説明

基板収納容器

【課題】蓋体の施錠に支障を来たすおそれがなく、基板を汚染させるパーティクル等の発生を防止できる基板収納容器を提供する。
【解決手段】2枚の半導体ウェーハを収納する背の低い容器本体の開口した正面部を開閉する蓋体20に施錠機構40を設けたタイプで、施錠機構40は、蓋体20の内部両側に支持されて蓋体20の左右内外方向にスライド可能なリンクプレート41と、蓋体20の側壁の溝孔23付近に出没可能に軸支されるとともに、リンクプレート41の先端部に回転可能に連結され、蓋体20の溝孔23から突出して容器本体の正面部内の係止溝に干渉可能な係止爪47と、係止爪47を蓋体20の溝孔23から突出させるコイルバネ49と、蓋体20の外部から操作される操作孔45とを備え、容器本体の係止溝に干渉する各係止爪47の干渉部分にローラ48を軸支させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等からなる少数枚の基板を収納する基板収納容器に関し、特に施錠機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIメーカ等で半導体ウェーハを短時間で加工処理する際に使用される基板収納容器は、図示しないが、3枚以下の半導体ウェーハを収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面部を着脱自在に開閉する蓋体と、容器本体の正面部に嵌合した蓋体を施錠する施錠機構とを備えて構成されている(特許文献1参照)。
施錠機構は、例えば蓋体内に複数の回転体が回転可能に軸支され、各回転体が回転してその周縁部から突出した複数の係止爪が蓋体の周壁から露出し、各係止爪が容器本体の正面部内周に係止することにより、蓋体を施錠するよう機能する。
【特許文献1】特開2006−100712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、施錠機構により容器本体の正面部に嵌合した蓋体を強固に施錠することができるものの、容器本体から蓋体を取り外す場合でないにもかかわらず、回転体が自由回転して係止爪が容器本体の正面部内周から外れ、蓋体の施錠に支障を来たすおそれが考えられる。また、回転体の係止爪が容器本体の正面部内周に直接係止するので、この直接係止に伴い、係止爪と容器本体の正面部内周とが擦れ、半導体ウェーハを汚染させるパーティクルの発生を招くおそれも考えられる。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、蓋体の施錠に支障を来たすおそれがなく、基板を汚染させるパーティクル等の発生を防ぐことのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、三枚以下の基板を収納する背の低い容器本体の略横長に開口した正面部を開閉する蓋体に、容器本体の正面部を閉じた蓋体を施錠する施錠機構を設けたものであって、
施錠機構は、蓋体の内部に支持されて蓋体の左右内外方向にスライド可能なスライド体と、蓋体の側壁の貫通孔付近に出没可能に支持されるとともに、スライド体の先端部に回転可能に連結され、蓋体の貫通孔から突出して容器本体の正面部内両側の係止溝に干渉可能な係止爪と、スライド体を蓋体の左右外方向にスライドさせて係止爪を蓋体の貫通孔から突出させるバネと、スライド体の末端部側に設けられて蓋体表面の外部から操作される操作孔とを含み、容器本体の係止溝に干渉する係止爪の干渉部分にローラを回転可能に支持させ、
容器本体の正面部から蓋体を取り外す場合に、操作孔を操作してスライド体を蓋体の左右内方向にスライドさせ、突出した係止爪を蓋体の貫通孔内に退没させるようにしたことを特徴としている。
【0006】
なお、容器本体の背面壁と両側壁のうち少なくとも背面壁にリブフランジを成形し、このリブフランジを容器本体の金型からの脱型時に突出しピンに外側から略対向させることができる。
また、蓋体の内部に、スライド体を蓋体の左右内外方向に挟んで案内するガイドを形成することができる。
【0007】
また、蓋体に、容器本体との間に介在する弾性変形可能なガスケットを取り付け、このガスケットを、蓋体に取り付けられる取付部と、この取付部に形成されて容器本体の開口した正面部内に接触する接触部とから形成し、これら取付部と接触部のうち少なくとも接触部には、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングすることができる。
さらに、スライド体にスライド可能に嵌められる筒体と、スライド体に回転可能に連結されて蓋体に支持され、蓋体の左右内外方向に回転するアームとを含み、スライド体の先端部側と筒体との間にバネを介在して筒体をアームに接触させても良い。
【0008】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも1、2、3、11、25、26枚の各種ガラス基板、カバーガラス、半導体ウェーハ(口径200mm、300mm、450mm等)、フォトマスク等が含まれる。容器本体は、透明、不透明、半透明等を特に問うものではないが、口径300mmの半導体ウェーハを25、26枚収納する基板収納容器よりも背が低くされる。例えば、口径300mmの半導体ウェーハからなる基板を2枚収納する場合には、6cm以下の高さとされる。
【0009】
蓋体は、透明、不透明、半透明等を特に問うものではない。容器本体と蓋体との間には、気密性を確保するガスケットが介在されるが、このガスケットは、エンドレスの線条でも良いし、そうでなくても良い。また、施錠機構の回転という用語には、回動や揺動等が含まれる。バネとローラとは、単数複数を特に問うものではない。バネは、コイルバネでも良いし、板バネ等でも良い。さらに、スライド体の末端部側には、末端部と最末端部のいずれもが含まれる。
【0010】
本発明によれば、容器本体の開口した正面部を蓋体により閉じる場合には、容器本体の正面部内に蓋体を嵌め入れ、容器本体の正面部内の係止溝に蓋体の溝孔を対向させれば良い。すると、バネによりスライド体が蓋体の左右外方向にスライドして係止爪を回転させ、この係止爪が蓋体側壁の貫通孔から突出してローラを容器本体の係止溝に嵌め入れ、このローラの嵌め入れにより、容器本体の正面部が蓋体により閉じられ、施錠される。
【0011】
これに対し、容器本体の正面部から蓋体を取り外す場合には、スライド体の操作孔に治具等を蓋体の外部から挿入し、スライド体を蓋体の左右内方向にスライドさせれば良い。すると、スライド体がバネを圧縮しながら蓋体の左右内方向にスライドし、係止爪が回転してその露出したローラを蓋体の貫通孔内に退没させ、この係止爪の退没により、容器本体の係止溝からローラが外れて容器本体から蓋体を取り外すことが可能になる。
上記のように容器本体から蓋体を取り外さない場合や施錠機構に負荷が作用しない場合には、容器本体の係止溝に突出する係止爪がバネにより干渉して容器本体の正面部を蓋体により閉じるので、容器本体から蓋体の外れることが少ない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓋体の施錠に支障を来たすおそれがなく、しかも、基板を汚染させるパーティクル等の発生を防ぐことができるという効果がある。
また、蓋体の内部に、スライド体を蓋体の左右内外方向に挟んで案内するガイドを形成すれば、スライド体が傾いてスライドしたり、位置ずれ等することが少なく、容器本体に対する蓋体の施錠の適正化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る基板収納容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図19に示すように、2枚の半導体ウェーハWを収納する容器本体1の開口した正面部を開閉する蓋体20に、容器本体1の正面部に嵌合した蓋体20を施錠する施錠機構40を配設したタイプであって、施錠機構40を、蓋体20の左右内外方向にスライド可能な一対のリンクプレート41と、蓋体20の側壁の溝孔23から突出して容器本体1の正面部内両側の係止溝14に干渉可能な一対の係止爪47と、各リンクプレート41を蓋体20の左右外方向にスライドさせて係止爪47を蓋体20の溝孔23から突出させる一対のコイルバネ49と、蓋体20の外部から操作される一対の操作孔45とから形成するようにしている。
【0014】
各半導体ウェーハWは、図8に示すように、例えば薄く丸い口径300mmのシリコンタイプからなり、周縁部に位置合わせや識別用のオリフラあるいは平面略半円形のノッチが選択的に形成される。
【0015】
容器本体1は、図1ないし図10に示すように、成形用の金型に所定の樹脂を含む成形材料が射出されることにより、2枚以下の半導体ウェーハWを整列収納する背の低い(例えば6cm以下)フロントオープンボックスタイプに射出成形され、開口した横長の正面部に同形の蓋体20がエンドレスのガスケット28を介し着脱自在に嵌合される。金型は、図示しない射出成形用のタイプが使用され、射出成形機に装着される。この金型には図4や図7に示すように、型開きと共に突き出る往復動可能な複数の突出しピン2が突き出し板に固定された状態で内蔵される。
【0016】
容器本体1の成形材料の所定の樹脂としては、例えば力学的性質、耐熱性、寸法安定性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。これらの樹脂には、必要に応じ、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、帯電防止剤、難燃剤等が適宜添加される。
【0017】
容器本体1の内部、具体的には相対向する両側壁の内面には図8や図10に示すように、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対のティース3が対設され、この一対のティース3が上下方向に間隔をおいて配列される。各ティース3は、容器本体1の前後方向に細長い板に成形され、容器本体1の背面壁寄りの末端部が先細りとされる。また、容器本体1の外周面には図1、図2、図5ないし図9に示すように、容器本体1の機械的強度や剛性を高めるリブフランジ4が成形され、背面壁側のリブフランジ4が容器本体1の脱型時に突出しピン2に対向する。
【0018】
リブフランジ4は、容器本体1の背面壁と両側壁とに外側から一体成形され、変形した平面略U字形を呈する。背面壁のリブフランジ4は、例えば細長い肉厚の板形に形成され、両側部5が容器本体1の背面壁両側部の略中央に水平に位置しており、中央部7が容器本体1の背面壁中央部の下方に位置する。また、背面壁のリブフランジ4の両側部5は、容器本体1の正面部が下方に傾かないよう金属製のバランスウェイト6が下方からそれぞれ後付けで螺着され、容器本体1の金型からの脱型時に複数の突出しピン2に外側から対向するよう機能する。
【0019】
背面壁のリブフランジ4の中央部7は、略W字形に屈曲形成されて凹部を形成し、この凹部の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部8として機能する。また、各側壁のリブフランジ4は、例えば細長い肉厚の板形に形成され、前部9が各側壁前部の下方に位置しており、前部以外の残部10が各側壁の前部以外の残部の略中央に水平に位置して背面壁のリブフランジ4と一体化する。各側壁のリブフランジ4の前部は、略逆V字形に屈曲して凹部を形成し、この凹部の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部8として機能する。
【0020】
容器本体1の天井の略中心部には図1、図4ないし図9に示すように、平面略Y字形を呈する複数の被取付リブ11が立設され、この複数の被取付リブ11上には、図示しない搬送機構に把持される平面略三角形あるいは多角形の吊持フランジ12が螺子等の締結具を介し着脱自在に後から螺着される。
【0021】
容器本体1の開口した正面部は、図3、図6、図8に示すように、外方向に広がるよう屈曲形成されてリムフランジ13を形成し、このリムフランジ13の内部両側には、蓋体20施錠用の係止溝14がそれぞれ上下方向に切り欠かれる。リムフランジ13の左右に張り出した両側部には、複数の識別孔15がそれぞれ上下に並べて丸く穿孔され、この複数の識別孔15に図示しない識別ピンが選択的に挿入され、かつ図示しない加工装置の検出手段(例えば、光電センサ、フォトセンサ、タッチセンサ等)に検出されることにより、半導体ウェーハWの有無や枚数、基板収納容器のタイプ等が加工装置に識別される。
【0022】
蓋体20は、図3、図6、図11、図12、図16、図17に示すように、容器本体1の開口したリムフランジ13に着脱自在に嵌合する横長の筐体21と、この筐体21の開口した正面部に螺着されて被覆する表面カバー32とを備えて透明に構成される。筐体21は、その内部両側に施錠機構40用の複数の保持リブ22がそれぞれ一体的に突出形成され、周壁の両側部には、容器本体1の係止溝14に対応する施錠機構40用の溝孔23がそれぞれ切り欠かれており、各溝孔23の内周縁付近には、施錠機構40用の支持リブ24が一体的に突出形成される。
【0023】
筐体21の裏面中央部には図12に示すように、横長の取付穴25が凹み形成され、この取付穴25には、複数の半導体ウェーハWの前部周縁を弾性片により弾発的に保持するフロントリテーナ26が装着される。
【0024】
筐体21の裏面周縁部には図12に示すように、横長で枠形の取付溝27が切り欠かれ、この取付溝27には、容器本体1との間に介在する弾性のガスケット28が嵌合される。このガスケット28は、図13ないし図15に示すように、例えば耐熱性、耐候性、難燃性、耐寒性、圧縮特性に優れるシリコーンゴム、フッ素ゴム、あるいはダイヤモンドライクカーボン(DLCともいう)31をコーティング可能な各種の熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系等)等を成形材料として弾性変形可能な横長の枠形に成形される。
【0025】
ガスケット28は、蓋体20の取付溝27に嵌合するエンドレスで枠形の取付部29と、この取付部29に一体形成されて容器本体1の開口したリムフランジ13内に圧接して変形する接触部30とを備え、この接触部30の全面に、高平滑性、耐磨耗性、耐腐食性、低摩擦係数、高ガスバリヤ性に優れる硬質のダイヤモンドライクカーボン31がバッチ処理等によりコーティングされており、このダイヤモンドライクカーボン31がリムフランジ13の内周縁に接触する。
【0026】
ガスケット28は、図15に示すように、断面形が略U字形に形成されてその両自由端部の厚さと長さとが相違し、この両自由端部の内側自由端部よりも外側自由端部が長く伸長される。このガスケット28の両自由端部は、薄肉の内側自由端部が容易に変形するよう斜めにカットされて蓋体20の取付溝27内に密嵌し、厚肉の外側自由端部の端面が断面略三角形に尖って接触部30とされており、この接触部30以外の残部が取付部29とされる。
【0027】
ダイヤモンドライクカーボン31は、炭素を含有したガスがプラズマ中で原子状に分解されることにより非晶質の硬質膜に形成され、緻密なアモルファス構造により表面が滑らかで結晶粒界があるという特徴を有しており、ガスケット28の柔軟性や追従性を維持する観点から10〜100nm程度の厚さにコーティングされる。
【0028】
表面カバー32は、図3、図6、図16、図17に示すように、横長に形成され、両側部には、施錠機構40用の操作口33がそれぞれ横長に穿孔されており、各操作口33の裏面側周縁部には、施錠機構40用の一対のガイド片34が筐体21の内方向に向け一体形成される。
【0029】
施錠機構40は、図11や図12、図18、図19に示すように、蓋体20の筐体21の内部両側に支持されて左右内外方向にスライド可能な一対のリンクプレート41と、筐体21の各溝孔23に出没可能に軸支されてリンクプレート41の先端部に連結され、容器本体1の係止溝14に嵌合して干渉する揺動可能な一対の係止爪47と、各リンクプレート41に嵌入されて容器本体1の係止溝14に係止爪47を干渉させる一対のコイルバネ49とを備えて構成される。
【0030】
各リンクプレート41は、図11や図18に示すように、例えば先端部が二股に分かれた略Y字形の板に形成され、棒形の中央部にはコイルバネ49用のカラー42がスライド可能に嵌入されており、末端部43と最末端部44とが表面カバー32の一対のガイド片34にスライド可能に挟持されるとともに、最末端部44には、表面カバー32の操作口33に対応する丸い操作孔45が穿孔される。
【0031】
リンクプレート41の末端部43には、筒形を呈したカラー42のスライドや脱落を規制する略U字形のリンクアーム46がピンを介し左右内外方向に揺動可能に嵌入軸支され、このリンクアーム46が筐体21の保持リブ22にピンを介し左右内外方向に揺動可能に軸支される。
【0032】
各係止爪47は、図11や図19に示すように、変形した略V字形に屈曲形成され、屈曲部が筐体21の支持リブ24にピンを介し揺動可能に軸支される。この係止爪47は、その一端部がリンクプレート41の二股の先端部間にピンを介し揺動可能に軸支され、二股に分岐した他端部の間には、容器本体1の係止溝14内に摺接する複数のローラ48がピンを介し回転可能に支持される。各ローラ48は、例えば容器本体1と同様の材料等を使用して筒形に成形される。
【0033】
各コイルバネ49は、図11に示すように、リンクプレート41の中央部に嵌通されてリンクプレート41の幅広の先端部側とカラー42との間に介在し、カラー42をリンクアーム46に圧接するとともに、筐体21の溝孔23から係止爪47の他端部、すなわち複数のローラ48を外部に突出させる。
【0034】
上記構成において、半導体ウェーハWを収納した容器本体1の開口したリムフランジ13を蓋体20により閉じる場合には、容器本体1のリムフランジ13内に蓋体20を押圧して嵌合し、容器本体1のリムフランジ13の内周縁にガスケット28の接触部30をダイヤモンドライクカーボン31を介して圧接・変形させ、容器本体1の各係止溝14に蓋体20の溝孔23を対向させれば良い。
【0035】
すると、圧縮されていた各コイルバネ49の復元作用によりリンクプレート41が保持リブ22、ガイド片34、リンクアーム46に案内されつつ蓋体20の左右外方向に水平にスライドして係止爪47を蓋体20の表裏方向に揺動させ、この係止爪47の他端部が蓋体20の溝孔23から外部に弧を描きながら突出して回転可能な複数のローラ48を容器本体1の係止溝14に嵌入し、この複数のローラ48の嵌入により、容器本体1のリムフランジ13が蓋体20により強固に閉じられ、かつ気密性や密閉性が確保される。
【0036】
このように施錠機構40に負荷が作用しない場合には、容器本体1の各係止溝14に揺動突出した係止爪47のローラ48が転がり接触可能に嵌入し、容器本体1のリムフランジ13が蓋体20により覆われることとなる。
【0037】
これに対し、半導体ウェーハWを収納した容器本体1のリムフランジ13から施錠状態の蓋体20を取り外す場合には、各リンクプレート41の操作孔45に図示しない専用の治具を蓋体20の操作口33を介し外部から挿入し、各リンクプレート41を蓋体20の左右内方向にスライドさせれば良い。
【0038】
すると、各リンクプレート41がコイルバネ49を圧縮しながら蓋体20の左右内方向に水平にスライドし、係止爪47が弧を描きながら揺動してその露出した他端部、すなわち複数のローラ48を蓋体20の溝孔23内に退没させ、この係止爪47の他端部の退没により、容器本体1の係止溝14から複数のローラ48が外れて容器本体1から蓋体20を取り外すことが可能になる。
【0039】
上記構成によれば、容器本体1から蓋体20を取り外さない施錠機構40の非操作時には、容器本体1の係止溝14に係止爪47がコイルバネ49により絶えず嵌入して容器本体1のリムフランジ13を蓋体20により強固に閉じるので、容器本体1から蓋体20が外れることが全くなく、蓋体20の施錠に支障を来たすおそれがない。また、容器本体1の係止溝14に係止爪47が直接嵌入するのではなく、容器本体1の係止溝14に係止爪47の回転可能な複数のローラ48が嵌入して摺接するので、摩擦係数が小さく、容器本体1と係止爪47とが擦れ、半導体ウェーハWを汚染させるパーティクルの発生を招くおそれがない。
【0040】
また、容器本体1に対するガスケット28の接触部30に、高平滑性や耐磨耗性のダイヤモンドライクカーボン31がコーティングされるので、例えガスケット28が長時間容器本体1と蓋体20との間に介在したとしても、容器本体1内にガスケット28が貼り付き、蓋体20の開放に支障を来たすことが全くない。また、ガスケット28の硬度を高く変更する必要がないので、ガスケット28の追従性を確保して気密性や密閉性を向上させることができる。
【0041】
また、金型の突出しピン2に容器本体1のリブフランジ4の両側部が外側から対向して障害物となり、背面壁の強度を高めて補強機能を発揮するので、例え突出しピン2が突き出されて大きな負荷が作用しても、容器本体1の背面側が突出しピン2により突き破られることがなく、これにより製造時の容器本体1の損傷をきわめて有効に防止することが可能になる。
【0042】
また、金型から容器本体1を脱型する際の抜き角度を大きく変更する必要がないので、半導体ウェーハWの出し入れに支障を来たすこともない。さらに、背面壁のリブフランジ4と位置決め部8とを別々に形成するのではなく、背面壁のリブフランジ4の中央部7に位置決め部8を一体形成するので、構成の簡易化が大いに期待できる。
【0043】
なお、本発明に係る基板収納容器は、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、容器本体1の背面壁の中央部上方に、半導体ウェーハWを視認する覗き窓をインサート成形法や二色成形法等により形成しても良い。また、容器本体1やそのリブフランジ4に、FRIDシステムのRFタグを取り付けて自動の移動体識別システムに資するようにしても良い。
【0044】
また、リブフランジ4に複数の位置決め部8を形成するのではなく、容器本体1の平坦な底面の前部両側と後部中央とに加工装置に対する位置決め部8をそれぞれ形成しても良い。また、背面壁のリブフランジ4の中央部を略W字形ではなく、略V字形に屈曲形成して凹部とすることもできる。また、特に支障が生じなければ、各側壁のリブフランジ4を省略することもできる。
【0045】
また、ガスケット28の接触部30のみにダイヤモンドライクカーボン31をコーティングしたが、特に限定されるものではなく、ガスケット28の取付部29と接触部30とにダイヤモンドライクカーボン31をそれぞれコーティングしても良い。さらに、ガスケット28の接触部30にダイヤモンドライクカーボン31を単にコーティングしても良いが、特に問題がなければ、ガスケット28の接触部30にダイヤモンドライクカーボン31を部分的にコーティングしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す底面説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す背面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す側面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す背面説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す正面説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す側面説明図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す断面側面説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体と施錠機構を模式的に示す斜視説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の裏面を模式的に示す斜視説明図である。
【図13】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるガスケットを模式的に示す正面説明図である。
【図14】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるガスケットを模式的に示す側面説明図である。
【図15】図13のXIII−XIII線断面図である。
【図16】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の表面カバーを模式的に示す斜視説明図である。
【図17】本発明に係る基板収納容器の実施形態における表面カバーの裏面を模式的に示す斜視説明図である。
【図18】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構のスライドプレートを模式的に示す斜視説明図である。
【図19】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の係止爪を模式的に示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 容器本体
4 リブフランジ
13 リムフランジ(開口した正面部)
14 係止溝
20 蓋体
21 筐体
22 保持リブ
23 溝孔(貫通孔)
24 支持リブ
32 表面プレート
33 操作口
34 ガイド片(ガイド)
40 施錠機構
41 リンクプレート(スライド体)
42 カラー
43 末端部
44 最末端部
45 操作孔
46 リンクアーム
47 係止爪
48 ローラ
49 コイルバネ(バネ)
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三枚以下の基板を収納する背の低い容器本体の略横長に開口した正面部を開閉する蓋体に、容器本体の正面部を閉じた蓋体を施錠する施錠機構を設けた基板収納容器であって、
施錠機構は、蓋体の内部に支持されて蓋体の左右内外方向にスライド可能なスライド体と、蓋体の側壁の貫通孔付近に出没可能に支持されるとともに、スライド体の先端部に回転可能に連結され、蓋体の貫通孔から突出して容器本体の正面部内両側の係止溝に干渉可能な係止爪と、スライド体を蓋体の左右外方向にスライドさせて係止爪を蓋体の貫通孔から突出させるバネと、スライド体の末端部側に設けられて蓋体表面の外部から操作される操作孔とを含み、容器本体の係止溝に干渉する係止爪の干渉部分にローラを回転可能に支持させ、
容器本体の正面部から蓋体を取り外す場合に、操作孔を操作してスライド体を蓋体の左右内方向にスライドさせ、突出した係止爪を蓋体の貫通孔内に退没させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
蓋体の内部に、スライド体を蓋体の左右内外方向に挟んで案内するガイドを形成した請求項1記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−21371(P2009−21371A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182510(P2007−182510)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】