説明

基板及びリード付き部品の半田付け方法

【課題】広い範囲のクリーム半田塗布領域のクリーム半田をスルーホールに引き込むことができる基板及びリード付き部品の半田付け方法を提供する。
【解決手段】基板1には、リード付き部品100のリード140を挿入するスルーホール110が設けられている。スルーホール110周辺の狭い範囲にレジスト開口が設けられている。スルーホール110の周囲にはクリーム半田塗布領域120が設けられている。クリーム半田塗布領域120が拡げられている方向に銅箔により形成された半田引き込み導線130が設けられ、この半田引き込み導線130の一端はスルーホール110のレジスト開口部に接している。スルーホール110から離れた位置に塗布されたクリーム半田は、この半田引き込み導線130を通してスルーホール110に引き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板、及び電子部品をプリント基板に半田付けする半田付け方法に係り、特にリード付き挿入電子部品(以下、リード付き部品という)が半田付けされるプリント基板(以下、基板という)、及びリード付き部品を基板に半田付けするリード付き部品の半田付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装部品(Surface Mount Device)(以下、SMDという)やリード付き部品を基板に半田付けする作業において、従来は、はんだ槽に溶かしておいた半田の表層に基板の下面(以下、リード側という)を浸すことによって半田付けを行う方式(以下、フロー方式という)で行われていた。しかし、最近ではコストダウンにより半田付け作業工程の時間短縮やフロー治具の廃止により、SMDやリード付き部品を同時に一括で基板に実装する方式(以下、一括リフロー方式という)が採用されるようになった。
【0003】
図4に、一括リフロー方式により基板2にリード付き部品200を半田付けする方法を示す。図4に示すように基板2には、リード付き部品200のリード230を挿入するリード挿入孔(以下、スルーホールという)210が設けられている。また、スルーホール210周辺の狭い範囲にレジスト開口が設けられている。また、スルーホール210の周囲にはクリーム半田塗布領域220が設けられている。図4は、このクリーム半田塗布領域220を見えるようにした図である。このようなリード付き部品200を一括リフロー方式で基板2に実装するには、熱を加えてクリーム半田塗布領域220のクリーム半田221をスルーホール210に引き込むことで、リード付き部品200を基板2に半田付けしている。このため、スルーホール210の周囲にクリーム半田塗布領域220を設け、その領域にクリーム半田221を塗布(印刷)している。
【0004】
SMDとリード部品を一括リフロー方式でプリント配線基板に実装する技術として特開平9−219581号公報(特許文献1)を挙げることができる。特許文献1に開示の技術では、リフロー部品の半田ペースト印刷時にスルーホール部品のスルーホール上にも半田ペーストを印刷し、リフロー部品とスルーホール部品とを同時に基板上にマウントさせてスルーホール部品のリードをスルーホールに貫通させ、この基板をリフロー炉に通すことでスルーホール上の半田ペーストがスルーホールに運ばれ、SMDとリード部品とを一括でリフロー半田付けすることができる電子部品の実装方法を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−219581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1に開示の技術における電子部品の実装方法は、スルーホール上に十分な半田ペーストを印刷しなけばスルーホール部品の実装強度を保持することができないので、半田ペーストを印刷する領域を拡げなければならない。また、図4に示す従来のリード付き部品200は、クリーム半田221をスルーホール210に引き込んでリード付き部品200を基板2に半田付けするには、スルーホール210の孔内からリード230側までの十分なクリーム半田量を確保しなければならない。このため、クリーム半田塗布領域220を拡げる必要があった。しかし、スルーホール210のように基板2の端部の近傍に設けられている場合では、スルーホール210を中心として均等にクリーム半田221を拡げることができないので、クリーム半田塗布領域220を基板2の端部に対して反対方向に拡げなければならなかった。
【0007】
このように、リフロー方式でのリード付き部品の実装においては、スルーホール210内にクリーム半田221を十分に供給し、実装強度を保つ必要がある。このため、基板の表面に広い範囲のクリーム半田領域を設け、クリーム半田221の量を増加させていた。このようにクリーム半田領域を拡げてクリーム半田221の量を増加させ、クリーム半田自体の接続性及び表面張力と、スルーホール210周辺の狭い範囲のレジスト開口による銅箔との接着性により、クリーム半田221の引き込みを行っていた。しかし、スルーホール210から離れたクリーム半田塗布領域(以下、クリーム半田引き込み範囲外という)220bは、スルーホール210に引き込まれずに、半田ボール300として残存してしまうことがある。この半田ボール300が基板2の表面から剥離して他の電子部品との配線などに接触すると、回路ショート等の不具合を起こすことがあった。また、クリーム半田塗布領域220をクリーム半田引き込み範囲220aのように小さくすると、スルーホール210に引き込まれるクリーム半田量が不足するので、リード付き部品200の実装強度を保持できなくなる。このような場合には、実装強度を保持するために、後工程で半田を追加する追い半田という工程を行わなければならなかった。このように、クリーム半田塗布領域220をクリーム半田引き込み範囲外220bまで拡げると、半田ボールが発生する。また、クリーム半田塗布領域220をクリーム半田引き込み範囲220aまで小さくすると、スルーホール210に引き込まれるクリーム半田量が不足するのでリード付き部品200の基板2に対する実装強度が足りなくなるという課題があった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板は、リードがスルーホールに挿入されリード付き部品が半田付けされる基板において、前記スルーホールの周囲に隣接されたクリーム半田塗布領域と、前記クリーム半田塗布領域が拡げられている方向に導線が設けられ前記スルーホールの開口部に接している半田引き込み導線と、を備えることを特徴としている。
また、本発明の基板の前記半田引き込み導線は、銅箔により形成されていることを特徴としている。
また、本発明の基板は、前記半田引き込み導線の換わりに切り込み溝を形成することを特徴としている。
また、本発明の基板の前記半田引き込み導線は、複数設けられることを特徴としている。

また、本発明の基板の前記スルーホールは、前記基板の端部の近傍に設けられることを特徴としている。
本発明のリード付き部品の半田付け方法は、基板に設けられたスルーホールにリード付き部品を挿入し、前記基板に前記リード付き部品を半田付けするリード付き部品の半田付け方法において、前記スルーホールの周囲に設けられた半田塗布領域にクリーム半田を塗布し、前記スルーホールまでの半田引き込み導線により前記クリーム半田を前記スルーホールに引き込み、加熱により半田付けすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリーム半田塗布領域のクリーム半田をスルーホールに引き込む力を増大させることで、リード付き部品の実装強度を確保できる半田量をスルーホールに引き込む基板及びリード付き部品の半田付け方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る一括リフロー方式により基板にリード付き部品を半田付けする方法を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係るクリーム半田塗布領域におけるクリーム半田の引き込み範囲を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るSMDとリード付き部品を基板に半田付けする手順を示すフローチャートである。
【図4】従来技術に係る一括リフロー方式により基板にリード付き部品を半田付けする方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1に、一括リフロー方式により基板1にリード付き部品100を半田付けする方法を示す。図1に示すように基板1には、リード付き部品100のリード140を挿入するスルーホール110が設けられている。また、スルーホール110周辺の狭い範囲にレジスト開口が設けられている。また、スルーホール110の周囲にはクリーム半田塗布領域120が設けられている。また、基板1には、クリーム半田塗布領域120が拡げられている方向に銅箔により形成された半田引き込み導線130が設けられ、この半田引き込み導線130の一端はスルーホール110に接している。図1は、このクリーム半田塗布領域120及び半田引き込み導線130を見えるようにした図である。
【0014】
このように基板1にはスルーホール110まで半田引き込み導線130が設けられているので、スルーホール110から離れた位置に塗布されたクリーム半田121が、この半田引き込み導線130を通ってスルーホール110に引き込まれる。この結果、クリーム半田塗布領域120の面積が広い場合でも、スルーホール110から離れた位置に塗布されたクリーム半田121が半田ボールとして残されずにスルーホール110に引き込まれる。
【0015】
図2に、クリーム半田塗布領域におけるクリーム半田引き込み範囲を示す。図2(1)は、図4に示す従来のクリーム半田塗布領域220におけるクリーム半田引き込み範囲220aを示した図である。図2(2)は、図1に示す本実施形態のクリーム半田塗布領域(クリーム半田引き込み範囲)120を示した図である。図2(1)に示すように、半田引き込み導線130を設けない従来の基板2におけるクリーム半田引き込み範囲220aの長さは「3.40mm」となる。しかし、図2(2)に示すように長さが「2.40mm」の半田引き込み導線130を設けている本実施形態の基板1におけるクリーム半田引き込み範囲120の長さは「4.85mm」となる。また、半田引き込み導線130を設けることで、クリーム半田引き込み範囲120の面積は、従来のクリーム半田引き込み範囲220aの面積の約2倍となる。つまり、半田引き込み導線130を設けることで、半田引き込み導線130を設けないときに比べて約2倍のクリーム半田量をスルーホールに引き込むことができる。
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る基板1にSMDとリード付き部品100を半田付けする手順のフローチャートを図3に示す。以下、図3に示すローチャートのステップ順に説明する。
【0017】
(ステップS10)
まず、基板1のSMDのみが実装される面(以下、半田面という)にクリーム半田121を塗布(以下、クリーム半田印刷という)する。
【0018】
(ステップS20)
半田面のクリーム半田塗布領域120にクリーム半田印刷が行われると、SMDを基板1の半田面に実装する。なお、SMDの実装は、マウンタなどによる自動搭載または手載せで行う。
【0019】
(ステップS30)
SMDが実装された基板1はリフロー炉に流され、SMDの半田面へのリフロー半田付けが行われる。
【0020】
(ステップS40)
SMDとリード付き部品が実装される面(以下、部品面という)のクリーム半田塗布領域120にクリーム半田121を印刷する。
【0021】
(ステップS50)
部品面のクリーム半田塗布領域120にクリーム半田印刷が行われると、SMDを基板1の部品面に実装すると共に、スルーホール110にリード付き部品100のリード140を部品面側から挿入することで、リード付き部品100を基板1に実装する。
【0022】
(ステップS60)
SMDとリード付き部品が実装された基板1はリフロー炉に流される。このようにリフロー炉に流されることで、SMDが基板1の部品面に半田付けされる。また、リード付き部品100において、クリーム半田塗布領域120のクリーム半田121が半田引き込み導線130を通ってスルーホール110に引き込まれる。そして、スルーホール110に引き込まれたクリーム半田121がリフロー加熱により溶融することで、リード付き部品100が基板1の部品面に半田付けされる。
【0023】
本実施形態は、以上のステップS40からステップS60に示す手順により、リード付き部品100を基板1に半田付けを行う。
【0024】
なお、本実施形態においては、スルーホール110に対して1つの半田引き込み導線130を設ける実施例について説明したが、スルーホール110に対して設ける半田引き込み導線130の数はこれに限定されない。また、半田引き込み導線130とするのでなく、基板1にスルーホール110までの切り込み溝を形成して、クリーム半田121をスルーホール110に引き込むようにすることも可能である。
【0025】
なお、図3に示したフローチャートでは、ステップS10〜ステップS30でSMDの半田付け、ステップS40〜ステップS60でSMDとリード付き部品100が混在する半田付けを行う例を示したが、半田付けのリフローは、SMDのみ、リード付き部品のみ、SMDとリード付き部品の混在するものが適宜実施できることは言うまでもない。
【0026】
このような実施形態により、基板の端部にスルーホールが設けられている場合や基板の高密度実装設計などによりクリーム半田塗布領域を一方向に拡げなければならない場合でも、スルーホールから離れた位置に印刷されたクリーム半田を半田ボールとして残さずにスルーホールに引き込むことができる。以上により、基板の高密度実装設計を可能にし、半田ボールの発生による回路ショートが防止でき、及び半田量不足による追い半田作業工程を削減できる基板及びリード付き部品の半田付け方法を提供することができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0028】
1・・・・・・・・基板
2・・・・・・・・基板
100・・・・・・・・リード付き部品
110・・・・・・・・スルーホール
120・・・・・・・・クリーム半田塗布領域
121・・・・・・・・クリーム半田
130・・・・・・・・半田引き込み導線
140・・・・・・・・リード
200・・・・・・・・リード付き部品
210・・・・・・・・スルーホール
220・・・・・・・・クリーム半田塗布領域
220a・・・・・・・クリーム半田引き込み範囲
220b・・・・・・・クリーム半田引き込み範囲外
221・・・・・・・・クリーム半田
230・・・・・・・・リード
300・・・・・・・・半田ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードがスルーホールに挿入されリード付き部品が半田付けされる基板において、
前記スルーホールの周囲に隣接されたクリーム半田塗布領域と、
前記クリーム半田塗布領域が拡げられている方向に導線が設けられ前記スルーホールの開口部に接している半田引き込み導線と、
を備えることを特徴とする基板。
【請求項2】
前記半田引き込み導線は、銅箔により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記半田引き込み導線の換わりに切り込み溝を形成することを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項4】
前記半田引き込み導線は、複数設けられることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の基板。
【請求項5】
前記スルーホールは、前記基板の端部の近傍に設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の基板。
【請求項6】
基板に設けられたスルーホールにリード付き部品を挿入し、前記基板に前記リード付き部品を半田付けするリード付き部品の半田付け方法において、
前記スルーホールの周囲に設けられた半田塗布領域にクリーム半田を塗布し、
前記スルーホールまでの半田引き込み導線により前記クリーム半田を前記スルーホールに引き込み、加熱により半田付けすることを特徴とするリード付き部品の半田付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−110333(P2013−110333A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255695(P2011−255695)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】