説明

基板実装用コネクタ

【課題】ケーブル側コネクタと接続される基板実装用コネクタにおいて、ESD対策を安定かつ確実に行うことのできる装置構成を提供する。
【解決手段】基板実装用コネクタは、複数のコンタクトが組み込まれた絶縁材からなるハウジング本体と、コネクタ同士の接続をロックするためにケーブル側コネクタに設けられた被ロック係合部材と係合するためのロック部を備え、前方に延びるように設けられ、ハウジング本体に固定された金属製のロック係合部材と、ハウジング本体の前方の側壁を覆い、かつ、前方に延びる前記ロック係合部材が貫通する開口部を備える金属製の外殻部材と、を有する。外殻部材の前記開口部は、前記開口部と接する外殻部材の縁と前記ロック係合部材とが接触するように設けられ、前記ロック係合部材および前記外殻部材のいずれの部材にも、基板に載置される後方部分に基板接続用ポストが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器に組み込まれるプリント回路基板等の基板に実装され、ケーブル側コネクタと接続される基板実装用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器同士間で信号の送受信を行うための通信用ケーブルは、通信用ケーブルのケーブル側コネクタに設けられた接続端子(コンタクト)を、基板側コネクタ(基板実装用コネクタ)に設けられた接続端子(コンタクト)に電気的に接続することにより、用いられる。
【0003】
今日、基板側コネクタには、静電気放電(ESD:Electro Static Discharge)に対する対策が施され、この対策のためのコネクタ装置の構成が種々提案されている。ESDとは、ケーブル側コネクタと基板側コネクタとの接続の際に、ケーブルに帯電した静電気が、ケーブル側コネクタの金属部分から、基板側コネクタのコンタクトに放電する、あるいは、作業者に静電気が帯電している場合、作業者から基板側コネクタの金属部分に移動した静電気が、基板側コネクタのコンタクトに放電することをいう。このESDによって基板中の回路が損傷を受けるため、機器側に設けられた基板側コネクタにはESD対策がとられている。
【0004】
下記特許文献1には、ESD対策を施したコネクタ装置が記載されている。当該文献に記載されるコネクタ装置は、当該文献の図1(a),(b)に示されるように、コンタクトが組み込まれた絶縁性のブロック体と、ブロック体に固定され、ケーブルコネクタにラッチされるラッチ用金具と、ブロック体の外面を覆い、ラッチ用金具と嵌合する貫通孔を有するシールド部材とを有する。このとき、シールド部材は、貫通孔の少なくとも一部に、シールド部材を折り返して形成された折り返し片を有し、シールド部材は、折り返し片を介してラッチ用金具と弾性接触する。
【0005】
このように、特許文献1のコネクタ装置では、上記折り返し片の導通部材を介して、ラッチ用金具とシールド部材とを導通させることができるので、帯電した状態のケーブル側コネクタが接続された場合においても、その静電気はラッチ用金具からシールド部材を介してグラウンドに流れるため、コンタクト部分に放電することを防止することができる、とされている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−59151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されるコネクタ装置では、上記シールド部材とラッチ用金具との電気的接続は、折り返し片がラッチ用金具の一面に接触する構成である。このため、ケーブル側コネクタを基板側コネクタと接続するために、ラッチ爪部材をラッチ用金具に係止するとき、ラッチ用金具は抉られるので、折り返し片のラッチ用金具への接触圧が低下し、接触が不安定となる、あるいは接触不良になる虞がある。この結果、シールド部材が、ラッチ用金具と非導通となって、シールド部材に帯電した静電気がコンタクトに放電してしまうといった問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、ケーブル側コネクタと接続される基板実装用コネクタ(基板側コネクタ)において、ESD対策を安定かつ確実に行うことのできる装置構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、基板に実装され、ケーブル側コネクタと接続される基板実装用コネクタであって、ケーブル側コネクタとの接続側を前方としたとき、前方に延びる複数のコンタクトが組み込まれた絶縁材からなるハウジング本体と、コネクタ同士の接続をロックするためにケーブル側コネクタに設けられた被ロック係合部材と係合するためのロック部を備え、前記前方に延びるように設けられ、前記ハウジング本体に固定された金属製のロック係合部材と、前記ハウジング本体の前方の側壁を覆うように前記ハウジング本体に固定され、かつ、前方に延びる前記ロック係合部材が貫通する開口部を備える金属製の外殻部材と、を有し、
前記外殻部材の前記開口部は、前記開口部に接する前記外殻部材の縁と前記ロック係合部材とが接触するように設けられ、前記ロック係合部材および前記外殻部材のいずれの部材にも、基板に載置される後方部分に、基板接続用ポストが設けられていることを特徴とする基板実装用コネクタを提供する。
【0010】
その際、前記外殻部材は、前記コンタクトが前方に延びる部分の、前記ハウジング本体の前方部分の側壁を覆い、かつ、ケーブル側コネクタと係合する筒状部分を有する前方外殻部材と、この前方外殻部材の後方に設けられ、前記ハウジング本体の後方部分の側壁を覆う後方外殻部材と、からなり、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材のいずれにも、前記基板接続用ポストが設けられていることが好ましい。
さらに、前記前方外殻部材は、前記ハウジング本体の前記側壁を覆うようにして、前記ハウジング本体に対して前方から配置されて位置決めされ、前記後方外殻部材は、前記ハウジング本体の後方から前記前方外殻部材と係合することにより、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材が前記ハウジング本体に固定されることが好ましい。
【0011】
また、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材のいずれか一方の外殻部材には、他方の外殻部材に向かって一部分が突出した固定片が設けられ、前記他方の外殻部材には、前記固定片の対応する位置に、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材との電気的接続を維持するために前記固定片を前記ハウジング本体の側に向かって押圧する接触バネ片が設けられ、前記後方外殻部材には、前記前方外殻部材に向かって一部分が突出し、前記前方外殻部材と前記ハウジング本体との間に圧接されるように挟まれる突片が設けられ、
さらに、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材には、前記突片が前記前方外殻部材と前記ハウジング本体との間に挟まれて配置されることによって、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材の相対位置がずれないように固定する係止機構が設けられていることが好ましい。
このとき、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材は、係合するときお互いに重なる接触面を有し、前記係止機構は、前記接触面の一方の面に設けられる切欠溝と、他方の面に設けられ、前記切欠溝に対応するように面外に突出する突出部と、を有し、前記切欠溝に前記突出部が係止されることにより、前記後方外殻部材は前記前方外殻部材に対して係合されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の基板実装用コネクタでは、外殻部材の開口部は、前記開口部に接する前記外殻部材の縁と前記ロック係合部材とが接触するように設けられ、かつ、ロック係合部材および外殻部材のいずれの部材にも、基板に載置される後方部分に、基板接続用ポストが設けられている。この基板接続用ポストは、基板上のグラウンド線に接続することができるので、帯電したケーブル側コネクタや作業者から静電気を受けてもグラウンドに逃がすことができ、ESDを防止することができる。また、前記開口部に接する前記外殻部材の縁と前記ロック係合部材とが接触するように設けられるので、外殻部材の基板接続用ポストおよびロック係合部材の基板接続用ポストのいずれか一方がグラウンドと非導通となっても、他方の基板接続用を介してグラウンドと導通することができる。したがって、ESD対策を安定かつ確実に行うことができる。
さらに、外殻部材が、基板接続用ポストを有する前方外殻部材と、基板接続用ポストを有する後方外殻部材からなる場合、後方外殻部材が、ハウジング本体の後方から前方外殻部材と係合し、前方外殻部材と後方外殻部材が接触するので、前方外殻部材は後方外殻部材を介してグラウンドと導通することができる。このため、ESD対策を安定かつ確実に行うことができる。前方外殻部材と後方外殻部材が、前方外殻部材と後方外殻部材との係合のために複数箇所で接触して係合する構成の場合、複数箇所で電気的導通の経路が形成されるので、1箇所で非導通となってもESD対策を安定かつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(a)は、本発明の基板実装用コネクタを実装したプリント基板10の概略斜視図である。プリント基板10では、コンピュータ等の電子機器の回路基板として用いられ、プリント基板10に実装された基板実装用コネクタ(以降、基板側コネクタという)12と、通信ケーブルの端部に設けられたケーブル側コネクタ14(図1(b)参照)とがA方向で接続される。
以降の説明では、ケーブル側コネクタ14との接続側を前方といい、その反対側を後方という。
基板側コネクタ12の、ケーブル側コネクタ14と係合する前方部分はプリント基板10の縁から前方に突出し、後方部分はプリント基板10上に載置されている。すなわち、基板側コネクタ12の前方向は、プリント基板10の面に平行となっている。なお、本発明においては、基板側コネクタ12の前方向が、プリント基板10の面に垂直になるように、基板側コネクタを構成したものであってもよい。
図1(a)では、プリント基板10上の配線および実装部品等の表示は省略されている。図1(b)は、プリント基板10に接続されるケーブル側コネクタ14の斜視図である。
【0014】
図1(a),(b)に示すように、ケーブル側コネクタ14をA方向に移動し、幅方向に複数のコンタクトが配列されたコネクタのコンタクト群16とコンタクト群18同士を電気的に接続し、かつ、コンタクト群の幅方向外側の両側に設けられたロック係合部材20をケーブル側コネクタ14の被ロック係合部材22と係合してロックすることにより、プリント基板10に実装された基板側コネクタ12を、ケーブル側コネクタ14と接続する。
ここで、幅方向とは、前方向に対して直交し、かつプリント基板10の面に平行な方向をいう。
【0015】
ロック係合部材20および被ロック係合部材22の機能をより詳しく説明する。
図1(b)中のケーブル側コネクタ14の被ロック係合部材22は、幅方向に複数のコンタクトが配列されたコンタクト群18の幅方向外側の両側に、A方向に突出した平板状の細長い形状を成した金属製の部材で、先端部に開口部24が設けられている。また、被ロック係合部材22を、両側の開口部24間の距離が拡がる方向(外側方向)に拡げると、被ロック係合部材22を元の位置に復元する、すなわち内側方向の付勢力を被ロック係合部材22に与える、図示されないばね要素が設けられている。このため、基板側コネクタ12にケーブル側コネクタ14が接続されるとき、基板側コネクタ12のロック係合部材20の先端部に設けられているロック部26の爪は、被ロック係合部材22を内側から外側に押し拡げて開口部24に進入して収まる。このとき図示されない上記ばね要素によって、被ロック係合部材22に内側向きの付勢力が与えられ、ロック部26は開口部24に係止される。これにより、基板側コネクタ12とケーブル側コネクタ14とは接続される。このようなロック係合部材20および被ロックロック係合部材22は金属材料で構成されている。
【0016】
図2(a)は、基板側コネクタ12を、実装するプリント基板10側から見た概略斜視図である。図2(b)は、図2(a)中のB−B線に沿って見たときの矢視断面図である。
基板側コネクタ12は、水平端子群28と垂直端子群30とを有する。水平端子群28は、プリント基板10の、基板側コネクタ12を載置するプリント基板10の表面10a(図1(a)参照)上の配線と接続するためにプリント基板10の表面10aに沿って平行に延びている。垂直端子群30は、プリント基板10の裏面10b(図1(a)参照)上の配線、あるいはプリント基板10の中間層に設けられた配線と接続するために、基板側コネクタ12の表面10aと面する底面に対して立設している。水平端子群28および垂直端子群30は、図2(b)に示すように、基板側コネクタ12のコンタクト群16と、一対一に接続されている。さらに、基板側コネクタ12には、プリント基板10の表面10aと面する底面に対して立設する突起32が設けられている。この突起32は、プリント基板10の所定位置に設けられた穴に位置決めするために用いられる。さらに、プリント基板10の側に向けて突設するソルダーポスト62〜68が基板接続用ポストとして複数設けられている。このソルダーポスト62〜68については、後述する。図3は、基板側コネクタ12を、図1(a)中のA方向から見た正面図である。
【0017】
図4は、基板側コネクタ12の構成を示す分解斜視図である。
基板側コネクタ12は、図4に示すように、上述の一対のロック係合部材20と、ハウジング本体40と、前方外殻部材42と、後方外殻部材44と、を主に有する。
【0018】
ハウジング本体40は、図2(b)に示すように、前方に延びる金属製のコンタクト群16を組み込んだ、樹脂材等の絶縁材からなる部材である。ハウジング本体40は、コンタクト群16のそれぞれを所定位置に組み込むように図示されない溝、孔が設けられている。ハウジング本体40は、コンタクト群16を図示されない溝や孔に効率よく組み込むために2つの部材を、コンタクト群16を組み込んだ後、接合して1つの部材として構成したものであるが、単一の部材で構成したものであってもよい。
ロック係合部材20は、上述したように、基板側コネクタ12およびケーブル側コネクタ14同士の接続をロックするためにケーブル側コネクタ14に設けられた被ロック係合部材22と係合するためのロック部26を備え、前方に延びるように設けられ、ハウジング本体40に固定されている。ロック係合部材20は、金属材料からなる部材である。
ハウジング本体40には、コンタクト群16が設けられる部分の幅方向の外側の両側には、ロック係合部材20を固定するための貫通孔45が設けられ、ロック係合部材20を後方から前方に向けて貫通孔45に圧入することにより、ロック係合部材20はハウジング本体40に固定される。
【0019】
前方外殻部材42は、ハウジング本体40の前方突出部分46の側壁を覆い、かつ、ケーブル側コネクタ14と係合する金属材料からなる部材であり、薄い金属板を加工することによって作製される。前方外殻部材42は、図1(a)に示すように、プリント基板10の縁に沿って接するように配置され、前方を向く面を有する基部48と、基部48から筒状に前方に突出し、ハウジング本体40の前方突出部分46(図4参照)を覆う先端部50とを有する。この筒状の先端部50が、ケーブル側コネクタ14と係合する。基部48の前方に向く面には、前方に延びるロック係合部材20の対応する位置に開口部52が設けられ、さらに、開口部52の外側には、基部48が後方に90度屈曲した後方屈曲部54が設けられている。
基部48の面の、開口部52と接する縁には、突出部53が設けられ、一方、ロック係合部材20の対応する位置には、突出部53に向けて突状に飛び出したリブ55が設けられ、このリブ55と突出部53とが確実に接触できるようになっている。これにより、前方外殻部材42とロック係合部材20とは電気的に確実に接続される。
【0020】
後方外殻部材44は、前方外殻部材42の後方に設けられ、ハウジング本体40の後方部分の、プリント基板10に載置する底面以外の側壁面を覆う金属材料からなる部材であり、薄い金属板を加工することによって作製されている。
基板側コネクタ12の、載置するプリント基板10の側を下側、この下側と反対側を上側としたとき、後方外殻部材44は、ハウジング本体40の上側の面を覆う上面部56と、上面部56から90度下側に屈曲し、ハウジング本体40の幅方向外側の側面を覆う側面部58と、ハウジング本体40の後方の背面を覆う背面部60と、を有する。
【0021】
前方外殻部材42の後方屈曲部54の下側にはプリント基板10に向かって突出するソルダーポスト62が前方外殻部材42の一部として設けられている。後方外殻部材44の側面部58の下側および背面部60の下側にもプリント基板10に向かって突出するソルダーポスト64,66が後方外殻部材50の一部として設けられている。さらに、ロック係合部材20の後方下側にもプリント基板10に向かって突出するソルダーポスト68がロック係合部材20の一部として設けられている。ソルダーポスト62〜68は、プリント基板10に設けられた図示されないスルーホールを通り裏面10bに至り、この裏面10bに設けられたグラウンド線に半田等を用いて、プリント基板10に固定接続される。このように、ロック係合部材20、前方外殻部材42、および後方外殻部材44のいずれも個別にグラウンドと接続されるので、帯電したケーブル側コネクタや作業者から静電気を受けても静電気をグラウンドに逃がすことができ、ESD対策を確実に行うことができる。さらに、ソルダーポスト62〜68は、プリント基板10に確実に固定されるように機能する。このように、ソルダーポスト62〜68は、基板接続用ポストとして機能する。
【0022】
さらに、前方外殻部材42は、ハウジング本体40の前方突出部46を覆うようにして、ハウジング本体40に位置決めされた状態で、後方外殻部材44が、後述するように、後方から前方外殻部材42に係合される。これにより、前方外殻部材42および後方外殻部材44がハウジング本体40に固定される。後方外殻部材44と前方外殻部材42とは係合することにより電気的に接続されるので、前方外殻部材42が、帯電したケーブル側コネクタ14や作業者から静電気を受けた場合、前方外殻部材42から後方外殻部材44のソルダーポスト64,66を介してグラウンドに静電気を逃がすことができる。勿論、前方外殻部材42のソルダーポスト62から静電気をグラウンドに逃がすことができる他、電気的に接続したロック係合部材20のソルダーポスト68から静電気をグラウンドに逃がすこともできる。このように、前方外殻部材42が静電気を受けてもこの静電気をグラウンドに逃がす経路が複数あるので、経路中に電気的接続不良が生じても、他の経路を介して確実に静電気を逃がすことができる。これにより、安定したESD対策が確実に実現できる。
同様に、後方外殻部材44が静電気を受けてもこの静電気をグラウンドに逃がす経路が複数あるので、複数の経路の中で電気的接続不良が生じても、他の経路を介して確実に静電気を逃がすことができる。これにより、安定したESD対策が確実に実現できる。
【0023】
ロック係合部材20が、帯電したケーブル側コネクタ14の被係合ロック部材22から静電気を受けても、ロック係合部材20のソルダーポスト68を介して静電気をグラウンドに逃がすことができる他、ロック係合部材20と前方外殻部42との電気的接続により、前方外殻部材42のソルダーポスト62を介して静電気をグラウンドに逃がすことができる。さらに、前方外殻部材42と電気的に接続される後方外殻部材44のソルダーポスト64,66を介して静電気をグラウンドに逃がすことができる。このように、ロック係合部材20が静電気を受けてもこの静電気をグラウンドに逃がす経路が複数あるので、複数の経路の中で電気的接続不良が生じても、他の経路を介して確実に静電気を逃がすことができる。これにより、安定したESD対策が確実に実現できる。
【0024】
なお、後方外殻部材44は、前方外殻部材42と以下のように係合され、ハウジング本体40に固定される。
図4に示されるように、前方外殻部材42には、後方外殻部材44に向かって一部分が突出した固定片70が設けられている。固定片70は、前方外殻部材42の基部48の上側縁部から後方に折り曲げられ、後方に延びる水平部70aと、後方先端の下側傾斜部70bを有する。一方、後方外殻部材44には、固定片70の幅方向の対応する位置に、固定片70の水平部分70aをハウジング本体40の側に向かって押圧する接触バネ片72が設けられている。この接触バネ片72により、前方外殻部材42および後方外殻部材44との電気的接続を維持することができる。具体的には、図5に示されるように、接触バネ片72は、後方外側部材44の上面部56の前方縁部から逆ハの字状に切り込みが設けられて構成され、前方側で下側に凸形状となるように屈曲部72aが設けられている。屈曲部72aが水平部70aを押圧する。
【0025】
固定片70の下側傾斜部70bは、ハウジング本体40に設けられた、前方、後方に延びる係止溝73に係止される。図示されないが、前方外殻部材42の基部48の下側縁部には、固定片70と対応する幅方向の位置に図示されない固定片が設けられ、この固定片が係止溝73と同様にハウジング本体40の下側に設けられた図示されない係止溝に係止される。これにより、前方外殻部材42がハウジング本体40に対して幅方向において位置決めされる。
【0026】
さらに、図4に示すように、後方外殻部材44の、前方外殻部材42と接する前方縁部には、一対の屈曲延長部74が設けられ、階段状に折れ曲がっている。屈曲延長部74の前方先端は前方に突出する突片76となっている。ハウジング本体40の、突片76と対応する幅方向の位置に、前方、後方に延びる突片挿入溝78が設けられている。この突片挿入溝78に、図6(a)に示すように、突片76が幅方向に位置決めされて挿入される。
後方外殻部材44が前方外殻部材42と係合するとき、図6(b)に示すように、前方外殻部材42とハウジング本体40との間に、突片挿入溝78に係止した突片76が圧接されるように挟まれる。
【0027】
一方、前方外殻部材42および後方外殻部材44には、係合するとき、前方外殻部材42および後方外殻部材44の相対位置がずれないように固定する係止機構が設けられている。具体的には、前方外殻部材42に後方外殻部材44が係合するとき、前方外殻部材42の後方屈曲部54の面と、後方外殻部材44の側面部58の面とは重なって接触する。このとき、後方屈曲部54に対して側面部58が幅方向外側に位置するように接触する。
後方屈曲部54の外側面には、この面に対して面外外側方向に突出する突出部80が設けられ、後方外殻部材44の側面58には、突出部80と対応する高さ方向(上側、下側の方向)の位置に、側面部58の前方縁部から切り欠かれた切欠溝82が設けられている。後方外殻部材44を後方から前方に向けて移動させて前方外殻部材42に係合するとき、図7に示されるように、切欠溝82に突出部80が係止される。これにより、後方外殻部材44と前方外殻部材42は、ハウジング本体40に固定される。図7に示されるように、突出部80の突出高さのピーク位置が下側にあり、ピーク位置の下側では傾斜勾配が急激な段差を形成しているので、後方外殻部材44の上側への位置ずれを防止することができる。
【0028】
このような基板側コネクタ12は、以下のように組み立てられる。
まず、前方外殻部材42の固定片70がハウジング本体40の係止溝73に係止されて幅方向の位置決めされる。この状態で前方外殻部材42の筒状の先端部50が前方からハウジング本体40の前方突出部分46を覆うように配置される。
次に、前方外殻部材42とハウジング本体40の突片挿入溝78との間に、後方外殻部材44の突片76が挿入されるように、後方外殻部材44が後方上側から配置される。このとき、後方外殻部材44の接触バネ片72は、前方外殻部材42の固定片70の水平部70aを上側から押圧し、前方外殻部材42が上側に浮き上がることを抑制する。
次に、上記突片76を挟んだ状態で、後方外殻部材44の後方部分を下側に押さえつつ、前方に向けてスライドさせることにより、前方外殻部材42の突出部80が後方外殻部材44の切欠溝82に係止される。これにより、後方外殻部材44は前方外殻部材42に対して係合する。後方外殻部材44の背面部60は、ハウジング本体40の後方の面を覆うように設けられているので、背面部60がハウジング本体40の背面の部分と当接することにより、後方外殻部材44と係合した前方外殻部材42の前方への移動も拘束される。これにより、前方外殻部材42と後方外殻部材44はハウジング本体40に固定される。
【0029】
以上のように、後方外殻部材44は、ハウジング本体40の前方突出部分46の側壁を覆うようにハウジング本体40に固定される前方外殻部材42に対して、後方外殻部材44の突片76が前方外殻部材42とハウジング本体40との間に挟まれる。このとき、後方外殻部材44の接触バネ片72が前方外殻部材42の水平部70aを押圧する。さらに、後方外殻部材44の切欠溝82が前方外殻部材42の突出部80を係止することにより、後方外殻部材44は前方外殻部材42に係合する。これにより、前方外殻部材42および後方外殻部材44はハウジング本体40に安定して固定される。
しかも、前方外殻部材42と後方外殻部材44とは、上記のように複数の箇所で接触し、特に、突片76が前方外殻部材42に圧接状態で接触するので、電気的接続も安定して確保される。
【0030】
上記実施形態では、前方外殻部材42に固定片70および突出部80を設け、後方外殻部材44に突片76、接触バネ片72および切欠溝82を設けた構成となっているが、本発明においてはこれに限定されない。前方外殻部材42および後方外殻部材44のいずれか一方の外殻部材に固定片70および突出部80を設け、他方の外殻部材に突片76、接触バネ片72および切欠溝82を設けてもよい。
また、本発明の基板接続用ポストは、プリント基板10を貫通し裏面10bのグラウンド線と接続するソルダーポストに限定されず、表面10aのグラウンド線に接続するサーフェスマウント用ポストであってもよい。
【0031】
以上、本発明の基板実装用コネクタについて詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は、本発明の基板実装用コネクタをプリント基板に実装した状態を示す概略斜視図であり、(b)は、基板実装用コネクタに接続されるケーブル側コネクタの概略斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示す基板実装用コネクタを実装する基板側から見た概略斜視図であり、(b)は、(a)中のB−B線に沿って見たときの矢視断面図である。
【図3】図1(a)に示す基板実装用コネクタを、図1中のA方向から見た正面図である。
【図4】図1(a)に示す基板実装用コネクタの構成を示す分解斜視図である。
【図5】図1(a)に示す基板実装用コネクタの前方外殻部材と後方外殻部材との係合状態を説明する説明図である。
【図6】(a),(b)は、図1(a)に示す基板実装用コネクタの前方外殻部材と後方外殻部材との係合状態を説明する、図5と異なる別の説明図である。
【図7】図1(a)に示す基板実装用コネクタの前方外殻部材と後方外殻部材との係合状態を説明する、図5および図6(a),(b)とは異なる別の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10 プリント基板
10a 表面
10b 裏面
12 基板実装用コネクタ
14 ケーブル側コネクタ
16,18 コンタクト群
20 ロック係合部材
22 被ロック係合部材
24 開口部
26 ロック部
28 水平端子群
30 垂直端子群
32 突起
40 ハウジング本体
42 前方外殻部材
44 後方外殻部材
45 貫通孔
46 前方突出部分
48 基部
50 先端部
52 開口部
54 後方屈曲部
55 リブ
56 上面部
58 側面部
60 背面部
62,64,66,68 ソルダーポスト
70 固定片
70a 水平部
70b 下側傾斜部
72 接触バネ片
72a 屈曲部
74 屈曲延長部
76 突片
78 突片挿入溝
80 突出部
82 切欠溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装され、ケーブル側コネクタと接続される基板実装用コネクタであって、
ケーブル側コネクタとの接続側を前方としたとき、
前方に延びる複数のコンタクトが組み込まれた絶縁材からなるハウジング本体と、
コネクタ同士の接続をロックするためにケーブル側コネクタに設けられた被ロック係合部材と係合するためのロック部を備え、前記前方に延びるように設けられ、前記ハウジング本体に固定された金属製のロック係合部材と、
前記ハウジング本体の前方の側壁を覆うように前記ハウジング本体に固定され、かつ、前方に延びる前記ロック係合部材が貫通する開口部を備える金属製の外殻部材と、を有し、
前記外殻部材の前記開口部は、前記開口部に接する前記外殻部材の縁と前記ロック係合部材とが接触するように設けられ、
前記ロック係合部材および前記外殻部材のいずれの部材にも、基板に載置される後方部分に、基板接続用ポストが設けられていることを特徴とする基板実装用コネクタ。
【請求項2】
前記外殻部材は、前記コンタクトが前方に延びる部分の、前記ハウジング本体の前方部分の側壁を覆い、かつ、ケーブル側コネクタと係合する筒状部分を有する前方外殻部材と、この前方外殻部材の後方に設けられ、前記ハウジング本体の後方部分の側壁を覆う後方外殻部材と、からなり、
前記前方外殻部材および前記後方外殻部材のいずれにも、前記基板接続用ポストが設けられている請求項1に記載の基板実装用コネクタ。
【請求項3】
前記前方外殻部材は、前記ハウジング本体の前記側壁を覆うようにして、前記ハウジング本体に対して前方から配置されて位置決めされ、
前記後方外殻部材は、前記ハウジング本体の後方から前記前方外殻部材と係合することにより、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材が前記ハウジング本体に固定される請求項2に記載の基板実装用コネクタ。
【請求項4】
前記前方外殻部材および前記後方外殻部材のいずれか一方の外殻部材には、他方の外殻部材に向かって一部分が突出した固定片が設けられ、前記他方の外殻部材には、前記固定片の対応する位置に、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材との電気的接続を維持するために前記固定片を前記ハウジング本体の側に向かって押圧する接触バネ片が設けられ、
前記後方外殻部材には、前記前方外殻部材に向かって一部分が突出し、前記前方外殻部材と前記ハウジング本体との間に圧接されるように挟まれる突片が設けられ、
さらに、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材には、前記突片が前記前方外殻部材と前記ハウジング本体との間に挟まれて配置されることによって、前記前方外殻部材および前記後方外殻部材の相対位置がずれないように固定する係止機構が設けられている請求項2または3に記載の基板実装用コネクタ。
【請求項5】
前記前方外殻部材および前記後方外殻部材は、係合するときお互いに重なる接触面を有し、
前記係止機構は、前記接触面の一方の面に設けられる切欠溝と、他方の面に設けられ、前記切欠溝に対応するように面外に突出する突出部と、を有し、
前記切欠溝に前記突出部が係止されることにより、前記後方外殻部材は前記前方外殻部材に対して係合される請求項4に記載の基板実装用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−252519(P2009−252519A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98699(P2008−98699)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【出願人】(508104961)台湾航空電子股▲ふん▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】