説明

基板処理装置

【課題】絶縁基板の温度調節をしつつ、絶縁基板を有する配線基板の静電気破壊の発生を低減することを目的とする。
【解決手段】第1方向D1に延びた配線Zが配置された絶縁基板10を有する配線基板30を配置可能なテーブル面40Sと、テーブル面40Sに形成されるとともに第1方向D1と交差する方向に延びた直線状の溝部41と、溝部41に形成されるとともにガスが注入される注入口42Aと、溝部41に形成されるとともに注入口42Aから注入されたガスを排出する排出口43Aと、を有するテーブル40を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(EL)装置などに代表される平面表示装置には、絶縁基板の上に配置された配線を有する配線基板が用いられている。近年、表示パネルの大型化により、表示装置の配線基板には、大きいサイズの絶縁基板が用いられている。例えば、液晶表示装置の配線基板には、一辺が2mを超えるサイズの絶縁基板が用いられることがある。このような絶縁基板は、テーブル上に固定され、配線やスイッチング素子を形成するために、例えば、スパッタリング、ドライエッチング、ウェットエッチングなどを行う設備で処理される。
【0003】
例えば、特許文献1によれば、基板冷却手段として、基板ホルダ内にアルゴンガスを供給する第1希ガス供給路と他の希ガスを供給する第2ガス供給路とを設け、それぞれのガス種および流量を選ぶ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−231702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、静電気破壊の発生を低減することが可能な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様によれば、第1方向に延びた配線が配置された絶縁基板を有する配線基板を配置可能なテーブル面と、前記テーブル面に形成されるとともに第1方向と交差する方向に延びた直線状の溝部と、前記溝部に形成されるとともにガスが注入される注入口と、前記溝部に形成されるとともに前記注入口から注入されたガスを排出する排出口と、を有するテーブルを備えたことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0007】
本発明の第2態様によれば、第1方向と平行な辺を有する矩形状のテーブル面と、前記テーブル面に形成されるとともに第1方向と交差する第2方向に延びた直線状の第1溝部と、第1方向および第2方向と交差する第3方向に延びた直線状の第2溝部と、を有していることを特徴とする基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、静電気破壊の発生を低減することが可能な基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る基板処理装置によって処理された配線基板の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示した配線基板の構成を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、この発明の一実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す図である。
【図4】図4は、図3に示した基板処理装置のテーブルの構成を概略的に示す平面図である。
【図5】図5は、図3に示した基板処理装置のテーブルの他の構成を概略的に示す平面図である。
【図6】図6は、基板処理装置によって配線基板を処理する方法を説明するための図である。
【図7】図7は、図6に示した基板処理装置およびマザー基板をVII−VII線で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
まず、基板処理装置により処理された表示パネルの配線基板の一例の構成について説明する。表示パネルとしては、液晶表示パネル、プラズマ表示パネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示パネルなどがあり、特に種類は問わない。
【0012】
図1に示すように、配線基板30は、ガラス板や石英板などの光透過性を有する絶縁基板10を用いて形成されている。配線基板30は、配線として、行方向に沿って配置された走査線Y、列方向に沿って配置された複数の信号線X、走査線Yと信号線Xとの交差部を含む領域に配置されたスイッチング素子Wなどを備えている。また、配線基板30は、画素電極EPなども備えている。
【0013】
スイッチング素子Wのゲート電極WGは、走査線Yに接続されている(あるいは、走査線Yと一体的に形成されている)。スイッチング素子Wのソース電極WSは、信号線Xに接続されている(あるいは信号線Xと一体的に形成されている)。また、スイッチング素子Wのドレイン電極WDは、画素電極EPに接続されている。走査線Yおよび信号線Xは、例えばアルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)などの遮光性を有する導電材料によって形成されている。この走査線Yは、例えば、1mmの幅に複数本配置されている。
【0014】
図2に示す配線基板30は、スイッチング素子W、画素電極EPなどを備えている。各スイッチング素子Wは、例えば、nチャネル薄膜トランジスタであり、絶縁基板10の上に配置された半導体層12を備えている。この半導体層12は、例えば、ポリシリコンやアモルファスシリコンなどによって形成可能であり、ここではポリシリコンによって形成されている。半導体層12は、チャネル領域12Cを挟んだ両側にそれぞれソース領域12Sおよびドレイン領域12Dを有している。この半導体層12は、ゲート絶縁膜14によって覆われている。このゲート絶縁膜14は、例えば、酸化シリコン(SiO)によって形成されている。
【0015】
スイッチング素子Wのゲート電極WGは、走査線Yと一体に形成され、ゲート絶縁膜14上に配置され、半導体層12のチャネル領域12Cの直上に位置している。これらのゲート電極WGおよび走査線Yは、層間絶縁膜16によって覆われている。
【0016】
スイッチング素子Wのソース電極WS及びドレイン電極WDは、層間絶縁膜16の上においてゲート電極WGの両側に配置されている。ソース電極WSは、信号線Xと一体に形成され、半導体層12のソース領域12Sにコンタクトしている。ドレイン電極WDは、半導体層12のドレイン領域12Dにコンタクトしている。これらのソース電極WS、ドレイン電極WD、及び、信号線Xは、有機絶縁膜18によって覆われている。
【0017】
画素電極EPは、有機絶縁膜18の上に配置され、有機絶縁膜18に形成されたコンタクトホールを介してドレイン電極WDと電気的に接続されている。
【0018】
次に、上述した配線基板30を形成するために、配線基板30の製造に用いられる基板処理装置の構成について説明する。基板処理装置としては、スパッタ装置、CVD装置、ドライエッチング装置、貼り合せ装置などがある。
【0019】
図3に示すように、基板処理装置60は、真空容器50と、真空容器50内に配置されたテーブル40を有している。このテーブル40は、配線基板30の保持機構として機能する。
【0020】
テーブル40は、配線基板30を配置可能なテーブル面40Sと、溝部41と、注入口42Aと、排出口43Aと、を有している。テーブル40は、例えば、金属材料によって形成されている。テーブル面40Sは、略平坦に形成されている。溝部41は、テーブル面40Sに形成され、テーブル面40Sから奥行きDだけ後退し、テーブル面40Sと同一平面に開口面を有する。注入口42Aは、溝部41に形成され、注入路42Bと接続されている。また、排出口43Aは、溝部41に形成され、排出路43Bと接続されている。ガス供給部(図示しない)が注入路42Bに接続され、ガス供給部から種々の用途に応じたガスが溝部41に供給されている。テーブル面40Sに配置された配線基板30は、溝部41に供給されたガスと接する。このような基板処理装置60は、配線基板30に接する種々のガスにより、配線基板30の温度制御を行ったり、処理後の配線基板30の脱離を容易にしたりすることが可能である。
【0021】
図4には、テーブル40の構成例が示されている。テーブル面40Sは、第1方向D1に延びた長辺L1、L2と、第1方向D1に直交する方向に延びた短辺S1、S2と、を有する矩形状である。このテーブル面40Sの面積は、例えば、配線基板30のテーブル面40Sに接する面の面積より大きく形成されている。
【0022】
溝部41は、直線状であり、第1方向D1と交差する方向に延びている。つまり、溝部41は、テーブル面40Sの長辺L1、L2と交差する方向に延びている。この溝部41の幅は、数mmである。
【0023】
ここでは、溝部41は、第1溝部41Aと、第2溝部41Bと、を有している。第1溝部41Aは、第2方向D2に延びた複数の直線状の溝である。第2方向D2は、第1方向D1と鋭角θ1に交差する方向である。第2溝部41Bは、第3方向D2に延びた複数の直線状の溝である。第3方向D3は、第1方向D1および第2方向D2と交差するする方向であり、第1方向D1と鋭角θ2に交差する方向である。これらの第1溝部41Aと第2溝部41Bとは、複数の箇所で交差し、格子状に形成されている。
【0024】
図4に示した例では、第2方向D2は、第3方向D3と直角をなす方向である。すなわち、第1溝部41Aと第2溝部41Bとは、直角に交差している。第1溝部41Aは、テーブル40の長辺L1、L2および短辺S1、S2と交差する方向に延びている。また、第2溝部41Bは、テーブル40の長辺L1、L2および短辺S1、S2と交差する方向に延びている。
【0025】
図5には、テーブル40の他の構成例が示されている。ここに示した例では、第1溝部41Aと第2溝部41Bとが鋭角に交差している点で、図4に示した例と相違している。つまり、第1溝部41Aが延びた第2方向D2は、第2溝部41Bが延びた第3方向D3と鋭角θ3をなす方向である。また、これらの第2方向D2及び第3方向D3は、第1方向D1とそれぞれ鋭角θ4、θ5に交差する方向である。つまり、第1溝部41Aは、テーブル40の長辺L1、L2および短辺S1、S2と交差する方向に延びている。また、第2溝部41Bは、テーブル40の長辺L1、L2および短辺S1、S2と交差する方向に延びている。
【0026】
次に、上述した配線基板30の製造方法の一例について説明する。
【0027】
まず、長方形状の絶縁基板10を用意する。絶縁基板10の上に、半導体層12を形成する。半導体層12の上にゲート絶縁膜14を形成する。その後、ゲート絶縁膜14の上に、所望の形状の走査線Y、及び、ゲート電極WGを形成する。このとき、走査線Yを絶縁基板10の長辺に沿って形成する。その後、ゲート絶縁膜14、走査線Y及びゲート電極WGの上に、層間絶縁膜16を形成する。その後、層間絶縁膜16の上に、所望の形状の信号線X、ドレイン電極WD、及び、ソース電極WSを形成する。このとき、信号線Xを絶縁基板10の短辺に沿って形成する。その後、層間絶縁膜16、信号線X、ドレイン電極WD、及び、ソース電極WSの上に、有機絶縁膜18を形成し、さらに、有機絶縁膜18の上に画素電極EPを形成する。このような工程により、配線基板30が形成される。
【0028】
このような、製造過程の中では、薄膜を成膜するためのスパッタ装置やCVD装置、薄膜をパターニングするためのエッチング装置などの各種基板処理装置60が利用される。
【0029】
ここで、半導体層12及び走査線Yを形成済みの配線基板30を上述した基板処理装置60によって処理する方法について説明する。ここでは、配線基板30を冷却しながら処理する方法について説明する。
【0030】
図6に示すように、まず、一対の長辺ML1及びML2及び一対の短辺MS1及びMS2を有する長方形状のマザー基板Mを用意する。このマザー基板Mは、例えば、4つの配線基板形成領域30Aを有している。マザー基板Mの配線基板形成領域30Aには、各々、マザー基板Mの長辺ML1及びML2に平行に延びた走査線Yが形成済みである。
【0031】
また、マザー基板Mから面取りされ最終的には表示装置となる各々の配線基板は、長辺l1及びl2、短辺s1及びs2を有している。
【0032】
そして、このマザー基板Mを長方形状のテーブル40のテーブル面40Sに配置する。このとき、マザー基板Mは、その長辺ML1及びML2がテーブル40の長辺L1及びL2と平行となり、しかも、マザー基板Mの短辺MS1及びMS2がテーブル40の短辺S1及びS2と平行となるように配置される。つまり、配線基板形成領域30Aに形成済みの走査線Yは、テーブル40の長辺L1及びL2が延びる第1方向と平行となり、テーブル40の短辺S1及びS2と直交している。そして、マザー基板Mを、静電気により静電吸着やクランプ機構などにより、テーブル面40Sに保持させる。
【0033】
ここで、適用するテーブル40は、長辺L1及びL2が延びる第1方向D1と鋭角に交差する第2方向D2に延びた第1溝部41Aと、第1方向D1と鋭角に交差するとともに第2方向D2と直角に交差する第3方向D3に延びた第2溝部41Bと、を有している。また、テーブル面40Sの面積は、マザー基板Mの面積より大きい。つまり、走査線Yは、第1溝部41A及び第2溝部41Bと複数の箇所で交差している。
【0034】
図7に示すように、マザー基板Mがテーブル40のテーブル面40Sに配置された際に溝部41を覆うため、マザー基板Mと溝部41とによって閉空間が形成される。
【0035】
そして、ガス供給部(図示しない)から供給されたガスを注入路42Bを介して注入口42Aから溝部41へ注入する。このガスは、例えば、熱交換用のガスであり、熱導電性が高いヘリウム(He)、アルゴン(Ar)などである。ガスは、第1溝部41Aと第2溝部41Bとが互いにつながっているため、第1溝部41Aおよび第2溝部41Bを通流する。そして、ガスは、溝部41に形成された排出口43Aから排出路43Bを介して溝部41外へ排出される。
【0036】
このような基板処理装置60によれば、配線基板30が熱を帯びた際に、絶縁基板10の熱をガスが吸収し、ガスと絶縁基板10との間で熱交換が行われ、配線基板30を冷却することが可能である。
【0037】
本実施の形態の基板処理装置60において、テーブル40の第1溝部41Aおよび第2溝部41Bが第1方向D1と交差するように形成されているため、第1溝部41Aおよび第2溝部41Bと第1方向に延びた走査線Yとは、交差する。つまり、溝部41が走査線Yと平行に形成された場合と比べて、溝部41と走査線Yとが重なる面積が小さくなる。したがって、ガスを溝部41に供給した際に静電気が発生しても、走査線Yと半導体層12との間での静電気破壊の発生を低減することが可能となる。つまり、本実施の形態の基板処理装置60によれば、配線基板30の静電気破壊の発生を低減することが可能となる。
【0038】
また、本実施の形態の基板処理装置60において、信号線Xを形成済みの配線基板30を処理する際、テーブル40の第1溝部41Aおよび第2溝部41Bが第1方向D1と鋭角に交差するように形成されているため、第1溝部41Aおよび第2溝部41Bと、図示していないが第1方向D1に直交する方向に延びた信号線Xとは、交差する。つまり、溝部41が信号線Xと平行に形成された場合と比べて、溝部41と信号線Xとが重なる面積が小さくなる。したがって、ガスを溝部41に供給した際に静電気が発生しても、信号線Xと他の導電層との間での静電気破壊の発生を低減することが可能となる。つまり、本実施の形態の基板処理装置60によれば、配線基板30の静電気破壊の発生を低減することが可能となる。
【0039】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、静電気破壊の発生を低減することが可能な基板処理装置60を提供することが可能となる。
【0040】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0041】
本実施の形態において、第1溝部41Aと第2溝部41Bとが互いにつながり、一体的に形成された例を説明したが、この例に限らず、第1溝部41Aおよび第2溝部41Bのそれぞれの溝は、別個に形成されてもよい。このとき、各溝に注入口42Aおよび排出口43Aを形成することによって、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0042】
本実施の形態において、溝部41が互いに交差する第1溝部41Aと第2溝部41Bとを有する例について説明したが、この例に限らず、溝部41は、第1溝部41Aまたは第2溝部41Bのいずれか一方を有していればよい。このような構成においても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0043】
D1…第1方向 Z…配線 30…配線基板 10…絶縁基板 40…テーブル 40S…テーブル面 41…溝部 42A…注入口 43A…排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びた配線が配置された絶縁基板を有する配線基板を配置可能なテーブル面と、前記テーブル面に形成されるとともに第1方向と交差する方向に延びた直線状の溝部と、前記溝部に形成されるとともにガスが注入される注入口と、前記溝部に形成されるとともに前記注入口から注入されたガスを排出する排出口と、を有するテーブルを備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記溝部は、第1方向と交差する第2方向に延びた第1溝部と、第1方向および第2方向と交差する第3方向に延びた第2溝部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
第1方向と平行な辺を有する矩形状のテーブル面と、前記テーブル面に形成されるとともに第1方向と交差する第2方向に延びた直線状の第1溝部と、第1方向および第2方向と交差する第3方向に延びた直線状の第2溝部と、を有していることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
第1溝部と第2溝部とは、鋭角に交差することを特徴とする請求項2または請求項3の何れかの1項に記載の表示装置の製造装置。
【請求項5】
さらに、真空容器を備え、
前記テーブルは、前記真空容器内に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項3の何れかの1項に記載の表示装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−258374(P2010−258374A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109746(P2009−109746)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】