基板収納容器

【課題】撓んだ弾性片と隣接する他の弾性片との干渉を抑制し、基板のがたつきや摺れ、損傷、汚染を防ぐことのできる基板収納容器を提供する。
【解決手段】複数枚の半導体ウェーハWを整列収納可能な容器本体10と、容器本体10に着脱自在に嵌合されて複数枚の半導体ウェーハWを被覆・保護する蓋体20と、容器本体10と蓋体20の間に介在されて各半導体ウェーハWを保持するリテーナ30とを備える。リテーナ30を、蓋体20の天井内面から容器本体10に整列収納された半導体ウェーハW方向に伸長し、複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片31と、各弾性片31の先端部に形成されて半導体ウェーハWの周縁部上端を保持する保持溝片34と、弾性片31と保持溝片34の少なくともいずれか一方に形成される干渉回避面とから構成し、干渉回避面により、隣接する複数の保持溝片34同士の干渉を回避する。
【解決手段】複数枚の半導体ウェーハWを整列収納可能な容器本体10と、容器本体10に着脱自在に嵌合されて複数枚の半導体ウェーハWを被覆・保護する蓋体20と、容器本体10と蓋体20の間に介在されて各半導体ウェーハWを保持するリテーナ30とを備える。リテーナ30を、蓋体20の天井内面から容器本体10に整列収納された半導体ウェーハW方向に伸長し、複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片31と、各弾性片31の先端部に形成されて半導体ウェーハWの周縁部上端を保持する保持溝片34と、弾性片31と保持溝片34の少なくともいずれか一方に形成される干渉回避面とから構成し、干渉回避面により、隣接する複数の保持溝片34同士の干渉を回避する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやマスクガラス等を収納して加工、搬送、輸送される基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、図示しないが、垂直に起立した複数枚の半導体ウェーハを整列収納可能な容器本体と、この容器本体の開口した上部に着脱自在に嵌合されて複数枚の半導体ウェーハを被覆する蓋体と、これら容器本体と蓋体との間に介在されて各半導体ウェーハを保持するリテーナとを備えて構成され、薄く脆い半導体ウェーハを汚染や損傷から保護する。
【0003】
リテーナは、蓋体の天井内面から容器本体に整列収納された半導体ウェーハ方向に伸長し、複数枚の半導体ウェーハの整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片と、各弾性片の先端部に一体形成されて半導体ウェーハの周縁部上端を保持する保持溝とから形成され、基板収納容器の搬送時や輸送時に半導体ウェーハのがたつきや摺れを防止し、これらがたつきや摺れに伴うパーティクルの発生を抑制してクリーン化に資するよう機能する(特許文献1、2、3、4参照)。
【特許文献1】特開2005‐5396号公報
【特許文献2】特開2000‐281171号公報
【特許文献3】特公平7‐66939号公報
【特許文献4】特開2003‐258079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における基板収納容器は、以上のように蓋体の天井に複数の弾性片が単に配設され、各弾性片や保持溝の半導体ウェーハと非接触の裏面側が略直角に角張っているので、リテーナの弾性片が半導体ウェーハを保持溝を介し保持すると、弾性片が斜め上方に撓んで隣接する他の弾性片に嵌合して干渉することがある。
【0005】
この干渉の結果、容器本体から蓋体が取り外されると、撓んだ弾性片が隣接する弾性片に干渉したままの状態で元の位置に復帰しなかったり、半導体ウェーハの保持に支障を来たし、半導体ウェーハのがたつきや摺れ、損傷、汚染を招くという問題が生じる。この問題は、半導体ウェーハの収納枚数が少なく、半導体ウェーハを保持した弾性片と半導体ウェーハを保持しない弾性片とが隣接した場合に顕著に現れる。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、撓んだ弾性片と隣接する他の弾性片との干渉を抑制し、基板のがたつきや摺れ、損傷、汚染を防ぐことのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、複数枚の基板を整列収納可能な容器本体と蓋体との間に、基板を保持するリテーナを介在したものであって、
リテーナは、蓋体の内側から容器本体に収納される基板方向に伸び、複数枚の基板の整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片と、弾性片に形成されて基板の周縁部を保持する保持溝片と、これら弾性片と保持溝片の少なくともいずれか一方に形成される干渉回避面とを含み、この干渉回避面により、隣接する複数の弾性片及び又は保持溝片同士の干渉を回避するようにしたことを特徴としている。
【0008】
なお、容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその内部には少なくとも上部の開口したカセットを着脱自在に嵌め入れ、このカセットの両側壁の内面に、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成することができる。
また、容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその両側壁の内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成することができる。
【0009】
また、基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列し、各弾性片を蓋体の内面から突出させてその先端部には保持溝片を形成し、これら弾性片と保持溝片とを略半円弧形に曲げて基板の幅方向外側に向けることができる。
【0010】
また、容器本体を正面の開口した略箱形に形成してその両側壁の内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成し、
基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列して取付板に取り付け、この取付板を蓋体の内面に設け、各弾性片の先端部に保持溝片を形成することも可能である。
【0011】
また、弾性片の隣接する他の弾性片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の弾性片を位置合わせすることも可能である。
【0012】
また、保持溝片の隣接する他の保持溝片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の保持溝片を位置合わせすることも可能である。
さらに、干渉回避面を110°〜175°の鈍角で傾斜させても良い。
さらにまた、干渉回避面を135°〜160°の鈍角で傾斜させても良い。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも半導体ウェーハ(口径150mm、200mm、300mm、450mmタイプ等)、液晶基板、ガラス基板、化合物ウェーハ、カーボンウェーハ、マスクガラス等が含まれる。容器本体は、複数枚の半導体ウェーハを直接整列収納するものでも良いし、カセットを介し間接的に整列収納するものでも良い。
【0014】
蓋体とリテーナとは、一体構成でも良いし、着脱自在の別体構成でも良い。保持溝片は、弾性片の先端部に形成される凹んだガイド溝部と、このガイド溝部に凹み形成され、ガイド溝部の斜面に案内されてきた基板の周縁部を保持する最深溝部とを備えると良い。さらに、干渉回避面は、弾性片、保持溝片、弾性片及び保持溝片の干渉しやすい領域に選択的に形成される。この干渉回避面は、隣接する複数の弾性片及び/又は保持溝片同士の干渉を回避することができるのであれば、傾斜面、C面、R面、湾曲面を特に問うものではない。
【0015】
本発明によれば、基板収納容器に基板を収納する場合には、基板を収納した容器本体に蓋体を嵌め合わせ、基板の周縁部にリテーナの弾性片を保持溝片を介して嵌めれば、このリテーナの弾性片が撓み、基板を位置決めしながら適切に収納することができる。この際、撓んだ弾性片と隣接する弾性片とが相互に干渉しようとすることがあるが、弾性片の干渉回避面が接触せずに干渉を回避するので、例え繰り返し使用しても、隣接する弾性片や保持溝片同士が干渉し合うことがない。したがって、容器本体から蓋体が取り外されても、撓んだ弾性片を元の位置に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撓んだ弾性片と隣接する他の弾性片との干渉を抑制し、基板のがたつきや摺れ、損傷、汚染を防ぐことができるという効果がある。
また、容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその内部には少なくとも上部の開口したカセットを着脱自在に嵌め入れ、このカセットの両側壁の内面に、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成すれば、例え容器本体が汚れていても、基板を二重構造に収納するので、基板のクリーン化を確保することができる。
【0017】
また、基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列し、各弾性片を蓋体の内面から突出させてその先端部には保持溝片を形成し、これら弾性片と保持溝片とを略半円弧形に曲げて基板の幅方向外側に向ければ、基板の周縁部に保持溝片を略点接触、又は短く線接触させることができ、基板と保持溝片との接触点の移動方向を弾性片の整列方向以外の方向に向けることができる。したがって、保持溝片の接触部分以外が隣接する保持溝片方向に動いて接触するのを回避することができるので、基板の摺れや汚染を防止することができる。
【0018】
さらに、干渉回避面を110°〜175°の鈍角で傾斜させれば、撓んだ弾性片が隣接する他の弾性片に干渉するのを防いだり、位置ずれした基板を良好に位置補正することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図5に示すように、複数枚の半導体ウェーハWをカセット1を介し整列収納可能な容器本体10と、この容器本体10の開口した上部にシールガスケットを介し着脱自在に嵌合されて複数枚の半導体ウェーハWを密封状態に被覆・保護する蓋体20と、これら容器本体10と蓋体20との間に介在されて各半導体ウェーハWを弾発的に保持するリテーナ30とを備えている。
【0020】
複数枚の半導体ウェーハWは、例えば13枚、25枚、あるいは26枚の枚数でカセット1に整列収納され、縦に起立した状態でカセット1の前後方向(図2の奥方向)に一列に並んで配列される。各半導体ウェーハWは、例えば薄く丸くスライスされた口径150mmのタイプからなり、周縁部の一部分に位置合わせ用のオリフラが選択的に形成される。
【0021】
カセット1、容器本体10、蓋体20、リテーナ30は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる成形材料を使用して射出成形される。これらの成形材料の中でも半導体ウェーハWを視認して把握する観点から、半透明のポリプロピレンや透明のポリカーボネートの選択が好ましい。
【0022】
カセット1は、図1や図2に示すように、半導体ウェーハWの直径以上の間隔をおいて相対向する左右一対の側壁2と、この一対の側壁2の前端部間に架設して連結される正面略H字形の正面板3と、一対の側壁2の後端部間に架設して連結される背面板4とを備えて半透明に形成され、容器本体10内に上方から着脱自在に嵌合して収納される。このカセット1は、上下部がそれぞれ開口した略角筒形に成形され、開口した広い上部が半導体ウェーハW用の出し入れ口5とされる。
【0023】
各側壁2は、上方から下方に向かうに従い徐々に内側に湾曲する断面略く字形に屈曲形成され、内面には、略櫛歯形で先細りのティース6が所定のピッチで前後方向に複数並設されており、この複数のティース6の間が半導体ウェーハW挿入用の整列支持溝7に区画形成される。
【0024】
容器本体10は、図1や図2に示すように、上部の開口した半透明のトップオープンボックスに形成され、内部両側には、カセット1の両側壁2の湾曲した下部に隙間をおいて対向する一対の対向部11が配設されており、外装用の外箱として機能する。この容器本体10は、開口した上部周縁に気密性を維持するエンドレスのシールガスケットが嵌合され、両側壁の上部には、外方向に凹んだ蓋体20用の係止溝12がそれぞれ形成される。シールガスケットは、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等を使用して弾性の平面略枠形に成形される。
【0025】
蓋体20は、図1ないし図3に示すように、中空で半透明の断面略ハット形あるいは断面略逆U字形に形成され、両側部には、容器本体10の係止溝12に係止する可撓性の係止片21がそれぞれ一体形成されており、カセット1や複数枚の半導体ウェーハWの略上半分を被覆・保護するよう機能する。
【0026】
リテーナ30は、図2ないし図5に示すように、蓋体20の天井内面から容器本体10の半導体ウェーハW方向に伸長し、複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片31と、各弾性片31に形成されて半導体ウェーハWの周縁部上端を保持する保持溝片34と、各弾性片31と保持溝片34に形成される複数の干渉回避面37とを備え、蓋体20の天井内面の中央部付近に一体成形される。
【0027】
複数の弾性片31は、図2や図3に示すように、略八字形を呈して半導体ウェーハWの周縁部上端に間隔をおいて対向する左右一対の弾性片31を備え、この一対の弾性片31が複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に所定のピッチで配列される。各弾性片31は、細長い弾性の線条に形成され、蓋体20の天井内面に一体形成されてその撓み量の大きい自由端部である先端部の表面に保持溝片34が一体形成されており、これら弾性片31と保持溝片34とが略半円弧形に湾曲して半導体ウェーハWの径方向外側に指向する。
【0028】
弾性片31の隣接する他の保持溝片34に対向する両対向面のうち、一方の対向面の保持溝片34側には、ガイド機能を有する凹部32が、他方の対向面の保持溝片34側には、凹部32に近接する凸部33がそれぞれ形成され、これらの凹部32と凸部33とが対向して隣接する複数の弾性片31や保持溝片34を位置合わせし、保持溝片34に半導体ウェーハWの周縁部上端を適切に嵌合保持させるよう機能する。
【0029】
各保持溝片34は、図4や図5に示すように、弾性片31の先端部に一体形成される断面略U字形、略V字形、又は断面略へ字形のガイド溝部35と、このガイド溝部35の中央に凹み形成され、ガイド溝部35の斜面に案内されてきた半導体ウェーハWの周縁部上端を嵌合保持する断面略半円形の最深溝部36とを備えて形成される。
【0030】
干渉回避面37は、各弾性片31から保持溝片34に亘る凹部32と凸部33のコーナ部がそれぞれ厚さ方向に斜めに切り欠かれることにより傾斜形成され、隣接する複数の弾性片31や保持溝片34同士の干渉を回避するよう機能する。この干渉回避面37は、110°〜175°、好ましくは135°〜160°の鈍角で傾斜し、凹部32と凸部33のコーナ部の他、その近傍部にも適宜形成される。
【0031】
干渉回避面37の傾斜角度が110°〜175°の範囲なのは、110°未満の角度の場合には、撓んだ弾性片31が隣接する弾性片31に嵌合して干渉するのを防ぐことができないおそれがあるからである。逆に、175°を超える場合には、位置ずれした半導体ウェーハWを確実に位置補正することができないからである。干渉回避面37の傾斜角度は、135°〜160°の好適な範囲であれば、撓んだ弾性片31が隣接する弾性片31に嵌合しても、弾性片31を滑動させて嵌合を防止することができ、しかも、位置ずれした半導体ウェーハWを確実に位置補正することができる。
【0032】
上記において、基板収納容器に半導体ウェーハWを適切に収納する場合には、半導体ウェーハWを収納した容器本体10に蓋体20を上方から嵌合し、半導体ウェーハWの周縁部上端にリテーナ30の弾性片31を保持溝片34を介して嵌合させれば、このリテーナ30の弾性片31が蓋体20の天井内面側に撓み、半導体ウェーハWに保持力を作用させ、位置決めしつつ適切に収納することができる。
【0033】
この際、弾性片31や保持溝片34が上方向だけではなく、配列方向にも撓みながら隣接する弾性片31や保持溝片34に嵌合することがあるが、弾性片31の傾いた干渉回避面37が接触せずに嵌合を回避するので、例え蓋体20を繰り返し使用しても、隣接する弾性片31や保持溝片34同士が干渉し合うことがない。したがって、容器本体10から蓋体20が取り外されても、撓んだ弾性片31を元の位置に確実に復帰させることができ、これにより、半導体ウェーハWの適切な保持に支障を来たしたり、半導体ウェーハWのがたつきや回転に伴う摺れ、損傷、汚染等を招くのを抑制防止することができる。
【0034】
また、各弾性片31の干渉回避面37が接触せずに嵌合を回避するので、複数の弾性片31間のピッチを広く確保して嵌合を回避する必要が全くなく、簡易な構成で弾性片31の低ピッチ化を容易に図ることができる。また、蓋体20の天井内面にリテーナ30を一体形成するので、部品点数の削減や洗浄性の向上を図ることができる。
【0035】
また、各弾性片31と保持溝片34とを略半円弧形に湾曲させて半導体ウェーハWの半径方向外側に向けるので、半導体ウェーハWの周縁部上端に保持溝片34を点接触、又は短く線接触させることができ、半導体ウェーハWと保持溝片34との接触点の移動方向を垂直方向に向けることが可能になる。したがって、半導体ウェーハWを収納する際に弾性片31や保持溝片34が湾曲半径の小さくなる上方向(図2の上方向)に撓み、保持溝片34の接触部分以外が隣接する保持溝片34方向に動いて接触するのを回避することができるので、半導体ウェーハWの摺れや汚染の防止が大いに期待できる。
【0036】
次に、図6は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、弾性片31の撓み量の大きい先端部の両対向面に傾斜面ではなく、角張っていないC面を形成することにより、複数の干渉回避面37を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、干渉回避面37の形状の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0037】
次に、図7は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、弾性片31の先端部を含む全対向面に傾斜面ではなく、角張っていないC面を形成することにより、複数の干渉回避面37を形成するようにしている。
【0038】
干渉回避面37は、弾性片31の全対向面以外にも、図8に太線で示す弾性片31の領域であれば、適宜形成することができる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、干渉回避面37の位置や形状の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0039】
次に、図9は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、保持溝片34の表面に傾斜面ではなく、R面や湾曲面を適宜形成することにより、滑らかな複数の干渉回避面37を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、干渉回避面37の位置や形状の多様化が期待できる。
【0040】
次に、図10ないし図12は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体10Aを正面の開口したフロントオープンボックスに形成してその両側壁の内面上下方向には、口径300mmタイプの半導体ウェーハW用の整列支持溝7Aをそれぞれ並べて形成し、半導体ウェーハWの周縁部前端を対向保持するリテーナ30の左右一対の弾性片31を複数枚の半導体ウェーハWの整列方向、換言すれば、上下方向に配列して取付板40内に一体形成するとともに、この取付板40を蓋体20Aの内面である裏面の中央部に着脱自在に装着し、各弾性片31を蓋体20Aの内面側から容器本体10Aの背面側に斜めにやや突出させてその先端部にはブロック形の保持溝片34を一体的に膨出形成するようにしている。
【0041】
蓋体20Aは、蓋体20とは異なり、横長の矩形に成形され、容器本体10Aに対する嵌合時に施錠する施錠機構が内蔵される。また、取付板40は、所定の成形材料を使用して縦長の枠形に成形され、内部両側には、複数の弾性片31が上下方向に並べて配列される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0042】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、トップオープンボックスタイプの基板収納容器の他、フロントオープンボックスタイプの基板収納容器にもリテーナ30を使用して汎用性を向上させることができるのは明らかである。
【0043】
なお、上記実施形態では上下部の開口したカセット1を使用して半導体ウェーハWを下方から突き上げ、半導体ウェーハWの取り出しの自動化に資するようにしたが、何らこれに限定されるものではなく、上部のみ開口したカセット1を使用しても良い。また、蓋体20の周縁部にエンドレスのシールガスケットを嵌合しても良い。また、容器本体10の開口部に着脱自在の蓋体20を粘着テープを介し嵌合しても良い。
【0044】
また、上記実施形態では弾性片31から保持溝片34にかけて凹部32、凸部33、干渉回避面37を配設したが、上記と同様の作用効果が期待できるのであれば、凹部32、凸部33、干渉回避面37の位置等を適宜変更することができる。例えば、各弾性片31の隣接する弾性片31に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部32を、他方の対向面に凸部33をそれぞれ形成し、これらの対向する凹部32と凸部33のコーナ部やその近傍をそれぞれ傾斜させて干渉回避面37とし、凹部32と凸部33を用いて隣接する複数の弾性片31や半導体ウェーハWを位置合わせしても良い。
【0045】
同様に、各保持溝片34の隣接する保持溝片34に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部32を、他方の対向面に凸部33をそれぞれ形成し、これらの対向する凹部32と凸部33のコーナ部やその近傍をそれぞれ傾斜させて干渉回避面37とし、凹部32と凸部33を用いて隣接する複数の保持溝片34や半導体ウェーハWを位置合わせしても良い。さらに、凹部32や凸部33の数は、必要に応じ、適宜増加させることができる。さらにまた、蓋体20Aの裏面の中央部に取付板40を一体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の内面を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における複数の弾性片と保持溝片とを模式的に示す側面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における複数の弾性片と保持溝片とを模式的に示す表面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態を模式的に示す裏面側からの説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態における複数の弾性片と保持溝片とを模式的に示す裏面側からの説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態における弾性片と保持溝片とを模式的に示す説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の第4の実施形態における弾性片と保持溝片とを模式的に示す側面説明図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の第5の実施形態における容器本体と蓋体とを模式的に示す斜視説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の第5の実施形態における容器本体と蓋体とを模式的に示す断面説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の第5の実施形態における弾性片と保持溝片とを模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 カセット
2 側壁
6 ティース
7 整列支持溝
7A 整列支持溝
10 容器本体
10A 容器本体
20 蓋体
20A 蓋体
30 リテーナ
31 弾性片
32 凹部
33 凸部
34 保持溝片
35 ガイド溝部
36 最深溝部
37 干渉回避面
40 取付板
W 半導体ウェーハ(基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやマスクガラス等を収納して加工、搬送、輸送される基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、図示しないが、垂直に起立した複数枚の半導体ウェーハを整列収納可能な容器本体と、この容器本体の開口した上部に着脱自在に嵌合されて複数枚の半導体ウェーハを被覆する蓋体と、これら容器本体と蓋体との間に介在されて各半導体ウェーハを保持するリテーナとを備えて構成され、薄く脆い半導体ウェーハを汚染や損傷から保護する。
【0003】
リテーナは、蓋体の天井内面から容器本体に整列収納された半導体ウェーハ方向に伸長し、複数枚の半導体ウェーハの整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片と、各弾性片の先端部に一体形成されて半導体ウェーハの周縁部上端を保持する保持溝とから形成され、基板収納容器の搬送時や輸送時に半導体ウェーハのがたつきや摺れを防止し、これらがたつきや摺れに伴うパーティクルの発生を抑制してクリーン化に資するよう機能する(特許文献1、2、3、4参照)。
【特許文献1】特開2005‐5396号公報
【特許文献2】特開2000‐281171号公報
【特許文献3】特公平7‐66939号公報
【特許文献4】特開2003‐258079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における基板収納容器は、以上のように蓋体の天井に複数の弾性片が単に配設され、各弾性片や保持溝の半導体ウェーハと非接触の裏面側が略直角に角張っているので、リテーナの弾性片が半導体ウェーハを保持溝を介し保持すると、弾性片が斜め上方に撓んで隣接する他の弾性片に嵌合して干渉することがある。
【0005】
この干渉の結果、容器本体から蓋体が取り外されると、撓んだ弾性片が隣接する弾性片に干渉したままの状態で元の位置に復帰しなかったり、半導体ウェーハの保持に支障を来たし、半導体ウェーハのがたつきや摺れ、損傷、汚染を招くという問題が生じる。この問題は、半導体ウェーハの収納枚数が少なく、半導体ウェーハを保持した弾性片と半導体ウェーハを保持しない弾性片とが隣接した場合に顕著に現れる。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、撓んだ弾性片と隣接する他の弾性片との干渉を抑制し、基板のがたつきや摺れ、損傷、汚染を防ぐことのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、複数枚の基板を整列収納可能な容器本体と蓋体との間に、基板を保持するリテーナを介在したものであって、
リテーナは、蓋体の内側から容器本体に収納される基板方向に伸び、複数枚の基板の整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片と、弾性片に形成されて基板の周縁部を保持する保持溝片と、これら弾性片と保持溝片の少なくともいずれか一方に形成される干渉回避面とを含み、この干渉回避面により、隣接する複数の弾性片及び又は保持溝片同士の干渉を回避するようにしたことを特徴としている。
【0008】
なお、容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその内部には少なくとも上部の開口したカセットを着脱自在に嵌め入れ、このカセットの両側壁の内面に、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成することができる。
また、容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその両側壁の内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成することができる。
【0009】
また、基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列し、各弾性片を蓋体の内面から突出させてその先端部には保持溝片を形成し、これら弾性片と保持溝片とを略半円弧形に曲げて基板の幅方向外側に向けることができる。
【0010】
また、容器本体を正面の開口した略箱形に形成してその両側壁の内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成し、
基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列して取付板に取り付け、この取付板を蓋体の内面に設け、各弾性片の先端部に保持溝片を形成することも可能である。
【0011】
また、弾性片の隣接する他の弾性片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の弾性片を位置合わせすることも可能である。
【0012】
また、保持溝片の隣接する他の保持溝片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の保持溝片を位置合わせすることも可能である。
さらに、干渉回避面を110°〜175°の鈍角で傾斜させても良い。
さらにまた、干渉回避面を135°〜160°の鈍角で傾斜させても良い。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも半導体ウェーハ(口径150mm、200mm、300mm、450mmタイプ等)、液晶基板、ガラス基板、化合物ウェーハ、カーボンウェーハ、マスクガラス等が含まれる。容器本体は、複数枚の半導体ウェーハを直接整列収納するものでも良いし、カセットを介し間接的に整列収納するものでも良い。
【0014】
蓋体とリテーナとは、一体構成でも良いし、着脱自在の別体構成でも良い。保持溝片は、弾性片の先端部に形成される凹んだガイド溝部と、このガイド溝部に凹み形成され、ガイド溝部の斜面に案内されてきた基板の周縁部を保持する最深溝部とを備えると良い。さらに、干渉回避面は、弾性片、保持溝片、弾性片及び保持溝片の干渉しやすい領域に選択的に形成される。この干渉回避面は、隣接する複数の弾性片及び/又は保持溝片同士の干渉を回避することができるのであれば、傾斜面、C面、R面、湾曲面を特に問うものではない。
【0015】
本発明によれば、基板収納容器に基板を収納する場合には、基板を収納した容器本体に蓋体を嵌め合わせ、基板の周縁部にリテーナの弾性片を保持溝片を介して嵌めれば、このリテーナの弾性片が撓み、基板を位置決めしながら適切に収納することができる。この際、撓んだ弾性片と隣接する弾性片とが相互に干渉しようとすることがあるが、弾性片の干渉回避面が接触せずに干渉を回避するので、例え繰り返し使用しても、隣接する弾性片や保持溝片同士が干渉し合うことがない。したがって、容器本体から蓋体が取り外されても、撓んだ弾性片を元の位置に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撓んだ弾性片と隣接する他の弾性片との干渉を抑制し、基板のがたつきや摺れ、損傷、汚染を防ぐことができるという効果がある。
また、容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその内部には少なくとも上部の開口したカセットを着脱自在に嵌め入れ、このカセットの両側壁の内面に、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成すれば、例え容器本体が汚れていても、基板を二重構造に収納するので、基板のクリーン化を確保することができる。
【0017】
また、基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列し、各弾性片を蓋体の内面から突出させてその先端部には保持溝片を形成し、これら弾性片と保持溝片とを略半円弧形に曲げて基板の幅方向外側に向ければ、基板の周縁部に保持溝片を略点接触、又は短く線接触させることができ、基板と保持溝片との接触点の移動方向を弾性片の整列方向以外の方向に向けることができる。したがって、保持溝片の接触部分以外が隣接する保持溝片方向に動いて接触するのを回避することができるので、基板の摺れや汚染を防止することができる。
【0018】
さらに、干渉回避面を110°〜175°の鈍角で傾斜させれば、撓んだ弾性片が隣接する他の弾性片に干渉するのを防いだり、位置ずれした基板を良好に位置補正することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図5に示すように、複数枚の半導体ウェーハWをカセット1を介し整列収納可能な容器本体10と、この容器本体10の開口した上部にシールガスケットを介し着脱自在に嵌合されて複数枚の半導体ウェーハWを密封状態に被覆・保護する蓋体20と、これら容器本体10と蓋体20との間に介在されて各半導体ウェーハWを弾発的に保持するリテーナ30とを備えている。
【0020】
複数枚の半導体ウェーハWは、例えば13枚、25枚、あるいは26枚の枚数でカセット1に整列収納され、縦に起立した状態でカセット1の前後方向(図2の奥方向)に一列に並んで配列される。各半導体ウェーハWは、例えば薄く丸くスライスされた口径150mmのタイプからなり、周縁部の一部分に位置合わせ用のオリフラが選択的に形成される。
【0021】
カセット1、容器本体10、蓋体20、リテーナ30は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる成形材料を使用して射出成形される。これらの成形材料の中でも半導体ウェーハWを視認して把握する観点から、半透明のポリプロピレンや透明のポリカーボネートの選択が好ましい。
【0022】
カセット1は、図1や図2に示すように、半導体ウェーハWの直径以上の間隔をおいて相対向する左右一対の側壁2と、この一対の側壁2の前端部間に架設して連結される正面略H字形の正面板3と、一対の側壁2の後端部間に架設して連結される背面板4とを備えて半透明に形成され、容器本体10内に上方から着脱自在に嵌合して収納される。このカセット1は、上下部がそれぞれ開口した略角筒形に成形され、開口した広い上部が半導体ウェーハW用の出し入れ口5とされる。
【0023】
各側壁2は、上方から下方に向かうに従い徐々に内側に湾曲する断面略く字形に屈曲形成され、内面には、略櫛歯形で先細りのティース6が所定のピッチで前後方向に複数並設されており、この複数のティース6の間が半導体ウェーハW挿入用の整列支持溝7に区画形成される。
【0024】
容器本体10は、図1や図2に示すように、上部の開口した半透明のトップオープンボックスに形成され、内部両側には、カセット1の両側壁2の湾曲した下部に隙間をおいて対向する一対の対向部11が配設されており、外装用の外箱として機能する。この容器本体10は、開口した上部周縁に気密性を維持するエンドレスのシールガスケットが嵌合され、両側壁の上部には、外方向に凹んだ蓋体20用の係止溝12がそれぞれ形成される。シールガスケットは、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等を使用して弾性の平面略枠形に成形される。
【0025】
蓋体20は、図1ないし図3に示すように、中空で半透明の断面略ハット形あるいは断面略逆U字形に形成され、両側部には、容器本体10の係止溝12に係止する可撓性の係止片21がそれぞれ一体形成されており、カセット1や複数枚の半導体ウェーハWの略上半分を被覆・保護するよう機能する。
【0026】
リテーナ30は、図2ないし図5に示すように、蓋体20の天井内面から容器本体10の半導体ウェーハW方向に伸長し、複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片31と、各弾性片31に形成されて半導体ウェーハWの周縁部上端を保持する保持溝片34と、各弾性片31と保持溝片34に形成される複数の干渉回避面37とを備え、蓋体20の天井内面の中央部付近に一体成形される。
【0027】
複数の弾性片31は、図2や図3に示すように、略八字形を呈して半導体ウェーハWの周縁部上端に間隔をおいて対向する左右一対の弾性片31を備え、この一対の弾性片31が複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に所定のピッチで配列される。各弾性片31は、細長い弾性の線条に形成され、蓋体20の天井内面に一体形成されてその撓み量の大きい自由端部である先端部の表面に保持溝片34が一体形成されており、これら弾性片31と保持溝片34とが略半円弧形に湾曲して半導体ウェーハWの径方向外側に指向する。
【0028】
弾性片31の隣接する他の保持溝片34に対向する両対向面のうち、一方の対向面の保持溝片34側には、ガイド機能を有する凹部32が、他方の対向面の保持溝片34側には、凹部32に近接する凸部33がそれぞれ形成され、これらの凹部32と凸部33とが対向して隣接する複数の弾性片31や保持溝片34を位置合わせし、保持溝片34に半導体ウェーハWの周縁部上端を適切に嵌合保持させるよう機能する。
【0029】
各保持溝片34は、図4や図5に示すように、弾性片31の先端部に一体形成される断面略U字形、略V字形、又は断面略へ字形のガイド溝部35と、このガイド溝部35の中央に凹み形成され、ガイド溝部35の斜面に案内されてきた半導体ウェーハWの周縁部上端を嵌合保持する断面略半円形の最深溝部36とを備えて形成される。
【0030】
干渉回避面37は、各弾性片31から保持溝片34に亘る凹部32と凸部33のコーナ部がそれぞれ厚さ方向に斜めに切り欠かれることにより傾斜形成され、隣接する複数の弾性片31や保持溝片34同士の干渉を回避するよう機能する。この干渉回避面37は、110°〜175°、好ましくは135°〜160°の鈍角で傾斜し、凹部32と凸部33のコーナ部の他、その近傍部にも適宜形成される。
【0031】
干渉回避面37の傾斜角度が110°〜175°の範囲なのは、110°未満の角度の場合には、撓んだ弾性片31が隣接する弾性片31に嵌合して干渉するのを防ぐことができないおそれがあるからである。逆に、175°を超える場合には、位置ずれした半導体ウェーハWを確実に位置補正することができないからである。干渉回避面37の傾斜角度は、135°〜160°の好適な範囲であれば、撓んだ弾性片31が隣接する弾性片31に嵌合しても、弾性片31を滑動させて嵌合を防止することができ、しかも、位置ずれした半導体ウェーハWを確実に位置補正することができる。
【0032】
上記において、基板収納容器に半導体ウェーハWを適切に収納する場合には、半導体ウェーハWを収納した容器本体10に蓋体20を上方から嵌合し、半導体ウェーハWの周縁部上端にリテーナ30の弾性片31を保持溝片34を介して嵌合させれば、このリテーナ30の弾性片31が蓋体20の天井内面側に撓み、半導体ウェーハWに保持力を作用させ、位置決めしつつ適切に収納することができる。
【0033】
この際、弾性片31や保持溝片34が上方向だけではなく、配列方向にも撓みながら隣接する弾性片31や保持溝片34に嵌合することがあるが、弾性片31の傾いた干渉回避面37が接触せずに嵌合を回避するので、例え蓋体20を繰り返し使用しても、隣接する弾性片31や保持溝片34同士が干渉し合うことがない。したがって、容器本体10から蓋体20が取り外されても、撓んだ弾性片31を元の位置に確実に復帰させることができ、これにより、半導体ウェーハWの適切な保持に支障を来たしたり、半導体ウェーハWのがたつきや回転に伴う摺れ、損傷、汚染等を招くのを抑制防止することができる。
【0034】
また、各弾性片31の干渉回避面37が接触せずに嵌合を回避するので、複数の弾性片31間のピッチを広く確保して嵌合を回避する必要が全くなく、簡易な構成で弾性片31の低ピッチ化を容易に図ることができる。また、蓋体20の天井内面にリテーナ30を一体形成するので、部品点数の削減や洗浄性の向上を図ることができる。
【0035】
また、各弾性片31と保持溝片34とを略半円弧形に湾曲させて半導体ウェーハWの半径方向外側に向けるので、半導体ウェーハWの周縁部上端に保持溝片34を点接触、又は短く線接触させることができ、半導体ウェーハWと保持溝片34との接触点の移動方向を垂直方向に向けることが可能になる。したがって、半導体ウェーハWを収納する際に弾性片31や保持溝片34が湾曲半径の小さくなる上方向(図2の上方向)に撓み、保持溝片34の接触部分以外が隣接する保持溝片34方向に動いて接触するのを回避することができるので、半導体ウェーハWの摺れや汚染の防止が大いに期待できる。
【0036】
次に、図6は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、弾性片31の撓み量の大きい先端部の両対向面に傾斜面ではなく、角張っていないC面を形成することにより、複数の干渉回避面37を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、干渉回避面37の形状の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0037】
次に、図7は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、弾性片31の先端部を含む全対向面に傾斜面ではなく、角張っていないC面を形成することにより、複数の干渉回避面37を形成するようにしている。
【0038】
干渉回避面37は、弾性片31の全対向面以外にも、図8に太線で示す弾性片31の領域であれば、適宜形成することができる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、干渉回避面37の位置や形状の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0039】
次に、図9は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、保持溝片34の表面に傾斜面ではなく、R面や湾曲面を適宜形成することにより、滑らかな複数の干渉回避面37を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、干渉回避面37の位置や形状の多様化が期待できる。
【0040】
次に、図10ないし図12は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体10Aを正面の開口したフロントオープンボックスに形成してその両側壁の内面上下方向には、口径300mmタイプの半導体ウェーハW用の整列支持溝7Aをそれぞれ並べて形成し、半導体ウェーハWの周縁部前端を対向保持するリテーナ30の左右一対の弾性片31を複数枚の半導体ウェーハWの整列方向、換言すれば、上下方向に配列して取付板40内に一体形成するとともに、この取付板40を蓋体20Aの内面である裏面の中央部に着脱自在に装着し、各弾性片31を蓋体20Aの内面側から容器本体10Aの背面側に斜めにやや突出させてその先端部にはブロック形の保持溝片34を一体的に膨出形成するようにしている。
【0041】
蓋体20Aは、蓋体20とは異なり、横長の矩形に成形され、容器本体10Aに対する嵌合時に施錠する施錠機構が内蔵される。また、取付板40は、所定の成形材料を使用して縦長の枠形に成形され、内部両側には、複数の弾性片31が上下方向に並べて配列される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0042】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、トップオープンボックスタイプの基板収納容器の他、フロントオープンボックスタイプの基板収納容器にもリテーナ30を使用して汎用性を向上させることができるのは明らかである。
【0043】
なお、上記実施形態では上下部の開口したカセット1を使用して半導体ウェーハWを下方から突き上げ、半導体ウェーハWの取り出しの自動化に資するようにしたが、何らこれに限定されるものではなく、上部のみ開口したカセット1を使用しても良い。また、蓋体20の周縁部にエンドレスのシールガスケットを嵌合しても良い。また、容器本体10の開口部に着脱自在の蓋体20を粘着テープを介し嵌合しても良い。
【0044】
また、上記実施形態では弾性片31から保持溝片34にかけて凹部32、凸部33、干渉回避面37を配設したが、上記と同様の作用効果が期待できるのであれば、凹部32、凸部33、干渉回避面37の位置等を適宜変更することができる。例えば、各弾性片31の隣接する弾性片31に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部32を、他方の対向面に凸部33をそれぞれ形成し、これらの対向する凹部32と凸部33のコーナ部やその近傍をそれぞれ傾斜させて干渉回避面37とし、凹部32と凸部33を用いて隣接する複数の弾性片31や半導体ウェーハWを位置合わせしても良い。
【0045】
同様に、各保持溝片34の隣接する保持溝片34に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部32を、他方の対向面に凸部33をそれぞれ形成し、これらの対向する凹部32と凸部33のコーナ部やその近傍をそれぞれ傾斜させて干渉回避面37とし、凹部32と凸部33を用いて隣接する複数の保持溝片34や半導体ウェーハWを位置合わせしても良い。さらに、凹部32や凸部33の数は、必要に応じ、適宜増加させることができる。さらにまた、蓋体20Aの裏面の中央部に取付板40を一体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の内面を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における複数の弾性片と保持溝片とを模式的に示す側面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における複数の弾性片と保持溝片とを模式的に示す表面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態を模式的に示す裏面側からの説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態における複数の弾性片と保持溝片とを模式的に示す裏面側からの説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態における弾性片と保持溝片とを模式的に示す説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の第4の実施形態における弾性片と保持溝片とを模式的に示す側面説明図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の第5の実施形態における容器本体と蓋体とを模式的に示す斜視説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の第5の実施形態における容器本体と蓋体とを模式的に示す断面説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の第5の実施形態における弾性片と保持溝片とを模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 カセット
2 側壁
6 ティース
7 整列支持溝
7A 整列支持溝
10 容器本体
10A 容器本体
20 蓋体
20A 蓋体
30 リテーナ
31 弾性片
32 凹部
33 凸部
34 保持溝片
35 ガイド溝部
36 最深溝部
37 干渉回避面
40 取付板
W 半導体ウェーハ(基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を整列収納可能な容器本体と蓋体との間に、基板を保持するリテーナを介在した基板収納容器であって、
リテーナは、蓋体の内側から容器本体に収納される基板方向に伸び、複数枚の基板の整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片と、弾性片に形成されて基板の周縁部を保持する保持溝片と、これら弾性片と保持溝片の少なくともいずれか一方に形成される干渉回避面とを含み、この干渉回避面により、隣接する複数の弾性片及び又は保持溝片同士の干渉を回避するようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその内部には少なくとも上部の開口したカセットを着脱自在に嵌め入れ、このカセットの両側壁の内面に、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列し、各弾性片を蓋体の内面から突出させてその先端部には保持溝片を形成し、これら弾性片と保持溝片とを略半円弧形に曲げて基板の幅方向外側に向けた請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
容器本体を正面の開口した略箱形に形成してその両側壁の内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成し、
基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列して取付板に取り付け、この取付板を蓋体の内面に設け、各弾性片の先端部に保持溝片を形成した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項5】
弾性片の隣接する他の弾性片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の弾性片を位置合わせするようにした請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器。
【請求項6】
保持溝片の隣接する他の保持溝片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の保持溝片を位置合わせするようにした請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器。
【請求項7】
干渉回避面を110°〜175°の鈍角で傾斜させた請求項1ないし6いずれかに記載の基板収納容器。
【請求項1】
複数枚の基板を整列収納可能な容器本体と蓋体との間に、基板を保持するリテーナを介在した基板収納容器であって、
リテーナは、蓋体の内側から容器本体に収納される基板方向に伸び、複数枚の基板の整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片と、弾性片に形成されて基板の周縁部を保持する保持溝片と、これら弾性片と保持溝片の少なくともいずれか一方に形成される干渉回避面とを含み、この干渉回避面により、隣接する複数の弾性片及び又は保持溝片同士の干渉を回避するようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその内部には少なくとも上部の開口したカセットを着脱自在に嵌め入れ、このカセットの両側壁の内面に、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列し、各弾性片を蓋体の内面から突出させてその先端部には保持溝片を形成し、これら弾性片と保持溝片とを略半円弧形に曲げて基板の幅方向外側に向けた請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
容器本体を正面の開口した略箱形に形成してその両側壁の内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成し、
基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列して取付板に取り付け、この取付板を蓋体の内面に設け、各弾性片の先端部に保持溝片を形成した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項5】
弾性片の隣接する他の弾性片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の弾性片を位置合わせするようにした請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器。
【請求項6】
保持溝片の隣接する他の保持溝片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の保持溝片を位置合わせするようにした請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器。
【請求項7】
干渉回避面を110°〜175°の鈍角で傾斜させた請求項1ないし6いずれかに記載の基板収納容器。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


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【図8】


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【図10】


【図11】


【図12】


【公開番号】特開2008−118000(P2008−118000A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301270(P2006−301270)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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