理液(例えば、現像液)を、前記回転により生じた遠心力を用いて基板11の表面上に広げる回転駆動部12と、ステージ122によって保持された基板11を側方から包囲するとともに、前記遠心力を受けて基板11から飛散する処理液を受け止めるカップ13と、を備え、カップ13は、カップ13内を浮遊する処理液の粒子をカップ13の壁面に吸着させる吸着手段として、冷却装置14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を用いて基板に所定の処理を施す基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造工程においては、フォトリソグラフィー技術によって所望の回路を基板上に形成することが知られている。このフォトリソグラフィー技術においては、まず、基板の清浄表面にレジスト液を塗布し、塗布した基板の表面を所望のパターンに露光する。ついで、前記の基板に現像液等の処理液を塗布し、現像処理を行う。最後に、現像に使用した処理液を基板から除去して、一連の現像処理を終了する。
上記の処理は、基板を保持した状態で回転可能なステージと、ステージを取り囲むカップとを含む基板処理装置で行われる。現像液等の処理液を基板から除去する際には、処理液が塗布された基板をステージに固定し、ついでこのステージを高速回転させる。基板上の処理液は、この高速回転によって振り切られ、基板から除去される。
【0003】
処理液を振り切る際、処理液は液滴として飛散し、カップの内壁に衝突する。この際、処理液は細かく分散し、粒子(ミスト)を形成する。このミストはカップ内を浮遊し、その一部は現像処理が既に終了した基板に再付着することがある。現像に使用した処理液にはレジスト液の成分が含まれているため、ミストが基板に再付着し、乾燥すると、ミストに含まれるレジスト成分が基板上に残留する。つまり、ミストが再付着した部分には再度マスクがされることになる。マスクされた部分は、後のエッチング工程において意図したエッチングがなされないため、パターニング異常を起こす可能性がある。このパターニング異常を防止するためには、カップ内におけるミストを減少させ、その再付着を防止する必要がある。
【0004】
従来の装置においては、カップ内にダウンフローを取り入れ、このダウンフローを利用することで浮遊するミストをカップ外に強制排出する構造となっている。また、別の従来の装置では、カップの内壁に衝突したミストを当該内壁に沿わせて流れ落とすことでカップ外に強制排出する構造となっている。この様な基板処理装置は、例えば、特許文献1または2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−127033号公報
【特許文献2】特開2002−299213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、カップ内のミストをダウンフローまたは内壁に沿わせて流れ落とす従来の装置では、ミストを十分に減少させることができない可能性があった。
そこで、本発明の幾つかの態様は、このような課題に鑑みてなされたものであって、カップ内のミストを減少させ、ミストが基板に再付着することを防止できるようにした基板処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る基板処理装置では、表面上に処理液が供給される基板を保持する保持手段と、前記基板を前記保持手段とともに回転させ、前記基板の表面上に供給した前記処理液を、前記回転により生じた遠心力を用いて前記基板の表面上に広げる回転駆動手段と、前記保持手段によって保持された前記基板を側方から包囲するとともに、前記遠心力を受けて前記基板から飛散する前記処理液を受け止めるカップとを備え、前記カップは、当該カップ内を浮遊する前記処理液の粒子を当該カップの壁面に吸着させる吸着手段を有することを特徴としている。
このような構成であれば、カップ内を浮遊するミストを当該カップの壁面に吸着させて減少させることができる。したがって、ミストが基板に再付着することを防止できる。
【0008】
また、上記の基板処理装置において、前記吸着手段は、前記カップを冷却させる冷却装置を含むことを特徴としても良い。
このような構成であれば、カップの壁面温度を低下させることができる。これにより、カップ壁面へのミストの吸着効率を、カップの壁面温度が高い場合と比較して、高めることができる。このため、カップ内を浮遊するミストを効果的に減少させることができる。
さらに、上記の基板処理装置において、前記吸着手段は、静電気を発生させる静電気発生装置を含み、発生した静電気は前記カップの壁面に蓄えられることを特徴としても良い。
このような構成であれば、ミストが電荷を有する場合には、カップ壁面に蓄えられた静電気によって、当該ミストをカップの壁面側に引き寄せることができ、カップ壁面での吸着を促進させることができる。したがって、カップ内を浮遊するミストは効果的に減少する。
【0009】
さらに、上記の基板処理装置において、前記カップは、多孔質材料で形成されたカップであることを特徴としても良い。
このような構成であれば、多孔質材料で形成されていないカップと比較して、カップ壁面の表面積を増大させることができる。つまり、この構成にすることでミストの吸着可能領域は増大するので、ミストの吸着量を高めることができる。このため、カップ内を浮遊するミストは効果的に減少する。
【0010】
さらに、上記の基板処理装置において、前記カップには内側壁面から外側壁面に至る貫通穴が設けられており、前記吸着手段は、前記カップ内を浮遊する前記処理液の粒子を、前記カップの内側から前記貫通穴を通過させて外側へ排出する排出装置を含むことを特徴としても良い。
このような構成であれば、カップの内側から外側へとミストを排出することができ、さらにはミストの一部を当該カップの内側壁面だけでなく、貫通穴の壁面でも吸着させることができる。このため、カップ内を浮遊するミストを効果的に減少させることができる。
【0011】
さらに、上記の基板処理装置において、前記排出装置は、アウターカップと、排気ポンプとを含み、前記アウターカップは、前記カップを側方から包囲するカップであり、前記アウターカップと前記カップとの間にはスペースが設けられており、前記スペース内は前記排気ポンプを用いて減圧されることを特徴としても良い。
このような構成であれば、排出装置を使用しない場合と比較して、貫通穴を通過するミスト量を増加させることができる。ミストが貫通穴を通過する頻度がより高まると、壁面におけるミストの吸着量も増加する。したがって、カップ内を浮遊するミストをより効果的に減少させることができる。
【0012】
さらに、上記の基板処理装置において、前記カップは、前記アウターカップに接合されていることを特徴としても良い。
このような基板処理装置によれば、2つのカップが接合していない場合と比較して、スペース内をさらに減圧することができる。このため、さらに高い頻度でミストを貫通穴に通すことができる。その結果、ミストの吸着量はさらに高まる。したがって、カップ内を浮遊するミストをさらに効果的に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態に係る基板処理装置1の構成例を断面的に示す概念図。
【図2】第二実施形態に係る基板処理装置2の構成例を断面的に示す概念図。
【図3】第三実施形態に係る基板処理装置3の構成例を断面的に示す概念図。
【図4】第四実施形態に係る基板処理装置4の構成例を断面的に示す概念図。
【図5】第五実施形態に係る基板処理装置5の構成例を断面的に示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の一形態について図面を用いて説明する。
(1)第一実施形態
(構成例)
図1は、本発明の第一実施形態に係る基板処理装置1の構成例を示す概念図である。図1に示した基板処理装置1は、処理液を用いて基板11に所定の処理を施す装置であり、例えばディベロッパーと呼ばれるものである。この基板処理装置1は、回転駆動部12と、カップ13と、冷却装置14とを備えており、この構成によりカップ13を冷却することができる。基板11には、例えば、シリコンウエハやガラス基板を用いることができる。この第一実施形態で説明する基板処理装置1は、現像液等の処理液が供給される基板11を保持、回転させる際に、冷却されたカップ13の壁面を用いて、カップ13内を浮遊するミスト量を減少させるものである。
回転駆動部12は、モーター(図示せず)と、回転軸121と、ステージ122とを備えている。回転軸121及びステージ122の大きさ、形状、材質等に関して特に制限はなく、例えば、回転軸121は金属製の円柱であっても構わないし、ステージ122はプラスチック製の円盤であっても構わない。
【0015】
回転駆動部12においては、回転軸121の一端はステージ122の片面に固定され、さらに、回転軸121の他端とモーターの回転部(図示せず)とが連結されている。このため、モーターの回転で発生した回転力が回転軸121に伝達されると、ステージ122は回転軸121とともに回転する。モーターで生じた回転力を効率良く伝達するために、モーターの回転部と回転軸121とが一体形成されていることが好ましいが、それぞれが個別の部品であって、例えば、ギア等により組み合わさっていても構わない。
基板11は、ステージ122の上面(即ち、回転軸121と連結している面と対向する面)に固定されている。そのため、回転駆動部12が回転すると、基板11も同時に回転する。なお、基板11の中心は回転軸121の回転中心に位置していることが好ましいが、回転中心から外れていても構わない。また、基板11の大きさ、材質、形状等に関しては特に制限を設けない。
【0016】
カップ13は、基板11及び回転駆動部12を側方から所望のスペースを設けて包囲している。カップ13の形状は、例えば、その上側に開口部を有している。カップ13の材質は、熱伝導性の高い金属であることが好ましいが、その限りではない。さらに、カップ13の厚さに関しても特別な制限はない。
冷却装置14は、冷却能力を有するものであれば、冷却装置14を構成する部品の大きさ、形状、材質等に関して特に制限はない。例えば、SUS等の金属で作成された管14aと、液体窒素等の冷却媒体とを含み、管14aの内部を冷却媒体で充填することで冷却効果を得るタイプの冷却装置であっても構わない。管14aは、例えば、カップ13の外側壁面を取り囲んで設置される。ここで、管14aは、カップ13の壁面を等間隔で部分的に取り囲んでいても構わないし、壁面の全面を取り囲んでいても構わない。
【0017】
冷却装置14は上記の構成部品に加えて、断熱材を含んだものであっても構わない。例えば、カップ13とともに管14aを断熱材で覆うことでカップ13を効果的に冷却することができる。冷却媒体が気体または液体の場合、例えば、循環器を用いて冷却媒体を循環させてカップ13を冷却しても構わない。これにより、カップ13の全体を冷却させることができる。このように、冷却媒体は、低温であれば固体、気体、液体の種類を問わない。ここで、本明細書で述べる「低温」とは、室温以下の温度を指す。
冷却装置14によりカップ13の壁面温度が下がると、この壁面におけるミストの吸着効率が増大するため、カップ13内を浮遊するミスト量を減少させることができる。
また、この第一実施形態において、カップ13内にダウンフローを取り入れ、このダウンフローを利用することで浮遊するミストをカップ13外に強制排出するとともに、カップ13の壁面に冷却装置14を設けて、ミストの除去を実施しても構わない。
【0018】
(動作例)
次に、図1に示した基板処理装置1の動作例について説明する。
一連の処理動作は、大気雰囲気下で行われる。基板11はステージ122に固定され、固定された基板11の表面上に現像液等の処理液が供給される。この処理液は、ステージ122の上方に設けられた、供給ノズル123から供給される。
処理液は、基板11がステージ122に固定された後に供給されることが望ましいが、固定される前に供給されても構わない。基板固定後に処理液を供給する場合、回転駆動部12が回転する前(即ち、回転停止中)に処理液を供給しても構わないし、回転中に供給しても構わない。
処理液が供給された基板11を回転駆動部12により回転させると、生じた遠心力により、処理液は基板11の表面上において均等に広がる。さらに処理液が遠心力を受けると、広げられた処理液は基板11の周縁部から振り切られ、液滴となって飛散する。これにより処理液は基板11から除去される。
【0019】
第一実施形態では、処理液の除去とともに、飛散した処理液を受け止めるカップ13の冷却を行う。カップ13の冷却は、冷却装置14を稼働させることで実施する。処理液を基板11から除去する間、連続的にカップ13を冷却することが好ましいが、断続的にそれを冷却しても構わない。つまり、一定の低温度に調整された冷却媒体を連続的に循環させることで、カップ13の冷却を連続的に実施しても構わないし、冷却媒体を断続的に循環させることで、その冷却を断続的に実施しても構わない。冷却装置14を断続的に稼働させる際は、カップ13の内側壁面に温度計を備え、この温度計で壁面温度をモニターし、この壁面温度が予め設定された温度(以下、設定温度ともいう。)以上になったら冷却装置14を稼働させて、内側壁面の温度を下げる。また、これとは逆に、壁面温度が設定温度以下になったら冷却装置14の稼働を停止させる。これにより、カップ13の内側壁面の温度を所望の温度に保つことができる。
【0020】
また、冷却装置14はシーケンス制御部を含む温度制御装置(図示せず)を備えていてもよい。その場合は、上記した一連の温度制御を、冷却装置14を用いて自動的に実施することができる。即ち、設定温度をT1とし、カップ13の内側壁面の温度をT2としたとき、温度制御装置はT1とT2を比較し、T1<T2の場合は冷却装置14を稼働させ、T1>T2の場合は冷却装置14の稼働を停止させる。これにより、カップ13の内側壁面の温度を一定に保つことが容易となる。
【0021】
(2)第二実施形態
(構成例)
図2は、本発明の第二実施形態に係る基板処理装置2の構成例を示す概念図である。図2に示すように、基板処理装置2は、回転駆動部12と、カップ13と、冷却装置14'とを備えている。図2において、この第二実施形態に係る基板処理装置2は、第一実施形態に係る基板処理装置1と比較し、冷却装置14'が異なっている。
したがって、基板処理装置2の全体構成については、図1に示す基板処理装置1の説明を参照するものとし、異なる部分である冷却装置14'の構成を主として説明する。
【0022】
冷却装置14'は、冷却媒体を用いることなく、電気的な作用を利用して冷却するタイプの冷却装置であり、例えば、ペルチェ素子を含んだ冷却装置である。冷却装置14'は、冷却装置14の場合と同様に、カップ13の壁面を取り囲んで設置される。これにより、冷却装置14'を用いてカップ13を冷却することができる。ここで、冷却装置14'は、カップ13の壁面を等間隔で部分的に取り囲んでいても構わないし、壁面の全面を取り囲んでいても構わない。
この第二実施形態においても、カップ13の壁面温度を下げることができるため、カップ13の壁面におけるミストの吸着効率が増大する。故に、カップ13内を浮遊するミスト量を減少させることができる。
【0023】
(動作例)
基板処理装置2の動作については、図1に示す基板処理装置1の動作説明を参照するものとし、異なる部分である冷却装置14'の動作を主として説明する。
カップ13の冷却は、冷却装置14の場合と同様に冷却装置14'を稼働させることで実施する。処理液を基板11から除去する間、連続的に電気を流して冷却装置14'を稼働させることが好ましいが、断続的に電気を流して冷却装置14'を稼働させても構わない。
【0024】
例えば、冷却装置14'がペルチェ素子を含んだ冷却装置である場合、このペルチェ素子に印加する電圧を制御することで、冷却の度合いを制御することができる。この冷却装置14'を断続的に稼働させてカップ13を冷却する際には、第一実施形態の場合と同様に、カップ13の内側壁面に温度計を備え、この温度計で壁面温度をモニターし、カップ13の壁面温度が設定温度以上になった場合にはペルチェ素子に電流を流し、壁面の冷却を開始する。これとは逆に、設定温度以下になった場合にはペルチェ素子に流す電流を停止し、カップ13の内側壁面の冷却を停止する。これにより、カップ13の壁面温度を所望の温度に保つことができる。
さらに、この一連の動作を繰り返すシーケンス制御部を含む温度制御装置(図示せず)を備えた冷却装置14'を用いて、第一実施形態の場合と同様に、カップ13の温度制御を自動的に実施しても構わない。
【0025】
(3)第三実施形態
(構成例)
図3は、本発明の第三実施形態に係る基板処理装置3の構成例を示す概念図である。図3に示すように、基板処理装置3は、回転駆動部12と、カップ13と、静電気発生装置15とを備えており、静電気発生装置15で発生させた静電気をカップ13の壁面に蓄えることができる。この第三実施形態では、この蓄えた静電気を用いてカップ13内を浮遊するミスト量を減少させる。
図3において、第三実施形態に係る基板処理装置3は、第一実施形態に係る基板処理装置1と比較し、静電気発生装置15が異なっている。したがって、基板処理装置3の全体構成については、図1に示す基板処理装置1の説明を参照するものとし、異なる部分である静電気発生装置15の構成を主として説明する。
静電気発生装置15は、静電気を発生させることができる装置であり、例えば、小型のバンデグラフを含んだ静電気発生装置である。
【0026】
カップ13内を浮遊するミストは、その生成過程において電荷を有する場合がある。この場合、ミストが有する電荷とは異なる電荷を、静電気発生装置15によって発生させ、発生した電荷をカップ13の壁面に蓄えることで、カップ13内を浮遊するミストをカップ13の壁面に引き寄せることができる。このため、静電気発生装置15を使用しない場合と比較して、ミストを効率良く壁面に吸着させることができる。故に、カップ13内を浮遊するミスト量を減少させることができる。
【0027】
静電気発生装置15は、冷却装置14の場合と同様に、カップ13の壁面を取り囲んで設置される。これにより、静電気発生装置15で発生した静電気をカップ13の壁面に蓄えることができる。静電気発生装置15は、カップ13の壁面を等間隔で部分的に取り囲んでいても構わないし、壁面の全面を取り囲んでいても構わない。
この第三実施形態は、本明細書に記載した第一実施形態または第二実施形態と組み合わせることができる。例えば、第一実施形態と、この第三実施形態とを組み合わせ、カップ13の壁面に冷却装置14と、静電気発生装置15とを取り付けても構わない。
さらに、この第三実施形態において、例えば、静電気発生装置15を備えたカップ内にダウンフローを取り入れることで、ミストを壁側に引き寄せるとともに、ダウンフローによりミストを強制排出しても良い。
【0028】
(動作例)
基板処理装置3の動作については、図1に示す基板処理装置1の動作説明を参照するものとし、異なる部分である静電気発生装置15の動作を主として説明する。
第三実施形態においては、カップ13の壁面への静電気の蓄積は、静電気発生装置15を稼働させることで実施する。処理液を基板11から除去する間、連続的に静電気発生装置15を稼働させることが好ましいが、断続的な稼働であっても構わない。静電気発生装置15を断続的に稼働させる際、カップ13の内側壁面には蓄えられた静電気量を計測する計測器を備え、この計測器で静電気量をモニターし、カップ13の内側壁面に蓄えられた静電気量が予め設定された量(以下、設定静電気量ともいう)以下の場合には静電気発生装置15を稼働させ、静電気量を増加させる。また、これとは逆に、カップ13の内側壁面に蓄えられた静電気量が設定静電気量以上の場合には静電気発生装置15の稼働を停止する。これにより、静電気量を一定に保つことができる。
【0029】
また、静電気発生装置15はシーケンス制御部を含む静電気量制御装置(図示せず)を備えていてもよい。その場合は、上記した一連の静電気量制御を、静電気発生装置15を用いて自動的に実施することができる。即ち、設定静電気量をV1とし、カップ13の内側壁面に蓄えられた静電気量をV2としたとき、静電気量制御装置はV1とV2を比較し、V1>V2の場合は静電気発生装置15を稼働させ、V1<V2の場合は静電気発生装置15の稼働を停止させる。これにより、カップ13の内側壁面の静電気量を一定に保つことが容易となる。
【0030】
(4)第四実施形態
(構成例)
図4は、本発明の第四実施形態に係る基板処理装置4の構成例を示す概念図である。図4に示すように、基板処理装置4は、回転駆動部12と、カップ13'とを備えている。図4において、本実施形態に係る基板処理装置4は、第一実施形態に係る基板処理装置1と比較し、カップ13'の材質が異なっている。
したがって、基板処理装置4の全体構成については、図1に示す基板処理装置1の説明を参照するものとし、異なる部分であるカップ13'の材質を主として説明する。
カップ13'は、多孔質材料で形成されている。多孔質材料の好適な例の一つは、ゼオライトである。この多孔質材料でカップを形成すると、カップの壁面には微細孔13a'が現れる。このため、カップの表面積は増大する。したがって、壁面に微細孔13a'が存在しないカップの場合と比較して、より広い壁面でミストを吸着することができる。このため、カップ13'内を浮遊するミスト量は減少する。
【0031】
第四実施形態は、本明細書に記載した他の実施形態と組み合わせることができる。例えば、第一実施形態とこの第四実施形態とを組み合わせ、多孔質材料で形成されたカップ13'の壁面に冷却装置14を取り付けても構わない。これにより、第一実施形態の場合と比較して、ミストの吸着効率は増加し、カップ13'内を浮遊するミスト量は一層減少する。さらに、例えば、第一実施形態と、第三実施形態と、この第四実施形態とを組み合わせ、多孔質材料で形成されたカップ13'の壁面に冷却装置14と、静電気発生装置15とを取り付けても構わない。これにより、第一実施形態または第三実施形態の場合と比較して、本明細書に記載した実施形態を複数組み合わせた場合の方がミストの吸着効率は増加し、その結果、カップ13'内を浮遊するミスト量をさらに減少させることができる。
また、第四実施形態では、例えば、多孔質材料で形成されたカップ13'内にダウンフローを取り入れ、このダウンフローを利用することでカップ13'内に浮遊するミストを減少させることもできる。
【0032】
(5)第五実施形態
(構成例)
図5は、本発明の第五実施形態に係る基板処理装置5の構成例を示す概念図である。図5に示すように、基板処理装置5は、回転駆動部12と、カップ13''と、排出装置16とを備えている。図5において、第五実施形態に係る基板処理装置5は、第一実施形態に係る基板処理装置1と比較し、カップ13''の材質と、排出装置16とが異なっている。
したがって、基板処理装置5の全体構成については、図1に示す基板処理装置1の説明を参照するものとし、基板処理装置1と異なる部分であるカップ13''の材質と、排出装置16の構成とを主として説明する。
【0033】
カップ13''は、カップ13と同様に基板11及び回転駆動部12を側方から所望のスペースを設けて包囲している。このカップ13''は、内側壁面から外側壁面へ向かって貫通する穴(以下、貫通穴ともいう)13a''を有している。カップ13''の形状に関しては、例えば、その上側に開口部を有している。
排出装置16は、アウターカップ17と、排気ポンプ124とを含んでおり、カップ13''の内側から貫通穴13a''を通過させて、その外側へミストを排出する排出装置である。
アウターカップ17は、カップ13''を側方から所望のスペース18を設けて包囲している。アウターカップ17の形状及び材質に関しては特に制限はない。
【0034】
スペース18内は、排気ポンプ124により減圧される。これにより、カップ13''の内側と外側とで圧力差が生じる。この圧力差により、カップ13''の内側に存在する気体は、貫通穴13a''を通過して、より圧力の低いカップ13''の外側へと排出される。この際、排出される気体とともにカップ13''内を浮遊するミストもカップ13''の外側へと排出される。カップ13''内から排出されるミストの一部は貫通穴13a''を通過する際、貫通穴の壁面13b''に衝突し、吸着する。これにより、カップ13''内におけるミスト量が減少する。
さらに、カップ13''は、アウターカップ17と接合していても構わない。これにより、スペース18の圧力はさらに低下する。このため、貫通穴13a''を通過するミスト量が増加するので、壁面13b''で吸着するミスト量を増加させることができる。
【0035】
また、この第五実施形態と、第一実施形態とを組み合わせて、カップ13''の壁面に冷却装置14を取り付けても構わない。これにより、第一実施形態の場合と比較して、ミストの吸着効率は増加し、カップ13''内を浮遊するミスト量は一層減少する。さらに、例えば、第一実施形態と、第三実施形態と、この第五実施形態とを組み合わせて、カップ13''の壁面に冷却装置14と、静電気発生装置15とを取り付けても構わない。これにより、第一実施形態または第三実施形態の場合と比較して、ミストの吸着効率は増加し、カップ13''内を浮遊するミスト量はより一層減少する。
また、この第五実施形態は、カップ13''内にダウンフローを取り入れても構わない。この場合、このダウンフローを利用することでカップ13''内を浮遊するミストをカップ13''外に強制排出するとともに、スペース18内を減圧するために、浮遊するミストの一部を貫通穴の壁面13b''に吸着させることもできる。したがって、カップ13''内を浮遊するミスト量は減少する。
【0036】
(動作例)
基板処理装置5の動作についても、図1に示す基板処理装置1の動作説明を参照するものとし、異なる部分である排出装置16の動作を主として説明する。
排出装置16に含まれる排気ポンプ124を稼働させてスペース18を減圧する。ここで、処理液を基板11から除去する間、連続的にスペース18を減圧することが好ましいが、断続的に減圧しても構わない。
排気ポンプ124を断続的に稼働させる際は、カップ13''の外側壁面に圧力計を備え、この圧力計でスペース18内の圧力をモニターし、この圧力が予め設定された圧力(以下、設定圧力ともいう。)以上になったら排気ポンプ124を稼働させて、スペース18内の圧力を下げる。また、これとは逆に、スペース18内の圧力が設定圧力以下になったら排気ポンプ124の稼働を停止させる。これにより、スペース18内の圧力を所望の圧力に保つことができる。
【0037】
また、排出装置16はシーケンス制御部を含む圧力制御装置(図示せず)を備えていてもよい。その場合は、上記した一連の圧力制御を、排出装置16を用いて自動的に実施することができる。即ち、設定圧力をP1とし、スペース18内の圧力をP2としたとき、圧力制御装置はP1とP2を比較し、P1<P2の場合は排気ポンプ124を稼働させ、P1>P2の場合は排気ポンプ124の稼働を停止させる。これにより、スペース18内の圧力を一定に保つことが容易となる。
【符号の説明】
【0038】
1,2,3,4,5 基板処理装置,11 基板,12 回転駆動部,13 カップ,13’ 多孔質材料で形成されたカップ,13a’ 微細孔,13’’ 貫通穴を有する材料で形成されたカップ,13a’’ 貫通穴,13b’’ 貫通穴の壁,14,14’ 冷却装置,14a 管,15 静電気発生装置,16 排出装置,17 アウターカップ,18 スペース,121 回転軸,122 ステージ,123 供給ノズル,124 排気ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に処理液が供給される基板を保持する保持手段と、
前記基板を前記保持手段とともに回転させ、前記基板の表面上に供給した前記処理液を、前記回転により生じた遠心力を用いて前記基板の表面上に広げる回転駆動手段と、
前記保持手段によって保持された前記基板を側方から包囲するとともに、前記遠心力を受けて前記基板から飛散する前記処理液を受け止めるカップとを備え、
前記カップは、当該カップ内を浮遊する前記処理液の粒子を当該カップの壁面に吸着させる吸着手段を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記吸着手段は、前記カップを冷却させる冷却装置を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記吸着手段は、静電気を発生させる静電気発生装置を含み、発生した静電気は前記カップの壁面に蓄えられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記カップは、多孔質材料で形成されたカップであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記カップには内側壁面から外側壁面に至る貫通穴が設けられており、
前記吸着手段は、前記カップ内を浮遊する前記処理液の粒子を、前記カップの内側から前記貫通穴を通過させて外側へ排出する排出装置を含むことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記排出装置は、アウターカップと、排気ポンプとを含み、
前記アウターカップは、前記カップを側方から包囲するカップであり、
前記アウターカップと前記カップとの間にはスペースが設けられており、
前記スペース内は前記排気ポンプを用いて減圧されることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記カップは、前記アウターカップに接合されていることを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−165966(P2010−165966A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8520(P2009−8520)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】