説明

基板収納容器及び基板収納容器用梱包体

【課題】梱包・開梱作業を容易に行うことができ、しかも、外気温が変化しても基板が汚染することを防止できる基板収納容器及び基板収納容器用梱包体を提供する。
【解決手段】基板を収納する容器本体4と、この容器本体4の開口を塞ぐ蓋体とからなる基板収納容器1であって、容器本体4の上壁7、側壁9の外面に、この外面を覆い、且つ、容器本体4の外部と内部の間における熱伝導を抑制する断熱壁31、32、33を設けてなる。さらに、蓋体、背面壁8、ボトムプレート11を覆う断熱壁34、35、36を追加することで、合計6枚の断熱壁により、基板収納容器用梱包体を構成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等の精密加工基板を収納して、輸送、搬送、保管に使用する基板収納容器、及び、基板収納容器の輸送に供する基板収納容器用梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の基板を収納する基板収納容器は、工場間における基板の輸送などに広く利用されており、各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1の技術では、輸送時に基板収納容器が受ける衝撃を緩和するため、周囲のベローズにより緩衝能力を高めた一対の緩衝体を梱包箱の上下に配置して基板収納容器を梱包し、基板を加工する工場に輸送する。
【0004】
ところで、基板収納容器の輸送が遠距離になる場合、航空機や船舶による輸送が行われる。この場合、輸送中の急激な外気温の変化(−10℃〜40℃程度)により基板収納容器内が結露し易くなる。基板収納容器内で結露が起きると、基板収納容器の壁から発生する揮発性有機物と水分とが反応したり結合したりして、基板表面に塩や結晶を形成し、基板表面が汚染される虞がある。この結露の問題は、寒冷地での陸送においても同様に生ずる。したがって、このような結露の問題を解消するため、外気温の変化に対応した結露対策が望まれる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術においては、一対の緩衝体で輸送時の衝撃を緩和することはできるが、結露の問題を解消することは困難である。そこで、結露発生を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献2(図4)参照。)。
【0006】
特許文献2の技術では、基板収納容器をアルミラミネート製等の梱包袋で包み、この梱包袋と基板収納容器との間に空間(保温層)を形成し、この保温層によって、輸送時における結露の発生を抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-160769号公報
【特許文献2】特開2010-241436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示される技術では、梱包する際、基板収納容器を梱包袋で包み、この梱包袋をヒートシールした後、梱包袋で包んだ基板収納容器を梱包箱に入れる作業を行う必要がある。一方、開梱する際は、梱包袋に包まれた基板収納容器を梱包箱から取り出し、梱包袋を破り、さらに梱包袋から基板収納容器を取り出す作業を行う。
【0009】
このように、断熱用の梱包袋を付加したことで、取扱う資材の数が多くなり、作業工数が増える。このため、梱包作業や開梱作業が煩雑になり、作業性が良くない。梱包・開梱作業の迅速化が求められる中、作業性を妨げない結露防止技術が望まれる。
【0010】
また、基板保護の観点から、基板収納容器には、一層の結露防止性能が望まれるが、特許文献2の技術は、単に基板収納容器を梱包袋で包んだものであるため、外気温の変化に対し、十分に対応できない虞もある。したがって、より確実に結露を防ぐ技術が求められる。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、梱包・開梱の作業を容易に行うことができ、しかも、外気温が変化しても基板が汚染することを防止できる基板収納容器及び基板収納容器用梱包体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口を塞ぐ蓋体とからなる基板収納容器において、前記容器本体の壁及び前記蓋体の壁のうち、少なくとも一部の壁の外面に、この外面を覆う断熱壁を設けたことを特徴とする。
【0013】
上記発明は、断熱壁の熱伝導率を0.4W/(m・K)以下としたことを特徴とする。
上記発明は、断熱壁に低吸水層を設けたことを特徴とする。
上記発明は、断熱壁の内部に空隙を設けたことを特徴とする。
【0014】
上記発明は、基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口を塞ぐ蓋体とからなる基板収納容器の輸送に供する梱包体であって、前記基板収納容器を囲う壁のうち、少なくとも一部の壁を断熱壁としたことを特徴とする。
【0015】
上記発明は、梱包体を構成する断熱壁の熱伝導率を0.4W/(m・K)以下としたことを特徴とする。
上記発明は、梱包体を構成する断熱壁に低吸水層を設けたことを特徴とする。
上記発明は、梱包体を構成する断熱壁の内部に空隙を設けたことを特徴とする。
【0016】
本発明は、基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口を塞ぐ蓋体とからなる基板収納容器において、前記容器本体の壁及び蓋体の壁のうち、少なくとも一部の壁を、内部に空隙を設けた断熱壁としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、梱包・開梱作業を容易に行うことができ、しかも、外気温が変化しても基板が汚染することを防止できる基板収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る基板収納容器の斜視図である。
【図2】基板収納容器を背面から見た斜視図である。
【図3】断熱材の取付け例を示す断面図である。
【図4】断熱壁の作用を説明する図である。
【図5】第2実施形態に係る梱包体の断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】第3実施形態に係る梱包体の断面図である。
【図8】第4実施形態に係る梱包体の断面図である。
【図9】第5実施形態に係る梱包体の断面図である。
【図10】第6実施形態に係る梱包体の断面図である。
【図11】第7実施形態の基板収納容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0020】
先ず、本発明に係る第1実施形態を図1、図2に基づいて説明する。
図1に示すように、基板収納容器1は、半導体ウェーハ等の基板2を収納する容器である。この基板収納容器1は、前側に開口3を有するいわゆるフロントオープンボックスタイプの容器本体4と、この容器本体4の前側開口3を閉鎖し得る蓋体5と、断熱壁(図2、符号31〜36)と、を備える。なお、断熱壁については後述する。
【0021】
容器本体4は、上記フロントオープンボックスタイプに成形すべく、基板2よりも大きい底壁6と、この底壁6の上方に位置されて底壁6に対向される上壁7と、これら上壁7と底壁6との後部間を上下に連結する背面壁(図2、符号8)と、底壁6と上壁7の左右両側部間を上下に連結する左右一対の側壁9と、を備えるように成形されており、左右一対の側壁9と上壁7と底壁6とは、前側開口3を正面視横長形状に区画する。この容器本体4における左右一対の側壁9の間隔は、前後方向(図1中、X)中間位置よりもやや後方位置部分を基準として、後側領域が前側領域よりも短くされており、その両者間領域における各側壁9は、後方に向かうに従って左右の両側壁9の間隔が徐々に狭まるように傾斜する。この側壁9部分は、開口3の後方領域に臨んで基板2等の進入規制壁10を構成する。
【0022】
なお、容器本体4の底壁6には容器本体4を加工装置に位置決めするためのボトムプレート11と位置決め部材が設けられ、容器本体4の上壁7には、搬送用のロボティックフランジ12が取付けられる。
【0023】
蓋体5は、皿状の蓋体本体13と、この蓋体本体13の開口部を閉鎖するように取付けられる表面プレート14と、を有し、その内部には、蓋体5を容器本体4に係止する施錠機構15が備えられる。この施錠機構15は、回転部材16と、この回転部材16の回転によって長手方向に移動がなされる連結バー17と、この連結バー17の先端に設けられる係止部18と、によって構成される。表面プレート14には、回転部材16と対向する部分において操作孔19が形成されており、その操作孔19を介して施錠機構15を操作することができる。また、蓋体本体13の側面全周にはガスケット部材20が備えられており、そのガスケット部材20は、蓋体5が開口3を閉鎖する際、容器本体4の開口3周縁部との間のシール性を確保する。
【0024】
蓋体5の裏面には、基板2の蓋体側周縁を保持するリテーナ21が設けられる。リテーナ21は、矩形状の枠体22と、この枠体22から短冊状に分岐されて基板2側に張り出す弾性片23とを備えて構成される。弾性片23には基板2と接触する断面がVあるいはU字状をした保持溝24が形成される。弾性片23は、片持ち状に形成する他、連結して両持ち状に形成したり、中央に別の保持部をさらに追加したりすることもできる。
【0025】
容器本体4の両側壁9の内面には、複数組の一対の支持部材25(図では片側の支持部材のみを示す)がそれぞれ設けられる。容器本体4の両側壁9の外面には、グリップ26が設けられる。各組の支持部材25は、開口3からやや容器本体4内に入った位置から進入規制壁10までの範囲で、互いに横方向(図1中、Y)内方に向けて水平に張り出しつつ、前後方向(図1中、X)に延びており、そのような各組における支持部材25は、上下方向に所定の間隔を隔てて配置される。この所定の間隔としては、薄板状の基板2が例えば直径300mm、厚さ775μmの場合は、10mmに設定される。
【0026】
容器本体4や蓋体5は、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどの合成樹脂から形成することができる。また、これらの樹脂に、カーボンパウダー、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどの適量を添加して導電性を付与することもできる。
【0027】
図2に示すように、背面壁8の中央部には、透明な覗き窓27が設けられる。この覗き窓27は、基板の収納枚数に対応した目盛27aが設けられており、二色成形等により容器本体4に形成される。この覗き窓27により、容器本体4の内部が外部から視覚的に観察・把握できる。そして、基板収納容器1は、断熱壁31、32、33を備える。
【0028】
これら断熱壁31〜33は、外気温の変化が容器本体4の内部に伝わることを防ぐ断熱材であり、それぞれ外形が長方形に形成される。断熱壁31は、容器本体4の上壁7の上面を覆うように設けられ、断熱壁32、33は、左右の側壁9、9の外面を覆うように設けられる。上壁7の外面は、容器外面の中でも比較的広い面であり、外気温の変化の影響を受け易いため、上壁7に断熱壁31を設けることは、結露を防止する上で有効な手段である。また、側壁9は、基板に直接触れる支持部材(図1、符号25)を内面に備えており、外気温の変化を基板に伝え易い壁である。このため、少なくとも側壁9には、断熱壁32、33を設けることが望ましい。
【0029】
断熱壁31〜33は、例えば、断熱壁31を上壁7に取付け、この断熱壁31の左右の端部のうち、一方の端部に断熱壁32を取付け、他方の端部に断熱壁33を取付ける。このようにして3枚の断熱壁31〜33を容器本体4に設けることができる。さらに、容器本体4の蓋体(図1、符号5)側を覆う断熱壁34、背面壁8を覆う断熱壁35、そして底壁6及びボトムプレート11を覆う断熱壁36を追加することもできる。
【0030】
これら断熱壁31〜36は、個別の板部材で形成しておき、容器本体4に個別に取付けたり、複数の断熱壁を組立て、この組立て品を容器本体4に取付けたりすることができる。断熱壁31〜36の容器本体4への取付けは、接着、溶着、ビス止めなどから選択可能であるが、手段は任意である。また、断熱壁31〜36の端部同士の取付けは、接着、溶着、ビス止めの他、あり溝などスライド構造や係合構造でもよく、手段は任意である。
【0031】
図3は、断熱壁の取付け例を示す図である。この取付け例では、上記3枚の断熱壁31〜33のうち断熱壁31の内面の一部に、ロボティックフランジ12のフランジ部12aを上下から挟むような溝部31aを形成しておき、この溝31aをスライドさせてフランジ部12aに嵌合させる。また、断熱壁31と左右2枚の断熱壁32、33とは、断熱壁31の両端部に形成した溝部31bに、断熱壁32、33の突出部32a、33aを嵌合させることで取付け可能である。なお、断熱壁31〜33はロボティックフランジ12に限らず、マニュアルハンドルなど、側壁9に設けられるリブを利用して嵌合させても良い。
【0032】
次に、断熱壁31〜36の材質及び熱伝導率について説明する。
断熱壁31〜36は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどの合成樹脂、あるいは、発泡ポリオレフィン、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタンなどの発泡樹脂から形成することができる。
【0033】
また、断熱壁31〜36は、基板収納容器1の主要部(容器本体4、蓋体5)を構成する材料よりも熱伝導率が小さい材料から選択することが好ましく、熱伝導率が0.4W/(m・K)以下である材料が好ましい。
【0034】
ここで、容器本体4、蓋体5を構成する個々の材料の熱伝導率に着目する。容器本体4、蓋体5を構成する代表的な熱可塑性樹脂の熱伝導率は、以下の通りである。
【0035】
ポリカーボネートやポリエーテルイミドでは、熱伝導率が0.19〜0.22W/(m・K)程度であり、また部品として使用されることの多いポリエーテルエーテルケトンでは、熱伝導率が0.29〜0.38W/(m・K)であり、ポリブチレンテレフタレートでは、熱伝導率が0.25〜0.27W/(m・K)である。
【0036】
仮に、断熱壁31〜36の熱伝導率が、容器本体4や蓋体5の構成材料の熱伝導率よりも大きい場合、容器本体4や蓋体5における伝熱を十分に緩和できなくなる。このため、断熱壁31〜36の熱伝導率は、上記容器本体4や蓋体5の構成材料の熱伝導率と同程度又はこれより小さく設定することが好ましい。すなわち、断熱壁31〜36は、熱伝導率が0.4W/(m・K)以下の材料から選択することが好ましい。
【0037】
例えば、上記発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタンなどの発泡材料を用いて断熱壁31〜36を形成する場合、断熱壁31〜36の熱伝導率は、容器本体4や蓋体5の構成材料よりも一桁少ない領域とすることが更に好ましく、0.018〜0.045W/(m・K)の範囲が有効である。
【0038】
なお、複数枚の断熱壁を重ねて、容器本体4や蓋体5に設けることもできる。この場合、熱伝導率の異なる断熱壁を用い、容器本体4や蓋体5から離れる方向(外方)に行くに従って、熱伝導率が小さくなるように複数の断熱壁を順次並べることが有効である。このように断熱壁を配置すれば、容器本体4へ伝わる外気温の変化を確実に遮断することができる。
【0039】
以上に述べた第1実施形態の作用・効果を説明する。
仮に、断熱壁が無い場合を考える。航空機による輸送や寒冷地での陸送において、例えば、外気の温度が低下すると、基板収納容器1の外面が冷やされる。基板収納容器1の外面が冷やされると、基板収納容器1の内部の温度も低下していく。このとき、基板2は、容器本体4や蓋体5を通じて冷やされることになり、基板に結露が生ずる虞がある。
【0040】
この点、本実施形態では、容器本体4の上壁7、側壁9、底壁6、背面壁8、蓋体4の外面のうち、少なくとも一部の壁の外面に、断熱壁31〜36を設けたので、これら断熱壁31〜36の作用により、容器本体4の外側と内側の間において、熱伝導が抑制される。結果、基板2に結露が生ずることを効果的に防止できる。
【0041】
図4に示すように、断熱壁が無い場合、外気温の変化が側壁9、支持部材25を通じて、基板2に伝わり易いが、側壁9に断熱壁32を設けると、外の冷気が断熱壁32によって遮断される(矢印(1))。結果、基板2上での結露発生を効果的に防ぐことができる。
【0042】
また、断熱壁31〜36を容器本体4、蓋体5に設けたので、梱包・開梱作業において、従来のように基板収納容器を梱包袋に出し入れする必要はなく、取り扱う資材の数が増えることもない。
【0043】
したがって、梱包・開梱作業を容易に行うことができ、しかも、外気温が変化しても基板2が汚染することを防止できる。
【0044】
続いて、第2実施形態について説明する。
図2に示したように断熱壁31〜36を箱型に構成すると、これらの断熱壁31〜36は、梱包体として、基板収納容器の輸送に供することができる。このような基板収納容器用梱包体を、本発明に係る第2実施形態として図5及び図6に基づいて説明する。
【0045】
図5に示すように、第2実施形態に係る梱包体40は、合計6枚の断熱壁31〜36で構成される箱型の包装体であり、基板収納容器1Aを収納する。基板収納容器1Aは、第1実施形態の基板収納容器(図2、符号1)から断熱壁を除いた構成であり、容器本体及び蓋体の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を流用して説明を省略する。
【0046】
基板収納容器1Aは、例えば、蓋体5を上に向け、背面壁8を下に向けた姿勢で収納される。なお、符号51は段ボール等の外装材であり、基板収納容器1Aを梱包体40に入れ、梱包体40をさらに外装材51に入れて輸送することができる。
【0047】
断熱壁31、断熱壁34〜36は、それぞれ、上壁7、蓋体5、背面壁8、ボトムプレート11を覆う。基板収納容器1Aの出し入れは、例えば、1枚の断熱壁(例えば、断熱壁34)を他の断熱壁に対して着脱自在又は開閉自在にすることで行うことができる。
【0048】
図6に示すように、断熱壁32、33は、ボトムプレート11及びグリップ26に近接して配置され、側壁9を覆う。梱包体40の構造は、基板収納容器1Aを単に収納する構成、あるいは、基板収納容器1Aに取付ける構成のいずれでもよい。基板収納容器1Aに取付ける場合、断熱壁31〜36は、第1実施形態と同様に、容器本体4に個別に取付けたり、組立て品を容器本体4に取付けたりすることができる。断熱壁31〜36の容器本体4への取付けは、接着、溶着、ビス止めなどから選択可能であるが、手段は任意である。また、断熱壁31〜36の端部同士の取付けは、接着、溶着、ビス止めの他、あり溝などスライド構造や係合構造でもよく、手段は任意である。なお、梱包体40の全体を断熱壁にする構成の他、梱包体40の一部の壁又は複数の壁を選択的に断熱壁とすることもできる。
【0049】
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用・効果に加え、梱包体40自体の壁を断熱壁31〜36としたので、梱包・開梱作業において、作業性を一層高めることができる。
【0050】
次に、第3実施形態に係る梱包体を図7に基づいて説明する。なお、図7において、外装材(図5、符号51)は、図示を省略する(以降の図8〜図10についても同様)。
【0051】
図7に示すように、第3実施形態に係る梱包体40Aは、第2実施形態の梱包体40の基本構成において、断熱壁31〜36の内部に空隙を設けたものである。ここで、空隙を設けた断熱壁とは、中空部を有する層や、発泡層あるいは微発泡層をいう。このような断熱壁31〜36は、例えば、窒素ガス等を利用したガスアシスト成形により中空部を形成したり、発泡材料を用いて押出成形、射出成形、RIM成形により発泡層を形成したりすることで得る。また、微発泡層は、二酸化炭素を使用した超臨界ガス成形により、形成することができる。
【0052】
超臨界ガス成形は、超臨界状態のガスの定量供給機から二酸化炭素を成形ユニットへ供給する成形法であり、1μm〜100μmの空孔を有する微発泡状態の壁面を備えた断熱壁31〜36を形成することができる。
【0053】
この第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の作用・効果に加え、断熱壁31〜36の内部に空隙があるので、断熱効果が高まり、結露防止性能を一層高めることができる。
【0054】
次に、第4実施形態に係る梱包体を図8に基づいて説明する。
図8に示すように、第4実施形態に係る梱包体40Bは、第3実施形態の梱包体40Aの基本構成において、断熱壁31〜36の内側に基板収納容器1Aの外面形状に沿って緩衝材52、53を配置したものである。断熱壁31〜36を発泡材料で形成する場合、断熱壁31〜36の内側に緩衝材52、53を予め形成することもできる。例えば、発泡ポリウレタン樹脂などにより断熱壁31〜36を発泡成形する際、同時に基板収納容器1Aと向き合う面を基板収納容器1Aの外面形状に沿って、発泡成形させることにより、断熱壁31〜36の内側に緩衝材52、53を予め形成することができる。
【0055】
この第4実施形態では、第3実施形態と同様の作用・効果に加え、発泡材料で断熱壁31〜36と緩衝材52、53を一体成形することで、輸送時における梱包体40Bの緩衝性能を高めることができる。
【0056】
次に、第5実施形態に係る梱包体を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、第4実施形態に係る梱包体40Cは、第2実施形態の梱包体40の基本構成において、断熱壁31〜36の外側部分に、水分の透過を抑制する低吸水層41を設けたものである。低吸水層41は、シクロオレフィン樹脂や液晶ポリマーなどの低吸水性の樹脂や、熱可塑性エラストマーやゴム材料などから形成できる。低吸水層41は、断熱壁に接着したり、溶着したり、嵌合係止したり、低吸水樹脂塗料をコーティングしたり、塗布したりすることで形成することができる。
【0057】
この第5実施形態によれば、第2実施形態と同様の作用・効果に加え、低吸水層41の作用により、容器本体4や蓋体5に吸収される水分量を減らすことができる。結果、結露の発生をより確実に防止することができる。また、断熱壁31〜36と低吸水層41からなる多層構造とすることで、断熱効果が高まり、結露防止性能を一層高めることができる。
【0058】
次に、第6実施形態に係る梱包体を図10に基づいて説明する。
図10に示すように、第6実施形態に係る梱包体40Dは、第2実施形態の梱包体40の基本構成において、断熱壁31〜36の中間層として、水分の透過を抑制する低吸水層41を設けたものである。低吸水層41の構成・効果は、第5実施形態と同様である。
【0059】
なお、低吸水層41は、無機酸化物からなる蒸着層とすることもできる。無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化錫、酸化マグネシウム、あるいはこれらの混合物を使用することができる。これらの無機酸化物の層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法などにより、断熱壁に形成することができる。アルミニウムなど金属系の材料を用いる場合は、外気と直接接触しない断熱壁の内側や、中間部に低吸水層を形成することが好ましい。この場合、断熱効果を損なうことなく、低吸水のバリア層を設けることができる。このように、低吸水層41を形成する位置は、用途に応じ、断熱壁の外側、内側、中間層など、任意である。
【0060】
次に、第7実施形態に係る基板収納容器を図11に基づいて説明する。
図11に示すように、第7実施形態に係る基板収納容器1Bは、第1実施形態の基板収納容器1の基本構成において、蓋体5Bの壁を断熱壁37とし、容器本体4Bの壁(底壁6B、上壁7B、背面壁8B、側壁9B)を断熱壁38としたものである。これら断熱壁37、38は、内部に空隙を有した断熱材であり、外気温の変化が容器本体4Bの内部に伝わることを防ぐ。すなわち、断熱壁37、38は、第3実施形態に係る断熱壁(図7、符号31〜36)と同一の材質であり、中空部を有する層や、発泡層あるいは微発泡層で構成される。例えば、断熱壁37、38は、ガスアシスト成形や超臨界ガス成形により、中空や微発泡の層として形成することができる。また、コーティングや塗料の塗布、蒸着による薄膜形成等を利用して、低吸水層(図9、符号41)を断熱壁37、38の表面に形成することもできる。
【0061】
以上の第7実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用・効果に加え、容器本体4B自体あるいは蓋体5B自体を断熱壁37、38としたので、断熱部品が一切不要になる。よって、必然的に、輸送資材のコストが削減できることに加え、梱包・開梱の作業性も格段に良くなる。
【0062】
なお、第1実施形態に係る断熱壁の材質・熱伝導率は、第2〜第7実施形態に係る断熱壁にも適用可能である。また、第3〜第6実施形態に係る空隙や低吸水層を含む断熱壁は、第1実施形態に係る断熱壁、第7実施形態に係る断熱壁(容器本体の壁、蓋体の壁)にも適用可能である。また、第1、第3〜第7実施形態に係る構成に外装材(図5、符号51)を付加することもできる。
【0063】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1B 基板収納容器
2 基板
3 開口
4、4B 容器本体
5、5B 蓋体
6、6B 底壁
7、7B 上壁
8、8B 背面壁
9、9B 側壁
31〜38 断熱壁
40、40A〜40D 梱包体
41 低吸水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口を塞ぐ蓋体とからなる基板収納容器において、
前記容器本体の壁及び前記蓋体の壁のうち、少なくとも一部の壁の外面に、この外面を覆う断熱壁を設けたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記断熱壁の熱伝導率を0.4W/(m・K)以下としたことを特徴とする請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記断熱壁に低吸水層を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記断熱壁の内部に空隙を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の基板収納容器。
【請求項5】
基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口を塞ぐ蓋体とからなる基板収納容器の輸送に供する梱包体であって、
前記基板収納容器を囲う壁のうち、少なくとも一部の壁を断熱壁としたことを特徴とする基板収納容器用梱包体。
【請求項6】
前記断熱壁の熱伝導率を0.4W/(m・K)以下としたことを特徴とする請求項5記載の基板収納容器用梱包体。
【請求項7】
前記断熱壁に低吸水層を設けたことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の基板収納容器用梱包体。
【請求項8】
前記断熱壁の内部に空隙を設けたことを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1項記載の基板収納容器用梱包体。
【請求項9】
基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口を塞ぐ蓋体とからなる基板収納容器において、
前記容器本体の壁及び蓋体の壁のうち、少なくとも一部の壁を、内部に空隙を設けた断熱壁としたことを特徴とする基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−240703(P2012−240703A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112112(P2011−112112)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】