説明

基板処理装置

【課題】 基板を回転させながら所定の処理を施す基板処理装置において、基板を支持部材に均一に押圧させることができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】 スピンベース30の周縁部には、立設された支持ピン310が複数個設けられている。そして、支持ピン310に基板Wが略水平状態で支持されている。基板Wの表面Wfに遮断部材50を近接して対向配置された状態で、ガス吐出口502から所定の角度で基板Wにガスを吐出する。これにより、基板Wはその上面側に所定の角度で供給されるガスによって、支持ピン310に押圧されて確実にスピンベース30に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の基板を回転させながら基板の表面に処理液を供給して該基板表面に対して洗浄処理などの処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の基板処理装置として、回転自在に設けられた円盤状の回転部材上に半導体ウエハ等の基板を支持し、基板を回転させながら洗浄処理などの所定の処理を施す基板処理装置がある。例えば、特許文献1に記載の基板処理装置では、スピンベース(回転部材)の周縁部に少なくとも3個以上の支持部材が上方に向けて突設されている。これらの支持部材は基板の下面に当接することで基板をスピンベースから離間して支持する。また、基板の上方には遮断部材が対向して配置され、遮断部材と基板の上面との間に形成される空間に、基板に対して垂直にガスが供給されることで基板が支持部材に押圧されてスピンベースに保持される。そして、スピンベースが回転されると、支持部材に押圧された基板は支持部材と基板との間に発生する摩擦力で支持部材に支持されながらスピンベースとともに回転する。この装置では、このように基板をスピンベースに保持させながら回転させることで、基板の端面に接触して基板を保持する保持部材に起因して発生する不具合を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−32891
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記装置のように、基板と遮断部材との間に形成される空間にガスを供給することにより、基板を支持部材に押圧しスピンベースに保持させる方式では、比較的基板が高速回転で処理されるスピンドライ時等に基板を支持部材に確実に保持させるため、基板にかかる遠心力よりも基板と支持部材との間に発生する摩擦力を高くする必要性から、大量の窒素ガスを供給しなければならない。その結果、窒素ガスの消費量が増大してしまう。このため、ランニングコストの上昇を抑える観点から、基板の上面に供給する窒素ガスの消費量を抑制し、かつ、スピンドライ時等に基板を支持部材に確実に保持させることができる押圧力を発生させる必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板を回転させながら所定の処理を施す基板処理装置において、基板を支持部材に押圧保持させる際にガスの供給量を抑えて均一に押圧させることができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、基板を鉛直軸周りに略水平姿勢で回転させながら基板を保持する基板保持部材と、基板保持部材を回転させる回転手段と、基板保持部材の周縁部に突設され、基板の下面に当接して基板を下方から支持するための複数の支持部材と、基板を支持部材に押圧させて基板保持部材に保持させる押圧手段と、を備え、押圧手段は、基板の上面と対向する基板対向面を有する対向部材と、基板対向面に気体供給口を備え、基板に気体を導くための気体供給路と、気体供給路を介して、気体供給口から基板に気体を供給するための気体供給部とを有し、気体供給口が基板保持部材の回転中心から外方に離れて位置し、気体供給路は、気体供給口から基板保持部材の回転中心から外方にいくにしたがい基板保持部材から離れるように傾斜して形成され、気体供給口から吐出される気体が気体供給口より基板保持部材の回転中心に向かって吐出されることを特徴とする。
【0007】
このように構成された発明では、気体供給路を基板保持部材の回転中心から外方にいくにしたがい基板保持部材から離れるように傾斜させて形成する、すなわち、気体供給路を介して基板に供給される気体が基板の外周側から回転中心に向かって供給されることで、基板の上面と対向部材の基板対向面との間に形成される間隙空間の気体が遠心力で外へ出にくくなり、間隙空間の内部圧力が増すことにより押圧力の低下が起こりにくい。
【0008】
したがって、基板は回転中の径方向に飛び出すことなく、基板保持部材に保持されて回転する。よって、基板の外周端部に接触して基板を保持する保持部材(例えば、チャックピン等)を不要とすることができる。このため、基板に液を供給して行う処理の場合、基板の外周端部付近の気流を乱す要因がないことから処理液ミストの基板表面側への巻き込みを軽減することができる。これにより、基板表面への処理液の再付着を防止することができる。
【0009】
また、気体供給路を形成する傾斜が、基板に対して45度以上90度未満となるように対向部材に形成することで、基板を支持部材に押圧する力を大きくすることができる。これにより、気体供給部から供給する気体の供給量をさらに減らしても、基板を基板保持部材に確実に保持させることができる。また、気体の供給量が減ることで基板処理装置のランニングコストも減らすことができる。
【0010】
また、気体供給路を形成する傾斜が、基板に対して略60度となるように対向部材に形成することで、基板を支持部材に押圧する力をさらに大きくすることができる。これにより、気体の供給量をさらに減らすことができ基板処理装置のランニングコストをより減らすことができる。
【0011】
また、気体供給口を対向部材の周縁部に等角度間隔で複数個設けることで、基板に対し気体の吐出圧の均一性を高くすることができ、より確実に基板を支持部材に押圧することができるので、基板保持部材に基板を確実に保持させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対向部材に形成された気体供給路を介して気体供給口から供給される気体が、基板に対して最適な角度で供給されるため、基板を支持部材に押圧し、基板を基板保持部材に確実に保持させるとともに、気体の消費量を削減できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明にかかる基板処理システムの概略図である。
【図2】この発明にかかる基板処理装置の一実施例形態を示す側面図である。
【図3】この発明にかかる基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。
【図4】この発明にかかる基板処理装置の要部を示す側面図である。
【図5】この発明にかかる基板処理装置の遮断部材の底面図である。
【図6】図3の基板処理装置の部分拡大図である。
【図7】基板に対し吐出される気体の角度と押圧力との関係を示すグラフである。
【図8】図2の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】この発明にかかる基板処理装置の他の実施例形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はこの発明を実施することができる一例を示す基板処理システムの概略図である。より詳しくは、図1(a)は基板処理システムを上面から見た概略図であり、図1(b)は基板処理システムを側面から見た概略図である。この基板処理システム1は、半導体ウエハ等の基板Wに対して処理液や処理ガスなどによる処理を施すための枚葉式の基板処理システムとして基板処理装置を複数備える基板処理システムである。この基板処理システム1は、基板Wに対して処理を施す基板処理部PPと、この基板処理部PPに結合されたインデクサ部IDと、処理流体(液体または気体)の供給/排出のための構成を収容した処理流体ボックス17,19とを備えている。インデクサ部IDは、基板Wを収容するためのカセットC(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)など)を複数個保持することができるカセット保持部2と、カセット保持部2に保持されたカセットCにアクセスして、未処理の基板WをカセットCから取り出したり、処理済の基板WをカセットCに収納したりするためのインデクサロボット4とを備えている。
【0015】
各カセットCには、複数枚の基板Wが「ロット」という一単位で収容されている。複数枚の基板Wはロット単位で種々の基板処理システム内に搬送され、各基板処理装置でロットを構成する各基板Wに対して同一種類の処理が施される。各カセットCは、複数枚の基板Wを微小な間隔をあけて上下方向に積層して保持するための複数段の棚(図示省略)を備えており、各段の棚に1枚ずつ基板Wを保持することができるようになっている。各段の棚は、基板Wの下面の周縁部に接触し、基板Wを下方から保持する構成となっており、基板Wは表面(パターン形成面)を上方に向け、裏面を下方に向けた略水平な姿勢でカセットCに収容されている。
【0016】
基板処理部PPは、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット5と、この基板搬送ロボット5が取り付けられたフレーム3とを有している。このフレーム3には、図1(a)に示すように、水平方向に複数個(この実施形態では4個)の処理ユニット10,11,13,15が基板搬送ロボット5を取り囲むように搭載されている。この実施形態では、例えば半導体ウエハのようなほぼ円形の基板Wに対して所定の処理を施す処理ユニットがフレーム3に搭載されている。また、図1(b)に示すように、各処理ユニットの下段にはそれぞれもう1つの処理ユニットが設置されている。図1(b)では、処理ユニット13の下段に設けられた処理ユニット13Bおよび処理ユニット15の下段に設けられた処理ユニット15Bを図示しているが、処理ユニット10および11の下段にも同様にもう1つずつの処理ユニット10Bおよび11Bが設けられ、この基板処理システムでは計8個の処理ユニットが4個ずつ2段に積層されてフレーム3に搭載されている。
【0017】
基板搬送ロボット5は、インデクサロボット4から未処理の基板Wを受け取ることができ、かつ処理済の基板Wをインデクサロボット4に受け渡すことができる。より具体的には、例えば、基板搬送ロボット5は、該基板処理部PPのフレーム3に固定された基台部と、この基台部に対して昇降可能に取り付けられた昇降ベースと、この昇降ベースに対して鉛直軸周りの回転が可能であるように取り付けられた回転ベースと、この回転ベースに取り付けられた一対のハンドとを備えている。一対の基板保持ハンドは、それぞれ、上記回転ベースの回転軸線に対して近接/離間する方向に進退可能に構成されている。このような構成により、基板搬送ロボット5は、インデクサロボット4および処理ユニット10,11,13,15のいずれかに対して基板保持ハンドを向け、その状態で基板保持ハンドを進退させることができ、これによって、基板Wの受け渡しを行うことができる。
【0018】
インデクサロボット4は、指定されたカセットCから未処理の基板Wを取り出して基板搬送ロボット5に受け渡すとともに、基板搬送ロボット5から処理済の基板Wを受け取ってカセットCに収容する。処理済の基板Wは該基板Wが未処理の状態のときに収容されていたカセットCに収容されてもよい。また、未処理の基板Wを収容するカセットCと処理済の基板Wを収容するカセットCとを分けておいて、未処理の状態のときに収容されていたカセットCとは別のカセットCに処理済の基板Wが収容されるように構成してもよい。
【0019】
次に、上記した基板処理システム1に搭載される処理ユニットを構成する基板処理装置の実施形態について説明する。なお、図1の基板処理システム1では、8個の処理ユニットが搭載されているが、これらの処理ユニットはいずれも以下に説明する処理ユニット10と同一の構造とすることができる。
【0020】
図2は、この発明にかかる基板処理装置100の一実施形態を示す側面図である。図3は図2の基板処理装置100の主要な制御構成を示すブロック図であり、図4は図2の基板処理装置100の要部を示す側面図である。
【0021】
基板処理装置100は、基板表面Wfの周縁部および基板裏面Wbからメタル層やフォトレジスト層などの薄膜をエッチング除去する装置である。具体的には、基板表面Wfのみに薄膜が形成されている場合には、基板表面Wfの周縁部にフッ酸、塩酸等の薬液およびDIW(deionized water:脱イオン水)などのリンス液(以下、薬液およびリンス液を総称して「処理液」という)を供給して薄膜をエッチング除去するとともに、基板裏面Wbに処理液を供給して裏面Wbを洗浄する。また、基板Wの表裏面Wf,Wbに薄膜が形成されている場合には、基板表面Wfの周縁部および基板裏面Wbに処理液を供給して薄膜をエッチング除去する基板処理装置である。
【0022】
基板処理装置100は、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック8と、スピンチャック8に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材50と、スピンチャック8に保持された基板Wの下面(裏面Wb)の中央部に向けて処理液を供給する裏面処理ノズル37と、基板表面Wf側からスピンチャック8に保持された基板Wの表面周縁部に薬液を供給する薬液吐出ノズル20と、基板Wの表面周縁部にリンス液を供給するリンス液吐出ノズル40とを備え、スピンチャック8の下方は筒状のカバー部材72に包囲されている。
【0023】
カバー部材72の周囲には、受け部材71が固定的に取り付けられている。カバー部材72の外壁面と受け部材71の内壁面との間の空間は排液槽73を構成しており、排液槽73の底部には、回収ドレイン75に連通接続された排液口73aが設けられている。そして、回収ドレイン75から排液された処理液(薬液およびリンス液)は必要に応じて再利用または廃棄される。
【0024】
また、排液槽73の上方には、スピンチャック8及び該スピンチャック8に保持された基板Wを包囲するように筒上の飛散防止カップ70が昇降自在に設けられている。この飛散防止カップ70は、基板Wに供給され該基板Wから除去された処理液が飛散するのを防止するために設けられている。すなわち、飛散防止カップ70を上方位置(図2の実線で示す位置)に位置させることでスピンチャック8及び該スピンチャック8に保持された基板Wを側方位置から取り囲み、基板Wに供給され飛散する処理液を補集可能となっている。一方、図示しない搬送手段が未処理の基板Wをスピンベース30上の支持ピン310に載置したり、処理済の基板Wを支持ピン310から受け取る際には、下方位置(図2の破線で示す位置)に駆動される。
【0025】
スピンチャック8では、中空の回転支軸35がモータを含むチャック回転機構110の回転軸に連結されており、チャック回転機構110の駆動により略鉛直軸A0を中心に回転可能となっている。この回転支軸35の上端部にはスピンベース30が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット7からの動作指令に応じてチャック回転機構110を駆動させることによりスピンベース30が略鉛直軸A0を中心に回転する。このスピンベース30の上面30aには、基板Wの下面に当接して基板Wを下方から支持するための支持ピン310が上向きに突設されている。支持ピン310の本数は限定されないが、例えば、等角度間隔で3本以上設けることにより、基板Wを水平かつ安定して支持することが可能となる。このように、実施形態では、スピンベース30が本発明の「基板保持部材」に相当し、支持ピン310が本発明の「支持部材」に相当し、遮断部材50が本発明の「対向部材」に相当し、回転支軸35とチャック回転機構110が本発明の「回転手段」として機能している。
【0026】
中空の回転支軸35には処理液供給管31が挿通されており、その上端に裏面処理ノズル37が結合されている。処理液供給管31は薬液供給ユニット130およびリンス液供給ユニット150と接続されており、薬液およびリンス液が選択的に供給される。このため、制御ユニット7からの供給指令が薬液供給ユニット130に与えられることで裏面処理ノズル37から基板裏面Wbに向けて薬液が供給されて基板裏面Wbに対してエッチング処理が実行される。また、制御ユニット7からの供給指令がリンス液供給ユニット150に与えられることで裏面処理ノズル37から基板裏面Wbに向けてリンス液が供給されて基板裏面Wbに対してリンス処理が実行される。このように、該裏面処理ノズル37を介して基板裏面Wbに処理液を供給して裏面洗浄処理を実行可能となっている。
【0027】
また、回転支軸35の内壁面と処理液供給管31の外壁面との隙間は環状のガス供給路33を形成している。このガス供給路33はガス供給ユニット170と接続されており、該ガス供給路33を介して不活性ガスとして窒素ガスが基板裏面Wbと該基板裏面Wbに対向するスピンベース30の上面30aとに挟まれた空間に供給される。なお、実施形態では、ガス供給ユニット170から窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出するように構成してもよい。
【0028】
スピンチャック8の上方には、支持ピン310に支持された基板Wの上面に対向する円盤状の遮断部材50が水平に配設されている。遮断部材50はスピンチャック8の回転支軸35と同軸上に配置された回転支軸51の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この回転支軸51には遮断部材回転機構510が連結されており、制御ユニット7からの動作指令に応じて遮断部材回転機構510のモータを駆動させることで遮断部材50を略鉛直軸A0を中心に回転させる。制御ユニット7は遮断部材回転機構510をチャック回転機構110と同期するように制御することで、スピンチャック8と同じ回転方向および同じ回転速度で遮断部材50を回転駆動できる。
【0029】
また、遮断部材50は遮断部材昇降機構520と接続され、遮断部材昇降機構520の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで、遮断部材50をスピンベース30に保持された基板Wに近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。
【0030】
遮断部材50の中心の回転支軸51の中空部は、ガス供給路53を形成している。ガス供給路53はガス供給ユニット170と接続されており、後述するガス流通空間503およびガス吐出口502を介して基板表面Wfと遮断部材50の基板対向面50aとに挟まれた間隙空間SPに窒素ガスを供給可能となっている。このように、実施形態では、ガス吐出口502が本発明の「気体供給口」に相当する。
【0031】
遮断部材50の周縁部には、遮断部材50を鉛直軸方向に貫通する、略円筒上の内部空間を有するノズル挿入孔50A、50Bが形成されており、薬液吐出ノズル20、リンス液吐出ノズル40を個別に挿入可能となっている。ノズル挿入孔50Aとノズル挿入孔50Bは略鉛直軸A0に対して対称位置に同一形状に形成されている。一方で、薬液吐出ノズル20とリンス液吐出ノズル40は同一のノズル外径を有しており、両ノズルをそれぞれノズル挿入孔50A、50Bのいずれにも挿入可能となっている。
【0032】
薬液吐出ノズル20は薬液供給ユニット130と接続されており、制御ユニット7からの動作指令に応じて薬液供給ユニット130から薬液吐出ノズル20に薬液を供給する。薬液としては、基板表面Wfの周縁部に付着した薄膜のエッチングに適した薬液、例えば、フッ硝酸等が用いられる。
【0033】
薬液吐出ノズル20は水平方向に延びるノズルアーム21の一方端に取り付けられている。また、ノズルアーム21の他方端は薬液吐出ノズル移動機構210に接続されている。薬液吐出ノズル移動機構210は薬液吐出ノズル20を水平方向に所定の回動軸周りに揺動させるとともに、薬液吐出ノズルを昇降させることができる。このため、制御ユニット7からの動作指令に応じて薬液吐出ノズル移動機構210が駆動されることで、薬液吐出ノズル20を遮断部材50のノズル挿入孔50Aに挿入して基板Wの周縁部に薬液を供給可能な処理位置と、基板Wから離れた図示しない待機位置とに移動させることができる。また、薬液吐出ノズル20を遮断部材50のノズル挿入孔50Aに挿入した状態で薬液供給ユニット130から薬液が圧送されると、薬液が薬液吐出ノズル20から基板Wの周縁部に供給されて薄膜のエッチング除去が行われる。
【0034】
また、リンス液吐出ノズル40はリンス液供給ユニット150と接続されており、制御ユニット7からの動作指令に応じてリンス液供給ユニット150からリンス液吐出ノズル40にリンス液を供給する。これによりリンス液吐出ノズル40は基板Wの周縁部にリンス液を供給可能となっている。また、リンス液吐出ノズル40を駆動するためにリンス液吐出ノズル移動機構410が設けられている。リンス液吐出ノズル移動機構410は薬液吐出ノズル移動機構210と同様な構成を有している。すなわち、リンス液吐出ノズル移動機構410はノズルアーム41の先端に取り付けられたリンス液吐出ノズル40を水平方向に所定の回動軸周りに揺動させるとともに、リンス液吐出ノズル40を昇降させることができる。このため、制御ユニット7からの動作指令に応じてリンス液吐出ノズル移動機構410が駆動されることで、リンス液吐出ノズル40を遮断部材50のノズル挿入孔50Bに挿入して基板Wの周縁部にリンス液を供給することができる。
【0035】
図5は遮断部材50の底面図である。遮断部材50の基板対向面50aは平面に形成され、その表面には複数のガス吐出口502が形成されている。複数のガス吐出口502はスピンチャック8に保持される基板Wの表面中央領域、つまり基板Wの表面の周縁部より径方向内側の対向する位置であり、かつ、薬液吐出ノズル20のノズル挿入孔50Aおよびリンス液吐出ノズル40のノズル挿入孔50Bより径方向内側の位置であって、略鉛直軸A0を中心とする円周に沿って等角度間隔に形成されている。これらのガス吐出口502は遮断部材50の内側に形成されたガス流通空間503とガス吐出路501を介して連通しており、ガス供給路53を介してガス流通空間503に窒素ガスが供給され、ガス吐出路501を介して複数のガス吐出口502から窒素ガスが間隙空間SPに供給される。具体的には、ガス吐出口502は1度間隔で360個形成されるがこれに限られるものではない。
【0036】
図6は基板処理装置100の一部拡大図である。ガス吐出路501は基板Wを角度の基準面(角度θが0)として、角度θが鋭角となるようにスピンベース30の回転中心から外方に行くにしたが、スピンベース30から離れるように図6中、上方に向かって傾斜して遮断部材50に形成されている。したがって、遮断部材50が対向位置に位置決めされた状態で、制御ユニット7からの供給指令がガス供給ユニット170に与えられることで、ガス吐出路501を介して複数のガス吐出口502から供給される窒素ガスを基板Wに対して鋭角となるように供給することができる。
【0037】
具体的には、基板表面Wfと遮断部材50の基板対向面50aとに挟まれた間隙空間SPに窒素ガスが供給されると、すべてのガス吐出路501が基板Wの回転中心に向かって傾斜しているため、間隙空間SPの内部圧力を高めて基板Wをその基板裏面Wbに当接する支持ピン310に押圧することができる。
【0038】
さらに詳しく説明すると、間隙空間SP内の雰囲気はスピンベース30の回転で外方へ遠心力によって排出される。一方、ガス吐出口502より供給される窒素ガスはその排出される雰囲気とは逆方向に供給されることとなる。その結果、ガス吐出口502から供給される窒素ガスによる動圧は内部静圧により多く変換されることとなり、内部圧力が高くなる。この状態で制御ユニット7の動作指令に応じてスピンベース30が回転すると、基板裏面Wbと支持ピン310との間に発生する摩擦力によって基板Wが支持ピン310に支持されながらスピンベース30とともに回転する。このように本実施形態では、遮断部材50、ガス供給ユニット170、ガス吐出路501およびガス吐出口502が本発明の「押圧手段」として機能する。
【0039】
ここで、ノズル挿入孔50Aとノズル挿入孔50Bは遮断部材50に同一形状で、しかも略鉛直軸A0に対して対称位置に形成されている。また、両ノズル20,40は吐出する液の種類が異なる点を除いて同一に構成されている。このため、薬液吐出ノズル20およびノズル挿入孔50Aの構成のみを説明する。
【0040】
薬液吐出ノズル20は遮断部材50に設けられたノズル挿入孔50Aの形状に合わせて略円筒状に形成され、ノズル挿入孔50Aに挿入されることで、薬液吐出ノズル20の先端側が基板Wの周縁部に対向して配置される。薬液吐出ノズル20の吐出口211aを構成している。薬液吐出ノズル20のノズル外径は必要以上にノズル挿入孔50Aの孔径を大きくすることのないよう、例えばφ5〜6mm程度に形成される。
【0041】
ノズル挿入孔50Aの内壁には薬液吐出ノズル20の段差面と当接可能な円環状の当接円が形成されている。そして、薬液吐出ノズル20がノズル挿入孔50Aに挿入されると、段差面と当接面とが当接することで、薬液吐出ノズル20が位置決めされる。薬液吐出ノズル20が位置決めされた状態で、薬液吐出ノズル20の吐出口211a周囲の先端面は遮断部材50の基板対向面50aと面一になっている。
【0042】
薬液吐出ノズル20の吐出口211aは基板Wの径方向外側に向けて開口しており、吐出口211aから薬液を基板Wの回転中心情報から基板Wの周縁部に向かう方向に吐出可能となっている。液供給路211はノズル後端部において薬液供給ユニット130に接続されている。このため、薬液供給ユニット130から薬液が液供給路211に圧送されると、薬液吐出ノズル20から薬液が基板Wの径方向外側に向けて吐出される。このように、実施形態では、薬液吐出ノズル20およびリンス液吐出ノズル40を介して基板Wの周縁部に処理液を供給して、基板Wの周縁部の洗浄処理(エッチング処理+リンス処理)を実行可能となっている。
【0043】
また、遮断部材50のノズル挿入孔50A,50Bの内壁には、ガス導入口505が開口されており、ガス導入口505からノズル挿入孔50A,50Bの内部空間に窒素ガスを供給可能となっている。ガス導入口505は遮断部材50の内部に形成されたガス流通空間503を介してガス供給ユニット170に連通している。したがって、ガス供給ユニット170から窒素ガスが圧送されると、ノズル挿入孔50A,50Bの内部空間に窒素ガスが供給される。これにより、薬液吐出ノズル20、リンス液吐出ノズル40が図示しない待機位置に位置決めされた状態、つまり、薬液吐出ノズル20、リンス液吐出ノズル40がノズル挿入孔50A,50Bに未挿入の状態では、ノズル挿入孔50A,50Bの上下双方の開口から窒素ガスが噴出される。このため、ノズル挿入孔50A,50Bにノズルが未挿入の状態でも、薬液やリンス液がノズル挿入孔50A,50Bの内壁に付着するのが防止される。
【0044】
図7は基板Wに対してガス吐出路501が形成された角度θと、ガス吐出口502から吐出されたガスによる基板表面Wfでの押圧力との関係を示すグラフである。図7の横軸は、基板Wの中心からの距離を示している。また、縦軸は従来技術において採用されていた基板Wに対して垂直に形成したガス吐出路501を介してガス吐出口502から吐出された窒素ガスによる基板表面Wfでの押圧力を1とした場合の、ガス吐出路501の各種角度における押圧力の大きさを示している。同じガス流量でガス吐出路501の基板Wに対する角度θの違いによる、基板表面Wfでの押圧力の関係を求めたものである。
【0045】
図7は、ガス吐出路501の基板Wに対する角度θを30度、45度、60度、90度、135度として押圧力を求めた。図7から明らかなように、ガス吐出路501が基板Wに対して角度θを45度以上90度未満の角度となるように形成することで、従来技術において採用されていた垂直に形成したガス吐出路501に比べて基板表面Wfでの押圧力が高くなることが確認された。さらに、ガス吐出路501を基板Wに対して角度θが60度となるように形成することで、最大の押圧力を得られることが確認された。
【0046】
したがって、遮断部材50が対向位置に位置決めされた状態で、制御ユニット7からの供給指令がガス供給ユニット170に与えられることで、基板Wに対してガス吐出路501の角度θを45度以上90度未満の角度、より好ましくは60度の角度で、形成し、ガス吐出路501を介して複数のガス吐出口502から窒素ガスを基板Wに供給することで、基板Wを支持ピン310に確実に押圧することができる。
【0047】
次に、上記のように構成された基板処理装置100の動作について図8を参照しつつ説明する。未処理の基板Wが複数の支持ピン310に載置されると、離間位置にある遮断部材50のガス吐出口502から基板Wに対して45度以上90度未満の角度、より好ましくは60度の角度となるように形成されたガス吐出路501を介して窒素ガスを吐出させる(ステップS1)。次に、遮断部材50を回転させて、ノズル挿入孔50A,50Bが所定位置となるように遮断部材50を回転方向に関して位置決めする(ステップS2)。その後、遮断部材50が対向位置まで降下され基板表面Wfに近接配置される(ステップS3)。これによって、間隙空間SPの内部圧力が高められ、基板Wはその下面(裏面Wb)に当接する複数の支持ピン310に押圧されてスピンベース30に保持される。
【0048】
次に遮断部材50を停止させた状態でスピンベース30を回転させることで基板Wを回転させる(ステップS4)。このとき、複数の支持ピン310に押圧された基板Wは支持ピン310と基板裏面Wbとの間に発生する摩擦力でスピンベース30に保持されながらスピンベース30とともに回転する。続いて、ノズルアーム21,41に装着された薬液吐出ノズル20,リンス液吐出ノズル40が、図示しない待機位置から供給位置に位置決めされる(ステップS5)。具体的には、薬液吐出ノズル20、リンス液吐出ノズル40を水平方向に沿って遮断部材50のノズル挿入孔50A,50Bの上方位置にそれぞれ移動させる。そして、薬液吐出ノズル20、リンス液吐出ノズル40を降下させてノズル挿入孔50A,50Bに挿入する。
【0049】
そして、基板Wの回転速度が所定速度(例えば、600rpm)に達すると、回転する基板Wの表面周縁部に薬液吐出ノズル20から薬液を連続的に供給する。その結果、基板Wの表面周縁部および該表面周縁部に連なる基板端面部分から薄膜が全周にわたってエッチング除去される(ステップS6)。そして、薬液処理が完了すると、薬液の供給が停止されるとともに、リンス液吐出ノズル40からDIWが供給される。これにより、基板Wの表面周縁部に対してリンス処理が実行される(ステップS7)。リンス液吐出ノズル40から所定時間DIWを供給し、リンス処理が完了すると、DIWの供給が停止される。
【0050】
リンス処理が完了した後、薬液吐出ノズル20、リンス液吐出ノズル40が図示しない待機位置に位置決めされる(ステップS8)。それに続いて、スピンベース30の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に遮断部材50を回転させる(ステップS9)。その後、裏面処理ノズル37から回転する基板Wの裏面Wbに処理液が供給され、基板裏面Wbに対して裏面洗浄処理が実行される(ステップS10)。具体的には、裏面処理ノズル37から基板裏面Wbの中央部に向けて処理液として薬液とリンス液とが順次供給されることにより、裏面全体と裏面Wbに連なる基板端面部分が洗浄される。
【0051】
こうして、裏面洗浄処理が完了すると、基板Wおよび遮断部材50を高速(例えば、1500rpm)に回転させる。これにより、基板Wの乾燥が実行される(ステップS11)。このとき、基板表面Wfへの窒素ガス供給と併せてガス供給路33からも窒素ガスを供給して基板Wの表裏面に窒素ガスを供給することで、基板Wの乾燥処理が促進される。
【0052】
基板Wの乾燥処理が終了すると、遮断部材50の回転を停止させると同時に、基板Wの回転を停止させる(ステップS12)。そして、遮断部材50が上昇された後(ステップS13)、ガス吐出口502からの窒素ガスの供給を停止する(ステップS14)。これにより、基板Wの複数の支持ピン310への押圧保持が解除され、処理済の基板Wが装置から搬出される。
【0053】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限度において上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、「押圧手段」として遮断部材50にガス吐出路501をスピンベース30の回転中心から外方に行くにしたがい、スピンベース30から離れるように傾斜して形成することで、ガス吐出路501を介してガス吐出口502から吐出されるガスにより基板Wを支持ピン310に押圧したが、これに限定されず、遮断部材50の基板対向面50aに、基板表面Wfに窒素ガスを供給するための別体のノズルを設け、基板Wに対して鋭角となるように窒素ガスを吐出する構造を有するものであってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、基板周縁部を薬液吐出ノズル20とリンス液吐出ノズル40から吐出される薬液およびリンス液でエッチング処理を行ったが、図9(図2の各部と同じ働きをするものには同じ符号を割り当てている)のように、基板表面Wfを洗浄するため処理液を処理液供給路55を介して基板表面Wfに処理液を吐出し洗浄を行う基板処理装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の基板を回転させながら基板の表面に処理液を供給して該基板表面に対して洗浄処理などの処理を施す基板処理装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 基板処理システム
8 スピンチャック
10,11,13,15 処理ユニット
20 薬液吐出ノズル
30 スピンベース(基板保持部材)
40 リンス液吐出ノズル
50 遮断部材(対向部材、押圧手段)
50a 基板対向面
100 基板処理装置
110 チャック回転機構(回転手段)
130 薬液供給ユニット
150 リンス液供給ユニット
170 ガス供給ユニット(気体供給部、押圧手段)
310 支持ピン(支持部材)
501 ガス吐出路(気体供給路、押圧手段)
502 ガス吐出口(気体供給口)
A0 鉛直軸
SP 間隙空間
W 基板
Wb 基板裏面(基板の下面)
Wf 基板表面(基板の上面)
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を鉛直軸周りに略水平姿勢で回転させながら基板を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材を回転させる回転手段と、
前記基板保持部材の周縁部に突設され、前記基板の下面に当接して前記基板を下方から支持するための複数の支持部材と、
基板を前記支持部材に押圧させて前記基板保持部材に保持させる押圧手段と、
を備え、
前記押圧手段は、
前記基板の上面と対向する基板対向面を有する対向部材と、
前記基板対向面に気体供給口を備え、前記基板に気体を導くための気体供給路と、
前記気体供給路を介して、前記気体供給口から前記基板に気体を供給するための気体供給部とを有し、
前記気体供給口が前記基板保持部材の回転中心から外方に離れて位置し、前記気体供給路は、前記気体供給口から前記基板保持部材の回転中心から外方に行くにしたがい前記基板保持部材から離れるように傾斜して形成され、前記気体供給口から吐出される気体が前記気体供給口より前記基板保持部材の回転中心に向かって吐出されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記気体供給路を形成する傾斜が、前記基板に対して45度以上90度未満となるように前記対向部材に形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記気体供給路を形成する傾斜が、前記基板に対して略60度となるように前記対向部材に形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の基板処理装置において、
前記対向部材の周縁部には、等角度間隔で複数の気体供給口が設けられていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−35051(P2011−35051A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177779(P2009−177779)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】