説明

基板収納容器及びこれを用いた気体の置換方法

【課題】供給側と排気側の何れにも用いることができるパージ用の開閉バルブを備えた基板収納容器及びこれを用いた気体の置換方法を提供する。
【解決手段】貫通孔42が形成された円筒状のボール開閉弁40を、下筒10に回転自在に軸支し、ボール開閉弁40を収容する保持筒30を、下筒10に対して軸線方向に移動可能に収容し、保持筒30の内壁に、下筒10を軸線方向に案内する第一カム溝44と、下筒10の移動に伴いボール開閉弁42を回転させる第二カム溝45とを形成する。そして、第一カム溝44及び第二カム溝45の案内によりボール開閉弁40を回転させ、通常時は、貫通孔42が軸線方向に対して垂直な方向を向かせることで、容器内部を気密に保持し、保持筒30に対して下筒10が容器内部側に移動させて、貫通孔42が軸線方向に対して平行な方向を向かせることで、容器内外を連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等の精密基板を収納して保管、搬送、輸送に使用される基板収納容器及びこれを用いた気体の置換方法であって、特に、基板収納容器に設けられる回転式の開閉バルブとこれを用いた気体の置換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板収納容器は、開口部を備えて1又は複数の基板を整列して収納する容器本体と、開口部をシール可能に閉鎖する蓋体とを備えており、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等の基板の保管、工程内搬送、外部への輸送に用いられている。
【0003】
このような基板収納容器は、基板の表面の酸化や変質を防ぐためや、不要な反応を促進させないために、基板を加工するプロセス内において、基板収納容器の内部の空気を不活性ガスやドライエアーに置換(パージ)して、保管されることが知られている。
【0004】
そこで、従来は、こうした基板収納容器の内部の空気を置換するために、特許文献1に記載の基板収納容器のように、空気の逆流を防止する逆止弁が設けられたバルブ体を取り付けることが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−179449号公報
【特許文献2】特開2003−168728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の基板収納容器に設けられるバルブ体は、置換する気体の流れる方向が固定されるため、置換する気体の供給側と排気側とを意識してバルブ体を取り付けなければならなかった。
【0007】
また、特許文献1に記載の基板収納容器は、バルブ体を通して基板収納容器内部の気体を置換できるが、複数の基板が水平状態に収納されているため、これらの基板が隔壁のようになり、基板収納容器の内部で気体の澱みが生じてしまう。このため、気体を置換する効率が悪く、また、気体を置換する時間が長くなるという問題もある。
【0008】
そのため、特許文献2に記載の基板収納容器のように、基板収納容器内部に設置したノズルタワーから気体を噴出させることで、気体の澱みを防止して、効率よく気体を置換することが提案されていた。
【0009】
しかしながら、基板収納容器は、一定期間使用する度に洗浄して繰返し使用される。このため、特許文献2に記載の基板収納容器のように、基板収納容器内部にノズルタワーを設置すると、ノズルタワーの内部に洗浄水が残留してしまい、この残留した洗浄水を乾燥させるには長時間を要するという問題がある。
【0010】
基板収納容器内部の乾燥が十分行われないと、せっかく基板収納容器内部の気体を不活性ガスやドライエアーに置換しても、残留した水分の影響により、気体の置換効果が十分発揮できなくなる。具体的には、この残留した水分の影響により、基板表面に有機物が付着して基板が汚染され、酸化や腐食などにより基板表面が腐食し、また、基板の余分な反応が促進されてしまう。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、供給側と排気側の何れにも用いることができるパージ用の開閉バルブを備えた基板収納容器及びこれを用いた気体の置換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る基板収納容器は、開口部を有して基板を収納する容器本体と、施錠機構を備えて開口部に嵌め合わされる蓋体と、容器本体又は蓋体に設けられるパージ用の開閉バルブと、を有する基板収納容器であって、開閉バルブは、カム機構により回転可能に支持される開閉弁を有し、開閉弁は、回転位置に応じて、容器内外の気体の通過を防止する第一の状態と、容器内外の気体の通過を許容する第二の状態と、を有する。
【0013】
本発明に係る基板収納容器によれば、カム機構により開閉弁を回転させて、容器内外の気体の通過を防止する第一の状態と、容器内外の気体の通過を許容する第二の状態とを切り替えることで、基板収納容器内部の気体を置換することができる。そして、開閉弁の回転により、容器内外の気体の通過を防止する第一の状態と、容器内外の気体の通過を許容する第二の状態とを切り替えることができるため、気体の吸気側と排気側の何れにも用いることができる。
【0014】
この場合、開閉バルブは、開閉弁を収容する円筒状の保持筒と、保持筒を収容して前記開閉弁を軸支する円筒状の下筒と、を備え、カム機構は、下筒に対して保持筒を軸線方向に沿って移動させることで、開閉弁を回転させることが好ましい。このように構成すれば、下筒に対して保持筒を軸線方向に沿って移動させるだけで、カム機構が開閉弁を回転させることができるため、第一の状態と第二の状態との切り替えを簡易に行うことができる。
【0015】
そして、下筒は、基板収納容器の外部側に、半径方向内側に延びて中心部に開口部が形成されたフランジ部を備えており、保持筒の内径は、フランジ部の開口部の内径よりも小さいことが好ましい。このように構成すれば、下筒が保持筒を基板収納容器の外部側から支持しつつ、下筒の開口部から保持筒を突出させることができる。このように、保持筒を下筒の開口部から突出させることで、基板収納容器の外部から、下筒に対して保持筒を軸線方向に沿って基板収納容器の内部側に移動させることができる。これにより、容易に、基板収納容器の内部の気体を置換することができる。
【0016】
また、下筒は、開閉弁を回転自在に軸支する開閉弁軸支部を備えており、開閉弁は、開閉弁軸支部に軸支される軸支用突起と、開閉弁を回転させるための回転用突起と、を備えており、保持筒の内壁部には、開閉弁軸支部を軸線方向に案内する直線状の第一カム溝と、下筒に対する保持筒の移動に伴い開閉弁を回転させる方向に回転用突起を案内する湾曲状の第二カム溝と、が形成されていることが好ましい。このように構成すれば、開閉弁の軸支用突起は、下筒の開閉弁支持部に軸支されているが、開閉弁の回転用突起は、保持筒の第二カム溝に案内されるため、下筒に対して保持筒を軸線方向に沿って移動させることで、下筒の開閉弁支持部を回転軸として開閉弁を回転させることができる。
【0017】
また、開閉バルブには、容器内外を貫通するシール用開口部が形成されており、開閉弁は、直線状に貫通された貫通孔が形成された筒状体であり、第一の状態では、貫通孔が保持筒の軸線方向に対して垂直な方向に向けられ、開閉弁の周壁でシール用開口部を塞ぎ、第二の状態では、貫通孔が保持筒の軸線方向に対して平行な方向に向けられ、シール用開口部と貫通孔とが連通されることが好ましい。
【0018】
このように構成すれば、開閉弁を第一の状態にすることで、シール用開口部が開閉弁の周壁により塞がれるため、基板収納容器を気密に保持することができる。一方、開閉弁を第二の状態にすることで、シール用開口部と貫通孔とが連通されるため、この貫通孔を通じて、基板収納容器の内部の空気を置換することができる。このとき、貫通孔は直線状に開閉弁を貫通しているため、開閉弁を第二の状態にすることで、貫通孔を通じてパージノズルを基板収納容器の内部に挿入することができる。このため、貫通孔を通じて基板収納容器の内部に挿入されたパージノズルにより基板収納容器の内部の気体を置換することで、基板収納容器の内部での気体の澱みを防止し、気体の置換効率を向上させることができ、気体の置換時間を短縮することができる。しかも、この場合、気体の置換終了後にパージノズルを貫通孔から抜き出すことで、基板収納容器の洗浄水が残留するのを抑制できるため、基板収納容器の乾燥時間を短縮できるとともに、気体の置換効果を十分に発揮させることができる。
【0019】
本発明に係る気体の置換方法は、上述した基板収納容器を用いた気体の置換方法であって、基板収納容器をパージポートに搭載し、開閉弁を回転させて第一の状態から第二の状態に切り替え、第二の状態となった開閉バルブを通じて、パージポートから供給される気体を基板収納容器の内部に供給するとともに基板収納容器内の気体を排気する。
【0020】
本発明に係る気体の置換方法によれば、上記の基板収納容器を用いるため、同一構成の開閉バルブを、気体の吸気側と排気側の何れに用いても、開閉弁を回転させることで、容器内外の気体の通過を防止する第一の状態から、容器内外の気体の通過を許容する第二の状態に切り替えることができる。
【0021】
この場合、パージポートの棒状部材により、下筒の開口部から突出している保持筒を基板収納容器の内部側に押し込み、開閉弁を回転させることが好ましい。このように、下筒の開口部から保持筒が突出している場合は、棒状部材により開口部から突出している保持筒を基板収納容器の内部側に押し込むことで、保持筒を下筒に対して軸線方向に沿って基板収納容器の内部側に移動させることができる。
【0022】
そして、棒状部材は、パイプ状に形成されており、棒状部材で開閉弁を第二の状態に回転させた後、棒状部材の内側から開閉弁の貫通孔を通じて基板収納容器の内部に気体を噴出するパージノズルを挿入して、パージノズルから気体を噴出することが好ましい。このように、棒状部材がパイプ状に形成されているため、下筒に対して保持筒を軸線方向に沿って基板収納容器の内部側に移動させている棒状部材の内側から、パージノズルを開閉弁の貫通孔を通じて基板収納容器の内部に挿入することができる。そして、貫通孔を通じて基板収納容器の内部に挿入されたパージノズルにより基板収納容器の気体を置換することで、基板収納容器の内部での気体の澱みを防止し、気体の置換効率を向上させることができ、気体の置換時間を短縮することができる。しかも、この場合、気体の置換終了後にパージノズルを貫通孔から抜き出すことで、基板収納容器の洗浄水が残留するのを抑制できるため、基板収納容器の乾燥時間を短縮できるとともに、気体の置換効果を十分に発揮させることができる。
【0023】
また、パージノズルは、気体を噴出するノズル孔が形成されており、ノズル孔から、基板収納容器に収納される隣接する基板の間に気体を噴出することが好ましい。このように、基板収納容器の内部に挿入されたパージノズルのノズル孔から、隣接する基板の間に気体を噴出することで、澱みやすい基板の間の気体も置換することができる。これにより、気体の澱みを防止して、効率よく気体を置換することができる。
【0024】
一方、パージノズルの基板収納容器の内部への挿入量を任意に調整して、パージノズルから気体を噴出することとしてもよい。このように、パージノズルの基板収納容器の内部への挿入量を調整することで、基板の間などの空気溜まり発生しやすい位置に気体を噴出させることができるため、任意の位置において気体の澱みを防止することができる。所望の位置にのみ気体を噴出させることができるため、パージ効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、パージ用の開閉バルブを供給側と排気側の何れにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る基板収納容器を下方から見た斜視図である。
【図2】図1に示す基板収納容器の一部拡大図である。
【図3】図1に示す基板収納容器の底面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】開閉バルブの分解斜視図である。
【図6】開閉バルブの分解断面図である。
【図7】開閉バルブの底面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7のIX−IX線断面図である。
【図10】上筒の断面図である。
【図11】下筒の斜視図である。
【図12】下筒の上面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】開閉弁の斜視図である。
【図15】保持筒の斜視図である。
【図16】保持筒の上面図である。
【図17】図16のXVII−XVII線断面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線断面図である。
【図19】パッキンを下方から見た斜視図である。
【図20】図19のXX−XX線斜視図である。
【図21】パッキン用蓋体を下方から見た斜視図である。
【図22】パージポートに基板収納容器を搭載した状態を示した断面図である。
【図23】図22に示す基板収納容器の開閉バルブ周辺を拡大した一部拡大図である。
【図24】棒状部材で保持筒を押し込んだ状態を示した断面図である。
【図25】図24に示す基板収納容器の開閉バルブ周辺を拡大した一部拡大図である。
【図26】下筒と保持筒と棒状部材との関係を示した断面図である。
【図27】保持筒と開閉弁との関係を示した断面図である。
【図28】ノズル孔が複数箇所に形成されたタワー状のパージノズルを利用したパージ方法を示した断面図である。
【図29】ノズル孔が1箇所に形成されたパージノズルを利用したパージ方法を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明に係る基板収納容器の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、上下左右は、基板収納容器の上下左右を示す。また、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0028】
図1は、実施形態に係る基板収納容器を下方から見た斜視図である。図2は、図1に示す基板収納容器の一部拡大図である。図3は、図1に示す基板収納容器の底面図である。図4は、図3のIV−IV線断面図である。図1〜図4に示すように、実施形態に係る基板収納容器1は、内部に直径300mmのウェーハ(基板)を収納するものであり、容器本体2と、蓋体3と、を備えている。
【0029】
容器本体2は、正面に開口部を有するフロントオープン型の容器である。この開口部の対向する上面及び下面には、後述する施錠機構7の連結バー7bが挿入される係止凹部が形成されている。容器本体2の対向する一対の内側壁には、基板を水平に支持するための一対の支持部材2aが設けられている。支持部材2aは、開口部から奥側にかけて延びる板状の支承部が上下方向に一定間隔で配列されており、各支承部の開口部側終端部に、基板の飛び出しを防止する段差部が形成されている。また、容器本体2の奥側の内側壁には、基板の挿入限界を規制する位置規制壁2bが形成されている。
【0030】
容器本体2の底面部には、基板収納容器1を搭載する加工装置に載置するボトムプレート4が取り付けられており、このボトムプレート4には、位置決めするための断面逆V字状の位置決め部材4aが取り付けられている。容器本体2の天面部には、搬送用のロボティックフランジ5が取り付けられている。
【0031】
蓋体3は、容器本体2の開口部に嵌め合わされて当該開口部をシール可能に閉鎖するものである。蓋体3は、蓋体本体と、蓋体本体の表面側に取り付けられた一対の施錠機構7と、施錠機構7を覆うように蓋体本体の表面側に取り付けられた表面プレートと、を備えている。この蓋体本体の裏面側には、シール用溝が形成されており、このシール用溝に、容器本体2との間をシールするためのガスケットが挿入されて固定されている。なお、蓋体3の裏面側とは、蓋体3が容器本体2の開口部に嵌め合わされた際に基板収納容器1の内部側に配置される側をいい、蓋体3の表面側とは、蓋体3が容器本体2の開口部に嵌め合わされた際に基板収納容器1の外部側に配置される側をいう。
【0032】
このように構成される容器本体2や蓋体3は、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどの合成樹脂を用いて形成される。そして、これらの樹脂には、カーボンパウダー、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどの導電性付与剤等が適宜添加される。
【0033】
施錠機構7は、回転部材7aと、回転部材7aの回転により進退する一対の連結バー7bと、を備えており、蓋体3の側壁には、連結バー7bの先端部が出没するための出没孔が形成されている。また、表面プレートには、蓋体開閉装置の操作キーを回転部材7aに嵌め込むための操作孔7cが形成されており、施錠機構7を外部から操作可能としている。このように構成される施錠機構7は、蓋体開閉装置の操作キーにより回転部材7aを正転させると、進行する連結バー7bの先端部が出没孔から出現して容器本体2の係合凹部に係止されることで、施錠が行われる。一方、蓋体開閉装置の操作キーにより回転部材7aを反転させると、連結バー7bが後退して出没孔に没入することで、開錠が行われる。
【0034】
このように構成される施錠機構7は、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタールなどの合成樹脂により形成される。
【0035】
そして、容器本体2の底部には、収納される基板の前方と後方とに、容器本体2を貫通する貫通孔が2箇所ずつ形成されており、各貫通孔に、基板収納容器1の内部の気体を置換するための開閉バルブ100が脱着可能に取り付けられている。なお、以下の説明において、基板が収納される基板収納容器1の内部側を、基板収納容器の内部側といい、外部に晒される基板収納容器1の外部側を、基板収納容器1の外部側という。
【0036】
図5は、開閉バルブの分解斜視図である。図6は、開閉バルブの分解断面図である。図7は、開閉バルブの底面図である。図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。図9は、図7のIX−IX線断面図である。なお、基板収納容器1の内部側は、図5、図6、図8及び図9における上側であり、基板収納容器1の外部側は、図5、図6、図8及び図9における下側である。
【0037】
図5〜図9に示すように、開閉バルブ100は、下筒10と、パッキン20と、保持筒30と、ボール開閉弁40と、パッキン50と、パッキン用蓋体60と、コイルスプリング70と、Oリング80と、上筒90と、を備えている。
【0038】
上筒90は、下筒10と螺合することで、パッキン20、保持筒30、ボール開閉弁40、パッキン50、パッキン用蓋体60、コイルスプリング70及びOリング80を内部に収容するものであり、下筒10に対して基板収納容器1の内部側に配置される。
【0039】
図10は、上筒の断面図である。図10に示すように、上筒90は、円筒状の円筒部91と、円筒部91における基板収納容器1の内部側端部から半径方向外側に延びる外側フランジ部92と、円筒部91における基板収納容器1の内部側端部から半径方向内側に延びて中心部に開口部93が形成される内側フランジ部94と、を備えている。
【0040】
円筒部91の外周面には、下筒10と螺合するためのねじ山と溝からなる雄型螺刻部95が形成されている。内側フランジ部94に形成される開口部93は、基板収納容器1の内外を連通するための開口であって、その内径は、後述するパージノズルが十分に挿通可能な寸法となっている。また、この開口部93の開口断面は、真円状に形成されている。
【0041】
図5〜図9に示すように、下筒10は、上筒90と螺合することで、パッキン20、保持筒30、ボール開閉弁40、パッキン50、パッキン用蓋体60、コイルスプリング70及びOリング80を内部に収容するものであり、上筒90に対して基板収納容器1の外部側かつ半径方向外側に配置される。
【0042】
図11は、下筒の斜視図である。図12は、下筒の上面図である。図13は、図12のXIII−XIII線断面図である。図11〜図13に示すように、下筒10は、円筒状の円筒部11と、円筒部11における基板収納容器1の外部側端部から半径方向外側に延びる外側フランジ部12と、円筒部11における基板収納容器1の外部側端部から半径方向内側に延びて中心部に開口部13が形成される内側フランジ部14と、内側フランジ部14の半径方向内側端部から基板収納容器1の内部側に向けて突出する一対の開閉弁軸支バー15と、を備えている。
【0043】
円筒部11の内周面には、上筒90の雄型螺刻部95と螺合するためのねじ山と溝からなる雌型螺刻部16が形成されている。内側フランジ部14に形成される開口部13は、基板収納容器1の内外を連通するための開口であって、その内径は、後述するパージノズルが十分に挿通可能な寸法となっている。この開口部13の開口断面は、対向する一対の円弧が直線状に切り欠かれた変形円状に形成されおり、一対の対向する円弧部13aと、一対の対向する直線部13bと、が形成されている。このため、内側フランジ部14の中心部には、対向する一対の円弧面が半径方向内側に膨出した一対の膨出部14aが形成され、この一対の膨出部14aの対向する内面が、互いに並行な平面状に形成されるとともに、開口部13の直線部13bを形成する。
【0044】
一対の開閉弁軸支バー15は、内側フランジ部14の一対の膨出部14aに立設されており、膨出部14aにおける円筒部11の半径方向内側端縁から、円筒部11の軸線方向に沿って基板収納容器1の内部側に向けて延びている。各開閉弁軸支バー15の先端部には、他方の開閉弁軸支バー15に向けて突出する突出部15aが形成されており、一対の突出部15aは、互いに対向してボール開閉弁40を回転自在に軸支するものであり、先端に向かうに従い細くなるテーパー状に形成されている。
【0045】
図14は、開閉弁の斜視図である。図14に示すように、ボール開閉弁40は、開閉バルブ100における開閉弁となるものである。ボール開閉弁40は、稜線部が面取りされた変形六面体に形成されており、この稜線部の面取りにより形成された面取り面41が球面状に形成されている。また、ボール開閉弁40は、対向する一対の面が貫通された変形円筒状に形成されている。このボール開閉弁40を貫通する貫通孔42は、基板収納容器1の内外を連通するための開口であって、その内径は、後述するパージノズルが十分に挿通可能な寸法となっている。
【0046】
ボール開閉弁40の周壁には、貫通孔42に対して垂直な方向に面した4つの側面43が形成されている。そして、対向する一対の側面43には、この側面43から垂直方向に突出する一対の軸支用突起44が形成されている。軸支用突起44は、開閉弁軸支バー15の突出部15aに回転自在に軸支されるものであり、内部に突出部15aを挿入可能とする円筒状に形成されている。そして、一対の突出部15aが一対の軸支用突起44に挿入されることで、ボール開閉弁40が、一対の突出部15aを通る直線を回転軸として回転自在に軸支される。
【0047】
また、ボール開閉弁40における一方の軸支用突起44の近傍に、この軸支用突起44の突出方向と同じ方向に突出する回転用突起45が形成されている。回転用突起45は、ボール開閉弁40を回転させるものである。なお、回転用突起45は、軸支用突起44が形成される側面43に形成されてもよく、軸支用突起44が形成される側面43の周囲の面取り面41に形成されもよい。
【0048】
図5〜図9に示すように、保持筒30は、パッキン20を介して下筒10に収納されて、ボール開閉弁40を収納するものである。
【0049】
図15は、保持筒の斜視図である。図16は、保持筒の上面図である。図17は、図16のXVII−XVII線断面図である。図18は、図16のXVIII−XVIII線断面図である。図15〜図18に示すように、保持筒30は、円筒状の円筒部32と、円筒部32における基板収納容器1の外部側端部から半径方向外側に延びる外側フランジ部33と、を備えている。
【0050】
外側フランジ部33における基板収納容器1の外部側端面には、保持筒30の半径方向中央部に、パッキン20が挿入されるパッキン用溝33aが形成されている。また、外側フランジ部33における基板収納容器1の内部側端面には、保持筒30の半径方向外側端部に、コイルスプリング70が係止されるスプリング用溝33bが形成されている。
【0051】
また、円筒部32の外周面には、パッキン用蓋体60が係止される係止凹部37が形成されている。
【0052】
円筒部32の内周面には、軸線方向に貫通する貫通孔31が形成されている。貫通孔31は、ボール開閉弁40を収容するとともに、基板収納容器1の内外を連通するための開口であって、その内径は、ボール開閉弁40を回転可能に収納可能な寸法となっている。貫通孔31の開口断面は、下筒10の開口部13と同様に、対向する一対の円弧が直線状に切り欠かれた変形円状に形成されており、一対の対向する円弧部31aと、一対の対向する直線部31bと、が形成されている。このため、円筒部32の内周面には、対向する一対の円弧面が半径方向内側に膨出した一対の膨出部32aが形成されており、この一対の膨出部32aの対向する内面が、互いに並行な平面状に形成されるとともに、貫通孔31の直線部31bを形成する。そして、貫通孔31における円弧部31aの内径は、下筒10の円弧部13aの内径と同一寸法に形成されているが、貫通孔31における直線部31bの離間距離は、下筒10の直線部13bの離間距離よりも短くなっている。このため、保持筒30における貫通孔31の内径は、全体として、下筒10における開口部13の内径よりも小さくなっている。
【0053】
そして、直線部31bを形成する一対の膨出部32aの内面には、下筒10の開閉弁軸支バー15及びボール開閉弁40の軸支用突起44が摺動自在に挿入される一対の第一カム溝34が形成されている。また、直線部31bを形成する一方の膨出部32aの内面には、ボール開閉弁40の回転用突起45が摺動自在に挿入される第二カム溝35が形成されている。
【0054】
第一カム溝34は、基板収納容器1の外部側端縁から基板収納容器1の内部側に向けて、保持筒30の軸線方向に沿った直線状に形成されている。このため、第一カム溝34は、下筒10の開閉弁軸支バー15が挿入されることにより、保持筒30の下筒10に対する円周方向への回転を規制して、保持筒30の下筒10に対する軸線方向への移動を案内する。
【0055】
第二カム溝35は、保持筒30の軸線方向に沿って湾曲した曲線状に形成されている。この第二カム溝35は、下筒10に対する保持筒30の軸線方向に沿った移動により、ボール開閉弁40が90°又は約90°回転するように回転用突起45を案内する形状となっている。すなわち、第二カム溝35は、ボール開閉弁40に対して保持筒30が基板収納容器1の外部側に移動したときに、ボール開閉弁40の貫通孔42が保持筒30の軸線方向に対して垂直な方向に向けられ、ボール開閉弁40に対して保持筒30が基板収納容器1の内部側に移動したときに、ボール開閉弁40の貫通孔42が保持筒30の軸線方向に対して平行な方向に向けられる形状となっている。
【0056】
円筒部32における基板収納容器1の内部側端部には、基板収納容器1の内部側からパッキン50が嵌め込まれるパッキン用溝36が形成されている。パッキン用溝36は、貫通孔31を拡径することにより形成されており、その開口断面が真円状に形成されている。
【0057】
図19は、パッキンを下方から見た斜視図である。図20は、図19のXX−XX線斜視図である。図19及び図20に示すように、パッキン50は、ボール開閉弁40とのシールを行うための部材であり、中央部に開口部51が形成された円板状に形成されている。
【0058】
開口部51は、基板収納容器1の内外を連通するための開口であって、その内径は、ボール開閉弁40における貫通孔42の内径よりも僅かに大きい寸法となっている。そして、開口部51には、ボール開閉弁40の面取り面41に密着されるシール面51aが形成されている。シール面51aは、面取り面41との密着性を高めるために、面取り面41と同様の球面状に形成されており、基板収納容器1の内部側から基板収納容器1の外部側に向けて内径が大きくなっている。また、開口部51には、シール面51aにおける基板収納容器1の内部側に切り欠き51bが形成されるとともに、シール面51aにおける基板収納容器1の外部側に切り欠き51cが形成されている。これにより、シール面51aが開口部51から突出するように形成されるため、面取り面41との密着性が高められる。
【0059】
パッキン50の厚さは、保持筒30におけるパッキン用溝36の深さと同一寸法、又は、パッキン用溝36の深さよりも僅かに大きな寸法となっている。
【0060】
図21は、パッキン用蓋体を下方から見た斜視図である。図21に示すように、パッキン用蓋体60は、保持筒30における基板収納容器1の内部側端面に被せられて、パッキン50をパッキン用溝36に固定する部材であり、中央部に開口部61が形成された円板状に形成されている。
【0061】
開口部61は、基板収納容器1の内外を連通するための開口であって、その内径は、パッキン50の開口部51の内径と略同一寸法となっている。
【0062】
そして、パッキン用蓋体60の半径方向外側端部には、基板収納容器1の外部側に向けて突出する一対の第一爪部62及び一対の第二爪部63が形成されている。第一爪部62及び第二爪部63は、交互に配置されており、保持筒30の外周面に当接されることで、保持筒30に対するパッキン用蓋体60の位置決めを行うものである。
【0063】
第二爪部63の先端部には、パッキン用蓋体60の半径方向内側に向けて突出して、円筒部32の係止凹部37に係止される係止凸部63aが形成されている。第二爪部63の長さは、係止凸部63aが係止凹部37に係止されたときに、パッキン用蓋体60が保持筒30における基板収納容器1の内部側端面に当接する寸法となっている。このため、係止凸部63aを係止凹部37に係止させることで、パッキン50が保持筒30のパッキン用溝33aに挿入された状態で固定される。
【0064】
そして、保持筒30の外側フランジ部33が下筒10の内側フランジ部14に当接しているときに、ボール開閉弁40の面取り面41がパッキン50のシール面51aに密着するように、下筒10の開閉弁軸支バー15の長さが設定される。
【0065】
このように構成される開閉バルブ100は、以下に示すように組み立てられている。
【0066】
ボール開閉弁40は、軸支用突起44に開閉弁軸支バー15の突出部15aが挿入されることで、下筒10に軸支されている。保持筒30は、下筒10の開口部13内に収納されており、開閉弁軸支バー15及び軸支用突起44が第一カム溝34に挿入されるとともに、ボール開閉弁40の回転用突起45が第二カム溝35に挿入されている。保持筒30と下筒10との間には、保持筒30のパッキン用溝33aに嵌め込まれたパッキン50が介挿されている。
【0067】
保持筒30のパッキン用溝33aには、パッキン50が嵌め込まれており、保持筒30の基板収納容器1の内部側端面には、パッキン用蓋体60が被せられて、係止凸部63aが係止凹部37に係止されている。
【0068】
そして、保持筒30のスプリング用溝33bと上筒90の内側フランジ部94との間に圧縮状態のコイルスプリング70を嵌め込んだ状態で、上筒90が下筒10に螺合されており、保持筒30が基板収納容器1の外部側、すなわち、下筒10の内側フランジ部14側に向けて付勢されている。また、下筒10における円筒部11の先端面と上筒90の外側フランジ部92との間に、シール用のOリング80が介挿されている。
【0069】
次に、基板収納容器1の内部の気体を置換するパージ方法について説明する。
【0070】
図22は、パージポートに基板収納容器を搭載した状態を示した断面図である。図23は、図22に示す基板収納容器の開閉バルブ周辺を拡大した一部拡大図である。図24は、棒状部材で保持筒を押し込んだ状態を示した断面図である。図25は、図24に示す基板収納容器の開閉バルブ周辺を拡大した一部拡大図である。
【0071】
ここで、基板収納容器1のパージ方法を説明するに先立ち、基板収納容器1の通常状態について説明する。
【0072】
通常状態の基板収納容器1は、開閉バルブ100に外力が作用していないため、下筒10と上筒90との間に嵌め込まれたコイルスプリング70により、保持筒30が下筒10の内側フランジ部14に圧接された状態となっている。
【0073】
このため、保持筒30のパッキン用溝33aに嵌め込まれたパッキン20により、保持筒30の外側フランジ部33と下筒10の内側フランジ部14との間がシールされる。また、ボール開閉弁40の面取り面41がパッキン50のシール面51aに密着し、面取り面41とシール面51aとの間がシールされる。また、ボール開閉弁40は、回転用突起45が挿入される第二カム溝35の案内により、貫通孔42が保持筒30の軸線方向に対して垂直な方向に向けられているため、ボール開閉弁40の側面43によりパッキン50の開口部51が閉鎖される。なお、下筒10と上筒90との間は、Oリング80により常にシールされている。
【0074】
これにより、開閉バルブ100における基板収納容器1の内外を連通する開口が閉ざされるため、開閉バルブ100が閉状態となり、基板収納容器1が密閉された状態が保持される。このように、容器内外の気体の通過を許容する開閉バルブ100の状態を、第二の状態という。
【0075】
次に、基板収納容器1のパージ方法について説明する。
【0076】
図22及び図23に示すように、基板収納容器1をパージするためには、まず、基板収納容器1のパージを行うための円筒状のパージポート110に基板収納容器1を搭載する。すなわち、パージポート110の内側に下筒10の開口部13が配置されるように、下筒10の内側フランジ部14をパージポート110に圧接し、内側フランジ部14とパージポート110との間をシールする。これにより、開口部13は、外部から遮断されて、パージポート110の内部にのみ連通される。
【0077】
次に、図24及び図25に示すように、パージポート110の内側から、保持筒30を操作するための棒状部材111を送り出し、開口部13の内側に押し込む。棒状部材111は、パイプ状に形成されている。棒状部材111の内径は、後述するパージノズルが十分挿通可能な寸法となっている。また、棒状部材111の外径は、開口部13の内径よりも小さく、保持筒30における貫通孔31の内径よりも大きい寸法となっている。すなわち、図2及び図7に示すように、棒状部材111の外径は、開口部13における直線部13bの離間距離よりも小さく、貫通孔31における直線部31bの離間距離よりも大きい寸法となっている。このため、棒状部材111を開口部13の内側に押し込むと、棒状部材111の先端が、開口部13から半径方向内側に突出した保持筒30の膨出部32aに突き当たる。
【0078】
そして、この棒状部材111を更に押し込むと、棒状部材111が突き当たっている保持筒30のみが基板収納容器1の内部側に押し込まれる。すると、下筒10及び下筒10の開閉弁軸支バー15に軸支されるボール開閉弁40に対して、保持筒30が軸線方向に沿って基板収納容器1の内部側に移動する。
【0079】
このため、下筒10の内側フランジ部14から保持筒30の外側フランジ部33が離間され、この内側フランジ部14と外側フランジ部33との間のシールが解除される。また、パッキン50のシール面51aからボール開閉弁40の面取り面41が離間され、面取り面41とシール面51aとの間のシールが解除される。そして、ボール開閉弁40は、回転用突起45が挿入される第二カム溝35の案内により、貫通孔42が保持筒30の軸線方向に対して平行な方向に向けられる。
【0080】
これにより、開閉バルブ100における基板収納容器1の内外を連通する直線状の開口が形成されるため、開閉バルブ100が開状態となり、基板収納容器1の内外が連通可能となる。このように、容器内外の気体の通過を防止する開閉バルブ100の状態を、第一の状態という。
【0081】
ここで、図26及び図27を参照して、ボール開閉弁40の回転動作について説明する。図26は、下筒と保持筒と棒状部材との関係を示した断面図である。図27は、保持筒と開閉弁との関係を示した断面図である。
【0082】
図26(a)及び図27(a)は、基板収納容器1の通常状態であって、開閉バルブ100の閉状態を示している。図26(a)及び図27(a)に示すように、保持筒30に形成される第一カム溝34には、下筒10の開閉弁軸支バー15及びボール開閉弁40の軸支用突起44が挿入されており、保持筒30に形成される第二カム溝35には、ボール開閉弁40の回転用突起45が挿入されている。そして、通常状態では、保持筒30が下筒10の内側フランジ部14に圧接されているため、開閉弁軸支バー15の突出部15aに回転自在に軸支されているボール開閉弁40は、回転用突起45が第二カム溝35に案内されることにより、ボール開閉弁40の貫通孔42が保持筒30の軸線方向に対して垂直な方向に向けられる。
【0083】
図26(b)及び図27(b)は、パージポート110に設けられた棒状部材111により保持筒30が下筒10に対して途中まで押し込まれた状態を示している。図26(b)及び図27(b)に示すように、棒状部材111により、保持筒30が下筒10に対して基板収納容器1の内部側に押し込まれると、開閉弁軸支バー15が第一カム溝34に案内されて、保持筒30が下筒10に対して基板収納容器1の内部側に移動する。このとき、ボール開閉弁40は、回転用突起45が開閉弁軸支バー15の突出部15aに回転自在に軸支されているため、保持筒30に対して基板収納容器1の外部側に移動する。このため、開閉弁軸支バー15の突出部15aに回転自在に軸支されているボール開閉弁40は、回転用突起45が第二カム溝35に案内されることにより、ボール開閉弁40の貫通孔42が保持筒30の軸線方向に対して垂直な方向から斜めに傾いた方向に回転する。なお、この段階では、基板収納容器1のシールが解除されて基板収納容器1の内外が連通可能となるが、ボール開閉弁40の貫通孔42は、未だ、保持筒30の軸線方向に対して平行な方向にまで至っていないため、開閉バルブ100の開口は直線状になっていない。
【0084】
図26(c)及び図27(c)は、パージポート110に設けられた棒状部材111により保持筒30が下筒10に対して完全に押し込まれた状態を示している。図26(c)及び図27(c)に示すように、棒状部材111により、保持筒30が下筒10に対して基板収納容器1の内部側に完全に押し込まれると、開閉弁軸支バー15の突出部15aに回転自在に軸支されているボール開閉弁40は、回転用突起45が第二カム溝35に案内されることにより、ボール開閉弁40の貫通孔42が保持筒30の軸線方向に対して平行な方向にまで回転する。これにより、開閉バルブ100に直線状の開口が形成される。
【0085】
そして、基板収納容器1に取り付けられた全ての開閉バルブ100を開状態にすると、収納される基板の前方又は後方の何れか一方に配置された開閉バルブ100を通じて、棒状部材111の内側から、基板収納容器1の内部にパージ用の気体を供給し、収納される基板の前方又は後方の何れか他方に配置された開閉バルブ100を通じて、基板収納容器1の内部から気体を排気する。これにより、基板収納容器1の内部の気体を置換することができる。
【0086】
気体の置換後は、棒状部材111を下筒10の開口部13から引き抜くことで、開閉バルブ100が閉状態に戻るため、基板収納容器1を密閉することができる。
【0087】
図28は、ノズル孔が複数箇所に形成されたタワー状のパージノズルを利用したパージ方法を示した断面図である。図28に示すように、タワー状のパージノズル112には、気体を噴出する複数のノズル孔113が形成されている。上述したように、開閉バルブ100を開状態にすると、開閉バルブ100に直線状の開口が形成されるため、この開口を通じて、棒状部材111の内側からタワー状のパージノズル112を基板収納容器1の内部に挿入する。そして、タワー状のパージノズル112の各ノズル孔113から、基板収納容器1に収納された隣接する基板の間に気体を噴出する。なお、収納される全ての基板の上面及び下面に対して一気に気体を噴出できるように、タワー状のパージノズル112には、最大枚数の基板を収納したときに、全ての隣接する基板の間に気体を噴出できるだけのノズル孔を形成しておくことが好ましい。そして、気体の置換終了後にパージノズル112を貫通孔42から引き抜く。
【0088】
図29は、ノズル孔が1箇所に形成されたパージノズルを利用したパージ方法を示した断面図である。図29に示すように、パージノズル114には、気体を噴出するノズル孔115が1箇所のみ形成されている。そして、開状態にした開閉バルブ100の開口を通じて、棒状部材111の内側からパージノズル114を基板収納容器1の内部に挿入し、パージノズル114に形成されたノズル孔115から、基板収納容器1に収納された隣接する基板の間に気体を噴出する。このとき、基板収納容器1に収納される全ての基板の上面及び下面に気体を噴出するように、パージノズル114の基板収納容器1への挿入量を調整して、基板収納容器1に収納される隣接する基板の間に気体を順次噴出していく。そして、気体の置換終了後にパージノズル112を貫通孔42から引き抜く。
【0089】
このように、本実施形態によれば、ボール開閉弁40の回転により、容器内外の気体の通過を防止する第一の状態と、容器内外の気体の通過を許容する第二の状態とを切り替えることができるため、同一構成のボール開閉弁40を、気体の吸気側と排気側の双方に用いることができる。
【0090】
また、下筒10に対して保持筒30を軸線方向に沿って移動させるだけで、ボール開閉弁40を回転させることができるため、第一の状態と第二の状態との切り替えを簡易に行うことができる。
【0091】
また、保持筒30における直線部31bの離間距離を下筒10における直線部13bの離間距離よりも短くすることで、下筒10の開口部13から保持筒30を突出させることができる。このように、保持筒30を下筒10の開口部13から突出させることで、基板収納容器1の外部から、下筒10に対して保持筒30を軸線方向に沿って基板収納容器1の内部側に移動させることができる。これにより、容易に、基板収納容器1の内部の気体を置換することができる。
【0092】
また、ボール開閉弁40の軸支用突起44は、下筒10における開閉弁軸支バー15の突出部15aに軸支されているが、ボール開閉弁40の回転用突起45は、保持筒30の第二カム溝35に案内されるため、下筒10に対して保持筒30を軸線方向に沿って移動させることで、突出部15aを回転軸としてボール開閉弁40を回転させることができる。
【0093】
また、ボール開閉弁40の貫通孔42は直線状にボール開閉弁40を貫通しているため、ボール開閉弁40を回転して第二の状態にすることで、貫通孔42を通じてパージノズルを基板収納容器1の内部に挿入することができる。このため、貫通孔42を通じて基板収納容器1の内部に挿入されたパージノズルにより基板収納容器1の内部の気体を置換することで、基板収納容器1の内部での気体の澱みを防止し、気体の置換効率を向上させることができ、気体の置換時間を短縮することができる。しかも、この場合、気体の置換終了後にパージノズルを貫通孔42から抜き出すことで、基板収納容器1の洗浄水が残留するのを抑制できるため、基板収納容器1の乾燥時間を短縮できるとともに、気体の置換効果を十分に発揮させることができる。
【0094】
また、棒状部材111がパイプ状に形成されているため、下筒10に対して保持筒30を軸線方向に沿って基板収納容器1の内部側に移動させている棒状部材111の内側から、パージノズルをボール開閉弁40の貫通孔42を通じて基板収納容器1の内部に挿入することができる。そして、このようにして基板収納容器1の内部に挿入されたパージノズルにより基板収納容器1の気体を置換することで、基板収納容器1の内部での気体の澱みを防止し、気体の置換効率を向上させることができ、気体の置換時間を短縮することができる。しかも、この場合、気体の置換終了後にパージノズルを貫通孔から抜き出すことで、基板収納容器1の洗浄水が残留するのを抑制できるため、基板収納容器1の乾燥時間を短縮できるとともに、気体の置換効果を十分に発揮させることができる。
【0095】
また、図28に示すパージノズル112を用いた場合は、基板収納容器1の内部に挿入されたパージノズル112のノズル孔113から、隣接する基板の間に気体を噴出することで、澱みやすい基板の間の気体も置換することができる。これにより、気体の澱みを防止して、効率よく気体を置換することができる。
【0096】
また、図29に示すパージノズル114を用いた場合は、パージノズル114の基板収納容器1の内部への挿入量を調整することで、基板の間などの空気溜まり発生しやすい位置に気体を噴出させることができるため、任意の位置において気体の澱みを防止することができる。しかも、所望の位置にのみ気体を噴出させることができるため、パージ効率を向上させることができる。
【0097】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、供給側と排気側とで同じ開閉バルブを用いるものとして説明したが、供給側と排気側とで異なる開閉バルブを用いてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、第一カム溝34及び第二カム溝35を用いたカム機構によりボール開閉弁40を回転させるものとして説明したが、ボール開閉弁40を回転させることができれば、如何なる形状及び構造のカム機構を用いてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、保持筒30を付勢する手段としてコイルスプリング70を用いたが、保持筒を付勢することができれば、如何なる弾性部材や付勢手段を用いてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、第二の状態になると開閉バルブ100に直線上の開口が形成されるものとして説明したが、パージノズルを用いない場合は、開閉バルブ100に形成される開口は必ずしも直線状でなくてもよい。
【0101】
また、図28及び図29に示すパージ方法では、供給側の開閉バルブにのみパージノズルを挿入するものとして説明したが、排気側の開閉バルブにも気体を吸引するノズル孔が形成されたパージノズルを挿入してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…基板収納容器、2…容器本体、2a…支持部材、2b…位置規制壁、3…蓋体、4…ボトムプレート、4a…位置決め部材、5…ロボティックフランジ、7…施錠機構、7a…回転部材、7b…連結バー、7c…操作孔、10…下筒、11…円筒部、12…外側フランジ部、13…開口部、13a…円弧部、13b…直線部、14…内側フランジ部(フランジ部)、14a…膨出部、15…開閉弁軸支バー(開閉弁軸支部)、15a…突出部(開閉弁軸支部)、16…雌型螺刻部、20…パッキン、30…保持筒、31…貫通孔、31a…円弧部、31b…直線部、32…円筒部、32a…膨出部、33…外側フランジ部、33a…パッキン用溝、33b…スプリング用溝、34…第一カム溝(カム機構)、35…第二カム溝(カム機構)、36…パッキン用溝、37…係止凹部、40…ボール開閉弁(開閉弁)、41…面取り面、42…貫通孔、43…側面、44…軸支用突起(カム機構)、45…回転用突起(カム機構)、50…パッキン、51…開口部(シール用開口部)、51a…シール面、60…パッキン用蓋体、61…開口部、62…第一爪部、63…第二爪部、63a…係止凸部、70…コイルスプリング、80…Oリング、90…上筒、90…上筒、91…円筒部、92…外側フランジ部、93…開口部、94…内側フランジ部、95…雄型螺刻部、100…開閉バルブ、110…パージポート、111…棒状部材、112…タワー状のパージノズル、113…ノズル孔、114…パージノズル、115…ノズル孔。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有して基板を収納する容器本体と、施錠機構を備えて前記開口部に嵌め合わされる蓋体と、前記容器本体又は前記蓋体に設けられるパージ用の開閉バルブと、を有する基板収納容器であって、
前記開閉バルブは、カム機構により回転可能に支持される開閉弁を有し、
前記開閉弁は、回転位置に応じて、容器内外の気体の通過を防止する第一の状態と、容器内外の気体の通過を許容する第二の状態と、を有する基板収納容器。
【請求項2】
前記開閉バルブは、
前記開閉弁を収容する円筒状の保持筒と、
前記保持筒を収容して前記開閉弁を軸支する円筒状の下筒と、
を備え、
前記カム機構は、前記下筒に対して前記保持筒を軸線方向に沿って移動させることで、前記開閉弁を回転させる、請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記下筒は、前記基板収納容器の外部側に、半径方向内側に延びて中心部に開口部が形成されたフランジ部を備えており、
前記保持筒の内径は、前記フランジ部の開口部の内径よりも小さい、請求項2に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記下筒は、前記開閉弁を回転自在に軸支する開閉弁軸支部を備えており、
前記開閉弁は、前記開閉弁軸支部に軸支される軸支用突起と、前記開閉弁を回転させるための回転用突起と、を備えており、
前記保持筒の内壁部には、前記開閉弁軸支部を軸線方向に案内する直線状の第一カム溝と、前記下筒に対する前記保持筒の移動に伴い前記開閉弁を回転させる方向に前記回転用突起を案内する湾曲状の第二カム溝と、が形成されている、請求項2又は3に記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記開閉バルブには、容器内外を貫通するシール用開口部が形成されており、
前記開閉弁は、直線状に貫通された貫通孔が形成された筒状体であり、
前記第一の状態では、前記貫通孔が前記保持筒の軸線方向に対して垂直な方向に向けられ、前記開閉弁の周壁で前記シール用開口部を塞ぎ、
前記第二の状態では、前記貫通孔が前記保持筒の軸線方向に対して平行な方向に向けられ、前記シール用開口部と前記貫通孔とが連通される、請求項2〜4の何れか一項に記載の基板収納容器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の基板収納容器を用いた気体の置換方法であって、
前記基板収納容器をパージポートに搭載し、
前記開閉弁を回転させて前記第一の状態から前記第二の状態に切り替え、
前記第二の状態となった前記開閉バルブを通じて、前記パージポートから供給される気体を前記基板収納容器の内部に供給するとともに前記基板収納容器内の気体を排気する、気体の置換方法。
【請求項7】
前記基板収納容器は、請求項3〜5の何れかに記載の基板収納容器であり、
前記パージポートの棒状部材により、前記下筒の前記開口部から突出している前記保持筒を基板収納容器の内部側に押し込み、前記開閉弁を回転させる、請求項6に記載の気体の置換方法。
【請求項8】
前記棒状部材は、パイプ状に形成されており、
前記棒状部材で前記開閉弁を前記第二の状態に回転させた後、前記棒状部材の内側から前記開閉弁の前記貫通孔を通じて前記基板収納容器の内部に気体を噴出するパージノズルを挿入して、前記パージノズルから気体を噴出する、請求項7に記載の気体の置換方法。
【請求項9】
前記パージノズルは、気体を噴出するノズル孔が形成されており、
前記ノズル孔から、前記基板収納容器に収納される隣接する基板の間に気体を噴出する、請求項8に記載の気体の置換方法。
【請求項10】
前記パージノズルの前記基板収納容器の内部への挿入量を任意に調整して、前記パージノズルから気体を噴出する、請求項8に記載の気体の置換方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−195496(P2012−195496A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59331(P2011−59331)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】