説明

基板処理装置

【課題】 多量の処理液を消費することなく基板の表面全域に有効に処理液を供給することが可能であり、さらに、処理液を回収して再利用することが可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】 各塗布ユニット1a、1bは、複数の搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面に処理液を供給するための第1処理液吐出ノズル2と、この第1処理液吐出ノズル2との間に処理液の液溜まりを形成するとともに、複数の搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面に処理液を供給するための第2処理液吐出ノズル4とを備える。搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100に対し、このような構成を有する2個の塗布ユニット1a、1bの作用により、その表面および裏面への処理液の塗布が、繰り返し実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LCD(液晶表示装置)やPDP(プラズマディスプレイ)等のFPD(フラットパネルディスプレイ)用ガラス基板、有機EL用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、半導体ウエハ、太陽電池および電子ペーパ用フィルム基板等の基板を処理液により処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LCDの製造時には、アモルファスシリコン層をガラス基板上に形成し、このシリコン層表面の自然酸化膜をエッチング処理し、洗浄および乾燥処理をした後に、レーザーを照射してアモルファスシリコン層を溶融再結晶化している。このとき、エッチング工程等においては、従来、基板を水平に支持した状態で垂直軸まわりを回転させながら、その表面に順次エッチング液を供給して、基板の表面をエッチング処理する構成が採用されている。また、エッチング処理後の基板は強い撥水性を有することから、エッチング後の基板を低速回転させながら洗浄液を供給し、基板全面にその表面張力で洗浄液の液膜を形成した状態で洗浄処理を施し、しかる後、基板を高速回転させて洗浄液を除去する構成が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、近年の被処理基板の大型化により、特許文献1に記載された発明のように、基板を回転させながらエッチング処理を行うことは困難となっている。このため、基板を水平方向に搬送しながら、基板の表面に対してエッチング液等の処理液を供給して、基板を処理することが提案されている。
【0004】
すなわち、基板を複数の搬送ローラにより水平方向に向けて搬送しながら、基板の表面と対向配置されたスリットノズルやスプレーノズルから基板の表面に処理液を供給することにより、基板を処理液により処理することが考えられる。しかしながら、基板の表面が強い撥液性(撥水性)を有する場合には、処理液が基板の表面ではじかれてしまい、基板の表面全域に処理液を供給できないという問題が発生する。
【0005】
特に、処理液としてエッチング液を使用したエッチング処理においては、エッチング処理を開始した後に基板の表面が強い撥液性となり、処理液としてのエッチング液が基板の表面ではじかれることになる。このため、極めて多量の処理液を基板の表面に供給することで、基板表面の全域に処理液を行き渡らせることも考えられるが、この場合には、極めて多量の処理液を消費するという問題が生ずる。
【0006】
このため、本出願人は、ガラス基板を水平方向に搬送する搬送ローラと、処理液吐出口が形成されこの処理液吐出口とガラス基板の表面との間が処理液の液膜により液密状態となる位置に配置された処理液吐出ノズルと、処理液保持面を備え処理液吐出口と処理液保持面との間に処理液の液溜まりを形成可能となる位置に配置された液溜まり保持部材と、ガラス基板の裏面に洗浄液を供給する裏面洗浄部とを備えた基板処理装置を提案している(特許文献2参照)。この基板処理装置によれば、処理液吐出ノズルと液溜まり保持部材との間に形成された液溜まりの作用により、多量の処理液を消費することなく、基板の表面全域に有効に処理液を供給することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−17461号公報
【特許文献2】特開2010−219187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献2に記載の発明によれば、多量の処理液を消費することなく基板の表面全域に有効に処理液を供給することが可能となるが、処理液吐出口と処理液保持面との間に形成された処理液の液溜まり中に基板が進入したときに、基板の裏面側に少量の処理液が部分的に回り込む現象が発生する。そして、この処理液が搬送ローラに再付着した場合には、その搬送ローラにより搬送される基板の裏面が不均一に処理される。このとき、処理液として、例えば、フッ酸(フッ化水素酸/HF)が使用された場合には、基板の裏面が不均一にエッチングされ、目視で確認されるムラが生ずる場合もある。
【0009】
このため、特許文献2に記載の発明においては、ガラス基板の裏面に洗浄液を供給する裏面洗浄部により基板の裏面側に回り込んだ処理液を除去することで、このような問題の発生を防止している。
【0010】
しかしながら、基板の裏面に洗浄液を供給する構成を採用した場合には、基板の表面に供給し、基板の表面等から滴下した処理液を再利用しようとしても、この処理液が洗浄液により希釈されることから、処理液の再利用ができないという問題が生ずる。
【0011】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、多量の処理液を消費することなく基板の表面全域に有効に処理液を供給することが可能であり、さらに、処理液を回収して再利用することが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、基板をその主面が略水平方向となる状態で支持するとともに、その基板を略水平方向に搬送する複数の搬送ローラと、下方を向く第1の処理液吐出口が前記複数の搬送ローラによる基板の搬送方向と交差する方向に延設されるとともに、前記第1の処理液吐出口と前記複数の搬送ローラにより搬送される基板の表面との距離が、それらの間が前記第1の処理液吐出口より吐出された処理液の液膜により液密状態となる位置に配置された第1処理液吐出ノズルと、上方を向く第2の処理液吐出口が前記複数の搬送ローラによる基板の搬送方向と交差する方向に延設されるとともに、第1の処理液吐出口と対向する位置に処理液の液溜まりを保持する処理液保持面を備え、前記第1の処理液吐出口と前記処理液保持面との距離が、それらの間に処理液の液溜まりを形成可能となる位置に配置されるとともに、前記複数の搬送ローラにより搬送される基板の裏面と前記処理液保持面との距離が、それらの間が前記第2の処理液吐出口より吐出された処理液の液膜により液密状態となる位置に配置された第2処理液吐出ノズルと、前記第1処理液吐出ノズルおよび前記第2処理液吐出ノズルに供給する処理液を貯留する処理液貯留部と、前記第1処理液吐出ノズルおよび前記第2処理液吐出ノズルの下方に配置された処理液回収部と、前記処理液回収部に回収された処理液を前記処理液貯留部に送液する送液手段と、を備え、前記複数の搬送ローラのうち、少なくとも、前記複数の搬送ローラによる基板の搬送方向に対して前記第1処理液吐出ノズルおよび前記第2処理液吐出ノズルよりも下流側に配設された搬送ローラと、基板の裏面との接触時間が、基板の裏面全域において略同一となることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1処理液吐出口および前記第2処理液吐出口は、前記複数の搬送ローラによる基板の搬送方向と交差する方向に列設された多数の穴から構成される。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記第2処理液吐出ノズルの表面には、液溜まり保持用の凹部が形成されるとともに、前記第2処理液吐出口は、前記凹部内に形成される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、前記処理液はフッ酸である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発明において、前記複数の搬送ローラは、それぞれ基板の裏面全域に当接する長尺で丸棒形状を有している。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発明において、前記複数の搬送ローラは、それぞれ基板の搬送方向と直交する方向を向く軸を中心に回転可能であり、かつ、基板の搬送方向と直交する方向の大きさが比較的小さい円盤形状を有しており、基板の搬送方向と直交する方向において全体として千鳥状に配置されている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、多量の処理液を消費することなく基板の表面全域に有効に処理液を供給することが可能であり、さらに、処理液を回収して再利用することが可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば基板の搬送方向と交差する方向に列設された複数の第1、第2処理液吐出口から、基板の両面全域に処理液を供給することが可能となる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、第2処理液吐出ノズルの表面に形成された凹部の作用により、処理液の液溜まりを容易に形成することが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、フッ酸により生ずる基板裏面のエッチングムラを有効に防止することが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、基板の裏面全域に当接する長尺で丸棒形状を有する搬送ローラを利用して、当該搬送ローラと基板の裏面との接触時間を基板の裏面全域において略同一とすることにより、基板の裏面にエッチングムラが生ずることを有効に防止することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、円盤形状を有し千鳥状に配置された搬送ローラを利用して、当該搬送ローラと基板の裏面との接触時間を基板の裏面全域において略同一とすることにより、基板の裏面にエッチングムラが生ずることを有効に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明に係る基板処理装置の側面概要図である。
【図2】搬送ローラ9と第1処理液吐出ノズル2との配置を示す平面図である。
【図3】塗布ユニット1を拡大して示す側面図である。
【図4】第1処理液吐出ノズル2の下面図である。
【図5】第2処理液吐出ノズル4の概要を示す図である。
【図6】第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4への処理液の供給機構を示す概要図である。
【図7】この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。
【図8】この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。
【図9】この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。
【図10】他の実施形態に係る搬送ローラ91と第1処理液吐出ノズル2との配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る基板処理装置の側面概要図である。また、図2は、その搬送ローラ9と第1処理液吐出ノズル2との配置を示す平面図である。さらに、図3は、塗布ユニット1を拡大して示す側面図である。
【0026】
この基板処理装置は、アモルファスシリコン層がその表面に形成されたガラス基板100に対してレーザーアニールを行う前に、シリコン層表面に形成された酸化膜のエッチングを行うためのものである。この基板処理装置は、ガラス基板100をその主面が水平方向となる状態で支持するとともに、このガラス基板100を水平方向に搬送する複数の搬送ローラ9と、2個の塗布ユニット1a、1b(これらを総称するときには「塗布ユニット1」という)を備える。
【0027】
各塗布ユニット1は、複数の搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面に処理液を供給するための第1処理液吐出ノズル2と、この第1処理液吐出ノズル2との間に処理液の液溜まりを形成するとともに、複数の搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面に処理液を供給するための第2処理液吐出ノズル4とを備える。搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100に対し、このような構成を有する2個の塗布ユニット1a、1bの作用により、その表面および裏面への処理液の塗布が、繰り返し実行される。
【0028】
なお、この基板処理装置においては、ガラス基板100を搬送する各搬送ローラ9は、各搬送ローラ9とガラス基板100の裏面との接触時間が、ガラス基板100の裏面全域において同一となるように、ガラス基板100の裏面全域に当接する長尺で丸棒形状を有している。
【0029】
最初に、塗布ユニット1における第1処理液吐出ノズル2の構成について説明する。図4は、第1処理液吐出ノズル2の下面図である。
【0030】
この第1処理液吐出ノズル2は、ガラス基板100の表面に処理液を塗布するためのものであり、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100と対向する下面に、多数の第1処理液吐出口21が形成された構成を有する。これらの第1処理液吐出口21は、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向に列設されている。この第1処理液吐出口21は、例えば、0.5mm程度の直径を有し、第1処理液吐出ノズル2の長手方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)に、5mm乃至10mm程度のピッチで形成されている。この第1処理液吐出口21は、ガラス基板100の幅方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)全域にわたって設けられている。
【0031】
ガラス基板100の処理時には、後述するように、この第1処理液吐出口21から処理液が吐出され、ガラス基板100の表面に供給される。このとき、後述するように、第1処理液吐出口21と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との距離は、それらの間が第1処理液吐出口21より吐出された処理液の液膜により液密状態となるようにする必要があることから、できるだけ小さいことが好ましい。一方、第1処理液吐出口21と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との距離を過度に小さくすると、ガラス基板100と第1処理液吐出ノズル2とが衝突するおそれがある。ガラス基板100と第1処理液吐出ノズル2との衝突を回避しながら、第1処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間を処理液の液膜により液密状態とするためには、第1処理液吐出ノズル2における第1処理液吐出口21(すなわち、第1処理液吐出ノズル2の下面)と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との距離D1(図3参照)は、1mm乃至2mmとすることが好ましい。
【0032】
また、第1処理液吐出ノズル2と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との間が、第1処理液吐出口21より吐出された処理液の液膜により液密状態となるようにするためには、第1処理液吐出ノズル2の下面の形状を、平面状とするか、あるいは、ガラス基板100の搬送方向と鉛直方向とを含む平面による断面形状が下方が凸となる円弧状とすることが好ましい。このような形状を採用することにより、第1処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間に処理液の液膜を形成することができ、液密状態を容易に達成することが可能となる。なお、第1処理液吐出ノズル2の下面を上述したような下方が凸となる円弧状とするためには、第1処理液吐出ノズル2を、例えば、複数の第1処理液吐出口がその下端部に形成されたパイプから構成すればよい。そして、この第1処理液吐出ノズル2の材質は、金属イオン等が溶出することがなく、処理の清浄性を確保できる、例えば、フッ素樹脂製のものを採用することが好ましい。
【0033】
次に、塗布ユニット1における第2処理液吐出ノズル4の構成について説明する。図5は、第2処理液吐出ノズル4の概要を示す図であり、図5(a)は第2処理液吐出ノズル4の部分斜視図、また、図5(b)は第2処理液吐出ノズル4の縦断面図である。
【0034】
この第2処理液吐出ノズル4は、ガラス基板100の裏面に処理液を塗布するためのものである。この第2処理液吐出ノズル4は、その上面が処理液の液溜まりを保持する処理液保持面42となっている。そして、この処理液保持面42には、処理液の液溜まり保持用の凹部43が凹設されており、この凹部43内には第2処理液吐出口41が形成されている。
【0035】
凹部43は、処理液保持面42に好適に処理液の液溜まりを保持するために使用される。すなわち、第2処理液吐出ノズル4の材質としては、金属イオン等が溶出することがなく、処理の清浄性を確保できる、第1処理液吐出ノズル2と同様の、例えば、フッ素樹脂製のものを採用することが好ましい。ここで、フッ素樹脂は処理液をはじく強い撥液性を有する。このため、処理液が第2処理液吐出ノズル4における処理液保持面42から流下しやすくなる。このような流下を防止するために、処理液保持面42には凹部43が形成されている。なお、第2処理液吐出ノズル4の材質として塩化ビニール等の樹脂を使用する場合には、この凹部43を省略してもよい。
【0036】
図5(a)に示すように、この凹部43は、第2処理液吐出ノズル4の長手方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)に延びる形状を有する。この凹部43は、ガラス基板100の幅方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)全域にわたって形成されている。そして、第2処理液吐出口41は、凹部43に沿って複数個列設されている。
【0037】
ガラス基板100の処理時には、後述するように、この第2処理液吐出口41から処理液が吐出され、ガラス基板100の裏面に供給される。このとき、後述するように、処理液保持面42と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面との距離は、それらの間が第2処理液吐出口41より吐出された処理液の液膜により液密状態となるようにする必要があることから、できるだけ小さいことが好ましい。また、ガラス基板100に処理液を供給する前の段階で、後述するように、第1処理液吐出ノズル2の第1処理液吐出口21と第2処理液吐出ノズル4の第2処理液吐出口41から処理液が吐出され、第1処理液吐出ノズル2と第2処理液吐出口4の処理液保持面42との間に、処理液の液溜まりを形成する必要がある。このためには、第1処理液吐出ノズル2と第2処理液吐出ノズル4の処理液保持面42との距離は、ガラス基板100が通過できる範囲で、できるだけ小さいことが好ましい。一方、第2処理液吐出ノズル4と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面との距離を過度に小さくすると、ガラス基板100と第2処理液吐出ノズル4とが衝突するおそれがある。ガラス基板100と第2処理液吐出ノズル4との衝突を回避しながら、第2処理液吐出ノズル4の処理液保持面42とガラス基板100の裏面との間を処理液の液膜により液密状態とするためには、第2処理液吐出ノズル4における処理液保持面42と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面との距離D2(図3参照)は、1mm乃至2mmとすることが好ましい。
【0038】
なお、第1処理液吐出ノズル2と第2処理液吐出ノズル4の処理液保持面42との間に形成される処理液の液溜まりは、第1処理液吐出ノズル2と第2処理液吐出ノズル4の処理液保持面42との間の全域に形成される必要はない。例えば、第1処理液吐出ノズル2の長手方向におけるところどころの領域で、部分的に液溜まりが形成されない領域が存在してもよい。第1処理液吐出ノズル2と第2処理液吐出ノズル4の処理液保持面42との間の一定の領域に液溜まりが形成されれば、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の先端部が液溜まりに進入するときに、第1処理液吐出ノズル2と第2処理液吐出ノズル4の処理液保持面42との間の一定の領域に形成された液溜まりを、第1処理液吐出ノズル2と第2処理液吐出ノズル4の処理液保持面42との間の全領域に広げることができる。
【0039】
図6は、第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4への処理液の供給機構を示す概要図である。
【0040】
図6に示すように、第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4は、処理液を貯留する貯留槽6と、ポンプ7および管路8を介して接続されている。貯留槽6に貯留された処理液は、ポンプ7の作用により、管路8を介して第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4に送液される。また、第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4の下方には、処理液回収部5が配設されており、この処理液回収部5と貯留槽6とは、管路10により接続されている。第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4から吐出され、ガラス基板100から流下した処理液は、この処理液回収部5および管路10を介して貯留槽6に回収される。
【0041】
なお、貯留槽6は、各塗布ユニット1a、1b毎に、別個のものを使用してもよく、また、塗布ユニット1a、1bに共通のものを使用してもよい。
【0042】
ここで、第1処理液吐出ノズル2における第1処理液吐出口21としては、ガラス基板100を処理しないときの処理液の流下を防止するため、そこに供給された処理液に圧力が付与されない状態においては、処理液の表面張力の作用により第1処理液吐出口21より処理液が流下しない大きさとすることが好ましい。すなわち、ポンプ7が駆動していない状態においては、処理液の表面張力の作用により第1処理液吐出口21より処理液が流下しない大きさである。この第1処理液吐出口21の大きさとしては、処理液の粘度にも左右されるが、上述したように0.5mm程度とすることが好ましい。
【0043】
但し、ガラス基板100の搬送方向と直交する方向に列設された多数の第1処理液吐出口21に替えて、ガラス基板100の搬送方向と直交する方向に延びるスリット状の吐出口を採用してもよい。
【0044】
上述した2個の塗布ユニット1a、1bからは、処理液としてのエッチング液が供給される。このようなエッチング液としては、例えば、フッ酸(フッ化水素酸/HF)が使用される。なお、意図的にガラス基板100の表面に均一な酸化膜を形成するため、塗布ユニット1aから、または、塗布ユニット1bから、あるいは、塗布ユニット1aと1bから、エッチング液に代えてオゾン水を供給してもよい。
【0045】
次に、上述した基板処理装置によりガラス基板100を処理する処理動作について説明する。図7乃至図9は、この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。
【0046】
複数の搬送ローラ9により水平方向に搬送されるガラス基板100の先端が塗布ユニット1に到達する前に、図7に示すように、第1処理液吐出ノズル2の第1処理液吐出口21および第2処理液吐出ノズル4の第2処理液吐出口41から少量の処理液を吐出し、予め、第1処理液吐出ノズル2における第1処理液吐出口21と第2処理液吐出ノズル4における処理液保持面42との間に、処理液の液溜まり51を形成しておく。なお、第2処理液吐出ノズル4から流下する処理液は、処理液回収部5により回収され、貯留槽6に送液される。
【0047】
この状態において、さらに搬送ローラ9によりガラス基板100の搬送を継続すると、図8に示すように、ガラス基板100の先端が、第1処理液吐出ノズル2と第2処理液吐出ノズル4との間に形成された処理液の液溜まり51中に進入する。
【0048】
この状態でさらにガラス基板100が水平方向に搬送された場合には、図9に示すように、第1処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間に処理液の液膜52が形成され、第1処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間は、処理液の液膜52により液密状態となる。また、第2処理液吐出ノズル4とガラス基板100の裏面との間に処理液の液膜53が形成され、第2処理液吐出ノズル4とガラス基板100の裏面との間は、処理液の液膜53により液密状態となる。
【0049】
すなわち、ガラス基板100の先端が第1処理液吐出ノズル2と第2処理液吐出ノズル4との間に形成された処理液の液溜まり51中に進入した後、処理液の表面張力により第1処理液吐出ノズル2から吐出された処理液と第2処理液吐出ノズル4から吐出された処理液とが引っ張られるようにして、ガラス基板100の表面および裏面全域にそこではじかれることなく塗り広げられる。このときには、第1処理液吐出ノズル2や第2処理液吐出ノズル4の長手方向におけるところどころの領域で部分的に液溜まりが形成されない領域が存在していたとしても、ガラス基板100が移動を継続することに伴って、これらの領域は処理液で満たされ、第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4とガラス基板100の表裏両面との間は、処理液の液膜52、53により液密状態となる。ここで、液密状態とは、それらの間が全て処理液で満たされた状態を指す。
【0050】
そして、第1処理液吐出ノズル2とガラス基板100との間を処理液の液膜52により液密とし、第2処理液吐出ノズル4とガラス基板100の裏面との間を処理液の液膜53により液密としたままの状態でガラス基板100が水平方向に搬送されることにより、図9に示すように、ガラス基板100の表面および裏面全域に処理液が供給される。
【0051】
このように、この基板処理装置においては、ガラス基板100の表面のみならず、ガラス基板100の裏面にも、処理液が供給される。このとき、この基板処理装置においては、ガラス基板100の裏面全域に処理液が均一に塗布されることから、従来のように、ガラス基板100の裏面に部分的に処理液が回り込んで、ガラス基板100の裏面が不均一にエッチングされ、エッチングムラが発生することを防止することが可能となる。
【0052】
そして、この基板処理装置においては、ガラス基板100の裏面に当接してこのガラス基板100を搬送する搬送ローラ9として、ガラス基板100の裏面全域に当接する長尺で丸棒形状を有するものを採用していることから、各搬送ローラ9とガラス基板100の裏面との接触時間が、ガラス基板100の裏面全域において同一となる。このため、ガラス基板100の裏面が搬送ローラ9との接触により不均一にエッチングされることを有効に防止することが可能となる。
【0053】
なお、このような効果を奏するためには、ガラス基板100を搬送する複数の搬送ローラ9のうち、少なくとも、ガラス基板100の搬送方向に対して第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4よりも下流側に配設された搬送ローラ9に対して、ガラス基板100の裏面との接触時間がガラス基板100の裏面全域において略同一となる構成を採用すればよい。また、搬送ローラ9としては、ガラス基板100の裏面全域に当接する長尺で丸棒形状以外の形状のものを使用してもよい。
【0054】
図10は、他の実施形態に係る搬送ローラ91と第1処理液吐出ノズル2との配置を示す平面図である。
【0055】
この実施形態に係る搬送ローラ91は、それぞれが、ガラス基板100の搬送方向と直交する方向を向く軸を中心に回転可能であり、かつ、ガラス基板100の搬送方向と直交する方向の大きさが比較的小さい円盤形状を有しており、第1処理液吐出ノズル2をはさんで全体として基板搬送方向に直交する方向において千鳥状に配置されている。このような搬送ローラ91を使用した場合であっても、ガラス基板100の搬送方向に対して第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4よりも下流側に配設された搬送ローラ91が、これらの搬送ローラ91とガラス基板100との接触時間の合計が基板の裏面全域において略同一となるように各搬送ローラ91を配置することにより、ガラス基板100の裏面が搬送ローラ91との接触により不均一にエッチングされ、エッチングムラが発生することを有効に防止することが可能となる。
【0056】
このような構成は、上述したように、少なくとも、ガラス基板100の搬送方向に対して第1処理液吐出ノズル2および第2処理液吐出ノズル4よりも下流側に配設された搬送ローラに対して採用すればよい。また、ガラス基板100の裏面全域に当接する長尺で丸棒形状を有する搬送ローラ9と、円盤状の搬送ローラ91との両方を使用して、ガラス基板100を搬送するようにしてもよい。
【0057】
なお、上述した実施形態においては、ガラス基板100を、その主面が水平方向となる状態で支持して、水平方向に搬送しているが、ガラス基板100がわずかに傾斜していてもよい。例えば、ガラス基板100がその搬送方向と直交する方向に対して1度程度傾斜していても、この発明を適用することは可能である。すなわち、この発明は、ガラス基板100を正確に水平方向に支持する場合に限らず、略水平方向に支持する場合においても適用が可能である。
【0058】
また、上述した実施形態においては、ガラス基板100の表面にエッチング液としてのフッ酸等を供給しているが、この発明はこれに限定されるものではない。例えば、ガラス基板100に対して現像液を供給することにより現像処理を行う基板処理装置にこの発明を適用してもよい。さらに、その他の処理液を使用する基板処理装置にこの発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 塗布ユニット
2 第1処理液吐出ノズル
4 第2処理液吐出ノズル
5 処理液回収部
6 貯留槽
7 ポンプ
8 管路
9 搬送ローラ
10 管路
21 第1処理液吐出口
41 第2処理液吐出口
42 処理液保持面
43 凹部
91 搬送ローラ
100 ガラス基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をその主面が略水平方向となる状態で支持するとともに、その基板を略水平方向に搬送する複数の搬送ローラと、
下方を向く第1の処理液吐出口が前記複数の搬送ローラによる基板の搬送方向と交差する方向に延設されるとともに、前記第1の処理液吐出口と前記複数の搬送ローラにより搬送される基板の表面との距離が、それらの間が前記第1の処理液吐出口より吐出された処理液の液膜により液密状態となる位置に配置された第1処理液吐出ノズルと、
上方を向く第2の処理液吐出口が前記複数の搬送ローラによる基板の搬送方向と交差する方向に延設されるとともに、第1の処理液吐出口と対向する位置に処理液の液溜まりを保持する処理液保持面を備え、前記第1の処理液吐出口と前記処理液保持面との距離が、それらの間に処理液の液溜まりを形成可能となる位置に配置されるとともに、前記複数の搬送ローラにより搬送される基板の裏面と前記処理液保持面との距離が、それらの間が前記第2の処理液吐出口より吐出された処理液の液膜により液密状態となる位置に配置された第2処理液吐出ノズルと、
前記第1処理液吐出ノズルおよび前記第2処理液吐出ノズルに供給する処理液を貯留する処理液貯留部と、
前記第1処理液吐出ノズルおよび前記第2処理液吐出ノズルの下方に配置された処理液回収部と、
前記処理液回収部に回収された処理液を前記処理液貯留部に送液する送液手段と、
を備え、
前記複数の搬送ローラのうち、少なくとも、前記複数の搬送ローラによる基板の搬送方向に対して前記第1処理液吐出ノズルおよび前記第2処理液吐出ノズルよりも下流側に配設された搬送ローラと、基板の裏面との接触時間が、基板の裏面全域において略同一となることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記第1処理液吐出口および前記第2処理液吐出口は、前記複数の搬送ローラによる基板の搬送方向と交差する方向に列設された多数の穴から構成される基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置において、
前記第2処理液吐出ノズルの表面には、液溜まり保持用の凹部が形成されるとともに、前記第2処理液吐出口は、前記凹部内に形成される基板処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理液はフッ酸である基板処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記複数の搬送ローラは、それぞれ基板の裏面全域に当接する長尺で丸棒形状を有している基板処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記複数の搬送ローラは、それぞれ基板の搬送方向と直交する方向を向く軸を中心に回転可能であり、かつ、基板の搬送方向と直交する方向の大きさが比較的小さい円盤形状を有しており、基板の搬送方向と直交する方向において全体として千鳥状に配置されている基板処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−27831(P2013−27831A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166810(P2011−166810)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】