説明

基板収納容器

【課題】基板の支持部との接触部を少なくできると共に、基板の撓みを小さくできる基板収納容器を提供する。
【解決手段】開口を通して基板を収納する容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、蓋体に設けられるフロントリテーナとを備え、前記容器本体の開口側から観た場合の左右内壁面に一対の支持部が対向配置されている基板収納容器である。前記一対の支持部は、それぞれ前記容器本体の前記開口側と奥側において、収納された前記基板の周辺と当接する接触部分を有し、平面的に観て前記基板の収納方向に対する、前記一対の支持部の開口側の前記接触部分と収納された前記基板の中心を結ぶ線の角度をθ1とした場合、次式(1)の関係を有する。
70°≧θ1>θ0+10° …… (1)
ここで、前記θ0は、前記θ1を小さくなる方向に変化させた際に、前記基板の開口側の周縁が重力の方向への撓みから前記方向と反対側に撓み始める角度とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板収納容器に係り、特に、半導体ウェーハ、マスクガラス等からなる精密基板を収納し、搬送がなされるとともに、前記精密基板を加工・処理する加工装置に位置決め固定される基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板収納容器としては、いわゆるフロントオープンボックスタイプと称され、正面に形成された開口を通して精密基板(以後、基板と称す)を収納できる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、を備えて構成されたものが知られている。
【0003】
容器本体の開口側から観た場合の左右内壁面には一対の支持部が対向配置され、これら各支持部には上下方向に並設された複数の支持溝が設けられている。各基板は、その周辺において、一対の支持部の支持溝内に位置づけられることによって、容器本体内に同軸上に整列配置されて収納されるようになっている。
【0004】
なお、前記蓋体の内壁面には基板と接触する保持溝を有するフロントリテーナが備えられ、前記蓋体を容器本体に閉鎖させた場合に、一対の支持部に支持された各基板は、前記フロントリテーナの保持溝によって芯出しされながら、奥側に押し込められて位置規制される。各基板は、たとえば一対の支持部の奥側に形成された内壁面に接触させられて正規の位置に位置決めされるようになっている。
【0005】
このような構成からなる基板収納容器は、たとえば、下記特許文献1あるいは特許文献2に開示がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-111830号公報
【特許文献2】特開2009-272472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した一対の支持部は、それぞれ、容器本体の開口側から奥側にかけて比較的大きな幅をもって形成されたものとなっている。このため、これらの支持部によって支持される各基板は、その周辺の部分のうち比較的大きな割合を占める領域において支持部(支持溝)と接触される状態となっている。
【0008】
しかし、近年において、基板の汚染を極力少なくするため、支持部の基板との接触する領域をできるだけ小さくすることが検討されるに至っている。
【0009】
また、一方において、基板はますます大口径(たとえば直径450mm)となる傾向にあり、自重も大きくなるので、支持部との接触部の領域を狭めた場合に、基板の撓みが大きくなってしまうことが懸念される。
【0010】
このことから、各基板の容器本体の開口側において大きな撓みが生じた場合、蓋体を容器本体に閉鎖させる際に、たとえばフロントリテーナの保持溝の各々が対峙する各基板と接触できず、保持溝に基板を収納できなくなってしまうという不都合が生じる。
【0011】
また、基板の撓みが大きくなると、基板は、振動や衝撃によって大きな振幅で共振し、支持部等との擦れが発生し、破損する等の事故を免れ得ないものとなる。
特に、輸送中は大きな振動や衝撃が加わるので、深刻な被害が生じ易くなる。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、基板の支持部との接触部を少なくできるとともに、基板の撓みを小さくでき、安全に基板を支持することができ、さらに、各基板を精度よく保持して輸送可能な基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明は、以下の構成として把握することができる。
(1)本発明の基板収納容器は、開口を通して基板を収納する容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、この蓋体に設けられるフロントリテーナとを備え、
前記容器本体の前記開口側から観た場合の左右内壁面に一対の支持部が対向配置されている基板収納容器であって、
前記一対の支持部は、それぞれ、前記容器本体の前記開口側と奥側において、収納された前記基板の周辺と当接する接触部分を有し、
平面的に観て、前記基板の収納方向に対する、前記一対の支持部の開口側の前記接触部分と収納された前記基板の中心を結ぶ線の角度をθ1とした場合、
次式(1)の関係があり、
70°≧θ1>θ0+10° …… (1)
前記θ0は、前記θ1を小さくなる方向に変化させた際に、前記基板の開口側の周縁が重力の方向への撓みから前記方向と反対側に撓み始める角度としたことを特徴とする。
【0014】
(2)本発明の基板収納容器は、(1)において、前記基板は複数枚からなり、これらの基板は同軸上に整列配置されていて、フロントリテーナの保持溝によって保持されることを特徴とする。
(3)本発明の基板収納容器は、(1)において、前記θ1の値は40°〜70°の範囲内のうちいずれかの値に設定されていることを特徴とする。
【0015】
(4)本発明の基板収納容器は、(1)において、前記θ0の値は35°±5°であることを特徴とする。
(5)本発明の基板収納容器は、(1)において、前記容器本体の前記開口側の基板の周縁であって、前記一対の支持部の各前記接触部の中央の撓み量が1.0mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した基板収納容器によれば、基板の支持部との接触部を少なくできるとともに、基板の撓みを小さくできるようになる。また、安全に基板を支持することができ、さらに、各基板を精度よく保持して輸送可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の基板収納容器を水平面と平行な切断面を上方から観た断面図である。
【図2】本発明の基板収納容器を正面側から観た斜視図である。
【図3】本発明の基板収納容器であって、蓋体が取り外された状態の容器本体を示す正面図である。
【図4】図1のIV−IV線における断面図である。
【図5】図1のV−V線における断面図である。
【図6】図1のVI−VI線における断面図である。
【図7】基板を数か所で支持し、支持体を基板の周辺に沿って移動した際の基板の所定個所における撓みの程度を試験するための説明図である。
【図8】図7に示す試験の結果を示すデータである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
【0019】
図2は、本発明の基板収納容器を正面側から観た斜視図である。図2に示す基板収納容器100は、いわゆるフロントオープンボックスタイプと称される基板収納容器である。
【0020】
図2において、基板収納容器100は、正面側に開口(図示せず)が設けられた容器本体10と、この容器本体10の開口を閉鎖して配置される蓋体20とからなっている。容器本体10の天面にはロボティグンフランジ30が取り付けられている。このロボティグンフランジ30は工場内に設置される搬送機構によって把持され、基板収納容器100は天井搬送できるようになっている。また、容器本体10の底部には、図示しないが、位置決め機構が配設され、基板を加工等するための加工装置に対する位置決めができるようになっている。
【0021】
図3は、基板収納容器100において、蓋体20が取り外された状態の容器本体を示す正面図である。容器本体10内には開口を通してたとえば半導体ウェーハからなる複数の基板Wを水平に収納できるようになっている。各基板Wは、その周辺において、容器本体10の左右側面の内周側に対向して設けられた一対の支持部12A、12Bに支持されて配置されている。各支持部12A、12Bは、上下方向に並設された複数の溝14を有し、各基板Wは、各支持部12A、12Bの対応する溝14内に周辺が配置されることよって該支持部12A、12Bに支持されるようになっている。これにより、基板Wのそれぞれは、中心軸がほぼ一致づけられて上下方向に整列配置されるようになる。基板は、大口径のものが用いられ、たとえば直径は450mm、厚さは925μmとなっている。
【0022】
図1において、蓋体20は、内部に空間を有する二重壁構造で構成され、前記内部に図中点線で示すようにラッチ機構22を配置させた構成となっている。ラッチ機構22は、蓋体20を容器本体10に閉鎖させるための係止機構として構成され、たとえば図中左右に2個設けられている。それぞれのラッチ機構22は、図示しないキーによって回転される回転プレート23と、この回転プレート23に連結されて図中上下方向にスライド可能な一対の動力伝達プレート24A、24Bと、これら動力伝達プレート24A、24Bの先端に連結される係止クランプ(図示せず)とからなっている。回転プレート23の周縁部には、一方の動力伝達プレート24Aに形成されたガイドピン25Aを嵌合させるガイド溝26Aと、他方の動力伝達プレート24Bに形成されたガイドピン25Bを嵌合させるガイド溝26Bが形成されている。ガイド溝26A、26Bは、蓋体20の容器本体に対する閉鎖の際の回転プレート23の回転にともない、動力伝達プレート24A、24Bのガイドピン25A、25Bを外方に導くように半径が大きくなる弧状をなしている。これにより一対の各動力伝達プレート24A、24Bは回転プレート23と反対側の方向に移動し、該動力伝達プレート24A、24Bの先端に設けられた係止クランプが、容器本体の開口部の係止孔(図2中、符号13で示す)に嵌入することにより蓋体20の容器本体10に対する閉鎖を行うことができる。
【0023】
図1は、図2に示した基板収納容器100を水平面と平行な切断面を上方から観た断面図である。図1において、蓋体20は、図中上側に示されている。上述したように、容器本体10内には、基板Wが一対の支持部12A、12Bに支持されて配置されている。蓋体20の周辺にはエンドレスのガスケット28が固定されている。このガスケット28は、蓋体20の容器本体10への閉鎖の際には容器本体10の開口部に当接することにより容器本体10内の気密性が図れるようになっている。なお、図1において、蓋体20に内蔵される前記ラッチ機構22は図示を省略している。また、図1に示すように、蓋体20の内壁面には、一対のフロントリテーナ29が取り付けられている。これらフロントリテーナ29は、図1、および図1のIV−IV線の断面図である図4に示すように、蓋体20に取り付けるためのベース部29B(図1参照)と各基板Wの側の面に各基板Wに対向されて設けられる弾性片29E(図4参照)と、この弾性片29Eに形成されたたとえばV字形の保持溝29Aが各基板Wの整列方向に複数形成されている。蓋体20を容器本体10に閉鎖した際に、フロントリテーナ29の保持溝29Aは、その内周面において各基板Wの周縁と当接されるようになっている。これにより、支持部12A、12Bに支持された各基板Wは、蓋体20の容器本体10への閉鎖の際にフロントリテーナ29の対峙する各保持溝29Aと接触して、それぞれの保持溝29Aの最深部に求心されながら、容器本体10の奥側へ押し込まれていく、このとき、基板Wの奥側の端部は支持部12Bの奥側の壁面に設けられた傾斜面をせり上がり、輸送時に基板Wが支持部材12A、12Bと接触しないように傾斜面の変曲点である所定の高さまで持ち上げられて、基板の位置が規制される。輸送時においては、基板Wは、フロントリテーナ29の保持溝29Aと奥側支持部材の壁面とによって、支持部材12A、12Bから離れて支持される。
【0024】
図1では図示されていないが、各支持部12A、12Bの奥側の端部には、基板Wが前記フロントリテーナ29によって押し込められた際に、基板Wの周縁に接触する傾斜した内壁面が途中に変曲点を有するように形成されており、この変曲点により、基板Wは正規の位置に位置決めされるようになっている。
【0025】
図5は、図1のV−V線における断面図を、図6は、図1のVI−VI線における断面図を示している。
【0026】
図5、図6に示すように、一対の支持部12A、12Bは、それぞれ、容器本体10の開口側から奥側にかけて、基板Wと当接し得る部分(接触部分)Pと当接しない部分(非接触部分)Qを有している。すなわち、支持部12A、12Bによって支持される基板Wの前記支持部12A、12Bと対向する個所において、接触部分Pは高さが大きく形成され、非接触部分Qは高さが小さく形成されている。それぞれの支持部12A、12Bにおいて、基板Wとの非接触部Qを設けることで、基板Wの周辺において支持部12A、12Bとの接触によって汚染が発生する領域を極力少なくできるようになる。また、接触部Pにおいても、図5に示すように、それらの表面(図中Fで示す)および裏面(図中Bで示す)には、容器本体10の側壁から、先端部に向かって厚さが薄くなるような傾斜面が、それぞれ形成されている。ここで、表面Fは、基板Wの水平支持をするために0.5°〜3°程度の小さな角度の傾斜面が形成されていて、裏面Bの傾斜面は、表面F側よりも大きな角度に形成されていて、基板Wが大きく変位したときでも面接触しないように形成されている。このことから、各支持部12A、12Bの基板Wとの接触部Pは、その面積をできるだけ小さくすることによって、基板Wの汚染防止の効果を大きくすることができる。
【0027】
そして、それぞれの支持部12A、12Bにおいて、基板Wとの接触部分Pは、たとえば、容器本体10の開口側の端部と奥側の端部に形成されている。この場合、一対の支持部12A、12Bのそれぞれは、同じ形状で同じ大きさで構成されていることから、一方の支持部12Aの基板Wとの接触部分Pと他方の支持部12Bの基板との接触部分Pは、基板Wの容器本体10への収納方向(図中、線分BPの方向)に対して互いに対称の位置に形成されることになる。
【0028】
ここで、基板Wの収納方向BPに対する、各支持部12A、12Bの開口側の接触部分P(より詳しくは接触部分Pの中心)と収納された基板の中心Oを結ぶ線の角度をθ1とする。また、基板の収納方向BPに対する、各支持部12A、12Bの奥側の接触部分P(より詳しくは接触部分Pの中心)と収納された基板の中心Oを結ぶ線の角度をθとする。この場合、θ1は、たとえば40°〜70°の範囲のうちいずれかの値に設定されている。そして、θは、特にθ1に示すような範囲的制限はないが、たとえば30°あるいは45°の値、特に好ましくは均等に設けられる45°に設定されている。このようにθの値を45°とした場合、開口側の接触部Pも45°とすることができ、基板Wを支持する4つの支持部(接触部分P)をそれぞれ対称の位置で、基板Wの周方向にも均等に配置できるようになり、基板Wをより安定的に支持することが可能になるからである。
【0029】
このように構成した支持部12A、12Bによれば、上述したように基板Wとの接触部分Pを極力少なくすることができるとともに、大口径の薄い基板Wの撓み(撓み量)を、特に容器本体10の開口側の周縁において、所定の範囲内に、たとえば1.0mm以下に抑制できる効果を奏するようにできる。仮に、撓み量が1.0mmを超えた場合は、フロントリテーナ29の保持溝29Aが基板Wに
接触されることはなく、ピックアップできなくなってしまう不都合を生じる。
【0030】
基板Wの撓み(撓み量)を上述のように抑制できることにより、蓋体20を容器本体10に閉鎖させる際に、フロントリテーナ29の各保持溝29Aが対峙する各基板Wと確実に接触でき、これを位置規制して精度よく奥側に押し込んで、奥側支持部の後方の傾斜面との間で基板Wを保持することができるようになる。また、基板Wは、振動や衝撃によって大きな振幅で共振することがなくなり、支持部12A、12B等との擦れ、破損等の事故を回避できるようになる。
【0031】
次に、基板Wの中心Oと各支持部12A、12Bの開口側の接触部分Pとを結ぶ線の角度θ1を上述した値に設定することにより、基板の撓みを抑制できる理由について説明をする。
【0032】
図7は、図1に示した基板と同じ大きさおよび厚さの基板Wを支持部材A、B、C、Dによって支持した状態を示している。支持部材A、B、C、Dは、いずれも比較的小さな面積に形成され、先端に向かって傾斜する傾斜面を有し、それぞれ、基板Wの周辺を傾斜面に当接させて支持するようになっている。支持部材A、Bは、図1において、支持部12A、12Bのそれぞれの開口側の端部(接触部分P)に対応し、支持部材C、Dは、図1において、支持部12A、12Bのそれぞれの奥側の端部(接触部分P)に対応するようになっている。また、基板Wの中心Oを通り図中左右方向に伸長する線分をFPとし図中上下方向に伸長する線分をBPとした場合、支持部材C、Dは線分FPの図中下側において線分BPに対して対称に配置され、支持部材A、Bは線分FPの図中上側において線分BPに対して対称に配置されている。
【0033】
ここで、支持部材C、Dを、それぞれ、線分BPに対する角度θをたとえば45°として固定配置させ、支持部材A、Bを、それぞれ、線分BPに対する角度θ1をたとえば70°近辺から0°近辺まで変化させるようにして基板Wの周辺に沿って(図中矢印方向)移動させることができるように構成した。
【0034】
そして、支持部A、Bを上述のように移動させる過程で、支持部A、Bのほぼ中央における基板の周縁(図中αで示す)において、支持部A、Bの基板Wと当接する面(接触面)を結ぶ線に対する撓み(サグ)の変位をレーザー変位計によって計測をした。図8は、この計測によって得られた前記撓み(サグ)の様子を示すグラフである。図8中、横軸は支持部材A、Bのそれぞれの線分BPに対する角度θ1で、縦軸は基板の図中αで示す周縁の撓み(サグ)量を示している。撓み(サグ)量がマイナス(−)の場合、支持部A、Bの基板Wとの接触面を結ぶ線に対して下方側に凸となるように撓むことを示し、撓み(サグ)量がプラス(+)の場合、支持部A、Bの基板との接触面を結ぶ線に対して上方側に凸となるように撓むことを示している。
【0035】
図8から、撓み(サグ)量がほぼ0となるのは、支持部材A、Bのそれぞれの線分BPに対する角度θ1が35°近傍(35°±5°)となっていることが明らかとなる。このことは、角度θ1を70°近辺から徐々に小さくするように支持部A、Bを移動させていく際に、最初は、基板の図中αで示す周縁は自重(重力)によって下方側に垂れ下がっているが、角度θ1が35°±5°(この角度をθ0と称する)の地点を超えて小さくなるようになると、今度は、図中αの部分を含む隣接する接触部分Pの間の周縁以外の他の周縁において自重(重力)によって下側に垂れ下がるようになり、この反動で基板の図中αで示す周縁は上方へ突出するように撓むようになることが確認される。このように、前記θ1を上述した範囲内で変化させることにより、基板の撓みは一対の支持部の基板との接触部を結ぶ水平面の上下方向への変換点を有することになる。このことは、水平面を基準にした場合の基板の撓み量を小さくできることを意味する。したがって、たとえば蓋体20を容器本体10に閉鎖させる際に、支持部材12A、12Bの接触範囲(接触部分P)を適切に設定することで、各基板Wの撓みの方向を一定とでき、撓み量も所定の範囲にあるようにできる。これにより、支持部材12A、12Bの接触位置(接触部分P)の内側近傍に配置されたフロントリテーナ29の保持溝29Aによって各基板Wと確実に接触してこれを保持することが可能となる。さらに、基板Wを支持する支持部の内側に、輸送時に基板Wを保持しているフロントリテーナ29の保持溝29Aを位置させて、なおかつ上記した最適な接触範囲の近傍に設けることができるので、基板Wは、振動や衝撃によって大きな振幅で共振することがなくなり、蓋体開放時や輸送中のどちらにおいても破損等の事故を回避できる。
【0036】
上述した実施例では、θ1の値を40°以上としたものである。上述のようにθ0の値がほぼ35°であるため、θ1を40°以上とすることで、各スロットにおける支持部12A、12Bの接触部分にわずかなずれや誤差があっても、撓み方向の変動がなく基板Wの収納を安全に行うことができ、また、容器本体10の開口を広く確保でき、基板Wの取り出しの取り出し機との干渉を回避することができる。
本発明では、支持部12A、12B又は保持溝29Aが、基板Wを一方向に撓む状態で、確実に支持又は保持することができる。このことは、基板Wが一方向と逆方向に撓んだ状態で混在して支持又は保持されることを排除できることを意味する。仮に、基板Wが一方向と逆方向に撓む状態が混在する場合、隣接する基板同士が異常に接近する状態となり、振動や共振で、基板同士が接触し易くなり、破損事故を招く恐れがあり、本発明では、このような状態を回避することができるようになる。
【0037】
しかし、θ1の下限値を必ずしも40°とする必要はないことはいうまでもない。たとえば、図7に示したように、上記θ0の値を、前記θ1を小さくなる方向に変化させた際に基板Wの開口側の周縁が重力の方向への撓みから前記方向と反対側に撓み始める角度とした場合に、θ1の下限値を(θ0+10°)となるように設定してもよい。ここで、θ0の値に10°を加算しているのは、こうすることで、支持部材12A、12Bの内側に設けられるフロントリテーナ29の保持溝29Aと、支持部材の接触部のどちらも同一の撓み方向で、撓み量も少ない最適な範囲に設けることが可能となるからである。仮にθ0の値が10°より小さいと、フロントリテーナ29の保持溝29Aと、支持部材の接触部のどちらをも同一の撓み方向で、支持又は保持することが難しくなってしまう。
また、θ1の上限値を70°とすることにより、基板の撓みを1.0mm以内に抑えることができ、基板の取り出しの際のピックアップ量を大きくする必要がなくなる効果を奏するようになる。
【0038】
このようなことから、θ1の値は、次式(1)を満たす範囲内にあれば、本発明の目的を達し得るようになる。
70°≧θ1>θ0+10° …… (1)
ここで、θ0は、図7に示したように、θ1を小さくなる方向に変化させた際に、前記基板の開口側の周縁が重力の方向への撓みから前記方向と反対側に撓み始める角度である。
(実施形態2)
【0039】
上述した実施態様では、基板収納容器100に収納される基板Wは、直径が450mm、厚さが925μmの半導体ウェーハとしたものである。しかし、このような半導体ウェーハは、径が450m以上あってもよいし、また、厚さが925μm以下であってもよい。このような基板Wは撓み易く構成されることから、本発明を適用することで、基板Wを基板収納容器100内での撓みを少なくして支持部12A、12Bに支持させることができるようになる。
【0040】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0041】
100……基板収納容器、10……容器本体、20……蓋体、30……ロボティグンフランジ、12A、12B……支持部、14……溝、22……ラッチ機構、23……回転プレート、24A、24B……動力伝達プレート、25A、25B……ガイドピン、26A、26B……ガイド溝、28……ガスケット、29……フロントリテーナ、29A……保持溝、P……接触部、Q……非接触部、A、B、C、D……支持部材W……基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を通して基板を収納する容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、蓋体に設けられるフロントリテーナとを備え、
前記容器本体の前記開口側から観た場合の左右内壁面に一対の支持部が対向配置されている基板収納容器であって、
前記一対の支持部は、それぞれ、前記容器本体の前記開口側と奥側において、収納された前記基板の周辺と当接する接触部分を有し、
平面的に観て、前記基板の収納方向に対する、前記一対の支持部の開口側の前記接触部分と収納された前記基板の中心を結ぶ線の角度をθ1とした場合、
次式(1)の関係があり、
70°≧θ1>θ0+10° …… (1)
前記θ0は、前記θ1を小さくなる方向に変化させた際に、前記基板の開口側の周縁が重力の方向への撓みから前記方向と反対側に撓み始める角度としたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記基板は複数枚からなり、これらの基板は同軸上に整列配置されていて、前記フロントリテーナの保持溝によって個別に保持されることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記θ1の値は40°〜70°の範囲内のうちいずれかの値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記θ0の値は35°±5°であることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記容器本体の前記開口側の基板の周縁であって、前記一対の支持部の各前記接触部の中央の撓み量が1.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−253960(P2011−253960A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127245(P2010−127245)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】