説明

基板収納容器

【課題】ガスケットが長時間容器本体と蓋体の間に介在しても、容器本体にガスケットが貼り付いて蓋体の開放に支障を来たすのを抑制できる基板収納容器を提供する。
【解決手段】2枚の半導体ウェーハを収納する容器本体1と、容器本体1の開口したリムフランジ12を開閉する蓋体20と、蓋体20に取り付けられて容器本体1との間に介在するガスケット40とを備え、ガスケット40を、蓋体20の裏面周縁部に嵌合するエンドレスの取付部と、取付部に形成されて容器本体1のリムフランジ12内に圧接して変形する接触部とから形成し、接触部には、高平滑性、耐磨耗性、耐腐食性、高ガスバリヤ性に優れるダイヤモンドライクカーボン50をコーティングする。ダイヤモンドライクカーボン50をコーティングするので、例えガスケット40が長時間容器本体1と蓋体20の間に介在したとしても、容器本体1内にガスケット40が貼り付くことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等からなる基板を収納する基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の開口した正面部を開閉する蓋体と、この蓋体に装着されて容器本体との間に介在する弾性変形可能なガスケットとを備えて構成されている(特許文献1、2、3参照)。
ガスケットは、所定のエラストマーを含む成形材料を使用して低硬度のエンドレスに成形され、蓋体に嵌合されて容器本体の開口した正面部と蓋体の周縁部との間に介在し、気密性や密閉性を確保するよう機能する。
【特許文献1】特開2006−303261号公報
【特許文献2】特開2005−353898号公報
【特許文献3】特開2001−354249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、ガスケットが柔軟性、気密性、密閉性を確保する観点から低硬度のエンドレスに単に成形されるので、ガスケットが長時間容器本体と蓋体との間に介在すると、容器本体にガスケットが貼り付き、蓋体の開放に支障を来たすという問題がある。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、例えガスケットが長時間容器本体と蓋体との間に介在しても、容器本体にガスケットが貼り付いて蓋体の開放に支障を来たすのを抑制できる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、基板収納用の容器本体の開口部を開閉する蓋体を備え、この蓋体に、容器本体との間に介在する弾性変形可能なガスケットを取り付けたものであって、
ガスケットは、蓋体に取り付けられる取付部と、この取付部に形成されて容器本体の開口部内に接触する接触部とを備え、これら取付部と接触部のうち少なくとも接触部には、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングしたことを特徴としている。
【0006】
なお、容器本体を、三枚以下の基板を収納可能な背の低いフロントオープンボックスタイプとすることができる。
また、蓋体の基板に対向する裏面の周縁部に、ガスケット用の取付溝を形成することができる。
【0007】
また、ガスケットの断面形を略U字形に形成してその両自由端部の長さを相違させ、この両自由端部の内側自由端部よりも外側自由端部を長くし、この外側自由端部の端面を尖らせて接触部とすることもできる。
また、ガスケットの取付部を断面略矩形に形成し、この取付部から断面略U字形の接触部を伸ばしてその湾曲面を容器本体の開口部内に接触させることも可能である。
【0008】
また、ダイヤモンドライクカーボンを複数に分割してコーティングし、この複数のダイヤモンドライクカーボンの間に隙間を形成することも可能である。
さらに、容器本体の背面壁と両側壁のうち少なくとも背面壁にリブフランジを成形し、このリブフランジを容器本体の金型からの脱型時に突出しピンに外側から略対向させることが可能である。
【0009】
さらにまた、容器本体に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構を有し、この施錠機構は、蓋体の内部に支持されて内外方向にスライド可能な一対のプレートと、蓋体両側部の孔に出没可能に支持されてプレートの先端部に連結され、容器本体の開口部内の複数の係止溝に干渉する揺動可能な一対の係止爪と、容器本体の各係止溝に係止爪を干渉させる複数のバネとを備えると良い。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも1、2、3、11、25、26枚の各種ガラス基板、カバーガラス、半導体ウェーハ(口径200mm、300mm、450mm等)、フォトマスク等が含まれる。容器本体は、透明、不透明、半透明、フロントオープンボックスタイプ、トップオープンボックスタイプ等を特に問うものではないが、口径300mmの半導体ウェーハを25、26枚収納する基板収納容器よりも背が低くされる。例えば、口径300mmの半導体ウェーハからなる基板を2枚収納する場合には、6cm以下の高さとされる。
【0011】
蓋体は、透明、不透明、半透明等を特に問うものではない。ガスケットは、エンドレスの線条でも良いし、そうでなくても良い。さらに、ガスケットの取付部からは断面略U字形の接触部が伸ばされることがあるが、ここでいう断面略U字形には、断面略C字形や略J字形、フック形等の類似形が含まれる。
【0012】
本発明によれば、容器本体に対するガスケットの少なくとも接触部に、高平滑性や耐磨耗性等を有するダイヤモンドライクカーボンがコーティングされ、このダイヤモンドライクカーボンが容器本体の開口部内に接触するので、例えガスケットが長時間容器本体と蓋体の間に介在したとしても、容器本体の開口部にガスケットが貼り付いて蓋体の開放に支障を来たすことが少ない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えガスケットが長時間容器本体と蓋体との間に介在したとしても、容器本体にガスケットが貼り付いて蓋体の開放に支障を来たすのを抑制することができるという効果がある。
また、容器本体を、三枚以下の基板を収納可能な背の低いフロントオープンボックスタイプとすれば、LSIメーカ等で半導体ウェーハを短時間で加工処理する際に使用される容器本体の開口部内にガスケットが貼り付き、蓋体の開放に支障を来たすのを防ぐことができる。
【0014】
また、蓋体の基板に対向する裏面の周縁部にガスケット用の取付溝を形成すれば、この取付溝に嵌め入れるだけでガスケットを簡単にセットして位置決めすることができる。したがって、蓋体の裏面周縁部にガスケットを接着剤により接着したりする必要がないので、接着剤の成分に起因する基板の汚染等を有効に防ぐことが可能になる。
【0015】
さらに、ダイヤモンドライクカーボンを複数に分割してコーティングし、この複数のダイヤモンドライクカーボンの間に隙間を形成すれば、ダイヤモンドライクカーボンのコーティング領域が大きな単一の場合に比べ、ダイヤモンドライクカーボンの変形絶対量を低減することができる。この結果、柔軟なガスケットからダイヤモンドライクカーボンが剥がれ落ちるのを抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る基板収納容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図19に示すように、少数枚の半導体ウェーハWを収納する容器本体1と、この容器本体1の開口した正面部を着脱自在に開閉する蓋体20と、この蓋体20に嵌合して容器本体1との間に介在する弾性のガスケット40とを備え、このガスケット40の接触部42に、高平滑性や耐磨耗性に優れるダイヤモンドライクカーボン(DLC)50をコーティングするようにしている。
【0017】
各半導体ウェーハWは、図4に示すように、例えば薄く丸い口径300mmのシリコンタイプからなり、周縁部に位置合わせや識別用のオリフラあるいは平面略半円形のノッチが選択的に形成される。
【0018】
容器本体1は、図1ないし図5、図8、図9に示すように、成形用の金型に所定の樹脂を含む成形材料が射出されることにより、二枚以下の半導体ウェーハWを整列収納する背の低い(例えば、6cm以下)フロントオープンボックスタイプに射出成形され、開口した横長の正面部に同形の蓋体20がエンドレスのガスケット40を介し着脱自在に嵌合される。金型は、図示しない射出成形用のタイプが使用され、射出成形機に装着される。この金型には図3に示すように、型開きと共に突き出る往復動可能な複数の突出しピン2が突き出し板に固定された状態で内蔵される。
【0019】
容器本体1の成形材料の所定の樹脂としては、例えば力学的性質、耐熱性、寸法安定性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。これらの樹脂には、必要に応じ、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、帯電防止剤、難燃剤等が適宜添加される。
【0020】
容器本体1の内部、具体的には相対向する両側壁の内面には図4や図5に示すように、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対のティース3が対設され、この一対のティース3が上下方向に間隔をおいて配列される。各ティース3は、容器本体1の前後方向に細長い板に成形され、容器本体1の背面壁寄りの末端部が先細りとされる。また、容器本体1の外周面には図1ないし図3、図7、図8、図9に示すように、容器本体1の機械的強度や剛性を高めるリブフランジ4が成形され、背面壁側のリブフランジ4が容器本体1の脱型時に突出しピン2に対向する。
【0021】
リブフランジ4は、容器本体1の背面壁と両側壁とに外側から一体成形され、変形した平面略U字形を呈する。背面壁のリブフランジ4は、例えば細長い肉厚の板形に形成され、両側部5が容器本体1の背面壁両側部の略中央に水平に位置しており、中央部が容器本体1の背面壁中央部の下方に位置する。また、背面壁のリブフランジ4の両側部は、容器本体1の正面部が下方に傾かないよう金属製のバランスウェイト6が下方からそれぞれ後付けで螺着され、容器本体1の金型からの脱型時に複数の突出しピン2に外側から対向するよう機能する。
【0022】
背面壁のリブフランジ4の中央部は、略W字形に屈曲形成されて凹部を形成し、この凹部の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部7として機能する。また、各側壁のリブフランジ4は、例えば細長い肉厚の板形に形成され、前部8が各側壁前部の下方に位置しており、前部以外の残部9が各側壁の前部以外の残部の略中央に水平に位置して背面壁のリブフランジ4と一体化する。各側壁のリブフランジ4の前部8は、略逆V字形に屈曲して凹部を形成し、この凹部の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部7として機能する。
【0023】
容器本体1の天井の略中心部には図1、図7ないし図9に示すように、平面略Y字形を呈する複数の被取付リブ10が立設され、この複数の被取付リブ10上には、図示しない搬送機構に把持される平面略三角形あるいは多角形の吊持フランジ11が螺子等の締結具を介し着脱自在に後から螺着される。また、容器本体1の開口した正面部は、図4、図6、図8、図9に示すように、外方向に広がるよう屈曲形成されてリムフランジ12を形成し、このリムフランジ12の内部両側には、蓋体20施錠用の係止溝13がそれぞれ上下方向に切り欠かれる。
【0024】
リムフランジ12の左右に張り出した両側部には図4、図6、図9に示すように、複数の識別孔14がそれぞれ上下に並べて丸く穿孔され、この複数の識別孔14に図示しない識別ピンが選択的に挿入され、かつ図示しない加工装置の検出手段(例えば、光電センサ、フォトセンサ、タッチセンサ等)に検出されることにより、半導体ウェーハWの有無や枚数、基板収納容器のタイプ等が加工装置に識別される。
【0025】
蓋体20は、図5、図6、図9ないし図11に示すように、容器本体1の開口したリムフランジ12に着脱自在に嵌合する横長の筐体21と、この筐体21の開口した正面部に螺着されて被覆する表面カバー28とを備えて透明に構成され、容器本体1の一対の係止溝13に係止する施錠機構31が配設される。
【0026】
筐体21は、その内部両側に施錠機構31用の複数の保持リブ22がそれぞれ一体形成され、周壁の両側部には、容器本体1の係止溝13に対応する施錠機構31用の溝孔23がそれぞれ切り欠かれており、各溝孔23の内周縁付近には、施錠機構31用の支持リブ24が一体形成される。この筐体21の裏面中央部には図11に示すように、横長の取付穴25が凹み形成され、この取付穴25には、複数の半導体ウェーハWの前部周縁を弾性片により弾発的に保持するフロントリテーナ26が装着される(図12参照)。
【0027】
筐体21の裏面周縁部には図11に示すように、ガスケット40用の取付溝27が横長の枠形に切り欠かれる。また、表面カバー28は、図6、図9、図15、図16に示すように、横長に形成され、両側部には、施錠機構31用の操作口29がそれぞれ横長に穿孔されており、各操作口29の裏面側周縁部には、施錠機構31用の一対のガイド片30が筐体21の内方向に向け一体形成される。
【0028】
施錠機構31は、図5、図10、図13、図14に示すように、蓋体20の筐体21の内部両側に支持されて内外方向(左右方向)にスライド可能な一対のリンクプレート31Aと、筐体21の各溝孔23に出没可能に軸支されてリンクプレート31Aの先端部に連結され、容器本体1の係止溝13に嵌合して干渉する揺動可能な一対の係止爪37と、各リンクプレート31Aに嵌入されて容器本体1の係止溝13に係止爪37を干渉させる一対のコイルバネ39とを備え、容器本体1に嵌合した蓋体20を施錠して固定するよう機能する。
【0029】
各リンクプレート31Aは、例えば先端部が二股に分かれた略Y字形の板に形成され、中央部にはコイルバネ39用のカラー32がスライド可能に嵌入されており、末端部33と最末端部34とが表面カバー28の一対のガイド片30にスライド可能に挟持されるとともに、最末端部34には、表面カバー28の操作口29に対応する丸い操作孔35が穿孔される。
【0030】
リンクプレート31Aの末端部33には、筒形を呈したカラー32のスライドや脱落を規制する略U字形のリンクアーム36がピンを介し内外方向(左右方向)に揺動可能に嵌入軸支され、このリンクアーム36が筐体21の保持リブ22にピンを介し内外方向(左右方向)に揺動可能に軸支される。
【0031】
各係止爪37は、変形した略V字形に屈曲形成され、屈曲部が筐体21の支持リブ24にピンを介し揺動可能に軸支される。この係止爪37は、その一端部がリンクプレート31Aの先端部にピンを介し揺動可能に軸支され、他端部には、容器本体1の係止溝13内に摺接する複数のローラ38がピンを介し回転可能に支持される。また、各コイルバネ39は、リンクプレート31Aの中央部に嵌通されてリンクプレート31Aの先端部側とカラー32との間に介在し、カラー32をリンクアーム36に圧接するとともに、筐体21の溝孔23から係止爪37の他端部、すなわち複数のローラ38を突出させる。
【0032】
ガスケット40は、図17ないし図19に示すように、例えば耐熱性、耐候性、難燃性、耐寒性、圧縮特性に優れるシリコーンゴム、フッ素ゴム、あるいはダイヤモンドライクカーボン50をコーティング可能な各種の熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系等)等を成形材料として弾性変形可能な横長の枠形に成形され、蓋体20の取付溝27に着脱自在に嵌合する。
【0033】
ガスケット40は、蓋体20の取付溝27に嵌合するエンドレスで枠形の取付部41と、この取付部41に一体形成されて容器本体1の開口したリムフランジ12内に圧接して変形する接触部42とを備え、この接触部42の全面に、高平滑性、耐磨耗性、耐腐食性、低摩擦係数、高ガスバリヤ性に優れる硬質のダイヤモンドライクカーボン50がバッチ処理等によりコーティングされており、このダイヤモンドライクカーボン50がリムフランジ12の内周縁に接触する。
【0034】
ガスケット40は、図19に示すように、断面形が略U字形に形成されてその両自由端部の厚さと長さとが相違し、この両自由端部の内側自由端部よりも外側自由端部が長く伸長される。このガスケット40の両自由端部は、薄肉の内側自由端部が容易に変形するよう斜めにカットされて蓋体20の取付溝27内に密嵌し、厚肉の外側自由端部の端面が断面略三角形に尖って接触部42とされており、この接触部42以外の残部が取付部41とされる。
【0035】
ダイヤモンドライクカーボン50は、炭素を含有したガスがプラズマ中で原子状に分解されることにより非晶質の硬質膜に形成され、緻密なアモルファス構造により表面が滑らかで結晶粒界があるという特徴を有しており、ガスケット40の柔軟性や追従性を維持する観点から10〜100nm程度の厚さにコーティングされる。
【0036】
上記構成において、半導体ウェーハWを収納した容器本体1の開口したリムフランジ12を蓋体20により閉じる場合には、容器本体1のリムフランジ12内に蓋体20を押圧して嵌合し、容器本体1のリムフランジ12の内周縁にガスケット40の接触部42をダイヤモンドライクカーボン50を介して圧接・変形させ、容器本体1の各係止溝13に蓋体20の溝孔23を対向させれば良い。
【0037】
すると、圧縮されていた各コイルバネ39の復元作用によりリンクプレート31Aが蓋体20の外方向に水平にスライドして係止爪37を揺動させ、この係止爪37の他端部が蓋体20の溝孔23から突出して複数のローラ38を容器本体1の係止溝13に嵌入し、この複数のローラ38の嵌入により、容器本体1のリムフランジ12が蓋体20により強固に閉じられ、かつ気密性や密閉性が確保される。
【0038】
これに対し、半導体ウェーハWを収納した容器本体1のリムフランジ12から蓋体20を取り外す場合には、各リンクプレート31Aの操作孔35に図示しない専用の治具を蓋体20の操作口29を介し外部から挿入し、各リンクプレート31Aを蓋体20の内方向にスライドさせれば良い。
【0039】
すると、各リンクプレート31Aがコイルバネ39を圧縮しながら蓋体20の内方向に水平にスライドし、係止爪37が揺動してその露出した他端部、すなわち複数のローラ38を蓋体20の溝孔23内に退没させ、この係止爪37の他端部の退没により、容器本体1の係止溝13から複数のローラ38が外れて容器本体1から蓋体20を取り外すことが可能になる。
【0040】
上記によれば、容器本体1に対するガスケット40の接触部42に、高平滑性や耐磨耗性のダイヤモンドライクカーボン50がコーティングされるので、例えガスケット40が長時間容器本体1と蓋体20との間に介在したとしても、容器本体1内にガスケット40が貼り付き、蓋体20の開放に支障を来たすことが全くない。また、ガスケット40の硬度を高く変更する必要がないので、ガスケット40の追従性を確保して気密性や密閉性を向上させることができる。
【0041】
また、金型の突出しピン2に容器本体1のリブフランジ4の両側部5が外側から対向して障害物となり、背面壁の強度を高めて補強機能を発揮するので、例え突出しピン2が突き出されて大きな負荷が作用しても、容器本体1の背面側が突出しピン2により突き破られることがなく、これにより製造時の容器本体1の損傷をきわめて有効に防止することが可能になる。
【0042】
また、金型から容器本体1を脱型する際の抜き角度を大きく変更する必要がないので、半導体ウェーハWの出し入れに支障を来たすこともない。さらに、背面壁のリブフランジ4と位置決め部7とを別々に形成するのではなく、背面壁のリブフランジ4の中央部に位置決め部7を一体形成するので、構成の簡易化が大いに期待できる。
【0043】
次に、図20ないし図22は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、ガスケット40の取付部41を断面略矩形に形成し、この取付部41の端から断面略U字形の変形可能な接触部42を伸長してその折り返しの湾曲面を容器本体1のリムフランジ12内周縁に圧接するようにしている。
ガスケット40の取付部41には、蓋体20の取付溝27内に圧接・変形する弾性変形可能な複数の抜け防止片43が間隔をおき一体形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0044】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ガスケット40の形状の多様化が期待できるのは明らかである。また、接触部42が断面略三角形ではなく、変形し易い湾曲した断面略U字形なので、接触部42の変形度を高めることができる。
【0045】
次に、図23は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、ガスケット40の接触部42にダイヤモンドライクカーボン50をメッシュのパターンマスク等を使用して分割コーティングし、微小化した複数のダイヤモンドライクカーボン50の間に格子形の隙間51を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0046】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ダイヤモンドライクカーボン50のコーティング領域を複数に分割区画してその変形絶対量を低減するので、柔軟な接触部42から硬質のダイヤモンドライクカーボン50が剥離するのをきわめて有効に抑制防止することができる。
【0047】
なお、本発明に係る基板収納容器は、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では2枚の半導体ウェーハWを収納する容器本体(Small−FOUPという)1を示したが、複数枚(例えば25、26枚)の半導体ウェーハWを収納する容器本体(FOSBやFOUP等)1と蓋体20との間に弾性のガスケット40を介在させても良い。また、容器本体1の背面壁の中央部上方に、半導体ウェーハWを視認する覗き窓をインサート成形法や二色成形法等により形成しても良い。
【0048】
また、容器本体1やそのリブフランジ4に、FRIDシステムのRFタグを取り付けて自動の移動体識別システムに資するようにしても良い。また、リブフランジ4に複数の位置決め部7を形成するのではなく、容器本体1の平坦な底面の前部両側と後部中央とに加工装置に対する位置決め部7をそれぞれ形成することもできる。また、背面壁のリブフランジ4の中央部を略W字形ではなく、略V字形に屈曲形成して凹部とすることもできる。
【0049】
また、特に支障が生じなければ、各側壁のリブフランジ4を省略することもできる。また、ガスケット40の接触部42のみにダイヤモンドライクカーボン50をコーティングしたが、特に限定されるものではなく、ガスケット40の取付部41と接触部42とにダイヤモンドライクカーボン50をそれぞれコーティングしても良い。さらに、ガスケット40の接触部42にダイヤモンドライクカーボン50を単にコーティングしても良いが、特に問題がなければ、ガスケット40の接触部42にダイヤモンドライクカーボン50を部分的にコーティングしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す底面説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す背面説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す正面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す断面側面図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す背面説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す側面説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体とその施錠機構を模式的に示す斜視説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の裏面側を模式的に示す斜視図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体のフロントリテーナを模式的に示す斜視説明図である。
【図13】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構のリンクプレートを模式的に示す斜視説明図である。
【図14】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の係止爪を模式的に示す斜視説明図である。
【図15】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の表面カバーを模式的に示す斜視説明図である。
【図16】本発明に係る基板収納容器の実施形態における表面カバーの裏面側を模式的に示す斜視説明図である。
【図17】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるガスケットを模式的に示す正面説明図である。
【図18】図17の部分断面説明図である。
【図19】図17のXIX−XIX線断面図である。
【図20】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態におけるガスケットを模式的に示す正面説明図である。
【図21】図20の部分断面説明図である。
【図22】図20のXXII−XXII線断面図である。
【図23】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 容器本体
4 リブフランジ
12 リムフランジ(開口部)
13 係止溝
20 蓋体
21 筐体
23 溝孔
27 取付溝
28 表面カバー
31 施錠機構
31A リンクプレート
37 係止爪
39 コイルバネ
40 ガスケット
41 取付部
42 接触部
50 ダイヤモンドライクカーボン
51 隙間
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板収納用の容器本体の開口部を開閉する蓋体を備え、この蓋体に、容器本体との間に介在する弾性変形可能なガスケットを取り付けた基板収納容器であって、
ガスケットは、蓋体に取り付けられる取付部と、この取付部に形成されて容器本体の開口部内に接触する接触部とを備え、これら取付部と接触部のうち少なくとも接触部には、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体を、三枚以下の基板を収納可能な背の低いフロントオープンボックスタイプとした請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
蓋体の基板に対向する裏面の周縁部に、ガスケット用の取付溝を形成した請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
ガスケットの断面形を略U字形に形成してその両自由端部の長さを相違させ、この両自由端部の内側自由端部よりも外側自由端部を長くし、この外側自由端部の端面を尖らせて接触部とした請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項5】
ガスケットの取付部を断面略矩形に形成し、この取付部から断面略U字形の接触部を伸ばしてその湾曲面を容器本体の開口部内に接触させるようにした請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項6】
ダイヤモンドライクカーボンを複数に分割してコーティングし、この複数のダイヤモンドライクカーボンの間に隙間を形成した請求項1ないし5いずれかに記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−21369(P2009−21369A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182508(P2007−182508)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】