説明

基板収納トレイ

【課題】 簡易な構成で軽く安価な基板収納トレイを提供する。
【解決手段】 口径450mmの半導体ウェーハWを収納するトレイ本体1と、トレイ本体1に着脱自在に嵌合されて半導体ウェーハWを覆うトレイ蓋10とを備え、トレイ本体1とトレイ蓋10を、樹脂を含む成形材料を使用してそれぞれ熱成形する。トレイ本体1とトレイ蓋10をそれぞれ平面略矩形に形成してその平坦な対向面のいずれか一方には凹部6を、他方には凸部12をそれぞれ形成し、凹部6と凸部12を相互に嵌合可能とする。また、トレイ本体1の中央部に、半導体ウェーハWを隙間を介して収納する収納穴2を凹み形成してその周壁には半導体ウェーハW用の取り出し溝5を形成し、トレイ蓋10の中央部に、半導体ウェーハWを隙間を介して覆う中空の被覆部11を膨張形成し、トレイ蓋10の表面四隅部には、操作用の係止部13をそれぞれ突出形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口径300mm以上の半導体ウェーハを収納して保管、搬送等する基板収納トレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、口径300mmや450mmの丸い開発初期段階の半導体ウェーハを収納して保管、搬送する場合には、図示しない合成樹脂製の枚葉トレイ、すなわち基板収納トレイが使用されている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2003‐245591号公報
【特許文献2】特開平06‐5692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の基板収納トレイは、多数の部品点数を要し、構成が複雑で重く、しかも、高価であるという問題がある。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、簡易な構成で軽く安価な基板収納トレイを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、口径300mm以上の半導体ウェーハを収納するトレイ本体と、このトレイ本体に着脱自在に嵌め合わされて半導体ウェーハを覆うトレイ蓋とを備え、これらトレイ本体とトレイ蓋とを、樹脂を含む成形材料を使用してそれぞれ熱成形したものであって、
トレイ本体とトレイ蓋との対向面のいずれか一方には凹部を、他方には凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部とを相互に嵌め合い可能とし、
トレイ本体の略中央部に、半導体ウェーハを隙間を介して収納する収納穴を凹み形成してその周壁には半導体ウェーハ用の取り出し溝を形成し、
トレイ蓋の略中央部に、半導体ウェーハを隙間を介して覆う中空の被覆部を形成し、トレイ蓋の隅部には、操作用の係止部を突出形成したことを特徴としている。
【0006】
なお、トレイ本体とトレイ蓋とをそれぞれ圧空成形あるいは真空成形することが好ましい。
また、トレイ本体とトレイ蓋のうち、少なくともトレイ蓋を透明あるいは半透明に形成することができる。
また、トレイ本体とトレイ蓋の周壁のいずれか一方の周壁に係合凹部を、他方の周壁には係合凸部をそれぞれ形成し、これら係合凹部と係合凸部とを相互に嵌め合い可能とすることができる。
【0007】
さらに、収納穴の周壁を、収納穴の底部から伸びる縮径壁と、この縮径壁から半径外方向に傾斜しながら開口方向に伸びる拡径壁とから形成してこれら縮径壁と拡径壁との段差部付近に半導体ウェーハの周縁部を支持させ、取り出し溝を、収納穴の縮径壁から少なくとも拡径壁に亘る領域に平面略舌形に形成し、この取り出し溝と半導体ウェーハの周縁部との間に取り外し用の隙間を形成することもできる。
【0008】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハには、オリフラやノッチが形成されていても良いし、形成されていなくても良い。また、トレイ本体やトレイ蓋は、可撓性を有する平面略正方形、長方形、多角形、円形、楕円形等でも良い。凹部や凸部、取り出し溝、係止部は、単数複数を特に問うものではない。この点については、係合凹部や係合凸部についても同様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成で軽く安価な基板収納トレイを提供することができるという効果がある。
また、トレイ本体とトレイ蓋とを圧空成形すれば、型に忠実な形状を短時間で容易に得ることができる。また、トレイ本体とトレイ蓋とを真空成形すれば、柔らか味の有るラインを得る等、表面加飾性の自由度を向上させたり、高光沢の製品を簡単に得たり、あるいは安価に製造することができる。
【0010】
また、トレイ本体とトレイ蓋のうち、少なくともトレイ蓋を、透明あるいは半透明に形成すれば、トレイ本体に収納された半導体ウェーハを外部から視認してその状態を容易に把握し、その後の各種作業に資することが可能になる。
また、トレイ本体とトレイ蓋の周壁のいずれか一方の周壁に係合凹部を、他方の周壁には係合凸部をそれぞれ形成し、これら係合凹部と係合凸部とを相互に嵌め合い可能とすれば、トレイ本体からトレイ蓋が外れたり、半導体ウェーハやトレイ蓋が脱落するのを簡易な構成で防ぐことが可能になる。
【0011】
さらに、収納穴の周壁を、収納穴の底部から伸びる縮径壁と、この縮径壁から半径外方向に傾斜しながら開口方向に伸びる拡径壁とから形成してこれら縮径壁と拡径壁との段差部付近には半導体ウェーハの周縁部を支持させ、取り出し溝を、収納穴の縮径壁から少なくとも拡径壁に亘る領域に平面略舌形に形成し、この取り出し溝と半導体ウェーハの周縁部との間に取り外し用の隙間を形成すれば、半導体ウェーハを指で取り出すだけでなく、自動機器を使用して取り出すこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る基板収納トレイの好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納トレイは、図1ないし図9に示すように、口径450mmの薄く丸い半導体ウェーハWを水平に一枚収納するトレイ本体1と、このトレイ本体1に上方から着脱自在に嵌合されて収納状態の半導体ウェーハWを覆うトレイ蓋10とをスタック可能に備え、これらトレイ本体1とトレイ蓋10とを、樹脂を含む成形材料を使用してそれぞれ熱成形するようにしている。
【0013】
トレイ本体1とトレイ蓋10とは、所定の樹脂シート、例えば加熱軟化したポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂製のシート等を使用してそれぞれ圧空成形あるいは真空成形される。これらトレイ本体1とトレイ蓋10とは、図1や図2に示すように、それぞれ半導体ウェーハWを収納可能な大きさの平面略矩形、具体的には四隅部が丸く面取りされた平面略正方形の透明に成形され、収納された半導体ウェーハWの外部からの観察や点検を可能とする。
【0014】
トレイ本体1は、図1、図3、図4に示すように、基本的には背の低い断面略逆U字形に屈曲形成され、中央部には、半導体ウェーハWを隙間を介して嵌合収納する平面円形の収納穴2が断面略逆円錐台形(断面略皿形や略すり鉢形でもある)に凹み形成されており、この収納穴2の周壁には、半導体ウェーハWの取り出しに資する複数の取り出し溝5が周方向に間隔をおいて形成される。
【0015】
収納穴2の周壁は、図4や図5に示すように、収納穴2の底面から上方の開口方向に傾斜しながら伸びる縮径壁3と、この縮径壁3の上端部から半径外方向に傾斜しながら開口方向に伸びる拡径壁4とから一体形成され、これら縮径壁3と拡径壁4との間の平坦な段差部4a付近に半導体ウェーハWの周縁部が直接支持される。このような半導体ウェーハWの支持構造により、収納穴2の底面と半導体ウェーハWとの間には空隙が形成され、この空隙の形成により、半導体ウェーハWの接触に伴う汚染を有効に防止することができる。
【0016】
各取り出し溝5は、収納穴2の縮径壁下方、拡径壁4、及びトレイ本体1の表面に亘る領域に上端部が半円形に湾曲した平面略舌形に深く凹み形成され、半導体ウェーハWの周縁部との間に取り外し用の隙間を区画形成する。また、トレイ本体1の平坦な表面周縁部には図3ないし図5に示すように、平面略枠形の凹部6が一体的に凹み形成され、トレイ本体1の略垂直の周壁7には、略半球形で中空の係合凸部8が間隔をおき一体的に複数突出形成される(図6参照)。
【0017】
トレイ蓋10は、図1、図7ないし図9に示すように、基本的には背の低い断面略逆U字形に屈曲形成され、中央部には、半導体ウェーハWや収納穴2を隙間を介して覆う中空の被覆部11が形成される。この被覆部11は、断面略逆円錐台形(断面略皿形や略すり鉢形でもある)に膨出形成されるが、必要に応じ、トレイ蓋10から起立する略円筒形の拡径部と、この拡径部の上端から半径内方向に傾斜しながら伸びる断面略皿形の縮径部とから一体形成される。
【0018】
トレイ蓋10のトレイ本体表面に対向する周縁部には、平面略枠形の凸部12が下方に向け一体的に突出形成(図8参照)され、この凸部12が対向するトレイ本体1の凹部6に着脱自在に嵌合(図2参照)することにより、トレイ本体1とトレイ蓋10とが強固な嵌合状態となる。
【0019】
トレイ蓋10の平坦な表面四隅部には図7ないし図9に示すように、着脱操作用の係止部13がそれぞれ平面略半円弧形に膨出形成され、各係止部13の外周面には、滑り止めや補強機能を発揮する複数の小溝14が周方向に並べて形成される。さらに、トレイ本体1の周壁7に対向するトレイ蓋10の略垂直の周壁15には図9に示すように、略半球形で中空の係合凹部16が間隔をおき一体的に複数突出形成され、各係合凹部16がトレイ本体1の係合凸部8に着脱自在に嵌合する。
【0020】
上記構成において、半導体ウェーハWを収納して保管、搬送する場合には図1や図2に示すように、先ず、トレイ本体1の収納穴2に半導体ウェーハWを上方から嵌入してその周縁部を収納穴2の縮径壁3と拡径壁4との段差部4a付近に支持させ、半導体ウェーハWの水平状態を確認する。
【0021】
こうして半導体ウェーハWを水平に支持させたら、トレイ本体1上にトレイ蓋10を上方から被せてそれらの周壁7・15を対向させ、トレイ本体1の収納穴2にトレイ蓋10の被覆部11を半導体ウェーハWを介し嵌合し、トレイ本体1の凹部6にトレイ蓋10の対向する凸部12を密嵌するとともに、トレイ本体1の各係合凸部8にトレイ蓋10の対向する係合凹部16を外側から嵌入して強固に嵌合すれば、半導体ウェーハWを収納して安全に保管、搬送することができる。
【0022】
これに対し、基板収納トレイから半導体ウェーハWを取り出す場合には、トレイ本体1の係合凸部8とトレイ蓋10の係合凹部16との干渉を解除し、トレイ蓋10の複数の係止部13を掴んで引き上げ、トレイ本体1からトレイ蓋10を取り外し、その後、収納穴2の半導体ウェーハWを複数の取り出し溝5を介して取り外せば、基板収納トレイから半導体ウェーハWを傷付けることなく取り出すことができる。
【0023】
上記構成によれば、トレイ本体1やトレイ蓋10を、硬質の複数の部品を射出成形して締結具により組み立てるのではなく、軟化した樹脂シート等を使用して圧空成形又は真空成形するので、部品点数の増加を大幅に防止し、軽量化を実現して取り扱い性を向上させることができる。また、構成の簡素化や製造作業の円滑化、迅速化、容易化を図ることができる他、量産により著しいコスト削減を図ることができる。また、圧空成形法や真空成形法を採用するので、トレイ本体1やトレイ蓋10の薄型化や大型化に容易に対応することもできる。
【0024】
また、取り出し溝5が、収納穴2の開口周縁部に小さく形成される円弧形や浅い窪みではなく、収納穴2の縮径壁下方から拡径壁上方にまで長く広く伸びる略舌形なので、図示しないロボット等からなる自動機のチャック爪を深く進入させて半導体ウェーハWを把持する作業を確実化することができる。したがって、半導体ウェーハWを指で取り出すだけでなく、自動機を使用して自動的、かつ迅速に取り出すことも可能になる。さらに、半導体ウェーハWと被覆部11との間には空隙が形成されるので、被覆部11に半導体ウェーハWが接触して汚染するのを有効に防止することができる。
【0025】
なお、本発明に係る基板収納トレイは、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では口径450mmの半導体ウェーハWを示したが、口径300mmの半導体ウェーハWを収納するようにしても良い。また、トレイ本体1のみを不透明あるいは半透明に形成しても良いし、トレイ蓋10のみを透明あるいは半透明に形成しても良い。また、収納穴2の縮径壁3を、収納穴2の底面から上方の開口方向に略垂直に伸ばしても良い。
【0026】
また、特に支障を来たさなければ、取り出し溝5を平面略板形等に形成することもできる。また、トレイ蓋10の表面の対角線上に位置する二隅部や三隅部に係止部13を形成することもできる。また、係合凸部8や係合凹部16を中空の円柱形や矩形等に形成することもできる。
【0027】
また、係合凸部8は、トレイ本体1の前後左右の周壁7の両端部にそれぞれ突出形成しても良いし、トレイ本体1の任意の周壁7の両端部にそれぞれ突出形成することも可能である。さらに、係合凹部16も、トレイ蓋10の前後左右の周壁15の両端部にそれぞれ突出形成しても良いし、トレイ蓋10の任意の周壁15の両端部にそれぞれ突出形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る基板収納トレイの実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納トレイの実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納トレイの実施形態におけるトレイ本体を模式的に示す平面説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納トレイの実施形態におけるトレイ本体を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納トレイの実施形態における収納穴の周壁を模式的に示す部分断面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納トレイの実施形態におけるトレイ本体を模式的に示す側面説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納トレイの実施形態におけるトレイ蓋を模式的に示す平面説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納トレイの実施形態におけるトレイ蓋を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納トレイの実施形態におけるトレイ蓋を模式的に示す側面説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 トレイ本体
2 収納穴
3 縮径壁(周壁)
4 拡径壁(周壁)
4a 段差部
5 取り出し溝
6 凹部
7 周壁
8 係合凸部
10 トレイ蓋
11 被覆部
12 凸部
13 係止部
15 周壁
16 係合凹部
W 半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口径300mm以上の半導体ウェーハを収納するトレイ本体と、このトレイ本体に着脱自在に嵌め合わされて半導体ウェーハを覆うトレイ蓋とを備え、これらトレイ本体とトレイ蓋とを、樹脂を含む成形材料を使用してそれぞれ熱成形した基板収納トレイであって、
トレイ本体とトレイ蓋との対向面のいずれか一方には凹部を、他方には凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部とを相互に嵌め合い可能とし、
トレイ本体の略中央部に、半導体ウェーハを隙間を介して収納する収納穴を凹み形成してその周壁には半導体ウェーハ用の取り出し溝を形成し、
トレイ蓋の略中央部に、半導体ウェーハを隙間を介して覆う中空の被覆部を形成し、トレイ蓋の隅部には、操作用の係止部を突出形成したことを特徴とする基板収納トレイ。
【請求項2】
トレイ本体とトレイ蓋とをそれぞれ圧空成形あるいは真空成形した請求項1記載の基板収納トレイ。
【請求項3】
トレイ本体とトレイ蓋のうち、少なくともトレイ蓋を透明あるいは半透明に形成した請求項1又は2記載の基板収納トレイ。
【請求項4】
トレイ本体とトレイ蓋の周壁のいずれか一方の周壁に係合凹部を、他方の周壁には係合凸部をそれぞれ形成し、これら係合凹部と係合凸部とを相互に嵌め合い可能とした請求項1、2、又は3記載の基板収納トレイ。
【請求項5】
収納穴の周壁を、収納穴の底部から伸びる縮径壁と、この縮径壁から半径外方向に傾斜しながら開口方向に伸びる拡径壁とから形成してこれら縮径壁と拡径壁との段差部付近に半導体ウェーハの周縁部を支持させ、取り出し溝を、収納穴の縮径壁から少なくとも拡径壁に亘る領域に平面略舌形に形成し、この取り出し溝と半導体ウェーハの周縁部との間に取り外し用の隙間を形成するようにした請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納トレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−306111(P2008−306111A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153989(P2007−153989)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】