説明

基板処理装置

【課題】ハウジングの天井面などに処理液や蒸気などが付着しない枚葉式の基板処理装置を提供する。
【解決手段】ハウジング1と、前記ハウジング1内に基板3を保持する保持手段2と、前記基板3の処理面3aに対して処理液を供給する供給手段8と、前記ハウジング1内に気体を取り込む取り込み口1aと、前記ハウジング1内の処理液の蒸気を当該ハウジング1から排出する排出口1cとを備え、前記保持手段2は前記処理面3aを前記ハウジング1の底部1bに向けて前記基板3を保持し、前記取り込み口1aから前記排出口1cへ向かう気流を形成し、前記気流によって処理液の蒸気を当該ハウジング1から排出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体用などの基板表面に形成された薄膜などの付着物を除去処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程においては、基板上に電子回路を形成するために、さまざまな薄膜を設けるが、例えば、薄膜であるレジストなどは不要になった時点でそれを除去しなければならない。
【0003】
このような薄膜を除去する装置としては、薄膜形成物質に作用する処理液を充填した槽内に複数枚の基板を浸して処理するバッチ式の装置や、一枚ずつ基板表面に処理液を供給して処理する枚葉式の装置などが従来から知られている。
【0004】
上記バッチ式の装置では、上記のように処理液を充填した槽内に基板を浸しながらレジストなどの異物を除去するので、基板から除去された異物が、処理液内に残ってしまう。そこで、上記槽の上部から処理液を溢れさせ、溢れた処理液を循環させるとともに、その循環過程でフィルタリングして槽へ戻すシステムがある。しかしながら、槽の上部から溢れさせた処理液を循環させるので、処理液の全量が循環するとは限らない。そのため循環過程で、フィルタリングしたとしても、処理液内の異物を完全になくすことができず、
処理液内の上記レジストや異物が、残ってしまうことがあった。
【0005】
また、基板から除去した異物が処理液よりも比重が大きい場合には、処理液が循環したとしても、異物がそのまま槽内に滞留してしまうこともあった。
【0006】
そのため、上記のようにフィルタリングをしたとしても、バッチ式の処理では、槽内の異物が再付着するという問題があった。
【0007】
また、バッチ処理の場合には、複数の槽を備えるとともに、それら槽のそれぞれに別の処理液を充填し、基板を各槽に順番に浸けていくようにする。このように複数の槽を備えなければならないとともに、各槽間で基板を搬送する搬送装置も必要とするので、設備が大掛かりになってしまうという欠点があった。
【0008】
上記のようなバッチ式の装置の欠点を解消するために、近年では枚葉式の処理装置が注目されている。この枚葉式の処理装置では、槽に基板を浸けたりせず、一枚一枚の基板に処理液を供給するとともに、使用した処理液をその都度排出するようにしている。したがって、枚葉式の処理装置では、処理後に異物が再付着したりしない。また、基板を搬送したりせずに、供給する処理液を替えるだけで、種類の異なる薄膜を除去することができる。
【0009】
このような装置として、例えば特許文献1に示すものが従来から知られている。この装置は、処理面を上に向けて水平に支持した基板を回転させながら、その表面の中央上方から処理液を供給するものである。基板中央に供給された処理液は、外周に向かって流れる過程で薄膜を剥離するとともに、その剥離された薄膜は処理液とともに排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-051101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の枚葉式の処理装置では、基板の処理面を上に向けて上方から処理液を供給するので、その供給側には供給手段を備えなければならない。そのために、処理液の供給手段が邪魔になって基板の上方を覆うことが難しいので、上記特許文献1に記載された装置では、基板の上方を開放したままにしていた。このように基板の上方を開放したままにしておくと、供給した処理液や蒸気が、当該ハウジングの外に飛散してしまう。
【0012】
しかし、処理液は除去すべき薄膜の種類に応じて様々であるが、強い酸性やアルカリ性のものがほとんどである。そのために処理液がハウジング外に飛散すると、ハウジング外のいろいろな機器や配線に付着してそれらにダメージを与えてしまうという問題があった。
そこで、処理液をハウジング外に飛散させないために、従来は、上方に向けた基板の処理面側を基板上の供給手段も含めてハウジングで覆うことも考えられる。
【0013】
しかし、この場合には、基板の処理面と、ハウジングの天井面とが対向しているので、処理面に供給された処理液が処理面上ではねかえり、このはねかえった処理液がハウジングの天井面に付着してしまう。また、上記処理液が蒸発し、そのときの蒸気がハウジングの天井面に付着してしまう。
【0014】
このように、上記天井面に付着した処理液や蒸気をそのままにしておくと、それが落下して処理済みの基板や、新たにセッティングした基板を汚してしまうので、これら付着した処理液は完全に排除しなければならない。しかし、それらを天井面から排除するために、例えば、純水で洗浄し、それらを完全に乾燥させるという工程を踏まなければならない。このように洗浄、乾燥という工程を踏まなければならないので、その分、洗浄したり乾燥したりする時間がかかってしまうという問題があった。
【0015】
この発明の目的は、基板表面に直接処理液を供給して基板を処理する際に、処理液や、その蒸気が外部に飛散しないことはもちろん、ハウジングの天井面などに処理液や蒸気などが付着しない枚葉式の基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の発明は、ハウジングと、このハウジング内で処理面の付着物を除去処理する基板を、その処理面をハウジングの底部に向けて保持する保持手段と、保持手段で保持された基板の処理面に対して処理液を供給する供給手段と、上記ハウジング内に気体を取り込むための取り込み口と、上記取り込み口から取り込んだ気体とともにハウジング内の処理液の蒸気をハウジングから排出するための排出口とを備えたことを特徴とする。
なお、基板の処理面を底部に向けるとは、上記処理面がハウジングの底部の方向に向いていればよいのであって上記処理面は水平でなくてもよい。
【0017】
第2の発明は、上記ハウジングに、ハウジング内の処理液の蒸気を排出口に導くガイド部材を設けたことを特徴とする。
【0018】
第3の発明は、上記ガイド部材が、その一部を上記保持部材に保持された基板の周囲に対向する構成にし、それら対向部間にすき間を維持する構成にしたことを特徴とする。
【0019】
第4の発明は、上記保持部材に保持させる基板を、ハウジングに出し入れするための出入口を設け、この出入口を構成する構造体の一部を、保持部材に保持された上記基板の周囲に対向する構成にし、それら対向部間にすき間を維持する構成にするとともに、このすき間を上記取り込み口にしたことを特徴とする。
【0020】
第5の発明は、上記基板を挟んで、上記供給手段とは反対側に加熱手段を設け、上記処理面と反対側の基板の裏面を加熱する構成にしたことを特徴とする。
【0021】
第6の発明は、上記加熱手段は赤外線を利用するとともに、赤外線を利用した上記加熱手段と上記基板とが対向する間のハウジング面に赤外線導入口を設けたことを特徴とする。なお、上記赤外線導入口は、開放されたままでもよいし、赤外線を透過する部材で塞いでもよい。
【0022】
第7の発明は、保持手段は回転機能を備え、保持手段で保持した基板を回転させる構成にしたことを特徴とする。
【0023】
第8の発明は、上記処理面に対して処理液を供給する供給手段と、この供給手段と同一方向から洗浄用の洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
第1〜第8の発明によれば、処理面をハウジングの底部に向けて保持された基板の処理面に対して処理液を供給するので、基板の上方に処理液が飛び散ることはない。さらに、処理面を底部に向けて保持された基板は、供給された処理液に対して遮蔽機能を発揮するので、処理液は基板の上方へ直接飛び散ることはない。
【0025】
また、取り込み口から取り込んだ気体とともに処理液の蒸気を排出口へ排出させるようにしているので、ハウジングの上方へ蒸気が上がったり、処理液が飛び散ったりせず、たとえ、ハウジングの天井を開口していても、処理液や蒸気がハウジングの外に漏れたりしない。
【0026】
また、上記基板が処理液に対して遮蔽機能を発揮し、処理液の蒸気は確実に排出口から排出されるので、たとえ、基板の上方が上記天井面で塞がれていたとしても、それら天井面に処理液や蒸気が付着することがない。このようにハウジングの天井面に処理液や蒸気が付着しないので、天井面を洗浄する必要がなくなりその分処理効率を上げることができる。
【0027】
第2の発明では、ガイド部材によってハウジング内の処理液の蒸気を、排出口ヘスムーズに導くことができる。これにより、処理液の蒸気が基板の上方へ上がることをより良く防止できる。
【0028】
第3の発明によれば、基板の周囲に対向するガイド部材と基板との間から気体を取り込んでその流れによって処理面近傍に発生した処理液の蒸気を排出口へより確実に導くことができる。
【0029】
第4の発明によれば、気体の取り込み口を構成する開口が基板を出し入れするための出入口となるので、基板のセッティング作業が容易である。しかも、この基板を出し入れする出入口はほとんど基板でふさがれ、基板との隙間が気体の取り込み口となるので、取り込み口が基板を出し入れするだけの大きさを備えていたとしても、この開口から処理液が飛散したりしない。
【0030】
上記のように基板が出入口の開口を塞ぐカバーとしても機能しているので、特別にカバーを備える必要がない。従って、カバーを必要とする場合に比ベて部品点数も少なくなり、ハウジングの構造を単純にできる。また、カバーを備えたときにはその洗浄や乾燥が必要になるが、この発明では洗浄や乾燥も不要になる。
【0031】
第5の発明によれば、基板をはさんで、処理液の供給手段と反対側に加熱手段を設けて、基板の裏面を加熱するようにしたので、加熱手段が処理液によって汚されたりせず、その加熱能力が落ちることもない。
【0032】
このように加熱手段の加熱能力が落ちたりしないので、基板を効率よく加熱できる。基板が効率よく加熱されれば、処理面に供給された処理液の化学反応が促進され、基板の処理面の付着物を効率よく除去できる。また、上記のように基板を効率よく加熱できるので、余分なエネルギーを消費することがなく、省エネルギーを実現できる。
【0033】
第6の発明では、加熱手段には赤外線を利用しているので、加熱手段と基板とを非接触に保ちながら効率的な加熱ができる。非接触の加熱手段としては、この他にマイク口波照射も考えられるが、マイク口波照射では設備コストが高くなってしまうので、赤外線を利用した加熱手段の方がコスト的に有利である。特に、赤外線導入口を開放すれば、加熱手段と基板の裏面との間に障害物がないので、基板をより効率的に加熱できる。
【0034】
第7の発明によれば、基板を回転させることができるので、処理液を処理面に供給したときに、その処理液を全面に均一に導くことができる。このように処理液を処理面全体に均一に導くことができるので、均一な除去処理ができる。
【0035】
また、基板の回転によって処理液を全面に均一に導くことができるので、供給手段に処理面に対する散布機能を持たせなくてもよく、供給手段の構成を単純化できる。
【0036】
また、付着物を除去処理した後、基板を保持したまま、保持手段の回転数を上げれば、処理面の処理液を外周方向へ飛ばして、基板を簡単に乾燥させることもできる。さらに、加熱手段で基板を加熱する場合にも、基板を回転させれば、基板全面を均一に加熱することが容易にできる。
【0037】
第8の発明によれば、処理液によって処理した基板を、保持手段によって保持したまま、洗浄液で洗浄することができる。特に、洗浄液を処理液の供給と同じ方向から供給して基板を洗浄するので、この洗浄液は処理液と同じ方向に飛び散る。このように、洗浄液が処理液と同じ方向に飛び散るので、処理液が付着したハウジングの内壁を、基板と同時に洗浄することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】この発明の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図3】この発明の第3実施形態を示す概略構成図である。
【図4】この発明の第4実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、この発明の第1実施形態である基板処理装置の構成を示す図である。この基板処理装置は、半導体基板から薄膜であるレジストを除去するための枚葉式の処理装置である。
【0040】
そして、この第1実施形態では、レジストを除去するための処理液としてSPM(硫酸過水)を利用することを想定しているが、SPMとは硫酸と過酸化水素水との混合液を言い、これら硫酸と過酸化水素水とが反応してレジストを溶解する力口酸が生成されるが、このSPMを加熱することによって、力口酸の生成がさらに促されるものである。
【0041】
この処理装置のハウジング1は、上面に円形の開口1aを備えている。この開口1aは、この処理装置で処理する基板3をハウジング1に出し入れするために必要な最小限の大きさを備えている。言い換えれば、開口1aの直径を、基板3の直径より僅かに大きくしている。
【0042】
また、上記ハウジング1内には、回転テーブル2を備えているが、この回転テーブル2は、一方の面に基板3を保持する複数の挟持部材4を備えている。この複数の挟持部材4は、回転テーブル2上の円に沿って間隔を保って設けられ、円形の基板3を、その外周から挟み、回転テーブル2に対して所定の距離を保ってほぼ平行に保持するものである。そして、上記挟持部材4に基板3を挟持させるときには、レジストが形成されている処理面3aを回転テーブル2に対向させておく。
【0043】
つまり、上記複数の挟持部材4と上記回転テーブル2とによって、この発明の保持手段を構成するが、上記のようにしてこの保持手段は、基板3の処理面3aをハウジングの底部である底面1bに向けるとともに、基板3を上記開口1aの近傍に保持する。これにより、開口1aの周囲と基板3の外周との対向部間に小さなすき間ができる。
【0044】
また、上記挟持部材4とは反対側となる回転テーブル2の図面下側の面には、回転テーブル2の回転軸となる筒部材5を設けているが、この筒部材5はハウジング1の底面1bに設けた軸受で回転自在に支持されている。このようにした筒部材5は、プーリー6とベルト7を介して電動モーターMに連係されている。従って、電動モーターMを駆動することによって、筒部材5とともに上記回転テーブル2を回転させることができる。但し、この発明においては回転テーブル2が回転すれば、回転させる機構は限定されるものではない。
【0045】
上記のように回転軸となる筒部材5内には、レジスト剥離用の処理液であるSPMを供給するための処理液パイプ8と、洗浄液としての純水を供給するための送水パイプ9とを通している。これらの処理液パイプ8及び送水パイプ9の先端開口は、上記回転テーブル2の中央部に形成した貫通穴2aを通って、上記挟持部材4に挟持された基板3の処理面3aに対向する構成にしている。
【0046】
なお、上記処理液パイプ8及び送水パイプ9のそれぞれは、図示していない支持手段で独自に支持され、筒部材5及び回転テーブル2が回転しても、これら処理液パイプ8及び送水パイプ9のそれぞれは回転しないようにしている。
【0047】
また、上記のように支持された処理液パイプ8及び送水パイプ9の先端開口は、挟持部材4で挟持された基板3の処理面中心部分に対向するようにしている。従って、処理液パイプ8及び送水パイプ9の先端開口から放出された液体は処理面3aの中心部分に供給されることになる。
【0048】
さらに、この第1実施形態では処理液パイプ8,送水パイプ9の先端にノズルヘッドを設けずに、液体をこれらパイプから直接放出するようにしているが、上記処理液パイプ8及び送水パイプ9の先端に様々なノズルヘッドを取り付けることもできる。このようにノズルヘッドを取り付けたときには、そこから放出される液体を霧状にしたり、ライン状にしたり、様々な水形にして供給することもできる。
【0049】
また、上記処理液パイプ8には、処理液であるSPMを供給するポンプ等を構成要素とした送液手段10を接続し、この送液手段10と処理液パイプ8とによってこの発明の処理液の供給手段を構成している。なお、SPMを供給するための上記送液手段10には、ポンプの下流側に、硫酸と過酸化水素水とを混合する混合手段を備えている。
【0050】
さらに、送水パイプ9には、純水を供給するポンプ等を構成要素とした送水手段11を接続し、この送水パイプ9と上記送水手段11とによってこの発明の、処理液の供給手段と同一方向から洗浄液を供給する洗浄液供給手段を構成している。
【0051】
一方、上記ハウジング1の底面1bには排出口1cを形成し、この排出口1cは吸引手段12に接続している。この吸引手段12によってハウジング1内を吸引することによって、上記開口1aと基板3の外周とのすき間からエアを吸い込んで気流を形成し、この気流によってハウジング1内の処理液や蒸気を排出口1cからハウジング1外へ排出するようにしている。つまり、この第1実施形態では上記開口1aが、基板3を出し入れするための出入口であるとともに、この発明の気体の取り込み口を構成している。
【0052】
そして、この第1実施形態では、上記開口1aの周囲であるハウジング1の内周縁が、この発明の出入口を構成する構造体の一部であり、上記基板3の周囲に対向するものである。
なお、この第1実施形態では、上記排出口1cからは、ハウジング1内に飛散したSPMも蒸気とともに排出される。
【0053】
さらに、上記開口1aの上方にはこの発明の加熱手段である赤外線ランプ13を設け、この赤外線ランプ13で基板3の裏面を加熱するようにしている。つまり、この第1実施形態では、上記開口1aがこの発明の赤外線導入口も兼ねている。このように、赤外線導入口が開放しているため、赤外線ランプ13と基板3の裏面との間に障害物がないので、基板3をより効率的に加熱することができる。
【0054】
なお、この赤外線ランプ13は支持機構15によって、開口1aに対応する範囲内から退避可能に支持されている。そのため、上記開口1aから基板3を出し入れする際には、赤外線ランプ13が邪魔にならないようにできる。但し、赤外線ランプ13を上記開口1aから十分に離して設置すれば、基板3の出し入れの際にも、赤外線ランプ13を開口1aに対応する範囲から退避可能にしなくてもよい。
【0055】
また、図中符号14は、赤外線ランプ13の側面に設けた遮蔽板で、赤外線ランプ13から放射される赤外線が側面から漏れないようにするためのものである。このように、遮蔽板14を設けることによって、基板3以外で加熱する必要がない部材を加熱してしまうことを防止できる。
【0056】
さらにまた、上記開口1aの上方には、純水を供給する送水パイプ16を設け、この送水パイプ16から供給される純水によって、基板3の裏面を洗浄するようにしている。なお、この送水パイプ16は、開口1aに対応する範囲内から退避可能にし、基板3のセッティングに対して邪魔にならないようにしている。
【0057】
以下に、処理液としてSPMを用いて、処理面3aのレジストを除去する工程を説明する。まず、赤外線ランプ13及び送水パイプ16をハウジング1の開口1a上から退避させ、処理面3aを回転テーブル2に対向させた状態で、上記開口1aから基板3を回転テーブル2上にセッティングする。基板3をセッティングしたら、モーターMを駆動して回転テーブル2をゆっくり回転させる。
【0058】
また、上記吸引手段12を作動させて、ハウジング1内を吸引し、上記開口1aからエアを吸い込んで上記排出口1cへの気流を形成しておく。なお、ここでは、回転テーブル3を回転させてから吸引手段12を作動しているが、その順序はどちらが先でもかまわない。
【0059】
上記のように回転テーブル2をゆっくり回転させたら、送液手段10を制御して処理液パイプ8からSPMを供給する。また、処理液パイプ8の先端を、挟持部材4で挟持された基板3の中心部分に対向させているので、処理液パイプ8から放出されたSPMは、処理面3aの中心部分に供給される。このように処理面3aの中心部分に供給されたSPMは、基板3の回転によって円周方向に広がりながら外周に向かって流れる。
【0060】
次に、上記赤外線ランプ13を開口1a上に移動させ、電源を入れて基板3を約130℃〜300℃になるまで加熱する。
【0061】
なお、この第1実施形態では、加熱手段である上記赤外線ランプ13を基板3の裏面側に配置しているので、処理面3a側に配置された処理液の供給手段とは関係なく赤外線ランプ13を基板3に近づけることができるとともに、供給されるSPMの影響を受けずに、基板3の効率的な加熱ができる。
【0062】
上記のように基板3を赤外線ランプ13で約130℃〜300℃に加熱すると、処理面3aに接触したSPMは基板3の熱で加熱され、処理面3aでの化学反応が促進され、レジストを速やかに除去処理できる。
【0063】
また、この装置では、上記したようにハウジング1の開口1aを基板3の直径より僅かに大きくしているだけなので、開口1aの近傍にセッティングされた基板3は、その外周と開口1aとの対向部間に、非常に小さな環状のすき間を形成するだけで、開口1aをほとんど塞ぐカバーとして機能する。
【0064】
このように、基板3が開口1aを塞ぐカバーとして機能した状態で、ハウジングの底部に向けた処理面3aに対して処理液であるSPMが供給されるため、処理面3aに向けて供給されたSPMが開口1aからハウジング1外へ飛散することはない。
【0065】
また、高温に加熱された基板3の処理面に接触したSPMからは蒸気が発生するが、この蒸気は、上記開口1aから取り込まれた工アの流れによって排出口1cへ導かれ、排出されるので、蒸気も漏れることがない。
【0066】
このようにSPMやその蒸気がハウジング外に漏れないので、ハウジング1の外にある配線やその他の機器にダメージを与えることはない。
【0067】
基板3がハウジング1から外部へSPMや蒸気が出ることを防止するカバーとして機能しているので、基板3をハウジングの天井面で覆ったり、カバーを別に設けたりする必要がない。
【0068】
このように基板3をハウジンクの天井面で覆ったり、カバーを別に設けたりする必要がないので、洗浄、乾燥が簡単になる。例えば、基板3を天井面で覆ったりカバーで覆ったりすると、それら天井面やカバーを洗浄したり乾燥したりしなければならないが、この実施形態ではそれらの洗浄や乾燥は不要になる。
【0069】
また、この第1実施形態の処理装置では、開口1aから蒸気が出ないので、赤外線ランプ13が蒸気などで汚されることがない。従って、赤外線のエネルギーを無駄なく基板3の加熱に利用できる。
【0070】
さらに、この第1実施形態の処理装置では、基板3を赤外線ランプ13で加熱しているので、効率的なレジスト除去処理ができる。例えば、基板上でのSPMとレジストとの反応性を高めるために、SPMを予め高温にして供給することが従来から行われているが、この場合には、SPMが温度の低い基板に接触して温度が下がってしまい、SPMとレジストとの反応が十分に行なわれないこともあった。もし、SPMの熱が基板に吸収されて、その温度が下がらないようにするためには、高温のSPMを大量に供給しなければならない。しかし、この第1実施形態のように基板3を加熱すれば、SPMの温度低下を防止できるのでSPMを大量供給する必要がなく、その分、SPMを節約することができる。
【0071】
また、上記第1実施形態の処理装置では、回転テーブル2を回転させて基板3を回転させる機能を備えているため、基板3を回転させて処理面3aの中心部分にSPMを供給すると、供給されたSPMを処理面3a上で外周に向かって均一に導くことができる。特に、この第1実施形態では、基板3の処理面3aをハウジング1の底部に向けて保持しているので、処理面3aに供給したSPMは落下しやすくなるが、上記のように基板3を回転させられるので、その遠心力でSPMの落下を防止しつつ、基板3の外周に向かって均一に導くことができる。従って、レジストの均一な除去処理ができる。
【0072】
また、基板3の回転によってSPMを外周に向かって均一に導くことができるので、供給手段に散布機能を持たせなくてもよく、供給手段の構成を単純化できる。言い換えれば、供給手段が処理面全体に対して、均一に処理液を供給できる機構を備えれば、処理工程において基板3を回転させる機能は必須ではない。また、処理液の散布機能を備えながら、基板3を回転させてもよい。
【0073】
さらに、回転テーブル2とともに基板3を回転させることによって、上記赤外線ランプ13による赤外線の照射範囲が基板3の全面でなくても、基板3を均一に加熱できるというメリットもある。例えば、上記赤外線の照射範囲が、基板3の直径や半径に沿った線状で、あっても、基板3が回転することによって基板3の裏面全体に赤外線を照射できることになるからである。
【0074】
また、この第1実施形態の処理装置では、純水の供給手段を設けているので、SPMによってレジストの除去処理をした後に、処理面3aを水洗することもできる。そこで、次に水洗工程を説明する。
【0075】
この水洗工程では、赤外線ランプ13の電源を切って、赤外線ランプ13を開口1aに対応した範囲から退避させ、SPMの供給を止める。
【0076】
次に、送水パイプ16の放水口をハウジング1の開口1a上に位置させ、回転テーブル2を回転させた状態で、図示しない送水手段によって送水パイプ16から純水を基板3上に供給し、基板3の裏面を洗浄する。
【0077】
また、処理面3a側でも、送水手段11によって送水パイプ9からの純水を供給し、基板3の処理面3aも水洗する。
【0078】
このとき、回転テーブル2を回転させているので、基板3の両面に供給した純水が外周に向かって広がりながら、基板3の両面を洗い流すことができる。
【0079】
ハウジング1内では、回転する基板3に沿って外周方向へ導かれた純水がハウジング1の内壁に衝突してその内壁を洗浄することになる。特に、この第1実施形態では、洗浄液を、処理液の供給と同じ方向から供給して基板を洗浄するので、洗浄液の広がりや飛び散り方が処理液と同じようになって、処理液が付着したハウジング1内壁を、基板と同時に洗浄することもできる。
【0080】
基板3の両面を純水で、洗浄したら送水を停止し、モーターMの回転数を上げる。そして、回転テーブル2を、1000(rpm)〜3000(rpm)程度で回転させ、遠心力で、水分を完全に飛ばして基板3の両面を乾燥させる。このように、遠心力を利用して水分を飛ばすことができるので、水洗後の基板3に水跡を付けずに短時間で乾燥させることができる。
【0081】
なお、回転テーブル2と基板3の処理面3aとの対向間隔を狭くした状態で、回転テーブル2の回転数を上げると、上記対向間隔内が負圧になる傾向がある。負圧になったときにそれを放置しておくと、ハウジング内の異物が上記対向間隔内に吸い込まれて、それが処理面3aに付着してしまう恐れがある。
【0082】
これを防止するために、この実施形態では回転数を上げたとき、上記対向間隔内に窒素ガスを供給して負圧が発生しないようにしている。
【0083】
また、上記第1実施形態では、基板3をハウジングに挿入する開口1aをこの発明の気体の取り込み口及び赤外線導入口と兼ねているが、これらの開口はそれぞれ、個別に設けてもよい。但し、上記3つの開口を兼ねる構成にすれば、ハウジング1の構造を単純化できるメリットがある。
【0084】
上記第1実施形態では、赤外線ランプ13及び送水パイプ16を上記開口1aに対応する範囲内から退避可能にしているが、基板3をハウジング内に出し入れする際などの行程でじゃまにならなければ、赤外線ランプ13や送水パイプ16を開口1aの近傍で固定式にしてもよい。
【0085】
図2は、この発明の第2実施形態である基板処理装置の構成を示す図である。この基板処理装置も、半導体基板からレジストを除去するための枚葉式の処理装置である。なお、上記第1実施形態と同様の構成要素は、図1と同じ符号を用いて説明するが、第1実施形態と同一の構成は、次のとおりである。
【0086】
この第2実施形態においても、ハウジング17内に回転テーブル2を設け、この回転テーブル2には挟持手段4を設けている。そして、この挟持手段4には、基板3の処理面3aをハウジング17の底面17dに向けて保持させる。また、処理液の供給手段は処理液パイプ8と送液手段10とからなり、洗浄液供給手段は送水パイプ9および送水手段11からなる。そして、これらの構成は、上記第1実施形態と同一である。
【0087】
上記のように第1実施形態と同一の構成を持つ第2実施形態においては、ハウジング17の構成が第1実施形態とは大きく異なる。すなわち、ハウジング17は本体17aに開閉可能なふた部17bを設け、このふた部17bを開けて基板3を出し入れする構成にしている。
【0088】
そして、上記回転テーブル2上に基板3をセッティングして上記ふた部17bを閉じたときには、ハウジング17の天井面であるふた部17bの内側が基板3の裏面と対向する。
【0089】
従って、基板3の処理面3aに処理液を供給したとき、処理液に対して基板3が遮蔽機能を発揮するので、処理液が天井面に付着しない。
【0090】
また、上記ふた部17bの中央には、エアを取り込むための取り込み口17cを形成するとともに、本体17aの底面17dには、エアを排出するための排出口17eを形成し、この排出口17eを吸引手段12に接続している。
従って、上記吸引手段12によってハウジング17内を吸引すると、上記取り込み口17cから排出口17eに向かう気流が形成される。
【0091】
なお、この第2実施形態では、ハウジング17の上方に、第1実施形態のような加熱手段としての赤外線ランプ13を設けていない。そのため、SPMの供給過程でそれを予め加熱する図示していない加熱手段を別に備えている。
【0092】
さらに、上記ふた部17bには、基板3に純水を供給する送水パイプ16を固定し、この送水パイプ16には図示しない送水手段を接続している。従って、ふた部17bを閉じた状態で、この送水パイプ16から純水を供給すれば、回転テーブル2上に保持された基板3の裏面を洗浄できることになる。
【0093】
次に、この第2実施形態の装置によって、基板3の処理面3aからレジス卜を除去する工程を説明する。まず、ハウジング17のふた部17bを開いて、処理面3aを回転テーブル2に対向させた状態で、基板3を回転テーブル2上にセッティングする。
【0094】
基板3をセッティングしたら、ふた部17bを閉じ、モーターMを駆動して回転テーブル2をゆっくり回転させる。このとき上記吸引手段12を駆動して、ハウジング17内を吸引し、上記開口17cから上記排出口17eへ向かう気流を形成しておく。
【0095】
上記のように回転テーブル2をゆっくり回転させたら、送液手段10を制御して処理液パイプ8から予め加熱したSPMを供給する。
【0096】
また、上記第1実施形態と同様に、処理液パイプ8の先端は、挟持部材4で挟持された基板3の中心部分に対向させている。そのため、処理液パイプ8から放出されたSPMは、処理面3aの中心部分に供給される。このように処理面3aの中心部分に供給されたSPMは、基板3の回転によって円周方向に広がりながら外周に向かって流れ、その過程でレジストを除去する。
【0097】
上記の工程でSPMによる処理が終了したら、送液手段10を停止して、送水手段11及び図示しない送水手段を制御して、送水パイプ9及び16から純水を供給し、基板3の両面を同時に水洗する。
【0098】
このとき、回転テーブル2を回転させているので、基板3の両面に供給した純水が外周に向かって広がりながら、基板3の両面を洗い流すことができる。
【0099】
また、ハウジング17内では、送水パイプ9から供給された純水が基板3の回転によって外周方向へ導かれ、この純水がハウジング17の内壁に衝突するので、基板3の洗浄とともにハウジング17の内壁も洗浄できる。
【0100】
その後、送水を停止し、上記第1実施形態と同様に、モーターMの回転数を上げて、遠心力で、水分を完全に飛ばせば、基板3に水跡を付けずに短時間で乾燥させることができる。
【0101】
なお、回転テーブル2と基板3の処理面3aとの対向間隔を狭くした状態で、回転テーブル2の回転数を上げると、上記対向間隔内が負圧になる傾向がある。負圧になったときにそれを放置しておくと、ハウジング内の異物が上記対向間隔内に吸い込まれて、それが処理面3aに付着してしまう恐れがある。これを防止するために、この実施形態では回転数を上げたとき、上記対向間隔内に窒素ガスを供給して負圧が発生しないようにしている。
【0102】
この第2実施形態の装置も、基板3の裏面がハウジング17の天井面に対向し、処理面3aを底部17dに向けているので、処理面3aに対して供給されるSPMがハウジング17の天井面に直接付着することがない。
【0103】
また、ふた部17bに形成した取り込み口17cから取り込まれるエアの流れによって、SPMの蒸気がハウジング17の底面17dに形成した排出口17eへ導かれるので、ハウジング17内の天井面に蒸気が付着することもない。従って、ハウジング17のふた部17bを開けて、天井面に付着したSPMを洗い落とす工程が必要なく、基板3の処理が効率的にできる。また、基板3を水洗する際に、ハウジング17内に付着しているSPMも同時に洗浄できる。
【0104】
なお、この第2実施形態では、基板3を加熱するための加熱手段を設けていないが、ハウジング17の上方に加熱手段として赤外線ランプなどを設けてもよい。その場合には、ふた部17bであって基板3に対応するエリアに、赤外線を透過するための赤外線導入口を形成する必要がある。赤外線導入口は開放してもよいし、赤外線を透過するガラスなどで覆ってもよい。
【0105】
いずれにしても、上記処理液パイプ8から処理面3aに対して供給されるSPMは、基板3で遮られるとともに、蒸気は底面の排出口17eから排出されるので、ふた部17bに形成した赤外線導入口からSPMや蒸気が飛び出したり、蒸気で曇ってしまったりすることがない。つまり、赤外線導入口を介して、基板3の裏面を確実に加熱することができる。
【0106】
さらに、第2実施形態ではふた部17bを開閉して基板3を出し入れする構成にしたが、ハウジング17の天井面を完全に塞いで、基板3はハウジング17の側面から出し入れするようにしてもよい。この場合においても、気体の取り込み口と排出口との関係は、第2実施形態と同じである。すなわち、基板3の処理面3aより上方に設けた気体の取り込み口17cから、処理面3aの下方に設けた排出口17eへ気流を作って処理液の蒸気を排出するようにする。
【0107】
上記ようにハウジングの天井面を完全に塞いだとしても、その天井面には処理液や蒸気が付着しないので、その天井面を洗浄する必要はない。従って、天井面を完全に塞いだとしても何ら問題はない。
【0108】
なお、上記第1、第2実施形態では、この発明のエアの取り込み口1a、17cをハウジング1,17の天井面に形成し、排出口1C,17eをハウジング1,17の底面1b,17dに形成しているが、これらの位置は、上記実施形態の位置に限らない。
【0109】
上記取り込み口1a、17Cを、基板3の処理面3aと同一レベルもしくはそれよりも上方に設け、排出口1C,17eを上記取り込み口1a、17cよりも下方に設けた位置関係を維持すれば、上記実施形態のように、上記処理面3aの外周から上昇しようとする蒸気を上からの気流によって確実に下方へ押さえ込むことができ、蒸気がハウジング1,17の外に漏れないようにできる。
【0110】
また、上記の取り込み口が上記処理面と同一レベルにあるとは、上記取り込み口1a、17cの開口の範囲内に処理面のレベルが含まれることをいう。
【0111】
但し、ハウジング内でエアの流れを形成できれば、取り込み口と排出口との位置は、上記第1、第2実施形態のものに限らないだけでなく、取り込み口と排出口との上下関係も限定されない。
【0112】
図3には、エアの取り込み口17fを排出口17gよりも下方に設けた第3実施形態の基板処理装置の構成を示している。
【0113】
この第3実施形態の基板処理装置も、半導体基板からレジストを除去するための枚葉式の処理装置であり、気体の取り込み口及び排出口の位置が、上記第2実施形態と異なるが、その他の構成は第2実施形態と同じである。そこで、上記第2実施形態と同様の構成要素には図2と同じ符号を用い、各要素の詳細な説明は省略する。
【0114】
この第3実施形態の基板処理装置は、第2実施形態と同様に、本体17aと開閉可能なふた部17bとからなるハウジング17を備え、ふた部17bを開けて基板3を出し入れする構成にしている。
【0115】
但し、この第3実施形態では、ふた部17bには開口を形成せず、本体17aの側面に気体の取り込み口17f及び排出口17gを設けている。そして、上記取り込み口17fを、基板の処理面3aよりも下方に設けるとともに、この取り込み口17fよりも排出口17gを上方に設けている。また、この排出口17gを吸引手段12に接続し、この上記吸引手段12によってハウジング17内を吸引してハウジング17内に排出口17gに向かう気流が形成されるようにしている。
【0116】
このようにした第3実施形態の基板処理装置も、上記第2実施形態と同様にして基板3の処理面3aからレジストを除去することができる。
【0117】
すなわち、ハウジング17内で、処理面3aを回転テーブル2に対向させた状態で、基板3を回転テーブル2上にセッティングし、底面17d側から処理面3aに処理液を供給してレジストを除去する。
【0118】
上記のようにレジストを除去する際には、上記吸引手段12を駆動して、ハウジング17内を吸引しておくようにする。従って、この第3実施形態においても、処理液であるSPMの蒸気は排出口17gから排出され、ハウジング17から外部へ漏れ出ることはない。
【0119】
なお、この第3実施形態では、エアの取り込み口17fが基板3の処理面3aよりも下方であって、しかも、排出口17gよりも下方に設けられている。そのため、取り込み口17fから取り込まれたエアが直接排出口17gへ向かうような気流が形成されたのでは、蒸気を効率的に排出することは難しい。しかし、実際には、吸引手段12が取り込み口17fから直接工アを吸引することにはならず、ハウジング17内全体の気体を吸引することになる。特に、上記回転テーブル2が回転したり、処理液を供給したりすることによってハウジング17内の気流は乱れるため、取り込み口17fから排出口17gに向かう気流のみを形成することはほとんど不可能である。そのため、この第3実施形態の基板処理装置でも、ハウジング17内の処理液の蒸気を排出口17gから排出することができる。
【0120】
但し、取り込み口を処理面の近傍に設け、排出口をそれよりも下方に設ければ、処理液の蒸気を強引に排出口へ導く気流を、より形成しやすくなる。
【0121】
また、上記回転テーブル2上に基板3をセッティングして上記ふた部17bを閉じたときには、ハウジング17の天井面であるふた部17bの内側が基板3の裏面と対向する。
【0122】
従って、基板3の処理面3aに処理液を供給したとき、処理液に対して基板3が遮蔽機能を発揮するので、処理液が天井面に付着しない。そのため、処理液がハウジング17の上方から飛び出ることがないことはもちろん、ハウジング17のふた部17bを開けて、天井面に付着したSPMを洗い落とす工程も必要なく、基板3の処理が効率的にできる。
【0123】
図4に示す第4実施形態は、ハウジング1内に処理液の蒸気とともに気体を排出するための3個の排出口1d,1e,1fを設け、これら各排出口1d,1e,1fへ導くガイド部材18a,18b,18cを備えている。
【0124】
また、この第4実施形態では、基板3を保持する回転テーブル2の上下位置を変更可能にしている。具体的には、図示しない駆動手段によって、回転テーブル2に固定した筒部材5、処理液パイプ8及び送水パイプ9を、それに付随する部材との連結を維持したまま上下に移動させるようにしている。
【0125】
その他の構成は、図1に示す第1実施形態と同じであり、第1実施形態と同様の構成要素には、図1と同じ符号を用い、各要素の詳細な説明は省略する。
【0126】
上記ガイド部材18a,18b,18cは、中央を開口したコーン状の部材であって、筒部材5の軸方向にそれぞれ所定の間隔を保ってハウジング1の内壁に設けられている。
【0127】
そして、これら各ガイド部材18a,18b,18cの基端側であって、上段のガイド部材18aと中段のガイド部材18bとの間に、排出口1dを、上記中段のガイド部材18bと下段のガイド部材18cとの間に排出口1eを、下段のガイド部材18cの下方に排出口1fを設けている。また、各排出口には吸引手段12a,12b,12cを接続し、ハウジング1内の処理液の蒸気を含んだ気体を排出可能にしている。
【0128】
つまり、上記ガイド部材18a及び18bが処理液の蒸気を排出口1dへ導くガイド部材であり、ガイド部材18b及び18cが蒸気を排出口1eへ導くガイド部材であり、ガイド部材18cが蒸気を排出口1fへ導くガイド部材である。
【0129】
例えば、基板3の周囲を上段のガイド部材18aの一部である先端に対向するように調整し、吸引手段12aを作動させてから処理を開始すれば、処理面3aに供給された処理液の蒸気は上記ガイド部材18a及び18bによって排出口1dへ導かれる。
【0130】
また、基板3の周囲を中段のガイド部材18bの先端に対向させ、吸引手段12bを作動させれば、処理液の蒸気は排出口1eに導かれ、基板3の周囲を下段のガイド部材18cの先端に対向させて吸引手段12cを作動させれば、処理液の蒸気は排出口1fへ導かれることになる。
【0131】
このように、基板3の位置によって蒸気が導かれる排出口を変えることができる。従って、処理液の種類によって基板3の位置を変更し、排出口を使い分けるようにすれば、吸引手段12a,12b,12c側で、処理液を種類別に分離回収することができ、廃棄処理やリサイクルがスムーズにできるというメリットもある。
【0132】
なお、上記基板3の周囲をガイド部材の先端に対向させるとは、基板3の高さを調整して、基板3の周囲をガイド部材の先端に近づけるということで、基板3の高さ位置とガイド部材の先端位置とが厳密に一致する必要はないし、基板3とガイド部材のどちらかが多少上下していてもかまわない。但し、基板3の処理面3aが、気体を導くガイド部材の先端よりも下方に位置している方が、処理液の蒸気などを確実に排出することができる。さらに、基板3の裏面を、ガイド部材の先端と同等の高さ位置あるいはガイド部材の先端よりも下方に位置させれば、裏面側から洗浄液等を供給した場合に、その洗浄液等を排気口から排出することもできる。
【0133】
この第4実施形態の基板処理装置も、上記第1実施形態と同様にして基板3の処理面3aからレジストを除去することができる。すなわち、ハウジング1内で、処理面3aを回転テーブル2に対向させた状態で、基板3を回転テーブル2上にセッティングし、底面1b側から処理面3aに処理液を供給してレジストを除去する。
【0134】
但し、この第4実施形態では、基板3の周囲をいずれかのガイド部材の先端に対向させてから処理を開始する。また、ガイド部材に対応する吸引手段を作動させるようにする。
【0135】
例えば、図4に示すように、上段のガイド部材18aの先端位置に基板3の周囲を対向させた場合には、吸引手段12aのみを作動させる。そして、基板3の処理を開始すると、ハウジング1の天井に形成した開口1aから吸い込まれたエアが、ガイド部材18aによって排出口1dへ導かれ、処理液を排出するための気流が形成される。従って、この第4実施形態においては、処理液であるSPMの蒸気は排出口1dから排出され、ハウジング1から外部へ漏れ出ることはない。
【0136】
また、SPM以外の処理液を使用する場合には、基板3の周囲を他のガイド部材、例えばガイド部材18bの先端に対向させてから、吸引手段12bを作動させるようにすることができる。このようにすれば、処理液の蒸気は、上記開口1aから取り込まれたエアとともに、ガイド部材18bによって排出口1eに導かれる。この場合も、処理液の蒸気は排出口1eから排出され、ハウジング1から外部へ漏れ出ることはない。
【0137】
なお、この第4実施形態では、3個のガイド部材18a,18b,18cと、排出口1d,1e,1fを設けているが、ガイド部材および排出口の数はいくつでも良い。処理液を種類ごとに分離して排出したい場合には、処理液の種類に応じた排出口と、各排出口へ気体を導くガイド部材が必要である。
【0138】
また、処理液の種類を分離する必要がない場合であっても、ガイド部材を設ければ、取り込み口から取り込んだエアを排出口へ導き、処理液の蒸気を効率的に排出する気流を形成できる。
【0139】
なお、上記第4実施形態では、各ガイド部材18a,18b,18cの先端が、この発明の「上記保持部材に保持された基板の周囲に対向するガイド部材の一部」であるが、上記一部は、基板の周囲に対向する部分であり、ガイド部材の形状によっては必ずしも先端ではない。
【0140】
上記第1〜第4実施形態では、取り込み口からエアを取り込むようにしているが、ハウジング内に取り込む気体は、処理液や基板に影響を与えないものならば、その種類は限定されない。
【0141】
また、取り込み口から、ハウジング内へ気体を取り込む手段も、排気口に接続した吸引手段のほか、取り込み口から圧力を掛けて気体をハウジング内へ押し込むようにしてもよい。
【0142】
さらに、上記第4実施形態のように複数の排出口を設けない場合であっても、上記取り込み口から取り込まれた気体が、ハウジング内の処理液の蒸気とともに排出口から効率的に排出させるため、ハウジング内にガイド部材を形成するようにしてもよい。
【0143】
また、上記第1〜第4実施形態では、ハウジング1,17内で、基板3を水平に保持するようにしているが、処理面3aがハウジングの底部側に向いていれば基板3は水平でなくてもよい。
【0144】
なお、上記では処理面3aに形成されたレジストを除去処理する装置を例に説明したが、この発明の基板処理装置は、レジスト以外の薄膜や、その他の付着物を除去処理する装置としても有用である。但し、除去処理する物質に応じた処理液を選択する必要がある。例えば、窒化膜の除去処理のために燐酸を用いたり、HPM(塩酸過水)や、APM(アンモニア過水)を用いたりして、処理面3a上の種々の薄膜やパーティクルなどの付着物を上記レジストの除去処理と同様に処理することができる。
【0145】
そして、複数の処理液を供給するために、処理液ごとの処理液パイプを上記筒部材5内に設ければ、複数の処理を同一装置で行なうことができる。
【0146】
いずれにしても、処理液の蒸気が付着したハウジングの天井面や力バ一部材を、改めて洗浄する洗浄工程を不要にできる。
【0147】
さらに、上記実施形態では、基板を加熱する手段として赤外線ランプを用いているが、処理液が付着することがないように非接触で基板を加熱できるものならば、加熱手段は赤外線ランプに限らない。例えば、加熱手段としてはマイク口波照射も考えられる。但し、マイク口波照射では設備コストが高くなってしまうので、赤外線を利用した加熱手段の方がコスト的に有利である。また、赤外線を利用する場合であっても、ランプに限らず、赤外線ヒータを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
この発明は、半導体基板のほか、液晶ガラス基板、プラズマディスプレイ基板などの薄膜の除去処理に利用できる。
【符号の説明】
【0149】
1 ハウジング
1a 開口
1b 底面
1c 排出口
1d 排出口
1e 排出口
1f 排出口
2 回転テーブル
3 基板
3a 処理面
4 挟持部材
8 処理液パイプ
9 送水パイプ
10 送液手段
11 送水手段
12 吸引手段
12a 吸引手段
12b 吸引手段
12c 吸引手段
13 赤外線ランプ
17 ハウジング
17c 取り込み口
17d 底面
17e 排出口
18a ガイド部材
18b ガイド部材
18c ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に基板を保持する保持手段と、
前記基板の処理面に対して処理液を供給する供給手段と
前記ハウジング内に気体を取り込む取り込み口と、
前記ハウジング内の処理液の蒸気を当該ハウジングから排出する排出口と
を備え
前記保持手段は前記処理面を前記ハウジングの底部に向けて前記基板を保持し、
前記取り込み口から前記排出口へ向かう気流を形成し、前記気流によって処理液の蒸気を当該ハウジングから排出する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記取り込み口は、前記ハウジングに形成された貫通穴であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記取り込み口は、前記基板の外縁と前記ハウジングに形成された開口の間に形成されたすき間であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記取り込み口は、前記処理面より上方に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−209559(P2012−209559A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121793(P2012−121793)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【分割の表示】特願2011−546105(P2011−546105)の分割
【原出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(309042864)株式会社ジェイ・イー・ティ (4)
【Fターム(参考)】