説明

基板収納カセット

【課題】 例え基板が薄い場合でも簡単に破損したり、変形して取り出しに支障を来たすのを抑制できる基板収納カセットを提供する。
【解決手段】 カセットケース1の側壁2に支持される複数の棚板20と、各棚板20の表面に凹み形成される凹み穴30と、凹み穴30を被覆して薄片化された半導体ウェーハWを着脱自在に密着保持する可撓性の保持層40と、保持層40に被覆された凹み穴30内の空気を外部に排気する排気通路50とを備える。保持層40の密着力により半導体ウェーハWを略平坦に密着支持することができるので、半導体ウェーハWがバックグラインドにより薄片化されていても、簡単に破損してしまうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの保管や搬送等で使用される基板収納カセットに関するものである。特に、バックグラインド工程により薄片化された半導体ウェーハを扱う基板収納カセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハは、半導体製造の前工程では反らないよう厚いことが好ましいが、そのままの厚さでは薄片化、小型化、軽量化が要求される近年の半導体パッケージには適さないので、バックグラインド工程と呼ばれる工程でグラインダ装置により裏面が削られ、薄くされた後、次工程に移される(特許文献1参照)。
【0003】
半導体ウェーハWをバックグラインド工程で薄くして次工程に移す場合には、先ず、750μm程度の厚さを有する半導体ウェーハWのパターン形成面に保護シート70を貼着して好ましい大きさにカット(図7参照)し、半導体ウェーハWを基板収納カセット84に収納して図8に示すグラインダ装置80に搬送する。
【0004】
基板収納カセット84をグラインダ装置80に搬送したら、このグラインダ装置80のチャックテーブル81に半導体ウェーハWをセットし、チャックテーブル81を回転させて半導体ウェーハWの裏面に粗研削と仕上げ研削とを回転砥石により順次施し、その後、バックグラインドにより50μm程度に薄片化された半導体ウェーハWを洗浄装置82で洗浄する。
【0005】
そして、薄片化された半導体ウェーハWをグラインダ装置80の洗浄装置82から下流にインラインされたストレスリリーフ装置83に搬送ラインで搬送し、半導体ウェーハWの強度が低下した裏面のダメージ層をエッチング液又はポリッシュにより除去して抗折強度を向上させた後、基板収納カセット84に半導体ウェーハWを収納すれば、薄片化された半導体ウェーハWを基板収納カセット84により次工程に移すことができる(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005‐223359号公報
【特許文献2】特開2000‐100924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における半導体ウェーハWは、以上のように薄片化されて基板収納カセット84に単に収納されるが、非常に薄く(例えば、50μm以下の薄さ)、撓みやすく、割れやすいので、作業中に簡単に破損してしまうという大きな問題がある。また、図9に示すように弓なりに反ることが少なくないので、基板収納カセット84に収納したり、以後の作業でハンドリングすることができないという問題もある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、例え基板が薄い場合でも簡単に破損したり、変形して取り出しに支障を来たすのを抑制することのできる基板収納カセットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、棚板上に基板を収納するものであって、
棚板を支持する側壁と、棚板の上面に形成される凹部と、この凹部を被覆して基板を着脱自在に密着保持する可撓性の保持層と、この保持層に被覆された凹部内の気体を外部に排気する排気通路とを含むことを特徴としている。
なお、棚板の凹部に、保持層を支持する複数の支持突起を間隔をおいて並べ設けることができる。
【0009】
また、排気通路を負圧源に取り外し可能に接続し、この負圧源を駆動して保持層を変形させることが好ましい。
また、棚板を挟み持つ一対の側壁を備え、この一対の側壁の上下部間のうち少なくとも下部間を連結板により連結し、棚板を上下方向に所定の間隔で複数並べ設けることができる。
【0010】
また、一対の側壁の前後の開口部のうち後方の開口部を壁により被覆し、この壁には、基板用の観察窓を形成することもできる。
さらに、排気通路を、棚板に形成されて凹部に連通(気体の流れる状態に連なり通す)する第一の通路と、側壁に形成されて第一の通路に連通する第二の通路とから形成し、この第二の通路の下流部を側壁に開口させることも可能である。
さらにまた、棚板、側壁、及び連結板に排気通路を形成してその下流部を連結板に開口させることも可能である。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における基板は、バックグラインドされた厚さ300μm以下の薄い半導体ウェーハ(例えば、口径200mmや300mmのシリコンウェーハ等)が主ではあるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、厚い半導体ウェーハでも良いし、1mm以下の薄さが要望されるガラス基板、100μm以下の薄さが要望される可撓性の高密度フレキシブル配線板、液晶セル、あるいはプリント配線板等でも良い。
【0012】
棚板と側壁とは、一体的に射出成形されるものでも良いし、締結具により組み立てられるものでも良い。これら棚板と側壁とは、透明、不透明、あるいは半透明のいずれでも良い。棚板は、単数でも良いが、例えば5枚〜7枚、13枚、25枚、又は26枚等の複数に増加することもできる。この棚板は、平面視で円形や多角形等に形成することができる。
【0013】
凹部は、平面視で円形や多角形等に形成することができる。また、保持層は、単数のエラストマーからなるものでも良いし、性質(材質、硬度、弾性等)の異なる積層した複数のエラストマー等とすることもできる。複数の支持突起は、凹部に規則的に配列されるものでも良いし、不規則に配列されるものでも良い。
【0014】
各支持突起は、円錐台形、角柱形、角錐台形等に形成することができ、保持層に接着していても良いし、そうでなくても良い。排気通路は、基板収納カセットと一体構造でも良いし、別体として取り付けることもできる。さらに、この排気通路と接続する負圧源は、例えば各種の真空ポンプや真空ブロワー等からなり、エジェクタ取り付けの有無を特に問うものではない。この負圧源は、バックグラインド工程からダイシング工程にかけて使用される各種の半導体製造装置やその付属機器に内蔵された構成でも良いし、そうでなくても良い。
【0015】
本発明によれば、基板収納カセットに基板を収納したい場合には、棚板の保持層に基板を重ね置けば良い。すると、基板は、その肉厚にかかわりなく、保持層が有する密着力により略平坦に密着する。
保持層から基板を取り外したい場合には、棚板に形成された凹部内の気体を排気通路により凹部の外に排気すれば良い。すると、気体の排気に伴い、凹部の底方向に保持層が変形して基板との間に隙間を形成し、保持層と基板との接触部分が減少する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板収納カセットに薄い基板を平らに保持する機能を付与するので、基板が厚く強固な場合の他、例え薄く脆い場合でも、安易に破損したり、変形して基板収納カセットからの取り出し等に支障を来たすのを有効に防ぐことができるという効果がある。
特に、基板がバックグラインドされた半導体ウェーハの場合には、薄く割れやすい半導体ウェーハが簡単に損傷するのを抑制することができる。また、半導体ウェーハの全面を支持固定することができるので、半導体ウェーハの反りを矯正してウェーハ割れを防ぐことができる。
【0017】
また、棚板の凹部に、保持層を支持する複数の支持突起を間隔をおいて並べ設ければ、保持層が過剰に変形するのを防ぎ、基板の位置や姿勢を安定させることができる。
また、排気通路を負圧源に取り外し可能に接続し、この負圧源を駆動して保持層を強制的に変形させるようにすれば、変形した保持層と基板との間に気体が流入するので、保持層に対する基板の非接触部分が増加して取り外しが容易になる。
【0018】
また、棚板を挟み持つ一対の側壁を備え、この一対の側壁の上下部間のうち少なくとも下部間を連結板により連結し、棚板を上下方向に所定の間隔で複数並べ設ければ、基板収納カセットの強度や剛性を高めることができる。
さらに、一対の側壁の前後の開口部のうち後方の開口部を壁により被覆し、この壁に基板用の観察窓を形成すれば、基板や保持層の状態を視覚的に把握することができ、基板収納カセットを良好な状態で使用することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納カセットは、図1ないし図5に示すように、フロントオープンボックスタイプのカセットケース1に内蔵して並べられる複数の棚板20と、各棚板20に形成される凹み穴30と、この凹み穴30を被覆してバックグラインドにより薄片化された半導体ウェーハWを着脱自在に密着保持する弾性変形可能な保持層40と、この保持層40に被覆された凹み穴30の空気を排気する複数の排気通路50とを備え、バックグラインド工程からその後の工程にかけて使用される半導体製造装置やそのオープナ60に位置決め搭載される。
【0020】
カセットケース1は、図1ないし図4に示すように、半導体ウェーハWの収納に十分な隙間をおいて相対向する左右一対の側壁2を備え、この一対の側壁2の下部間には底板3が水平に架設されるとともに、上端部間には天板4が水平に架設され、開口した背面には縦長の背面壁5が装着されており、正面が開口して薄片化された半導体ウェーハWの出し入れ口6として機能する。
【0021】
半導体ウェーハWは、例えば口径300mmのシリコンウェーハからなり、周縁部に結晶方向の判別や整列を容易にするノッチnが平面略半楕円形に切り欠かれる。また、カセットケース1の側壁2、底板3、天板4、及び背面壁5は、例えば耐衝撃性、耐熱性、耐水性等に優れる透明のポリカーボネートやポリエーテルエーエルケトン等の樹脂成形材料を使用して別々に成形され、ビスやナット等を介して組み立てられる。
【0022】
カセットケース1の側壁2は上下方向に伸びる縦長の板に形成され、底板3の裏面における前部両側と後部中央とには、複数の位置決め具7が底面視で三角形を描くよう配設される。各位置決め具7は、平面略トラック形のブロックに形成され、オープナ60のステージから突出した位置決めピン61に摺接するV溝8が長手方向に切り欠かれており、このV溝8がオープナ60の位置決めピン61に上方から嵌合することにより、基板収納カセットを高精度に位置決めするよう機能する。
【0023】
カセットケース1の天板4には、ウェーハ管理システムを構築する非接触ICタグ9が貼着されるとともに、把持用のハンドル10が着脱自在に装着され、背面壁5には、半導体ウェーハWの視認を可能とする縦長の観察窓11が選択的に形成される。
【0024】
複数の棚板20は、図1や図2に示すように、カセットケース1の内部上下方向に所定のピッチで配列(図には3段又は4段で示す)され、棚板20と棚板20との間には、半導体ウェーハWの出し入れに支障を来たさない空間が確保される。各棚板20は、所定の材料を使用して半導体ウェーハWや保持層40よりも大きい平面矩形に形成され、カセットケース1の両側壁間にビスやナット等を介し水平に架設される。
【0025】
棚板20の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエーテルスルフォン、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート等の樹脂成形材料、アルミニウム、マグネシウム、銅、ステンレス、ニッケル等の金属材料、ガラス、セラミックス等があげられる。
【0026】
凹み穴30は、図1や図5に示すように、各棚板20の表面に浅く凹み形成され、半導体ウェーハWよりも大きい平面矩形を呈する。この凹み穴30の底面には、保持層40を下方から支持する複数の支持突起31が間隔をおき規則的に並設され、各支持突起31が凹み穴30の深さと略同じ長さ・高さの円柱形に形成される。
【0027】
保持層40は、図1、図2、図5に示すように、可撓性、密着性、弾性の材料を使用して半導体ウェーハWよりも大きい平面矩形で柔軟な薄膜に成形され、各棚板20の表面に積層して接着されるとともに、各支持突起31の表面に接着されており、凹み穴30を被覆してその底面との間に空気流通用の空間を区画する。この保持層40の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば耐熱性、耐候性、耐水性、剥離性、経時安定性等に優れるシリコーン系、ウレタン系、オレフィン系、フッ素系のエラストマーが使用される。
【0028】
複数の排気通路50は、図1ないし図3、図5に示すように、棚板20や保持層40の数に応じて基板収納カセットの内部に形成され、この基板収納カセットがオープナ60に高精度に位置決め搭載されることにより、オープナ60に内蔵された真空ユニット62に自動的に接続される。
【0029】
各排気通路50は、棚板20の内部に屈曲形成されて凹み穴30に下方から上流端部が連通する第一の通路51と、一方の側壁2の内部上下方向に形成されて第一の通路51の棚板側面に開口した下流端部に連通する第二の通路52とを備え、この第二の通路52の下流端部が側壁2の底面に開口して真空ユニット62の接続ノズル63aにOリング等を介し着脱自在に接続される。
【0030】
真空ユニット62は、図1に示すように、例えばオープナ60のステージに接続流路63を起立させてその先端部の接続ノズル63aを露出させた真空ポンプ64やその付属タンク等からなり、半導体ウェーハW用のハンドリング装置65の吸着に応じて駆動し、凹み穴30の空間の空気(図1、図5の矢印参照)を外部に排気して平坦な保持層40を凹み穴30の底面方向に凹凸に変形させ、保持層40と半導体ウェーハWとの界面に空気流入用の隙間を形成して密着した半導体ウェーハWの剥離を容易化する。
【0031】
半導体ウェーハWを搬入、搬出するためのハンドリング装置65は、図2に示すように、半導体ウェーハWを真空吸着するパッド66と、このパッド66の後部から伸長して図示しないロボットに回転可能に支持されるXYZ方向に移動可能なアーム67とを備え、これらパッド66とアーム67とが所定の成形材料を用いて一体成形される。
【0032】
パッド66は、半導体ウェーハWと略同径の円板に形成され、半導体ウェーハWを真空吸着する吸着面には、複数の吸着溝孔が所定の間隔をおいて穿孔される。また、アーム67の内部には、複数の吸着溝孔に連通する排出路が長手方向に形成され、この排出路の下流端部がバキューム装置に接続される。
なお、ハンドリング装置65は、図示しないロボットを介してオープナ60に設置されても良いし、独立した装置として存在しても良い。その他の部分については、従来例と同様であるので説明を省略する。
【0033】
上記において、グラインダ装置80により薄片化された半導体ウェーハWの被吸着面における全面をハンドリング装置65が真空吸着して基板収納カセット内に進入し、保持層40の表面上に半導体ウェーハWを僅かな力で押圧して重ねると、保持層40の密着力により半導体ウェーハWが反ることなく安定した平坦な姿勢で密着するので、半導体ウェーハWの割れや変形を防止することができる。また、半導体ウェーハWの固定に際しては、保持層40を密着させる以外、何らの処理、動力、及びエネルギーを必要としないので、そのまま基板収納カセットとして移動し、保管し、次工程に搬送することができる。
【0034】
保持層40に密着した半導体ウェーハWをピックアップしたい場合には、パッド66の真空駆動に真空ユニット62を連動して駆動させれば良い。すなわち、半導体ウェーハWの被吸着面にパッド66を上方から重ねて真空吸着させる際のパッド66への吸着信号にタイミングを合わせ、真空ユニット62を駆動すれば、凹み穴30の空気が排気通路50を経由して凹み穴30の外部に排気され、保持層40が複数の支持突起31に沿い凹凸に撓んで半導体ウェーハWとの間に隙間を形成するので、保持層40に密着していた半導体ウェーハWがハンドリング装置65により簡単にピックアップされることとなる。
【0035】
上記構成によれば、弾性を有する保持層40の密着力により半導体ウェーハWを隙間なく略平坦に密着支持することができるので、半導体ウェーハWがバックグラインドにより50μm以下に薄片化され、脆くなっていても、搬送時やハンドリング時等に簡単に破損することがない。また、薄片化された半導体ウェーハWの反りを矯正しているので、半導体ウェーハWの周縁部が周囲に干渉するのを防止することができ、基板収納カセットに半導体ウェーハWを円滑かつ確実に収納したり、以後の作業におけるハンドリング性を著しく向上させたり、工程間のハンドリングの安全性に資することができる。
【0036】
また、保持層40の密着力のみにより半導体ウェーハWを長時間密着支持することができるので、半導体ウェーハWを平坦に保持するための専用真空装置等を省略することができ、装置の簡素化や大幅なコスト削減を図ることができる。また、凹み穴30の底面に、保持層40を接着支持する複数の支持突起31を配列するので、保持層40が広範囲に亘って過剰に大きく凹んだり、保持層40上の半導体ウェーハWの姿勢が傾斜して崩れたり、位置ずれして脱落するのを確実に防止することが可能になる。
【0037】
さらに、半導体ウェーハWの中央部にハンドリング装置65を単に重ねて真空吸着するのではなく、半導体ウェーハWの被吸着面の全てにハンドリング装置65を重ねて真空吸着するので、薄片化された半導体ウェーハWの周縁部が下方に撓んで割れることがない。さらにまた、カセットケース1に非接触ICタグ9を貼着するので、半導体ウェーハWや基板収納カセットを非接触で明瞭に識別することができ、しかも、非接触ICタグ9とウェーハ管理システムのリーダ/ライタとの間に障害物が介在してもそれが電波を通すものなら、確実に交信することが可能になる。
【0038】
なお、上記実施形態ではフロントオープンボックスタイプのカセットケース1を示したが、背面壁5を省略し、前後部をそれぞれ開口させて半導体ウェーハWの出し入れ口6としても良いし、カセットケース1の正面に、着脱自在の蓋体や開閉可能な扉を設けても良い。また、カセットケース1の両側壁に、作業者が握持するためのハンドルやフランジをそれぞれ装着しても良い。
【0039】
また、保持層40に半導体ウェーハWの保護シート面側を搭載しても良いし、半導体ウェーハWの裏面側を搭載しても良い。また、凹み穴30の周面に保持層40の周縁部を接着支持させ、凹み穴30の底面と保持層40との間に空間を区画しても良い。また、半導体ウェーハWの保持や保持層40の変形に特に支障を来たさなければ、支持突起31を省略するとともに、保持層40を、ある程度の強度を有するメッシュ体とエラストマーとから積層形成し、この保持層40により凹み穴30を被覆しても良い。
【0040】
また図6に示すように、棚板20の表面に、凹み穴30の周面に連通する第一の通路51を略溝形に切り欠くとともに、この第一の通路51を棚板20の側面まで伸ばして側壁2に形成された第二の通路52の上流端部に接続可能とし、第一の通路51を拡大した保持層40に被覆させることも可能である。また、排気通路50を、棚板20の内部に形成されて凹み穴30に連通する第一の通路51と、側壁2と底板3の内部に形成されて第一の通路51の下流端部に連通する第二の通路52とから形成し、この第二の通路52の下流端部を底板3の裏面に開口することも可能である。
【0041】
また、オープナ60のステージに対して真空ポンプ64のシール付きの接続ノズル63aをエアシリンダ等のアクチュエータにより昇降させ、位置決めされた基板収納カセットの排気通路50の下流端部に真空ポンプ64を接続することも可能である。また、ハンドリング装置65を透明、不透明、あるいは半透明に形成したり、パッド66を平面略多角形等に形成することも可能である。また、基板収納カセットをバックグラインド工程におけるバックグラインド作業の直後のみに使用することもできる。
【0042】
さらに、本発明に係る基板収納カセットは、グラインダ装置80やストレスリリーフ装置83用のウェーハ収納装置として用いるだけではなく、ダイシングテープやダイアタッチフィルムの貼付装置、保護シート剥離装置用のウェーハ収納装置として使用することもできる。
【0043】
このように本発明に係る基板収納カセットは、薄片化された半導体ウェーハWを安全に取り扱うことができるので、バックグラインド工程の後から半導体ウェーハWをチップ化するまでの工程用のウェーハ収納装置として使用することもできる。但し、本発明に係る基板収納カセットは、バックグラインド工程前や半導体ウェーハW以外の基板用途への使用を妨げるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る基板収納カセットの実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納カセットの実施形態における使用状態を模式的に示す一部分解斜視説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納カセットの実施形態を模式的に示す底面図である。
【図4】本発明に係る基板収納カセットの実施形態を模式的に示す背面図である。
【図5】本発明に係る基板収納カセットの実施形態における棚板や保持層等を模式的に示す断面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納カセットの他の実施形態における排気通路を模式的に示す断面説明図である。
【図7】半導体ウェーハのパターン形成面に保護シートを密着してカットする状態を示す説明図である。
【図8】グラインダ装置等を示す平面説明図である。
【図9】弓なりに反った半導体ウェーハと基板収納カセットとの関係を示す正面説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 カセットケース
2 側壁
3 底板(連結板)
4 天板(連結板)
5 背面壁
6 出し入れ口
11 観察窓
20 棚板
30 凹み穴(凹部)
31 支持突起
40 保持層
50 排気通路
51 第一の通路
52 第二の通路
60 オープナ
62 真空ユニット(負圧源)
63 接続流路
63a 接続ノズル
64 真空ポンプ(負圧源)
65 ハンドリング装置
70 保護シート
80 グラインダ装置(半導体製造装置)
82 洗浄装置
83 ストレスリリーフ装置
84 基板収納カセット
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚板上に基板を収納する基板収納カセットであって、棚板を支持する側壁と、棚板の上面に形成される凹部と、この凹部を被覆して基板を着脱自在に密着保持する可撓性の保持層と、この保持層に被覆された凹部内の気体を外部に排気する排気通路とを含むことを特徴とする基板収納カセット。
【請求項2】
棚板の凹部に、保持層を支持する複数の支持突起を間隔をおいて並べ設けた請求項1記載の基板収納カセット。
【請求項3】
排気通路を負圧源に取り外し可能に接続し、この負圧源を駆動して保持層を変形させるようにした請求項1又は2記載の基板収納カセット。
【請求項4】
棚板を挟み持つ一対の側壁を備え、この一対の側壁の上下部間のうち少なくとも下部間を連結板により連結し、棚板を上下方向に所定の間隔で複数並べ設けた請求項1、2、又は3記載の基板収納カセット。
【請求項5】
一対の側壁の前後の開口部のうち後方の開口部を壁により被覆し、この壁には、基板用の観察窓を形成した請求項4記載の基板収納カセット。
【請求項6】
排気通路を、棚板に形成されて凹部に連通する第一の通路と、側壁に形成されて第一の通路に連通する第二の通路とから形成し、この第二の通路の下流部を側壁に開口させた請求項1ないし5いずれかに記載の基板収納カセット。
【請求項7】
棚板、側壁、及び連結板に排気通路を形成してその下流部を連結板に開口させた請求項4、5、又は6記載の基板収納カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−157953(P2007−157953A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350098(P2005−350098)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】