説明

基板加工装置

【課題】信頼性の高い加工を実現し、環状ガラス基板等の環状加工品の量産化、自動化に適した基板加工装置を提供する。
【解決手段】 第一面上に閉曲線をなすスクライブラインC1が形成された脆性材料基板Gを、該スクライブラインC1に沿って分断することにより前記閉曲線の内側を抜き取る中抜き加工を行うブレイク部4を備えた基板加工装置MS1であって、前記ブレイク部4は、スクライブラインC1より外側領域を、前記第一面と反対側の第二面で支持しかつ加熱するプレート42と、スクライブラインC1より内側の中心領域を、第一面側及び/又は第二面側から冷却して外側領域と中心領域とを分離する中抜き機構43とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料の加工品を形成するための基板加工装置に関する。本発明は、例えばガラス基板から情報記憶装置用の環状基板を切り抜く加工等に用いられる。
ここでいう脆性材料には、ガラス基板の他に、セラミックス、単結晶シリコン、半導体ウエハ、サファイア等の材料が含まれる。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクに用いるガラス製の環状基板は、方形のガラス基板から内周と外周とを切り抜く加工を行うことにより形成する。
ガラス基板を円形に加工する場合、基板の片側表面に対し輪郭線となる円に沿って、左右の刃角が異なるカッター(スクライビングホイール)を用いて深さ方向に傾斜した切筋(スクライブライン)をつけ、切筋をつけた面(第一面)から加熱して変形させ、この変形によって切筋に沿って形成されるクラックをガラス板の厚み方向に伸展させて対向面(第二面)まで到達させ、その後、輪郭線で囲まれる部分を押し棒によって押すことにより円形に切り抜く加工を行うことが開示されている(特許文献1参照)。この方法により内周円と外周円とを有する環状ガラス基板を形成するときは、まず方形基板から外周円となる外側輪郭線に沿って上記方法により切り抜き加工を行い、続いて同じ方法を繰り返して、内周円となる内側輪郭線に沿って切り抜き加工を行うようにして環状基板を形成するようにしている。
【0003】
また、ガラス基板から所望の形状の外周を有するガラス製品を製造する際、チッピングや傷がない加工品質の優れた加工方法として、ガラス板の一方面に外周となる輪郭線を刻設し、輪郭線外側であるガラス板周辺部の縁と輪郭線の外側近傍とを結ぶ複数の引き出し線を輪郭線と交差する方向に向けて刻設し(ただしこの時点では引き出し線を輪郭線まで到達させず離しておく)、ガラス板周辺部を加熱して熱歪を発生し引き出し線を延伸させることにより引き出し線を輪郭線まで到達させるとともに、発生した熱歪によりガラス板周辺部を外側方向に輪郭線及び引き出し線に沿って分離する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、基板から閉曲線形状を切り抜く際に、基板に対し傾斜した切筋を、通常のスクライビングホイール(カッターホイールとも呼ばれる)よりもクラックが深く伸展するように形成することができるスクライビングホイールとして、ディスク状ホイールの刃先稜線にホイールの軸心方向に対して傾斜させた溝を周期的に形成した傾斜溝付きスクライビングホイールが実用されている(特許文献3参照)。
【0005】
図8は、傾斜溝付きスクライビングホイール22の刃先を示す図であり、図8(a)は正面図、図8(b)は側面図、図8(c)はA−A’断面図である。この傾斜溝付きスクライビングホイール22は、溝22aの切り取り面22bを軸心22cに対し傾斜させ、その切り取り量を稜線102の両側で不均等にしている。
具体的には1〜20mmのホイール径に応じて、溝ピッチを20μm〜200μmの範囲で設けるようにしている。更に、図8(c)に示すように、左右の溝深さh1、h2について、h1を2μm〜2500μmとし、h2を1μm〜20μmとしている。
このような特殊刃先(高浸透刃先という)のスクライビングホイールを用いることにより、溝がない通常のスクライビングホイールでは困難で事実上不可能な深さまで伸展した斜めクラックを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2785906号公報
【特許文献2】特開2006−240948号公報
【特許文献3】特許第2989602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
方形ガラス基板から環状ガラス基板を次々と製造する量産システムは、単に加工面の品質が優れているだけでなく、生産性、信頼性についても優れていることが必要になる。
しかしながら、上述した特許文献に記載の切り抜き加工技術によれば、優れた加工品質を得ることができるが、生産性や加工工程の信頼性については、これまではあまり検討されていなかった。
【0008】
例えば、環状のガラス基板を形成するには、内周円の内側(中心領域という)、及び、外周円の外側(縁側領域という)を切り取ることになるが、特許文献1に記載されるように、先に外側の縁側領域を切り取り、その後、内側の中心領域を切り取る加工工程を組んでいる場合に、中心領域が切り取られてその場に残ってしまうと、次回の加工に支障をきたす不具合が生じるため、そのような不具合が生じないような信頼性の高い加工方法を検討する必要がある。
【0009】
特許文献1の方法では、このような不具合をなくすために、先に外周円の切筋のみを形成し、ガラス板周辺部を加熱し、外周円に沿って切り抜いてから、内周円の切筋をつけることが必要になっていた。そのため、外周円の切筋をつける工程と内周円の切筋をつける工程とを連続して行わず、途中に加熱工程を挟むようにして別工程としている。その結果、工程数が増えることとなった。
また、切筋(スクライブライン)からガラス板の厚み方向にクラックが深く伸展していないため反対面(第二面)から加熱してもクラックを更に深く進展させることができないことより、切筋をつけた面(第一面)から加熱して、深さ方向にクラックを伸展させる必要があるため、第一面側を加熱する加熱機構を設けるか、加熱機構を備えた支持プレート上に一旦載置した後、途中で基板を反転させることが必要になっていた。
【0010】
また、特許文献2の方法は、外周円に沿って切り取る加工を行う場合に適用できるが、続けて内周円の加工を行う場合については特に検討されていなかった。
【0011】
そこで、本発明は、信頼性の高い加工を実現し、環状ガラス基板等の環状加工品の量産化、自動化に適した加工システムを提供することを目的とするものであり、殊に本発明は、加工システムのブレイク工程において、確実に閉曲線の内側部分の中抜き加工ができるとともに、効率よく中抜き加工が行えるようにする基板加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の基板加工装置は、第一面上に閉曲線をなすスクライブラインが形成された脆性材料基板を、該スクライブラインに沿って分断することにより前記閉曲線の内側を抜き取る中抜き加工を行うブレイク部を備えた基板加工装置であって、前記ブレイク部は、前記スクライブラインより外側領域を、前記第一面と反対側の第二面で支持しかつ加熱するプレートと、前記スクライブラインより内側の中心領域を、前記第一面側及び/又は前記第二面側から冷却して前記外側領域と前記中心領域とを分離する中抜き機構とを設けるようにしている。
例えば、内側輪郭線のスクライブラインが形成された基板を、当該スクライブラインが形成された第一面と反対側の第二面がブレイク部の環状プレート(加熱プレート)と接するようにして加熱しながら支持する。基板の種類、厚み、材質等にもよるため、特に限定されるものではないが、通常、基板の厚みに対して、例えば、60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上(理想的には100%)の深さまで伸展した基板は、第一面側及び/又は第二面側からの中心領域の冷却により、効率よく中抜きすることができる。そのため、中抜き機構を作動させて、内側輪郭線(スクライブライン)より内側の中心領域を第一面側及び/又は第二面側から冷却する。これにより、環状領域が加熱され、中心領域が冷却され、更に基板の厚み方向に深いクラックが内側輪郭線(スクライブライン)に沿って形成されているため、基板の中心領域の冷却により、中心領域が収縮し、第二面側から加熱された環状領域との境界の内側輪郭線に沿って形成されている深いクラックが基板の厚み方向に更に伸展し、ガラス基板が内側輪郭線(スクライブライン)に沿って分断され、中抜き加工が行われる。クラックが厚み方向に貫通した基板では、中心領域の冷却により、中心領域が収縮し、加熱された環状領域との温度差により、中心領域が中抜きされる。
【0013】
上記発明において、前記中抜き機構は、冷媒を噴射するノズルが設けられるとともに、前記ノズルを前記中心領域に当接するように駆動する昇降機構を備えるようにしてもよい。冷媒としては、例えば、各種気体(冷却空気、圧縮空気等)、各種液化ガス(液体窒素、液体ヘリウム)、各種液体(水、アルコール等)等を使用することができる。
これによれば、主として、ノズルを基板に接近させて基板の中心領域に冷媒を噴射することにより、中心領域を冷却して収縮させ、加熱した環状領域との温度差を発生することで、(内側輪郭線のスクライブラインから形成されている斜めクラックが基板の厚み方向に貫通していない場合には貫通させて)中心領域を分断することができるが、熱的作用だけでは分断ができなかった場合に、ノズル先端を中心領域に当接して押圧することで、確実に分断させることができる。
【0014】
また、前記ブレイク部のプレートは、ターンテーブル上でその回転中心から等距離離れた円周上に区画を形成するようにして複数配置されるとともに、前記ターンテーブルが区画単位で回転移動し、該回転移動により前記プレートの1つが前記中抜き機構の位置に移動するように形成されていてもよい。
これによれば、中抜き機構の位置までに通過する区画により、加熱時間を確保して基板温度を安定させることができる。
【0015】
更に、前記スクライブラインを前記第一面に形成するスクライブ部と、該スクライブ部から前記ブレイク部の前記プレートへ前記脆性材料基板を搬送する基板搬送機構とを備えるようにしてもよい。
この場合、前記スクライブ部は、前記スクライブラインを、前記第一面から前記第二面に向けて外側に広がるように形成するスクライブ機構からなるようにしてもよい。
これによれば、スクライブ加工から中抜き加工までを自動化することができる。また、スクライブラインを第一面から第二面に向けて外側に広がるように形成することで分離ミスの不具合が激減し、信頼性よく分離できるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中抜き加工により加工品を製造する場合に、信頼性の高い加工を実現し、量産化、自動化に適した加工システム及び加工方法を実現することができる。また、本発明によれば、加熱は第二面だけから行えばよいので、例えば、上面(第一面)側からスクライブし、下面(第二面)側から加熱プレートを用いて加熱を行う構成を採用することにより、基板を搬送する際に、反転させる必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態である加工システムの全体構成図(平面図)。
【図2】図1の加工システム中のスクライブ部の構成を示す図(正面図)。
【図3】図1の加工システム中のブレイク部の環状プレートの構成を示す図。
【図4】図1の加工システム中のブレイク部の中抜き機構の構成を示す図。
【図5】図1の加工システム中のブレイク部の縁側分離機構の構成を示す図。
【図6】方形の基板に形成するスクライブラインの形状を示す図。
【図7】加熱工程、中抜き工程、縁側分離工程による動作及び基板状態を示す図。
【図8】傾斜溝付きスクライビングホイール(高浸透刃先(高浸透スクライビングホイール))の構成図。
【図9】ブレイク部の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、ハードディスクに用いるガラス製の環状基板を製造する場合について説明するが、他の脆性材料の加工品を製造する場合にも適用することができる。
【0019】
図1は本発明の一実施形態である環状基板加工システムの全体構成を示す図(平面図)である。ここで説明する加工システムMS1は、第一搬送部1、スクライブ部2、第二搬送部3、ブレイク部4、第三搬送部5から構成される。この加工システムMS1では、各工程の加工時間を調整して量産化を図るため、スクライブ部2では3つのスクライブヘッドが並行にラインをなすように配置され、ブレイク部4では複数の方形基板が、ターンテーブル上を移動して、加熱(クラック伸展)、中抜き(冷却)、外側分離の各工程を順次、流れ作業で処理されるようにしてある。以下、加工システムMS1の各部について説明する。
【0020】
第一搬送部1は、カセット取り付け部11と基板搬送機構12からなる。カセット取り付け部11は、方形基板Gを複数枚ずつ収納した3つのカセット13a、13b、13cを、取り付け位置P1に一方向(Y方向とする)に並べてセットすることができるようにしてある。取り付け位置P1にカセット13a〜13cをセットすることにより、カセット13a〜13c内の基板Gと基板搬送機構12との位置関係が対応付けられるようになり、基板搬送機構12がカセット13a〜13cから方形基板Gを取り出すことが可能になる。基板搬送機構12は、各カセットに対応してカセット上方に配置された3つの吸引チャック(不図示)を有するアーム12aによりカセット13a〜13cのそれぞれから同時並行して計3枚の方形基板Gを取り出し、これらをX方向に移動して後述するスクライブ部2のテーブル14上の位置P2に待機する回転ステージ16a〜16cに載置する。
【0021】
スクライブ部2は、テーブル14と3つのスクライブヘッド15a〜15cとを有するスクライブ装置SCにより構成される。図2はスクライブ装置SCの概略構成を示す図である。
テーブル14は、3つの回転ステージ16(16a〜16cをまとめて16と記載する、以下同様)、3つの回転駆動機構17(17a〜17c)、これら3つの回転ステージ16を搭載するXステージ18、Xステージ駆動機構19、Xステージ18を搭載するYステージ20、Yステージ駆動機構21を備えており、各回転ステージ16上に載置された基板Gを回転しあるいはXY方向に並進移動して、スクライブヘッド15(15a〜15c)に対し基板Gを相対的に走査するようにしてある。
スクライブヘッド15(15a〜15c)は、傾斜溝付きスクライビングホイール22(高浸透刃先)と、回転ステージ16上に載置した基板Gへの傾斜溝付きスクライビングホイール22の圧接荷重を調整する調整機構を備えたホイール支持機構23と、ホイール支持機構23及び傾斜溝付きスクライビングホイール22の位置を調整するアーム24とからなる。
【0022】
傾斜溝付きスクライビングホイール22(高浸透刃先)は、既述のようにスクライビングホイールの刃先稜線にスクライビングホイールの軸心方向に対して傾斜させた溝を周期的に形成してある。刃先稜線に溝が形成されることにより、溝のない刃先を用いた場合よりもはるかにクラックの板厚方向の浸透深さを深くすることができ、また、この溝を傾斜させることにより、形成されるクラックを斜めクラックにすることができる。傾斜溝付きスクライビングホイール22を用いることにより、板厚が2mm程度までの通常のガラス基板であれば、板厚の50%程度、あるいはそれ以上の浸透深さを有するクラックを簡単に形成することができる。この程度まで深いクラックを形成することで、スクライビングホイール22を走査した面と反対側の面から加熱するだけで、熱応力によりクラックを更に深く伸展させることができ、好ましくは貫通させることができるようになる。なお、溝を傾斜させた方向に対するスクライビングホイールを走査させる方向は、閉曲線を切り抜いたときに閉曲線の内側が落下して中抜き加工ができるように、クラックが深さ方向に伸展するにつれて外側に広がる向きに傾斜するようにしてある。スクライビングホイールを、溝の深い側が閉曲線の外側に向く方向に走査させることにより、クラックが深さ方向に伸展するにつれて閉曲線の外側に広がる向きに傾斜するようになる。
【0023】
ホイール支持機構(スクライブヘッド)23は、バネによる付勢力調整機構(不図示)を備えており、基板Gと傾斜溝付きスクライビングホイール22との圧接力を調整して、基板Gに形成するクラックの浸透深さを調整することができるようにしてある。
アーム24は、フレーム25に支持され、Xステージ駆動機構19及びYステージ駆動機構21と連携して、テーブル14に対する傾斜溝付きスクライビングホイール22)の位置を調整する。すなわち、アーム24により傾斜溝付きスクライビングホイール22の位置を調整し、回転ステージ16を回転させることにより、基板Gに所望の直径を有する円(内側輪郭線、外側輪郭線)をスクライブすることができるようにしてある。また、テーブル14のXステージ18、Yステージ20を同時に並進させることにより、所望の方向に引き出し線(直線)をスクライブすることができるようにしてある。
内側輪郭線(内周円)、外側輪郭線(外周円)、引き出し線のスクライブ加工が施された基板Gは、続いてXステージ18がX方向へ移動することによって、位置P3まで搬送される。
【0024】
第二搬送部3は、基板搬送機構31と、コンベア32と、基板位置決め機構33と、位置決めテーブル34と、基板受け渡し機構35とからなる。基板搬送機構31は、吸着機構(不図示)を有するアーム31aにより、位置P3に搬出された3枚の基板Gを、同時並行してコンベア32に載せる。コンベア32は載置された3枚の基板Gを、順次、コンベア32の一端の位置P4に送る。位置決め機構33はロボットアーム33aを有し、位置P4に送られた基板Gを1枚ずつ位置決めテーブル34上の位置P5に搬送する。位置決めテーブル34には基板の位置や向きを定めるための突起(不図示)が設けられており、載置された基板Gが突起に当接されて正確な位置決めが行われる。基板受け渡し機構35はロボットアーム35aを有し、位置決めテーブル34から基板Gを取り出して、後述するブレイク装置4の受け渡し位置P6にある環状プレート42上に載置する。
【0025】
ブレイク部4は、回転駆動機構(不図示)によって右方向(図1中、時計回り)に回転するターンテーブル41と、ターンテーブル41の回転中心から等距離離れた円周上に配置された8つの環状プレート42と、中抜き機構43と、縁側分離機構44と、洗浄機構45からなる。
【0026】
ターンテーブル41は、8つの区画に等分割され、それぞれの区画に1つの環状プレート42が配置される。
【0027】
図3は、環状プレート42の構成を示す図であり、図3(a)はその斜視図、図3(b)はその断面図である。内周円と外周円とに囲まれた環状プレート42の上面46には、多数の吸引チャック用の孔47が形成され、基板Gが載置されたときに基板Gを固定できるようにしてある。環状プレート42の内部にはヒータ48が内蔵してあり、載置された基板Gのうち上面46と接する領域が加熱されるようにしてある。
【0028】
そして一定時間経過するごとに、ターンテーブル41が45度ずつ回転し、各環状プレート42が隣の区画に移動する。
8つの区画のうち、第一区画A1は基板Gの受け渡し領域であり、第一区画内の位置P6に環状プレート42が配置される。そして第二搬送部3から搬送されてきた基板Gの受け渡しが行われる。
【0029】
第二区画A2及び第三区画A3は加熱領域であり、環状プレート42に載置された基板Gを加熱する。2つの区画で加熱するのは、次工程の中抜き加工までの加熱時間を確保して基板温度を安定させ、クラックを基板の厚み方向に十分に伸展させるためである。なお、後述する第五区画A5まで環状プレート42の加熱を継続するが、8つの区画すべてで環状プレート42を加熱するようにしてもよい。
【0030】
第四区画A4は中抜き領域であり、中抜き機構43を作動して、基板Gの中心領域を環状プレート42の内側開口49から落下させる。
図4は第四区画に配置された中抜き機構43の構成を示す図である。中抜き機構43は、冷却したエアー(冷媒)を作るエアージェット51、冷却されたエアーを噴射するノズル52、エアージェット51及びノズル52を支持するホルダ53、アーム54を介してホルダ53を昇降させる昇降機構55からなる。ノズル52の先端部分は樹脂(例えばテフロン(登録商標)樹脂)で形成され、ノズル52が基板Gに当接したときに基板Gが傷つきにくいようにしてある。またノズル52の先端は環状プレート42の内側開口49よりも小さく形成してあり、ノズル52の先端が内側開口49に入り込むことができるようにしてある。これにより環状プレート42に載置された基板Gの中心領域がなかなか落下しないときに、ノズル52の先端で基板Gの中心領域のみを押圧できるようにしてある。
【0031】
第五区画A5は縁側分離領域であり、縁側分離機構44を作動して、基板Gの縁側領域を環状領域から分離して落下させる。
図5は縁側分離機構44の構成を示す図である。縁側分離機構44は一対の把持装置56、57からなる。把持装置56、57はそれぞれ、基板Gの上面に接する上部ブロックと下面に接する下部ブロックとからなるクリップ58を備えており、これで基板Gを挟持して外側方向に外力を加えるようにしてある。なお、基板Gと接する部分は基板Gを確実に把持できるように樹脂(例えばテフロン(登録商標)樹脂)で形成してある。また、把持装置56のクリップ58が基板Gを挟む位置と、把持装置57のクリップ58が基板Gを挟む位置との間には、スクライブ部2で形成した引き出し線のいずれかがくるように、予め、基板Gへの引き出し線の形成位置が定められる。
【0032】
把持装置56、57は、クリップ58を水平方向外側に引くことにより、基板Gに形成した内側輪郭線と外側輪郭線に囲まれる環状領域と、外側輪郭線の外側である縁側領域とを分離するが、水平方向に引くとき、上述した引き出し線と直交する方向に引くようにして、加えた力が引き出し線に沿って効率よく働くようにするとともにチッピングが発生しにくいようにしている。この把持装置56、57の作動により、基板Gの縁側領域が除去され、環状プレート42の上には最終的に環状基板G0が残るようになる。
【0033】
第六区画は環状基板G0の搬出領域であり、後述する第三搬送部5の基板搬送機構61により位置P7にある環状プレート42から環状基板G0が取り出される。
【0034】
第七区画A7及び第八区画A8は洗浄領域であり、ブラシ71及びエアーブラシ(不図示)が設けられる。直前までの加工工程により、環状基板G0を取り出した後の環状プレート42の上に、切り取られた縁側領域の端材やガラスの破片が残っている場合であっても、それらを除去して、次回の加工の際に障害とならないようにする。
そして第八区画A8まで到達した環状プレート42は、再び第一区画A1に戻り、次の基板Gが受け渡されるようになる。
【0035】
第三搬送部5は、基板搬送機構61と回収用のカセット取り付け部62とからなる。基板搬送機構61は、既存のロボットハンド61aが用いられ、位置P7にある環状プレート42から環状基板G0を取り出し、回収用のカセットに向けて搬送する処理を行う。回収用のカセット取り付け部62には、空のカセットが用意され、基板搬送機構61によって搬送された環状基板G0が収納される。収納し終えたカセットは、送り出され、次の空のカセットが用意される。
【0036】
次に、スクライブ部2とブレイク部4とによる加工動作について説明する。
図6はスクライブ部2で方形の基板Gに形成されるスクライブラインの形状を示す図である。まず、図6(a)に示すように、内側輪郭線C1と外側輪郭線C2とを形成する。図6(b)は内側輪郭線C1が形成された断面を示す図である。傾斜溝付きスクライビングホイール22により、基板の板厚の半分程度の深さまで浸透したクラックが形成される。このとき、深さ方向に進行するにつれて外側に広がるクラックが形成される。
【0037】
続いて、引き出し線C3(直線)を基板Gの縁側領域に形成する。引き出し線C3の本数は特に限定されないが、ブレイクの際に外側輪郭線C2より縁側領域を確実に除去するためには、引き出し線は2本〜4本程度形成することが好ましい。なお、2つの把持装置56、57を用いて外側輪郭線C2より外側で縁側領域の分離を行うが、把持装置の台数とは関係なく縁側領域に形成する引き出し線の本数を定めればよい。引き出し線C3は、その延長線上から外れた位置に外側輪郭線C2がくるように引き出し線C3の方向が定められるとともに、引き出し線C3と外側輪郭線C2との間隔が5mm以内に接近するように形成される。引き出し線C3をこのように形成することで、ブレイクの際に、引き出し線C3から外側輪郭線C2に続くクラックを進行させることができるようになる。ちなみに、引き出し線C3の延長上に外側輪郭線C2がくるように引き出し線C3を形成したときは、図6(c)に見られるように、ブレイク後に外側輪郭線C2の一部に切り残る部分C5が生じる現象が発生することがあったが、延長線上から外れた位置に外側輪郭線C2がくるようにしたときは切り残る部分は全く発生しない。
【0038】
次に、ブレイク処理について説明する。図7はブレイク部4での加熱(クラック伸展)、中抜き(冷却)、縁側分離工程による動作及び基板状態を示す図である。
スクライブ部2から搬送された直後の加熱されていない基板G(第一区画)は、図7(a)に示すように、クラックが基板の厚さ方向に半分程度まで浸透しているだけで、貫通していない。
次に加熱工程(第二区画、第三区画)によって基板Gが加熱されると、図7(b)に示すように、クラックが深さ方向(基板Gの厚さ方向)に進伸展し、基板Gを厚さ方向に貫通するようになるが、加熱工程ではクラックが更に深く伸展すればよく、クラックを基板Gの厚さ方向に貫通するまで伸展させなければならないわけではない。
次に中抜き工程(第四区画)になると、図7(c)に示すように、基板Gの中心領域が冷却され、あるいはノズル52で押圧されて分離し、落下するようになり、基板Gに内周円が形成される。加熱工程において内側輪郭線のクラックが基板Gの厚さ方向に貫通していない場合には、中抜き工程における冷却により、クラックが更に伸展し、基板Gの厚さ方向に貫通することになる。
縁側分離工程(第五区画)になると、図7(d)に示すように、基板Gの縁側領域が把持機構のクリップ58によって外側に引かれて分離され、基板Gに外周円が形成される。
以上の処理の結果、環状プレート42の上に環状基板G0が残されるようになり、環状加工品が完成する。
【0039】
上記実施形態では、量産化、全自動化のため、ブレイク部4をターンテーブル41とし、工程ごとに分離するようにしたが、環状プレート(加熱手段)42、中抜き機構(冷却手段)43、縁側分離機構44を1つにまとめ、1箇所でブレイク処理を施すようにしたブレイク装置としてもよい。
図9は、ブレイク部の変形例であり、図9(a)は平面図、図9(b)は正面図である。図3〜図5で説明した内容と同じものについて同符号を付すことにより、説明を省略する。このブレイク部4aでは、1つの環状プレート42の回りに、中抜き機構43、縁側分離機構44(把持装置56、57)を取り付けている。本実施形態では、加熱(クラック伸展)、中抜き(冷却)、縁側分離をすべて1箇所で行うようになるので、設置スペースを小さくすることができる。
【0040】
また、上記実施形態では、外側輪郭線、内側輪郭線とも円形としたが、円以外の閉曲線であってもよい。
【0041】
また、以下に、応用例として、本発明の基板加工装置を一部に用いた加工システムの一例についてまとめておく。
脆性材料基板の第一面上に、環状加工品の外周となる外側輪郭線、及び、内周となる内側輪郭線、及び、必要に応じて前記基板の縁から前記外側輪郭線近傍まで続く引き出し線の各スクライブラインを、スクライビングホイールを転動させることにより形成するスクライブ部と、前記内側輪郭線及び外側輪郭線の各スクライブラインに沿って分断するブレイク部とからなる環状加工品の加工システムであって、前記スクライブ部は、スクライビングホイールの刃先稜線にスクライビングホイールの軸心方向に対して傾斜させた溝を周期的に形成した傾斜溝付きスクライビングホイールを用いるとともに、前記傾斜溝付きスクライビングホイールを前記基板に対し相対移動させてスクライブを行う走査機構を備え、前記ブレイク部は、外側輪郭線及び内側輪郭線に囲まれた環状領域を、前記基板の第一面と反対側の第二面で支持しかつ加熱する環状プレートと、前記内側輪郭線より内側の中心領域を第一面側から冷却して前記環状領域と前記中心領域とを分離する中抜き機構と、前記環状プレート上で加熱された基板の外側輪郭線より外側の縁側領域に外力を与え、前記環状領域と前記縁側領域とを分離する縁側分離機構とを備えるようにした構成とすることができる。
【0042】
本発明によれば、まずスクライブ部の傾斜溝付きスクライビングホイール(高浸透刃先(高浸透スクライビングホイール))を走査して、脆性材料基板の片側面である第一面に対し、環状加工品の外周となる外側輪郭線、内周となる内側輪郭線、必要に応じて基板の縁から外側輪郭線近傍まで続く引き出し線の各スクライブラインを形成する。基板は、脆性材料であれば、特に限定されるものではないが、特にガラス基板(例えば、HDD用基板等の情報記録用基板として使用されるガラス基板)を円環状に加工するために有効である。また、基板の厚みも、特に限定されるものではないが、本発明は、比較的薄い基板を加工する場合に特に有効であり、例えば、厚み3mm以下、好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下の基板(特にガラス基板)を加工する場合に特に有効である。
傾斜溝付きスクライビングホイールを用いることで、深さ方向(基板の厚み方向)に深く伸展した斜めクラックを形成することができる。なお、少なくとも内側輪郭線の斜めクラックは、第一面側から深さ方向に進むにつれて外側に広がるように形成する。また、引き出し線と外側輪郭線とが交差しないように引き出し線を外側輪郭線近傍で停止させておくことにより、引き出し線と外側輪郭線とが交差した領域に発生しやすいチッピングや傷が発生する不具合をなくすことができる。内側輪郭線、外側輪郭線及び引き出し線の各スクライブラインの形成順序は、特に限定されるものではなく、例えば、内側輪郭線のスクライブライン、外側輪郭線のスクライブライン及び引き出し線のスクライブラインの順番で形成してもよいし、外側輪郭線のスクライブライン、内側輪郭線のスクライブライン及び引き出し線のスクライブラインの順番で形成してもよいし、外側輪郭線のスクライブライン、引き出し線のスクライブライン及び内側輪郭線のスクライブラインの順番で形成してもよい。各スクライブラインの形成により、各スクライブラインから基板の厚みに対して、例えば、30%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上(通常は80%以下)の深さの深いクラックを伸展させる。
続いて、内側輪郭線、外側輪郭線、引き出し線の各スクライブラインが形成された基板を、これらのスクライブラインが形成された第一面と反対側の第二面がブレイク部の環状プレート(加熱手段)と接するように移動する。このとき外側輪郭線及び内側輪郭線に囲まれた環状領域の第二面側が、環状プレートの上で支持されるようにして、環状領域を第二面から加熱する。基板には傾斜溝付きスクライビングホイールにより深く伸展させた斜めクラックが形成されているため、第一面から加熱するよりも、第二面から加熱した方が、斜めクラックを効率よく深さ方向に進伸展させることができ、第一面から第二面まで貫通させることもできる。上述した高浸透刃先でない通常の刃先を用いた場合は浸透深さの浅いクラックになるため、第一面から加熱しなければ斜めクラックを更に伸展させにくい傾向がある。更に外側輪郭線と引き出し線とは、環状プレートによって環状領域が加熱されたときに熱応力の影響でクラックが繋がるようにしてもよい。基板の種類、厚み、材質等にもよるため、特に限定されるものではないが、通常、内側輪郭線のスクライブラインの斜めクラックが、基板の厚みに対して、例えば、60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上(理想的には100%)の深さまで伸展した基板は、第一面側及び/又は第二面側からの中心領域の冷却により、効率よく中抜きすることができる。
続いて、ブレイク装置の中抜き機構を作動させて、内側輪郭線より内側の中心領域を第一面側及び/又は第二面側から冷却するが、クラックを伸展させる点より、第一面側から冷却することが好ましい。環状領域が加熱され、中心領域が冷却され、更に基板の厚み方向に深いクラックが内側輪郭線に沿って形成されているため、基板の中心領域の冷却により、中心領域が収縮し、第二面側から加熱された環状領域との境界の内側輪郭線に沿って形成されている深いクラックが基板の厚み方向に更に伸展し、ガラス基板が内側輪郭線に沿って分断され、中抜き加工が行われる。クラックが厚み方向に貫通した基板では、中心領域の冷却により、中心領域が収縮し、加熱された環状領域との温度差により、中心領域が中抜きされる。
続いて、ブレイク部の縁側分離機構を作動させて、基板の外側輪郭線より外側の縁側領域に外力を与えて分離する。引き出し線が形成されている場合、縁側領域は、外側輪郭線及び引き出し線に沿って複数の領域に分断される。その結果、環状プレート上に環状領域が残り、環状加工品を得ることができる。外力を加える方法は特に限定されず、例えば、クリップで挟んで引っ張る方法、外側の縁側領域を打撃する方法を採用することができる。外力を加える方法にもよるが、外側輪郭線及び引き出し線の各スクライブライン(特に、外側輪郭線のスクライブライン)に沿って形成されている斜めクラックが、基板の厚みに対して、例えば、30%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上(通常は90%以下)の深さまで伸展した基板は、縁側領域に外力を加えることにより、外側輪郭線に沿って効率よくブレイクすることができる。
【0043】
上記加工システムにおいて、スクライブ部の走査機構は、スクライブヘッドに装着されたスクライビングホイールと基板とが相対移動する構成であれば、特に制限はなく、例えば、スクライブヘッドを回転移動及び並進移動させる構成としてもよいが、基板が載置されるステージを回転移動及び並進移動するテーブルにより構成されるようにしてもよい。
これによればステージを回転移動させて内側輪郭線、外側輪郭線を形成し、ステージを並進移動させて、引き出し線を形成することができる。一般的にはスクライブヘッドの回転移動よりも、ステージの回転移動の方が、例えば、円環状のスクライブラインの形成にあたっては機構的に精度を高めやすいので、円環状の基板を切り出す精度を高めることができる。
【0044】
上記加工システムにおいて、ブレイク部の中抜き機構は、冷媒を噴射するノズルが設けられるとともに、前記ノズルを前記基板の中心領域に当接するように駆動する昇降機構を備えるようにしてもよい。冷媒としては、例えば、各種気体(冷却空気、圧縮空気等)、各種液化ガス(液体窒素、液体ヘリウム)、各種液体(水、アルコール等)等を使用することができる。
これによれば、主として、ノズルを基板に接近させて基板の中心領域に冷媒を噴射することにより、中心領域を冷却して収縮させ、加熱した環状領域との温度差を発生することで(内側輪郭線のスクライブラインから形成されている斜めクラックが基板の厚み方向に貫通していない場合には貫通させて)、中心領域を分断することができるが、熱的作用だけでは分断ができなかった場合に、ノズル先端を中心領域に当接して押圧することで、確実に分断させることができる。
【0045】
上記加工システムにおいて、ブレイク部の縁側分離機構は、互いに引き出し線で分けられた少なくとも二箇所の前記縁側領域上の位置で基板を保持するとともに分断する外力を与えるようにしてもよい。
これによれば、互いに引き出し線で分けられた二箇所で、分散して外力を与えることで、引き出し線に沿って分断され、更に外側輪郭線に沿って分断されやすくすることができる。
【0046】
また、以下に、応用例として、本発明の基板加工装置を用いた加工方法の一例についてまとめておく。
すなわち、本発明の基板加工装置を用いた加工方法は、(a)スクライビングホイールの刃先稜線にスクライビングホイールの軸心方向に対して傾斜させた溝を周期的に形成した傾斜溝付きスクライビングホイールを用いて、脆性材料基板の第一面上に、環状加工品の外周となる外側輪郭線、及び、内周となる内側輪郭線、及び、必要に応じて前記基板の縁から前記外側輪郭線近傍まで続く引き出し線の各スクライブラインを形成するスクライブ工程と、(b)前記基板の外側輪郭線及び内側輪郭線に囲まれた環状領域を前記基板の第一面と反対側の第二面で支持するとともに加熱し、場合により、発生した熱応力により前記引き出し線と前記外側輪郭線とが繋がるように引き出し線を延伸するとともに、内側輪郭線(更に好ましくは、内側輪郭線に加えて、外側輪郭線、及び/又は、外側輪郭線近傍の引き出し線)を第一面から第二面に向けて伸展(好ましくは第二面まで貫通)させるクラック伸展工程と、(c)前記内側輪郭線より内側の中心領域を第一面側及び/又は第二面側から冷却して前記環状領域と前記中心領域とを分離する中抜き工程と、(d)前記外側輪郭線より外側の縁側領域に外力を与え、(引き出し線が形成されている場合には引き出し線を利用して)前記環状領域と前記縁側領域とを分離する縁側分離工程とからなる。
クラック伸展工程における環状領域の加熱温度は、基板の種類、厚み、大きさ等にもよるが、通常、50℃以上、好ましくは80℃以上とするのがよく、例えば、100〜350℃(特には155〜295℃)の範囲内で設定することができる。また、中抜き工程における冷却温度は、基板の種類等にもよるが、通常、10℃以下、好ましくは5℃以下とするのがよく、例えば、2〜−20℃(特には0〜−10℃)の範囲内で設定することができる。
【0047】
これによれば、加工システムの発明で説明したように、環状加工品を製造する場合に、信頼性の高い加工を実現し、量産化、自動化に適した加工方法を実現することができる。
【0048】
また、上記加工方法の(a)スクライブ工程において、引き出し線はその延長線上から外れた位置に外側輪郭線がくるように引き出し線の方向が定められるとともに、引き出し線の先端が外側輪郭線から5mm以内(通常は、0.5mm以上)に接近するように形成されるようにしてもよい。
【0049】
また、上記加工方法の(c)中抜き工程において、中心領域を冷却後に第一面側から押圧して前記環状領域と前記中心領域とを分離するようにしてもよい。押圧方法は特に限定されるものではなく、例えば、棒状の治具(例えば、冷媒噴射部材の先端)で押圧してもよく、また、空気等の高圧気体を吹き付けることによって押圧してもよい。
これにより、冷却しただけでは中心領域が環状領域から分離できなかった場合でも、押圧することにより、確実に分離することができる。
【0050】
また、上記加工方法の(d)縁側分離工程において、前記縁側領域上の互いに引き出し線で分けられた少なくとも二箇所の位置で基板を分断する外力を与えるようにしてもよい。
これにより、互いに引き出し線で分けられた二箇所で、分散して外力を与えることで、引き出し線に沿って分断されやすくすることができる。
【0051】
特に、外力を与える方向が引き出し線と直交する方向に向けられるようにすれば、引き出し線に沿って分断を進行させる外力を効率的に加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、ガラス基板を始めとする脆性材料基板の加工品を加工する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 第一搬送部
2 スクライブ部
3 第二搬送部
4 ブレイク部
5 第三搬送部
12 基板搬送機構
13a〜13c カセット
14 テーブル
15(15a〜15c) スクライブヘッド
16(16a〜16c) 回転ステージ
18 Xステージ
20 Yステージ
22 傾斜溝付きスクライビングホイール
31 基板搬送機構
32 コンベア
33 位置決め機構
34 位置決めテーブル
35 基板受け渡し機構
41 ターンテーブル
42 環状プレート
43 中抜き機構
44 縁側分離機構
48 ヒータ
51 エアージェット
52 ノズル
55 昇降機構
56、57 把持装置
58 クリップ
61 基板搬送機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面上に閉曲線をなすスクライブラインが形成された脆性材料基板を、該スクライブラインに沿って分断することにより前記閉曲線の内側を抜き取る中抜き加工を行うブレイク部を備えた基板加工装置であって、
前記ブレイク部は、
前記スクライブラインより外側領域を、前記第一面と反対側の第二面で支持しかつ加熱するプレートと、
前記スクライブラインより内側の中心領域を、前記第一面側及び/又は前記第二面側から冷却して前記外側領域と前記中心領域とを分離する中抜き機構とを設けたことを特徴とする基板加工装置。
【請求項2】
前記中抜き機構は、冷媒を噴射するノズルが設けられるとともに、前記ノズルを前記中心領域に当接するように駆動する昇降機構を備えた請求項1に記載の基板加工装置。
【請求項3】
前記ブレイク部のプレートは、ターンテーブル上でその回転中心から等距離離れた円周上に区画を形成するようにして複数配置されるとともに、前記ターンテーブルが区画単位で回転移動し、該回転移動により前記プレートの1つが前記中抜き機構の位置に移動するように形成された請求項1又は請求項2に記載の基板加工装置。
【請求項4】
更に、前記スクライブラインを前記第一面に形成するスクライブ部と、
該スクライブ部から前記ブレイク部の前記プレートへ前記脆性材料基板を搬送する基板搬送機構とを備えた請求項1〜請求項3のいずれかに記載の基板加工装置。
【請求項5】
前記スクライブ部は、前記スクライブラインを、前記第一面から前記第二面に向けて外側に広がるように形成するスクライブ機構からなる請求項4に記載の基板加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254927(P2012−254927A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167759(P2012−167759)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2008−30002(P2008−30002)の分割
【原出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】