説明

基板処理装置

【課題】制御パラメータの測定値が、その基準値に対して偏差の上限値を超えた場合と偏差の下限値を超えた場合とで、状況に応じたエラー処理を選択できる。
【解決手段】基板を処理する基板処理室と、記憶部と、基板処理を制御する制御部とを備えた基板処理装置において、記憶部は、プロセスレシピを記憶するプロセスレシピ記憶部と、制御パラメータの基準値を記憶する制御パラメータ記憶部と、制御パラメータの基準値に対する上限偏差値と下限偏差値を記憶するアラーム値記憶部とを備え、制御部は、プロセスレシピ記憶部に記憶したプロセスレシピを実行するプロセスレシピ実行部と、制御パラメータの測定値がアラーム値記憶部に記憶された上限偏差値と下限偏差値を超えたか否か判断し、上限偏差値を超えた場合と下限偏差値を超えた場合とで、異なる処理を実施するエラー処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板を処理する基板処理装置において、処理温度、処理ガス流量、処理室内圧力等の設定基準値に対する偏差が、その許容範囲から外れた場合に行うエラー処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に、基板処理装置としての、半導体装置の製造装置(半導体製造装置)の斜視図を示す。図1に示す基板処理装置は、複数のウエハ(基板)を収容する基板収容器であるポッド110を一時的に保管する回転棚105と、ポッド110を搬送するポッド搬送装置118と、ウエハを積層するように搭載するボート217と、回転棚105に搭載されたポッド110とボート217との間でウエハの移載を行うウエハ移載機125と、基板処理室(不図示)と該基板処理室の周囲にヒータ(不図示)を備えた熱処理炉202と、ボート217を熱処理炉202内に搬入、及び搬出するボートエレベータ115と、記憶部や操作部や表示部(不図示)等の基板処理装置の各構成部と、各構成部を制御する制御部(不図示)とを備えている。そして、制御部が、記憶部に記憶したプロセスレシピに基づき、熱処理等のウエハ処理を実行する。
【0003】
従来の基板処理装置においては、例えばプロセスレシピ実行中に、制御パラメータの測定値、例えば熱処理炉202内の処理温度が、所定の設定値(基準値)から所定の偏差内にあるか否か監視しており、該所定の偏差から外れると、予め固定されたエラー処理が行われる。偏差エラーは従来、軽度エラーとして扱われ、エラー処理は待機(HOLD)とし、偏差内に収まるまで待つ程度であった。
例えば、あるプロセスで基板を成膜処理中であった場合、処理温度が偏差の上限値を超えてエラーとなった場合は、形成した膜が異常となった可能性が高いので、重度エラーとして成膜処理を停止させるリセット処理を実施し、処理温度が偏差の下限値を超えてエラーとなった場合は、形成した膜を正常に復帰できる可能性があるので、軽度エラーとして成膜処理を継続実行させるリカバリ処理を実施したいような場合にも、上述のように予め固定された同じエラー処理しか実施できないようになっていた。
【0004】
下記の特許文献1には、基板処理を実施する際に、ガス流量の上限値や下限値をチェックし、異常と判定されたときにエラー処理を実施する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-335428公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の基板処理装置においては、制御パラメータの測定値が、所定の基準値に対して、偏差の上限値を超えた場合と偏差の下限値を超えた場合とで、予め固定された同じエラー処理が行われるようになっており、状況に応じたエラー処理を行うことができないという課題があった。
本発明の目的は、制御パラメータの測定値が、所定の基準値に対して、偏差の上限値を超えた場合と偏差の下限値を超えた場合とで、異なるエラー処理を行うことが可能な基板処理装置あるいは半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための、本発明の基板処理装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
基板を処理する基板処理室と、記憶部と、基板処理を制御する制御部とを備えた基板処理装置であって、
前記記憶部は、
プロセスレシピを記憶するプロセスレシピ記憶部と、該プロセスレシピで制御対象とされる制御パラメータの基準値を記憶する制御パラメータ記憶部と、前記制御パラメータの基準値に対する上限偏差値と下限偏差値を記憶するアラーム値記憶部とを備え、
前記制御部は、
前記プロセスレシピ記憶部に記憶したプロセスレシピを実行するプロセスレシピ実行部と、基板処理時における前記制御パラメータを測定する制御パラメータ測定部と、前記制御パラメータ測定部で測定された制御パラメータの測定値が前記アラーム値記憶部に記憶された前記上限偏差値と前記下限偏差値を超えたか否か判断し、前記上限偏差値を超えた場合と前記下限偏差値を超えた場合とで、異なる処理を実施するエラー処理部とを備える基板処理装置。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、制御パラメータの測定値が、所定の基準値に対して、偏差の上限値を超えた場合と偏差の下限値を超えた場合とで、異なるエラー処理を選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る基板処理装置の垂直断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基板処理装置の機能ブロック図の構成例である。
【図4】本発明の実施形態に係る制御部のエラー処理動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における基板処理装置を説明する。本実施形態において、基板処理装置は、一例として、半導体装置(IC:Integrated Circuit)の製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置として構成されている。なお、以下の説明では、基板処理装置として基板に酸化、拡散処理やCVD(Chemical Vapor Deposition)処理などを行うバッチ式縦型半導体製造装置(以下、単に処理装置という)を適用した場合について述べる。図1は、本発明が適用される処理装置の平面透視図であり、斜視図として示されている。また、図2は図1に示す処理装置の側面透視図である。
【0011】
図2に示されているように、本実施形態の処理装置100は、シリコン等からなるウエハ(基板)200を収納するウエハキャリアとしてポッド110を使用し、筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aには、ポッド搬入搬出口112が、筐体111の内外を連通するように開設されており、ポッド搬入搬出口112は、フロントシャッタ113によって開閉される。ポッド搬入搬出口112の正面前方側には、ロードポート114が設置されており、ロードポート114は、ポッド110を載置する。ポッド110は、ロードポート114上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、ロードポート114上から搬出される。
【0012】
筐体111内の前後方向の略中央部における上部には、回転棚105が設置されており、回転棚105は、支柱116を中心に回転し、棚板117に複数個のポッド110を保管する。
図2に示すように、筐体111内におけるロードポート114と回転棚105との間には、ポッド搬送装置118が設置されている。ポッド搬送装置118は、ポッド110を保持したまま昇降可能なポッドエレベータ118aと、水平搬送機構としてのポッド搬送機構118bとで構成されており、ロードポート114、回転棚105、ポッドオープナ121との間で、ポッド110を搬送する。
【0013】
図2に示すように、筐体111内の前後方向の略中央部における下部には、サブ筐体119が後端にわたって構築されている。サブ筐体119の正面壁119aには、ウエハ200をサブ筐体119内に対して搬入搬出するためのウエハ搬入搬出口120が1対、垂直方向に上下2段に並べられて開設されており、上下段のウエハ搬入搬出口120、120には1対のポッドオープナ121、121がそれぞれ設置されている。
ポッドオープナ121は、ポッド110を載置する載置台122、122と、ポッド110のキャップ(蓋体)を着脱するキャップ着脱機構123、123とを備えている。ポッドオープナ121は、載置台122に載置されたポッド110のキャップをキャップ着脱機構123によって着脱することにより、ポッド110のウエハ出し入れ口を開閉する。載置台122は、基板を移載する際に基板収容器が載置される移載棚である。
【0014】
図2に示すように、サブ筐体119は、ポッド搬送装置118や回転棚105の設置空間の雰囲気と隔絶された移載室124を構成している。移載室124の前側領域には、ウエハ移載機構125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200をツイーザ125cに載置して水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125a、およびウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ125bとで構成されている。これら、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびウエハ移載装置125aの連続動作により、ボート217に対して、ウエハ200を装填および脱装する。
【0015】
図1に示されているように、移載室124内には、清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア133を供給するよう、供給フアンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134が設置されている。
図2に示すように、ボート217の上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202は、内部に基板処理室(不図示)を備え、該基板処理室の周囲には、基板処理室内を加熱するヒータ(不図示)を備える。処理炉202の下端部は、炉口ゲートバルブ147により開閉される。
【0016】
図1に示されているように、ボート217を昇降させるためのボートエレベータ115が設置されている。ボートエレベータ115に連結されたアーム128には、シールキャップ219が水平に据え付けられており、シールキャップ219は、ボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
ボート217は、複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜125枚程度)のウエハ200を、その中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0017】
次に、本実施形態の処理装置の動作について説明する。
図1、図2に示されているように、ポッド110がロードポート114に供給されると、ポッド搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放され、ポッド搬入搬出口112から搬入される。
搬入されたポッド110は、回転棚105の指定された棚板117へ、ポッド搬送装置118によって、自動的に搬送されて受け渡される。
【0018】
ポッド110は回転棚105で一時的に保管された後、棚板117から一方のポッドオープナ121に搬送されて載置台122に移載されるか、もしくは、ロードポート114から直接、ポッドオープナ121に搬送されて、載置台122に移載される。この際、ポッドオープナ121のウエハ搬入搬出口120は、キャップ着脱機構123によって閉じられており、移載室124にはクリーンエア133が流通され、充満されている。
【0019】
図2に示すように、載置台122に載置されたポッド110は、そのキャップが、キャップ着脱機構123によって取り外され、ポッド110のウエハ出し入れ口が開放される。また、ウエハ200は、ポッド110からウエハ移載装置125aによってピックアップされ、ボート217へ移載されて装填される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aは、ポッド110に戻り、次のウエハ110をボート217に装填する。
【0020】
この一方(上段または下段)のポッドオープナ121におけるウエハ移載装置125aによるウエハ200のボート217への装填作業中に、他方(下段または上段)のポッドオープナ121には、回転棚105ないしロードポート114から別のポッド110がポッド搬送装置118によって搬送され、ポッドオープナ121によるポッド110の開放作業が同時進行される。
【0021】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、処理炉202の下端部が炉口ゲートバルブ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されて、シールキャップ219に支持されたボート217が、処理炉202内の基板処理室へ搬入されて行く。
【0022】
ローディング後は、基板処理室内でウエハ200に任意の処理が実施される。処理後は、ボートエレベータ115によりボート217が引き出され、その後は、概上述の逆の手順で、ウエハ200およびポッド110は筐体111の外部へ払出される。
【0023】
次に、図3を参照して、制御部10を中心とした基板処理装置の機能ブロック構成について説明する。
図3に示されるように、制御部10には、操作部31、表示部32、ウエハ移載機構125、反応炉202のヒータ34、ポンプ・圧力バルブ35、ガス配管・MFC(マスフローコントローラ:流量制御装置)36、記憶部20等の各構成部が電気的に接続されており、制御部10は、これらの各構成部を制御する。
操作部31は、操作員が基板処理装置に対し行う各種操作や入力を受け付ける。表示部32は、基板処理装置を操作するための操作画面などを表示する。ウエハ移載機構125は、ボート217とポッド110との間で、ウエハを移載する。ヒータ34は、反応炉202を加熱する。ポンプ・圧力バルブ35は、反応炉202内の基板処理室内の雰囲気の圧力調整や排気を行う。ガス配管・MFC36は、基板処理室内へ処理用ガス等を供給し、また供給流量を調整する。
【0024】
記憶部20は、プロセスレシピ記憶部21と、エラーレシピ記憶部22と、制御パラメータ記憶部23と、アラーム値記憶部24とを備える。記憶部20は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成することができる。
プロセスレシピ記憶部21は、基板処理を行うためのプロセスレシピ(基板処理のシーケンス)を記憶する。例えば、プロセスレシピは、プロセスレシピ実行中にエラーを検出した場合に、該エラーの内容に応じて後述のエラーレシピ記憶部22からエラーレシピを選択し実行するように構成することができる。エラーレシピは、プロセスレシピのサブルーチンとして構成することができる。
【0025】
エラーレシピ記憶部22は、例えば、プロセスレシピ実行中にエラーを検出した場合に実行されるエラー処理を行うためのエラーレシピを記憶する。エラー処理としては、重度のエラー処理の場合と軽度のエラー処理の場合がある。エラーレシピ記憶部22は、重度のエラー処理の場合と軽度のエラー処理の場合の、それぞれの場合に用いるエラーレシピを記憶するよう構成される。重度のエラー処理と軽度のエラー処理の詳細については後述する。
【0026】
制御パラメータ記憶部23は、プロセスレシピで制御対象とされる制御パラメータの基準値を記憶する。この制御パラメータは、基板処理室内の温度や、基板処理室内へ供給する処理ガスの流量や、基板処理室内の圧力等であり、例えば、基板処理時における基板処理室内の温度として800℃、処理ガスの流量として200sccm、基板処理室内の圧力として500Paを基準値として記憶する。制御パラメータ記憶部23の内容は、その内容を表示部32に表示した状態で、操作部31から、操作員が設定、変更することができるように構成されている。
なお、制御パラメータ記憶部23は、プロセスレシピの一部として、プロセスレシピ中に組み込むように構成してもよい。
【0027】
アラーム値記憶部24は、前述した制御パラメータの基準値に対する上限偏差値と下限偏差値を記憶する。例えば、基板処理時における基板処理室内の設定温度(基準値)が800℃の場合、上限偏差値として30℃、下限偏差値として60℃を記憶する。この場合は、基板処理室内の測定温度が、830℃より高くなるか、又は740℃より低くなると、上限偏差値又は下限偏差値を超えたので、異常状態としてエラー処理が行われることになる。
アラーム値記憶部24は、ガス流量や圧力等の温度以外の制御パラメータに対しても、温度の場合と同様に、それらの基準値に対する上限偏差値と下限偏差値を記憶する。
【0028】
制御部10は、ウエハ移載機構125の位置を制御する位置コントローラ(図示せず)、反応炉202を加熱するヒータの温度を制御する温度コントローラ(図示せず)、反応炉202内の基板処理室内の雰囲気を排気するための減圧排気装置としての真空ポンプ・圧力バルブを開閉、調整する圧力コントローラ(図示せず)、基板処理室に連通する原料ガス供給管等の開閉と、原料ガス供給管等に配置されたMFC(流量制御装置)の流量を制御する弁コントローラ(図示せず)等を含む。
【0029】
さらに、制御部10は、プロセスレシピ実行部11と、制御パラメータ測定部12と、エラー処理部13と、アラーム値設定部14と、表示部32の表示内容を制御する表示制御部15とを備える。制御部10は、ハードウエア構成としては、CPU(Central Processing Unit)と制御部10の動作プログラム等を格納するメモリを備えており、CPUは、この動作プログラムに従って動作する。
【0030】
プロセスレシピ実行部11は、例えば操作部31からの操作員の指示等に基づき、前記プロセスレシピ記憶部21に記憶したプロセスレシピを読み出して、プロセスレシピに記述されたプロセスステップ等のステップを、順次実行する。例えば、プロセスレシピにおいて制御パラメータに基づき基板処理室内の温度を設定するよう記述され、制御パラメータにおいて基準温度が800℃と記述されている場合は、基板処理室内の温度を800℃にするようヒータの加熱度合いを制御する。
【0031】
制御パラメータ測定部12は、例えば、プロセスレシピ実行中に、刻々と変動する各制御パラメータの値を測定する。例えば、基板処理室内の実際の温度を、基板処理室内に配置した温度センサにより刻々とあるいは周期的に測定し、温度測定値を出力する。他の制御パラメータのガス流量や圧力についても同様であり、ガス流量は、基板処理室内へ供給されるガス供給管に設けられたMFCにより刻々とあるいは周期的に測定され、基板処理室内の圧力は、基板処理室内のガスを排気するガス排気管に設けられた圧力計により刻々とあるいは周期的に測定される。
【0032】
エラー処理部13は、例えばプロセスレシピ実行中に、制御パラメータの測定値がアラーム値記憶部24に記憶された上限偏差値と下限偏差値を超えたか否か判断し、上限偏差値を超えた場合と下限偏差値を超えた場合とで異なる処理、例えば、重度のエラー処理又は軽度のエラー処理を実施する。
重度のエラー処理は、例えば、エラーとなった処理中の基板をリカバリ処理により正常処理状態に回復できない場合等に行われる。例えば、基板処理室内の温度が所定温度範囲よりも高温で処理された場合は、正常処理状態に回復できない。このような場合は、基板を廃棄するしかないのでリカバリ処理を行うことはできず、実行中の基板処理を停止させ、基板処理装置を安全な状態に移行させるリセット処理が行われる。すなわち、リセット処理として、処理ガスの供給を停止し、ヒータ加熱を停止し、基板処理室内の温度を降下させて、基板の搬出が行われる。
なお、重度のエラー処理において、ブザー鳴動処理やエラー表示処理により操作員にエラー発生を通報し、操作員の指示によりリセット処理等を行うこともできる。
【0033】
また、軽度のエラー処理は、処理中の基板をリカバリ処理により正常処理状態に回復できる場合等に行われる。例えば、基板処理室内の温度が所定範囲よりも低下した場合は、その後高温処理することで正常処理状態に回復できる場合があり、このような場合、ブザー鳴動処理やエラー表示処理により操作員に低温エラー発生を通報し、操作員が処理中の基板を通常よりも高温で処理するリカバリ処理を行うことにより、基板を正常処理状態に回復する。こうすることで、高価な基板を廃棄せずに済む。
【0034】
例えば、基板処理室内の温度について制御パラメータの設定温度(基準値)が800℃の場合に、実際の基板処理室内の温度測定値が上限偏差値の30℃を超えると、つまり830℃より高くなると、重度エラーであることをブザー鳴動処理やエラー表示処理により操作員に通報し、重度エラー対応用の各種エラーレシピのメニューを表示部32に表示し、該メニューを参照して操作員が指示したエラーレシピを実行してリセット処理を行う。
また、実際の基板処理室内の温度測定値が下限偏差値の60℃を超えると、つまり740℃より低くなると、軽度エラーであることをブザー鳴動処理やエラー表示処理により操作員に通報し、軽度エラー対応用の各種エラーレシピのメニューを表示部32に表示し、該メニューを参照して操作員が指示したエラーレシピを実行してリカバリ処理を行う。リカバリ処理後は、実行中であったプロセスレシピを継続して実行する。
なお、重度エラーや軽度エラーを検出したときに、ブザー鳴動処理やエラー表示処理により操作員にエラー発生を通報し、操作員の指示によりエラーレシピを実行するのではなく、エラーレシピ記憶部22に記憶した複数のエラーレシピの中から、予め登録されたエラー内容に応じたエラーレシピを選択し、読み出して実行することも可能である。
【0035】
アラーム値設定部14は、操作部31から操作員により入力された制御パラメータの上限偏差値と下限偏差値を、アラーム値記憶部24に記憶させるよう処理する。例えば、操作員が基板処理室内の温度について、上限偏差値として30℃、下限偏差値として60℃を入力すると、アラーム値設定部14は、入力された上限偏差値30℃と下限偏差値60℃を、基板処理室内の温度の上限偏差値及び下限偏差値として、アラーム値記憶部24に記憶させる。
他の制御パラメータのガス流量や圧力についても同様である。
【0036】
好ましくは、表示部32に、温度やガス流量や圧力など複数の制御パラメータの全てについて設定画面が表示され、該設定画面において、既に設定済みの制御パラメータの基準値や上限偏差値及び下限偏差値が表示されるようにする。このように複数の制御パラメータの基準値や上限偏差値及び下限偏差値が表示された状態で、操作部31からの操作員の操作に基づき、制御パラメータの基準値や上限偏差値や下限偏差値が新たに設定され、あるいは更新されるように構成する。このようにすると、操作員が、制御パラメータの基準値や上限偏差値や下限偏差値を設定又は更新することが容易となる。
【0037】
次に、本実施形態の基板処理装置において、プロセスレシピ実行中にエラーが発生した場合のエラー処理について、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る制御部のエラー処理動作を示す図である。本実施形態の場合、プロセスレシピは、基板を基板保持具により保持して基板処理室内に搬入するボートロードステップと、基板処理室内を待機温度から成膜温度へ昇温し、処理用ガスの供給量を所定のガス流量に安定させるとともに、基板処理室内の圧力を所定のプロセス圧力に安定させる準備ステップ(スタンバイステップ)と、基板に所定の処理を施すための成膜ステップと、基板処理室内を成膜温度から待機温度へ降温させるステップと、基板を保持したボートを基板処理室内から取り出すボートアンロードステップとを有している。
【0038】
図4に示すように、制御部10は、例えばプロセスレシピ実行中に、各制御パラメータの測定値を取得し、さらに、それぞれの測定値と各制御パラメータの基準値との偏差値を取得する(図4のステップS1)。例えば、基板処理室内の測定温度と基準温度800℃との偏差値、つまり、その時点の基板処理室内の測定温度と基準温度との差を取得する。
【0039】
制御部10は、その偏差値が上限偏差値30℃を超えているか否か、つまり、基板処理室内の測定温度が830℃より高いか否か判断し(ステップS2)、上限偏差値30℃を超えている場合は(ステップS2でYes)、上限値エラー処理レシピを取得、つまり、エラーレシピ記憶部22から温度上限値エラー処理レシピを取得して(ステップS3)、該エラー処理を実行し(ステップS6)、図4のエラー処理を終了する。例えば、上限値エラー処理として、処理ガスの供給を停止し、ヒータ加熱を停止して、実行中の基板処理を停止させ、基板処理装置を安全な状態に移行させるリセット処理を行う。
【0040】
その偏差値が上限偏差値30℃を超えていない場合は(ステップS2でNo)、その偏差値が下限偏差値60℃を超えているか否か、つまり、基板処理室内の測定温度が740℃より低いか否か判断し(ステップS4)、下限偏差値60℃を超えている場合は(ステップS4でYes)、下限値エラー処理レシピを取得、つまり、エラーレシピ記憶部22から温度下限値エラー処理レシピを取得して(ステップS5)、該エラー処理を実行し(ステップS6)、図4のエラー処理を終了する。例えば、下限値エラー処理として、基板を正常処理状態に回復できるリカバリ処理を行い、その後、実行中であったプロセスレシピを継続して実行する。
【0041】
制御部10は、以上説明した図4に示すエラー処理を、全ての各制御パラメータについて、周期的に繰り返し実行する。
【0042】
以上説明した実施形態によれば、少なくとも次の(1)〜(3)の効果を得ることができる。
(1)制御パラメータの測定値が、制御パラメータの基準値に対して、偏差の上限値を超えた場合と偏差の下限値を超えた場合とで、異なるエラー処理を行うことが可能となる。
(2)制御パラメータの測定値が上限偏差値を超えた場合は基板処理を停止させるリセット処理を実施し、下限偏差値を超えた場合は基板処理を継続実行可能なリカバリ処理を実施するか、あるいは、制御パラメータの測定値が下限偏差値を超えた場合は基板処理を停止させるリセット処理を実施し、上限偏差値を超えた場合は基板処理を継続実行可能なリカバリ処理を実施するので、基板処理を引き続き実行できる場合が従来よりも増えるため、基板を廃棄する場合が減り、また、基板処理装置の稼働率が向上する。
(3)制御パラメータの基準値に対する上限偏差値と下限偏差値を表示した状態で、操作部から、上限偏差値と下限偏差値を設定又は更新できるので、基板処理結果に基づき、適切な上限偏差値と下限偏差値を設定することが容易となる。
【0043】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
前記実施形態では、制御パラメータとして基板処理室内の温度について説明したが、ガス流量や基板処理室内圧力等の他の制御パラメータに関しても適用可能である。
本発明は、半導体製造装置だけでなく、LCD製造装置のようなガラス基板を処理する装置や、他の基板処理装置にも適用できる。基板処理の処理内容は、CVD、PVD、酸化膜、窒化膜、金属含有膜等を形成する成膜処理だけでなく、露光処理、リソグラフィ、塗布処理等であってもよい。
【0044】
なお、本明細書には少なくとも、基板処理装置又は半導体装置の製造方法に関する次の発明が含まれる。すなわち、第1の発明は、
基板を処理する基板処理室と、記憶部と、基板処理を制御する制御部とを備えた基板処理装置であって、
前記記憶部は、
プロセスレシピを記憶するプロセスレシピ記憶部と、該プロセスレシピで制御対象とされる制御パラメータの基準値を記憶する制御パラメータ記憶部と、前記制御パラメータの基準値に対する上限偏差値と下限偏差値を記憶するアラーム値記憶部とを備え、
前記制御部は、
前記プロセスレシピ記憶部に記憶したプロセスレシピを実行するプロセスレシピ実行部と、基板処理時における前記制御パラメータを測定する制御パラメータ測定部と、前記制御パラメータ測定部で測定された制御パラメータの測定値が前記アラーム値記憶部に記憶された前記上限偏差値と前記下限偏差値を超えたか否か判断し、前記上限偏差値を超えた場合と前記下限偏差値を超えた場合とで、異なる処理を実施するエラー処理部とを備える基板処理装置。
【0045】
第2の発明は、第1の発明における基板処理装置であって、
前記制御部は、
前記制御パラメータの測定値が前記上限偏差値を超えた場合は基板処理を停止させるリセット処理を実施し、前記下限偏差値を超えた場合は基板処理を継続実行可能なリカバリ処理を実施するか、あるいは、前記制御パラメータの測定値が前記下限偏差値を超えた場合は前記リセット処理を実施し、前記上限偏差値を超えた場合は前記リカバリ処理を実施する基板処理装置。
【0046】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の基板処理装置であって、
さらに、操作者からの入力を受け付ける操作部と、前記上限偏差値と下限偏差値を表示知る表示部とを備え、
前記操作部から、前記アラーム値記憶部に対し、前記制御パラメータの基準値に対する上限偏差値と下限偏差値が入力設定可能又は更新可能である基板処理装置。
【0047】
第4の発明は、
基板処理のためのプロセスレシピを記憶するプロセスレシピ記憶工程と、
前記プロセスレシピで制御対象とされる制御パラメータの基準値に対する上限偏差値と下限偏差値を記憶するアラーム値記憶工程と、
前記記憶したプロセスレシピを読み出して実行するプロセスレシピ実行工程と、
前記プロセスレシピ実行中に前記制御パラメータを測定する測定工程と、
前記測定工程で測定した制御パラメータの測定値が前記記憶した上限偏差値又は下限偏差値を超えたか否か判断する判断工程と、
前記上限偏差値を超えた場合と前記下限偏差値を超えた場合とで、異なる処理を実施するエラー処理工程と、
を備えた半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0048】
10…制御部、11…プロセスレシピ実行部、12…制御パラメータ測定部、13…エラー処理部、14…アラーム値設定部、15…表示制御部、20…記憶部、21…プロセスレシピ記憶部、22…エラーレシピ記憶部、23…制御パラメータ記憶部、24…アラーム値記憶部、31…操作部、32…表示部、34…ヒータ、35…ポンプ・圧力バルブ、36…ガス配管・MFC圧力、125…ウエハ移載機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理室と、記憶部と、基板処理を制御する制御部とを備えた基板処理装置であって、
前記記憶部は、
プロセスレシピを記憶するプロセスレシピ記憶部と、該プロセスレシピで制御対象とされる制御パラメータの基準値を記憶する制御パラメータ記憶部と、前記制御パラメータの基準値に対する上限偏差値と下限偏差値を記憶するアラーム値記憶部とを備え、
前記制御部は、
前記プロセスレシピ記憶部に記憶したプロセスレシピを実行するプロセスレシピ実行部と、基板処理時における前記制御パラメータを測定する制御パラメータ測定部と、前記制御パラメータ測定部で測定された制御パラメータの測定値が前記アラーム値記憶部に記憶された前記上限偏差値と前記下限偏差値を超えたか否か判断し、前記上限偏差値を超えた場合と前記下限偏差値を超えた場合とで、異なる処理を実施するエラー処理部とを備える基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−55239(P2013−55239A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192795(P2011−192795)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】