説明

基板加工方法

【課題】薄い半導体ウェハを比較的短時間で容易に製造することができ、かつ基板の割れを防止し、製品率を向上させる。
【解決手段】基板10上に非接触にレーザ集光手段16を配置する工程と、レーザ集光手段16により、基板10表面にレーザ光を照射し、基板内部にレーザ光を集光する工程と、レーザ集光手段16と基板10を相対的に移動させて、基板10内部に2次元状内部改質層12を形成する工程と、レーザ集光手段16と基板10を相対的に移動させて、2次元状内部改質層12のレーザ集光手段16側およびまたはレーザ集光手段16と反対側に少なくとも1層のパターン状改質層36を形成する工程と、基板10表面にパターン状改質層36を露出させる工程と、パターン状改質層36および2次元状内部改質層12をエッチングする工程とを有し、レーザ集光手段16と基板10の相対的な移動方向は、基板10の劈開方向と一致していない基板加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板加工方法に関し、特に、半導体ウェハを薄く切り出して製造する基板加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン(Si)ウェハに代表される半導体ウェハを製造する場合には、図示しないが、石英るつぼ内に溶融されたシリコン融液から凝固した円柱形のインゴットを適切な長さのブロックに切断して、その周縁部を目標の直径になるよう研削し、その後、ブロック化されたインゴットをワイヤソーによりウェハ形にスライスして半導体ウェハを製造するようにしている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0003】
このようにして製造された半導体ウェハは、前工程で回路パターンの形成等、各種の処理が順次施されて後工程に供され、この後工程で裏面がバックグラインド処理されて薄片化が図られることにより、厚さが約750μmから100μm以下、例えば75μmや50μm程度に調整される。
【0004】
従来における半導体ウェハは、以上のように製造され、インゴットがワイヤソーにより切断され、しかも、切断の際にワイヤソーの太さ以上の切り代が必要となるので、厚さ0.1mm以下の薄い半導体ウェハを製造することが非常に困難であり、製品率も向上しないという問題がある。
【0005】
また近年、次世代の半導体として、硬度が大きく、熱伝導率も高いシリコンカーバイド(SiC)が注目されているが、SiCの場合には、Siよりも硬度が大きい関係上、インゴットをワイヤソーにより容易にスライスすることができず、また、バックグラインドによる基板の薄層化も容易ではない。
【0006】
一方、集光レンズでレーザ光の集光点をインゴットの内部に合わせ、そのレーザ光でインゴットを相対的に走査することにより、インゴットの内部に多光子吸収による面状の改質層を形成し、この改質層を剥離面としてインゴットの一部を基板として剥離する基板製造方法および基板製造装置が開示されている(例えば、特許文献3および4参照。)。特許文献3では、同心円状または螺旋状にレーザ光を走査しており、また、特許文献4では、XYステージを利用して、XY方向にレーザ光を走査している。しかしながら、走査方向と基板の劈開方向が一致すると、特にウェハのように基板が薄い場合、ウェハが割れやすいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008‐200772号公報
【特許文献2】特開2005‐297156号公報
【特許文献3】特開2005‐277136号公報
【特許文献4】特開2005‐294325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、薄い半導体ウェハを比較的短時間で容易に製造することができ、しかも、レーザ集光手段と基板の相対的な移動方向は、基板の劈開方向と一致していないため、基板の割れを防止し、製品率を向上させることのできる基板加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、基板上に非接触にレーザ集光手段を配置する工程と、前記レーザ集光手段により、前記基板表面にレーザ光を照射し、前記基板内部にレーザ光を集光する工程と、前記レーザ集光手段と前記基板を相対的に移動させて、前記基板内部に2次元状内部改質層を形成する工程とを有し、前記レーザ集光手段と前記基板の相対的な移動方向は、前記基板の劈開方向と一致していない基板加工方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、基板上に非接触にレーザ集光手段を配置する工程と、前記レーザ集光手段により、前記基板表面にレーザ光を照射し、前記基板内部にレーザ光を集光する工程と、前記レーザ集光手段と前記基板を相対的に移動させて、前記基板内部に集光するレーザ光の集光点を前記レーザ集光手段と反対側の前記基板の最深部に設定した状態から、前記レーザ集光手段側に移動させることで、一層または複数層のパターン状改質層を形成する工程とを有し、前記レーザ集光手段と前記基板の相対的な移動方向は、前記基板の劈開方向と一致していない基板加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄い半導体ウェハを比較的短時間で容易に製造することができ、しかも、レーザ集光手段と基板の相対的な移動方向は、基板の劈開方向と一致していないため、基板の割れを防止し、製品率を向上させることのできる基板加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法に適用する半導体ウェハを説明する模式的平面図、(b)レーザ光のX−Y走査方向と、基板10の劈開方向Cを説明する模式的平面図。
【図2】(a)本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法を説明する模式的断面構造図、(b)レーザ光を一回の照射で、2次元状内部改質層を相対的に厚く形成する場合の本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法を説明する模式的断面構造図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法を説明する模式的鳥瞰図。
【図4】比較例に係る基板加工方法を説明する模式的鳥瞰図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法において、2次元状内部改質層を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板の模式的鳥瞰図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法において、一層目のパターン状改質層を形成する工程後の基板の模式的鳥瞰図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法において、パターン状改質層を形成した側の基板表面上にp型半導体層を形成する工程後、保護層を形成した工程後のX−Y走査方向に沿う基板の模式的鳥瞰図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法において、二層目のパターン状改質層を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板の模式的鳥瞰図。
【図9】図5のI−I線に沿う模式的断面構造図。
【図10】図6のII−II線に沿う模式的断面構造図。
【図11】図7のIII−III線に沿う模式的断面構造図。
【図12】図8のIV−IV線に沿う模式的断面構造図。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法において、三層目のパターン状改質層を形成する工程後の基板の模式的断面構造図。
【図14】(a)本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法において、保護層およびp型半導体層をパターニング加工した工程後の基板の模式的断面構造図、(b)パターン状改質層および2次元状内部改質層をエッチングする工程後、チップ化された基板の模式的鳥瞰図。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法において、パターン状改質層および2次元状内部改質層をエッチングする工程の基板を説明する模式的断面構造図。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る基板加工方法において、一層目のパターン状改質層を形成する工程後の基板の模式的断面構造図。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る基板加工方法において、二層目および三層目のパターン状改質層を形成する工程後の基板の模式的断面構造図。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る基板加工方法において、2次元状内部改質層を形成する工程後の基板の模式的断面構造図。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る基板加工方法において、パターン状改質層および2次元状内部改質層をエッチングする工程の基板を説明する模式的断面構造図。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る基板加工方法において、口の字形状のパターン状改質層60および円形形状のパターン状改質層62を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板の模式的鳥瞰図。
【図21】本発明の第2の実施の形態に係る基板加工方法において、パターン状改質層60、62および2次元状内部改質層12をエッチングする工程後、チップ化されたX−Y走査方向に沿う半導体加工基板66を説明する模式的鳥瞰図。
【図22】(a)本発明の第2の実施の形態に係る基板加工方法において、複数のチップ化された半導体加工基板66を説明する模式的平面図、(b)本発明の第3の実施の形態に係る基板加工方法において、大面積の半導体加工基板66を説明する模式的平面図、
【図23】本発明の第3の実施の形態に係る基板加工方法において、4層目のパターン状改質層を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板の模式的鳥瞰図。
【図24】劈開方向とX−Y走査方向が一致する比較例に係る基板加工方法において、口の字形状のパターン状改質層80および円形形状のパターン状改質層82を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板の模式的鳥瞰図。
【図25】劈開方向とX−Y走査方向が一致する比較例に係る基板加工方法において、パターン状改質層80、82および2次元状内部改質層12をエッチングする工程後、チップ化されたX−Y走査方向に沿う半導体加工基板86を説明する模式的鳥瞰図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0014】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
以下の実施の形態の説明において、劈開方向とは、2次元状内部改質層を形成した結晶性基板において、結晶性基板が2次元状内部改質層と平行でない劈開面を有し、この劈開面と2次元状内部改質層の交差する線の方向である。
【0016】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る基板加工方法に適用する半導体ウェハ構造は、図1(a)に示すように表され、X−Y走査方向と、劈開方向Cは、図1(b)に示すように表される。図1(a)に示すように、例えば、(100)面のシリコンウェハにおいて、劈開方向Cは、オリエンテーションフラットの<110>方向および<110>方向に垂直な方向である。
【0017】
第1の実施の形態に係る基板加工方法を説明する模式的断面構造は、図2(a)に示すように表され、また、レーザ光を一回の照射で、2次元状内部改質層を相対的に厚く形成する場合の基板加工方法を説明する模式的断面構造は、図2(b)に示すように表される。また、第1の実施の形態に係る基板加工方法を説明する模式的鳥瞰構造は、図3に示すように表される。また、比較例に係る基板加工方法を説明する模式的鳥瞰構造は、図4に示すように表される。
【0018】
図2および図3に示すように、集光レンズ16と基板10間には、レーザ光20の収差増強材として、収差増強ガラス板18を配置しても良い。集光レンズ16と基板10間にこのような収差増強ガラス板18を配置することによって、基板10の表面にレーザスポット24を形成するレーザ光22は、基板10の表面で屈折されて、レーザ光26として基板10の内部に進入し、基板10の内部に焦点Pを結ぶ際に、所定の深さおよび幅を有する像を結ぶことになる。このことによって、基板10の内部に形成される2次元状内部改質層12を所定の深さtを有するように形成することができる。
【0019】
第1の実施の形態に係る基板加工方法においては、図1および図3に示すように、基板10に対して2次元状内部改質層12を形成する際のレーザ光の走査方向であるX方向およびY方向は、劈開面14a〜14dの劈開方向Cに対して、所定の角度、例えば、約5度ずらしている。このようにレーザ光のX−Y走査方向をずらすことによって、2次元状内部改質層12の形成工程における基板10の割れを防止することができる。
【0020】
一方、比較例に係る基板加工方法においては、図4に示すように、基板10に対して2次元状内部改質層12を形成する際のレーザ光の走査方向であるX方向およびY方向は、劈開面14a〜14dの劈開方向Cに一致している。このように、劈開面14a〜14dの劈開方向Cにレーザ光のX−Y走査方向を一致させると、2次元状内部改質層12の形成工程における基板10の割れが生じやすいという結果が得られている。したがって、劈開面14a〜14dの劈開方向Cに対して、所定の角度、レーザ光のX−Y走査方向をずらすことが、基板10の割れを防止する上で重要である。2次元状内部改質層12を形成する場合には、集光点の移動方向(X方向およびY方向)と基板10の劈開方向Cは、0.5度以上ずらすことが望ましく、2次元状内部改質層12に加えてパターン状改質層を形成する場合には、5度以上ずらすことが望ましい。
【0021】
第1の実施の形態に係る基板加工方法において、2次元状内部改質層12を形成後のX−Y走査方向に沿う基板10の模式的鳥瞰構造は、図5に示すように表され、2次元状内部改質層12上に一層目のパターン状改質層36を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板10の模式的鳥瞰構造は、図6に示すように表される。
【0022】
第1の実施の形態に係る基板加工方法において、パターン状改質層を形成した側の基板表面上にp型半導体層38を形成する工程後、保護層40を形成した工程後のX−Y走査方向に沿う基板10の模式的鳥瞰構造は、図7に示すように表され、二層目のパターン状改質層42を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板10の模式的鳥瞰構造は、図8に示すように表される。
【0023】
図5のI−I線に沿う模式的断面構造は、図9に示すように表され、図6のII−II線に沿う模式的断面構造は、図10に示すように表され、図7のIII−III線に沿う模式的断面構造は、図11に示すように表され、図8のIV−IV線に沿う模式的断面構造は、図12に示すように表される。
【0024】
第1の実施の形態に係る基板加工方法において、三層目のパターン状改質層43を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板10の模式的断面構造は、図13に示すように表される。
【0025】
また、第1の実施の形態に係る基板加工方法において、保護層40およびp型半導体層38をパターニング加工した工程後の基板10の模式的断面構造は、図14(a)に示すように表され、パターン状改質層36,42,43および2次元状内部改質層12をエッチングする工程後のチップ化された基板の模式的鳥瞰構造は、図14(b)に示すように表される。
【0026】
また、第1の実施の形態に係る基板加工方法において、パターン状改質層36,42,43および2次元状内部改質層12をエッチングする工程における基板10を説明する模式的断面構造は、図15に示すように表される。
【0027】
第1の実施の形態に係る基板加工方法は、図2〜図3、および図5〜図15に示すように、基板10上に非接触にレーザ集光手段16を配置する工程と、レーザ集光手段16により、基板10表面にレーザ光20、22を照射し、基板10内部にレーザ光26を集光する工程と、レーザ集光手段16と基板10を相対的に移動させて、基板10内部に2次元状内部改質層12を形成する工程とを有し、レーザ集光手段16と基板10の相対的な移動方向は、基板10の劈開方向と一致していないことを特徴とする。
【0028】
また、レーザ集光手段16と基板10を相対的に移動させて、2次元状内部改質層12のレーザ集光手段16側に少なくとも一層のパターン状改質層36を形成する工程と、基板10表面にパターン状改質層43を露出させる工程と、パターン状改質層36,42,43および2次元状内部改質層12をエッチングする工程とを有していても良い。
【0029】
また、レーザ集光手段16と基板10を相対的に移動させて、2次元状内部改質層12のレーザ集光手段16側と反対側に少なくとも一層のパターン状改質層36を形成する工程を有していても良い。
【0030】
また、レーザ集光手段16と基板10を相対的に移動させて、2次元状内部改質層12のレーザ集光手段16側およびまたはレーザ集光手段16と反対側に少なくとも1層のパターン状改質層36を形成する工程を有していても良い。
【0031】
また、パターン状改質層36を形成する工程は、基板10内部に集光するレーザ光26の集光点をレーザ集光手段16側に移動させることで、2次元状内部改質層12上にパターニングされたパターン状改質層36,42,43を一層以上形成する工程を有していても良い。
【0032】
また、基板10表面にパターン状改質層43を露出させる工程は、基板10内部に集光するレーザ光26の集光点をレーザ集光手段16側に移動させることで、最後に基板10表面にパターン状改質層43を形成する工程を有していても良い。
【0033】
また、基板10は半導体基板であり、パターン状改質層36を形成する工程後、基板10表面にパターン状改質層43を露出させる工程前に、基板10表面に基板10と反対導電型のp型半導体層38を形成する工程を有していても良い。
【0034】
基板10としては、例えば、大きさ50×50mm、厚さ約0.625mmのn型Siウェハを使用する。Siウェハの面方位は、例えば(100)面を使用する。鏡面研磨したn型Siウェハを、ウェハの劈開方向Cから、Y方向に約5度ずらした状態で、研磨面を上に、XYステージ(図示省略)上に載置する。レーザ光のX−Y走査方向、劈開方向Cおよび劈開面14a〜14dは、図3に示すように表される。
【0035】
集光レンズ16と基板10を相対的に移動させて、基板10内部に2次元状内部改質層12を形成する工程は、例えば、図3に示すように、Y方向の移動速度10mm/秒で、X方向に10μmステップで送りながら、レーザ光20,22,26を基板10の内部に集光させることによって行われる。集光レンズ16の焦点距離は、例えば、約2mm、開口数は、0.8である。収差増強ガラス板18は、例えば、厚さ0.15mmのガラスで形成される。このとき、焦点は、基板表面に焦点を合わせた状態でから、下方向に70μ移動させた状態であった。結果として、基板10の表面から約250μmの深さに、深さ約80μmの幅を有する2次元状内部改質層12が形成される。レーザ光20の光源としては、例えば、波長1064μm、パルス幅約150n秒のYAGレーザ(10kHz、0.8W)を適用することができる。図3においては、例えば、レーザ光の照射領域は、11mm×11mmである。
【0036】
基板10の模式的鳥瞰構造は、図5および図9に示すように、基板10uおよび10dによって2次元状内部改質層12が挟まれた構造を備える。ここで、図5は、X−Y方向に沿う基板10の鳥瞰構造を表す。
【0037】
次に、図6および図10に示すように、集光レンズ16を上方に20μm移動させた後、大きさ10mm×10mmの「田」の字パターンを描くことを1回以上繰り返し、内部に「田」の字型のパターン状改質層36を形成する。このとき、縦横の各線は10μmピッチで10本の線を描くことで、100μ幅のパターン状改質層36を形成している。
【0038】
次に、図7および図11に示すように、基板10をアセトンで脱脂処理を行った後、ポリエチレンジオキシチオフェン-ポリスチレンスルホン酸水分散体系インクを滴下し、乾燥処理およびUV照射処理することで硬化させ、導電性高分子層(p型半導体層)38を形成する。次いで、p型半導体層38をパラフィンワックス155(日本精蝋社製)で表面を被覆し、保護層40を形成する。
【0039】
次に、図8および図12に示すように、基板10をXYテーブル上に再度固定し、基板表面に焦点を合わせた状態で「田」の字形のパターン状改質層36の上に同一のパターンを描くことで、パターン状改質層42を形成する。
【0040】
次に、図13に示すように、基板表面に焦点を合わせた状態で「田」の字形のパターン状改質層42の上に同一のパターンを描くことで、パターン状改質層43を形成する。
【0041】
次に、図14(a)に示すように、保護層40およびp型半導体層38をパターニング加工し、保護層40と、p型半導体層38を除去するとともに、基板10表面にパターン状改質層43を露出させる。
【0042】
次に、図15に示すように、エッチング液44を満たしたエッチング槽46内に基板10を投入し、パターン状改質層36,42,43および2次元状内部改質層12をエッチングする。エッチング液44として10%の水酸化ナトリウム水溶液を適用し、60℃、3時間エッチングしたところ、2次元状内部改質層12を挟んで、基板10を上下に分離することで、5×5mmの薄層化された基板を4枚を得ることができる。チップ化された基板の模式的鳥瞰構造の例は、図14(b)に示すように表される。上記の例では、4枚の例を示したが、4枚に限定されるものではなく、パターン形状の拡張化、ウェハサイズの大型化によって、さらに多くの薄層化された基板を得ることも可能である。上記の例では、パターン状改質層36,42,43および2次元状内部改質層12をエッチングする工程は、水酸化ナトリウム水溶液からなるエッチング液を使用したが、その他のエッチング液としては、水酸化カリウム水溶液などアルカリ系のエッチング液を適用することができる。
【0043】
尚、チップ化された基板を80℃の水で洗浄後、イソプロピルアルコール(IPA)で表面を拭き、上下面に市販の銀ペーストで電極をつけた後、蛍光灯表面から5cmの距離で光を照射したところ、約0.5Vの起電力を確認している。
【0044】
基板10のサイズは、特に限定されるものではないが、例えばφ300mmの厚いシリコンウェハからなり、レーザ光20の照射される表面が予め平坦化されていることが好ましい。また、基板10はSiに限定されるものではなく、サファイア基板、サファイア基板上にGaN層をエピタキシャル成長させた基板、GaN基板、AlGaN/GaN基板、SiC基板、SiC基板上にGaN層をエピタキシャル成長させた基板、GaAs基板、InP基板などを適用可能である。
【0045】
レーザ光20は、基板10の周面ではなく、表面に照射装置(図示省略)から集光レンズ16を介して照射される。このレーザ光20は、例えばパルス幅が1μs以下のパルスレーザ光からなり、900nm以上の波長、好ましくは1000nm以上の波長が選択され、YAGレーザ等が好適に使用される。
【0046】
レーザ光20は、厚み0.625mmの基板に照射したときの光線透過率が1〜80%の波長であることが望ましい。例えば、基板10がSiの場合、波長が800nm以下のレーザ光では吸収が大きいため、表面のみが加工され、2次元状内部改質層12を形成することができないため、900nm以上の波長、好ましくは、1000nm以上の波長が選択される。また、波長10.64μmのCO2レーザでは、光線透過率が高すぎるため、基板10の加工をすることが困難なため、YAG基本波のレーザなどが好適に使用される。
【0047】
レーザ光20の波長が900nm以上が好ましい理由は、波長が900nm以上であれば、シリコンからなる基板10に対するレーザ光20の透過性を向上させ、基板10の内部に2次元状内部改質層12を確実に形成することができるからである。レーザ光20は、基板10の表面の周縁部に照射され、あるいは基板10の表面の中心部から周縁部方向に照射される。
【0048】
集光レンズ16は、基板10の内部にレーザ光20のエネルギーを効率的に集中させるよう機能する。この集光レンズ16の開口数(NA)は、基板10の表面におけるアブレーション等による損失を防止する観点から、大きな数値、具体的には約0.5以上、約0.5〜約0.8が好ましい。
【0049】
基板10と焦点Pとは相対的に移動するが、この相対的な移動には、前述の如く、例えば、XYステージが使用される。
【0050】
第1の実施の形態に係る基板加工方法によれば、インゴットをワイヤソーにより切断するのではなく、接触加工の限界を超えることのできるレーザ光20により、基板10を薄く形成して剥離するので、厚さ0.1mm以下の薄い半導体ウェハなどの基板10をも短時間で容易に製造することができ、しかも、薄い基板10を得ることができるので、無駄が少なく、製品率を著しく向上させることができる。
【0051】
また、前工程の段階から薄い基板10を容易に製造することができるので、基板10にバックグラインド処理を長時間施す必要がなく、微細な研削カスが基板上の回路パターンを汚染するおそれもない。
【0052】
また、半導体ウェハやインゴットが硬度の大きいSiCの場合にも、薄い半導体ウェハを容易に製造することが可能になる。
【0053】
第1の実施の形態に係る基板加工方法においては、集光レンズ16を使用するが、開口数が大きい集光レンズ16を使用する場合には、レーザ光20の焦点の集光スポットが小さくなるので、基板10の内部に2次元状内部改質層12を連続形成するためには、レーザ光20の照射回数を増やす必要がある。
【0054】
そこで、第1の実施の形態に係る基板加工方法においては、図2(a)に示すように、厚い基板10の表面と集光レンズ16との間に、レーザ光20用の収差増強材である収差増強ガラス板18を介在させ、この収差増強ガラス板18を介在させた状態でレーザ光20を照射することにより、レーザ光20の照射回数を減少させるようにしている。
【0055】
また、通常の大気中で焦点を結ぶように設計された集光レンズ16を使用すると、図2(b)に示すように、空気よりも屈折率の大きな基板10では、集光レンズ16の内周部の光20aは、基板10の内部の表面側P1に、集光レンズ16の外周部の光20bは、基板10の内部のそれよりも深いところP2に焦点を結ぶことで、一回の照射で形成される内部改質層12,36,42,43の厚みを厚くすることができる。
【0056】
特に、2次元状内部改質層12で、エッチング液の浸透を容易にし、エッチング速度を向上させることができる。
【0057】
この効果は、収差増強材18を集光レンズ16と基板10の表面の間に設けることで、収差を増強することができ、さらに、収差増強材18の屈折率ならびに厚みで効果を調整することが可能になる。
【0058】
収差増強ガラス板18は、特に限定されるものではないが、例えば厚いカバーガラスやスライドガラス等が使用可能である。
【0059】
このように第1の実施の形態に係る基板加工方法によれば、レーザ光20を単に照射するのではなく、収差増強ガラス板18を介在して集光スポットを拡大し、集光スポットの間隔を大きくすることができるので、上記効果の他、レーザ光20の照射回数を削減することもできる。
【0060】
ここで、基板10には、少なくとも適当な長さにブロック化されたインゴットや厚い半導体ウェハが含まれる。また、レーザ集光手段には、少なくとも凹面鏡や各種レンズ等が含まれる。収差増強材として、必要数のガラス板を適宜使用することができる。
【0061】
第1の実施の形態に係る基板加工方法によれば、基板10の肉厚に拘わらず、対応可能なレーザ光20を用いるので、薄い基板を比較的短時間で容易に製造することができ、しかも、製品率を向上させることができる。
【0062】
また、基板10の表面と集光レンズ16との間に、レーザ光用の収差増強ガラス板18を介在するので、集光スポットを拡大してレーザ光の照射回数を減少させることができる。
【0063】
第1の実施の形態によれば、ダイシングとダイチップの薄層化を同時に解決する基板加工方法を提供することができる。
【0064】
また、第1の実施の形態によれば、マルチチップパッケージ(MCP:Multi Chip Package)のような3次元実装に必要な貫通ビア用のスルーホールを同時に形成可能な基板加工方法を提供することができる。
【0065】
また、第1の実施の形態によれば、太陽電池のような大面積の基板においても容易に薄層基板を形成可能な基板加工方法を提供することができる。
【0066】
第1の実施の形態によれば、薄い半導体ウェハを比較的短時間で容易に製造することができ、しかも、レーザ集光手段と基板の相対的な移動方向は、基板の劈開方向と一致していないため、基板の割れを防止し、製品率を向上させることのできる基板加工方法を提供することができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る基板加工方法において、一層目のパターン状改質層50を形成する工程の基板10の模式的断面構造は、図16に示すように表され、二層目のパターン状改質層52および三層目のパターン状改質層54を形成する工程の基板10の模式的断面構造は、図17に示すように表される。
【0068】
さらに、2次元状内部改質層12を形成する工程の基板10の模式的断面構造は、図18に示すように表され、パターン状改質層50、52、54および2次元状内部改質層12をエッチングする工程の基板10を説明する模式的断面構造は、図19に示すように表される。
【0069】
第2の実施の形態に係る基板加工方法は、図16〜図19に示すように、基板10上に非接触にレーザ集光手段16を配置する工程と、レーザ集光手段16により、基板10表面にレーザ光20、22を照射し、基板10内部にレーザ光26を集光する工程と、レーザ集光手段16と基板10を相対的に移動させて、基板10内部に集光するレーザ光26の集光点Pをレーザ集光手段16と反対側の基板10の最深部に設定した状態から、レーザ集光手段16側に移動させることで、一層または複数層のパターン状改質層50、52、54を形成する工程とを有し、レーザ集光手段16と基板10の相対的な移動方向は、基板10の劈開方向と一致していないことを特徴とする。
【0070】
また、パターン状改質層50、52、54を形成する工程後、レーザ集光手段16と基板10を相対的に移動させて、基板10内部に2次元状内部改質層12を形成する工程と、基板10表面にパターン状改質層50を露出させる工程と、パターン状改質層50、52、54および2次元状内部改質層12をエッチングする工程とを有していても良い。
【0071】
また、パターン状改質層を形成する工程において、一層のパターン状改質層50により、レーザ集光手段16が配置される側と反対側の基板10表面にパターン状改質層50が露出するようになされていても良い。
【0072】
また、基板10は半導体基板であり、2次元状内部改質層12を形成する工程後、基板10表面にパターン状改質層50を露出させる工程前に、基板10表面に基板10と反対導電型の半導体層38を形成する工程を有していても良い。
【0073】
第2の実施の形態に係る基板加工方法において、口の字形状のパターン状改質層60および円形形状のパターン状改質層62を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板10の模式的鳥瞰構造は、図20に示すように表わされる。すなわち、パターン状改質層60を口の字状に形成すると共に、パターン状改質層60の中心部に円形状のパターン状改質層62を形成している。図20の基板10は、図18に示す基板10の表裏(図面上の上下)面を反対にした様子を示す。図20において、パターン状改質層60、62は、基板表面10bに露出されている。パターン状改質層60および62は、図16〜図18に示された工程において順次形成されたパターン状改質層50、52、54の積層構造に相当する。なお、パターン状改質層60および62は、このような積層構造ではなく、一層のみの構造で形成することも可能である。
【0074】
第2の実施の形態に係る基板加工方法において、図19に示すエッチング工程によって、パターン状改質層60、62および2次元状内部改質層12をエッチングする工程後、チップ化されたX−Y走査方向に沿う半導体加工基板66を説明する模式的鳥瞰構造は、図21に示すように表わされる。図21に示すように、p型半導体加工基板66が得られ、かつp型半導体加工基板66の中央部には、微細な円形の開孔部64が形成されている。
【0075】
第2の実施の形態に係る基板加工方法において、複数のチップ化された半導体加工基板66を説明する模式的平面構造は、図22(a)に示すように表わされ、大面積の半導体加工基板66を説明する模式的平面構造は、図22(b)に示すように表わされる。
【0076】
第2の実施の形態に係る基板加工方法において、中央部に円形形状のパターン状改質層62を有する口の字形状のパターン状改質層60を複数形成することによって、図22(a)に示すように、複数のp型半導体加工基板66を同時に形成することができる。また、円形形状のパターン状改質層62を複数個有する、相対的に大面積の口の字形状のパターン状改質層60を形成することによって、図22(b)に示すように、相対的に大面積のp型半導体加工基板66を形成することができる。
【0077】
第2の実施の形態に係る基板加工方法においては、パターン状改質層60、62(50、52、54)を形成する工程後に、2次元状内部改質層12を形成する工程を実施している。一方、第1の実施の形態に係る基板加工方法においては、2次元状内部改質層12を形成する工程後に、パターン状改質層36、42、43を形成する工程を実施しており、工程の順番が逆になっている点が異なる。また、第1の実施の形態に係る基板加工方法においては、パターン状改質層のパターンが田の字状であるのに対して、口の字状でかつ口の字の中心部に円形形状を有する点が異なる。その他の工程は、第1の実施の形態と同様であるため、各工程の重複説明は省略する。
【0078】
基板10としては、例えば、大きさ50×50mm、厚さ約0.625mmのp型Siウェハを使用する。Siウェハの面方位は、例えば(100)面を使用する。鏡面研磨したp型Siウェハを、ウェハの劈開方向Cから、Y方向に約5度ずらした状態で、研磨面を上に、XYステージ(図示省略)上に載置する。レーザ光のX−Y走査方向、劈開方向Cおよび劈開面14a〜14dは、図3に示すように表される。
【0079】
集光レンズ16と基板10を相対的に移動させて、基板10内部にパターン状改質層60および62を形成する工程は、集光レンズ16を下方に210μm移動させた後、大きさ10mm×10mmの「口」の字パターンおよび円形パターンを描くことを1回以上繰り返し、パターン状改質層50を形成する。このとき、縦横の各線は10μmピッチで10本の線を描くことで、100μ幅のパターン状改質層50を形成している。「ロ」の字パターンの中央部の塗りつぶし円形パターンの直径は、約0.2mmである。この状態で、基板表面10bには、パターン状改質層50が露出した。次いで集光レンズ16を20μmステップで、上方向に移動させながら描画を行い、パターン状改質層52および54を形成した。
【0080】
集光レンズ16と基板10を相対的に移動させて、基板10内部に2次元状内部改質層12を形成する工程は、第1の実施の形態と同様であり、例えば、Y方向の移動速度10mm/秒で、X方向に10μmステップで送りながら、レーザ光20,22,26を基板10の内部に集光させることによって行われる。集光レンズ16の焦点距離は、例えば、約2mm、開口数は、0.8である。収差増強ガラス板18は、例えば、厚さ0.15mmのガラスで形成される。このとき、焦点は、基板表面に焦点を合わせた状態でから、下方向に70μ移動させた状態であった。結果として、基板10の表面から約250μmの深さに、深さ約80μmの幅を有する2次元状内部改質層12が形成される。レーザ光20の光源としては、例えば、波長1064μm、パルス幅約150n秒のYAGレーザ(10kHz、0.8W)を適用することができる。図3においては、例えば、レーザ光の照射領域は、11mm×11mmである。
【0081】
次に、図19に示すように、エッチング液44を満たしたエッチング槽46内に基板10を投入し、パターン状改質層50、52、54および2次元状内部改質層12をエッチングする。エッチング液44として10%の水酸化ナトリウム水溶液を適用し、60℃、2時間エッチングしたところ、2次元状内部改質層12を挟んで、基板10を上下に分離することで、10mm×10mmの薄層化されたp型半導体加工基板66を1枚を得ることができた。p型半導体加工基板66は、2次元状内部改質層12上に基板10dをくり貫く形で得られた。くり貫かれた基板10dには、図21に示すように、凹部68が形成される。
【0082】
第2の実施の形態によれば、ダイシングとダイチップの薄層化を同時に解決する基板加工方法を提供することができる。
【0083】
また、第2の実施の形態によれば、MCPのような3次元実装に必要な貫通ビア用のスルーホールを同時に形成可能な基板加工方法を提供することができる。
【0084】
また、第2の実施の形態によれば、太陽電池のような大面積の基板においても容易に薄層基板を形成可能な基板加工方法を提供することができる。
【0085】
第2の実施の形態によれば、薄い半導体ウェハを比較的短時間で容易に製造することができ、しかも、レーザ集光手段と基板の相対的な移動方向は、基板の劈開方向と一致していないため、基板の割れを防止し、製品率を向上させることのできる基板加工方法を提供することができる。
【0086】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態に係る基板加工方法において、4層目のパターン状改質層76を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板10の模式的鳥瞰構造は、図23に示すように表される。
【0087】
第3の実施の形態に係る加工方法においては、製品率を高めるために、第1の実施の形態に係る加工方法における図6に示された「田」の字のパターンをさらに拡張して、格子状パターンを用いて、パターン状改質層70、72、74および76を形成している。その他の工程は、第1の実施の形態と同様であるため、各工程の重複説明は省略する。
【0088】
第3の実施の形態によれば、薄い半導体ウェハを比較的短時間で容易に製造することができ、しかも、製品率を向上させることのできる基板加工方法を提供することができる。
【0089】
(比較実験例)
劈開方向とX−Y走査方向が一致する比較例に係る基板加工方法において、口の字形状のパターン状改質層80および円形形状のパターン状改質層82を形成する工程後のX−Y走査方向に沿う基板の模式的鳥瞰構造は、図24に示すように表わされ、パターン状改質層80、82および2次元状内部改質層12をエッチングする工程後、チップ化されたX−Y走査方向に沿う半導体加工基板86を説明する模式的鳥瞰構造は、図25に示すように表わされる。
【0090】
基板10としては、例えば、大きさ50×50mm、厚さ約0.625mmのp型Siウェハを使用する。Siウェハの面方位は、例えば(100)面を使用する。鏡面研磨したp型Siウェハを、ウェハの劈開方向Cから、Y方向に約0.5度ずらした状態で、研磨面を上に、XYステージ(図示省略)上に載置する。レーザ光のX−Y走査方向、劈開方向Cおよび劈開面14a〜14dは、略一致するため、図4に示すように表されるものと考えて良い。
【0091】
集光レンズ16と基板10を相対的に移動させて、基板10内部にパターン状改質層80および82を形成する工程は、集光レンズ16を下方に210μm移動させた後、レーザ光の出力1Wで、大きさ10mm×10mmの「口」の字パターンおよび円形パターンを描くことを1回以上繰り返し、パターン状改質層80および82を形成する。このとき、縦横の各線は10μmピッチで10本の線を描くことで、100μ幅のパターン状改質層80および82を形成し、「ロ」の字パターンの中央部の塗りつぶし円形パターンの直径は、約0.2mmである。
【0092】
集光レンズ16と基板10を相対的に移動させて、基板10内部に2次元状内部改質層12を形成する工程は、第1の実施の形態と同様である。
【0093】
しかるに、2次元状内部改質層12を形成しようとしたところ、レーザ光の照射による2次元状内部改質層12の形成途中で、基板10がY方向沿って割れた。割れた場所から、レーザ光の出力を0.7Wに落とし、さら照射を続け、11mm×11mmの2次元状内部改質層12を形成した基板10を得た。
【0094】
この基板10の劈開面14aを開口部とする10mm×10mmの「コ」の字パターンを出力0.7Wで第1の実施の形態と同様にパターン状改質層80および82を作成したが、開口部「コ」の字の開口部方向に再度、劈開が生じた。
【0095】
最終的に、このウェハから10mm×10mmの側壁部に2次元状内部改質層12が露出した基板10を切り出し、実施例1と同一条件で2時間のエッチングを行い、上下2枚に剥離することができた。
【0096】
結果として、中央部に開孔部84を有するチップ化された半導体加工基板86が得られた。くり貫かれた基板10dには、図25に示すように、凹部88が形成される。このように、劈開方向とX−Y走査方向が一致する比較例に係る基板加工方法においては、レーザ光の出力を調整しても基板の割れが顕著に生じるため、製品率を向上させることは難しい。
【0097】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1〜第3の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0098】
例えば、第1の実施の形態に係る基板加工方法においては、田の字形状のパターン状改質層を形成する例を開示したが、第2の実施の形態のように、一個もしくは複数の円形形状のパターン状改質層を有する口の字状のパターン状改質層を形成しても良い。
【0099】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の基板加工方法により基板を効率良く薄く形成することができることから、薄く切り出された半導体ウェハは、Si基板であれば、太陽電池に応用可能であり、また、GaN系半導体デバイスなどのサファイア基板などであれば、発光ダイオード、レーザダイオードなどに応用可能であり、SiCなどであれば、SiC系パワーデバイスなどに応用可能であり、透明エレクトロニクス分野、照明分野、ハイブリッド/電気自動車分野など幅広い分野において適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
10、10u、10d…基板(半導体ウェハ)
10a、10b…基板表面
12…2次元状内部改質層
14a、14b、14c、14d…劈開面
16…集光レンズ(レーザ集光手段)
18…収差増強ガラス板(収差増強材)
20、20a、20b、22、26…レーザ光
24…レーザスポット
36、42、43、50、52、54、60、62、70、72、74、76、80、82…パターン状改質層
38…導電性高分子層(半導体層)
40…保護層
44…エッチング液
46…エッチング槽
64、84…開孔部
66、86…半導体加工基板
68、88…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に非接触にレーザ集光手段を配置する工程と、
前記レーザ集光手段により、前記基板表面にレーザ光を照射し、前記基板内部にレーザ光を集光する工程と、
前記レーザ集光手段と前記基板を相対的に移動させて、前記基板内部に2次元状内部改質層を形成する工程と
を有し、前記レーザ集光手段と前記基板の相対的な移動方向は、前記基板の劈開方向と一致していないことを特徴とする基板加工方法。
【請求項2】
前記レーザ集光手段と前記基板を相対的に移動させて、前記2次元状内部改質層の前記レーザ集光手段側およびまたは前記レーザ集光手段と反対側に少なくとも1層のパターン状改質層を形成する工程と、
前記基板表面に前記パターン状改質層を露出させる工程と、
前記パターン状改質層および前記2次元状内部改質層をエッチングする工程と
を有することを特徴とする請求項1に記載の基板加工方法。
【請求項3】
前記パターン状改質層を形成する工程は、前記基板内部に集光するレーザ光の集光点を前記レーザ集光手段側に移動させることで、前記2次元状内部改質層上にパターニングされた前記パターン状改質層を一層以上形成する工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の基板加工方法。
【請求項4】
前記基板表面に前記パターン状改質層を露出させる工程は、前記基板内部に集光するレーザ光の集光点を前記レーザ集光手段側に移動させることで、最後に前記基板表面に前記パターン状改質層を形成する工程を有することを特徴とする請求項2または3に記載の基板加工方法。
【請求項5】
前記基板は半導体基板であり、前記パターン状改質層を形成する工程後、前記基板表面に前記パターン状改質層を露出させる工程前に、前記基板表面に前記基板と反対導電型の半導体層を形成する工程を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の基板加工方法。
【請求項6】
基板上に非接触にレーザ集光手段を配置する工程と、
前記レーザ集光手段により、前記基板表面にレーザ光を照射し、前記基板内部にレーザ光を集光する工程と、
前記レーザ集光手段と前記基板を相対的に移動させて、前記基板内部に集光するレーザ光の集光点を前記レーザ集光手段と反対側の前記基板の最深部に設定した状態から、前記レーザ集光手段側に移動させることで、一層または複数層のパターン状改質層を形成する工程と
を有し、前記レーザ集光手段と前記基板の相対的な移動方向は、前記基板の劈開方向と一致していないことを特徴とする基板加工方法。
【請求項7】
前記パターン状改質層を形成する工程後、前記レーザ集光手段と前記基板を相対的に移動させて、前記基板内部に2次元状内部改質層を形成する工程と、
前記基板表面に前記パターン状改質層を露出させる工程と、
前記パターン状改質層および前記2次元状内部改質層をエッチングする工程と
を有することを特徴とする請求項6に記載の基板加工方法。
【請求項8】
前記一層の前記パターン状改質層により、前記レーザ集光手段が配置される側と反対側の前記基板表面に前記パターン状改質層が露出することを特徴とする請求項6または7に記載の基板加工方法。
【請求項9】
前記基板は半導体基板であり、前記2次元状内部改質層を形成する工程後、前記基板表面に前記パターン状改質層を露出させる工程前に、前記基板表面に前記基板と反対導電型の半導体層を形成する工程を有することを特徴とする請求項7または8に記載の基板加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−155070(P2011−155070A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14529(P2010−14529)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】