説明

基板処理装置

【課題】 基板の搬送速度を変更した場合においても、基板を均一に処理することが可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】 ガラス基板100を水平方向に搬送する搬送ローラ9と、処理液吐出口21が形成され、この処理液吐出口21とガラス基板100の表面との間が処理液の液膜により液密状態となる位置に配置された処理液吐出ノズル2と、処理液保持面31を備え、処理液吐出口21と処理液保持面31との間に処理液の液溜まりを形成可能となる位置に配置された液溜まり保持部材3と、ガラス基板100の表面に供給された処理液がガラス基板100の搬送方向に対して上流側に流出することを防止するためのエアナイフ5と、ガラス基板100の裏面に洗浄液を供給する一対の裏面洗浄部4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LCD(液晶表示装置)やPDP(プラズマディスプレイ)等のFPD(フラットパネルディスプレイ)用ガラス基板、有機EL用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、半導体ウエハ、太陽電池および電子ペーパ用フィルム基板等の基板を処理液により処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LCDの製造時には、アモルファスシリコン層をガラス基板上に形成し、このシリコン層表面の自然酸化膜をエッチング処理し、洗浄および乾燥処理をした後に、レーザーを照射してアモルファスシリコン層を溶融再結晶化している。このとき、エッチング工程等においては、従来、基板を水平に支持した状態で垂直軸まわりを回転させながら、その表面に順次エッチング液を供給して、基板の表面をエッチング処理する構成が採用されている。また、エッチング処理後の基板は強い撥水性を有することから、エッチング後の基板を低速回転させながら洗浄液を供給し、基板全面にその表面張力で洗浄液の液膜を形成した状態で洗浄処理を施し、しかる後、基板を高速回転させて洗浄液を除去する構成が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、近年の被処理基板の大型化により、特許文献1に記載された発明のように、基板を回転させながらエッチング処理を行うことは困難となっている。このため、基板を水平方向に搬送しながら、基板の表面に対してエッチング液等の処理液を供給して、基板を処理することが提案されている。
【0004】
すなわち、基板を複数の搬送ローラにより水平方向に向けて搬送しながら、基板の表面と対向配置されたスリットノズルやスプレーノズルから基板の表面に処理液を供給することにより、基板を処理液により処理することが考えられる。しかしながら、基板の表面が強い撥液性(撥水性)を有する場合には、処理液が基板の表面ではじかれてしまい、基板の表面全域に処理液を供給できないという問題が発生する。
【0005】
特に、処理液としてエッチング液を使用したエッチング処理においては、エッチング処理を開始した後に基板の表面が強い撥液性となり、処理液としてのエッチング液が基板の表面ではじかれることになる。このため、極めて多量の処理液を基板の表面に供給することで、基板表面の全域に処理液を行き渡らせることも考えられるが、この場合には、極めて多量の処理液を消費するという問題が生ずる。
【0006】
このため、本出願人は、基板を水平方向に搬送する搬送ローラと、処理液吐出口が形成され、この処理液吐出口と基板の表面との間が処理液の液膜により液密状態となる位置に配置された処理液吐出ノズルと、処理液保持面を備え、処理液吐出口と処理液保持面との間に処理液の液溜まりを形成可能となる位置に配置された液溜まり保持部材3とを備える基板処理装置を提案している(特許文献2参照)。
【0007】
この基板処理装置によれば、処理液吐出ノズルと液溜まり保持部材との間に形成された液溜まりの作用により、搬送ローラにより搬送される基板の表面の先端部全域に処理液を供給でき、またその後は、処理液吐出ノズルと基板の表面との間を処理液の液膜により液密状態として基板の表面に処理液を供給することができる。このため、この基板処理装置によれば、基板の表面が撥液性となっても、多量の処理液を消費することなく、基板の表面全域に有効に処理液を供給することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−17461号公報
【特許文献2】特開2010−219187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献2に記載の基板処理装置は、多量の処理液を消費することなく基板の表面全域に有効に処理液を供給することができる優れたものではあるが、処理液による基板の処理時間は、基板処理装置における処理液吐出ノズル等の配置によって、一義的に決定されるという問題がある。一方、基板の種類や処理の内容により、処理液による基板の処理時間を変更したいという要請も存在する。
【0010】
このような要請に対応するため、搬送ローラによる基板の搬送速度を変更した場合には、処理液による基板の処理時間を変更することが可能となる。しかしながら、基板の搬送速度を速くした場合には、処理液吐出ノズルと基板の表面との間を処理液の液膜により液密状態とすることができず、処理液不足により、基板に対して均一な処理を行い得ないという問題が生ずる。また、これとは逆に、基板の搬送速度を遅くした場合には、処理液吐出ノズルと基板の表面との間に形成された処理液の液膜が、基板の搬送方向に対して上流側に流出するという現象が生ずる。そして、この処理液の流出の程度は基板の搬送方向と直交する方向においてそれぞれ異なることから、この場合においても、基板に対して均一な処理を行い得ないこととなる。
【0011】
また、処理液吐出ノズルの配置を必要な処理時間に対応させて変更することにより、処理液による基板の処理時間を変更することも考えられるが、装置構成が複雑となり、現実的ではない。
【0012】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、基板の搬送速度を変更した場合においても、基板を均一に処理することが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、基板の表面に処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置において、基板をその主面が略水平方向となる状態で支持するとともに、その基板を略水平方向に搬送する搬送機構と、下方を向く処理液吐出口が前記搬送機構による基板の搬送方向と交差する方向に延設されるとともに、前記処理液吐出口と前記搬送機構により搬送される基板の表面との距離が、それらの間が前記処理液吐出口より吐出された処理液の液膜により液密状態となる位置に配置された処理液吐出ノズルと、前記処理液吐出口と対向する位置に処理液の液溜まりを保持する処理液保持面を備え、前記処理液吐出口と前記処理液保持面との距離が、それらの間に処理液の液溜まりを形成可能となる位置に配置された液溜まり保持部材と、前記搬送機構による基板の搬送速度を変更する搬送速度変更手段と、前記処理液吐出ノズルから吐出される処理液の流量を変更する流量変更手段と、前記処理液吐出口と前記搬送機構により搬送される基板の表面との間に、処理液の適正な液膜を形成することが可能な前記基板の搬送速度と前記処理液の流量との関係を記憶する記憶部と、前記基板の搬送速度を指定するための入力部と、前記入力部により指定された搬送速度と、前記記憶部に記憶した基板の搬送速度と処理液の流量との関係とに基づいて、前記流量変更手段を制御することにより、前記処理液吐出ノズルから吐出される処理液の流量を調整する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記搬送機構は搬送ローラを含み、前記搬送速度変更手段は、前記制御部の制御により前記搬送ローラの回転速度を変更するモータを備える。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記流量変更手段は、前記制御部の制御により前記処理液吐出ノズルに供給する処理液の流量を変更する流量可変ポンプを備える。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、前記搬送機構による基板の搬送方向に対して前記処理液吐出ノズルの上流側に、前記処理液吐出ノズルから吐出され基板の表面に供給された処理液が、前記基板の表面における前記搬送機構による基板の搬送方向に対して上流側に流出することを防止するための流出防止手段を備える。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記流出防止手段は、前記搬送機構による基板の搬送方向と交差する方向に延設され、前記搬送機構により搬送される基板の表面における、前記搬送機構による基板の搬送方向に対して前記処理液吐出ノズルの上流側の位置に気体を吹き付ける気体噴出手段である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記流出防止手段は、前記搬送機構による基板の搬送方向に対して前記処理液吐出ノズルの上流側の位置において基板の搬送方向と交差する方向に延設され、前記搬送機構により搬送される基板の表面との間に処理液の液溜まりを形成する処理液保持面を備えた流出防止部材である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1から請求項3に記載の発明によれば、基板の搬送速度を変更することにより処理液による処理時間を変更した場合においても、処理液吐出ノズルと基板の表面との間を処理液の液膜により液密状態とすることにより、基板の表面に処理液の液膜を適正に形成して、基板を均一に処理することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、流出防止手段により、処理液吐出ノズルから吐出され基板の表面に供給された処理液が、基板の表面における基板の搬送方向に対して上流側に流出することを防止することができる。このため、処理液吐出ノズルから吐出される処理液の量を基板の表面に十分な液膜を形成できる量とした場合においても、基板の表面における基板の搬送方向に対して上流側に流出することを防止して、基板をさらに均一に処理することが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、気体噴出手段により噴出される気体の作用により、処理液吐出ノズルから吐出され基板の表面に供給された処理液が、基板の表面における基板の搬送方向に対して上流側に流出することを防止することが可能となる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、流出防止部材の処理液保持面に対して生ずる表面張力の作用により、処理液吐出ノズルから吐出され基板の表面に供給された処理液が、基板の表面における基板の搬送方向に対して上流側に流出することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る基板処理装置の側面概要図である。
【図2】処理・洗浄ユニット1を拡大して示す側面図である。
【図3】処理液吐出ノズル2の下面図である。
【図4】処理液吐出ノズル2への処理液の供給機構を示す概要図である。
【図5】液溜まり保持部材3の概要を示す図である。
【図6】液溜まり保持部材3の部分斜視図である。
【図7】他の実施形態に係る液溜まり保持部材3の部分斜視図である。
【図8】裏面洗浄部4の概要を示す図である。
【図9】この発明に係る基板処理装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【図10】ガラス基板100の搬送速度と処理液の流量との関係を示すグラフである。
【図11】この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。
【図12】この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。
【図13】この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。
【図14】この発明に係る流出防止手段としてのエアナイフ5付近の側面の拡大図である。
【図15】この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。
【図16】この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。
【図17】この発明に係る流出防止手段の他の実施形態である流出防止部材6付近の側面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る基板処理装置の側面概要図である。また、図2は、処理・洗浄ユニット1を拡大して示す側面図である。
【0025】
この基板処理装置は、アモルファスシリコン層がその表面に形成されたガラス基板100に対してレーザーアニールを行う前に、シリコン層表面に形成された酸化膜のエッチングを行うためのものである。この基板処理装置は、ガラス基板100をその主面が水平方向となる状態で支持するとともに、このガラス基板100を水平方向に搬送する複数の搬送ローラ9と、4個の処理・洗浄ユニット1a、1b、1c、1d(これらを総称するときには「処理・洗浄ユニット1」という)を備える。
【0026】
各処理・洗浄ユニット1は、複数の搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面に処理液を供給するための処理液吐出ノズル2と、この処理液吐出ノズル2との間に処理液の液溜まりを形成するための液溜まり保持部材3と、ガラス基板100に対して高圧の空気を噴出するためのエアナイフ5と、ガラス基板100の裏面を洗浄するための一対の裏面洗浄部4とを備える。搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100に対し、4個の処理・洗浄ユニット1a、1b、1c、1dの作用により、順次、その表面への処理液の供給と、その裏面の洗浄とが実行される。
【0027】
ここで、エアナイフ5は、搬送機構を構成する複数の搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送方向に対して処理液吐出ノズル2の上流側に、処理液吐出ノズル2から吐出されガラス基板100の表面に供給された処理液が、ガラス基板100の表面におけるその基板100の搬送方向に対して上流側に流出することを防止するための流出防止手段として機能するものである。このエアナイフ5は、ガラス基板100の搬送方向と直交する方向に延設され、ガラス基板100の搬送方向に対して処理液吐出ノズル2の上流側の位置において、ガラス基板100の表面に高圧の空気を吹き付けるためのスリットを備えている。
【0028】
洗浄・処理ユニット1における処理液吐出ノズル2の構成について説明する。図3は、処理液吐出ノズル2の下面図である。
【0029】
この処理液吐出ノズル2は、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100と対向する下面に、多数の処理液吐出口21が形成された構成を有する。これらの処理液吐出口21は、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向に列設されている。この処理液吐出口21は、例えば、0.5mm程度の直径を有し、処理液吐出ノズル2の長手方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)に、5mm乃至10mm程度のピッチで形成されている。この処理液吐出口21は、ガラス基板100の幅方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)全域にわたって設けられている。
【0030】
ガラス基板100の処理時には、この処理液吐出口21から処理液が吐出され、ガラス基板100の表面に供給される。このとき、後述するように、処理液吐出口21と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との距離は、それらの間が処理液吐出口21より吐出された処理液の液膜により液密状態となるようにする必要があることから、できるだけ小さいことが好ましい。一方、処理液吐出口21と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との距離を過度に小さくすると、ガラス基板100と処理液吐出ノズル2とが衝突するおそれがある。ガラス基板100と処理液吐出ノズル2との衝突を回避しながら、処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間を処理液の液膜により液密状態とするためには、処理液吐出ノズル2における処理液吐出口21(すなわち、処理液吐出ノズル2の下面)と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との距離D1(図2参照)は、1mm乃至2mmとすることが好ましい。
【0031】
また、処理液吐出ノズル2と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との間が、処理液吐出口21より吐出された処理液の液膜により液密状態となるようにするためには、処理液吐出ノズル2の下面の形状を、平面状とするか、あるいは、ガラス基板100の搬送方向と鉛直方向とを含む平面による断面形状が下方が凸となる円弧状とすることが好ましい。このような形状を採用することにより、処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間に処理液の液膜を形成することができ、液密状態を容易に達成することが可能となる。なお、処理液吐出ノズル2の下面を上述したような下方が凸となる円弧状とするためには、処理液吐出ノズル2を、例えば、複数の処理液吐出口がその下端部に形成されたパイプから構成すればよい。そして、この処理液吐出ノズル2の材質は、金属イオン等が溶出することがなく、処理の清浄性を確保できる、例えば、フッ素樹脂製のものを採用することが好ましい。
【0032】
図4は、処理液吐出ノズル2への処理液の供給機構を示す概要図である。
【0033】
図4に示すように、処理液吐出ノズル2は、処理液を貯留する貯留槽22と、管路23を介して接続されており、管路23には流量可変ポンプ25が配設されている。貯留槽22内の処理液は、流量可変ポンプ25の駆動により、処理液吐出ノズル2の処理液吐出口21から吐出される。この流量可変ポンプ25としては、例えば、マグネットポンプやダイアフラムポンプが使用される。そして、この流量可変ポンプ25により供給される処理液の流量は、後述する制御部71の制御を受けるポンプ駆動部77の作用により、変更される。
【0034】
なお、処理液吐出ノズル2における処理液吐出口21としては、ガラス基板100を処理しないときの処理液の流下を防止するため、そこに供給された処理液に圧力が付与されない状態においては、処理液の表面張力の作用により処理液吐出口21より処理液が流下しない大きさとすることが好ましい。すなわち、流量可変ポンプ25が駆動していない状態においては、処理液の表面張力の作用により処理液吐出口21より処理液が流下しない大きさである。この処理液吐出口21の大きさとしては、処理液の粘度にも左右されるが、上述したように0.5mm程度とすることが好ましい。
【0035】
なお、ガラス基板100の搬送方向と直交する方向に列設された多数の処理液吐出口21に替えて、ガラス基板100の搬送方向と直交する方向に延びるスリット状の吐出口を採用してもよい。
【0036】
上述した4個の処理・洗浄ユニット1a、1b、1c、1dからは、処理液としてのエッチング液が供給される。このようなエッチング液としては、例えば、フッ酸(フッ化水素酸/HF)が使用される。なお、意図的にガラス基板100の表面に均一な酸化膜を形成するため、処理・洗浄ユニット1aから、または、処理・洗浄ユニット1dから、あるいは、処理・洗浄ユニット1aと1dから、エッチング液に代えてオゾン水を供給してもよい。
【0037】
なお、好適な実施形態としては、例えば、上述した4個の処理・洗浄ユニット1a、1b、1c、1dの全てからガラス基板100に対してフッ酸を供給する実施形態と、4個の処理・洗浄ユニット1a、1b、1c、1dのうちガラス基板100の搬送方向の上流側の3個の処理・洗浄ユニット1a、1b、1cからはフッ酸を供給し、最も下流側の処理・洗浄ユニット1dからはオゾン水を供給するという実施形態がある。但し、フッ酸やオゾン水以外のエッチング液を使用してもよい。
【0038】
次に、洗浄・処理ユニット1における液溜まり保持部材3の構成について説明する。図5は、液溜まり保持部材3の概要を示す図であり、図5(a)は液溜まり保持部材3の縦断面図、また、図5(b)は液溜まり保持部材3の部分平面図である。さらに、図6は、液溜まり保持部材3の部分斜視図である。
【0039】
この液溜まり保持部材3は、処理液吐出ノズル2との間に処理液の液溜まりを形成するためのものである。この液溜まり保持部材3は、処理液吐出ノズル2の処理液吐出口21と対向する位置に、処理液の液溜まりを保持する処理液保持面31を備える。そして、その処理液保持面31には、処理液の液溜まり保持用の凹部32が凹設されている。
【0040】
この凹部32は、処理液保持面31に好適に処理液の液溜まりを保持するために使用される。すなわち、液溜まり保持部材3の材質としては、金属イオン等が溶出することがなく、処理の清浄性を確保できる、処理液吐出ノズル2と同様の、例えば、フッ素樹脂製のものを採用することが好ましい。ここで、フッ素樹脂は処理液をはじく強い撥液性を有する。このため、処理液が液溜まり保持部材3における処理液保持面31から流下しやすくなる。このような流下を防止するために、処理液保持面31には凹部32が形成されている。なお、液溜まり保持部材3の材質として塩化ビニール等の樹脂を使用する場合には、この凹部32を省略してもよい。
【0041】
図5および図6に示すように、この凹部32は、液溜まり保持部材3の長手方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)に延びる形状を有する。この凹部32は、ガラス基板100の幅方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)全域にわたって形成されている。但し、この凹部32はこのような形状に限定されるものではない。
【0042】
図7は、他の実施形態に係る液溜まり保持部材3の部分斜視図である。
【0043】
図7に示すように、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向に列設された複数の凹部33を使用してもよい。この場合には、処理液吐出ノズル2における処理液吐出口21と液溜まり保持部材3の凹部33とは、必ずしも対向していなくてもよい。処理液吐出ノズル2における処理液吐出口21と液溜まり保持部材3の凹部33とが、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向に対して同一の位置にあればよい。
【0044】
ガラス基板100に処理液を供給する前の段階で、後述するように、処理液吐出ノズル2の処理液吐出口21から処理液が吐出され、処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3の処理液保持面31との間に、処理液の液溜まりを形成する必要がある。このためには、処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3の処理液保持面31との距離は、ガラス基板100が通過できる範囲で、できるだけ小さいことが好ましい。一方、液溜まり保持部材3と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面との距離を過度に小さくすると、ガラス基板100と液溜まり保持部材3とが衝突するおそれがある。ガラス基板100と液溜まり保持部材3との衝突を回避しながら、処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3との間に処理液の液溜まりを形成するためには、液溜まり保持部材3における処理液保持面31と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面との距離D2(図2参照)は、1mm乃至2mmとすることが好ましい。
【0045】
なお、処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3の処理液保持面31との間に形成される処理液の液溜まりは、処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3の処理液保持面31との間の全域に形成される必要はない。例えば、処理液吐出ノズル2の長手方向におけるところどころの領域で、部分的に液溜まりが形成されない領域が存在してもよい。処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3の処理液保持面31との間の一定の領域に液溜まりが形成されれば、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の先端部が液溜まりに進入するときに、処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3の処理液保持面31との間の一定の領域に形成された液溜まりを、処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3の処理液保持面31との間の全領域に広げることができる。
【0046】
次に、洗浄・処理ユニット1における裏面洗浄部4の構成について説明する。図8は、裏面洗浄部4の概要を示す図であり、図8(a)は裏面洗浄部4の部分斜視図、また、図8(b)は裏面洗浄部4の縦断面図である。
【0047】
この裏面洗浄部4はガラス基板100の裏面を洗浄するためのものである。この裏面洗浄部100は、図1および図2に示すように、4個の処理・洗浄ユニット1a、1b、1c、1dの各々において、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向に沿って一対配設されている。この裏面洗浄部4は、その上面が洗浄液の液溜まりを保持する洗浄液保持面42となっている。そして、この洗浄液保持面42には、洗浄液の液溜まり保持用の凹部43が凹設されており、この凹部43内には洗浄液吐出口41が形成されている。
【0048】
凹部43は、洗浄液保持面42に好適に洗浄液の液溜まりを保持するために使用される。すなわち、裏面洗浄部4の材質としては、金属イオン等が溶出することがなく、処理の清浄性を確保できる、処理液吐出ノズル2や液溜まり保持部材3と同様の、例えば、フッ素樹脂製のものを採用することが好ましい。ここで、フッ素樹脂は洗浄液をはじく強い撥液性を有する。このため、洗浄液が裏面洗浄部4における洗浄液保持面42から流下しやすくなる。このような流下を防止するために、洗浄液保持面42には凹部43が形成されている。なお、裏面洗浄部4の材質として塩化ビニール等の樹脂を使用する場合には、この凹部43を省略してもよい。
【0049】
図8(a)に示すように、この凹部43は、裏面洗浄部4の長手方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)に延びる形状を有する。この凹部43は、ガラス基板100の幅方向(搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の搬送方向と直交する方向)全域にわたって形成されている。そして、洗浄液吐出口41は、凹部43に沿って複数個列設されている。
【0050】
ガラス基板100の処理時には、後述するように、この洗浄液吐出口41から洗浄液が吐出され、ガラス基板100の裏面に供給される。このとき、後述するように、洗浄液保持面42と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面との距離は、それらの間が洗浄液吐出口41より吐出された洗浄液の液膜により液密状態となるようにする必要があることから、できるだけ小さいことが好ましい。一方、裏面洗浄部4と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面との距離を過度に小さくすると、ガラス基板100と裏面処理部4とが衝突するおそれがある。ガラス基板100と裏面洗浄部4との衝突を回避しながら、裏面洗浄部4の洗浄液保持面42とガラス基板100の裏面との間を洗浄の液膜により液密状態とするためには、裏面洗浄部4における洗浄液保持面42と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の裏面との距離D2(図2参照)は、1mm乃至2mmとすることが好ましい。
【0051】
図9は、この発明に係る基板処理装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【0052】
この基板処理装置は、装置全体を制御する制御部71を備える。この制御部71は、インターフェース74を介して、モータ駆動部76と連結されている。このモータ駆動部76は、複数の搬送ローラ9を回転駆動するためのモータ75と接続されており、制御部71からの指令を受けて、複数の搬送ローラ9の回転速度を変更する。また、この制御部71は、インターフェース74を介して、ポンプ駆動部77と接続されている。このポンプ駆動部77は、上述した流量可変ポンプ25と接続されており、制御部71からの指令を受けて、流量可変ポンプ25により処理液吐出ノズル2に供給する処理液の流量を変更する。
【0053】
また、この制御部71は、キーボード等の入力部78と、液晶表示パネルやCRT等の表示部79とに接続されている。ここで、入力部78は、後述するように、ガラス基板100の搬送速度を指定するために使用される。さらに、この制御部71は、記憶部72と接続されている。この記憶部72には、処理液吐出ノズル2における処理液吐出口21と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との間に、処理液の適正な液膜を形成することが可能な、ガラス基板100の搬送速度と、流量可変ポンプ25により処理液吐出ノズル2に供給されるべき処理液の流量との関係を示すテーブル73が記憶されている。
【0054】
図10は、ガラス基板100の搬送速度と処理液の流量との関係を示すグラフである。なお、このグラフは、処理液としてフッ酸を使用するとともに、G4サイズ(730mm×920mm)のガラス基板100を、その短辺側を先頭として搬送する場合の一例である。
【0055】
このグラフにおける縦軸は、流量可変ポンプ25により処理液吐出ノズル2に供給される処理液の流量(L/mim)を示している。また、このグラフにおける横軸は、モータ75の駆動により回転する搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送速度(m/min)を示している。このグラフを参照すると、処理液吐出ノズル2における処理液吐出口21と搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との間に処理液の適正な液膜を形成するための、ガラス基板100の搬送速度と流量可変ポンプ25により処理液吐出ノズル2に供給されるべき処理液の流量との関係は、所定の領域においては、比例関係にあることが理解できる。
【0056】
なお、このグラフは、基板処理装置によりガラス基板100の搬送速度と処理液の供給量とを変化させ、処理液の適正な液膜が形成される状態を実験的に見つけ出すことにより作成される。このガラス基板100の搬送速度と処理液の流量との関係は、テーブル73として、記憶部72に記憶される。
【0057】
次に、上述した基板処理装置によりガラス基板100を処理する処理動作について説明する。図11乃至図16は、この発明に係る基板処理装置によるガラス基板100の処理動作を示す説明図である。なお、図11、図12、図13、図15、図16においては、処理・洗浄ユニット1における一対の裏面洗浄部4のうち、上流側の裏面洗浄部4のみを示している。これらの図において図示を省略した他方の裏面洗浄部4も上流側の裏面洗浄部4と同様の動作を実行する。
【0058】
この基板処理装置によるガラス基板100を処理するときには、最初に、ガラス基板100に必要とされる処理時間に対応させて、搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送速度を指定する。すなわち、ガラス基板100の種類や、処理液の種類、あるいは、必要とされる処理の内容によってガラス基板100の搬送速度を決定する。この時には、処理時間として長い時間が必要である場合には、搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送速度を遅くする。また、これとは逆に、処理時間として短い時間でよい場合には、搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送速度を速くする。
【0059】
この搬送速度の指定は、オペレータが入力部78を操作することにより実行される。なお、ガラス基板100の搬送速度を直接入力するかわりに、ガラス基板100の処理時間を入力し、制御部71においてこの処理時間に対応する搬送速度を演算するようにしてもよい。また、ガラス基板100の種類や、処理液の種類、あるいは、必要とされる処理の内容を入力することにより、制御部71においてガラス基板100の搬送速度を指定するようにしてもよい。この明細書で述べる「搬送速度を指定」とは、搬送速度そのものを入力する場合や、他の条件を指定することにより間接的に搬送速度を指定する場合をも含む概念である。
【0060】
搬送速度が指定されれば、制御部71は、指定された搬送速度とテーブル73に記憶したガラス基板100の搬送速度と処理液の流量との関係とに基づいて、処理液吐出ノズル2から吐出されるべき処理液の流量を演算する。そして、制御部71は、モータ駆動部76に対して、ガラス基板100を指定された搬送速度で搬送するためのモータ75の回転速度の指令信号を送信する。また、制御部71は、ポンプ駆動部77に対して、処理液吐出ノズル2から吐出される処理液の流量が演算した流量となるように、流量可変ポンプ25の吐出量の指令信号を送信する。
【0061】
ここで、上述した処理液吐出口21とガラス基板100の表面との間に処理液の適正な液膜を形成するための、ガラス基板100の搬送速度と流量可変ポンプ25により処理液吐出ノズル2に供給されるべき処理液の流量との関係が正確に把握されていれば、処理液吐出ノズル2から吐出されるべき処理液の流量は一義的に定まることになる。しかしながら、実際にガラス基板100に処理液を供給するときの各種の条件から、処理液の供給量がわずかに不足し、ガラス基板100に対して完全に均一に処理を行うことができなくなる場合も生ずる。このため、この実施形態においては、制御部71において演算した処理液吐出ノズル2から吐出される処理液の流量よりもわずかに多い処理液が供給されるように制御部71がポンプ駆動部77に対して指令を出すとともに、エアナイフ5の作用により、このわずかに多い処理液がガラス基板100の搬送方向の上流側に流出することを防止する構成となっている。
【0062】
ガラス基板100の搬送速度と処理液と吐出量の設定が完了すると、処理を開始する。最初に、複数の搬送ローラ9により予め設定された速度で水平方向に搬送されるガラス基板100の先端が処理・洗浄ユニット1に到達する前に、図11に示すように、処理液吐出ノズル2の処理液吐出口21から少量の処理液を吐出し、予め、処理液吐出ノズル2における処理液吐出口21と液溜まり保持部材3における処理液保持面31との間に、処理液の液溜まり51を形成しておく。また、裏面洗浄部4における洗浄液保持面42上に、洗浄液の液溜まり61を形成しておく。また、この時に、エアナイフ5から高圧の空気の噴出を開始する。
【0063】
この状態において、さらに搬送ローラ9によりガラス基板100の搬送を継続すると、図12に示すように、ガラス基板100の先端が、処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3との間に形成された処理液の液溜まり51中に進入する。ガラス基板100の先端が処理液の液溜まり51まで到達すれば、処理液吐出ノズル2から、予め設定された流量で処理液を吐出する。なお、処理液吐出ノズル2からの処理液の吐出は、ガラス基板100の先端が処理液の液溜まり51に到達する前に開始してもよいし、ガラス基板100の処理のために装置が稼働している間は、処理液を継続して吐出し続けてもよい。
【0064】
この状態でさらにガラス基板100が水平方向に搬送されると、図13に示すように、処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間に処理液の液膜52が形成され、処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間は、処理液の液膜52により液密状態となる。すなわち、ガラス基板100の先端が処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3との間に形成された処理液の液溜まり51中に進入した後、処理液の表面張力により処理液吐出ノズル2から吐出された処理液が引っ張られるようにして、ガラス基板100の表面全域にそこではじかれることなく塗り広げられる。このときには、処理液吐出ノズル2の長手方向におけるところどころの領域で部分的に液溜まりが形成されない領域が存在していたとしても、ガラス基板100が移動を継続することに伴って、これらの領域は処理液で満たされ、処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間は、処理液の液膜52により液密状態となる。ここで、液密状態とは、それらの間が全て処理液で満たされた状態を指す。
【0065】
この時、図14において拡大して示すように、水平方向に搬送されるガラス基板100の表面に対して、エアナイフ5から高圧の空気が吹き付けられる。このため、この空気の圧力により、処理液の液膜52が、ガラス基板100の表面において、搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送方向の上流側に流出することが防止される。
【0066】
そして、処理液吐出ノズル2とガラス基板100との間を処理液の液膜52により液密としたままの状態でガラス基板100が水平方向に搬送されることにより、図15に示すように、処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間が処理液の液膜52により液密状態となったまま、ガラス基板100の表面全域に処理液が供給される。この時にも、エアナイフ5から吹き付けられる空気の圧力により、処理液の液膜52が、ガラス基板100の表面において、搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送方向の上流側に流出することが防止される。
【0067】
なお、ガラス基板100の先端が処理液吐出ノズル2と液溜まり保持部材3との間に形成された処理液の液溜まり51中に進入したときには、図12に示すように、ガラス基板100の裏面側にも処理液が到達する。この処理液は、裏面洗浄部4により洗浄される。
【0068】
すなわち、図15に示すように、水平方向に搬送されるガラス基板100の先端が裏面洗浄部4に到達する前には、裏面洗浄部4における洗浄液保持面42(図8参照)には洗浄液吐出口41から吐出された洗浄液の液膜61が形成されている。この状態において、ガラス基板100がさらに搬送されて裏面洗浄部4を通過すると、図16に示すように、ガラス基板100の裏面と裏面洗浄部4の洗浄液保持面42との間に洗浄液の液膜62が形成され、ガラス基板100の裏面と裏面洗浄部4との間は、洗浄液の液膜62により液密状態となる。
【0069】
このような状態で、ガラス基板100の搬送を継続することにより、ガラス基板100の表面には処理液の液膜52が形成されてその全面に処理液が供給され、ガラス基板100の裏面には洗浄液の液膜62が形成されてその全面が洗浄される。
【0070】
以上のように、この発明に係る基板処理装置においては、処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間に処理液の液膜52を形成した状態で処理液を供給することから、使用する処理液の量が極めて少ない場合においても、ガラス基板100の全面に処理液を供給することが可能となる。この場合に、ガラス基板100の処理時間、すなわち、搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送速度に応じて処理液吐出ノズル2から吐出される処理液の流量が調整されることから、ガラス基板100の搬送速度にかかわらず、処理液をガラス基板の表面に均一に供給することが可能となる。さらに、制御部71において演算した処理液吐出ノズル2から吐出される処理液の流量よりもわずかに多い処理液を供給するとともに、エアナイフ5の作用により、このわずかに多い処理液がガラス基板100の搬送方向の上流側に流出することを防止する構成であることから、ガラス基板100の表面に確実に処理液の液膜52を形成することが可能となる。
【0071】
次に、流出防止手段の他の実施形態について説明する。図17は、この発明に係る流出防止手段の他の実施形態である流出防止部材6付近の側面の拡大図である。
【0072】
上述した実施形態においては、図14において拡大して示すように、水平方向に搬送されるガラス基板100の表面に対して、エアナイフ5から高圧の空気を吹き付けることにより、処理液の液膜52が、ガラス基板100の表面において、搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送方向の上流側に流出することを防止している。これに対して、この図17に示す第2実施形態においては、流出防止部材6の作用により、処理液の液膜52が、搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送方向の上流側に流出することを防止している。
【0073】
この流出防止部材6は、搬送ローラ9によるガラス基板100の搬送方向に対して処理液吐出ノズル2の上流側の位置において、ガラス基板100の搬送方向と直交する方向に延設されている。そして、この流出防止部材6の下面は、搬送ローラ9により搬送されるガラス基板100の表面との間に、処理液の液溜まりを形成する処理液保持面となっている。この第2実施形態においては、処理液吐出ノズル2とガラス基板100の表面との間に形成された処理液の液膜52は、表面張力の作用により、この流出防止部材6の下面とガラス基板100の表面との間の位置にとどまり、処理液がガラス基板100の搬送方向の上流側に流出することが防止される。
【0074】
なお、上述した実施形態においては、ガラス基板100を、その主面が水平方向となる状態で支持して、水平方向に搬送しているが、ガラス基板100がわずかに傾斜していてもよい。例えば、ガラス基板100がその搬送方向と直交する方向に対して1度程度傾斜していても、この発明を適用することは可能である。すなわち、この発明は、ガラス基板100を正確に水平方向に支持する場合に限らず、略水平方向に支持する場合においても適用が可能である。
【0075】
また、上述した実施形態においては、ガラス基板100の表面にエッチング液としてのフッ酸等を供給しているが、この発明はこれに限定されるものではない。例えば、ガラス基板100に対して現像液を供給することにより現像処理を行う基板処理装置にこの発明を適用してもよい。さらに、その他の処理液を使用する基板処理装置にこの発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 処理・洗浄ユニット
2 処理液吐出ノズル
3 液溜まり保持部材
4 裏面洗浄部
5 エアナイフ
6 流出防止部材
9 搬送ローラ
21 処理液吐出口
22 貯留槽
23 管路
25 流量可変ポンプ
31 処理液保持面
32 凹部
33 凹部
41 洗浄液吐出口
42 洗浄液保持面
43 凹部
71 制御部
72 記憶部
73 テーブル
75 モータ
76 モータ駆動部
77 ポンプ駆動部
100 ガラス基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置において、
基板をその主面が略水平方向となる状態で支持するとともに、その基板を略水平方向に搬送する搬送機構と、
下方を向く処理液吐出口が前記搬送機構による基板の搬送方向と交差する方向に延設されるとともに、前記処理液吐出口と前記搬送機構により搬送される基板の表面との距離が、それらの間が前記処理液吐出口より吐出された処理液の液膜により液密状態となる位置に配置された処理液吐出ノズルと、
前記処理液吐出口と対向する位置に処理液の液溜まりを保持する処理液保持面を備え、前記処理液吐出口と前記処理液保持面との距離が、それらの間に処理液の液溜まりを形成可能となる位置に配置された液溜まり保持部材と、
前記搬送機構による基板の搬送速度を変更する搬送速度変更手段と、
前記処理液吐出ノズルから吐出される処理液の流量を変更する流量変更手段と、
前記処理液吐出口と前記搬送機構により搬送される基板の表面との間に、処理液の適正な液膜を形成することが可能な前記基板の搬送速度と前記処理液の流量との関係を記憶する記憶部と、
前記基板の搬送速度を指定するための入力部と、
前記入力部により指定された搬送速度と、前記記憶部に記憶した基板の搬送速度と処理液の流量との関係とに基づいて、前記流量変更手段を制御することにより、前記処理液吐出ノズルから吐出される処理液の流量を調整する制御部と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記搬送機構は搬送ローラを含み、
前記搬送速度変更手段は、前記制御部の制御により前記搬送ローラの回転速度を変更するモータを備える基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記流量変更手段は、前記制御部の制御により前記処理液吐出ノズルに供給する処理液の流量を変更する流量可変ポンプを備える基板処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記搬送機構による基板の搬送方向に対して前記処理液吐出ノズルの上流側に、前記処理液吐出ノズルから吐出され基板の表面に供給された処理液が、前記基板の表面における前記搬送機構による基板の搬送方向に対して上流側に流出することを防止するための流出防止手段を備える基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記流出防止手段は、前記搬送機構による基板の搬送方向と交差する方向に延設され、前記搬送機構により搬送される基板の表面における、前記搬送機構による基板の搬送方向に対して前記処理液吐出ノズルの上流側の位置に気体を吹き付ける気体噴出手段である基板処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記流出防止手段は、前記搬送機構による基板の搬送方向に対して前記処理液吐出ノズルの上流側の位置において基板の搬送方向と交差する方向に延設され、前記搬送機構により搬送される基板の表面との間に処理液の液溜まりを形成する処理液保持面を備えた流出防止部材である基板処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−89609(P2013−89609A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225498(P2011−225498)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】