説明

基板処理装置

【課題】高周波ノイズによる影響を防止することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】ヒータ207に電力を供給するヒータ用電源線208に高周波ノイズを除去するノイズ除去フィルタ212を接続し、ヒータ用電源線208の導電性配線209を被覆した絶縁性の配線被覆部材210の内部には、高周波ノイズをシールドするシールド部材211をヒータ207とノイズ除去フィルタ212との間に組み込む。熱電対263の補償導線264に高周波ノイズを除去するノイズ除去フィルタ262を接続し、補償導線264の導電性配線265を被覆した絶縁性の配線被覆部材266の内部には、高周波ノイズをシールドするシールド部材268を熱電対263とノイズ除去フィルタ262との間に組み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関し、例えば、半導体素子を含む半導体集積回路装置(以下、ICという)の製造方法において、ICを作り込む半導体ウエハ(以下、ウエハという)にプラズマ処理を施すのに利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造方法において、ウエハにプラズマ処理を施す基板処理装置として、複数枚のウエハが搬入される処理室を形成するプロセスチューブと、処理室内にガスを供給するガス供給管と、処理室におけるウエハ群搬入領域から離れた位置に互いに近接して配置された細長い一対の電極と、一対の電極間に高周波電力を印加する電源と、を備えており、一対の電極間の空間に処理ガスが供給されるように構成されているバッチ式プラズマ処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このバッチ式プラズマ処理装置においては、一対の電極の全長にわたってプラズマを生成することができるので、ウエハ群の全長にわたってプラズマ処理を均一に施すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−289166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッチ式プラズマ処理装置においては、プラズマ生成によって発生する高周波ノイズが電装機器の誤動作を引き起こすことがある。高周波ノイズは電磁波として周囲に漏洩したり、板金や導線を伝わって漏洩したりする。ヒータによって加熱された処理室内でプラズマが生成された場合には、ヒータ線や制御用温度センサの配線を伝わって高周波ノイズが漏洩することがある。
高周波ノイズ対策としては、次のようなものが考えられる。
(1)板金や金網によって高周波ノイズを遮蔽する。
(2)電装機器の信号線が高周波ノイズの影響を受けないようにシールド線を使用する。(3)ケーブルにシールド材を巻き付ける。
(4)シールドをアースに落とす。
(5)回路中にノイズフィルタを設け、高周波ノイズを除去する。
【0005】
しかしながら、板金等によって遮蔽した場合には、パネルの隙間(スリット)から高周波ノイズが漏洩するために、高い密閉性が要求される。その結果、多量のねじ類を使用して隙間なく固定したり、または、導電性パッキンを使用したりする必要が生じてしまう。
シールド材で覆ったり巻き付けたりする対策においても、端部に隙間が発生したり、嵩張ったりする。
配線を伝わる高周波ノイズはノイズフィルタによって除去することができるが、ヒータ線や制御用温度センサの配線については、耐熱の観点からノイズフィルタをヒータに隣接して設置することができないので、この部分、すなわちヒータとノイズフィルタとの間の部分からの高周波ノイズの漏洩は防止することができない。
【0006】
本発明の目的は、高周波ノイズによる影響を防止することができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、次の基板処理装置が提供される。
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給系と、
前記ガス供給系より供給されるガスをプラズマで活性化させるプラズマ源と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内の温度を測定する温度センサと、
前記ヒータに接続されたヒータ用電源線と、
前記温度センサに接続された温度センサ用補償導線と、を有し、
前記ヒータ用電源線および前記温度センサ用補償導線は、導電性の配線を絶縁性の配線被覆部材で被覆した構成を有しており、前記ヒータ用電源線および/または前記温度センサ用補償導線の前記配線被覆部材には、前記プラズマによって発生する高周波ノイズをシールドするシールド部材が組み込まれていることを特徴とする基板処理装置。
【発明の効果】
【0008】
この基板処理装置によれば、高周波ノイズによる影響を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示す図である。
【図2】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
【図3】本実施形態の処理シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図4】本実施形態のヒータおよび温度センサの電気回路を示す模式図である。
【図5】(a)および(b)はヒータ用電源線を示す斜視図および縦断面図であり、(c)は補償導線を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。
【0012】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2 )または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0013】
処理室201内における反応管203の下部には、第1ノズル249a、第2ノズル249dが反応管203を貫通するように設けられている。第1ノズル249a、第2ノズル249dには、第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232dがそれぞれ接続されている。このように、反応管203には2本のノズル249a、249dと、2本のガス供給管232a、232dが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは2種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0014】
第1ガス供給管232aには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第1不活性ガス供給管232eが接続されている。この第1不活性ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル249aが接続されている。第1ノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル249aはL字型のロングノズルとして構成されている。第1ノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aにより第1ガス供給系が構成される。また、主に、第1不活性ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより、第1不活性ガス供給系が構成される。
【0015】
第2ガス供給管232dには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第2ガス供給管232dのバルブ243dよりも下流側には、第2不活性ガス供給管232hが接続されている。この第2不活性ガス供給管232hには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241h、及び開閉弁であるバルブ243hが設けられている。また、第2ガス供給管232dの先端部には、上述の第2ノズル249dが接続されている。第2ノズル249dは、ガス分散空間であるバッファ室237内に設けられている。
【0016】
バッファ室237は反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔250eが設けられている。ガス供給孔250eは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250eは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0017】
第2ノズル249dは、バッファ室237のガス供給孔250eが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第2ノズル249dはL字型のロングノズルとして構成されている。第2ノズル249dの側面にはガスを供給するガス供給孔250dが設けられている。ガス供給孔250dはバッファ室237の中心を向くように開口している。このガス供給孔250dは、バッファ室237のガス供給孔250eと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。この複数のガス供給孔250dのそれぞれの開口面積は、バッファ室237内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0018】
本実施形態においては、第2ノズル249dのガス供給孔250dのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔250dのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこのガス供給孔250dのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入し、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うこととした。
【0019】
すなわち、第2ノズル249dのガス供給孔250dのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスはバッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237のガス供給孔250eより処理室201内に噴出する。これにより、第2ノズル249dのガス供給孔250dのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、バッファ室237のガス供給孔250eのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0020】
主に、第2ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第2ノズル249d、バッファ室237により第2ガス供給系が構成される。また、主に、第2不活性ガス供給管232h、マスフローコントローラ241h、バルブ243hにより第2不活性ガス供給系が構成される。
【0021】
第1ガス供給管232aからは、例えば、シリコン原料ガス、すなわちシリコン(Si)を含むガス(シリコン含有ガス)が、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に供給される。シリコン含有ガスとしては、例えばジクロロシラン(SiH2 Cl2 、略称:DCS)ガスを用いることができる。
【0022】
第2ガス供給管232dからは、例えば窒素(N)を含むガス(窒素含有ガス)が、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第2ノズル249d、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。窒素含有ガスとしては、例えばアンモニア(NH3 )ガスを用いることができる。
【0023】
不活性ガス供給管232e、232hからは、例えば窒素(N2 )ガスが、それぞれマスフローコントローラ241e、241h、バルブ243e、243h、ガス供給管232a、232d、ガスノズル249a、249d、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。
【0024】
なお、例えば各ガス供給管から上述のようなガスをそれぞれ流す場合、第1ガス供給系により原料ガス供給系、すなわちシリコン含有ガス供給系(シラン系ガス供給系)が構成される。また、第2ガス供給系により窒素含有ガス供給系が構成される。
【0025】
バッファ室237内には、図2に示すように、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、第2ノズル249dと平行に設けられている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275により覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、第1の棒状電極269、第2の棒状電極270、電極保護管275、整合器272、高周波電源273によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。なお、プラズマ源は、後述するようにガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。
【0026】
電極保護管275は、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。
【0027】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ244は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。主に、排気管231、APCバルブ244、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0028】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボートを回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0029】
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なおボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるよう構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これらを水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
【0030】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249a、249dと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0031】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、マスフローコントローラ241a、241d、241e、241h、バルブ243a、243d、243e、243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、ボート回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源273、整合器272等に接続されている。コントローラ121により、マスフローコントローラ241a、241d、241e、241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a、243d、243e、243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉及び圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節動作、ボートエレベータ115の昇降動作等の制御や、高周波電源273の電力供給制御、整合器272によるインピーダンス制御が行われる。
【0032】
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜を成膜する処理シーケンス例について説明する。
尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0033】
図3は、本実施形態の処理シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミング図である。
【0034】
本実施形態の処理シーケンスでは、ウエハ200を収容した処理容器内に第1元素を含むガス(第1元素含有ガス)を供給することで、ウエハ200上に第1元素を含む第1の層を形成する工程と、
処理容器内に第2元素を含むガス(第2元素含有ガス)を供給することで、第1の層を改質して第1元素および第2元素を含む第2の層を形成する工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことで、所定膜厚の第1元素および第2元素を含む薄膜を形成する。
【0035】
第1の層を形成する工程は、CVD反応が生じる条件下で行う。このときウエハ200上に1原子層未満から数原子層程度の第1元素を含む第1の層として第1元素層を形成する。第1の層は第1元素含有ガスの吸着層であってもよい。なお、第1元素としては、それ単独で固体となる元素を用いるのがよい。ここで、第1元素層とは、第1元素により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる薄膜をも含む総称である。なお、第1元素により構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、第1元素含有ガスの吸着層とは第1元素含有ガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。第1元素含有ガスが自己分解する条件下ではウエハ200上に第1元素が堆積することで第1元素層が形成される。第1元素含有ガスが自己分解しない条件下では、ウエハ200上に第1元素含有ガスが吸着することで第1元素含有ガスの吸着層が形成される。なお、ウエハ200上に第1元素含有ガスの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上に第1元素層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0036】
第2の層を形成する工程では、第2元素含有ガスをプラズマまたは熱で活性化させて供給することで、第1の層の一部と第2元素含有ガスとを反応させて、第1の層を改質して第1元素および第2元素を含む第2の層を形成する。例えば第1の層を形成する工程で数原子層の第1元素を含む第1の層を形成した場合は、その表面層の一部と第2元素含有ガスとを反応させてもよいし、その表面層全体と第2元素含有ガスとを反応させてもよい。また、数原子層の第1元素を含む第1の層の表面層から下の数層と第2元素含有ガスとを反応させてもよい。なお、第2元素としては、それ単独では固体とはならない元素を用いるのがよい。第2元素含有ガスはプラズマで活性化させて供給してもよいし、熱で活性化させて供給してもよい。図3は第2元素含有ガスをプラズマで活性化させて供給する例を示している。なお、第2元素含有ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、改質をソフトに行うことができる。
【0037】
以下、本実施形態の処理シーケンスを具体的に説明する。なお、ここでは、第1元素をシリコン(Si)、第2元素を窒素(N)とし、第1元素含有ガスとしてシリコン含有ガスであるDCSガスを、第2元素含有ガスとして窒素含有ガスであるNH3 ガスを用い、図3のシーケンスにより、基板上に絶縁膜としてシリコン窒化膜(SiN膜)を形成する例について説明する。なお、この例では、第1ガス供給系によりシリコン含有ガス供給系(第1元素含有ガス供給系)が構成され、第2ガス供給系により窒素含有ガス供給系(第2元素含有ガス供給系)が構成される。
【0038】
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0039】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ244が、フィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構267により、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される(ウエハ回転)。その後、後述する2つのステップを順次実行する。
【0040】
[ステップ1]
第1ガス供給管232aのバルブ243a開き、第1ガス供給管232a内にDCSガスを流す。第1ガス供給管232a内を流れたDCSガスは、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。流量調整されたDCSガスは第1ノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。このとき、同時にバルブ243eを開き、不活性ガス供給管232e内にN2 ガス等の不活性ガスを流す。不活性ガス供給管232e内を流れたN2 ガスは、マスフローコントローラ241eにより流量調整される。流量調整されたN2 ガスはDCSガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0041】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241aで制御するDCSガスの供給流量は、例えば10〜1000sccmの範囲内の流量とする。DCSガスをウエハ200に晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、処理室201内でCVD反応が生じる程度の温度、すなわちウエハ200の温度が、例えば300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、ウエハ200の温度が300℃未満となるとウエハ200上にDCSが吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が650℃を超えるとCVD反応が強くなり、均一性が悪化しやすくなる。よって、ウエハ200の温度は300〜650℃の範囲内の温度とするのが好ましい。
【0042】
DCSガスの供給により、ウエハ200表面の下地膜上に、第1元素としてのシリコンを含む第1の層が形成される。すなわち、ウエハ200上(下地膜上)に1原子層未満から数原子層のシリコン含有層としてのシリコン層(Si層)が形成される。シリコン含有層はDCSの化学吸着層であってもよい。なお、シリコンは、それ単独で固体となる元素である。ここでシリコン層とはシリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層やこれらが重なってできる薄膜をも含む。なお、シリコンにより構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、DCSの化学吸着層とはDCS分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ2での窒化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。なお、DCSガスが自己分解する条件下では、ウエハ200上にシリコンが堆積することでシリコン層が形成され、DCSガスが自己分解しない条件下では、ウエハ200上にDCSが化学吸着することでDCSの化学吸着層が形成される。なお、ウエハ200上にDCSの化学吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にシリコン層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0043】
シリコン含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、DCSガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243eは開いたままとして、N2 ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0044】
シリコン含有ガスとしては、DCSガスの他、テトラクロロシラン(SiCl4 、略称:TCS)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2 Cl6 、略称:HCD)ガス、モノシラン(SiH4 )ガス等の無機原料だけでなく、アミノシラン系のテトラキスジメチルアミノシラン(Si(N(CH3 2 ) 4 、略称:4DMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si(N(CH3 2 3 H、略称:3DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si(N(C2 5 2 2 2 、略称:2DEAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH2 (NH(C4 9 ))2 、略称:BTBAS)ガスなどの有機原料を用いてもよい。不活性ガスとしては、N2 ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0045】
[ステップ2]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第2ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第2ガス供給管232d内にNH3 ガスを流す。第2ガス供給管232d内を流れたNH3 ガスは、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。流量調整されたNH3 ガスは第2ノズル249dのガス供給孔250dからバッファ室237内に供給される。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたNH3 ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔250eから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時同時にバルブ243hを開き、不活性ガス供給管232h内にN2 ガスを流す。N2 ガスはNH3 ガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0046】
NH3 ガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜100Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241dで制御するNH3 ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。NH3 ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ1と同様、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。NH3 ガスは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度、処理室内圧力では反応しづらいので、プラズマ励起することにより活性種としてから流すようにしており、このためウエハ200の温度は上述のように設定した低い温度範囲のままでよい。また、NH3 ガスを供給する際にプラズマ励起せず、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を例えば50〜3000Paの範囲内の圧力とすることで、NH3 ガスをノンプラズマで熱的に活性化することも可能である。なお、NH3 ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する窒化をソフトに行うことができる。
【0047】
このとき、処理室201内に流しているガスはNH3 ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種、もしくは処理室201内圧力を高くすることで熱的に活性化されたNH3 ガスであり、処理室201内にはDCSガスは流していない。したがって、NH3 ガスは気相反応を起こすことはなく、活性種となった、もしくは活性化されたNH3 ガスは、ステップ1でウエハ200上に形成された第1の層としてのシリコン含有層と反応する。これによりシリコン含有層は窒化されて、シリコン(第1元素)および窒素(第2元素)を含む第2の層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)へと改質される。
【0048】
その後、第2ガス供給管232dのバルブ243dを閉じて、NH3 ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNH3 ガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243hは開いたままとして、N2 ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNH3 ガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0049】
窒素含有ガスとしては、NH3 ガスをプラズマや熱で励起したガス以外に、N2 ガス、NF3 ガス、N3 8 ガス等をプラズマや熱で励起したガスを用いてもよく、これらのガスをArガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスで希釈したガスをプラズマや熱で励起して用いてもよい。
【0050】
上述したステップ1〜2を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン(第1元素)および窒素(第2元素)を含む薄膜、すなわち、シリコン窒化膜(SiN膜)を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0051】
所定膜厚のシリコン窒化膜を形成する成膜処理がなされると、N2 等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0052】
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0053】
なお、ここでは本実施形態の処理シーケンスの具体例として、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、窒素含有ガスをそれぞれ用い、SiN膜を形成する例について説明したが、本発明は上述の具体例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0054】
例えば、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてアルミニウム含有ガス、窒素含有ガスをそれぞれ用い、アルミニウム窒化膜(AlN膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてチタン含有ガス、窒素含有ガスをそれぞれ用い、チタン窒化膜(TiN膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてボロン含有ガス、窒素含有ガスをそれぞれ用い、ボロン窒化膜(BN膜)を形成する場合等にも適用することができる。また、例えば、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、酸素含有ガスをそれぞれ用い、シリコン酸化膜(SiO膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてアルミニウム含有ガス、酸素含有ガスをそれぞれ用い、アルミニウム酸化膜(AlO膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてチタン含有ガス、酸素含有ガスをそれぞれ用い、チタン酸化膜(TiO膜)を形成する場合等にも適用することができる。また、例えば、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、炭素含有ガスをそれぞれ用い、シリコン炭化膜(SiC膜)を形成する場合等にも適用することができる。
【0055】
なお、アルミニウム含有ガスとしては、例えばトリメチルアルミニウム(Al(CH3 3 、略称:TMA)ガスを用いることができる。チタン含有ガスとしては、例えば四塩化チタン(TiCl4 )ガスやテトラキスジメチルアミノチタン(Ti[N(CH3 2 4 、略称:TDMAT)ガスを用いることができる。硼素含有ガスとしては、例えば三塩化硼素(BCl3 )ガスやジボラン(B2 6 )ガスを用いることができる。炭素含有ガスとしては、例えばプロピレン(C3 6 )ガスやエチレン(C2 4 )ガスを用いることができる。酸素含有ガスとしては、例えば酸素(O2 )ガス、オゾン(O3 )ガス、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(N2 O)ガス、水蒸気(H2 O)を用いることができる。
【0056】
以上のように、本実施形態の処理シーケンスでは、第1元素としては、例えばシリコン(Si)や硼素(B)等の半導体元素や、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の金属元素を用いることができ、第2元素としては、窒素(N)や炭素(C)や酸素(O)等の元素を用いることができる。
【0057】
ところで、以上の縦型処理炉においては、プラズマ生成によって高周波ノイズが発生し、発生した高周波ノイズが電装機器の誤動作を引き起こすことがある。
そこで、本実施形態においては、高周波ノイズがヒータや温度センサの配線を伝わって漏洩するのを、図4および図5に示された構成によって防止する。
【0058】
図4に示されているように、ヒータ207には電力を供給するヒータ用電源線208が接続されている。ヒータ用電源線208にはプラズマによって発生する高周波ノイズ213を除去するノイズ除去フィルタ212が接続されている。なお、ノイズ除去フィルタ212は耐熱性の制限により、ヒータ207から離れた位置に設置されている。
図5(a)(b)に示されているように、ヒータ用電源線208は導電性配線209を絶縁性の配線被覆部材210で被覆した構成を有しており、配線被覆部材210にはプラズマによって発生する高周波ノイズをシールドするシールド部材211が組み込まれている。シールド部材211は導電性配線209を全体的に覆うように設けられているとともに、配線被覆部材210の内部に設けられている。シールド部材211はヒータ207とノイズ除去フィルタ212との間に設けられた配線被覆部材210に組み込まれている。シールド部材211にはアース線214が接続されている。
【0059】
図4に示されているように、温度センサとして熱電対263が使用されており、熱電対263には補償導線264が接続されており、補償導線264にはプラズマによって発生する高周波ノイズ213を除去するノイズ除去フィルタ262が接続されている。なお、ノイズ除去フィルタ262は耐熱性の制限により、ヒータ207から離れた位置に設置されている。
図5(c)に示されているように、補償導線264は導電性配線265を絶縁性の配線被覆部材266で被覆した構成を有しており、配線被覆部材266にはプラズマによって発生する高周波ノイズをシールドするシールド部材268が組み込まれている。シールド部材268は導電性配線265を全体的に覆うように設けられているとともに、配線被覆部材266の内部に設けられている。シールド部材268は熱電対263とノイズ除去フィルタ262との間の配線被覆部材266に組み込まれている。シールド部材268にはアース線261が接続されている。
【0060】
本実施形態によれば、次の作用および効果が奏される。
【0061】
(1)ヒータ用電源線の配線被覆部材にシールド部材を組み込むことにより、高周波ノイズがヒータ用電源線から電磁波として周囲に漏洩するのを防止することができるので、電装機器等の誤動作を防止することができる。
【0062】
(2)シールド部材をヒータ用電源線の内部に組み込むことにより、シールド材を覆ったり巻き付けたりする場合のように、端部に隙間が発生したり嵩張ったりすることがない。
【0063】
(3)ヒータ用電源線にノイズ除去フィルタを接続することにより、プラズマ生成によって発生した高周波ノイズがヒータ用電源線に接続された電装機器に伝わるのを防止することができるので、電装機器の誤動作を防止することができる。
【0064】
(4)ノイズ除去フィルタは耐熱性の制約によりヒータから離れた位置に設置する必要があり、ヒータ用電源線のヒータとノイズ除去フィルタとの間の区間から高周波ノイズが漏洩することがあったが、本実施形態においては、ヒータとノイズ除去フィルタとの間に設けられたヒータ用電源線の配線被覆部材の内部にシールド部材を組み込むことにより、その区間から高周波ノイズが漏洩するのを防止することができる。
【0065】
(5)補償導線の配線被覆部材にシールド部材を組み込むことにより、高周波ノイズが補償導線から電磁波として周囲に漏洩するのを防止することができるので、電装機器等の誤動作を防止することができる。
【0066】
(6)シールド部材を補償導線の内部に組み込むことにより、シールド材を覆ったり巻き付けたりする場合のように、端部に隙間が発生したり嵩張ったりすることがない。
【0067】
(7)補償導線にノイズ除去フィルタを接続することにより、プラズマ生成によって発生した高周波ノイズが補償導線に接続された電装機器に伝わるのを防止することができるので、電装機器の誤動作を防止することができる。
【0068】
(8)シールド部材をヒータとノイズ除去フィルタとの間に設けられた補償導線の配線被覆部材の内部に組み込むことにより、補償導線のヒータとノイズ除去フィルタとの間の区間から高周波ノイズが漏洩するのを防止することができる。
【0069】
(9)板金や金網によって高周波ノイズを遮蔽したり、配線にシールド材を巻き付けたりせずに済むので、高い密閉性を確保するための多量のねじ類や導電性パッキンの使用等を省略することができる。
【0070】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0071】
例えば、温度センサとしては熱電対を使用するに限らない。
【0072】
温度センサ補償導線のシールド部材は省略してもよいし、ヒータ用電源線のシールド部材は省略してもよい。
【0073】
温度センサ補償導線のノイズ除去フィルタは省略してもよいし、ヒータ用電源線のノイズ除去フィルタは省略してもよい。
【0074】
前記実施形態ではバッチ式縦形ホットウオール形プラズマ装置について説明したが、本発明は、電子ビーム励起プラズマを用いたプラズマ処理装置等にも適用することができるし、枚葉式プラズマ処理装置にも適用することができる。
【0075】
前記実施形態ではウエハに処理が施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【0076】
以下に、本発明の好ましい態様を付記する。
本発明の一態様によれば、次の基板処理装置が提供される。
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給系と、
前記ガス供給系より供給されるガスをプラズマで活性化させるプラズマ源と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内の温度を測定する温度センサと、
前記ヒータに接続されたヒータ用電源線と、
前記温度センサに接続された温度センサ用補償導線と、を有し、
前記ヒータ用電源線および前記温度センサ用補償導線は、導電性の配線を絶縁性の配線被覆部材で被覆した構成を有しており、前記ヒータ用電源線および/または前記温度センサ用補償導線の前記配線被覆部材には、前記プラズマによって発生する高周波ノイズをシールドするシールド部材が組み込まれていることを特徴とする基板処理装置。
好ましくは、前記シールド部材は、前記配線を全体的に覆うように設けられている。
また好ましくは、前記シールド部材は、前記配線を全体的に覆うように前記配線被覆部材の内部に設けられている。
また好ましくは、前記ヒータ用電源線には、前記プラズマによって発生する高周波ノイズを除去するノイズ除去フィルタが接続されており、前記シールド部材は、前記ヒータと前記ノイズ除去フィルタとの間に設けられた前記ヒータ用電源線の前記配線被覆部材に組み込まれている。
また好ましくは、前記温度センサ用補償導線には、前記プラズマによって発生する高周波ノイズを除去するノイズ除去フィルタが接続されており、前記シールド部材は、前記温度センサと前記ノイズ除去フィルタとの間に設けられた前記温度センサ用補償導線の前記配線被覆部材に組み込まれている。
【符号の説明】
【0077】
201…処理室、
232a…第1ガス供給管、241a…マスフローコントローラ、243a…バルブ、249a…第1ノズル(第1ガス供給系)、232e…第1不活性ガス供給管、241e…マスフローコントローラ、243e…バルブ(第1不活性ガス供給系)、
232d…第2ガス供給管、241d…マスフローコントローラ、243d…バルブ、249d…第2ノズル、237…バッファ室(第2ガス供給系)、232h…第2不活性ガス供給管、241h…マスフローコントローラ、243h…バルブ(第2不活性ガス供給系)、
269…第1の棒状電極、270…第2の棒状電極、275…電極保護管、272…整合器、273…高周波電源(プラズマ源)、
207…ヒータ、208…ヒータ用電源線、209…導電性配線、210…配線被覆部材、211…シールド部材、212…ノイズ除去フィルタ、213…高周波ノイズ、214…アース線、
261…アース線、262…ノイズ除去フィルタ、263…熱電対(温度センサ)、264…温度センサ用補償導線、265…導電性配線、266…配線被覆部材、268…シールド部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給系と、
前記ガス供給系より供給されるガスをプラズマで活性化させるプラズマ源と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内の温度を測定する温度センサと、
前記ヒータに接続されたヒータ用電源線と、
前記温度センサに接続された温度センサ用補償導線と、を有し、
前記ヒータ用電源線および前記温度センサ用補償導線は、導電性配線を絶縁性の配線被覆部材で被覆した構成を有しており、前記ヒータ用電源線および/または前記温度センサ用補償導線の前記配線被覆部材には、前記プラズマによって発生する高周波ノイズをシールドするシールド部材が組み込まれていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−151081(P2011−151081A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9367(P2010−9367)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】