基板収納容器
【課題】 識別部材が示す情報の変更を極めて容易に行うことができる基板収納容器を提供する。
【解決手段】 開口を有し前記開口を通して基板を収納させる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体の底部に取り付けられるボトムプレートを備える基板収納容器である。前記ボトムプレートの識別領域に、貫通孔の開閉を行い、あるいは貫通孔に沿ってスライドする識別部材を備える。また、前記識別部材は、冶具を用いて貫通孔から取り外すようにし、あるいはスライドできるようにした。
【解決手段】 開口を有し前記開口を通して基板を収納させる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体の底部に取り付けられるボトムプレートを備える基板収納容器である。前記ボトムプレートの識別領域に、貫通孔の開閉を行い、あるいは貫通孔に沿ってスライドする識別部材を備える。また、前記識別部材は、冶具を用いて貫通孔から取り外すようにし、あるいはスライドできるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板収納容器に係り、特に、たとえば半導体ウェーハなどの基板を収納して用いられ、半導体生産工程で、該基板に各種の処理・加工の際に、該基板を搬送・保管する基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板収納容器として、正面に開口部を有する容器本体と、この容器本体の開口部をシール可能に閉鎖する蓋体とを備えて構成されたものが知られている。容器本体には、その内壁面に対向して配置された一対の支持部を備え、これら支持部に垂直方向に沿って並設された各溝に、基板の周辺の一部を支持させることにより、該基板を水平状態にして容器本体内に収納するようになっている。
【0003】
このような基板収納容器は、その天面にロボテックフランジが取り付けられ、このロボテックフランジを介して工場内に設置されたレールに沿って搬送できるようになっている。
【0004】
また、基板収納容器の底面にはボトムプレートが設けられており、このボトムプレートによって、基板収納容器を、コンベア搬送したり、各加工装置の設置個所において基板収納容器のセンシング(識別)、位置決め、あるいは固定したりできるようになっている。
【0005】
このことから、ボトムプレートには、少なくとも、1対のコンベアレールと、識別部材の取り付けがなされる個所(識別領域)と、基板収納容器の位置決めのためのガイド部材と、基板収納容器の加工装置等への固定を行うための固定部とが設けられている。
【0006】
そして、ボトムプレートの識別部材の取り付けがなされる領域には、複数の貫通孔が設けられ、これら貫通孔に識別部材となるプラグを選択的に取り付けることによって該貫通孔を閉塞させるようになっている。すなわち、貫通孔のプラグによる選択的な閉塞によって、貫通孔の有り無しの状態を基板収納容器の仕様に対応させるようにしている。加工装置側では、これらの貫通孔の有り無しの状態をセンシングすることにより、基板収納容器の仕様を確認することができるようになっている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-64378号公報
【特許文献2】特開2000-315721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した基板収納容器において、たとえば直径300mmの半導体ウェーハを収納して半導体部品の生産工場で使用されていた基板収納容器のボトムプレートには、識別領域として左右に2箇所ずつ合計4つの位置に識別部材を設けることが、SEMI規格 E47.1等によって定められている。ここで、作業員が基板収納容器を持ち上げたりする際に、基板収納容器の底部を持ち上げたり、点検したりすることがあるが、その際に誤ってボトムプレートと識別部材の間に入れた指が、識別部材に触れてしまい、識別部材を外してしまう不都合があった。
【0009】
また、昨今、半導体部品の生産工場においてより細かな管理を行うため、識別部位の個数を増やして運用することが検討されている。例えば、次世代の半導体ウェーハとして検討されている直径450mmの半導体ウェーハを収納するための基板収納容器として、左右の識別領域に4箇所ずつの貫通穴を間隔狭く並べて配置することが提案されている。これにより、基板収納容器の仕様を従来の16倍(28/24 =16)に増大させるようにできる。しかし、このようにした場合、間隔を狭めて形成した貫通孔のそれぞれに識別部材を取り付けた場合、周囲に充分なスペースがないために、その後に該識別部材を取り外す際に、その取り外しが困難になってしまうことが懸念される。
【0010】
さらに、基板収納容器は、その正面側に蓋体を備え、蓋体には容器本体との施錠を行う施錠機構が内蔵されているために、基板収納容器の重心位置が収納させている基板の中心から正面側に偏心することになる。このような偏心は、基板収納容器を高速搬送するときなどに揺れが大きくなって安定な搬送ができないといった弊害をもたらす。このため、ボトムプレートには、基板収納容器の重心位置を調整するカウンターウェイト(重量調整用カウンター)をリア側(蓋体を備える正面側と反対側)に設けることが検討されている。しかし、このカウンターウェイトを設ける位置が識別領域の近傍になってしまうことが免れず、識別部材を貫通孔から取り外すことをさらに困難にさせてしまう不都合が生じる。
【0011】
本発明の目的は、識別部材が示す情報の変更を極めて容易に行うことができる基板収納容器を提供することにある。
【0012】
本発明の目的は、たとえ近傍に重量調整用カウンターが配置されていても、識別部材が示す情報の変更を極めて容易に行うことができる基板収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、識別部材が示す情報の変更をたとえば簡易な構成からなる冶具を用いて行うようにしたものである。
【0014】
本発明は、以下に示す構成によって把握することができる。
(1)本発明の基板収納容器は、開口を有し前記開口を通して基板を収納させる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体の底部に取り付けられるボトムプレートを備える基板収納容器であって、前記ボトムプレートの識別領域に、貫通孔の開閉を行い、あるいは貫通孔に沿ってスライドする識別部材を備え、前記識別部材は、冶具を用いて貫通孔から取り外すようにし、あるいはスライドできるようにしたことを特徴とする。
(2)本発明の基板収納容器は、(1)を前提に、前記ボトムプレートには、前記識別領域が前記蓋体と反対側に形成され、この識別領域に近接して重心調整用カウンターが配置されていることを特徴とする。
【0015】
(3)本発明の基板収納容器は、(1)を前提に、ボトムプレートの識別領域に、複数の第1貫通孔が形成されているとともに、これら第1貫通孔のうち選択された第1貫通孔に着脱可能に取り付けられる識別部材を備え、複数の前記第1貫通孔のそれぞれに近接して配置された第2貫通孔が形成され、前記第1貫通孔に取り付けられている識別部材は前記第2貫通孔を通した冶具によって取り外せるようになっていることを特徴とする。
(4)本発明の基板収納容器は、(3)を前提に、前記第2貫通孔は、その形状がスリット状となっていることを特徴とする。
(5)本発明の基板収納容器は、(3)を前提に、複数からなる第1貫通孔は並設されて形成され、その両端の各第1貫通孔に近接して邪魔板が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような構成からなる基板収納容器によれば、識別部材が示す情報の変更を極めて容易に行うことができるようになる。また、たとえ近傍に重量調整用カウンターが配置されていても、識別部材が示す情報の変更を極めて容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施態様1の基板収納容器をほぼ正面側から観た斜視図である。
【図2】図1に示す基板収納容器を底部側から観た斜視図である。
【図3】本発明の実施態様1の基板収納容器に用いられる識別部材を示す構成図である。
【図4】本発明の基板収納容器のボトムプレートの第1貫通孔に嵌合された識別部材を示す断面図である。
【図5】本発明の基板収納容器のボトムプレートを示す斜視図、一部拡大図である。
【図6】本発明の基板収納容器のボトムプレートの裏面を示す斜視図である。
【図7】本発明の基板収納容器に取り付けられるカウンターウェイトを示す分解斜視図である。
【図8】本発明の基板収納容器に取り付けられるカウンターウェイトを示す断面図である。
【図9】本発明の基板収納容器に取り付けられた識別部材を取り外すための冶具を示す斜視図である。
【図10】本発明の基板収納容器に嵌合された識別部材を取り外す手順を示した図である。
【図11】本発明の基板収納容器の実施態様2を示す図で、ボトムプレートの識別領域を示した平面図である。
【図12】図11に対応する図で、識別部材の一つがスライドされていることを示す図である。
【図13】本発明の基板収納容器の実施態様2に用いられる識別部材を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
図1は、本発明の基板収納容器をほぼ正面側から観た斜視図である。図2は、図1に示す基板収納容器を底部から観た斜視図である。図1および図2に示す基板収納容器100は、収納する基板としてたとえば半導体ウェーハであり、その直径はたとえば450mmとなっている。
【0019】
図1において、基板収納容器100は、容器本体1と蓋体2とからなっている。容器本体1は正面側に開口部(図示せず)を備えたほぼ立方体をなし、蓋体2は前記開口部をシール可能に閉鎖して配置されるようになっている。
【0020】
容器本体1の内部は、図示していないが、容器本体1の内壁面に対向して配置された一対の支持部を備えている。一対の支持部は、それぞれ、容器本体1の開口部から観て、左側内壁面および右側内壁面に形成されている。そして、これら支持部に垂直方向に沿って並設された各溝に、半導体ウェーハの周辺の一部を支持させることにより、該半導体ウェーハを水平状態にして容器本体1内に収納できるようになっている。
【0021】
容器本体1の天面には、ロボテックフランジ4が取り付けられるようになっており、このロボテックフランジ4を介して工場内に設置されたレール(図示せず)に沿って基板収納容器100を搬送できるようになっている。このロボテックフランジ4は、たとえば、取り付け用のベース部と、このベース部から垂直に立ち上がる左右方向の側壁部と、これら左右方向の側壁部と連結される前後方向の側壁部と、これら各側壁部の上面に形成されたほぼ板状のフランジ部とから構成されている。
【0022】
蓋体2は、容器本体1の開口部(図示せず)を閉鎖するようにして配置され、施錠機構2aを内蔵して構成されている。この施錠機構2aは、回転可能な円形部材2bと、この円形部材2bに形成された円弧溝2cに挿入されるピン(図示せず)を備え蓋体2の上下方向のそれぞれに延在するアーム2dとによって構成され、円形部材2bの回動によって、アーム2dがその長手方向にスライドし、蓋体2の閉鎖の際には、アーム2dの先端が容器本体1の開口部の周辺の一部に設けた係止溝(図示せず)に係止されるようになっている。円形部材2bは、たとえば図示しない鍵を用いて、回転させるようになっている。なお、施錠機構2aは、たとえば2個設けられ、蓋体2を正面側から観た場合に、左右のそれぞれに設けられている。蓋体2は、このような施錠機構2aを内蔵することから、重量が比較的大きく、このため、基板収納容器100の重心の位置が収納されている半導体ウェーハの中心から正面側(蓋体2側)に偏心するようになっている。この偏心は後に詳述するカウンターウェイト20によって回避できるようになっている。
【0023】
また、容器本体1の底部にはボトムプレート3が取り付けられている。図2に示すように、ボトムプレート3は、容器本体1の底部とほぼ同じ大きさの矩形状をなしている。ボトムプレート3には、たとえば3個の位置決め部材5が内蔵されている。これら位置決め部材5は、容器本体1の開口部(蓋体2側)側の左右に2個設けられ、リア側(蓋体2と反対側)の中央において1個設けられている。すなわち、これら位置決め部材5は、ボトムプレート3上に仮想的に描いた「Y」字の三方向の先端部に位置づけられるように配置されている。これら位置決め部材5は、半導体ウェーハを処理する加工装置の個所に基板収納容器100が搬送されてきた際に、各位置決め部材5に対応する個所に配置された位置決めピンが嵌合されるようになっており、これにより、位置決めの芯出しが行われるようになっている。
【0024】
なお、これら位置決め部材5は、ボトムプレート3の表面に形成された位置決め用貫通穴7から露出されるようになっている。また、ボトムプレート3の面には、容器本体1の開口部から観て、前後方向と左右方向の各周辺にコンベア搬送用のコンベアレール6形成されている。また、容器本体1の開口部(蓋体2側)側に位置する2個の位置決め部材5の間には、基板収納容器100を加工装置に対して固定するため固定手段8が形成されている。
【0025】
さらに、ボトムプレート3には、容器本体1のリア側(蓋体2と反対側)側に位置する位置決め部材5(以下符号5aで示す)の周辺には、識別領域(図中点線枠で囲まれた領域)9が形成されている。識別領域9は、たとえば、容器本体1の開口部側から観た場合、前記位置決め部材5aよりも若干手前の個所に配置されるとともに、該位置決め部材5aを中心にして左右のそれぞれに2個設けられている。
【0026】
これら識別領域9には、それぞれ、ボトムプレート3の表面にたとえば円形からなる複数の第1貫通孔10が形成されている。これら第1貫通孔10は、各識別領域9において、容器本体1の開口部側からリア側への方向に対して直交する方向にたとえば4個並設されて形成されている。これにより、識別領域9には合計8個の第1貫通孔10が形成されることになる。これら第1貫通孔10は、後に詳述する識別部材12が必要に応じて嵌合されるようになっている。また、ボトムプレート3の表面には、第1貫通孔10に近接してスリット状の第2貫通孔11がそれぞれの第1貫通孔10に対応させて形成されている。第2貫通孔11は、容器本体1の開口部側から観た場合、第1貫通孔12よりも手前に位置し、スリットの長手方向は、容器本体1の開口部側からリア側への方向と一致づけられている。この第2貫通孔11は、第1貫通孔10に前記識別部材12を嵌合させた後において、この識別部材を第1貫通孔12から容易に取り出すため孔となっており、後に詳述する冶具が挿入できるようになっている。また、第2貫通孔11は幅の狭いスリット状となっていることから、作業員がこの第2貫通孔11に指を挿入してしまうということを回避できるようになる。
【0027】
図3(a)、(b)は、識別領域9に形成されている第1貫通穴10に着脱自在に取り付けられる識別部材12を示している。図3(a)は、識別部材12を上方から観た斜視図であり、図3(b)は、識別部材12を下方から観た斜視図である。
【0028】
図3(a)、(b)に示すように、識別部材12は、円筒部15を有し、この円筒部15の一端は蓋部13によって閉塞されている。蓋部13は、円筒部15の周面よりも径方向に延在されたつば部18を有し、その径は円筒部15の径よりも大きく形成されている。円筒部15の他端は開口され、その開口部には開口周縁から軸方向に延在するたとえば4個の切り欠き16が周方向に等間隔で形成されている。円筒部15の開口周縁は、上述の切り欠き16を設けることにより、弾性変形によって開口周縁の径を変化できるようになっている。また、円筒部15の開口の外周面には径方向に突出する爪部17が設けられている。
【0029】
図4は、ボトムプレート3の識別領域9に識別部材12を取り付けた状態を示す断面図である。図4は、第1貫通孔10の中心を通過し第2貫通孔11の延在方向に沿った線における断面図となっている。
【0030】
図4において、ボトムプレート3があり、その図中上側はボトムプレート3の内部に相当するようになっている。ここで、ボトムプレート3の貫通穴10は、その周縁がボトムプレート3の内部側に突出するとともに、内径を小さくする突起部10Aを有する段つき穴として構成されている。
【0031】
識別部材12は、ボトムプレート3対して図中下側から第1貫通孔10に挿入されるようになっている。識別部材12は爪部17を先にして第1貫通孔10に挿入されるようになっている。第1貫通孔10に挿入された識別部材12は、爪部17が第1貫通孔10の周縁に形成された突起部10Aを乗り越え、つば部18が、第1貫通孔10の周縁表面に接触するとともに、円筒部15に前記突起部10Aが対向することにより、該第1貫通孔10に係止されるようになっている。このため、第1貫通孔10に挿入された後の識別部材12は第1貫通孔10からは容易に外れ難くなるという効果を奏するようになる。
【0032】
第1貫通孔10に挿入された識別部材12は蓋部13を有することから、これにより、第1貫通孔10は識別部材12によって閉鎖されるようになる。したがって、第1貫通孔10の識別部材12による選択的な閉塞によって、第1貫通孔10の有り無しの状態を基板収納容器100の仕様に対応させることができる。加工装置側では、これらの第1貫通孔10の有り無しの状態をセンシングすることにより、基板収納容器100の各種の仕様を検出することができる。
【0033】
図5(a)は、第1貫通孔10のそれぞれに識別部材12を取り付けた場合のボトムプレート3の平面図を示し、このうち、識別領域9(図5(a)の実線丸枠)を、図5(b)によって拡大して示している。ボトムプレート3の表面と識別部材12の蓋部13の表面とはほぼ面一となっている。また、図6(a)は、図5(a)に示すボトムプレート3を裏返して示した斜視図である。図6(b)は、図6(a)に示す識別領域9(実線丸枠)を拡大して示した図である。図6(b)からも明らかなように、第1貫通孔10に挿入された識別部材12は、その切り欠き部16および爪部17等が目視されるようになっている。
【0034】
そして、図6(a)に示すように、並設される第1貫通孔10のうち一番外側の第1貫通孔10の周囲に、作業員の指挿入を防止する邪魔板19が設けられている。邪魔板19は、ボトムプレート3に壁状に植設されて形成されている。
この邪魔板19は、第1貫通孔10に隣接して配置される比較的径の大きな孔に作業員が指を入れ、誤って識別部材12を第1貫通孔10から外してしまうのを防止できるようになっている。また、ボトムプレート3の裏面には、識別領域9の近傍においてたとえば2個のカウンターウェイト20が取り付けられている。
【0035】
カウンターウェイト20は、容器本体1の開口部側から観て、それぞれの識別領域9よりも奥側に配置されている。このカウンターウェイト20は容器本体1の蓋体2の重量とバランスをとり、これにより、基板収納容器100の重心位置を基板収納容器100に収納される半導体ウェーハの中心近傍に一致させることができるようになる。
【0036】
図7、図8は、それぞれ、カウンターウェイト20の展開斜視図と、断面図を示している。カウンターウェイト20は、図7に示すように、ウェイトカバー21と、密封用のOリング22と、ウエイト本体23とを有していて、ボトムプレート3に取り付けられるようになっている。ウェイトカバー21は、上部が閉塞された円筒状をなし、下端の開口部周縁にはフランジ部24を有している。フランジ部24には、ボトムプレート3との間にシールを形成するOリング21を収納可能な溝25(図8参照)が形成されていて、この溝25にOリングが収納されるようになっている。フランジ部24の外側には、ボトムプレートへの取り付け用の円柱ボス26がたとえば2箇所に形成されている。ウエイト本体23は、アルミやSUSなどの金属部材を用いることができ、ウェイトカバー21の形状に対応した円柱形状となっている。ウエイト本体23の表面は、金属イオンによる汚染を防止するため樹脂コーティングを施しておくことが好ましい。
【0037】
図9は、ボトムプレート3の第1貫通孔10に挿入された識別部材12を極めて容易に取り外すための治具27を示した斜視図である。冶具27は、把持部28と、この把持部28からある程度伸長した後にJ字状に屈曲する鍵部29を有して構成されている。
【0038】
図10(a)ないし(c)は、冶具27を用いて、ボトムプレート3の第1貫通孔10に嵌合された識別部材12を取り外す手順を示した説明図である。まず、図10(a)に示すように、冶具27は、その鍵部29をボトムプレート3の第2貫通孔11に挿入して用いられる。鍵部29は平面的に観た場合に線分状となっていることから、スリット状に形成された第2貫通孔11には容易に挿入させることができ。その後、図10(b)に示すように、鍵部29を第1貫通孔10側に移動できるように冶具27を操作すると、鍵部29の先端は、第1貫通孔10に挿入されている識別部材12の上方に位置づけられるようになる。そして、図10(c)に示すように、冶具27を手前に引くように操作することにより、鍵部29の先端は、識別部材12をボトムプレート3から外れる方向に押圧するようになる。鍵部29の先端によって押圧された識別部材12は、切り欠き16が形成された円筒部15が弾性変形することにより、爪部17が第1貫通孔10の突起部10Aから外れ、第1貫通孔10から容易に取り外せるようになる。
【0039】
このように構成された基板収納容器100は、ボトムプレート3に形成されている第1貫通孔10に嵌合されている識別部材12を、冶具27を用いて容易に外すことができるようになる。また、たとえ近傍にカウンターウェイト20が配置されていても、カウンターウェイト20が障害となることなく、第1貫通孔10に嵌合されている識別部材12を、冶具27を用いて容易に外すことができるようになる。
(実施態様2)
【0040】
実施態様1では、識別部材12をボトムプレート3に形成した第1貫通孔10に対して着脱自在に構成し、識別部材12の有り無しで、それぞれの情報を表すようにしたものである。しかし、識別部材をボトムプレートに形成した長孔に嵌合させるようにし、識別部材を長孔の一端側(第1位置)に移動させ、あるいは他端側(第2位置)に移動させることによって、それぞれの情報を表すように構成してもよい。
【0041】
図11は、識別部材30をボトムプレート3上で移動できるように構成した場合の平面図である。図11は、識別領域をボトムプレート3の表面側から観た図となっている。
【0042】
図11において、識別領域にはたとえば4個の識別部材30が取り付けられている。これら識別部材30のうち一つの識別部材(たとえば図中一番左側にある識別部材)について説明すると、該識別部材30はボトムプレート3に形成された長孔41に沿って移動できるようになっている。図11は、該識別部材30が長孔の一端に位置づけられて示され、図11に対応して描いた図12には、該識別部材30が長孔41の他端に位置づけられて示されている。長孔41は識別部材30のガイドレールとしての機能を有するようになっている。
【0043】
図13は、識別部材30のみを取り出した示した斜視図である。識別部材30は、平坦な円形部材からなる検出部31と、この検出部31の中心から垂直に延在する支柱部32と、この支柱部32の端部に形成され検出部31と平行に配置される棒状の脚部33とから構成されている。ここで、脚部33の両端はたとえば球状面となっている。また、検出部31の表面の一部には小さな径を有する孔34が設けられている。この孔34は図示せぬ冶具の鍵部が挿入されて識別部材30をボトムプレート3上で移動させる際に用いられるようになっている。
【0044】
識別部材30の支柱部32は前記長孔41内に位置づけられるようになっており、検出部31と脚部33はボトムプレート3を表裏から挟むように位置づけられるようになっている。
【0045】
長孔41の一端はこの長孔41と交差するようにして識別部材30の挿入孔42が設けられ、識別部材30の脚部33の形状に対応した形状となっている。これにより、識別部材30はその脚部33側から挿入口42に挿入させることによって、支柱部32を前記長孔41内に位置づけさせるようにできるようになっている。
【0046】
識別部材30が、図11に示すように、長孔31の一端に移動した場合、長孔11の両側に表面が球状となっている係止部50(図12にて符号50aで示す)が配置され、識別部材30の脚部33の両端(球状となっている)が該係止部50aを乗り越えて移動することによって、たとえば第1位置における停止を確保できるようになっている。同様に、識別部材30が、図12に示すように、長孔41の他端に移動した場合、長孔41の両側に表面が球状となっている係止部50(図11にて符号50bで示す)が配置され、識別部材30の脚部33の両端(球状となっている)が該係止部50bを乗り越えて移動することによって、たとえば第1位置における停止を確保できるようになっている。この場合、図11に示すように、前記係止部50bに対して挿入孔42側に近接する個所に該係止部50bよりも長孔42側に若干大きく突出する係止部50(図11にて符号50cで示す)が設けられ、識別部材30の脚部33が挿入孔42にまで移動して識別部材30が離脱してしまうのを防止できるようになっている。
【0047】
長孔41に沿った識別部材30の移動(スライド)は、第1位置と第2位置とのいずれかにおいて停止を充分に確保できるために、比較的大きな力を要するようになっている。しかし、この識別部材30の移動は、たとえば鍵部を有する冶具を用い、該鍵部の先端を検出部31の孔34に係止させた状態で所望の方向に引っ張ることによって容易になされるようになる。
【0048】
このように構成された基板収納容器100は、ボトムプレート3に形成されている長孔41に嵌合されている識別部材30を、冶具を用いて容易にスライドさせることができるようになる。また、たとえ近傍にカウンターウェイト20が配置されていても、カウンターウェイト20が妨害となることなく、長孔41に嵌合されている識別部材30を、冶具を用いて容易にスライドさせることができるようになる。
【0049】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0050】
1……容器本体、2……蓋体、2a……施錠機構、2b……円形部材、2c……円弧溝、2d……アーム、3……ボトムプレート、4……ロボティックフランジ、5……位置決め部材、6……コンベアレール、7……位置決め用貫通穴、8……固定手段、9……識別領域、10……第1貫通孔、10A……突起部、11……第2貫通穴、12……識別部材、13……蓋部、15……円筒部、16……切り欠き、17……爪部、18……つば部、19……邪魔板、20……カウンターウェイト、21……ウェイトカバー、22……Oリング、23……ウエイト本体、24……フランジ、25……Oリング収納溝、26……円柱ボス、27……治具、8……把持部、29……鍵部、30……識別部材、31……検出部、32……支柱部、33……脚部、34……孔、41……長孔、42……挿入孔、100……基板収納容器。
【技術分野】
【0001】
本発明は基板収納容器に係り、特に、たとえば半導体ウェーハなどの基板を収納して用いられ、半導体生産工程で、該基板に各種の処理・加工の際に、該基板を搬送・保管する基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板収納容器として、正面に開口部を有する容器本体と、この容器本体の開口部をシール可能に閉鎖する蓋体とを備えて構成されたものが知られている。容器本体には、その内壁面に対向して配置された一対の支持部を備え、これら支持部に垂直方向に沿って並設された各溝に、基板の周辺の一部を支持させることにより、該基板を水平状態にして容器本体内に収納するようになっている。
【0003】
このような基板収納容器は、その天面にロボテックフランジが取り付けられ、このロボテックフランジを介して工場内に設置されたレールに沿って搬送できるようになっている。
【0004】
また、基板収納容器の底面にはボトムプレートが設けられており、このボトムプレートによって、基板収納容器を、コンベア搬送したり、各加工装置の設置個所において基板収納容器のセンシング(識別)、位置決め、あるいは固定したりできるようになっている。
【0005】
このことから、ボトムプレートには、少なくとも、1対のコンベアレールと、識別部材の取り付けがなされる個所(識別領域)と、基板収納容器の位置決めのためのガイド部材と、基板収納容器の加工装置等への固定を行うための固定部とが設けられている。
【0006】
そして、ボトムプレートの識別部材の取り付けがなされる領域には、複数の貫通孔が設けられ、これら貫通孔に識別部材となるプラグを選択的に取り付けることによって該貫通孔を閉塞させるようになっている。すなわち、貫通孔のプラグによる選択的な閉塞によって、貫通孔の有り無しの状態を基板収納容器の仕様に対応させるようにしている。加工装置側では、これらの貫通孔の有り無しの状態をセンシングすることにより、基板収納容器の仕様を確認することができるようになっている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-64378号公報
【特許文献2】特開2000-315721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した基板収納容器において、たとえば直径300mmの半導体ウェーハを収納して半導体部品の生産工場で使用されていた基板収納容器のボトムプレートには、識別領域として左右に2箇所ずつ合計4つの位置に識別部材を設けることが、SEMI規格 E47.1等によって定められている。ここで、作業員が基板収納容器を持ち上げたりする際に、基板収納容器の底部を持ち上げたり、点検したりすることがあるが、その際に誤ってボトムプレートと識別部材の間に入れた指が、識別部材に触れてしまい、識別部材を外してしまう不都合があった。
【0009】
また、昨今、半導体部品の生産工場においてより細かな管理を行うため、識別部位の個数を増やして運用することが検討されている。例えば、次世代の半導体ウェーハとして検討されている直径450mmの半導体ウェーハを収納するための基板収納容器として、左右の識別領域に4箇所ずつの貫通穴を間隔狭く並べて配置することが提案されている。これにより、基板収納容器の仕様を従来の16倍(28/24 =16)に増大させるようにできる。しかし、このようにした場合、間隔を狭めて形成した貫通孔のそれぞれに識別部材を取り付けた場合、周囲に充分なスペースがないために、その後に該識別部材を取り外す際に、その取り外しが困難になってしまうことが懸念される。
【0010】
さらに、基板収納容器は、その正面側に蓋体を備え、蓋体には容器本体との施錠を行う施錠機構が内蔵されているために、基板収納容器の重心位置が収納させている基板の中心から正面側に偏心することになる。このような偏心は、基板収納容器を高速搬送するときなどに揺れが大きくなって安定な搬送ができないといった弊害をもたらす。このため、ボトムプレートには、基板収納容器の重心位置を調整するカウンターウェイト(重量調整用カウンター)をリア側(蓋体を備える正面側と反対側)に設けることが検討されている。しかし、このカウンターウェイトを設ける位置が識別領域の近傍になってしまうことが免れず、識別部材を貫通孔から取り外すことをさらに困難にさせてしまう不都合が生じる。
【0011】
本発明の目的は、識別部材が示す情報の変更を極めて容易に行うことができる基板収納容器を提供することにある。
【0012】
本発明の目的は、たとえ近傍に重量調整用カウンターが配置されていても、識別部材が示す情報の変更を極めて容易に行うことができる基板収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、識別部材が示す情報の変更をたとえば簡易な構成からなる冶具を用いて行うようにしたものである。
【0014】
本発明は、以下に示す構成によって把握することができる。
(1)本発明の基板収納容器は、開口を有し前記開口を通して基板を収納させる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体の底部に取り付けられるボトムプレートを備える基板収納容器であって、前記ボトムプレートの識別領域に、貫通孔の開閉を行い、あるいは貫通孔に沿ってスライドする識別部材を備え、前記識別部材は、冶具を用いて貫通孔から取り外すようにし、あるいはスライドできるようにしたことを特徴とする。
(2)本発明の基板収納容器は、(1)を前提に、前記ボトムプレートには、前記識別領域が前記蓋体と反対側に形成され、この識別領域に近接して重心調整用カウンターが配置されていることを特徴とする。
【0015】
(3)本発明の基板収納容器は、(1)を前提に、ボトムプレートの識別領域に、複数の第1貫通孔が形成されているとともに、これら第1貫通孔のうち選択された第1貫通孔に着脱可能に取り付けられる識別部材を備え、複数の前記第1貫通孔のそれぞれに近接して配置された第2貫通孔が形成され、前記第1貫通孔に取り付けられている識別部材は前記第2貫通孔を通した冶具によって取り外せるようになっていることを特徴とする。
(4)本発明の基板収納容器は、(3)を前提に、前記第2貫通孔は、その形状がスリット状となっていることを特徴とする。
(5)本発明の基板収納容器は、(3)を前提に、複数からなる第1貫通孔は並設されて形成され、その両端の各第1貫通孔に近接して邪魔板が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような構成からなる基板収納容器によれば、識別部材が示す情報の変更を極めて容易に行うことができるようになる。また、たとえ近傍に重量調整用カウンターが配置されていても、識別部材が示す情報の変更を極めて容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施態様1の基板収納容器をほぼ正面側から観た斜視図である。
【図2】図1に示す基板収納容器を底部側から観た斜視図である。
【図3】本発明の実施態様1の基板収納容器に用いられる識別部材を示す構成図である。
【図4】本発明の基板収納容器のボトムプレートの第1貫通孔に嵌合された識別部材を示す断面図である。
【図5】本発明の基板収納容器のボトムプレートを示す斜視図、一部拡大図である。
【図6】本発明の基板収納容器のボトムプレートの裏面を示す斜視図である。
【図7】本発明の基板収納容器に取り付けられるカウンターウェイトを示す分解斜視図である。
【図8】本発明の基板収納容器に取り付けられるカウンターウェイトを示す断面図である。
【図9】本発明の基板収納容器に取り付けられた識別部材を取り外すための冶具を示す斜視図である。
【図10】本発明の基板収納容器に嵌合された識別部材を取り外す手順を示した図である。
【図11】本発明の基板収納容器の実施態様2を示す図で、ボトムプレートの識別領域を示した平面図である。
【図12】図11に対応する図で、識別部材の一つがスライドされていることを示す図である。
【図13】本発明の基板収納容器の実施態様2に用いられる識別部材を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
図1は、本発明の基板収納容器をほぼ正面側から観た斜視図である。図2は、図1に示す基板収納容器を底部から観た斜視図である。図1および図2に示す基板収納容器100は、収納する基板としてたとえば半導体ウェーハであり、その直径はたとえば450mmとなっている。
【0019】
図1において、基板収納容器100は、容器本体1と蓋体2とからなっている。容器本体1は正面側に開口部(図示せず)を備えたほぼ立方体をなし、蓋体2は前記開口部をシール可能に閉鎖して配置されるようになっている。
【0020】
容器本体1の内部は、図示していないが、容器本体1の内壁面に対向して配置された一対の支持部を備えている。一対の支持部は、それぞれ、容器本体1の開口部から観て、左側内壁面および右側内壁面に形成されている。そして、これら支持部に垂直方向に沿って並設された各溝に、半導体ウェーハの周辺の一部を支持させることにより、該半導体ウェーハを水平状態にして容器本体1内に収納できるようになっている。
【0021】
容器本体1の天面には、ロボテックフランジ4が取り付けられるようになっており、このロボテックフランジ4を介して工場内に設置されたレール(図示せず)に沿って基板収納容器100を搬送できるようになっている。このロボテックフランジ4は、たとえば、取り付け用のベース部と、このベース部から垂直に立ち上がる左右方向の側壁部と、これら左右方向の側壁部と連結される前後方向の側壁部と、これら各側壁部の上面に形成されたほぼ板状のフランジ部とから構成されている。
【0022】
蓋体2は、容器本体1の開口部(図示せず)を閉鎖するようにして配置され、施錠機構2aを内蔵して構成されている。この施錠機構2aは、回転可能な円形部材2bと、この円形部材2bに形成された円弧溝2cに挿入されるピン(図示せず)を備え蓋体2の上下方向のそれぞれに延在するアーム2dとによって構成され、円形部材2bの回動によって、アーム2dがその長手方向にスライドし、蓋体2の閉鎖の際には、アーム2dの先端が容器本体1の開口部の周辺の一部に設けた係止溝(図示せず)に係止されるようになっている。円形部材2bは、たとえば図示しない鍵を用いて、回転させるようになっている。なお、施錠機構2aは、たとえば2個設けられ、蓋体2を正面側から観た場合に、左右のそれぞれに設けられている。蓋体2は、このような施錠機構2aを内蔵することから、重量が比較的大きく、このため、基板収納容器100の重心の位置が収納されている半導体ウェーハの中心から正面側(蓋体2側)に偏心するようになっている。この偏心は後に詳述するカウンターウェイト20によって回避できるようになっている。
【0023】
また、容器本体1の底部にはボトムプレート3が取り付けられている。図2に示すように、ボトムプレート3は、容器本体1の底部とほぼ同じ大きさの矩形状をなしている。ボトムプレート3には、たとえば3個の位置決め部材5が内蔵されている。これら位置決め部材5は、容器本体1の開口部(蓋体2側)側の左右に2個設けられ、リア側(蓋体2と反対側)の中央において1個設けられている。すなわち、これら位置決め部材5は、ボトムプレート3上に仮想的に描いた「Y」字の三方向の先端部に位置づけられるように配置されている。これら位置決め部材5は、半導体ウェーハを処理する加工装置の個所に基板収納容器100が搬送されてきた際に、各位置決め部材5に対応する個所に配置された位置決めピンが嵌合されるようになっており、これにより、位置決めの芯出しが行われるようになっている。
【0024】
なお、これら位置決め部材5は、ボトムプレート3の表面に形成された位置決め用貫通穴7から露出されるようになっている。また、ボトムプレート3の面には、容器本体1の開口部から観て、前後方向と左右方向の各周辺にコンベア搬送用のコンベアレール6形成されている。また、容器本体1の開口部(蓋体2側)側に位置する2個の位置決め部材5の間には、基板収納容器100を加工装置に対して固定するため固定手段8が形成されている。
【0025】
さらに、ボトムプレート3には、容器本体1のリア側(蓋体2と反対側)側に位置する位置決め部材5(以下符号5aで示す)の周辺には、識別領域(図中点線枠で囲まれた領域)9が形成されている。識別領域9は、たとえば、容器本体1の開口部側から観た場合、前記位置決め部材5aよりも若干手前の個所に配置されるとともに、該位置決め部材5aを中心にして左右のそれぞれに2個設けられている。
【0026】
これら識別領域9には、それぞれ、ボトムプレート3の表面にたとえば円形からなる複数の第1貫通孔10が形成されている。これら第1貫通孔10は、各識別領域9において、容器本体1の開口部側からリア側への方向に対して直交する方向にたとえば4個並設されて形成されている。これにより、識別領域9には合計8個の第1貫通孔10が形成されることになる。これら第1貫通孔10は、後に詳述する識別部材12が必要に応じて嵌合されるようになっている。また、ボトムプレート3の表面には、第1貫通孔10に近接してスリット状の第2貫通孔11がそれぞれの第1貫通孔10に対応させて形成されている。第2貫通孔11は、容器本体1の開口部側から観た場合、第1貫通孔12よりも手前に位置し、スリットの長手方向は、容器本体1の開口部側からリア側への方向と一致づけられている。この第2貫通孔11は、第1貫通孔10に前記識別部材12を嵌合させた後において、この識別部材を第1貫通孔12から容易に取り出すため孔となっており、後に詳述する冶具が挿入できるようになっている。また、第2貫通孔11は幅の狭いスリット状となっていることから、作業員がこの第2貫通孔11に指を挿入してしまうということを回避できるようになる。
【0027】
図3(a)、(b)は、識別領域9に形成されている第1貫通穴10に着脱自在に取り付けられる識別部材12を示している。図3(a)は、識別部材12を上方から観た斜視図であり、図3(b)は、識別部材12を下方から観た斜視図である。
【0028】
図3(a)、(b)に示すように、識別部材12は、円筒部15を有し、この円筒部15の一端は蓋部13によって閉塞されている。蓋部13は、円筒部15の周面よりも径方向に延在されたつば部18を有し、その径は円筒部15の径よりも大きく形成されている。円筒部15の他端は開口され、その開口部には開口周縁から軸方向に延在するたとえば4個の切り欠き16が周方向に等間隔で形成されている。円筒部15の開口周縁は、上述の切り欠き16を設けることにより、弾性変形によって開口周縁の径を変化できるようになっている。また、円筒部15の開口の外周面には径方向に突出する爪部17が設けられている。
【0029】
図4は、ボトムプレート3の識別領域9に識別部材12を取り付けた状態を示す断面図である。図4は、第1貫通孔10の中心を通過し第2貫通孔11の延在方向に沿った線における断面図となっている。
【0030】
図4において、ボトムプレート3があり、その図中上側はボトムプレート3の内部に相当するようになっている。ここで、ボトムプレート3の貫通穴10は、その周縁がボトムプレート3の内部側に突出するとともに、内径を小さくする突起部10Aを有する段つき穴として構成されている。
【0031】
識別部材12は、ボトムプレート3対して図中下側から第1貫通孔10に挿入されるようになっている。識別部材12は爪部17を先にして第1貫通孔10に挿入されるようになっている。第1貫通孔10に挿入された識別部材12は、爪部17が第1貫通孔10の周縁に形成された突起部10Aを乗り越え、つば部18が、第1貫通孔10の周縁表面に接触するとともに、円筒部15に前記突起部10Aが対向することにより、該第1貫通孔10に係止されるようになっている。このため、第1貫通孔10に挿入された後の識別部材12は第1貫通孔10からは容易に外れ難くなるという効果を奏するようになる。
【0032】
第1貫通孔10に挿入された識別部材12は蓋部13を有することから、これにより、第1貫通孔10は識別部材12によって閉鎖されるようになる。したがって、第1貫通孔10の識別部材12による選択的な閉塞によって、第1貫通孔10の有り無しの状態を基板収納容器100の仕様に対応させることができる。加工装置側では、これらの第1貫通孔10の有り無しの状態をセンシングすることにより、基板収納容器100の各種の仕様を検出することができる。
【0033】
図5(a)は、第1貫通孔10のそれぞれに識別部材12を取り付けた場合のボトムプレート3の平面図を示し、このうち、識別領域9(図5(a)の実線丸枠)を、図5(b)によって拡大して示している。ボトムプレート3の表面と識別部材12の蓋部13の表面とはほぼ面一となっている。また、図6(a)は、図5(a)に示すボトムプレート3を裏返して示した斜視図である。図6(b)は、図6(a)に示す識別領域9(実線丸枠)を拡大して示した図である。図6(b)からも明らかなように、第1貫通孔10に挿入された識別部材12は、その切り欠き部16および爪部17等が目視されるようになっている。
【0034】
そして、図6(a)に示すように、並設される第1貫通孔10のうち一番外側の第1貫通孔10の周囲に、作業員の指挿入を防止する邪魔板19が設けられている。邪魔板19は、ボトムプレート3に壁状に植設されて形成されている。
この邪魔板19は、第1貫通孔10に隣接して配置される比較的径の大きな孔に作業員が指を入れ、誤って識別部材12を第1貫通孔10から外してしまうのを防止できるようになっている。また、ボトムプレート3の裏面には、識別領域9の近傍においてたとえば2個のカウンターウェイト20が取り付けられている。
【0035】
カウンターウェイト20は、容器本体1の開口部側から観て、それぞれの識別領域9よりも奥側に配置されている。このカウンターウェイト20は容器本体1の蓋体2の重量とバランスをとり、これにより、基板収納容器100の重心位置を基板収納容器100に収納される半導体ウェーハの中心近傍に一致させることができるようになる。
【0036】
図7、図8は、それぞれ、カウンターウェイト20の展開斜視図と、断面図を示している。カウンターウェイト20は、図7に示すように、ウェイトカバー21と、密封用のOリング22と、ウエイト本体23とを有していて、ボトムプレート3に取り付けられるようになっている。ウェイトカバー21は、上部が閉塞された円筒状をなし、下端の開口部周縁にはフランジ部24を有している。フランジ部24には、ボトムプレート3との間にシールを形成するOリング21を収納可能な溝25(図8参照)が形成されていて、この溝25にOリングが収納されるようになっている。フランジ部24の外側には、ボトムプレートへの取り付け用の円柱ボス26がたとえば2箇所に形成されている。ウエイト本体23は、アルミやSUSなどの金属部材を用いることができ、ウェイトカバー21の形状に対応した円柱形状となっている。ウエイト本体23の表面は、金属イオンによる汚染を防止するため樹脂コーティングを施しておくことが好ましい。
【0037】
図9は、ボトムプレート3の第1貫通孔10に挿入された識別部材12を極めて容易に取り外すための治具27を示した斜視図である。冶具27は、把持部28と、この把持部28からある程度伸長した後にJ字状に屈曲する鍵部29を有して構成されている。
【0038】
図10(a)ないし(c)は、冶具27を用いて、ボトムプレート3の第1貫通孔10に嵌合された識別部材12を取り外す手順を示した説明図である。まず、図10(a)に示すように、冶具27は、その鍵部29をボトムプレート3の第2貫通孔11に挿入して用いられる。鍵部29は平面的に観た場合に線分状となっていることから、スリット状に形成された第2貫通孔11には容易に挿入させることができ。その後、図10(b)に示すように、鍵部29を第1貫通孔10側に移動できるように冶具27を操作すると、鍵部29の先端は、第1貫通孔10に挿入されている識別部材12の上方に位置づけられるようになる。そして、図10(c)に示すように、冶具27を手前に引くように操作することにより、鍵部29の先端は、識別部材12をボトムプレート3から外れる方向に押圧するようになる。鍵部29の先端によって押圧された識別部材12は、切り欠き16が形成された円筒部15が弾性変形することにより、爪部17が第1貫通孔10の突起部10Aから外れ、第1貫通孔10から容易に取り外せるようになる。
【0039】
このように構成された基板収納容器100は、ボトムプレート3に形成されている第1貫通孔10に嵌合されている識別部材12を、冶具27を用いて容易に外すことができるようになる。また、たとえ近傍にカウンターウェイト20が配置されていても、カウンターウェイト20が障害となることなく、第1貫通孔10に嵌合されている識別部材12を、冶具27を用いて容易に外すことができるようになる。
(実施態様2)
【0040】
実施態様1では、識別部材12をボトムプレート3に形成した第1貫通孔10に対して着脱自在に構成し、識別部材12の有り無しで、それぞれの情報を表すようにしたものである。しかし、識別部材をボトムプレートに形成した長孔に嵌合させるようにし、識別部材を長孔の一端側(第1位置)に移動させ、あるいは他端側(第2位置)に移動させることによって、それぞれの情報を表すように構成してもよい。
【0041】
図11は、識別部材30をボトムプレート3上で移動できるように構成した場合の平面図である。図11は、識別領域をボトムプレート3の表面側から観た図となっている。
【0042】
図11において、識別領域にはたとえば4個の識別部材30が取り付けられている。これら識別部材30のうち一つの識別部材(たとえば図中一番左側にある識別部材)について説明すると、該識別部材30はボトムプレート3に形成された長孔41に沿って移動できるようになっている。図11は、該識別部材30が長孔の一端に位置づけられて示され、図11に対応して描いた図12には、該識別部材30が長孔41の他端に位置づけられて示されている。長孔41は識別部材30のガイドレールとしての機能を有するようになっている。
【0043】
図13は、識別部材30のみを取り出した示した斜視図である。識別部材30は、平坦な円形部材からなる検出部31と、この検出部31の中心から垂直に延在する支柱部32と、この支柱部32の端部に形成され検出部31と平行に配置される棒状の脚部33とから構成されている。ここで、脚部33の両端はたとえば球状面となっている。また、検出部31の表面の一部には小さな径を有する孔34が設けられている。この孔34は図示せぬ冶具の鍵部が挿入されて識別部材30をボトムプレート3上で移動させる際に用いられるようになっている。
【0044】
識別部材30の支柱部32は前記長孔41内に位置づけられるようになっており、検出部31と脚部33はボトムプレート3を表裏から挟むように位置づけられるようになっている。
【0045】
長孔41の一端はこの長孔41と交差するようにして識別部材30の挿入孔42が設けられ、識別部材30の脚部33の形状に対応した形状となっている。これにより、識別部材30はその脚部33側から挿入口42に挿入させることによって、支柱部32を前記長孔41内に位置づけさせるようにできるようになっている。
【0046】
識別部材30が、図11に示すように、長孔31の一端に移動した場合、長孔11の両側に表面が球状となっている係止部50(図12にて符号50aで示す)が配置され、識別部材30の脚部33の両端(球状となっている)が該係止部50aを乗り越えて移動することによって、たとえば第1位置における停止を確保できるようになっている。同様に、識別部材30が、図12に示すように、長孔41の他端に移動した場合、長孔41の両側に表面が球状となっている係止部50(図11にて符号50bで示す)が配置され、識別部材30の脚部33の両端(球状となっている)が該係止部50bを乗り越えて移動することによって、たとえば第1位置における停止を確保できるようになっている。この場合、図11に示すように、前記係止部50bに対して挿入孔42側に近接する個所に該係止部50bよりも長孔42側に若干大きく突出する係止部50(図11にて符号50cで示す)が設けられ、識別部材30の脚部33が挿入孔42にまで移動して識別部材30が離脱してしまうのを防止できるようになっている。
【0047】
長孔41に沿った識別部材30の移動(スライド)は、第1位置と第2位置とのいずれかにおいて停止を充分に確保できるために、比較的大きな力を要するようになっている。しかし、この識別部材30の移動は、たとえば鍵部を有する冶具を用い、該鍵部の先端を検出部31の孔34に係止させた状態で所望の方向に引っ張ることによって容易になされるようになる。
【0048】
このように構成された基板収納容器100は、ボトムプレート3に形成されている長孔41に嵌合されている識別部材30を、冶具を用いて容易にスライドさせることができるようになる。また、たとえ近傍にカウンターウェイト20が配置されていても、カウンターウェイト20が妨害となることなく、長孔41に嵌合されている識別部材30を、冶具を用いて容易にスライドさせることができるようになる。
【0049】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0050】
1……容器本体、2……蓋体、2a……施錠機構、2b……円形部材、2c……円弧溝、2d……アーム、3……ボトムプレート、4……ロボティックフランジ、5……位置決め部材、6……コンベアレール、7……位置決め用貫通穴、8……固定手段、9……識別領域、10……第1貫通孔、10A……突起部、11……第2貫通穴、12……識別部材、13……蓋部、15……円筒部、16……切り欠き、17……爪部、18……つば部、19……邪魔板、20……カウンターウェイト、21……ウェイトカバー、22……Oリング、23……ウエイト本体、24……フランジ、25……Oリング収納溝、26……円柱ボス、27……治具、8……把持部、29……鍵部、30……識別部材、31……検出部、32……支柱部、33……脚部、34……孔、41……長孔、42……挿入孔、100……基板収納容器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し前記開口を通して基板を収納させる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体の底部に取り付けられるボトムプレートを備える基板収納容器であって、
前記ボトムプレートの識別領域に、貫通孔の開閉を行い、あるいは貫通孔に沿ってスライドする識別部材を備え、
前記識別部材は、冶具を用いて貫通孔から取り外すようにし、あるいはスライドできるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記ボトムプレートには、前記識別領域が前記蓋体と反対側に形成され、この識別領域に近接して重心調整用カウンターが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
ボトムプレートの識別領域に、複数の第1貫通孔が形成されているとともに、これら第1貫通孔のうち選択された第1貫通孔に着脱可能に取り付けられる識別部材を備え、
複数の前記第1貫通孔のそれぞれに近接して配置された第2貫通孔が形成され、
前記第1貫通孔に取り付けられている識別部材は前記第2貫通孔を通した冶具によって取り外せるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記第2貫通孔は、その形状がスリット状となっていることを特徴とする請求項3に記載の基板収納容器。
【請求項5】
複数からなる第1貫通孔は並設されて形成され、その両端の各第1貫通孔に近接して邪魔板が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の基板収納容器。
【請求項1】
開口を有し前記開口を通して基板を収納させる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体の底部に取り付けられるボトムプレートを備える基板収納容器であって、
前記ボトムプレートの識別領域に、貫通孔の開閉を行い、あるいは貫通孔に沿ってスライドする識別部材を備え、
前記識別部材は、冶具を用いて貫通孔から取り外すようにし、あるいはスライドできるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記ボトムプレートには、前記識別領域が前記蓋体と反対側に形成され、この識別領域に近接して重心調整用カウンターが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
ボトムプレートの識別領域に、複数の第1貫通孔が形成されているとともに、これら第1貫通孔のうち選択された第1貫通孔に着脱可能に取り付けられる識別部材を備え、
複数の前記第1貫通孔のそれぞれに近接して配置された第2貫通孔が形成され、
前記第1貫通孔に取り付けられている識別部材は前記第2貫通孔を通した冶具によって取り外せるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記第2貫通孔は、その形状がスリット状となっていることを特徴とする請求項3に記載の基板収納容器。
【請求項5】
複数からなる第1貫通孔は並設されて形成され、その両端の各第1貫通孔に近接して邪魔板が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の基板収納容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−114371(P2012−114371A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264167(P2010−264167)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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