説明

基板処理装置

【課題】 可燃性の処理流体又はその蒸気を基板に供給して処理を行う装置において、基板周辺からの排気を冷却することにより排気中の引火性のガスの濃度を低下することを可能にした基板処理装置を提供する。
【解決手段】 スピンチャック2に保持され液体が付着した基板Wの表面Wfに対し可燃性の処理流体であるIPAを供給することにより、基板Wを洗浄等する装置において、スピンチャック2及び基板Wから飛散して処理カップ201により受け止められ、スピンチャック周辺に浮遊する液体の微粒子を含む雰囲気を排気する排気液ライン202に排気冷却部203を介挿し、排気冷却部203に冷却用の冷媒を供給することにより排気液ライン202内を流れる排気を冷却し、排気に含まれる可燃性の処理流体の蒸気の濃度を低減する。これにより、装置内の可燃性の処理流体の蒸気の濃度を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」と記載する)を洗浄処理する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に代表されるデバイスの微細化、高機能化、高精度化に伴って基板表面に形成された微細なパターンを倒壊させずに、基板表面に付着しているパーティクル等の微小な汚染物質(以下単に「汚染物質」と記載する)を除去することが益々困難になっている。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の装置のように、基板表面に形成された微細パターンの間隙に脱イオン水(De Ionized Water。以下「DIW」と記載する)を浸入させた上でDIWを凍結し、パターンが倒壊しないように強化した後、DIWの凝固点以下に温度調整された有機溶媒であるイソプロピルアルコール(以下「IPA」と記載する)を液体のまま基板表面に吹き付けて洗浄を行う方法及び装置が提案されている。
【0004】
また、基板洗浄を行った後、基板に付着したDIWによるウォーターマークを防止しつつ乾燥を行う方法として、特許文献2に記載の装置が提案されている。この装置によれば、基板洗浄後、DIWが付着した基板に対しIPAを供給することにより、DIWとIPAを置換し、その後振り切ることによりウォーターマークのない乾燥を実現している。
【0005】
ここで、IPAの空気中における爆発限界濃度は2.5から12.0vol%であり、IPAを使用する装置では、雰囲気中のIPAの濃度を爆発限界濃度より可能な限り低くすることが求められる。
【0006】
一般的な基板洗浄装置の場合、ファンユニット等の手段を用いて装置の上側から下側へ向かう気流制御(ダウンフロー)が行われており、またIPAの使用量が少ないことも併せて、装置内部の雰囲気中のIPA濃度は低く抑えられることとなる。
【0007】
また、排気中には液体の微粒子が含まれているため、そのまま工場側の排気処理施設に排出することは好ましくない。従って、装置内に排気中の液滴を除去する槽(以下「気液分離槽」と記載する)を設け、排気中の液滴を除去した上で工場側の排気系統に排出する手法がとられている。
【0008】
しかし、廃液処理の利便性や装置内部の清浄性確保等の理由から、洗浄処理中に基板の周囲に飛散する液滴を受けて排出する部材を有し、飛散した処理流体の微粒子が含まれる排気とともに排気・廃液系統に排出する構造を有する基板洗浄装置の場合、上記液滴を受けて排出する部材は基板周辺に近接して配置され、上記気流制御の効果が小さく、また、IPAは揮発性が高いため、上記液滴を受けて排出する部材内部や気液分離槽に至る排気系統の配管内部でIPAが揮発し、排気中の雰囲気に占めるIPA濃度を高めることにつながる。
【0009】
このような問題を解消するため、装置内に気液分離槽等を設けず、有機溶媒を回収する構造を別途追加する特許文献3及び特許文献4のような装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−243981号公報
【特許文献2】特開2009−218376号公報
【特許文献3】特開2001−321601号公報
【特許文献4】特開2009−208038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術における基板処理装置では、有機溶媒を回収したとしても排気中のIPA等の揮発性の高い処理流体蒸気の濃度を十分に低下させる事ができなかった。一方、既存の装置に部品を追加する、あるいは別途大規模な回収装置を追加する事で処理流体蒸気の濃度を低下させることが考えられるが、設置スペースやコストの点で問題があった。
【0012】
この発明は上記課題にかんがみてなされたものであり、大規模な設備の追加や大幅な改造を要することなく、装置内にて排気を冷却し、排気中の処理流体の蒸気の濃度を低減する基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題を解決するため、請求項1にかかる発明は、液体が付着した基板を保持する基板保持手段と、基板に対し可燃性の処理流体を供給する処理流体供給手段と、基板保持手段周辺の雰囲気を排気する排気手段と、排気手段の中の排気を冷却する排気冷却手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項1の発明によれば、排気冷却手段により装置内部にて排気を冷却し、排気中に含まれる可燃性の処理流体の蒸気の濃度を低減することが可能となり、ひいては装置内の処理流体の蒸気の濃度を低減することが可能となる。また、装置の内に付帯的な排気処理装置を設ける必要がない。
【0015】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、基板に液体を供給する液体供給手段と、液体供給手段によって供給された基板上の液体を冷却ガス供給部からの凍結用気体によって凝固する凍結手段と、を更に備え、排気冷却手段は、排気手段の中の排気を冷却する排気冷却部と、凍結用気体を凍結手段又は排気冷却部のいずれかに供給する切り替え手段とより構成されることを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明によれば、基板表面の液体を凍結させるための気体を、排気冷却手段の冷媒としても使用するため、別途排気冷却用の冷媒を供給する手段を設ける必要がない。また、常時フレッシュな気体を循環しているため、基板表面へ気体を供給開始する時点で所望の温度の気体が供給可能となる。
【0017】
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、基板に液体を供給する液体供給手段と、液体供給手段によって供給された基板上の液体を低客ガス供給部からの凍結用気体によって凝固する凍結手段と、を更に備え、排気冷却手段は、排気手段の中の排気を冷却する排気冷却部と、ガス供給部から供給され凍結手段から吐出された凍結用気体を回収して排気冷却部に供給する冷媒回収手段とより構成されることを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明によれば、基板表面の液体を凍結させるための気体を、排気冷却手段の冷媒としても使用するため、別途排気冷却用の冷媒を供給する手段を設ける必要がない。また、基板表面の液体を凍結させる工程を実施していない時点でも、凍結手段から気体を吐出することとなるため、基板表面へ気体を供給開始する時点で所望の温度の気体が供給可能となる。
【0019】
また、凍結用窒素ガスが排気と直接混合するため、効率よく排気を冷却することが可能である。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、大規模な設備の追加や大幅な改造を要することなく、装置内にて排気を冷却することで、排気中の処理流体の蒸気の濃度を低減し、これにより装置内の可燃性の処理流体の濃度を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施の形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】基板処理装置のカバー内部の様子を示す図である。
【図3】排気冷却部の構成を示す概略断面図である。
【図4】図1の基板処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】第二の実施の形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す図である。
【図6】図5の基板処理装置の動作を示す模式図である。
【図7】図5の基板処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】第三の実施の形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第一実施形態>
図1は本発明の第一実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す図である。この基板処理装置1は半導体ウェハ等の基板Wの表面Wfに付着しているパーティクル等の汚染物質(以下「汚染物質」と記載する)を洗浄・除去する枚葉式の基板処理装置である。
【0023】
この基板処理装置1には、スピンチャック2と、処理カップ201と、遮断部材9と、が設けられている。スピンチャック2は、基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で基板Wを回転させるものである。処理カップ201はスピンチャック2をその内側に収容し、スピンチャック2からの飛散物等を受け止めて排気・排液するものである。遮断部材9は、スピンチャック2の上方に、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向して配置されている。
【0024】
上記スピンチャック2の中心軸21の上端部には、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0025】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。このスピンチャック2が本発明における「基板保持手段」として機能している。
【0026】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理等を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。なお、この実施形態では、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されており、表面Wfがパターン形成面となっている。
【0027】
処理カップ201は、スピンチャック2及び基板Wから飛散する液体を受け止め回収処理するためのものであり、略円筒形状となっている。これにより基板Wの処理に用いられた後の洗浄液である脱イオン水(De Ionized Water。以下「DIW」と記載する)を回収処理する。また、その上面には、基板Wが通過するための開口210が形成されている。この開口210は、回転中心A0を中心とする略円形のものである。
【0028】
処理カップ201の底部には、スピンチャック2周辺の雰囲気を、その中に含まれる液体の微粒子ごと排気(排気液)するための排気液ライン202が接続され、この排気液ライン202はさらに、排気に含まれる液体の微粒子を排気中から分離するための気液分離部204に接続されている。排気液ライン202は、処理カップ201と少なくとも4箇所で接続され、スピンチャック2の周囲に沿って略90度間隔で配置される。
【0029】
また、この排気液ライン202は冷却装置としての排気冷却部203を有する。図2は排気冷却部203の構造を示す正面断面図である。排気冷却部203は両端が閉じられた円筒状の外郭部203aと、外郭部203aの上端側の側面に接続された冷媒導入部203bと、同様に下端側の側面に接続された冷媒排出部203cとを有し、外郭部203aの中には排気及び液体が通過する排気液ライン202を構成する排気液管203dが挿通されている。
【0030】
図1に戻って、排気冷却部203に対して冷媒を貯蔵する冷媒供給部63が接続され、冷媒供給部63から図示しないポンプ等の供給手段により冷媒導入部203bに冷媒が供給され、冷媒排出部203cから排出された冷媒が冷媒供給部63に回収され、冷媒が循環するように構成される。
【0031】
冷媒導入部203bに供給された冷媒は、外郭部203aの内壁面と排気液管203cの外壁面との間の空間を通って冷媒排出部203cから排出される。この間、冷媒は排気液管203dの壁面を介して排気液管203dの中を通る排気に冷熱を伝導し排気の温度を低下させる。これにより、排気中の可燃性の処理流体の蒸気が凝結して液体となるため、排気中の処理流体の蒸気濃度を低下することができる。この排気冷却部203が本発明における「排気冷却手段」として機能している。
【0032】
排気冷却手段においては、冷媒として例えば摂氏−(マイナス)10度(℃)に冷却された窒素ガス、乾燥空気などの気体冷媒や、ハイドロフルオロカーボン等の液体冷媒が使用される。
【0033】
図1に戻って説明を続ける。気液分離部204は、排気液ライン202を介して導入される排気と排液を収容する処理槽から構成される。処理槽において下部に排液層が形成され、上部に排気層が形成され、気液分離部204で分離された排気は処理槽の上部に接続された排気ライン206を介して図示しない工場側の排気処理施設に、また排液は処理槽の下部に接続された排液ライン207を介して図示しない工場側の排液処理施設にそれぞれ排出される。スピンチャック2周辺の雰囲気は、気液分離部204の内部の排気が工場側の排気処理施設により強制的に排気されることにより、排気液ライン202を介して処理カップ201の底部から吸引されることにより排気される。この、排気液ライン202と気液分離部204が本発明における「排気手段」として機能している。
【0034】
上記遮断部材9は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。遮断部材9の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられる。この支持軸91は、水平方向に延びるアーム92により保持されている。
【0035】
また、アーム92には、遮断部材昇降機構94が接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接させ、逆に離間させる。具体的に、制御ユニット4は、遮断部材昇降機構94の動作を制御して、基板処理装置1に対して基板Wを搬入出させる際には、遮断部材9をスピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に上昇させる一方、基板Wに対して後述する洗浄工程、IPA置換工程、乾燥工程を行う際には、遮断部材9をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0036】
また、遮断部材9は遮断部材回転機構93と接続されており、制御ユニット4からの動作命令に応じて支持軸91の中心を通る鉛直軸周りに回転される。また、遮断部材回転機構93は、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させるように構成されている。
【0037】
支持軸91は中空になっており、その内部に処理流体供給管95が挿通されるとともに、当該処理流体供給管95にDIW供給管96が挿通されて、いわゆる二重管構造となっている。そして、DIW供給管96に対してDIW供給部61が接続されている。一方、二重管構造を形成する処理流体供給管95は後述する基板乾燥工程で使用する可燃性の処理流体としてのイソプロピルアルコール(以下「IPA」と記載する)を供給するためのIPA供給部64に接続されている。
【0038】
この処理流体供給管95及びDIW供給管96の下方端部は遮断部材9の開口に延設されるとともに、DIW供給管96の先端に吐出ノズル97が設けられている。そして、次に説明するように、基板表面Wfを洗浄する洗浄工程においてDIWを基板表面Wfに向けて供給し、またDIWとIPAを置換するIPA置換工程においてIPAを基板表面Wfに向けて供給する。このIPA供給部64と処理流体供給管95が本発明における「処理流体供給手段」として機能している。
【0039】
図3は図1において図示を省略する基板処理装置1の内部空間を形成するハウジングとしてのカバー300とチャックピン2、処理カップ201、遮断部材9との関係を示す図である。カバー300はチャックピン2、処理カップ201、遮断部材9等をその中に収めるように形成された筒状(円筒であっても角柱面であっても良い)となっている。
【0040】
カバー300の上方には気流制御のためのファンユニット301が設けられ、ファンユニット301はHEPAフィルタ302を介してカバー300内部に基板Wの被処理面側(上方)から裏面側(下方)へと向かう気流を発生させ、カバー300内の雰囲気をカバー300の下方に設けられた排気口303へ排気する。これにより、カバー300外へのIPA蒸気の流出を抑えるとともに、カバー300内のIPA蒸気の濃度を低減する。また、ファンユニット301からの気流の一部が処理カップ201へ流れると共に、処理カップ201からの液体の微粒子の逆流を抑えている。そして、カバー300内の雰囲気温度は基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内の雰囲気温度である24℃とほぼ同等の温度となる。
【0041】
次に上記のように構成された基板処理装置1の動作について図4を参照しながら説明する。図4は図1の基板処理装置1の動作のフローチャートである。この装置では、図1に示すように、基板搬入時(ステップS1)には、遮断部材9はスピンチャック2の上方の離間位置に退避して基板Wとの干渉を防止しており、基板Wが基板表面Wfを上方に向けた状態で装置1内に搬入され、スピンチャック2に保持される。尚、カバー300内のファンユニット301による気流制御は常時作動している。
【0042】
基板搬入が完了すると、制御ユニット4からの指令により、冷媒供給部63から排気冷却部203に対して冷媒として摂氏−(マイナス)10度(℃)の窒素ガスの供給が行われ、排気液ライン202内を通過する排気の冷却が開始される(ステップS2)。同時に、処理カップ201内の排気液も気液分離部204と排気液ライン202を介して工場側の排気処理施設により吸引が開始される。
【0043】
また、同じく制御ユニット4からの指令により、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される。続いて、制御ユニット4がチャック回転機構22を駆動してスピンチャック2とともに基板Wを、また遮断部材回転機構93を駆動して遮断部材9をそれぞれ例えば300rpmで回転させるとともに、DIW供給部61からDIWを供給し、ノズル97から基板表面Wfに吐出する。
【0044】
これにより、基板表面Wfに供給されたDIWは基板Wの回転に伴う遠心力の作用により基板Wの径方向外向きに均一に広げられるとともに、その一部が基板外に振り切られる。その結果、基板表面Wfの全面にわたってDIWが連続的に供給され、基板表面Wfの洗浄が行われる(ステップS3)。
【0045】
洗浄工程が完了すると、制御ユニット4からの動作指令により、DIW供給部61からのDIWの供給が停止され、IPA供給部64からのIPAの供給が開始され、基板表面Wfに吐出される。これにより、基板表面Wfに残留したDIWにIPAが溶解し、最終的にDIWがIPAにより置換される。この、基板表面Wf上のDIWとIPAを置換する工程が「IPA置換工程」(ステップS4)である。
【0046】
IPA置換工程が完了すると、制御ユニット4からの動作指令により、IPA供給部64からのIPAの供給が停止され、スピンチャック2の回転数が例えば1500rpmとされ、基板表面Wfに付着したIPAが振り切られて基板表面Wfが乾燥される(ステップS4)。
【0047】
このように、基板Wの乾燥前にDIWをより表面張力の低いIPAに置換することにより、基板表面Wfに形成された微細パターン間に働く応力を低減することができ、パターン倒壊を招くことなく乾燥することが可能となる。
【0048】
ここで、IPA置換工程と乾燥工程において、IPAが処理カップ201に排出され、処理カップ201では上方はファンユニット301によるダウンフローにより逆流を防止され、下方は排気液ライン202により気液分離部204に排気液される。この時、基板Wへの吐出時及び基板W上で揮発したIPA蒸気に加え、処理カップ201あるいは排気液ライン202の内壁に付着したIPAが揮発し、排気中のIPA蒸気の濃度を上昇させることとなる。しかし、その排気は排気冷却部203により排気液管203dの壁面を介して冷却され、IPA蒸気が凝結し、排気中のIPA蒸気の濃度が低減される。
【0049】
即ち、常温かつ常圧のカバー300内ではIPAは容易に雰囲気中に揮発するため、IPAは排気中に蒸気として浮遊することとなる。そして、処理カップ201を介して回収される排気は排気冷却部203により約−8℃に冷却されるので、IPA蒸気が液化され液体として気液分離部204に回収される。こうすることで、揮発性があり、特に可燃性の処理流体を使用したとしても、基板処理装置1の内部空間において雰囲気中のIPAの濃度を爆発限界濃度より低くすることを良好に行えるとともに、処理中の基板WにIPAが凝結して付着することも低減される。
【0050】
最後に、冷媒供給部63から排気冷却部203に対する冷媒の供給が停止され、排気液ライン202内を通過する排気の冷却が終了する(ステップS6)。また、スピンチャック2の回転が停止され、遮断部材9がスピンチャック2の上方の離間位置に退避した後に、カバー300から処理済の基板Wが搬出される(ステップS7)。
【0051】
このように、本実施形態によれば、基板処理を行っている間、排気冷却部203により排気を冷却するため、排気中のIPA蒸気の濃度を低下することが可能となる。そして、気液分離部204で使用済みのIPAを排液としてより多く分離でき、排液ライン207を介して回収することができる。また、排気液ライン202や気液分離部204のIPAから揮発したIPA蒸気が処理カップ201に逆流することも抑えることができる。また、基板処理装置1内部で排気を冷却するため、基板処理装置1の内に付帯的な排気処理装置を必要とせず、コストや設置面積を低減するのに有効である。
【0052】
尚、本実施形態においては冷媒供給部63から排気冷却部203に対する冷媒の供給の開始と停止のタイミングを、基板処理装置1の中で基板Wの処理の開始、終了のタイミングに合わせることとしたが、装置立ち上げ時に、冷媒供給部63から排気冷却部203への冷媒の供給を開始し、その後継続的に供給し続けることも可能である。また、IPAを吐出する直前に冷媒供給部63から排気冷却部203への供給を開始し、IPAの吐出停止後、所定の時間が経過したあとに冷媒の供給を停止するという構成をとることも可能である。即ち、排気液管203dの中を通る排気がIPAが凝結する温度に冷却されるのであれば冷媒の供給と停止を変更してもよい。
【0053】
また、本実施形態においては排気冷却部203は排気液ライン202の中を通る排気を間接的に冷却したが、排気冷却部203は冷媒供給部63からの冷媒を排気液ライン202の中に直接吐出して排気を冷却するように構成することも可能である。
【0054】
<第二実施形態>
次に、この発明にかかる基板処理装置の第二実施形態を説明する。図5は本発明の第二実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す図である。この第二実施形態が第一実施形態と大きく相違する点は、第一実施形態における冷媒供給部63の代わりに凍結用気体である窒素ガスを供給する冷却ガス供給部63を備え、加えて凍結用の窒素ガスを吐出するガス吐出部5と、冷却ガス供給部63からの窒素ガスをガス吐出部5または排気冷却部203に切り替えて供給する三方弁212と、を更に備える点である。なお、その他の構成は図1、図2及び図3に示す基板処理装置1と基本的に同一であるため、以下の説明では同一符号を付して構成説明を省略する。
【0055】
ガス吐出部5をスキャン駆動するための駆動源として、スピンチャック2の周方向外側にノズル駆動用の回転モータ51が設けられている。この回転モータ51には回転軸53が接続され、この回転軸53にはアーム55が水平方向に延びるように接続されており、このアーム55の先端にガス吐出ノズル57が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転モータ51が駆動されると、アーム55が回転軸53回りに揺動することとなる。
【0056】
図6は図5の基板処理装置1に装備されたガス吐出部5の動作を示す図である。ここで、同図(a)は概略正面図、同図(b)は概略平面図である。回転モータ51を駆動してアーム55を揺動させると、ガス吐出ノズル57は基板表面Wfに対向しながら、基板Wの回転中心側位置P51から基板Wの端縁位置P52に向かう同図(b)の移動軌跡T5に沿って移動する。ここで、回転中心側位置P51は基板Wの回転中心A0付近上空であり、端縁位置P52は基板Wの端縁付近上空であって、それぞれガス吐出ノズル57が基板表面Wfと対向する位置である。また、ガス吐出部5は基板Wの側方に退避した待機位置P53に移動可能となっている。
【0057】
ガス吐出部5に対して冷却ガス供給部63が接続されている。この冷却ガス供給部63は、制御ユニット4からの指令に応じて液体(DIW)の凝固点(摂氏0度(℃))よりも低温、例えば摂氏−(マイナス)20度(℃)の窒素ガスを供給する。ガス吐出ノズル57が基板表面Wfに対向配置されると、ガス吐出ノズル57から基板表面Wfに向けて局部的に前述の窒素ガスが冷却ガスとして吐出される。
【0058】
したがって、ガス吐出ノズル57から窒素ガスを吐出させた状態で、制御ユニット4がチャック回転機構22を駆動させ、基板Wを回転させながらガス吐出ノズル57を移動軌跡T5に沿って移動させることで、窒素ガスを基板表面Wfの全面にわたって供給できる。これにより、後述するように基板表面Wfに液体の膜11が形成されていた場合、液体の膜11の全体を凝固させて基板表面Wfの全面に液体の凝固体13を生成することができる。この冷却ガス供給部63とガス吐出部5が本発明における「凍結手段」として機能している。
【0059】
また、ガス吐出部5と冷却ガス供給部63を接続する配管には三方弁212が介挿されており、冷却ガス供給部63からの凍結用の窒素ガスをガス吐出部5と排気冷却部203のいずれかに切り替えて供給可能としている。この三方弁212が本発明の「切り替え手段」として機能している。よって、窒素ガスは三方弁212によって切り替えられて排気冷却部203に供給されることで排気冷却部203の冷媒として機能する。
【0060】
排気冷却部203は第一実施形態と同様図2に示す構成であり、冷却ガス供給部63から三方弁212を経由して冷媒導入部203bに供給された凍結用の窒素ガスは、外郭部203aの内壁面と排気液管203cの外壁面との間の空間を通って冷媒排出部203cから排出される。冷媒排出部203cから排出された窒素ガスは冷却ガス供給部63に回収され、窒素ガスが循環するように構成される。
【0061】
三方弁212は、後述する凝固工程において基板表面Wfに窒素ガスを供給する場合には、冷却ガス供給部63からの窒素ガスをガス吐出部5に供給するように構成される。また、凝固工程以外の工程を実行する場合、すなわち基板表面Wfに窒素ガスを供給しない場合には、冷却ガス供給部63からの窒素ガスを排気冷却部203に供給するように構成される。よって、この排気冷却部203と冷却ガス供給部63からの窒素ガスを排気冷却部203への供給に切り替える三方弁212が、本発明の「排気冷却手段」として機能している。
【0062】
ここで、冷却ガス供給部63からの窒素ガスは三方弁212までの配管経路については常時新しい窒素ガスが供給され続けることとなるため、窒素ガスが配管等の中に滞留することにより、外部からの熱を吸収して温度が上昇するという問題は解消される。従って、次回基板表面Wfに窒素ガスを供給する場合においても所望の温度の窒素ガスが供給されるため、温度上昇した窒素ガスが供給されることによる凝固工程の凍結時間の遅延は生じない。
【0063】
尚、配管内に滞留する窒素ガスの量を減少するため、三方弁212の位置は冷却ガス供給部63よりガス供給部5に近い位置とすることが望ましい。
【0064】
装置立ち上げ時、冷却ガス供給部63からの窒素ガスの供給が開始され、三方弁212は窒素ガスを排気冷却部203に供給するように構成される。
【0065】
次に上記のように構成された基板処理装置1の動作について図7を参照しながら説明する。図7は図5の基板処理装置1の動作のフローチャートである。この装置1では、図5に示すように、基板搬入時(ステップS1)には、遮断部材9はスピンチャック2の上方の離間位置に退避して基板Wとの干渉を防止しており、基板Wが基板表面Wfを上方に向けた状態で装置1内に搬入され、スピンチャック2に保持される。
【0066】
基板搬入が完了すると、制御ユニット4からの指令により遮断部材9が対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される。続いて、制御ユニット4がチャック回転機構22を駆動してスピンチャック2とともに基板Wを、また遮断部材回転機構93を駆動して遮断部材をそれぞれ例えば300rpmで回転させるとともに、DIW供給部61からDIWを供給し、ノズル97から基板表面Wfに吐出する。
【0067】
これにより、基板表面Wfに供給されたDIWは基板Wの回転に伴う遠心力の作用により基板Wの径方向外向きに均一に広げられるとともに、その一部が基板外に振り切られる。その結果、基板表面Wfの全面にわたって液膜の厚みが均一にコントロールされ、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)11が形成される(ステップS2)。
【0068】
液体供給工程が終了すると、DIW供給部61からのDIWの供給が停止され、スピンチャックの回転数を例えば100rpmとし、遮断部材9がスピンチャック2の上方の離間位置に退避される。また、三方弁212が冷却ガス供給部63からの窒素ガスをガス吐出部5へ供給する側へと切り替えられる。更に、ガス吐出部5が旋回されてガス吐出ノズル57が凍結用窒素ガスの供給開始位置である基板Wの回転中心位置P51に移動される。
【0069】
そして、回転する基板Wの表面Wfに向けてガス吐出ノズル57から窒素ガスを吐出させながらガス吐出ノズル37を徐々に基板Wの端縁位置P52に向けて移動させる。これにより、図6に示すように基板表面WfのDIWの液膜11が凝固した領域(凝固領域)が基板表面Wfの中央部から周縁部へと広げられ、基板表面Wfの全面にDIWの凝固体13が生成される(図6(b))。この、基板表面Wf上のDIWの液膜11を凝固させる工程が「凝固工程」(ステップS3)である。
【0070】
このようにして凝固工程を実行すると、基板表面Wfと汚染物質の間に入り込んだ液膜の体積が増加(摂氏0度(℃)の水が摂氏0度(℃)の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する)し、汚染物質が微小距離だけ基板表面Wfから離れる。その結果、基板表面Wfと汚染物質との間の付着力が低減され、さらには汚染物質が基板表面Wfから脱離することとなる。
【0071】
凝固工程が完了すると、制御ユニット4からの動作指令により、三方弁212が、冷却ガス供給部63からの窒素ガスを排気冷却部203へ供給する側に切り替えられ、ガス吐出部5が旋回されガス吐出ノズル57が待機位置P53に移動される。また、遮断部材9が対向位置まで降下される。
【0072】
そして、DIW供給部61からDIWを供給し、ノズル97から基板表面Wfに吐出する。これにより、基板表面Wfの凝固体13が融解する。また、基板表面Wfに供給されたDIWによって基板表面Wfから汚染物質を含む凝固体13が除去され、基板W外に排出される(ステップS4)。つまり、汚染物質は基板表面Wfに対する付着力が低下した状態あるいは基板表面Wfから脱離した状態にあることから凝固体13を基板表面Wfから除去することによって基板表面Wfから汚染物質を容易に除去することができる。
【0073】
洗浄工程が完了すると、制御ユニット4からの動作指令により、DIW供給部61からのDIWの供給が停止され、IPA供給部64からのIPAの供給が開始され、基板表面Wfに吐出される。これにより、基板表面Wfに残留したDIWにIPAが溶解し、最終的にDIWがIPAにより置換される。この、基板表面Wf上のDIWとIPAを置換する工程が「IPA置換工程」(ステップS5)である。
【0074】
IPA置換工程が完了すると、制御ユニット4からの動作指令により、IPA供給部64からのIPAの供給が停止され、スピンチャック2の回転数が例えば1500rpmとされ、基板表面Wfに付着したIPAが振り切られて基板表面Wfが乾燥される(ステップS6)。
【0075】
ここで、IPA置換工程と乾燥工程において、IPAが処理カップ201に排出され、基板Wへの吐出時及び基板W上で揮発したIPA蒸気に加え、処理カップ201あるいは排気液ライン202の内壁に付着したIPAが揮発し、排気中のIPA蒸気の濃度を上昇させることとなる。しかし、その排気は凍結用の窒素ガスが冷媒として供給される排気冷却部203により排気液管203dの壁面を介して冷却され、IPA蒸気が凝結し、排気中のIPA蒸気の濃度が低減される。
【0076】
最後に、スピンチャック2の回転が停止され、遮断部材9がスピンチャック2の上方の離間位置に退避した後に、カバー300から処理済の基板Wが搬出される(ステップS7)。
【0077】
本実施形態によれば、基板表面WfのDIWを凍結させるための窒素ガスを、DIWの凍結のためだけでなく、排気冷却部203に供給して排気の冷却にも使用するため、排気冷却用の冷媒を供給する手段を別途設ける必要がない。
【0078】
また、凍結用の窒素ガスは、配管の中に長時間滞留させておくと配管外部の雰囲気などから熱を吸収し温度が上昇して、次回基板表面に吐出した場合に所望の温度の凍結用窒素ガスが吐出されない。このため、凝固工程を実施していない場合においても凍結用窒素ガスを吐出して常に配管内の凍結用窒素ガスの温度を所定の温度に保つ必要がある。
【0079】
本実施形態によれば、凝固工程を実施していない場合は三方弁212により窒素ガスが排気冷却部203に継続的に流されることとなるため、上記の問題は生じず、次回凝固工程を実施する場合においても、すぐに所望の温度の窒素ガスを吐出することができる。
【0080】
尚、本実施形態においては、装置立ち上げ時に冷却ガス供給部63から排気冷却部203に対する窒素ガスの供給を開始し、その後継続的に供給し続けることとしたが、基板処理装置1の中で基板Wの処理を開始する時点で冷却ガス供給部63から排気冷却部203への供給を開始し、基板Wの処理を終了する時点で供給を停止する構成とすることも可能である。また、IPAを吐出する直前に冷却ガス供給部63から排気冷却部203への供給を開始し、IPA吐出停止後所定の時間が経過したあとに供給を停止するという構成をとることも可能である。
【0081】
また、上記実施形態においては排気冷却部203は排気液ライン202の中を通る排気を間接的に冷却したが、冷却ガス供給部63からの窒素ガスを排気液ライン202の中に直接吐出して排気を冷却するように排気冷却部203を構成することも可能である。
【0082】
また、IPAはIPA置換工程においてDIWと置換するためのみに使用するのではなく、例えば洗浄工程において基板表面Wfに供給し、DIWの凝固体を排除することにも使用可能である。
【0083】
<第三実施形態>
次に、この発明にかかる基板処理装置の第三実施形態を説明する。図8は本発明の第三実施形態に係る基板処理装置110の概略構成を示す図である。この第三実施形態が第二実施形態と大きく相違する点は、第二実施形態における三方弁212に替えて冷却ガス受け部211と逆流防止弁221を備える点である。なお、その他の構成は図3、図5、図6及び図7に示す基板処理装置1と基本的に同一であるため、以下の説明では同一符号を付して構成説明を省略する。
【0084】
冷却ガス受け部211はガス吐出部5が待機位置P53にある状態でのガス吐出ノズル57直下に設けられている。冷却ガス受け部211は配管を介して全ての排気液ライン202に接続部223で接続されている。接続部223は冷却ガス受け部211で回収された冷却ガスを排気液ライン202の中を流れる排気に合流させるように構成される。従って、排気液ライン202に直接溶接などの手段で接続しても良く、また、配管部品等で接続しても良い。
【0085】
冷却ガス受け部211と排気液ライン202を接続する配管には逆流防止弁221が介挿されており、排気液ライン202から冷却ガス受け部211へ排気が逆流することを防止している。この、接続部223と逆流防止弁221と冷却ガス受け部211とガス吐出部5が、本発明における「排気冷却手段」として機能している。
【0086】
逆流防止弁211が開の状態では、気液分離部204の内部の排気が工場側の排気処理施設により強制的に排気されることにより、排気液ライン202を介して接続された冷却ガス受け部211から吸引されることとなる。冷却ガス受け部211の直上でガス吐出ノズル57から凍結用窒素ガスが吐出されれば、冷却ガス受け部211に回収され、排気液ライン202の内部を流れる排気と混合されることとなる。この、冷却ガス受け部211と逆流防止弁221と気液分離部204を介して冷却ガス受け部211を吸引する構造が本発明における「冷媒回収手段」として機能している。
【0087】
装置110立ち上げ時、ガス吐出部5は待機位置P53に位置決めされ、冷却ガス供給部63からガス吐出部5に−20℃に冷却された窒素ガスが供給される。また、逆流防止弁221は開の状態とされ、冷却ガス受け部211で回収された窒素ガスが排気液ライン202の内部を流れる排気と混合される。
【0088】
この構成によれば、冷却ガス供給部63とガス吐出部5の間で長時間窒素ガスが滞留することがなく、次回基板表面Wfに凍結用として窒素ガスを供給する際に所望の温度の窒素ガスを吐出開始時から吐出することができるため、凝固工程において凍結に要する時間が遅延するということはない。
【0089】
この第三実施形態においても、第二実施形態と同様にして基板Wの搬入(ステップS1)、液体供給工程(ステップS2)が行われる。
【0090】
液体供給工程(ステップS2)の後、逆流防止弁221が閉の状態とされ、その後凝固工程(ステップS3)が行われる。
【0091】
凝固工程(ステップS3)が行われた後、逆流防止弁221が開の状態とされる。また、ガス吐出部5が待機位置P53に位置決めされ、窒素ガスが冷却ガス受け部211で回収され、排気液ライン202の内部を流れる排気と混合される。その後、洗浄工程(ステップS4)、IPA置換工程(ステップS5)、乾燥工程(ステップS6)が行われ、最後に、スピンチャック2の回転が停止され、遮断部材9がスピンチャック2の上方の離間位置に退避した後に、カバー300から処理済の基板Wが搬出される(ステップS7)。
【0092】
ここで、IPA置換工程と乾燥工程において、IPAが処理カップ201に排出され、基板Wへの吐出時及び基板W上で揮発したIPA蒸気に加え、処理カップ201あるいは排気液ライン202の内壁に付着したIPAが揮発し、排気中のIPA蒸気の濃度を上昇させることとなる。しかし、その排気は接続部223から吐出される窒素ガスと混合されることにより冷却されるため、排気中のIPA蒸気の濃度を低減するのに有効である。
【0093】
本実施形態によれば、基板表面WfのDIWを凍結させるための凍結用の窒素ガスを、DIWの凍結のためだけでなく、接続部223に供給して排気の冷却にも使用するため、排気冷却用の冷媒供給手段を別途設ける必要がない。
【0094】
また、窒素ガスが排気液ライン202の中を流れる排気と直接混合するため、効率よく排気を冷却することが可能である。
【0095】
また、窒素ガスは、配管の中に長時間滞留させておくと配管外部にある雰囲気などから熱を吸収し温度が上昇して、次回基板表面に吐出した場合に所望の温度の窒素ガスが吐出されない。このため、凝固工程を実施していない場合においても窒素ガスを吐出して常に配管内の窒素ガスの温度を所定の温度に保つ必要がある。
【0096】
本実施形態によれば、凝固工程を実施していない場合はガス吐出部5から窒素ガスが継続的に吐出されることとなるため、上記の問題は生じず、次回凝固工程を実施する場合においても、すぐに所望の温度の窒素ガスを吐出することができる。
【0097】
尚、本実施形態においては、装置110立ち上げ時に冷却ガス供給部63からガス吐出部5に対する窒素ガスの供給を開始し、その後継続的に供給し続けることとして、ガス吐出部5が待機位置P53に位置決めされた時点で逆流防止弁221を開の状態とし、冷却ガス受け部211で回収して排気冷却部203へ供給することとしたが、基板処理装置110の中で基板Wの処理を開始する時点で冷却ガス供給部63からガス吐出部5への供給を開始し、ガス吐出部5が待機位置P53に位置決めされている間に排気冷却部203へ窒素ガスを供給し、基板Wの処理を終了する時点で冷却ガス供給部63からガス吐出部5への窒素ガスの供給を停止する構成としてもよい。
【0098】
また、IPAを吐出する直前に冷却ガス供給部63からガス吐出部5への窒素ガスの供給を開始し、冷却ガス受け部211で回収して排気冷却部203への供給を開始し、IPA吐出停止後所定の時間が経過したあと窒素ガスの供給を停止するという構成としてもよい。
【0099】
また、IPAはIPA置換工程においてDIWと置換するためのみに使用するのではなく、例えば洗浄工程において基板表面Wfに供給し、DIWの凝固体を排除することにも使用可能である。
【0100】
また、接続部223を処理カップ201の底部と気液分離部204をつなぐ排気液ライン202に設けているが、接続部223を他の場所に設けることも可能である。
【0101】
例えば、処理カップ201内に設けることも可能である。この場合、スピンチャック2から振り切られた微細な液滴等が基板Wに再付着することを防止するため、下向きの気流を乱さない位置に設ける必要があり、処理カップ201の底部と排気液ライン202が接合する部分の近傍に設けることが望ましい。
【0102】
更に、接続部223を気液分離部204内に設けることも可能である。この場合、排気が有効に冷却される前に工場側の排気処理施設に流れてしまうことを防止するため、気液分離部204と排気液ライン202の接続部分付近に設けることが望ましい。
【0103】
<その他>
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においてはIPA置換工程においてDIWと置換するために可燃性の処理流体として、液体のIPAを使用していたが、IPAを気化させて処理流体としてのIPAの蒸気としてDIWの液膜に供給することも可能である。
【符号の説明】
【0104】
2 スピンチャック(基板保持手段)
5 凍結用窒素ガス吐出部(凝固手段)
9 遮断部材
11 液体の膜
13 凝固体
22 チャック回転機構
51 凍結用窒素ガス吐出部駆動用回転モータ(凝固手段)
53 凍結用窒素ガス吐出部回転軸(凝固手段)
55 凍結用窒素ガス吐出部アーム(凝固手段)
95 処理流体供給管(処理流体供給手段)
96 液体供給管
201 処理カップ
202 排気液ライン
203 冷却ガス混合部(排気冷却手段)
204 気液分離部
P51 (基板の)回転中心位置
P52 (基板の)端縁位置
W 基板
Wf 基板表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が付着した基板を保持する基板保持手段と、
前記基板に対し可燃性の処理流体を供給する処理流体供給手段と、
前記基板保持手段周辺の雰囲気を排気する排気手段と、
前記排気手段の中の排気を冷却する排気冷却手段と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板に液体を供給する液体供給手段と、
前記液体供給手段によって供給された基板上の液体を冷却ガス供給部からの凍結用気体で凝固する凍結手段と、
を更に備え、
前記排気冷却手段は、
前記排気手段の中の排気を冷却する排気冷却部と、
前記凍結用気体を前記凍結手段又は前記排気冷却部のいずれかに供給する切り替え手段とより構成されることを特徴とした基板処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板に液体を供給する液体供給手段と、
前記液体供給手段によって供給された基板上の液体を冷却ガス供給部からの凍結用気体で凝固する凍結手段と、
を更に備え、
前記排気冷却手段は、
前記排気手段の中の排気を冷却する排気冷却部と、
前記冷却ガス供給部から供給され凍結手段から吐出された前記凍結用気体を回収して前記排気冷却部に供給する冷媒回収手段とより構成されることを特徴とした基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−159665(P2011−159665A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17898(P2010−17898)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】