説明

基板処理装置

【課題】一定の条件の下で基板を処理することができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板処理装置は、複数のガード14〜17と、各ガード14〜17を個別に昇降させる昇降機構40〜43と、制御部10とを備えている。各ガード14〜17は、スピンチャック2の周囲を取り囲む筒状部18e、19a、20a、21aと、筒状部18e、19a、20a、21aの上端部全周から内方に延びる環状の延設部18b、19b、20b、21bとを有している。各延設部18b、19b、20b、21bは、他の延設部と内径D1が揃えられ、他の延設部と上下に重なり合うように配置されている。制御部10は、いずれのガード14〜17を基板Wの周端面に対向させるときでも、スピンチャック2による基板保持位置P1からの内周部18c、19c、20c、21cの高さが等しくなるように昇降機構40〜43を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板等の基板に処理液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。この種の基板処理装置の中には、処理液の消費量の低減を図るために、基板の処理に用いた後の処理液を回収して、その回収した処理液を以降の処理に再利用するように構成されたものがある。たとえば下記特許文献1には、複数種の処理液を分別して回収可能な枚葉式の基板処理装置が開示されている。
【0003】
この特許文献1に係る基板処理装置は、隔壁で区画された処理室内に、1枚の基板を水平に保持して鉛直軸線まわりに回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板に薬液やリンス液などの複数種の処理液を供給するための処理液ノズルと、スピンチャックを収容する有底筒状の処理カップとを備えている。処理カップは、それぞれ筒状をなす3つの構成部材(第1〜第3構成部材)を備えている。
【0004】
第1構成部材は、スピンチャックの周囲を取り囲む筒状の第1案内部と、第1案内部の下端部に連結された底部とを備えている。底部には、それぞれ環状をなす3つの溝(廃液溝、内側回収溝および外側回収溝)が同心状に形成されている。また、廃液溝の底面には、処理カップ内の雰囲気を排気するための排気口が形成されている。また、第2構成部材は、第1案内部の周囲を取り囲む筒状の第2案内部を備えている。同様に、第3構成部材は、第2案内部の周囲を取り囲む筒状の第3案内部を備えている。
【0005】
3つの構成部材にそれぞれ設けられた案内部の上端部は、基板の回転軸線に近づく方向に向かって斜め上方に延びている。また、3つの案内部の上端部は、下から第1案内部、第2案内部、第3案内部の順番で上下方向に重なり合うように配置されている。さらに、3つの案内部の上端部の内径は、第1案内部、第2案内部、第3案内部の順番で徐々に小さくなっている。
【0006】
また、各構成部材には、構成部材ごとに設けられた昇降機構が結合されている。3つの構成部材は、独立して昇降可能に設けられており、各昇降機構は、対応する構成部材を他の構成部材から独立して昇降させることができる。各昇降機構は、上位置と下位置との間で対応する構成部材を昇降させることができる。
各構成部材の上位置は、当該構成部材に設けられた案内部の上端がスピンチャックによる基板保持位置よりも上方に位置する高さに設定されており、各構成部材の下位置は、当該構成部材に設けられた案内部の上端がスピンチャックによる基板保持位置よりも下方に位置する高さに設定されている。各構成部材の上位置は、それぞれ異なる高さに設定されている。
【0007】
昇降機構は、3つの構成部材をそれぞれの上位置に位置させることにより、スピンチャックに保持された基板の周端面に第1案内部を対向させることができる。また、昇降機構は、第1構成部材を下位置に位置させ、第2および第3構成部材をそれぞれの上位置に位置させることにより、スピンチャックに保持された基板の周端面に第2案内部を対向させることができる。さらに、処理カップは、第1および第2構成部材をそれぞれの下位置に位置させ、第3構成部材を上位置に位置させることにより、スピンチャックに保持された基板の周端面に第3案内部を対向させることができる。
【0008】
特許文献1に係る基板の処理では、スピンチャックに保持された基板の周端面に第2案内部を対向させた状態で、回転状態の基板の上面中央部に向けて処理液ノズルから第1薬液が吐出される。処理液ノズルから吐出された第1薬液は、基板の上面全域に供給され、第1薬液による薬液処理が基板の上面全域に行われる。また、基板の回転による遠心力によって基板の周囲に飛散する第1薬液は、第2案内部によって受け止められて捕獲される。そして、第2案内部に受け止められた第1薬液は、第2案内部によって内側回収溝に導かれ、回収される。
【0009】
第1薬液による薬液処理が行われた後は、スピンチャックに保持された基板の周端面に第3案内部を対向させた状態で、回転状態の基板の上面中央部に向けて処理液ノズルから第2薬液が吐出される。処理液ノズルから吐出された第2薬液は、基板の上面全域に供給され、第2薬液による薬液処理が基板の上面全域に行われる。また、基板の回転による遠心力によって基板の周囲に飛散する第2薬液は、第3案内部によって受け止められて捕獲される。そして、第3案内部に受け止められた第2薬液は、第3案内部によって外側回収溝に導かれ、回収される。
【0010】
第2薬液による薬液処理が行われた後は、スピンチャックに保持された基板の周端面に第1案内部を対向させた状態で、回転状態の基板の上面中央部に向けて処理液ノズルからリンス液が吐出される。処理液ノズルから吐出されたリンス液は、基板の上面全域に供給され、基板の上面全域が洗い流される(リンス処理)。また、基板の回転による遠心力によって基板の周囲に飛散するリンス液は、第1案内部によって受け止められて捕獲される。そして、第1案内部に受け止められたリンス液は、第1案内部によって廃液溝に導かれ、廃液される。
【0011】
このように、特許文献1に係る基板処理装置は、基板の周囲に飛散する第1薬液および第2薬液をそれぞれ第2案内部および第3案内部によって受け止めて捕獲することができる。これにより、基板の処理に用いられた第1薬液および第2薬液を分別して回収できるようになっている。また、基板の周囲に飛散するリンス液を第1案内部によって受け止めて捕獲することにより、回収された第1および第2薬液に使用済みのリンス液が混入することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−286832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
スピンチャックに保持された基板の周端面に第1案内部を対向させると、基板の周端面と第1案内部の上端との間には全周にわたって隙間が形成される。同様に、スピンチャックに保持された基板の周端面に第2案内部を対向させると、基板の周端面と第2案内部の上端との間に隙間が形成され、スピンチャックに保持された基板の周端面に第3案内部を対向させると、基板の周端面と第3案内部の上端との間に隙間が形成される。特許文献1に係る基板処理装置では、3つの案内部の上端部の内径がそれぞれ異なる大きさにされているので、基板の周端面と案内部の上端との間の隙間の大きさ(基板の周端面から案内部の上端までの最短距離)は案内部ごとに異なっている。また、特許文献1に係る基板処理装置では、各構成部材の上位置がそれぞれ異なる高さに設定されているので、基板の周端面に案内部を対向させたときの基板から案内部の上端までの高さが案内部ごとに異なっている。そのため、基板の周端面と案内部の上端との間の隙間のばらつきが一層大きくなっている。
【0014】
一方、処理カップ内の雰囲気を排気するための排気口が第1構成部材の底部に形成されているので、処理カップ内の雰囲気を排気口から排気させると、処理室内の雰囲気が処理カップ内に取り込まれつつ、処理カップ内に下降気流が形成される。このとき、スピンチャックに保持された基板の周端面にいずれかの案内部を対向させていると、処理室内の雰囲気は、基板の周端面と当該基板の周端面に対向する案内部の上端との間を通って処理カップ内に取り込まれる。しかしながら、特許文献1に係る基板処理装置では基板の周端面と案内部の上端との間の隙間の大きさが案内部ごとに異なっているので、排気口から一定の排気量で排気したとしても、基板の周端面と案内部の上端との間を通る雰囲気の流速が案内部ごとに変化してしまう。そのため、処理液を分別して捕獲するときに、一定の排気条件の下で処理カップ内の雰囲気を排気しながら基板の処理を行うことができない。
【0015】
また、基板の周端面と案内部の上端との間の隙間の大きさが案内部ごとに異なると、当該隙間の大きさが、いずれの案内部を基板の周端面に対向させたときでも最適になるように設定することができない。すなわち、基板の周端面と案内部の上端との間の隙間が大きすぎると、案内部の方から基板側に跳ね返ってくる処理液が当該隙間を通って基板に付着し易くなる。また、基板の周端面と案内部の上端との間の隙間が小さすぎると、基板の周囲に飛散する処理液を案内部によって確実に捕獲できなくなる。したがって、基板の周端面と案内部の上端との間の隙間の大きさには、最適な値がある。しかしながら、特許文献1に係る基板処理装置では、基板の周端面と案内部の上端との間の隙間の大きさが案内部ごとに異なるので、いずれかの案内部を基板の周端面に対向させたときの隙間の大きさを最適化すると、他の案内部を基板の周端面に対向させたときの隙間の大きさが最適な値から外れてしまう。そのため、処理液を分別して捕獲するときに、一定の捕獲条件の下で処理液を捕獲しながら基板の処理を行うことができない。
【0016】
そこで、この発明の目的は、一定の条件の下で基板を処理することができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を水平に保持する基板保持手段(2)と、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給する処理液供給手段(3、4)と、前記基板保持手段の周囲を取り囲み、それぞれ独立して昇降可能に設けられた複数のガード(14、15、16、17)と、各ガードを個別に昇降させることができる昇降手段(40、41、42、43)と、前記昇降手段を制御する制御手段(10)とを含み、前記各ガードは、前記基板保持手段の周囲を取り囲む筒状部(18e、19a、20a、21a)と、筒状部の上端部全周から内方に延びる環状の延設部(18b、19b、20b、21b)とを有するものであり、前記各ガードの延設部は、他のガードの延設部と内径(D1)が揃えられ、他の延設部と上下に重なり合うように配置されたものであり、前記制御手段は、前記昇降手段を制御することにより、前記複数のガードのうちのいずれかのガードの延設部の内周部を前記基板保持手段に保持された基板よりも上方に位置させて当該ガードを基板の周端面に対向させることにより、基板の周囲に排出される処理液を対向させたガードによって受け止めさせるものであり、いずれのガードを対向させるときでも、前記基板保持手段による基板保持位置(P1)から前記延設部の内周部(18c、19c、20c、21c)までの高さ(H1、H2、H3、H4)が等しくなるように前記昇降手段を制御する、基板処理装置である。なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すものとする。
【0018】
この発明によれば、基板保持手段によって水平に保持された基板に処理液供給手段から処理液を供給することにより、処理液による処理を基板に施すことができる。また、制御手段によって昇降手段を制御することにより、複数のガードのうちのいずれかのガードを基板の周端面に対向させることができる。したがって、基板保持手段に保持された基板に処理液供給手段から処理液を供給するときに当該基板の周端面にガードを対向させて、基板の周囲に排出される処理液をガードによって受け止めて捕獲することができる。また、基板の周端面に対向させるガードを変えて、基板の周囲に排出される処理液を異なる経路を介して捕獲することができる。したがって、たとえば処理液供給手段から複数種の処理液を基板に順次供給して当該基板を処理するときに、処理液の種類ごとに基板の周端面に対向させるガードを変えて、これらの処理液を分別して捕獲することができる。また、回収手段を設けて捕獲した処理液を当該回収手段に導けば、当該処理液を回収することができる。これにより、複数種の処理液を分別して回収することができる。
【0019】
また、各ガードが、基板保持手段の周囲を取り囲む筒状部と、筒状部の上端部全周から内方に延びる環状の延設部とからなる構成にされているので、いずれのガードを基板保持手段に保持された基板の周端面に対向させたときでも、基板の周端面と、当該ガードに設けられた延設部の内周部との間に隙間が形成される。また、各ガードの延設部は、他のガードの延設部と内径が揃えられており、いずれのガードを対向させるときでも、基板保持手段による基板保持位置から延設部の内周部までの高さが等しくされるので、基板の周端面と延設部の内周部との間の隙間の大きさ(基板の周端面から延設部の内周部までの最短距離)は、いずれのガードを対向させたときでも一定になる。したがって、いずれのガードを基板の周端面に対向させたときでも、基板の周端面と延設部の内周部との間の隙間の大きさを最適な値に設定することができる。これにより、処理液を分別して捕獲するときに、一定の捕獲条件の下で処理液を捕獲しながら基板の処理を行うことができる。
【0020】
また、基板の周端面にガードを対向させると、基板の周端面と延設部の内周部との間に隙間が形成されるので、たとえば基板の周端面にガードを対向させた状態で当該ガードの底部からガード内の雰囲気を排気した場合には、当該隙間を通じてガード外の雰囲気がガード内に取り込まれる。また、基板の周端面と延設部の内周部との間の隙間の大きさが、いずれのガードを対向させたときでも一定になるので、排気量を一定にすれば、当該隙間を通る雰囲気の流速をほぼ一定にすることができる。すなわち、いずれのガードを対向させたときでも排気条件を一定にすることができる。これにより、処理液を分別して捕獲するときに、一定の排気条件の下でガード内の雰囲気を排気しながら基板の処理を行うことができる。
【0021】
請求項2記載の発明は、前記制御手段は、前記ガードを前記基板保持手段に保持された基板の周端面に対向させるときに、前記昇降手段を制御して、基板の周端面に対向させるガード以外のガードの延設部の内周部をその下方のガードの延設部の内周部に近接させるものである、請求項1記載の基板処理装置である。
この発明によれば、基板保持手段に保持された基板の周端面にいずれかのガードが対向しているときに、当該対向しているガード以外のガードの延設部の内周部が、その下方のガードの延設部の内周部に近接させられる。したがって、基板の周囲に排出された処理液をいずれかのガードによって受け止めて捕獲しているときに、意図しない経路に処理液が進入することを抑制または防止することができる。これにより、複数種の処理液を分別して捕獲するときに、ある処理液に他の種類の処理液が混入することを抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す部分断面図である。
【図2】図1の一部を拡大した図である。
【図3】処理カップの状態を説明するための部分断面図である。
【図4】処理カップの状態を説明するための部分断面図である。
【図5】処理カップの状態を説明するための部分断面図である。
【図6】処理カップの状態を説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す部分断面図である。また、図2は、図1の一部を拡大した図である。最初に、図1を参照して、基板処理装置の概略構成について説明する。
基板処理装置は、半導体ウエハなどの円形の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置は、隔壁(図示せず)で区画された処理チャンバ1を有している。処理チャンバ1内には、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック2(基板保持手段)と、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に薬液やリンス液などの処理液を供給するための上面ノズル3と、スピンチャック2に保持された基板Wの下面に薬液やリンス液などの処理液を供給するための下面ノズル4と、スピンチャック2を収容する処理カップ5とが配置されている。
【0024】
スピンチャック2は、鉛直に延びる回転軸(図示せず)の上端に水平な姿勢で固定された円盤状のスピンベース6と、スピンベース6の下方に配置されて、回転軸を駆動するためのモータ7と、モータ7の周囲を包囲する筒状のカバー部材8とを備えている。スピンベース6の外径は、スピンチャック2に保持される基板Wの外径よりも僅かに大きくされている。スピンベース6の上面周縁部には、複数(たとえば6つ)の挟持部材9が基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。また、カバー部材8は、その下端が処理チャンバ1の底壁1aに固定され、上端がスピンベース6の近傍にまで及んでいる。スピンチャック2は、各挟持部材9を基板Wの周端面に当接させることにより、当該基板Wをスピンベース6の上方で水平に挟持することができる。また、複数の挟持部材9によって基板Wを挟持した状態で、モータ7の駆動力を回転軸に入力させることにより、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線Cまわりに基板Wを回転させることができる。モータ7は、制御部10(制御手段)によって制御されるようになっている。
【0025】
上面ノズル3は、スピンチャック2による基板保持位置P1よりも上方に配置されている。上面ノズル3は、吐出した処理液がスピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に着液するように構成されている。また、下面ノズル4は、スピンチャック2による基板保持位置P1の下方に配置されている。下面ノズル4は、その吐出口がスピンチャック2に保持された基板Wの下面中央部に対向するように構成されている。下面ノズル4から吐出された処理液は、基板Wの下面中央部に着液する。上面ノズル3および下面ノズル4には、それぞれ、複数種の処理液が順次供給されるようになっている。この実施形態では、上面ノズル3および下面ノズル4が処理液供給手段として機能する。
【0026】
すなわち、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら上面ノズル3から処理液を吐出させると、吐出された処理液は、基板Wの上面中央部に着液した後、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に処理液が供給され、処理液による処理が基板Wの上面に施される。また、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら下面ノズル4から処理液を吐出させると、吐出された処理液は、基板Wの下面中央部に着液した後、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの下面周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの下面全域に処理液が供給され、処理液による処理が基板Wの下面に施される。
【0027】
なお、図1では、上面ノズル3がスピンチャック2による基板Wの回転軸線C上に固定的に配置されて、基板Wの上面に対して鉛直上方から処理液を供給する構成が示されているが、上面ノズル3は、たとえば、スピンチャック2の斜め上方に固定的に配置されて、基板Wの上面に対して斜め上方から処理液を供給する構成であってもよい。また、スピンチャック2の上方において水平面内で揺動可能なアームに上面ノズル3が取り付けられて、アームの揺動により基板Wの上面における処理液の供給位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。さらにまた、基板Wの上面に近接して対向配置される遮断板が備えられる場合には、遮断板の中央部に処理液供給口が形成されて、この処理液供給口から基板Wの上面に処理液が供給されるようにしてもよい。
【0028】
処理カップ5は、処理チャンバ1内に収容された円筒状の排気桶11と、排気桶11内に収容された複数のカップ(この実施形態では、第1カップ12および第2カップ13)と、排気桶11内に収容された複数のガード(この実施形態では、第1ガード14、第2ガード15、第3ガード16および第4ガード17)とを備えている。第1〜第4ガード14〜17は、それぞれ、筒状の第1案内部18、第2案内部19、第3案内部20、および第4案内部21を有している。処理カップ5は、基板Wの周囲に飛散する処理液を各案内部18〜21によって受け止めて捕獲できるように構成されており、各案内部18〜21によって受け止めた処理液を廃液または回収できるように構成されている。以下では、図2を参照して、処理カップ5の構成について具体的に説明する。また、以下の説明において図1を適宜参照する。
【0029】
排気桶11は、スピンチャック2の周囲を取り囲んでいる。排気桶11は、処理液を内側に溜められるように構成されている。排気桶11に溜められた処理液は、図示しない廃液機構へ導かれる。また、排気桶11の下端部には、排気管23が接続された排気口24が形成されている。排気桶11内の雰囲気は、図示しないポンプなどの吸引手段によって、排気管23および排気口24を介して排気される。排気口24から排気桶11内の雰囲気を排気することにより、処理チャンバ1内の雰囲気を排気桶11内に取り込みつつ、排気桶11内に下降気流を形成することができる。排気桶11内の排気は、たとえば、処理チャンバ1内において基板Wが処理されている間、常時行われるようになっている。また、排気桶11内の雰囲気を排気するときの排気量は、たとえば一定にされている。
【0030】
第1カップ12は、スピンチャック2による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第1カップ12は、スピンチャック2の周囲を取り囲んでいる。第1カップ12は、図示しない支持部材によって排気桶11内の一定位置で支持されている。第1カップ12は、平面視円環状の底部25と、この底部25の内周縁部から上方に立ち上がる円筒状の内壁部26と、底部25の外周縁部から上方に立ち上がる円筒状の外壁部27とを備えている。内壁部26の上端部は、カバー部材8に形成された環状溝8aに入り込んでいる。第1カップ12は、断面U字状をなしており、底部25、内壁部26および外壁部27によって、基板Wの処理に使用された処理液を集めて廃棄するための廃液溝28が区画されている。廃液溝28に集められた処理液は、図示しない廃液機構に導かれる。
【0031】
第2カップ13は、スピンチャック2による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第2カップ13は、第1カップ12の外側において、スピンチャック2の周囲を取り囲んでいる。第2カップ13は、図示しない支持部材によって排気桶11内の一定位置で支持されている。第2カップ13は、平面視円環状の底部29と、この底部29の内周縁部から上方に立ち上がる円筒状の内壁部30と、底部29の外周縁部から上方に立ち上がる円筒状の外壁部31とを備えている。第2カップ13は、断面U字状をなしており、底部29、内壁部30および外壁部31によって、基板Wの処理に使用された処理液を集めて回収するための内側回収溝32が区画されている。内側回収溝32に集められた処理液は、図示しない第1回収機構に導かれる。
【0032】
第1ガード14は、スピンチャック2による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第1ガード14は、スピンチャック2の周囲を取り囲んでいる。第1ガード14は、筒状の第1案内部18と、この第1案内部18に連結された円筒状の処理液分離壁33とを備えている。
第1案内部18は、スピンチャック2の周囲を取り囲む円筒状の下端部18aと、この下端部18aの上端から外方(基板Wの回転軸線Cから遠ざかる方向)に延びる円筒状の厚肉部18dと、厚肉部18dの上面外周部から鉛直上方に延びる円筒状の中段部18e(円筒部)と、中段部18eの上端から内方(基板Wの回転軸線Cに近づく方向)に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部18b(延設部)とを有している。処理液分離壁33は、厚肉部18dの外周部から鉛直下方に延びており、内側回収溝32上に位置している。また、第1案内部18の下端部18aは、廃液溝28上に位置している。また、第1案内部18の上端部18bは、たとえば、内周端18c(内周部)に至るまで一定の傾斜角度で緩やかに斜め上方に延びている。第1案内部18の内周端18cは、第1案内部18の上端に相当する部分であり、たとえば、下方に凸となる凸形状にされている。
【0033】
第2ガード15は、スピンチャック2による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第2ガード15は、スピンチャック2の周囲を取り囲んでいる。第2ガード15は、筒状の第2案内部19と、カップ部34とを備えている。
第2案内部19は、第1ガード14の周囲を取り囲む円筒状の下端部19a(円筒部)と、下端部19aの上端から内方に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部19b(延設部)とを有している。下端部19aは、内側回収溝32上に位置している。また、第2案内部19の上端部19bは、たとえば、内周端19c(内周部)に至るまで、第1案内部18の上端部18bと等しい一定の傾斜角度で緩やかに斜め上方に延びている。第2案内部19の内周端19cは、第2案内部19の上端に相当する部分であり、たとえば、下方に凸となる凸形状にされている。
【0034】
一方、カップ部34は、平面視円環状の底部35と、この底部35の内周縁部から上方に立ち上がる円筒状の内壁部36と、底部35の外周縁部から上方に立ち上がる円筒状の外壁部37とを備えている。カップ部34の内壁部36は、第2案内部19の上端部19bの外周縁部に連結されている。また、カップ部34は、断面U字状をなしており、底部35、内壁部36および外壁部37によって、基板Wの処理に使用された処理液を集めて回収するための外側回収溝38が区画されている。外側回収溝38に集められた処理液は、図示しない第2回収機構に導かれる。
【0035】
第3ガード16は、スピンチャック2による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第3ガード16は、スピンチャック2の周囲を取り囲んでいる。第3ガード16は、筒状の第3案内部20を有している。第3案内部20は、第2ガード15の周囲を取り囲む円筒状の下端部20a(円筒部)と、下端部20aの上端から内方に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部20b(延設部)と、上端部20bにおける外周よりの位置から鉛直下方に延びる垂下部20dとからなる。第3案内部20の垂下部20dは、外側回収溝38上に位置している。また、第3案内部20の上端部20bは、たとえば、内周端20c(内周部)に至るまで、第1案内部18の上端部18bと等しい一定の傾斜角度で緩やかに斜め上方に延びている。第3案内部20の内周端20cは、第3案内部20の上端に相当する部分であり、たとえば、下方に凸となる凸形状にされている。
【0036】
第4ガード17は、スピンチャック2による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第4ガード17は、スピンチャック2の周囲を取り囲んでいる。第4ガード17は、筒状の第4案内部21を有している。第4案内部21は、第3ガード16の周囲を取り囲む円筒状の下端部21a(円筒部)と、下端部21aの上端から内方に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部21b(延設部)とからなる。第4案内部21の上端部21bは、たとえば、内周端21c(内周部)に至るまで、第1案内部18の上端部18bと等しい一定の傾斜角度で緩やかに斜め上方に延びている。第4案内部21の内周端21cは、第4案内部21の上端に相当する部分であり、たとえば、下方に凸となる凸形状にされている。
【0037】
このように、4つのガード14〜17には、それぞれ、筒状の案内部18〜21が設けられている。前述のように、4つの案内部18〜21の上端部18b、19b、20b、21bは、それぞれ、基板Wの回転軸線Cに近づく方向に向かって斜め上方に延びている。また、4つの上端部18b、19b、20b、21bの内径D1(図1および図2参照)は、それぞれ、スピンベース6の外径より大きな一定の大きさに揃えられている。この実施形態では、スピンベース6の外径がスピンチャック2に保持される基板Wの外径よりも僅かに大きくされているので、各上端部18b、19b、20b、21bの内径D1は、スピンチャック2に保持される基板Wの外径よりやや大きな一定の大きさに揃えられている。
【0038】
また、4つのガード14〜17は、4つの案内部18〜21が同軸になるように配置されている。4つの案内部18〜21の上端部18b、19b、20b、21bは、下から第1案内部18、第2案内部19、第3案内部20、第4案内部21の順番で上下方向に重なり合っている。また、4つの上端部18b、19b、20b、21bの内径D1が一定の大きさに揃えられているので、4つの上端部18b、19b、20b、21bの内周端18c、19c、20c、21cは、基板Wの回転軸線Cを中心軸線とする同一の円筒面上で上下方向に間隔を隔てて配置されている。さらに、この実施形態では、各上端部18b、19b、20b、21bの傾斜角度が等しくされているので、4つの上端部18b、19b、20b、21bは、平行になっている。
【0039】
また、図1に示すように、この基板処理装置には、第1ガード14を昇降させるための第1昇降機構40と、第2ガード15を昇降させるための第2昇降機構41と、第3ガード16を昇降させるための第3昇降機構42と、第4ガード17を昇降させるための第4昇降機構43とが備えられている。4つのガード14〜17は、独立して昇降可能に設けられており、各昇降機構40、41、42、43は、対応するガード14〜17を他のガード14〜17から独立して昇降させることができる。昇降機構40、41、42、43としては、モータを駆動源とする昇降機構(たとえば、ボールねじ機構)やシリンダを駆動源とする昇降機構等が採用されている。この実施形態では、4つの昇降機構40、41、42、43が昇降機構として機能する。
【0040】
各昇降機構40、41、42、43は、対応するガード14〜17を、当該ガード14〜17に設けられた案内部18〜21の上端(この実施形態では、内周端18c、19c、20c、21c)がスピンチャック2による基板保持位置P1よりも上方に位置する上位置と、当該ガード14〜17に設けられた案内部18〜21の上端がスピンチャック2による基板保持位置P1よりも下方に位置する下位置との間で昇降させることができる。図1および図2では、第1〜第4ガード14〜17がそれぞれの下位置に配置されている状態を示している。
【0041】
また、各昇降機構40、41、42、43は、対応するガード14〜17を、当該ガード14〜17の上位置と下位置との間の任意の位置に移動させて、この任意の位置で待機させることができる。すなわち、各昇降機構40、41、42、43は、上位置および下位置だけでなく、上位置および下位置間の任意の位置を含む複数の位置で対応するガード14〜17を待機させることができる。図1に示すように、各昇降機構40、41、42、43は、制御部10によって制御されるようになっている。
【0042】
図3〜図6は、それぞれ、処理カップ5の状態を説明するための部分断面図である。図3〜図6は、それぞれ、処理カップ5の異なる状態を示している。また、図3〜図6は、上面ノズル3、挟持部材9、および昇降機構40、41、42、43などの図示を省略している。以下では、図1を参照して、処理カップ5の状態について説明する。また、以下の説明において、図3〜図6を適宜参照する。
【0043】
制御部10は、4つの昇降機構40、41、42、43を制御することにより、処理カップ5を複数の状態に切り替えることができる。すなわち、制御部10は、図1に示すように、4つのガード14〜17をそれぞれの下位置に位置させて、各案内部18〜21の上端をスピンチャック2による基板保持位置P1よりも下方に位置させることができる。この実施形態では、図1に示す処理カップ5の状態が、処理カップ5の原点状態に設定されている。スピンチャック2に対して基板Wを搬送するときは、処理カップ5が原点状態にされる。また、図1に示すように、第2〜第4ガード15〜17のそれぞれの下位置は、第2〜第4案内部19〜21の上端(内周端19c、20c、21c)が、それぞれ、その下方に隣接する案内部である第1〜第3案内部18〜20の上端(内周端18c、19c、20c)に対して微小な隙間(たとえば2mm程度の隙間)を保って近接するように設定されている。
【0044】
また、制御部10は、4つの昇降機構40、41、42、43を制御することにより、4つのガード14〜17をそれぞれの上位置に位置させて、図3に示すように、各案内部18〜21の上端をスピンチャック2による基板保持位置P1よりも上方に位置させることができる。この実施形態では、図3に示す処理カップ5の状態が、処理カップ5の第1状態に設定されている。図3に示すように、制御部10は、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で処理カップ5を第1状態にすることにより、第1案内部18を基板Wの周端面に対向させることができる。また、図3に示すように、第1状態は、第2〜第4案内部19〜21の上端(内周端19c、20c、21c)が、それぞれ、その下方に隣接する案内部である第1〜第3案内部18〜20の上端(内周端18c、19c、20c)に対して微小な隙間(たとえば2mm程度の隙間)を保って近接するように設定されている。
【0045】
制御部10は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら当該基板Wに処理液を供給するときに、処理カップ5を第1状態にして、基板Wの周囲に飛散する処理液を第1案内部18の内面によって受け止めさせることができる。そして、第1案内部18に受け止められた処理液を第1案内部18の内面に沿って流下させて、廃液溝28に導くことができる。これにより、廃液溝28に処理液を集めて、集めた処理液を廃液することができる。また、第1状態では、第2〜第4案内部19〜21の上端が、それぞれ、第1〜第3案内部18〜20の上端に対して微小な隙間を保って近接するので、上下方向に隣接する2つの上端部間に処理液が進入することを抑制または防止することができる。
【0046】
第1状態における第1案内部18の上端の高さH1(スピンチャック2による基板保持位置P1からの高さ。図3参照)は、基板Wの周囲に飛散する処理液を確実に受け止めることができ、さらに、基板W側に跳ね返ってきた処理液が当該基板Wに付着することを抑制または防止できる最適な値に設定されている。すなわち、基板Wの周囲に排出される処理液には、基板Wの周縁部から直接周囲に飛散するものや、スピンチャック2に設けられた挟持部材9に当たって基板Wの周囲に飛散するものが含まれる。また、処理液が飛散する方向は、水平方向だけでなく、上方および下方に向かう斜め方向が含まれる。したがって、第1案内部18の上端の高さH1が低すぎると、基板Wの周囲に飛散する処理液が、第1案内部18の上方を飛び越えてしまう。そのため、基板Wの周囲に飛散する処理液を確実に受け止めるためには、第1案内部18の上端の高さH1を一定値以上にしなければならない。
【0047】
一方、処理カップ5を第1状態にして回転状態の基板Wに処理液を供給すると、基板Wの周囲に飛散した処理液の一部が、第1案内部18に当たって基板W側に跳ね返ってくる場合がある。また、第1案内部18に直接当たらず、第1案内部18の内面に付着している処理液に当たって、基板W側に処理液が跳ね返ってくる場合がある。したがって、第1案内部18の上端の高さH1を大きくしすぎると、基板W側に跳ね返ってきた処理液が、基板Wと第1案内部18の上端との間を通過し易くなる。そのため、基板W側に跳ね返ってきた処理液が基板Wに付着(再付着)して、基板Wが汚染されるおそれがある。したがって、基板W側に跳ね返ってくる処理液が基板Wに付着することを抑制または防止するためには、第1案内部18の上端の高さH1を一定値以下にしなければならない。
【0048】
そこで、この実施形態では、第1状態における第1案内部18の上端の高さH1が、基板Wの周囲に飛散する処理液を確実に受け止めることができ、さらに、基板W側に跳ね返ってきた処理液が当該基板Wに付着することを抑制または防止できる最適な値に設定されている。より具体的には、スピンチャック2による基板保持位置P1から第1案内部18の上端までの高さH1が、たとえば20mmに設定されている。これにより、基板Wの周囲に飛散する処理液を第1案内部18によって確実に受け止めることができ、さらに、基板W側に跳ね返ってきた処理液が当該基板Wに付着することを抑制または防止することができる。
【0049】
また、制御部10は、4つの昇降機構40、41、42、43を制御することにより、図4に示すように、第1ガード14を下位置に位置させ、第2〜第4案内部19〜21の上端をスピンチャック2による基板保持位置P1よりも上方に位置させることができる。この実施形態では、図4に示す処理カップ5の状態が、処理カップ5の第2状態に設定されている。制御部10は、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で処理カップ5を第2状態にすることにより、第2案内部19を基板Wの周端面に対向させることができる。また、第2状態における第2案内部19の上端の高さH2(スピンチャック2による基板保持位置P1からの高さ。図4参照)は、第1状態における第1案内部18の上端の高さH1と等しい値に設定されている。さらに、第2状態は、第3および第4案内部20、21の上端(内周端20c、21c)が、それぞれ、その下方に隣接する案内部である第2および第3案内部19、20の上端(内周端19c、20c)に対して微小な隙間(たとえば2mm程度の隙間)を保って近接するように設定されている。
【0050】
制御部10は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら当該基板Wに処理液を供給するときに、処理カップ5を第2状態にして、基板Wの周囲に飛散する処理液を第2案内部19の内面によって受け止めさせることができる。そして、第2案内部19に受け止められた処理液を第2案内部19の内面に沿って流下させて、内側回収溝32に導くことができる。これにより、内側回収溝32に処理液を集めて、集めた処理液を回収することができる。また、第2状態では、第3および第4案内部20、21の上端が、それぞれ、第2および第3案内部19、20の上端に対して微小な隙間を保って近接するので、上下方向に隣接する2つの上端部間に処理液が進入することを抑制または防止することができる。
【0051】
また、制御部10は、4つの昇降機構40、41、42、43を制御することにより、図5に示すように、第1および第2ガード14、15をそれぞれの下位置に位置させ、第3および第4案内部20、21の上端をスピンチャック2による基板保持位置P1よりも上方に位置させることができる。この実施形態では、図5に示す処理カップ5の状態が、処理カップ5の第3状態に設定されている。制御部10は、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で処理カップ5を第3状態にすることにより、第3案内部20を基板Wの周端面に対向させることができる。また、第3状態における第3案内部20の上端の高さH3(スピンチャック2による基板保持位置P1からの高さ。図5参照)は、第1状態における第1案内部18の上端の高さH1と等しい値に設定されている。さらに、第3状態は、第2および第4案内部19、21の上端(内周端19c、21c)が、それぞれ、その下方に隣接する案内部である第1および第3案内部18、20の上端(内周端18c、20c)に対して微小な隙間(たとえば2mm程度の隙間)を保って近接するように設定されている。
【0052】
制御部10は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら当該基板Wに処理液を供給するときに、処理カップ5を第3状態にして、基板Wの周囲に飛散する処理液を第3案内部20の内面によって受け止めさせることができる。そして、第3案内部20に受け止められた処理液を第3案内部20の内面に沿って流下させて、外側回収溝38に導くことができる。これにより、外側回収溝38に処理液を集めて、集めた処理液を回収することができる。また、第3状態では、第2および第4案内部19、21の上端が、それぞれ、第1および第3案内部18、20の上端に対して微小な隙間を保って近接するので、上下方向に隣接する2つの上端部間に処理液が進入することを抑制または防止することができる。
【0053】
また、制御部10は、4つの昇降機構40、41、42、43を制御することにより、図6に示すように、第1〜第3ガード14〜16をそれぞれの下位置に位置させ、第4案内部21の上端をスピンチャック2による基板保持位置P1よりも上方に位置させることができる。この実施形態では、図6に示す処理カップ5の状態が、処理カップ5の第4状態に設定されている。制御部10は、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で処理カップ5を第4状態にすることにより、第4案内部21を基板Wの周端面に対向させることができる。また、第4状態における第4案内部21の上端の高さH4(スピンチャック2による基板保持位置P1からの高さ。図6参照)は、第1状態における第1案内部18の上端の高さH1と等しい値に設定されている。さらに、第4状態は、第2および第3案内部19、20の上端(内周端19c、20c)が、それぞれ、その下方に隣接する案内部である第1および第2案内部18、19の上端(内周端18c、19c)に対して微小な隙間(たとえば2mm程度の隙間)を保って近接するように設定されている。
【0054】
制御部10は、たとえば基板Wを乾燥させるときに(スピンチャック2によって基板Wを高速回転させて基板Wに付着している処理液を除去させるときに)、処理カップ5を第4状態にして、基板Wの周囲に飛散する処理液を第4案内部21の内面によって受け止めさせることができる。そして、第4案内部21に受け止められた処理液を第4案内部21の内面に沿って流下させて、排気桶11内に導くことができる。これにより、排気桶11内に処理液を集めて、集めた処理液を廃液することができる。また、第4状態では、第2および第3案内部19、20の上端が、それぞれ、第1および第2案内部18、19の上端に対して微小な隙間を保って近接するので、上下方向に隣接する2つの上端部間に処理液が進入することを抑制または防止することができる。
【0055】
このように、制御部10は、4つの昇降機構40、41、42、43を制御することにより、処理カップ5を複数の状態に切り替えることができる。また、制御部10は、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で、処理カップ5を第1〜第4状態のいずれかの状態にすることにより、スピンチャック2に保持された基板Wの周端面にいずれかの案内部18〜21を対向させることができる。したがって、回転状態の基板Wに処理液を供給して当該基板Wを処理するときに、処理カップ5を第1〜第4状態のいずれかの状態にすることにより、基板Wの周囲に飛散する処理液をいずれかのガード14〜17によって受け止めて捕獲することができる。そのため、複数種の処理液を基板Wに順次供給して当該基板Wを処理するときに、基板Wに供給される処理液の種類ごとに処理カップ5の状態を切り替えて、これらの処理液をそれぞれ別々の経路を介して捕獲することができる。また、回転状態の基板Wに処理液を供給して当該基板Wを処理するときに、処理カップ5を第2状態または第3状態にすれば、基板Wの周囲に飛散する処理液を内側回収溝32または外側回収溝38に回収でき、処理カップ5を第1状態または第4状態にすれば、捕獲された処理液を、回収溝32、38内に入り込ませずに廃液することができる。これにより、他の種類の処理液が混入することを抑制または防止しつつ、複数種の処理液を分別して回収することができる。
【0056】
また、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で処理カップ5を第1状態にすると、図3に示すように、第1案内部18の上端(内周端18c)と基板Wの周端面との間には、全周にわたって隙間G1が形成される。同様に、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で処理カップ5を第2状態にすると、図4に示すように、第2案内部19の上端(内周端19c)と基板Wの周端面との間に全周にわたって隙間G2が形成される。また、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で処理カップ5を第3状態にすると、図5に示すように、第3案内部20の上端(内周端20c)と基板Wの周端面との間に全周にわたって隙間G3が形成される。また、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で処理カップ5を第4状態にすると、図6に示すように、第4案内部21の上端(内周端21c)と基板Wの周端面との間に全周にわたって隙間G3が形成される。したがって、スピンチャック2に基板Wを保持させた状態で処理カップ5を第1〜第4状態のいずれかの状態にすると、処理チャンバ1内の雰囲気が、基板Wの周端面と当該基板Wの周端面に対向する案内部18〜21の上端との間(隙間G1〜G4のいずれか)を通って処理カップ5内に取り込まれる。そのため、基板Wの処理に伴って基板Wの近傍に発生する処理液のミストが、基板Wの近傍から除去される。これにより、処理液のミストが基板Wに付着することを抑制または防止しつつ、基板Wの処理を行うことができる。
【0057】
また、4つの案内部18〜21の上端部18b、19b、20b、21bの内径D1が、一定の大きさに揃えられており、各案内部18〜21が基板Wの周端面に対向するときの高さH1〜H4が等しくされているので、いずれの案内部18〜21を基板Wの周端面に対向させたときでも、基板Wの周端面と案内部18〜21の上端との間の距離(基板Wの周端面から内周端18c、19c、20c、21cまでの最短距離。隙間G1〜G4の大きさに相当)が一定になっている。そのため、いずれの案内部18〜21を基板Wの周端面に対向させたときでも、基板Wの周囲を通過する雰囲気の流速がほぼ一定になる。したがって、いずれの案内部18〜21を基板Wの周端面に対向させたときでも排気条件を一定にすることができる。これにより、複数種の処理液を分別して捕獲するときに、一定の排気条件の下で排気桶11内の雰囲気を排気しながら基板Wの処理を行うことができる。さらに、この実施形態では、各案内部18〜19の上端部18b、19b、20b、21bの傾斜角度が等しくされているので、処理カップ5を第1〜第4状態のいずれの状態にしても、基板Wの周囲における雰囲気の流れ方向がほぼ一定になる。これにより、排気条件のばらつきを一層抑えることができる。さらにまた、隙間G1〜G4の大きさが、いずれの案内部18〜21を基板Wの周端面に対向させたときでも最適になるように設定することができる。これにより、複数種の処理液を分別して捕獲するときに、一定の捕獲条件の下で処理液を捕獲しながら基板Wの処理を行うことができる。
【0058】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の実施形態では、基板保持手段として、基板Wの周端面を挟持して保持する挟持式のチャック(スピンチャック2)を用いる場合について説明したが、基板保持手段としては、挟持式のチャックに限らず、たとえば、基板の下面(裏面)を吸引して保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0059】
また、前述の実施形態では、各案内部18〜19の上端部18b、19b、20b、21bが、それぞれ、内周端18c、19c、20c、21cに至るまで一定の傾斜角度で斜め上方に延びている場合について説明したが、これに限らない。たとえば、各案内部18〜19の上端部18b、19b、20b、21bは、それぞれ、内方に向かって水平に延びていてもよいし、内方に向かって斜め下方に延びていてもよい。また、各案内部18〜19の上端部18b、19b、20b、21bは、一定の傾斜角度で傾斜していなくてもよいし、部分的に傾斜していてもよい。たとえば、各案内部18〜19の上端部18b、19b、20b、21bが、それぞれ、滑らかな円弧を描きつつ内方に向かって斜め上方に延びていてもよい。
【0060】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0061】
2 スピンチャック
3 上面ノズル
4 下面ノズル
10 制御部
14 第1ガード
15 第2ガード
16 第3ガード
17 第4ガード
18e 中段部
18b 上端部
18c 内周端
19a 下端部
19b 上端部
19c 内周端
20a 下端部
20b 上端部
20c 内周端
21a 下端部
21b 上端部
21c 内周端
40 第1昇降機構
41 第2昇降機構
42 第3昇降機構
43 第4昇降機構
D1 内径
H1 高さ
H2 高さ
H3 高さ
H4 高さ
P1 基板保持位置
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記基板保持手段の周囲を取り囲み、それぞれ独立して昇降可能に設けられた複数のガードと、
各ガードを個別に昇降させることができる昇降手段と、
前記昇降手段を制御する制御手段とを含み、
前記各ガードは、前記基板保持手段の周囲を取り囲む筒状部と、筒状部の上端部全周から内方に延びる環状の延設部とを有するものであり、
前記各ガードの延設部は、他のガードの延設部と内径が揃えられ、他の延設部と上下に重なり合うように配置されたものであり、
前記制御手段は、前記昇降手段を制御することにより、前記複数のガードのうちのいずれかのガードの延設部の内周部を前記基板保持手段に保持された基板よりも上方に位置させて当該ガードを基板の周端面に対向させることにより、基板の周囲に排出される処理液を対向させたガードによって受け止めさせるものであり、いずれのガードを対向させるときでも、前記基板保持手段による基板保持位置から前記延設部の内周部までの高さが等しくなるように前記昇降手段を制御する、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ガードを前記基板保持手段に保持された基板の周端面に対向させるときに、前記昇降手段を制御して、基板の周端面に対向させるガード以外のガードの延設部の内周部をその下方のガードの延設部の内周部に近接させるものである、請求項1記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−177372(P2010−177372A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17117(P2009−17117)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】