基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラム
【課題】基板全体としての変形態様をより容易に捉えることのできる基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムを提供する。
【解決手段】予め基板上に設定した複数の目標位置について、基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の工程(ステップS11〜S13)と、各目標位置について、該目標位置と移動後の基板の位置とを関連付けした位置データを、記憶装置に記憶させる第2の工程(ステップS14〜S15)と、記憶装置に記憶された位置データをコンピュータに入力し、該コンピュータに、その位置データに基づくグラフィックデータを作成させるとともに、そのグラフィックデータを表示装置の画面に視認可能にグラフィック表示させ、該画面上のグラフィック表示に基づいて、基板の変形を認識する第3の工程と、を通じて、当該基板の変形特性を認識する。
【解決手段】予め基板上に設定した複数の目標位置について、基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の工程(ステップS11〜S13)と、各目標位置について、該目標位置と移動後の基板の位置とを関連付けした位置データを、記憶装置に記憶させる第2の工程(ステップS14〜S15)と、記憶装置に記憶された位置データをコンピュータに入力し、該コンピュータに、その位置データに基づくグラフィックデータを作成させるとともに、そのグラフィックデータを表示装置の画面に視認可能にグラフィック表示させ、該画面上のグラフィック表示に基づいて、基板の変形を認識する第3の工程と、を通じて、当該基板の変形特性を認識する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント配線板など基板の変形態様をより容易に捉えるための基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばプリント配線板に電子部品を実装するため、又はプリント配線板自身を位置決めするなどのために、プリント配線板の所定の目標位置(目標座標)に穴を明ける穴明け装置がある。こうした穴明け装置では、プリント配線板の穴を明けるべき位置に、予めマークを印刷しておくことで、穴明け装置自身が装備する可視光カメラやX線カメラなどを用いて、そのマークを撮影し、さらにその画像を処理することで、そのマークの中心を算出することができる。このため、ドリルなどの穴明け加工具を用いて、その画像処理に基づき算出された位置に、穴を明けることで、穴を明けるべき位置、すなわち上記マークの中心に、比較的正確に穴を明けることが可能であった。
【0003】
しかし、可視光カメラやX線カメラの特性上、その撮像範囲の中心付近で撮像した画像に比べて周辺付近で撮影した画像は歪んでしまうという欠点がある。しかも、その歪みは均一ではない。すなわち上記穴明け装置では、こうした歪みに起因して、中心付近で上記マークを撮影して画像処理した場合と、周辺部でマークを撮影して画像処理した場合とを比較すると、中心付近でマークを撮影した方が、より高い精度でマークの位置を算出することができる。逆に、周辺部付近で撮影した場合は、中心付近で撮影した場合よりも算出精度が低下し、実際の位置と算出した位置とのずれが大きくなる。したがって、高い精度でマークの中心に穴を明けたい場合には、できるだけカメラの中心に近い位置でマークを撮影することが好ましい。
【0004】
次に、基板載置台、基板把持部、及び基板移動用アクチュエータ部を備える自動穴明け装置を使用してプリント配線板等の基板に穴明けをする場合について考える。この種の自動穴明け装置は、基板載置台に基板を投入する方向を?、それに直交する方向をY、XY平面に垂直な方向をZとした場合、基板把持部により基板を把持しつつ、基板移動用アクチュエータ部によりXY平面上を移動させることで、基板の任意の位置に穴を明けることができる。この穴明けに際しては、例えば基板を基板載置台の所定の位置に位置決めし、例えば基板の左上の端部を原点として、それ以降の基板の移動を基板の設計値(数値データ)に基づいて制御する。
【0005】
例えば基板原点位置からマークの中心がカメラ中心と合致する位置まで基板を移動させる場合、設計値どおりに基板が作られていれば、移動が終了したときにはマークの中心とカメラの中心とが合致するはずである。しかし、外気温などの影響によって基板が伸縮し、マークの位置が設計値からずれてしまうと、マークの中心がカメラの中心と合致できなくなる。このように、基板の移動を数値制御した場合には、基板の伸縮などに起因してマークがカメラの中心からずれて遠ざかり、穴明け精度が低下するという問題があった。
【0006】
こうした問題を避けるため、穴明け作業を行う技術者は通常、このような基板の伸縮による位置ずれ量(座標ずれ量)を相殺(キャンセル)することを試みる。具体的には、基板の伸縮によるマークの位置ずれを見越して、基板の移動に先立ち、設計値にその位置ずれ量を加味した補正をする。この場合における補正値は、基板1枚ごとに位置ずれ量を測定し、その測定値に基づいて決定することが望ましいが、実際は、手間的にも時間的にも、基板1枚ごとに補正値を設定することは、極めて困難である。このため通常は、マークの位置ずれ傾向を測定して、その位置ずれの平均値などに基づいて、各基板についての補正値を決定している。
【0007】
このようにマークの位置ずれ傾向に基づいて補正値を決定する場合には、マークの位置ずれ傾向を正確に把握することが重要である。例えば1日を通してマークの位置ずれ傾向が一定の範囲内に収まっている場合と、ある特定の時間で位置ずれ傾向が変化している場合とでは、採用すべき補正値が変わってくる。具体的には、位置ずれ傾向が一定範囲内に収まっている場合は、1種類の補正値を設定するだけで足りるが、位置ずれ傾向が変化する場合は、その変化する傾向に合わせて、補正値とその補正値を適用すべき時間帯との両方を設定する必要がある。なお、こうした情報は、基板を生産する環境を改善するためにも重要である。
【特許文献1】特開平9−123040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基板の製造に際しては、製造現場の温度の安定性が、その生産性に大きく影響する。例えば上記1日を通して位置ずれ傾向が一定の範囲内に収まっている場合において、基板を加工する現場の気温が一定の温度で安定しているときであっても、基板を生産する段階のどこかで基板が伸縮するような熱が加えられることが考えられる。また、特定の時間で位置ずれ傾向が変化している場合においても、例えば基板を加工する現場の気温の管理が十分ではなく、温度が安定しない(変化してしまう)ことが考えられる。
【0009】
すなわち、現場の温度管理を見直すことで基板の生産性を向上し得る。具体的には、基板の位置ずれ量に応じて現場の温度を調整すれば基板の伸縮を抑えることができるので、その位置ずれ量を相殺(キャンセル)することが可能になる。しかし上記特許文献1に記載の方法では、基板ごとにマークの位置を測定する場合には、1つのマークについての位置ずれ量しか測定することができず、またマークの位置ずれ傾向を測定する場合には、基板ごとに位置ずれ量を別途プロットするなどして、位置ずれの傾向を求めなければならない。このため、基板全体として、どのような傾向を持って位置ずれをしているのか、ひいては基板全体としてどのような傾向を持って変形をしているのかを検出することは容易ではなかった。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、基板全体としての変形態様をより容易に捉えることのできる基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するための手段、及び、その作用効果について記載する。
【0012】
本発明の第1の観点に係る基板変形認識方法では、予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の工程と、前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付けした位置データを、記憶装置に記憶させる第2の工程と、前記記憶装置に記憶された位置データに基づいて、前記基板の変形を認識する第3の工程と、を備える、ことを特徴とする。
【0013】
前記第3の工程が、前記記憶装置に記憶された位置データの少なくとも一部をコンピュータに入力し、該コンピュータに、その位置データに基づくグラフィックデータを作成させるとともに、そのグラフィックデータを表示装置の画面に視認可能にグラフィック表示させ、該画面上のグラフィック表示に基づいて、前記基板の変形を認識するものである、ようにしてもよい。
【0014】
前記第3の工程が、前記表示装置に、前記基板上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示させ、それら表示された位置データに基づいて、前記基板の変形を認識するものである、ようにしてもよい。
【0015】
複数の基板について変形を認識する方法であって、前記第3の工程においては、前記コンピュータにより所定の数の前記基板に係る位置データについて統計処理をした結果を、前記表示装置に表示させる、ようにしてもよい。
【0016】
複数の基板について変形を認識する方法であって、前記第3の工程においては、前記コンピュータにより所定の数の前記基板に係る位置データについて予め設定した一乃至複数の時間帯ごとに統計処理をした結果を、前記表示装置に表示させる、ようにしてもよい。
【0017】
複数の基板について変形を認識する方法であって、前記第3の工程は、前記表示装置に、各基板の位置データを順次表示させ、基板ごとの変形を順次認識するものである、ようにしてもよい。
【0018】
前記複数の目標位置として、前記基板の全ての角の近傍に少なくとも1つの目標位置を設定する、ようにしてもよい。
【0019】
前記第1の工程においては、移動後に基板を撮影し、その撮影中心に基づき前記移動後の基板の位置を検出する、ようにしてもよい。
【0020】
本発明の第2の観点に係る基板変形認識装置では、予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の手段と、前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付ける第2の手段と、を備える、ことを特徴とする。
【0021】
前記第2の手段により関連付けられた位置データを記憶可能とする記憶装置と、前記記憶装置に記憶された位置データが入力され、その位置データに基づくグラフィックデータを作成するコンピュータと、前記コンピュータにより作成されたグラフィックデータを表示する表示装置と、を備える、ようにしてもよい。
【0022】
前記コンピュータは、前記位置データを所定の座標系にプロット表示するグラフィックデータを作成するものであり、ユーザの操作に基づき前記座標系の尺を拡大及び縮小する手段を備える、ようにしてもよい。
【0023】
前記コンピュータは、所定の数の前記基板に係る位置データについて統計処理をした結果をグラフィック表示するグラフィックデータを作成するものである、ようにしてもよい。
【0024】
前記コンピュータは、所定の数の前記基板に係る位置データについて予め設定した一乃至複数の時間帯ごとに統計処理をした結果をグラフィック表示するグラフィックデータを作成するものである、ようにしてもよい。
【0025】
前記コンピュータは、前記基板上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示するグラフィックデータを作成するものである、ようにしてもよい。
【0026】
前記基板を撮影する撮影手段を有し、前記第1の手段は、前記基板の移動後に前記撮影手段により該基板を撮影し、その撮影中心に基づき前記移動後の基板の位置を検出するものである、ようにしてもよい。
【0027】
本発明の第3の観点に係る基板変形認識プログラムでは、コンピュータを、予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の手段、前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付ける第2の手段、前記第2の手段により関連付けられた位置データを、当該コンピュータの記憶装置に記憶させる第3の手段、前記記憶装置に記憶された位置データに基づくグラフィックデータを作成する第4の手段、当該コンピュータの表示装置に、前記グラフィックデータを視認可能にグラフィック表示させる第5の手段、として機能させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
基板全体としての変形態様をより容易に捉えることのできる基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図1〜図6を参照して、本発明に係る基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムを具体化した一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、自動穴明け装置により基板100(例えば多層配線構造のプリント基板)に穴を明ける場合を例にとって、その変形を認識する方法について説明する。
【0030】
本実施形態の自動穴明け装置は、大きくは、図1に示すように、工場内の所定の場所に設置された装置本体10と、該装置本体10に固定されたX線発生装置11及びX線カメラ12と、これらX線発生装置11及びX線カメラ12と対向する位置に貫通孔13aを有する基板載置台13と、該基板載置台13上に基板100を挟持して固定する固定治具13bと、上記装置本体10に支持され、基板100に当接及び離間可能に往復動する穴明け用ドリル14と、基板載置台13に固定された基板100を基板載置台13ごと移動させる基板移動用アクチュエータ部15と、当該穴明け装置に含まれる各種のアクチュエータ(上記ドリル14及びアクチュエータ部15など)を制御して基板100の所定位置に穴を明けるとともに所定のデータ(X線カメラ12の撮影データなど)を取得する制御解析部16と、から構成されている。
【0031】
ここで、基板100は、例えば図2に示すように、予め設計された穴を明けるべき位置(目標位置)に、所定のマーク100a〜100d(マークの形状は任意)を有する。本実施形態では、矩形状の基板100の4つの角(全ての角)の近傍に1つずつ円形状のマーク100a〜100dが配置されている。これらマーク100a〜100dは、例えば当該基板100の内部に印刷されており、X線発生装置11及びX線カメラ12により認識することができる。X線発生装置11及びX線カメラ12は、互いに対向するように設置されており、制御解析部16により制御され、その設置位置において上記基板100を撮影する。
【0032】
基板移動用アクチュエータ部15は、図示しないXY移動機構によってXY方向に移動可能な台座151を備える。この台座151は、Xテーブル152及びYテーブル153をさらに備え、Xテーブル152及びYテーブル153を介して基板載置台13に連結されており、該基板載置台13ごと、基板100を図中X軸方向及びY軸方向にそれぞれ移動可能とする。このとき、Xテーブル152及びYテーブル153も、台座151と共に移動する。Xテーブル152及びYテーブル153は、制御解析部16に制御されることにより、基板載置台13と台座151との相対的な位置関係を、それぞれX方向又はY方向にずらすことができる。すなわち、台座151が静止した状態にあっても、これらXテーブル152及びYテーブル153により、基板載置台13を図中X軸方向及びY軸方向にそれぞれ移動させることができる。
【0033】
穴明け用ドリル14は、制御解析部16により制御されてZ軸方向(例えば鉛直方向に相当)に往復動するようになっており、穴明け時には基板100に接近し、その他の時には基板100から離間する。基板移動用アクチュエータ部15により基板100を移動させることで、このドリル14により、基板100のXY平面上の任意の位置に穴を明けることができる。
【0034】
制御解析部16は、コンピュータ本体161のほか、出力機器としてのディスプレイ(表示装置)162、キーボード及びマウス等の入力機器163などを備える。このうち、コンピュータ本体161には、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM (Randam Access Memory)、及び通信機器(モデム等)などのほか、例えばハードディスクからなる不揮発性の記憶装置161aを内蔵している。
記憶装置161aは、以下に説明する解析処理を実行するためのプログラムを記憶している。
CPUは、プログラムを解釈・実行し、以下に説明する解析処理を実行する。
ROMは、CPUが動作するための、基本的なプログラムや固定データを記憶する。
RAMは、コンピュータの主メモリとして機能し、実行対象のプログラムが転送・展開される。また、CPUのワークメモリとして使用される。
これら各部は、内部バスなどを介して相互に接続されている。
この制御解析部16としては、例えば市販されている一般的なコンピュータなどを用いることができる。
【0035】
次に、上記図1に示した自動穴明け装置により基板100に穴を明ける工程、及び、基板100の変形を認識する工程の一例について説明する。この例では、基板載置台13に基板100を固定(固定治具13b等で固定)した後、図3に示す手順により、基板100に穴を明けるとともに基板100のデータを取得し、図4に示す手順により、そのデータに基づき基板100の変形を認識する。
これら図3及び図4に示す各ステップは、制御解析部16において、CPUがプログラムを実行することにより、各部を制御して実行される。
【0036】
基板100の穴明けに際しては、図3に示すように、まず、加工しようとしている基板100に基板識別番号をつける(ステップS11)。基板識別番号は、例えばその日初めて加工する基板だったらナンバー1などとする。それ以外にもロット番号と関連付けるなどしてもよい。
【0037】
次に、基板移動用アクチュエータ部15により、所定の目標位置(数値データ等からなる設計値)に基板100を移動させる。このとき、例えば図2に示すように、移動前における基板100の所定の位置(例えば基板100の左上の角)を原点OG(0,0)とすることで、各座標軸(X軸及びY軸)への移動量が把握可能となる。
【0038】
マーク100aの中心に穴を明ける場合を例として説明する。まず、原点OGを基準としたマーク100aの設計上の座標とX線カメラ12の中心(詳細には撮影中心)とが重なるように基板100を台座151により移動させる(ステップS12)。
【0039】
次に、マーク100aをX線カメラ12で撮影し、撮影データを取得する(ステップS13)。このとき通常は、マーク100aの中心と、X線カメラ12の中心とは合致していない。その理由の1つは、基板100が変形しているからである。
【0040】
そこで、制御解析部16はX線カメラ12の中心とマーク100aの中心がどれだけずれているかを撮影データに基づいて、公知の画像処理手法により算出する。そして、加工しようとしているマーク番号(この場合マーク100a)と、算出されたずれ量(XY座標)と、基板識別番号とを互いに関連付けて(いわゆる紐付けを行って)、記憶装置161aに記憶する(ステップS15)。
【0041】
次に、算出したずれ量に基づき、穴明け用ドリル14の回転中心とマーク100aの中心とが合致するようにXテーブル152及びYテーブル153により、基板100を移動させた後に穴明けドリル14を上下動させてマーク100aの中心に穴を明ける(ステップS16)。
【0042】
なお、当該装置におけるX線カメラ12の中心と穴明け用ドリル14の回転中心とは、所定の位置関係になるように予め調整しておく。また、Xテーブル152及びYテーブル153は台座151のXY移動機構よりも高精度な移動機構を持つ。
【0043】
本実施形態では、同様の工程を、マーク100b〜dに穴明け加工を実施する際にも実行する。さらに同一種類の複数の基板について、上記図3の各ステップを穴明け加工の度に実行して、その種類の基板100における各マークの位置ずれデータを記憶装置161aに蓄積する。そして、図4に示す各ステップにより、それら位置ずれデータに基づき、当該基板100の変形及びその傾向を認識する。
【0044】
この基板変形の認識に際しては、まず、ステップS21において、上記図3の処理により記憶装置161aに記憶された位置データに基づき、コンピュータ本体161がグラフィックデータを作成する。続けて、コンピュータ本体161は、次のステップS22において、該ステップS21で作成したグラフィックデータを、ディスプレイ162の画面にグラフィック表示させる。そして、続くステップS23では、ユーザが、その画面上の表示に基づいて、基板ごとの変形特性を認識する。
【0045】
ここで、上記ステップS22においては、例えば図5に示すように、コンピュータ本体161が、目標位置(マーク中心)と移動後の基板の位置(撮影中心)との位置ずれ量を視認可能にするようなグラフィックデータを、ディスプレイ162に表示させる。この図5の例では、上記図3の処理を通じて取得した所定の基板100に係る位置データを所定の座標系(XY座標系)にプロットして、ディスプレイ162の画面上のデータ表示部50にグラフィック表示(プロット表示)している。
【0046】
データ表示部50の周囲には、データ表示部50の強調率の値を表示する表示ボックス51a及びその強調率を変更するためのスライドバー51bからなる強調率調整部51と、データ表示部50の座標系のスケール(尺)の値を表示する表示ボックス52a及びそのスケールを変更するためのスライドバー52bからなるスケール調整部52と、データ表示部50の関連データ(撮影中心とマーク中心とのずれ量、データ取得時刻など)を表示又は入力する関連データ部53と、データ表示部50に表示されている位置データに係る基板100の識別番号を表示する表示ボックス54a及びその識別番号(複数の基板100のうち、データ表示部50に位置データを表示させたい特定の基板100の識別番号)を変更するためのスライドバー54bからなる基板選択部54と、が表示されている。上記位置データのグラフィックデータをはじめ、これらデータの全ては、一画面上に同時に表示される。
【0047】
データ表示部50には、図中に示すように、基板100上に配置された全てのマークが表示される。詳しくは、設計上のマーク501a〜501dの中心座標(例えば○で表示)と、実際にマーク501a〜501dを撮影して算出した各マークの中心座標502a〜502d(例えば□で表示)とが、同時に表示される。このような表示態様とすることで、その基板100において全体的にマークがどのようにずれているのかが視覚的に認識可能に表示され、ユーザは、基板100全体がどのように変形しているのかを直接的(ひいては直感的)に捉え易くなる。
【0048】
また、データ表示部50の表示データ及びその表示態様は、スライドバー51b,52b,54bの位置に応じて変化する。詳しくは、データ表示部50の強調率又はスケールは、所定の基準値にスライドバー51b,52bの位置に応じた係数を乗じた値となる。この際、強調率又はスケールの変更に係る係数は、ユーザが上記入力機器163(例えばキーボード)を介して任意の値を設定する(可変設定する)ことができるようになっている。また、データ表示部50に表示される基板100は、スライドバー54bの位置が識別番号に対応していることで、スライドバー54bの位置に応じて一意的に決まるようになっている。
【0049】
すなわちユーザは、上記入力機器163(例えばマウス)を介して各スライドバー51b,52b,54bをスライド操作することで、データ表示部50の強調率もしくはスケールを調整すること、又は位置データを確認すべき基板100を選択することができる。具体的には、例えば位置ずれ量は、一般に基板100全体に対して極めて小さな値となる。基板のマーク間の距離が、「数10mm〜数100mm」オーダーであるのに対して、位置ずれ量はμ(ミクロン)オーダーである。そのため、プロットしても、例えば図6(a)に示すように、マーク中心501a〜501dと撮影中心502a〜502dとのずれ量が小さくて、位置ずれしていることが非常に分かりづらい場合がある。そこで、このように両者のずれを視覚的に捉えることが困難な場合には、例えばユーザがスライドバー52b(図5)をスライド操作し、図6(b)に示すように、ユーザが認識可能な程度にずれ量を強調して表示させることが有効である。こうすることで、基板の変形度合を直接的(直感的)に捉え易くなる。また、例えばユーザがスライドバー54b(図5)をスライド操作することにより、基板ごとに次々と表示させることもでき、こうすることで、ユーザは同一種類の複数の基板にまたがったずれの傾向を捉え易くなる。
【0050】
また、図5において撮影中心502a〜502dは全てマーク中心501a〜501dの内側に入っている。これは例えば基板100が収縮したことを示している。これに対して基板100が膨張したような場合には撮影中心502a〜502dはマーク中心501a〜501dの外側に位置する(位置ずれする)可能性が高い。そして、それを強調して表示した場合に基板100の外側に位置してしまう場合もある。
【0051】
そのような場合、基板100を表示するスケールによっては、撮影中心502a〜502dが画面上に表示されないことがある。そのような場合は、スライドバー52を調整して基板100の表示スケールを小さくして撮影中心502a〜502dが表示されるようにすれば良い。
【0052】
こうした基板変形認識方法によれば、基板100全体としての変形態様を容易に捉えることが可能になる。このため、穴明け作業を行う技術者は複数の基板100の変形態様、ひいてはマークの位置ずれの傾向に基づき、基板100の伸縮によるマークの位置ずれを見越して、基板100の加工時には、設計値にその位置ずれ量を加味した補正をする(例えば図3のステップS11で設計値を補正する)ことが容易になる。この補正により、マーク中心と撮影中心とのずれ量を小さくすることができるので、マークの中心を算出する精度が向上する。このことにより穴明け加工の精度を向上させることができる。また、同じく位置ずれの傾向に基づき、生産現場の温度管理を見直すことで、基板100の変形量を小さくすることができるので、生産性を向上することなども可能になる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムによれば、以下のような優れた効果が得られるようになる。
【0054】
(1)本実施形態に係る基板変形認識方法は、予め基板100上に設定した複数の目標位置(マーク中心501a〜501d)について、基板100を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の工程(図3のステップS11〜S13)と、各目標位置について、該目標位置と移動後の基板の位置とを関連付けした位置データを、記憶装置161aに記憶させる第2の工程(図3のステップS14〜S15)と、記憶装置161aに記憶された位置データに基づいて、基板100の変形を認識する第3の工程(図4)と、を備える。このように、目標位置ごとに移動後の基板の位置を関連付けすることで、どの基板でどの程度の位置ずれがあるか、あるいは基板上のどの位置でどの程度の位置ずれがあるか(基板全体の位置ずれ具合)などの位置ずれ情報を容易に把握することが可能になり、ひいては基板全体としての変形態様を、より容易且つより正確に測定することが可能になる。
【0055】
(2)図4のステップS21〜S23においては、記憶装置161aに記憶された位置データをコンピュータ(コンピュータ本体161)に入力し、該コンピュータ本体161に、その位置データに基づくグラフィックデータを作成させるとともに、そのグラフィックデータを表示装置(ディスプレイ162)の画面に視認可能にグラフィック表示させ、該画面上の表示に基づいて、基板100の変形を認識するようにした。こうすることで、基板の位置ずれ傾向や基板の変形態様を視覚を通じて直接的(直感的)に捉えることが可能になる。
【0056】
(3)図4のステップS22においては、ディスプレイ162に、基板100上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示させるようにした(図5)。こうすることで、ユーザは、基板全体がどのように変形しているのかを直接的(直感的)に捉え易くなる。
【0057】
(4)図4のステップS23においては、ユーザがスライドバー52b(図5)をスライド操作することにより、位置ずれ量を任意に強調して表示するようにした。こうすることで、ユーザは位置ずれの傾向を容易に捉えることが可能になる。
【0058】
(5)本実施形態に係る基板変形認識装置は、ユーザの操作に基づき位置データの座標系の尺(スケール)を拡大及び縮小する手段(スライドバー52b)を備える。これにより、位置データを適切なスケールで表示することが可能になり、基板の変形度合を直接的(直感的)に捉え易くなる。
【0059】
(6)図3のステップS13においては、基板100の移動後にX線カメラ12(撮影手段)により同基板を撮影し、その撮影中心に基づき、その移動後の基板の位置を検出するようにした。こうすることで、基板の位置を、より容易且つより正確に測定することが可能になる。
【0060】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0061】
コンピュータ本体161により所定の数の位置データについて統計処理をした結果を、ディスプレイ162に表示させるようにしてもよい。例えば図7に示すように、複数のデータの平均をとって、複数の撮影中心502aと共に、その平均値に相当する位置データ602aをグラフィック表示するようにしてもよい。また、例えば図8に示すように、ずれ量を統計処理して、中央値に相当する位置データ602aと共に、3σ(標準偏差)の範囲R1をグラフィック表示するようにしてもよい。
【0062】
こうした統計処理は、任意の時間帯に区切って行うようにしてもよい。例えば関連データ部53(図5)に開始時刻及び終了時刻(時間帯)を入力することにより、その時間帯におけるデータについて統計処理をした結果が、ディスプレイ162に表示されるようにしてもよい。
【0063】
グラフィック表示と数値表示とを組み合わせて、位置データを表示するようにしてもよい。例えば図9に示すように、3σの範囲R1をグラフィック表示するとともに、その値を数値表示するようにしてもよい。
【0064】
上記実施形態では、1つの基板100ごとの位置データを表示するようにした。しかしこれに限られず、一画面上に複数の基板100の位置データを同時に表示(例えば画面を分割して表示)するようにしてもよい。
【0065】
上記実施形態では、ユーザがスライドバー54b(図5)をスライド操作することにより、任意の基板100の位置データを表示するようにした。しかしこれに限られず、所定時間の経過の都度、自動的に位置データを切り替えて、各基板100の位置データを順次表示させ、基板ごとの変形を順次認識するようにしてもよい。また、その他の構成又は設定についても、必要に応じて、適宜プログラム化(自動化)することができる。
【0066】
上記実施形態では、実際に穴加工するマークの中心座標を基に基板100の変形を認識できるようにした。しかしこれに限られず、例えば変形を認識するためのマークを別途設けてもよい。マークは基板100の全ての角の近傍に少なくとも1つのマークを設けてもよいし、例えば図10に示すように、対角に位置する1対の角のみに目標位置を設定するようにしてもよい。また、例えば図11に示すように、特に変形を検出しようとする部位(同図11の例では基板100の中央部)に集中的に設けるようにしてもよい。
【0067】
上記実施形態では、矩形状の基板について言及したが、基板の形状は任意であり、例えばその他の多角形状又は円形状であってもよい。
【0068】
上記実施形態では、2次元座標によって位置データを表示するようにしたが、3次元座標によって位置データを表示するようにしてもよい。
【0069】
上記実施形態では、目標位置(設計値)と移動後の基板100の位置との位置データを所定の座標系(XY座標系)にプロットして、両者間の距離により、位置ずれ量を視認可能にグラフィック表示したが、ライン(線)やマークの太さや大きさ、又は色などによって位置ずれ量を視認可能にグラフィック表示するようにしてもよい。
【0070】
上記実施形態では、ユーザが位置データのグラフィック表示に基づいて基板100の変形を認識する場合について言及したが、コンピュータ本体161に演算させることにより、コンピュータ本体161に基板100の変形を認識させるようにしてもよい。そして、グラフィックデータを作成し、例えば図12に示すように、基板100の変形態様をグラフィック表示するようにしてもよい。
【0071】
図1に示した構成は適宜に変更可能である。例えば上記実施形態では、X線カメラを用いるようにしたが、撮影用のカメラは任意であり、例えば可視光カメラ等を用いるようにしてもよい。さらに、用途も穴明けに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明に係る基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムの一実施形態について、該装置の概要を示す図。
【図2】プリント基板のマークの配置の一例を示す図。
【図3】基板に穴を明けるための処理手順の一例を示すフローチャート。
【図4】基板変形を認識するための処理手順の一例を示すフローチャート。
【図5】グラフィックデータの表示態様の一例を示す図。
【図6】グラフィックデータの表示スケールを調整態様について、(a)は、拡大前の表示を、(b)は、拡大後の表示を、それぞれ示す図。
【図7】グラフィックデータの表示態様の別例を示す図。
【図8】グラフィックデータの表示態様の別例を示す図。
【図9】グラフィックデータの表示態様の別例を示す図。
【図10】プリント基板のマークの配置の別例を示す図。
【図11】プリント基板のマークの配置の別例を示す図。
【図12】グラフィックデータの表示態様の別例を示す図。
【符号の説明】
【0073】
12 X線カメラ(撮影手段)
14 穴明け用ドリル
15 基板移動用アクチュエータ部
16 制御解析部
50 データ表示部
51b,52b,54b スライドバー
100 基板
161 コンピュータ本体
161a 記憶装置
162 ディスプレイ(表示装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント配線板など基板の変形態様をより容易に捉えるための基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばプリント配線板に電子部品を実装するため、又はプリント配線板自身を位置決めするなどのために、プリント配線板の所定の目標位置(目標座標)に穴を明ける穴明け装置がある。こうした穴明け装置では、プリント配線板の穴を明けるべき位置に、予めマークを印刷しておくことで、穴明け装置自身が装備する可視光カメラやX線カメラなどを用いて、そのマークを撮影し、さらにその画像を処理することで、そのマークの中心を算出することができる。このため、ドリルなどの穴明け加工具を用いて、その画像処理に基づき算出された位置に、穴を明けることで、穴を明けるべき位置、すなわち上記マークの中心に、比較的正確に穴を明けることが可能であった。
【0003】
しかし、可視光カメラやX線カメラの特性上、その撮像範囲の中心付近で撮像した画像に比べて周辺付近で撮影した画像は歪んでしまうという欠点がある。しかも、その歪みは均一ではない。すなわち上記穴明け装置では、こうした歪みに起因して、中心付近で上記マークを撮影して画像処理した場合と、周辺部でマークを撮影して画像処理した場合とを比較すると、中心付近でマークを撮影した方が、より高い精度でマークの位置を算出することができる。逆に、周辺部付近で撮影した場合は、中心付近で撮影した場合よりも算出精度が低下し、実際の位置と算出した位置とのずれが大きくなる。したがって、高い精度でマークの中心に穴を明けたい場合には、できるだけカメラの中心に近い位置でマークを撮影することが好ましい。
【0004】
次に、基板載置台、基板把持部、及び基板移動用アクチュエータ部を備える自動穴明け装置を使用してプリント配線板等の基板に穴明けをする場合について考える。この種の自動穴明け装置は、基板載置台に基板を投入する方向を?、それに直交する方向をY、XY平面に垂直な方向をZとした場合、基板把持部により基板を把持しつつ、基板移動用アクチュエータ部によりXY平面上を移動させることで、基板の任意の位置に穴を明けることができる。この穴明けに際しては、例えば基板を基板載置台の所定の位置に位置決めし、例えば基板の左上の端部を原点として、それ以降の基板の移動を基板の設計値(数値データ)に基づいて制御する。
【0005】
例えば基板原点位置からマークの中心がカメラ中心と合致する位置まで基板を移動させる場合、設計値どおりに基板が作られていれば、移動が終了したときにはマークの中心とカメラの中心とが合致するはずである。しかし、外気温などの影響によって基板が伸縮し、マークの位置が設計値からずれてしまうと、マークの中心がカメラの中心と合致できなくなる。このように、基板の移動を数値制御した場合には、基板の伸縮などに起因してマークがカメラの中心からずれて遠ざかり、穴明け精度が低下するという問題があった。
【0006】
こうした問題を避けるため、穴明け作業を行う技術者は通常、このような基板の伸縮による位置ずれ量(座標ずれ量)を相殺(キャンセル)することを試みる。具体的には、基板の伸縮によるマークの位置ずれを見越して、基板の移動に先立ち、設計値にその位置ずれ量を加味した補正をする。この場合における補正値は、基板1枚ごとに位置ずれ量を測定し、その測定値に基づいて決定することが望ましいが、実際は、手間的にも時間的にも、基板1枚ごとに補正値を設定することは、極めて困難である。このため通常は、マークの位置ずれ傾向を測定して、その位置ずれの平均値などに基づいて、各基板についての補正値を決定している。
【0007】
このようにマークの位置ずれ傾向に基づいて補正値を決定する場合には、マークの位置ずれ傾向を正確に把握することが重要である。例えば1日を通してマークの位置ずれ傾向が一定の範囲内に収まっている場合と、ある特定の時間で位置ずれ傾向が変化している場合とでは、採用すべき補正値が変わってくる。具体的には、位置ずれ傾向が一定範囲内に収まっている場合は、1種類の補正値を設定するだけで足りるが、位置ずれ傾向が変化する場合は、その変化する傾向に合わせて、補正値とその補正値を適用すべき時間帯との両方を設定する必要がある。なお、こうした情報は、基板を生産する環境を改善するためにも重要である。
【特許文献1】特開平9−123040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基板の製造に際しては、製造現場の温度の安定性が、その生産性に大きく影響する。例えば上記1日を通して位置ずれ傾向が一定の範囲内に収まっている場合において、基板を加工する現場の気温が一定の温度で安定しているときであっても、基板を生産する段階のどこかで基板が伸縮するような熱が加えられることが考えられる。また、特定の時間で位置ずれ傾向が変化している場合においても、例えば基板を加工する現場の気温の管理が十分ではなく、温度が安定しない(変化してしまう)ことが考えられる。
【0009】
すなわち、現場の温度管理を見直すことで基板の生産性を向上し得る。具体的には、基板の位置ずれ量に応じて現場の温度を調整すれば基板の伸縮を抑えることができるので、その位置ずれ量を相殺(キャンセル)することが可能になる。しかし上記特許文献1に記載の方法では、基板ごとにマークの位置を測定する場合には、1つのマークについての位置ずれ量しか測定することができず、またマークの位置ずれ傾向を測定する場合には、基板ごとに位置ずれ量を別途プロットするなどして、位置ずれの傾向を求めなければならない。このため、基板全体として、どのような傾向を持って位置ずれをしているのか、ひいては基板全体としてどのような傾向を持って変形をしているのかを検出することは容易ではなかった。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、基板全体としての変形態様をより容易に捉えることのできる基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するための手段、及び、その作用効果について記載する。
【0012】
本発明の第1の観点に係る基板変形認識方法では、予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の工程と、前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付けした位置データを、記憶装置に記憶させる第2の工程と、前記記憶装置に記憶された位置データに基づいて、前記基板の変形を認識する第3の工程と、を備える、ことを特徴とする。
【0013】
前記第3の工程が、前記記憶装置に記憶された位置データの少なくとも一部をコンピュータに入力し、該コンピュータに、その位置データに基づくグラフィックデータを作成させるとともに、そのグラフィックデータを表示装置の画面に視認可能にグラフィック表示させ、該画面上のグラフィック表示に基づいて、前記基板の変形を認識するものである、ようにしてもよい。
【0014】
前記第3の工程が、前記表示装置に、前記基板上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示させ、それら表示された位置データに基づいて、前記基板の変形を認識するものである、ようにしてもよい。
【0015】
複数の基板について変形を認識する方法であって、前記第3の工程においては、前記コンピュータにより所定の数の前記基板に係る位置データについて統計処理をした結果を、前記表示装置に表示させる、ようにしてもよい。
【0016】
複数の基板について変形を認識する方法であって、前記第3の工程においては、前記コンピュータにより所定の数の前記基板に係る位置データについて予め設定した一乃至複数の時間帯ごとに統計処理をした結果を、前記表示装置に表示させる、ようにしてもよい。
【0017】
複数の基板について変形を認識する方法であって、前記第3の工程は、前記表示装置に、各基板の位置データを順次表示させ、基板ごとの変形を順次認識するものである、ようにしてもよい。
【0018】
前記複数の目標位置として、前記基板の全ての角の近傍に少なくとも1つの目標位置を設定する、ようにしてもよい。
【0019】
前記第1の工程においては、移動後に基板を撮影し、その撮影中心に基づき前記移動後の基板の位置を検出する、ようにしてもよい。
【0020】
本発明の第2の観点に係る基板変形認識装置では、予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の手段と、前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付ける第2の手段と、を備える、ことを特徴とする。
【0021】
前記第2の手段により関連付けられた位置データを記憶可能とする記憶装置と、前記記憶装置に記憶された位置データが入力され、その位置データに基づくグラフィックデータを作成するコンピュータと、前記コンピュータにより作成されたグラフィックデータを表示する表示装置と、を備える、ようにしてもよい。
【0022】
前記コンピュータは、前記位置データを所定の座標系にプロット表示するグラフィックデータを作成するものであり、ユーザの操作に基づき前記座標系の尺を拡大及び縮小する手段を備える、ようにしてもよい。
【0023】
前記コンピュータは、所定の数の前記基板に係る位置データについて統計処理をした結果をグラフィック表示するグラフィックデータを作成するものである、ようにしてもよい。
【0024】
前記コンピュータは、所定の数の前記基板に係る位置データについて予め設定した一乃至複数の時間帯ごとに統計処理をした結果をグラフィック表示するグラフィックデータを作成するものである、ようにしてもよい。
【0025】
前記コンピュータは、前記基板上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示するグラフィックデータを作成するものである、ようにしてもよい。
【0026】
前記基板を撮影する撮影手段を有し、前記第1の手段は、前記基板の移動後に前記撮影手段により該基板を撮影し、その撮影中心に基づき前記移動後の基板の位置を検出するものである、ようにしてもよい。
【0027】
本発明の第3の観点に係る基板変形認識プログラムでは、コンピュータを、予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の手段、前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付ける第2の手段、前記第2の手段により関連付けられた位置データを、当該コンピュータの記憶装置に記憶させる第3の手段、前記記憶装置に記憶された位置データに基づくグラフィックデータを作成する第4の手段、当該コンピュータの表示装置に、前記グラフィックデータを視認可能にグラフィック表示させる第5の手段、として機能させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
基板全体としての変形態様をより容易に捉えることのできる基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図1〜図6を参照して、本発明に係る基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムを具体化した一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、自動穴明け装置により基板100(例えば多層配線構造のプリント基板)に穴を明ける場合を例にとって、その変形を認識する方法について説明する。
【0030】
本実施形態の自動穴明け装置は、大きくは、図1に示すように、工場内の所定の場所に設置された装置本体10と、該装置本体10に固定されたX線発生装置11及びX線カメラ12と、これらX線発生装置11及びX線カメラ12と対向する位置に貫通孔13aを有する基板載置台13と、該基板載置台13上に基板100を挟持して固定する固定治具13bと、上記装置本体10に支持され、基板100に当接及び離間可能に往復動する穴明け用ドリル14と、基板載置台13に固定された基板100を基板載置台13ごと移動させる基板移動用アクチュエータ部15と、当該穴明け装置に含まれる各種のアクチュエータ(上記ドリル14及びアクチュエータ部15など)を制御して基板100の所定位置に穴を明けるとともに所定のデータ(X線カメラ12の撮影データなど)を取得する制御解析部16と、から構成されている。
【0031】
ここで、基板100は、例えば図2に示すように、予め設計された穴を明けるべき位置(目標位置)に、所定のマーク100a〜100d(マークの形状は任意)を有する。本実施形態では、矩形状の基板100の4つの角(全ての角)の近傍に1つずつ円形状のマーク100a〜100dが配置されている。これらマーク100a〜100dは、例えば当該基板100の内部に印刷されており、X線発生装置11及びX線カメラ12により認識することができる。X線発生装置11及びX線カメラ12は、互いに対向するように設置されており、制御解析部16により制御され、その設置位置において上記基板100を撮影する。
【0032】
基板移動用アクチュエータ部15は、図示しないXY移動機構によってXY方向に移動可能な台座151を備える。この台座151は、Xテーブル152及びYテーブル153をさらに備え、Xテーブル152及びYテーブル153を介して基板載置台13に連結されており、該基板載置台13ごと、基板100を図中X軸方向及びY軸方向にそれぞれ移動可能とする。このとき、Xテーブル152及びYテーブル153も、台座151と共に移動する。Xテーブル152及びYテーブル153は、制御解析部16に制御されることにより、基板載置台13と台座151との相対的な位置関係を、それぞれX方向又はY方向にずらすことができる。すなわち、台座151が静止した状態にあっても、これらXテーブル152及びYテーブル153により、基板載置台13を図中X軸方向及びY軸方向にそれぞれ移動させることができる。
【0033】
穴明け用ドリル14は、制御解析部16により制御されてZ軸方向(例えば鉛直方向に相当)に往復動するようになっており、穴明け時には基板100に接近し、その他の時には基板100から離間する。基板移動用アクチュエータ部15により基板100を移動させることで、このドリル14により、基板100のXY平面上の任意の位置に穴を明けることができる。
【0034】
制御解析部16は、コンピュータ本体161のほか、出力機器としてのディスプレイ(表示装置)162、キーボード及びマウス等の入力機器163などを備える。このうち、コンピュータ本体161には、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM (Randam Access Memory)、及び通信機器(モデム等)などのほか、例えばハードディスクからなる不揮発性の記憶装置161aを内蔵している。
記憶装置161aは、以下に説明する解析処理を実行するためのプログラムを記憶している。
CPUは、プログラムを解釈・実行し、以下に説明する解析処理を実行する。
ROMは、CPUが動作するための、基本的なプログラムや固定データを記憶する。
RAMは、コンピュータの主メモリとして機能し、実行対象のプログラムが転送・展開される。また、CPUのワークメモリとして使用される。
これら各部は、内部バスなどを介して相互に接続されている。
この制御解析部16としては、例えば市販されている一般的なコンピュータなどを用いることができる。
【0035】
次に、上記図1に示した自動穴明け装置により基板100に穴を明ける工程、及び、基板100の変形を認識する工程の一例について説明する。この例では、基板載置台13に基板100を固定(固定治具13b等で固定)した後、図3に示す手順により、基板100に穴を明けるとともに基板100のデータを取得し、図4に示す手順により、そのデータに基づき基板100の変形を認識する。
これら図3及び図4に示す各ステップは、制御解析部16において、CPUがプログラムを実行することにより、各部を制御して実行される。
【0036】
基板100の穴明けに際しては、図3に示すように、まず、加工しようとしている基板100に基板識別番号をつける(ステップS11)。基板識別番号は、例えばその日初めて加工する基板だったらナンバー1などとする。それ以外にもロット番号と関連付けるなどしてもよい。
【0037】
次に、基板移動用アクチュエータ部15により、所定の目標位置(数値データ等からなる設計値)に基板100を移動させる。このとき、例えば図2に示すように、移動前における基板100の所定の位置(例えば基板100の左上の角)を原点OG(0,0)とすることで、各座標軸(X軸及びY軸)への移動量が把握可能となる。
【0038】
マーク100aの中心に穴を明ける場合を例として説明する。まず、原点OGを基準としたマーク100aの設計上の座標とX線カメラ12の中心(詳細には撮影中心)とが重なるように基板100を台座151により移動させる(ステップS12)。
【0039】
次に、マーク100aをX線カメラ12で撮影し、撮影データを取得する(ステップS13)。このとき通常は、マーク100aの中心と、X線カメラ12の中心とは合致していない。その理由の1つは、基板100が変形しているからである。
【0040】
そこで、制御解析部16はX線カメラ12の中心とマーク100aの中心がどれだけずれているかを撮影データに基づいて、公知の画像処理手法により算出する。そして、加工しようとしているマーク番号(この場合マーク100a)と、算出されたずれ量(XY座標)と、基板識別番号とを互いに関連付けて(いわゆる紐付けを行って)、記憶装置161aに記憶する(ステップS15)。
【0041】
次に、算出したずれ量に基づき、穴明け用ドリル14の回転中心とマーク100aの中心とが合致するようにXテーブル152及びYテーブル153により、基板100を移動させた後に穴明けドリル14を上下動させてマーク100aの中心に穴を明ける(ステップS16)。
【0042】
なお、当該装置におけるX線カメラ12の中心と穴明け用ドリル14の回転中心とは、所定の位置関係になるように予め調整しておく。また、Xテーブル152及びYテーブル153は台座151のXY移動機構よりも高精度な移動機構を持つ。
【0043】
本実施形態では、同様の工程を、マーク100b〜dに穴明け加工を実施する際にも実行する。さらに同一種類の複数の基板について、上記図3の各ステップを穴明け加工の度に実行して、その種類の基板100における各マークの位置ずれデータを記憶装置161aに蓄積する。そして、図4に示す各ステップにより、それら位置ずれデータに基づき、当該基板100の変形及びその傾向を認識する。
【0044】
この基板変形の認識に際しては、まず、ステップS21において、上記図3の処理により記憶装置161aに記憶された位置データに基づき、コンピュータ本体161がグラフィックデータを作成する。続けて、コンピュータ本体161は、次のステップS22において、該ステップS21で作成したグラフィックデータを、ディスプレイ162の画面にグラフィック表示させる。そして、続くステップS23では、ユーザが、その画面上の表示に基づいて、基板ごとの変形特性を認識する。
【0045】
ここで、上記ステップS22においては、例えば図5に示すように、コンピュータ本体161が、目標位置(マーク中心)と移動後の基板の位置(撮影中心)との位置ずれ量を視認可能にするようなグラフィックデータを、ディスプレイ162に表示させる。この図5の例では、上記図3の処理を通じて取得した所定の基板100に係る位置データを所定の座標系(XY座標系)にプロットして、ディスプレイ162の画面上のデータ表示部50にグラフィック表示(プロット表示)している。
【0046】
データ表示部50の周囲には、データ表示部50の強調率の値を表示する表示ボックス51a及びその強調率を変更するためのスライドバー51bからなる強調率調整部51と、データ表示部50の座標系のスケール(尺)の値を表示する表示ボックス52a及びそのスケールを変更するためのスライドバー52bからなるスケール調整部52と、データ表示部50の関連データ(撮影中心とマーク中心とのずれ量、データ取得時刻など)を表示又は入力する関連データ部53と、データ表示部50に表示されている位置データに係る基板100の識別番号を表示する表示ボックス54a及びその識別番号(複数の基板100のうち、データ表示部50に位置データを表示させたい特定の基板100の識別番号)を変更するためのスライドバー54bからなる基板選択部54と、が表示されている。上記位置データのグラフィックデータをはじめ、これらデータの全ては、一画面上に同時に表示される。
【0047】
データ表示部50には、図中に示すように、基板100上に配置された全てのマークが表示される。詳しくは、設計上のマーク501a〜501dの中心座標(例えば○で表示)と、実際にマーク501a〜501dを撮影して算出した各マークの中心座標502a〜502d(例えば□で表示)とが、同時に表示される。このような表示態様とすることで、その基板100において全体的にマークがどのようにずれているのかが視覚的に認識可能に表示され、ユーザは、基板100全体がどのように変形しているのかを直接的(ひいては直感的)に捉え易くなる。
【0048】
また、データ表示部50の表示データ及びその表示態様は、スライドバー51b,52b,54bの位置に応じて変化する。詳しくは、データ表示部50の強調率又はスケールは、所定の基準値にスライドバー51b,52bの位置に応じた係数を乗じた値となる。この際、強調率又はスケールの変更に係る係数は、ユーザが上記入力機器163(例えばキーボード)を介して任意の値を設定する(可変設定する)ことができるようになっている。また、データ表示部50に表示される基板100は、スライドバー54bの位置が識別番号に対応していることで、スライドバー54bの位置に応じて一意的に決まるようになっている。
【0049】
すなわちユーザは、上記入力機器163(例えばマウス)を介して各スライドバー51b,52b,54bをスライド操作することで、データ表示部50の強調率もしくはスケールを調整すること、又は位置データを確認すべき基板100を選択することができる。具体的には、例えば位置ずれ量は、一般に基板100全体に対して極めて小さな値となる。基板のマーク間の距離が、「数10mm〜数100mm」オーダーであるのに対して、位置ずれ量はμ(ミクロン)オーダーである。そのため、プロットしても、例えば図6(a)に示すように、マーク中心501a〜501dと撮影中心502a〜502dとのずれ量が小さくて、位置ずれしていることが非常に分かりづらい場合がある。そこで、このように両者のずれを視覚的に捉えることが困難な場合には、例えばユーザがスライドバー52b(図5)をスライド操作し、図6(b)に示すように、ユーザが認識可能な程度にずれ量を強調して表示させることが有効である。こうすることで、基板の変形度合を直接的(直感的)に捉え易くなる。また、例えばユーザがスライドバー54b(図5)をスライド操作することにより、基板ごとに次々と表示させることもでき、こうすることで、ユーザは同一種類の複数の基板にまたがったずれの傾向を捉え易くなる。
【0050】
また、図5において撮影中心502a〜502dは全てマーク中心501a〜501dの内側に入っている。これは例えば基板100が収縮したことを示している。これに対して基板100が膨張したような場合には撮影中心502a〜502dはマーク中心501a〜501dの外側に位置する(位置ずれする)可能性が高い。そして、それを強調して表示した場合に基板100の外側に位置してしまう場合もある。
【0051】
そのような場合、基板100を表示するスケールによっては、撮影中心502a〜502dが画面上に表示されないことがある。そのような場合は、スライドバー52を調整して基板100の表示スケールを小さくして撮影中心502a〜502dが表示されるようにすれば良い。
【0052】
こうした基板変形認識方法によれば、基板100全体としての変形態様を容易に捉えることが可能になる。このため、穴明け作業を行う技術者は複数の基板100の変形態様、ひいてはマークの位置ずれの傾向に基づき、基板100の伸縮によるマークの位置ずれを見越して、基板100の加工時には、設計値にその位置ずれ量を加味した補正をする(例えば図3のステップS11で設計値を補正する)ことが容易になる。この補正により、マーク中心と撮影中心とのずれ量を小さくすることができるので、マークの中心を算出する精度が向上する。このことにより穴明け加工の精度を向上させることができる。また、同じく位置ずれの傾向に基づき、生産現場の温度管理を見直すことで、基板100の変形量を小さくすることができるので、生産性を向上することなども可能になる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムによれば、以下のような優れた効果が得られるようになる。
【0054】
(1)本実施形態に係る基板変形認識方法は、予め基板100上に設定した複数の目標位置(マーク中心501a〜501d)について、基板100を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の工程(図3のステップS11〜S13)と、各目標位置について、該目標位置と移動後の基板の位置とを関連付けした位置データを、記憶装置161aに記憶させる第2の工程(図3のステップS14〜S15)と、記憶装置161aに記憶された位置データに基づいて、基板100の変形を認識する第3の工程(図4)と、を備える。このように、目標位置ごとに移動後の基板の位置を関連付けすることで、どの基板でどの程度の位置ずれがあるか、あるいは基板上のどの位置でどの程度の位置ずれがあるか(基板全体の位置ずれ具合)などの位置ずれ情報を容易に把握することが可能になり、ひいては基板全体としての変形態様を、より容易且つより正確に測定することが可能になる。
【0055】
(2)図4のステップS21〜S23においては、記憶装置161aに記憶された位置データをコンピュータ(コンピュータ本体161)に入力し、該コンピュータ本体161に、その位置データに基づくグラフィックデータを作成させるとともに、そのグラフィックデータを表示装置(ディスプレイ162)の画面に視認可能にグラフィック表示させ、該画面上の表示に基づいて、基板100の変形を認識するようにした。こうすることで、基板の位置ずれ傾向や基板の変形態様を視覚を通じて直接的(直感的)に捉えることが可能になる。
【0056】
(3)図4のステップS22においては、ディスプレイ162に、基板100上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示させるようにした(図5)。こうすることで、ユーザは、基板全体がどのように変形しているのかを直接的(直感的)に捉え易くなる。
【0057】
(4)図4のステップS23においては、ユーザがスライドバー52b(図5)をスライド操作することにより、位置ずれ量を任意に強調して表示するようにした。こうすることで、ユーザは位置ずれの傾向を容易に捉えることが可能になる。
【0058】
(5)本実施形態に係る基板変形認識装置は、ユーザの操作に基づき位置データの座標系の尺(スケール)を拡大及び縮小する手段(スライドバー52b)を備える。これにより、位置データを適切なスケールで表示することが可能になり、基板の変形度合を直接的(直感的)に捉え易くなる。
【0059】
(6)図3のステップS13においては、基板100の移動後にX線カメラ12(撮影手段)により同基板を撮影し、その撮影中心に基づき、その移動後の基板の位置を検出するようにした。こうすることで、基板の位置を、より容易且つより正確に測定することが可能になる。
【0060】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0061】
コンピュータ本体161により所定の数の位置データについて統計処理をした結果を、ディスプレイ162に表示させるようにしてもよい。例えば図7に示すように、複数のデータの平均をとって、複数の撮影中心502aと共に、その平均値に相当する位置データ602aをグラフィック表示するようにしてもよい。また、例えば図8に示すように、ずれ量を統計処理して、中央値に相当する位置データ602aと共に、3σ(標準偏差)の範囲R1をグラフィック表示するようにしてもよい。
【0062】
こうした統計処理は、任意の時間帯に区切って行うようにしてもよい。例えば関連データ部53(図5)に開始時刻及び終了時刻(時間帯)を入力することにより、その時間帯におけるデータについて統計処理をした結果が、ディスプレイ162に表示されるようにしてもよい。
【0063】
グラフィック表示と数値表示とを組み合わせて、位置データを表示するようにしてもよい。例えば図9に示すように、3σの範囲R1をグラフィック表示するとともに、その値を数値表示するようにしてもよい。
【0064】
上記実施形態では、1つの基板100ごとの位置データを表示するようにした。しかしこれに限られず、一画面上に複数の基板100の位置データを同時に表示(例えば画面を分割して表示)するようにしてもよい。
【0065】
上記実施形態では、ユーザがスライドバー54b(図5)をスライド操作することにより、任意の基板100の位置データを表示するようにした。しかしこれに限られず、所定時間の経過の都度、自動的に位置データを切り替えて、各基板100の位置データを順次表示させ、基板ごとの変形を順次認識するようにしてもよい。また、その他の構成又は設定についても、必要に応じて、適宜プログラム化(自動化)することができる。
【0066】
上記実施形態では、実際に穴加工するマークの中心座標を基に基板100の変形を認識できるようにした。しかしこれに限られず、例えば変形を認識するためのマークを別途設けてもよい。マークは基板100の全ての角の近傍に少なくとも1つのマークを設けてもよいし、例えば図10に示すように、対角に位置する1対の角のみに目標位置を設定するようにしてもよい。また、例えば図11に示すように、特に変形を検出しようとする部位(同図11の例では基板100の中央部)に集中的に設けるようにしてもよい。
【0067】
上記実施形態では、矩形状の基板について言及したが、基板の形状は任意であり、例えばその他の多角形状又は円形状であってもよい。
【0068】
上記実施形態では、2次元座標によって位置データを表示するようにしたが、3次元座標によって位置データを表示するようにしてもよい。
【0069】
上記実施形態では、目標位置(設計値)と移動後の基板100の位置との位置データを所定の座標系(XY座標系)にプロットして、両者間の距離により、位置ずれ量を視認可能にグラフィック表示したが、ライン(線)やマークの太さや大きさ、又は色などによって位置ずれ量を視認可能にグラフィック表示するようにしてもよい。
【0070】
上記実施形態では、ユーザが位置データのグラフィック表示に基づいて基板100の変形を認識する場合について言及したが、コンピュータ本体161に演算させることにより、コンピュータ本体161に基板100の変形を認識させるようにしてもよい。そして、グラフィックデータを作成し、例えば図12に示すように、基板100の変形態様をグラフィック表示するようにしてもよい。
【0071】
図1に示した構成は適宜に変更可能である。例えば上記実施形態では、X線カメラを用いるようにしたが、撮影用のカメラは任意であり、例えば可視光カメラ等を用いるようにしてもよい。さらに、用途も穴明けに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明に係る基板変形認識方法及び基板変形認識装置及び基板変形認識プログラムの一実施形態について、該装置の概要を示す図。
【図2】プリント基板のマークの配置の一例を示す図。
【図3】基板に穴を明けるための処理手順の一例を示すフローチャート。
【図4】基板変形を認識するための処理手順の一例を示すフローチャート。
【図5】グラフィックデータの表示態様の一例を示す図。
【図6】グラフィックデータの表示スケールを調整態様について、(a)は、拡大前の表示を、(b)は、拡大後の表示を、それぞれ示す図。
【図7】グラフィックデータの表示態様の別例を示す図。
【図8】グラフィックデータの表示態様の別例を示す図。
【図9】グラフィックデータの表示態様の別例を示す図。
【図10】プリント基板のマークの配置の別例を示す図。
【図11】プリント基板のマークの配置の別例を示す図。
【図12】グラフィックデータの表示態様の別例を示す図。
【符号の説明】
【0073】
12 X線カメラ(撮影手段)
14 穴明け用ドリル
15 基板移動用アクチュエータ部
16 制御解析部
50 データ表示部
51b,52b,54b スライドバー
100 基板
161 コンピュータ本体
161a 記憶装置
162 ディスプレイ(表示装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の工程と、
前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付けした位置データを、記憶装置に記憶させる第2の工程と、
前記記憶装置に記憶された位置データに基づいて、前記基板の変形を認識する第3の工程と、
を備える、
ことを特徴とする基板変形認識方法。
【請求項2】
前記第3の工程は、前記記憶装置に記憶された位置データの少なくとも一部をコンピュータに入力し、該コンピュータに、その位置データに基づくグラフィックデータを作成させるとともに、そのグラフィックデータを表示装置の画面に視認可能にグラフィック表示させ、該画面上のグラフィック表示に基づいて、前記基板の変形を認識するものである、
請求項1に記載の基板変形認識方法。
【請求項3】
前記第3の工程は、前記表示装置に、前記基板上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示させ、それら表示された位置データに基づいて、前記基板の変形を認識するものである、
請求項2に記載の基板変形認識方法。
【請求項4】
複数の基板について変形を認識する方法であって、
前記第3の工程においては、前記コンピュータにより所定の数の前記基板に係る位置データについて統計処理をした結果を、前記表示装置に表示させる、
請求項2に記載の基板変形認識方法。
【請求項5】
複数の基板について変形を認識する方法であって、
前記第3の工程においては、前記コンピュータにより所定の数の前記基板に係る位置データについて予め設定した一乃至複数の時間帯ごとに統計処理をした結果を、前記表示装置に表示させる、
請求項4に記載の基板変形認識方法。
【請求項6】
複数の基板について変形を認識する方法であって、
前記第3の工程は、前記表示装置に、各基板の位置データを順次表示させ、基板ごとの変形を順次認識するものである、
請求項2に記載の基板変形認識方法。
【請求項7】
前記複数の目標位置として、前記基板の全ての角の近傍に少なくとも1つの目標位置を設定する、
請求項1に記載の基板変形認識方法。
【請求項8】
前記第1の工程においては、移動後に基板を撮影し、その撮影中心に基づき前記移動後の基板の位置を検出する、
請求項1に記載の基板変形認識方法。
【請求項9】
予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の手段と、
前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付ける第2の手段と、
を備える、
ことを特徴とする基板変形認識装置。
【請求項10】
前記第2の手段により関連付けられた位置データを記憶可能とする記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された位置データが入力され、その位置データに基づくグラフィックデータを作成するコンピュータと、
前記コンピュータにより作成されたグラフィックデータを表示する表示装置と、
を備える、
請求項9に記載の基板変形認識装置。
【請求項11】
前記コンピュータは、前記位置データを所定の座標系にプロット表示するグラフィックデータを作成するものであり、
ユーザの操作に基づき前記座標系の尺を拡大及び縮小する手段を備える、
請求項10に記載の基板変形認識装置。
【請求項12】
前記コンピュータは、所定の数の前記基板に係る位置データについて統計処理をした結果をグラフィック表示するグラフィックデータを作成するものである、
請求項10に記載の基板変形認識装置。
【請求項13】
前記コンピュータは、所定の数の前記基板に係る位置データについて予め設定した一乃至複数の時間帯ごとに統計処理をした結果をグラフィック表示するグラフィックデータを作成するものである、
請求項12に記載の基板変形認識装置。
【請求項14】
前記コンピュータは、前記基板上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示するグラフィックデータを作成するものである、
請求項10に記載の基板変形認識装置。
【請求項15】
前記基板を撮影する撮影手段を有し、
前記第1の手段は、前記基板の移動後に前記撮影手段により該基板を撮影し、その撮影中心に基づき前記移動後の基板の位置を検出するものである、
請求項9に記載の基板変形認識装置。
【請求項16】
コンピュータを、
予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の手段、
前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付ける第2の手段、
前記第2の手段により関連付けられた位置データを、当該コンピュータの記憶装置に記憶させる第3の手段、
前記記憶装置に記憶された位置データに基づくグラフィックデータを作成する第4の手段、
当該コンピュータの表示装置に、前記グラフィックデータを視認可能にグラフィック表示させる第5の手段、
として機能させる、
ことを特徴とする基板変形認識プログラム。
【請求項1】
予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の工程と、
前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付けした位置データを、記憶装置に記憶させる第2の工程と、
前記記憶装置に記憶された位置データに基づいて、前記基板の変形を認識する第3の工程と、
を備える、
ことを特徴とする基板変形認識方法。
【請求項2】
前記第3の工程は、前記記憶装置に記憶された位置データの少なくとも一部をコンピュータに入力し、該コンピュータに、その位置データに基づくグラフィックデータを作成させるとともに、そのグラフィックデータを表示装置の画面に視認可能にグラフィック表示させ、該画面上のグラフィック表示に基づいて、前記基板の変形を認識するものである、
請求項1に記載の基板変形認識方法。
【請求項3】
前記第3の工程は、前記表示装置に、前記基板上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示させ、それら表示された位置データに基づいて、前記基板の変形を認識するものである、
請求項2に記載の基板変形認識方法。
【請求項4】
複数の基板について変形を認識する方法であって、
前記第3の工程においては、前記コンピュータにより所定の数の前記基板に係る位置データについて統計処理をした結果を、前記表示装置に表示させる、
請求項2に記載の基板変形認識方法。
【請求項5】
複数の基板について変形を認識する方法であって、
前記第3の工程においては、前記コンピュータにより所定の数の前記基板に係る位置データについて予め設定した一乃至複数の時間帯ごとに統計処理をした結果を、前記表示装置に表示させる、
請求項4に記載の基板変形認識方法。
【請求項6】
複数の基板について変形を認識する方法であって、
前記第3の工程は、前記表示装置に、各基板の位置データを順次表示させ、基板ごとの変形を順次認識するものである、
請求項2に記載の基板変形認識方法。
【請求項7】
前記複数の目標位置として、前記基板の全ての角の近傍に少なくとも1つの目標位置を設定する、
請求項1に記載の基板変形認識方法。
【請求項8】
前記第1の工程においては、移動後に基板を撮影し、その撮影中心に基づき前記移動後の基板の位置を検出する、
請求項1に記載の基板変形認識方法。
【請求項9】
予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の手段と、
前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付ける第2の手段と、
を備える、
ことを特徴とする基板変形認識装置。
【請求項10】
前記第2の手段により関連付けられた位置データを記憶可能とする記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された位置データが入力され、その位置データに基づくグラフィックデータを作成するコンピュータと、
前記コンピュータにより作成されたグラフィックデータを表示する表示装置と、
を備える、
請求項9に記載の基板変形認識装置。
【請求項11】
前記コンピュータは、前記位置データを所定の座標系にプロット表示するグラフィックデータを作成するものであり、
ユーザの操作に基づき前記座標系の尺を拡大及び縮小する手段を備える、
請求項10に記載の基板変形認識装置。
【請求項12】
前記コンピュータは、所定の数の前記基板に係る位置データについて統計処理をした結果をグラフィック表示するグラフィックデータを作成するものである、
請求項10に記載の基板変形認識装置。
【請求項13】
前記コンピュータは、所定の数の前記基板に係る位置データについて予め設定した一乃至複数の時間帯ごとに統計処理をした結果をグラフィック表示するグラフィックデータを作成するものである、
請求項12に記載の基板変形認識装置。
【請求項14】
前記コンピュータは、前記基板上に設定された全ての目標位置に係る位置データを同時に表示するグラフィックデータを作成するものである、
請求項10に記載の基板変形認識装置。
【請求項15】
前記基板を撮影する撮影手段を有し、
前記第1の手段は、前記基板の移動後に前記撮影手段により該基板を撮影し、その撮影中心に基づき前記移動後の基板の位置を検出するものである、
請求項9に記載の基板変形認識装置。
【請求項16】
コンピュータを、
予め基板上に設定した複数の目標位置について、前記基板を各目標位置に逐次移動させ、目標位置ごとに移動後の基板の位置を検出する第1の手段、
前記各目標位置について、該目標位置と前記移動後の基板の位置とを関連付ける第2の手段、
前記第2の手段により関連付けられた位置データを、当該コンピュータの記憶装置に記憶させる第3の手段、
前記記憶装置に記憶された位置データに基づくグラフィックデータを作成する第4の手段、
当該コンピュータの表示装置に、前記グラフィックデータを視認可能にグラフィック表示させる第5の手段、
として機能させる、
ことを特徴とする基板変形認識プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−276096(P2009−276096A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125257(P2008−125257)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】
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