説明

基板収納容器

【課題】容器本体内の汚染防止を図ると共に、係合手段の点検、補修、洗浄の簡素化を図った基板収納容器を提供すること。
【解決手段】蓋体4を容器本体2に係合させる係合手段6を、容器本体2の外面に露出させる。これにより、係合手段6を蓋体4に内蔵する必要性がないので、蓋体4内に汚染物が溜まることがなく、汚染物が容器本体2内に侵入する虞がなくなる。このため、容器本体2内の汚染を防止することができる。また、係合手段6が外面に露出しているので、係合手段6の点検、補修、洗浄が容易となる。また、蓋体4に係合手段6を内蔵する必要がないので、係合手段6を収容する空間を設ける必要がなく、蓋体4の薄型化を図ることがきる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ、マスクガラス等の精密基板などを収納し、輸送、搬送、保管などに使用される基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、精密基板を収納する容器本体と、容器本体の開口部を閉鎖する蓋体とを備えている。蓋体には、蓋体を容器本体に係止するためのラッチ機構が内蔵されている。容器本体の開口部は、基板収納容器の例えば底部に設けられている。また、精密基板は、精密基板を水平方向に配列させるための溝部が内部に形成されたカセットに収容されている。そして、カセットは、蓋体に載せられて容器本体内に収容される。このように、蓋体にカセットを載せていたので、精密基板の重量により蓋体が撓んでしまうことがあり、蓋体の撓みを防止することが可能な基板収納容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、容器本体の正面側に開口部を設け、精密基板を水平方向に配列するための溝部を容器本体の内面に形成して、カセットを不要とした基板収納容器が知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特表平4−505234号公報
【特許文献2】特表2002−514829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の基板収納容器では、蓋体を係止させるラッチ機構が、蓋体に内蔵されているため、ラッチ機構の部品同士の摺動や擦れ等によって発生したパーティクル等の汚染物が蓋体内にたまってしまうという問題があった。これにより、蓋体内の汚染物が容器本体内に侵入して、基板収納容器内を汚染する虞があった。また、従来の蓋体は、係止爪を出没させるための小さな開口部しかないため、蓋体内の洗浄が難しく、さらに、乾燥時間が長くなるという問題があった。また、蓋体に内蔵されたラッチ機構の点検、補修(例えば部品交換)等を行うには、複数のねじを取り外して蓋体を分解する必要があった。これにより、点検、補修作業を省略するために蓋体を交換することがあり、不経済であった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、容器本体内の汚染防止を図ると共に、係合手段の点検、補修、洗浄の簡素化を図った基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による基板収納容器は、開口部を有し基板を収納する容器本体と、開口部を閉鎖する蓋体と、蓋体を容器本体に係合させる係合手段とを備える基板収納容器において、係合手段は、容器本体の外面側に露出されていることを特徴としている。
【0006】
このような基板収納容器によれば、蓋体を容器本体に係合させる係合手段が、容器本体の外面に露出されている。これにより、従前のように係合手段が蓋体に内蔵されていないため、蓋体内に汚染物が溜まることがなくなり、容器本体内の汚染を防止することができる。また、係合手段が外面に露出されているので、蓋体を分解することなく係合手段の点検、補修、洗浄を行うことができる。また、蓋体に、係合手段を内蔵する必要がないので、蓋体内に係合手段を収容する空間を設ける必要がなく、蓋体の薄型化を図ることができる。
【0007】
ここで、上記作用を奏する好ましい構成としては、具体的には、係合手段は、容器本体の側壁の外面に設置され、蓋体の周縁に形成された凹部に対して進退可能とされ凹部に係止される係止爪を備えること構成が挙げられる。これにより、蓋体の周縁に形成された凹部に係止爪を挿入させて係止させ、蓋体を容器本体に確実に係合させることができる。
【0008】
また、係合手段は、係止爪を後退させて係止爪による係止を解除する付勢手段と、側壁の外面に回転可能に支持され係止爪を凹部に向かって移動させるカム部材と、を備えることが好ましい。これにより、付勢手段によって、係止爪を後退させて、係止状態を解除することができる。カム部材を回転させて係止爪を凹部に向かって移動させ、係止爪を蓋体に形成された凹部に係止させることができる。
【0009】
また、係合手段は、一方の端部に係止爪が設けられ側壁の外面に揺動可能に支持された揺動部材と、揺動部材を付勢して揺動部材を揺動させる弾性部材と、を備えることが好ましい。これにより、容器本体の外面で揺動可能に支持された揺動部材を、弾性部材によって付勢することで、揺動部材が揺動し揺動部材に形成された係止爪が蓋体の凹部に挿入される。このため、係止爪を蓋体に係止することができる。
【0010】
また、容器本体は、開口部を囲繞し外方に突出するフランジ部を有し、フランジ部には、貫通穴が形成され、係合手段は、蓋体から外方に突出し貫通穴に挿入される挿入部材と、挿入部材の先端部に回転可能に支持され、貫通穴に挿入可能な第一の回転位置及び貫通穴の周縁に係止可能な第二の回転位置に変更可能とされた係止片とを備えることが好ましい。これにより、係止片を貫通穴に挿入可能な第一の回転位置に設定して、挿入部材を貫通穴に挿入した後に、係止片を回転させて、係止片を貫通穴の周縁に係止可能な第二の回転位置に変更し、蓋体を容器本体に係合させることができる。
【0011】
また、開口部は、容器本体の底部に形成され、蓋体の外面には、蓋体の位置決めを行う位置決め部が設けられていることが好ましい。これにより、位置決め部によって、蓋体を精度良く位置決めすることで、基板収納容器を相手側の装置(例えば基板を加工する加工装置など)に対して、精度良く配置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容器本体内の汚染防止が図れると共に、係合手段の点検、補修、洗浄の簡素化が図られた基板収納容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による基板収納容器の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本発明の第一実施形態に係る基板収納容器を示す分解斜視図、図2は、図1に示す基板収納容器の底面図、図3は、図1中のIII−III線に沿う断面図であり、基板収納容器が所定の装置に位置決めされた状態を示す断面図、図4は、図1中の係止機構の施錠状態を示す断面図、図5は、図1中の係止機構の施錠状態を側方から示す部分断面図、図6は、図1中の係止機構の開錠状態を示す断面図、図7は、図1中の係止機構の開錠状態を側方から示す部分断面図である。
【0014】
図1に示す基板収納容器1は、例えば口径が450mmの半導体ウェハ等の基板(不図示)を1又は複数枚(例えば6,13,25枚)収容し、輸送、搬送、保管などに使用される収納容器である。この基板収納容器1は、基板を収納する透明なコンテナ部材(容器本体)2、このコンテナ部材2に設けられた開口部3(図2参照)を閉鎖するドア部材(蓋体)4、コンテナ部材2とドア部材4との間をシールするガスケット5、ドア部材4をコンテナ部材2に係止させる係止機構(係合手段)6を備えている。
【0015】
この基板収納容器1は、例えば、熱可塑性樹脂やこれらのアロイによって形成され、熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂に、導電剤や各種帯電防止剤を添加しても良い。導電剤としては、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維、金属酸化物、導電性ポリマー等が挙げられる。帯電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系等の帯電防止剤が挙げられる。
【0016】
また、熱可塑性樹脂に紫外線吸収剤を添加しても良く、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ビンダードアミン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。また、剛性を高めるための添加剤を熱可塑性樹脂に添加しても良く、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0017】
また、基板収納容器1は、セラミックや、例えばジュラルミン、チタン合金等の金属材料によって形成することができる。このようにして、基板収納容器1の軽量化を図っても良い。
【0018】
さらに、基板収納容器1の内面及び外面、係止機構6の作動部分、コンテナ部材2及びドア部材4のシール面等の特定部位に、酸素及び水分の透過させない気体バリアー性フィルムを貼り付けても良い。また、上記特定部位に、金属コーティング、ダイヤモンドライクコーティング、PEEK樹脂コーティング、ふっ素樹脂コーティングを施工しても良く、二酸化チタンなどの光触媒材料をコーティングしても良い。また、上記特定部位に導電塗料などのコーティングを施工することにより、コンテナ部材2の透明性を維持して導電性を付与しても良い。
【0019】
基板収納容器1は箱型を成し、コンテナ部材2の底部に、基板の出し入れに利用される開口部3が形成されたボトムオープンタイプの基板収納容器である。開口部3の形状は、例えば矩形とされている。コンテナ部材2の底部には、開口部3を囲繞して外方に張り出す補強用のリム部7が形成されている。
【0020】
ドア部材4は、開口部3に対応して矩形とされ、コンテナ部材2のリム部7内側に着脱自在に装着される。ドア部材4には、ガスケット5に対応する形状の溝部8が形成され、この溝部8にガスケット5が装着されている。また、ドア部材4の内面4aには、溝部8の内側で上方に突出するリブ9が全周にわたって形成されている。リブ9は、ドア部材4がコンテナ部材2に装着された状態において、図3及び図4に示すように、開口部3を形成するコンテナ部材2の側壁17の内面に沿って配置され、外部からのエアーが侵入したときに、邪魔板となって、パーティクルがコンテナ部材2内へ簡単に侵入してしまうことを防止している。さらに、このリブ9の表面や、リブ9周辺のコンテナ部材2の側壁17の内面にシボ加工を施すなどして粗面に形成したり、微小凹凸面を形成して、ここでパーティクルを捕獲するようにしても良いし、開口部3を形成する壁体17の部分に多孔質のシートや焼結部材を枠状に配置して、パーティクルの侵入を防止しても良い。
【0021】
また、ドア部材4の内面4aには、図1及び図3に示すように、基板を支持する棒状の基板支持部材10が複数本(本実施形態では4本)設置されている。基板支持部材10は、上下方向に延在し、その側面に基板を水平方向に支持するための溝10aが上下方向に複数箇所形成されている。複数の基板支持部材10は所定の位置に配置され、基板は一方の方向から出し入れ可能とされている。これらの基板支持部材10は、ドア部材4とは、別部材によって形成され、ネジ止め、摩擦係合、超音波溶着、熱溶着等によって、ドア部材4の内面4aの所定の位置に固定されている。
【0022】
また、図2及び図3に示すように、ドア部材4の外面4bには、所定の装置(例えば基板を加工する加工装置等)11に対して位置決めを行うための位置決め部12が形成されている。位置決め部12は、3箇所に設置され、Y字状(図2参照)に配置されている。また、位置決め部12には、図3に示すようにV字溝(凹部)12aが形成されている。
【0023】
また、位置決め部12は、ドア部材4の外面4bに形成された凹部に配置され、この凹部から外部に突出しないように形成されることが好ましい。こうすることで、搬送中に位置決め部12を他の物体にぶつけて破損する虞れが低減され、所定の装置11以外に基板収納容器1を載置する場合であっても基板収納容器1の水平性を保つことができ、さらに、基板収納容器1をポリエチレン(PE)、アルミなどの袋に入れて梱包するときに、基板収納容器1の最大外形よりも位置決め部12が突出しないため、袋を破る虞がない。
【0024】
ドア部材4の外面4bに形成された凹部の周囲には、枠状(図2参照)を成す平坦面4dが形成され、この平坦面4dは所定の装置11に対するシール面を構成している。これにより、ドア部材4を開閉操作の際に、ドア部材4の外面に付着したパーティクルが所定の装置11内のよりクリーンな環境中へ移動することを防止している。
【0025】
一方、所定の装置11には、V字溝12aに対応する位置に、球面形状を有する凸部13が設けられている。そして、ドア部材4の位置決め部12を所定の装置11の凸部13に合わせることで、基板収納容器1を位置決めすることができる。なお、所定の装置11には、基板収納容器1を案内する斜面であるガイド面14aが形成されたガイド部材14が互いに対向して配置されている。
【0026】
このようなガイド部材14を設けることにより、天井搬送した基板収納容器1を、高所から所定の装置11に高速で搭載させるときや、作業員が手動で基板収納容器1を所定の装置11へ搭載するときに、位置決め部12が噛み合わなくなってしまうような位置ずれを防止して、精度良く載置することが可能となる。
【0027】
なお、基板収納容器1のリム部7のコーナー部7a(図3参照)において、ガイド部材14のガイド面14aに対応する位置に、ガイド面14aと平行な傾斜面を形成してもよい。このような傾斜面を基板収納容器1に形成することで、基板収納容器1とガイド部材14との摩擦抵抗を低減してスムーズにより位置精度を向上させて基板収納容器1を所定の装置11に搭載することができるとともに、基板収納容器1を所定の装置11に搭載する際の基板収納容器1の傾斜を防止することができる。
【0028】
ここで、ドア部材4の対向する一対の側壁(周縁)4cには、係止凹部16が複数(本実施形態では、2個所ずつ、計4個所)形成されている。この係止凹部16は、図4に示すように、係止機構6の後述する係止爪(係止凸部)15を係止させるものである。
【0029】
係止機構6は、コンテナ部材2の対向する一対の側壁17に複数(本実施形態では、2個所ずつ、計4個所)設置されている。すなわち、係止機構6は、コンテナ部材2の外面側に露出されている。係止機構6は、側壁17に固定され外方に突出する支持ピン18と、この支持ピン18によって回転可能に軸止された回転カム部材19と、係止爪15を有する係止部材20と、この係止部材20を外方に付勢するスプリング(付勢手段)21とを備えている。
【0030】
また、コンテナ部材2のリム部7には、回転カム部材19の一部が挿入される切欠き部7a、この切欠き部7aと連通し係止部材20及びスプリング21を収容する収容空間7bが形成されている。切欠き部7aは、リム部7の上面から上下方向に形成され、収容空間7bは、切欠き部7aの下部からリム部7の内面側に向かって図示左右方向に形成されている。係止凹部16に対向する位置には、係止爪15を出没させる開口7cが設けられている。
【0031】
回転カム部材19は、図5及び図7に示すように円盤状を成し、その中心に支持ピン18を挿通させる貫通穴19aが形成されている。この貫通穴19aを挟んで両側には、回転カム部材19を回転操作する場合に利用される操作ピン(不図示)が挿通される一対の操作穴19bが形成されている。
【0032】
また、回転カム部材19の背面19c(コンテナ部材2の側壁17に対向する面)には、係止部材20を係止凹部16に向けて押圧する突出部(カム面、図4参照)19dが設けられている。この突出部19dは、回転カム部材19の外周の近傍に配置されている。回転カム部材19が回転して、突出部19dが係止部材20に対応する位置(第一の停止位置)に移動すると、突出部19dが係止部材20と当接し、係止部材20が係止凹部16側へ摺動する。
【0033】
また、係止機構6は、回転カム部材19の停止位置を第一の停止位置及び第二の停止位置に規定する停止位置規定手段22を備えている。第一の停止位置は、突出部19dが係止部材20に対応する場所(最下部)に配置される位置であり、第二の停止位置は、第一の停止位置から時計回りに90度回転した位置(図7参照)である。停止位置規定手段22は、回転カム部材19の背面19cから突出する位置規定部22aと、コンテナ部材2の側壁17から回転カム部材19に向かって突出する位置規定ピン(円柱突起)22b,22cとを備えている(なお、図4及び図6では、図の簡略化のため停止位置規定手段22の図示を省略している。)。位置規定ピン22b,22cは、図5及び図7に示すように、同心円上に配置され、位置規定部22aは、回転カム部材19の回転に伴って位置規定ピン22b,22c間を移動する。位置規定部22aが位置規定ピン22bに当接すると、回転カム部材19が第一の停止位置で停止され、位置規定部22aが位置規定ピン22cに当接すると、回転カム部材19が第二の停止位置で停止される。
【0034】
図4及び図6に示すように、係止部材20の先端(図示左側)には、係止爪15が形成され、係止部材20の後端には、スプリング21と当接するつば部20aが形成されている。スプリング21は、係止部材20の外側に挿通され、一方の端部がリム部7の開口7cの周縁部に当接し、他方の端部が係止部材20のつば部20aに当接している。そして、スプリング21は、係止部材20を外方(係止凹部16と反対方向)に付勢している。係止部材20は、回転カム部材19の回転に応じて、係止凹部16に対して進退可能とされ、係止凹部16に係止される。
【0035】
次に、このように構成された基板収納容器1の動作に関し、係止機構6の施錠(係止)状態、係止機構6の開錠(非係止)状態について、図面を参照して説明する。
【0036】
図6及び図7において、回転カム部材19は第二の停止位置で停止され、係止機構6は開錠状態となっている。回転カム部材19が第二の停止位置で停止している状態で、図示されていない一対の操作ピンを回転カム部材19の一対の操作穴19bに挿入し、回転カム部材19を、図7における半時計回りに回転させる。位置規定部22aが移動し、位置規定部22aが位置規定ピン22bに当接すると、回転カム部材19の回転が停止され、回転カム部材19は、図4及び図5に示すように、第一の停止位置に配置されて、係止機構6は施錠状態となる。
【0037】
このとき、回転カム部材19の突出部19dは、係止部材20を押圧している。これにより、係止部材20は、スプリング21の付勢力に抗して、係止凹部16に向かって移動する。係止爪15は、係止凹部16内に挿入されて係止され、ドア部材4はコンテナ部材2に確実に係止される。
【0038】
次に、図4及び図5において、回転カム部材19の一対の操作穴19bに挿入された一対の操作ピンを操作して、回転カム部材19を図5における時計回りに回転させる。位置規定部22aが移動し、位置規定部22aが位置規定ピン22cに当接すると、回転カム部材19の回転が停止され、回転カム部材19は、図6及び図7に示すように、第二の停止位置に配置されて、係止機構6は開錠状態となる。
【0039】
このとき、回転カム部材19の突出部19dは、係止部材20を押圧していない状態となる。これにより、係止部材20は、スプリング21によって付勢され、係止凹部16とは反対方向に移動する。係止爪15は係止凹部16内から後退し、ドア部材4はコンテナ部材2から取外し可能な状態となる。
【0040】
以上のように、第一実施形態に係る基板収納容器1によれば、ドア部材4をコンテナ部材2に係止させる係止機構6がコンテナ部材2の側壁17の外面に設置されている。このため、係止機構6は、コンテナ部材2の外面側に露出されている。これにより、従前のように係止機構6がドア部材4に内蔵されていないため、ドア部材4内に汚染物が溜まることがなくなり、コンテナ部材2内の汚染を防止することができる。また、係止機構6が外面に露出されているので、ドア部材4を分解することなく係止機構6の点検、補修、洗浄を行うことができる。その結果、点検、補修、洗浄等の各種作業を簡素化することができる。なお、係止機構6の側方に、回転カム部材19の貫通穴19aへの操作ピンの挿通を可能とする開口部が形成された着脱自在な保護カバー(不図示)を設けても良い。この保護カバーとしては、シート成形品、プラスチック成形品が挙げられる。また、ドア部材4に、係合手段を内蔵する必要がないので、ドア部材4の薄型化が図られている。
【0041】
また、ドア部材4の底面(外面)4bには、位置決め部12が設けられているので、ドア部材4を位置決めすることで、基板収納容器1を精度良く配置することができる。
【0042】
なお、第一実施形態の基板収納容器1では、係止爪15を後退させる付勢手段をスプリング21としているが、例えば板ばね等、その他の付勢手段を用いてもよい。なお、付勢手段を金属材料によって構成する場合には、表面に樹脂層やその他のコーティング層を設けておくことができる。
【0043】
次に、本発明の第二実施形態の基板収納容器について、図8〜図10を参照しながら説明する。図8は、本発明の第二実施形態に係る基板収納容器を示す分解斜視図、図9は、図8中の係止機構の施錠状態を示す断面図、図10は、図8中の係止機構の開錠状態を示す断面図である。この第二実施形態の基板収納容器31が第一実施形態の基板収納容器1と違う点は、基板を出し入れする開口部3,33の位置が異なる点、係止機構6,36の構成が異なる点である。
【0044】
基板収納容器31は、開口部33が正面側に形成されたコンテナ部材32を有するフロントオープンタイプの基板収納容器である。基板収納容器31は、コンテナ部材32、コンテナ部材32の開口部33を閉鎖するドア部材34、コンテナ部材32とドア部材34との間をシールするガスケット5、ドア部材34をコンテナ部材32に係止させる係止機構36を備えている。
【0045】
コンテナ部材32及びドア部材34の内面には、複数枚の基板を水平方向に支持するための基板支持部(不図示)が設けられている。コンテナ部材32の正面には、開口部33を囲繞して外方に張り出す補強用のリム部37が形成されている。また、ドア部材34の内面34aには、ガスケット5が装着される溝部8が形成され、この溝部8にガスケット5が装着されている。
【0046】
ここで、ドア部材34の対向する一対の側壁(周縁)34cには、係止機構36の後述する係止爪(係止凸部)35が係止される係止凹部16が形成されている。
【0047】
係止機構36は、コンテナ部材32の対向する一対の側壁39に複数(本実施形態では、2個所ずつ、計4個所)設置され、係止機構36は、コンテナ部材32の外面側に露出されている。係止機構36は、側壁39に固定され外方に突出し上下方向に離間して互いに対向する一対の支持板40と、一対の支持板40によって両端が支持され上下方向に延在する支持ピン41と、一方の端部に係止爪35が設けられ支持ピン41に軸止されて揺動可能とされた揺動部材42と、この揺動部材42を付勢して揺動させる板ばね(弾性部材)43とを備えている。
【0048】
また、コンテナ部材32のリム部37には、揺動部材42に対応する切欠き部37aが形成されている。この切欠き部37aは、リム部37を内外に貫通し、係止爪35を係止凹部16に対して出没可能とするものである。
【0049】
揺動部材42は、細長い板状部材であり、一対の支持板40間で水平方向に延在し、長手方向の略中央に貫通穴が形成され、この貫通穴に支持ピン41が挿通されている。揺動部材42の一方の端部42aは、係止凹部16に向かって屈曲されている。屈曲された係止凹部16側の端部に係止爪35が設けられている。揺動部材42の他方の端部42bは、係止機構36を操作するための操作棒によって押圧される被操作部として機能する。
【0050】
板ばね43はU字状に湾曲し、揺動部材42を付勢して係止爪35を係止凹部16に向けて移動させるものである。板ばね43の一方の端部43aは、コンテナ部材32の側壁39に固定された支持部44によって支持され、板ばね43の他方の端部43bは、揺動部材42に固定された支持部45によって支持されている。支持部44,45には、板ばね43の端部43a,43bを挿入するための溝が形成され、この溝に板ばね43の端部43a,43bが挿入されている。
【0051】
次に、このように構成された基板収納容器31の動作に関し、係止機構36の施錠状態及び開錠状態について、図面を参照して説明する。
【0052】
図9において、ドア部材34は、係止機構36によってコンテナ部材32に係止され、コンテナ部材32内は、密閉状態となっている。具体的には、揺動部材42は板ばね43によって付勢され、係止爪35はドア部材34の係止凹部16に係止されている(施錠状態)。
【0053】
係止機構36を開錠するには、揺動部材42の他方の端部42bを、操作棒45によって側方から押圧し、図10示すように、揺動部材42を図示半時計回りに揺動させる。係止爪35は、係止凹部16と反対方向に移動する。係止機構36による係止が解除され、ドア部材34をコンテナ部材32から取外すことができる。
【0054】
図19において、揺動部材42の他端部42bを押圧している操作棒45を、他端部42bと反対方向に移動させると、揺動部材42は、板ばね43によって付勢されて図示時計回りに揺動する。係止爪35は係止凹部16に向かって移動し、図9に示すように、係止凹部16に挿入されて係止される。これにより、係止機構36によって、ドア部材34をコンテナ部材32に係止することができる。
【0055】
このように構成しても第一実施形態の基板収納容器1と同様な作用、効果を奏する。また、揺動部材42の上下方向における両側には、固定板40が設置され、上下方向からの揺動部材42への接触を防止して、揺動部材42の誤作動を防止することができる。
【0056】
なお、第二実施形態の基板収納容器31では、揺動部材42を付勢して揺動させる弾性部材を板ばね43としているが、例えばスプリング等、その他の弾性部材を用いてもよい。
【0057】
次に、本発明の第三実施形態の基板収納容器について、図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、本発明の第三実施形態に係る基板収納容器の係止機構の施錠状態を示す断面図、図12は、図11中の係止機構の開錠状態を示す断面図、図13は、図11中の係止機構の拡大図である。この第三実施形態の基板収納容器51が第一実施形態の基板収納容器1と違う点は、ドア部材4,54をコンテナ部材2,52に係止させる係止機構6,56の構成が異なる点である。
【0058】
基板収納容器51は、開口部3が底部に形成されたコンテナ部材52を有するボトムオープンタイプの基板収納容器である。基板収納容器51は、コンテナ部材52、コンテナ部材52の開口部3を閉鎖するドア部材54、コンテナ部材52とドア部材54との間をシールするガスケット5、ドア部材54をコンテナ部材52に係止させる係止機構56を備えている。
【0059】
コンテナ部材52の底部には、開口部3を囲繞して外方に張り出す補強用のリム部(フランジ部)57が形成されている。また、ドア部材54の内面54aには、ガスケット5が装着される溝部8が形成され、この溝部8にガスケット5が装着されている。
【0060】
ここで、コンテナ部材52のリム部57には、上下方向に貫通する係止穴(貫通穴)58が形成されている。この係止穴58には、係止機構56の後述する挿入部材59及び係止片60が挿入される。
【0061】
係止機構56は、ドア部材54の周縁に複数箇所設置されている。係止機構56は、ドア部材54から突出しリム部57の係止穴58に挿入される挿入部材59と、この挿入部材59の先端で回転可能に支持され係止穴58の周縁に係止可能とされた係止片60とを備えている。そして、係止機構56は、ドア部材54をコンテナ部材52に装着した状態において、コンテナ部材52の外面側に露出されている。
【0062】
挿入部材59は、細長い棒状部材であり、上下方向に延在している。挿入部材59は、ドア部材54の内面54aに固定されている。挿入部材59の先端部59a(図12参照)には、係止片60を回転可能に支持するピン61が設置されている。ピン61は、水平方向(図11及び図12において紙面垂直方向)に延在し、係止片60を上下方向に回転可能とするものである。
【0063】
係止片60は、係止穴58に挿入可能な第一の回転位置(図11参照)と、係止穴58の周縁に係止可能な第二の回転位置(図12参照)に変更可能な構成とされている。図13に示すように、第一の回転位置において、係止片60の水平方向の長さである第一の径D1は、係止穴58の径D3より短く、係止片60の上下方向の長さである第二の径D2は、係止穴58D3より長くなっている。
【0064】
これにより、係止片60を第一の回転位置にすることで、ドア部材54はコンテナ部材52に対して着脱可能となる。係止片60を第一の回転位置に配置してドア部材54をコンテナ部材52に装着し、係止片60が係止穴58から外側に出たところで、係止片60を図11において時計回りに回転させて、図12に示すように第二の回転位置に配置することで、係止片60を係止穴58の周縁に係止させることができ、ドア部材54は、係止機構56によってコンテナ部材54に係止される。
【0065】
このように構成しても、ドア部材54をコンテナ部材52に装着した状態において、係止機構56がコンテナ部材52の外側に配置されて外部に露出されているので、第一実施形態の基板収納容器1と同様な作用、効果を奏する。
【0066】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態において、本発明の基板収納容器を、半導体ウェハを収納するものとして説明しているが、収納物される基板は、半導体ウェハに限定されず、マスクガラスを始めとしたその他の精密基板でもよい。また、収容される基板の大きさは、450mmに限定されず、例えば300mm等その他の大きさでもよい。また、収納枚数も1〜25枚に限らず26枚以上であっても良い。
【0067】
また、上記第一実施形態及び第三実施形態において、係止機構6,56をボトムオープンタイプの基板収納容器に適用しているが、フロントオープンタイプの基板収納容器に適用してもよく、開口部がコンテナ部材の天板に形成されたトップオープンタイプの基板収納容器に係止機構6,56を適用しても良い。また、係止機構の係止爪を付勢する付勢手段としては、磁力や真空力を利用して係止爪を付勢するものであっても良い。さらに、係止爪を形状記憶合金や形状記憶樹脂から形成して形状を変化させることでドア部材の開閉を行ってもよい。
【0068】
また、上記第二実施形態において、係止機構36をフロントオープンタイプの基板収納容器に適用しているが、ボトムオープンタイプやトップオープンタイプの基板収納容器に、係止機構36を適用してもよい。
【0069】
また、上記実施形態において、基板収納容器1,31,51は、基板を水平に配置して収納する構成としているが、基板を収納する方向は、水平に限定されず、垂直やその他の方向に基板を配置して収容してもよい。
【0070】
また、開口部3,33の形状は、矩形でもよく、円形でもよい、開口部を円形とした場合には、シール面における締め付け圧が均一となり、矩形の開口部に比してシール性能を向上させることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、基板収納容器に設けられた位置決め部12を凹部とし、相手側を凸部としているが、図14に示すように、基板収納容器に凸部である位置決め部73を形成し、相手側に凹部である位置決め部72を形成してもよい。なお、位置決め部12,73は、基板収納容器1,31,51と同材質又は別材質から形成して、基板収納容器にネジ止めや摩擦係合させて取り付けても良いし、成形時に一体化しても良い。位置決め部12,73の配置は、Y字状(三角状)に3ヶ所に設けることに限らず、凸状または凹状の半球状部材を基板収納容器の底部に1箇所設けるなど、位置決め部12,73の個数、配置は自由に設定することができる。
【0072】
なお、上記コンテナ部材2,32,52又はドア部材4,34,54に、フィルタ部材を有するバルブ装置(不図示)を設けることで、基板収納容器1,31,51の内外の圧力差を解消することができる。フィルタ部材としては、例えば、分子ろ過フィルタや、ケミカルフィルタ、ブリージングフィルタ等のフィルタ、高分子、金属、セラミック等の多孔質体を保持したフィルタ部材が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第一実施形態に係る基板収納容器を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す基板収納容器の底面図である。
【図3】図1中のIII−III線に沿う断面図であり、基板収納容器が所定の装置に位置決めされた状態を示す断面図である。
【図4】図1中の係止機構の施錠状態を示す断面図である。
【図5】図1中の係止機構の施錠状態を側方から示す部分断面図である。
【図6】図1中の係止機構の開錠状態を示す断面図である。
【図7】図1中の係止機構の開錠状態を側方から示す部分断面図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る基板収納容器を示す分解斜視図である。
【図9】図8中の係止機構の施錠状態を示す断面図である。
【図10】図8中の係止機構の開錠状態を示す断面図である。
【図11】本発明の第三実施形態に係る基板収納容器の係止機構の施錠状態を示す断面図である。
【図12】図11中の係止機構の開錠状態を示す断面図である。
【図13】図11中の係止機構の拡大図である。
【図14】位置決め部の他の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1,31,51…基板収納容器、2,32,52…コンテナ部材(容器本体)、3,33…開口部、4,34,54…ドア部材(蓋体)、4c,34c…ドア部材の側壁(蓋体の周縁)、6,36,56…係止機構(係合手段)、12,73…位置決め部、15,35…係止爪、16…係止凹部、17,39…コンテナ部材の側壁、19…回転カム部材、21…スプリング(付勢手段)、42…揺動部材、43…板ばね(弾性部材)、57…リム部(フランジ部)、58…係止穴(貫通穴)、59…挿入部材、59a…挿入部材の先端部、60…係止片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し基板を収納する容器本体と、前記開口部を閉鎖する蓋体と、前記蓋体を前記容器本体に係合させる係合手段とを備える基板収納容器において、
前記係合手段は、前記容器本体の外面側に露出されていることを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記係合手段は、前記容器本体の側壁の外面に設置され、前記蓋体の周縁に形成された凹部に対して進退可能とされ前記凹部に係止される係止爪を備えることを特徴とする請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記係合手段は、
前記係止爪を後退させて前記係止爪による係止を解除する付勢手段と、
前記側壁の外面に回転可能に支持され前記係止爪を前記凹部に向かって移動させるカム部材と、を備えることを特徴とする請求項2記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記係合手段は、
一方の端部に前記係止爪が設けられ前記側壁の外面に揺動可能に支持された揺動部材と、
前記揺動部材を付勢して前記揺動部材を揺動させる弾性部材と、を備えることを特徴とする請求項2記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記容器本体は、前記開口部を囲繞し外方に突出するフランジ部を有し、
前記フランジ部には、貫通穴が形成され、
前記係合手段は、
前記蓋体から外方に突出し前記貫通穴に挿入される挿入部材と、
前記挿入部材の先端部に回転可能に支持され、前記貫通穴に挿入可能な第一の回転位置及び前記貫通穴の周縁に係止可能な第二の回転位置に変更可能とされた係止片とを備えることを特徴とする請求項1記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記開口部は、前記容器本体の底部に形成され、
前記蓋体の外面には、前記蓋体の位置決めを行う位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−150066(P2008−150066A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338907(P2006−338907)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】