説明

基板形成用組成物とこれを用いたプリプレグおよび基板

【課題】熱的、電気的および機械的特性に優れた基板形成用組成物と、これを用いたプリプレグおよび基板を提供すること。
【解決手段】本発明の基板形成用組成物は、主鎖に少なくとも一つの可溶性構造単位を有し、主鎖の末端の少なくとも一つに熱硬化性基を有する熱硬化性液晶オリゴマー、および前記熱硬化性基と共有結合が可能な反応基を有するアルコキシド金属化合物を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板形成用組成物とこれを用いたプリプレグおよび基板に関する。さらに詳しくは、本発明は、主鎖に少なくとも一つの可溶性構造単位を有し、主鎖の末端の少なくとも一つに熱硬化性基を有する熱硬化性液晶オリゴマー(Liquid Crystal Thermosetting Oligomer)、および前記熱硬化性基と共有結合が可能な反応基を有するアルコキシド金属化合物を含む基板形成用組成物、ならびにこれを用いたプリプレグおよび基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の発展に伴ってプリント基板の低重量化、薄板化および小型化が日増しに進んでいる。このような要求を満足させるために、プリント基板の配線がさらに複雑化かつ高密度化されている。このように基板に要求される電気的、熱的および機械的安定性はさらに重要な要素として作用する。特に、熱膨張係率(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)は、基板製作の際に信頼性を左右する重要な要素の一つである。
【0003】
プリント基板は主に、回路配線の役割を果たす銅と、層間を絶縁させる役割を果たす高分子とから構成されている。銅に比べて、絶縁層を構成する高分子のCTEは非常に高い。このような差異を克服するために、主に高分子をガラス繊維織物(Woven Glass Fiber)に含浸しあるいは無機充填剤を添加し、絶縁層を構成する高分子のCTEを低めた材料を主に使用している。
【0004】
一般に、無機充填剤の添加量を増加させれば増加させるほどCTEは低くなるが、これは基板製作プロセス上の限界を持っている。また、高密度化されていく微細パターンの要求を満足させるために、その表面の粗さについても論じている。このような表面を確保するために、添加される無機充填剤の大きさが益々小さくなっている。ところが、充填剤の大きさが小さくなるにつれて、その均一な分散性が問題となり、ナノスケールの充填剤を均一に分散させることが大きい問題として台頭している。
【0005】
究極的に銅のCTEと同一水準の熱膨張係数を有する絶縁層高分子材料が必要である。ところが、既存の絶縁層を構成する高分子の種類および含量と、充填剤の大きさおよび含量を調節して得られる材料は、前述した要求を満足させるには難しいことが実情である。
【0006】
通常、基板の絶縁層を形成する主な材料はエポキシである。エポキシ自体のCTEは約70〜100ppm/℃であり、これを低めるために、ガラス繊維織物に含浸しあるいはCTEの小さい無機充填剤をエポキシマトリクスに添加して低いCTEを実現する(図1参照)。充填剤の添加量に応じて、CTEは大部分が線形的に減少する。ところが、多量の充填剤を添加すればCTEは低められるが、エポキシの粘度が急激に上昇するので、製品の成形には難しさが多い。
【0007】
特に、プリント基板に用いられる絶縁フィルムのように多層積層構造を持つ場合は、層間接合が不可になることが多い。
【0008】
このような制限のため、エポキシ自体のCTEを低めて実現すると同時に、積層工程性が担保される臨界量の無機充填剤を導入して効果を増進させる。エポキシ自体のCTEを低めるためには、主に相異なる構造のエポキシ樹脂を混合して使用するが、この際、各樹脂の成分および組成が重要な役割を果たす。また、無機充填剤の添加量だけでなく、種類、大きさおよび模様によっても、無機充填剤が添加されたエポキシのCTEは大きな影響を受ける。超微細パターンを実現するためには、添加された無機充填剤の大きさの微細化、すなわちナノスケール化が要求されるが、このようなナノスケールの充填剤を添加しても、均一な充填剤の分散による均質な成形フィルムを得るには依然として難しさが多い。
【0009】
このように、上述した従来の方式では、薄型化および高密度化されていく集積回路パターンを実現するには限界があり、要求される熱的、電気的および機械的特性を満足させることが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者は、上述した問題点を解決するために広範囲な研究を重ねた結果、熱硬化性液晶(Liquid Crystal Thermosetting、LCT)オリゴマーと、共有結合が可能な特定の反応基を有するアルコキシド金属化合物を用いて熱的(CTE)、電気的および機械的安定性に優れた基板用絶縁材料として有機−無機ナノ複合材料組成物を得ることができることを見出し、これに基づいて本発明を完成した。
【0011】
したがって、本発明の目的は、熱的、電気的および機械的特性に優れた基板形成用組成物と、これを用いたプリプレグおよび基板を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、均質な品質の製膜が可能な基板形成用組成物と、これを用いたプリプレグおよび基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のある側面によれば、主鎖に少なくとも一つの可溶性構造単位を有し、主鎖の末端の少なくとも一つに熱硬化性基を有する熱硬化性液晶オリゴマー、および前記熱硬化性基と共有結合が可能な反応基を有するアルコキシド金属化合物を含む基板形成用組成物が提供される。
【0014】
前記熱硬化性液晶オリゴマーにおいて、前記可溶性構造単位はC4〜C30のアリール−アミン基またはC4〜C30のアリール−アミド基を含むことができる。
【0015】
前記可溶性構造単位は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0016】
【化1】

【0017】
式中、ArはC4〜C30のアリール基であり、XおよびYはそれぞれ独立にCOO、O、CONR”、NR”’およびCOよりなる群から選ばれ、ここで、前記R”および前記R”’はそれぞれ独立に水素原子、C1〜C20のアルキル基およびC6〜C30のアリール基よりなる群から選ばれ、XおよびYの少なくとも一つはCONR”またはNR”’である。
【0018】
また、前記可溶性構造単位は、下記化学式2で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位を含むことができる。
【0019】
【化2】

【0020】
式中、ArはC4〜C30のアリール基である。
【0021】
ここで、前記Arは下記化学式3で表される化合物の中から選ばれるアリール基またはこれらの置換体であってもよい。
【0022】
【化3】

【0023】
一方、前記可溶性構造単位は、全体構造単位の合計に対して5モル%超過60モル%以下で含まれてもよい。
【0024】
また、前記熱硬化性液晶オリゴマーは、主鎖に、下記化学式4で表される構造単位をさらに含むことができる。
【0025】
【化4】

【0026】
式中、ArはC4〜C30のアリール基であり、XおよびYはそれぞれ独立にCOO、O、CONR”、NR”’およびCOよりなる群から選ばれ、ここで、前記R”およびR”’はそれぞれ独立に水素原子、C1〜C20のアルキル基およびC6〜C30のアリール基よりなる群から選ばれる。
【0027】
前記化学式4で表される構造単位は、下記化学式5で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位を含むことができる。
【0028】
【化5】

【0029】
式中、ArはC4〜C30のアリール基である。
【0030】
ここで、前記Arは下記化学式3で表される化合物の中から選択できる。
【0031】
【化6】

【0032】
前記熱硬化性基は熱架橋性反応基であってもよい。
【0033】
前記熱硬化性基は、一実施例によって、マレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択できる。
【0034】
一実施例によれば、前記熱硬化性液晶オリゴマーは下記化学式6で表される化合物であり得る。
【0035】
【化7】

【0036】
式中、Rは下記化学式2で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位であり;Rは下記化学式5で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位であり;ZおよびZは互いに同じでも異なってもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、マレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択され;ZおよびZの少なくとも一つはマレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択され;nとmはそれぞれ独立に1〜50の整数であり;n/(n+m+2)は5%超過60%以下である。
【0037】
【化8】

【0038】
式中は、ArはC4〜C30のアリール基である。
【0039】
【化9】

【0040】
式中、ArはC4〜C30のアリール基である。
【0041】
好適な一実施例によれば、前記熱硬化性液晶オリゴマーは下記化学式7または化学式8で表される化合物であり得る。
【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
式中、ZおよびZは互いに同じでも異なってもよく、それぞれマレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択され;mは1〜50の整数であり、nは1〜50の整数である。
【0045】
前記熱硬化性液晶オリゴマーの数平均分子量は500〜15,000であってもよい。
【0046】
一方、前記熱硬化性基と共有結合が可能な反応基は、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択できる。
【0047】
前記アルコキシド金属化合物の金属は、Ti、Al、Ge、Co、Ca、Hf、Fe、Ni、Nb、Mo、La、Re、Si、Sc、Ta、W、Y、Zr、およびVよりなる群から選択できる。
【0048】
前記熱硬化性液晶オリゴマー100重量部に対して5〜200重量部のアルコキシド金属化合物を含むことができる。
【0049】
また、前記組成物は無機充填剤をさらに含むことができる。
【0050】
本発明の好適な他の側面によれば、前記基板形成用組成物から製造されるプリプレグが提供される。
【0051】
本発明の好適な別の側面によれば、前記基板形成用組成物から製造される基板が提供される。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、ナノスケールの無機物3次元網目構造をLCTマトリクスの主鎖に共有結合による側鎖として直接成長させ、無機成分を分散の難しさなしで均一にマトリクス内に分布させることができる。このような方式でマトリクス内に均一に分布したナノサイズの無機物に一部含有された共有結合可能な特定の反応基と高分子LCTマトリクスの両末端間の硬化反応によって堅固な共有結合を形成することにより、液晶高分子系基板素材のCTEの増減に最も大きい影響を及ぼすマトリクス主鎖の流動度(mobility)を著しく低下させることができる。また、このような高分子マトリクス内で合成される無機組成のクラスターは、様々な金属原子を構造内に有する有機金属化合物で代替して同一の合成方式でそれぞれ独特な特性を発現する有機−無機ナノ複合材料を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来の技術によって無機充填剤が添加されたエポキシマトリクスを示す概念図である。
【図2】製造例1−2で合成された熱硬化性液晶オリゴマーのNMR結果を示すグラフである。
【図3】製造例1−2で合成された熱硬化性液晶オリゴマーの反応温度をDSCによって測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に添付図面を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。
【0055】
前述したように、本発明によれば、無機物からなるナノスケールの3次元無機成分の網目構造クラスターを高分子マトリクス内でインシチュー(In-situ)にて均一に生成させると同時に、硬化反応進行の際に、無機クラスターに含有された特定の反応基(例えば、ビニル基、アクリル基、メタアクリル基またはメルトカプト基)をLCTマトリクス内の主鎖と反応させることにより、熱的、機械的および電気的特性に優れた基板材料を得ることができる。
【0056】
具体的に、本発明では、一般に使用されるエポキシ樹脂を用いるのではなく、可溶性LCTオリゴマーを用いる。前記LCTオリゴマーは、液晶の特性を実現する構造と、溶媒に溶解できる可溶性構造を同時に持っている。また、熱による硬化構造を持つことが可能な部分が両末端の少なくとも一つに存在する。
【0057】
すなわち、前記熱硬化性液晶オリゴマーは、主鎖に少なくとも一つの可溶構造単位を含み、主鎖の両末端の少なくとも一つに熱硬化性基を有する。本願において、「可溶性」とは、組成物に使用された溶媒に対して優れた溶解度を示す特性を意味する。
【0058】
一般に、高分子樹脂は、溶融させて使用しあるいは溶媒に溶解させて使用しても、粘度が非常に高くて固形分含量を増加させることが難しい。特に、ガラス繊維織物に含浸させる場合、高分子組成物の粘度が高くて含浸が難しく、固形分含量が低い場合、含浸量が足りなくて再加工などの問題により加工比が増加するという問題点がある。これに対し、本発明の熱硬化性液晶オリゴマーは、低い粘度を有しながらも誘電定数、熱膨張係数、耐吸収性などの特性に優れるうえ、溶媒に対する溶解性にも非常に優れるため、各種基板の素材として応用すれば製造コストを低めることができる。
【0059】
前記熱硬化性液晶オリゴマーの主鎖に挿入される可溶性構造単位は、C4〜C30のアリール−アミン基またはC4〜C30のアリール−アミド基であってもよい。前記可溶性構造単位は下記化学式1の構造単位を含むことができる。
【0060】
【化12】

【0061】
式中、ArはC4〜C30のアリール基であり、XおよびYはそれぞれ独立にCOO、O、CONR”、NR”’およびCOよりなる群から選択され、ここで、前記R”およびR”’はそれぞれ独立に水素原子、C1〜C20のアルキル基、およびC6〜C30のアリール基よりなる群から選択され、XおよびYの少なくとも一つはCONR”またはNR”’である。
【0062】
このような可溶性構造単位は、下記化学式2で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位を含むが、これらに限定されない。
【0063】
【化13】

【0064】
式中、ArはC4〜C30のアリール基である。
【0065】
前記熱硬化性液晶オリゴマーを構成するそれぞれの構造単位において、Arは互いに同じでも異なってもよく、Arの芳香族環はアミド基、エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基またはフルオロメチル基で置換できる。
【0066】
前記Arの非制限的な例は、下記化学式3で表される化合物を含むことができる。
【0067】
【化14】

【0068】
前記熱硬化性液晶オリゴマーは、可溶性構造単位を全体構造単位の合計に対して5モル%超過60モル%以下の含量で含むことができる。可溶性構造単位の含量が5モル%以下の場合には溶媒中における溶解度向上効果が微々たるものであるのに対し、可溶性構造単位の含量が60モル%超過の場合には親水性が増加して耐吸湿性が低下する。熱硬化性液晶オリゴマー中の前記可溶性構造単位の含量は、反応の際に添加する単量体の含量を調節することにより、所望の水準の可溶性構造を熱硬化性液晶オリゴマーに含ませることができる。前記可溶性構造単位の含量は、可溶性構造単位の大きさ、質量、特性および化学的組成を変化させることにより調節できる。
【0069】
前記熱硬化性液晶オリゴマーは、主鎖に可溶性構造単位と共に、下記化学式4で表される構造単位をさらに含むことができる。
【0070】
【化15】

【0071】
式中、ArはC4〜C30のアリール基であり、XおよびYはそれぞれ独立にCOO、O、CONR”、NR”’およびCOよりなる群から選ばれ、ここで、前記R”およびR”’はそれぞれ独立に水素原子、C1〜C20のアルキル基およびC6〜C30のアリール基よりなる群から選ばれる。
【0072】
前記化学式4の構造単位の例は、下記化学式5で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位を含むことができる。
【0073】
【化16】

【0074】
式中、ArはC4〜C30のアリール基である。
【0075】
前記化学式5で表される化合物の中から選ばれる構造単位が二つ以上含まれる場合、それぞれの構造単位のArは互いに同じでも異なってもよく、Arの芳香族環はアミド基、エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基またはフルオロメチル基で置換できる。具体的に、前記Arは下記化学式3から選択されたものであってもよい。
【0076】
【化17】

【0077】
前記熱硬化性液晶オリゴマーは、主鎖の両末端の少なくとも一つに互いに同じまたは異なる熱硬化性基が導入できる。このような熱硬化性基は、基板形成用組成物をプリント基板などの製造に利用するとき、高温硬化を経ると、これらの架橋官能基が互いに架橋されて堅固な網状の安定な構造を形成するので、プリント基板の機械的物性を向上させることができる。
【0078】
前記熱硬化性基は熱架橋性反応基であってもよい。このような熱硬化性基の例は、マレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選ばれる化合物を含むが、これに限定されない。本願において、「置換体」は、熱架橋性反応基の末端の一部がアルキル基、ハロゲン原子、アリール基などの置換基で置換された構造を意味し、例えばマレイミド反応基の場合、二重結合にある水素の少なくとも一つがメチル基のようなアルキル基などによって置換されたものを含む。また、本願において、「誘導体」は、芳香族やヘテロ芳香族基などに熱架橋性反応基が結合した構造を意味し、例えばマレイミド反応基の場合、ベンゼン環またはナフタレンにマレイミド反応基が結合したものを含む。
【0079】
好ましくは、前記熱硬化性液晶オリゴマーは下記化学式6の構造を持つことができる。
【0080】
【化18】

【0081】
式中、Rは下記化学式2の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位であり;Rは下記化学式5の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位であり;
およびZは互いに同じでも異なってもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、マレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択され;
nとmはそれぞれ独立に陽の整数であり、好ましくは独立に1〜50の整数である。
【0082】
【化19】

【0083】
式中、ArはC4〜C30のアリール基である。
【0084】
【化20】

【0085】
式中、ArはC4〜C30のアリール基である。
【0086】
また、前記化学式において、RおよびRはブロック形態で反復されるか、あるいはランダムに反復され得る。例えば、Z・・・R、またはZ・・・R、またはZ・・・R、またはZ・・・Rの形態であってもよい。
【0087】
例えば、前記熱硬化性液晶オリゴマーは、下記化学式7または化学式8の構造を持つことができる。
【0088】
【化21】

【0089】
【化22】

【0090】
式中、ZおよびZは互いに同じでも異なってもよく、それぞれマレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択され;nとmはそれぞれ独立に陽の整数であり、好ましくは独立に1〜50の整数である。
【0091】
また、前記化学式6〜8の構造において、n/(n+m+2)は5%超過60%以下の範囲内であってもよい。
【0092】
前記熱硬化性液晶オリゴマーの分子量は500〜15,000であってもよい。前記熱硬化性液晶オリゴマーの分子量が500未満の場合には、架橋密度が高くなって物性が壊れ易くなり、 前記熱硬化性液晶オリゴマーの分子量が15,000超過の場合には、溶液の粘度が高くなってガラス繊維織物への含浸の際に不利になる。
【0093】
前記熱硬化性液晶オリゴマーの製造方法は、特に限定されず、重合によって、可溶性構造単位を含む液晶オリゴマーを製造することが可能な化合物と、熱硬化性基を導入することが可能な化合物とを反応させて製造できる。
【0094】
前記で可溶性構造単位を含む液晶オリゴマーを製造することが可能な化合物は、特に限定されない。例えば、一つ以上の芳香族、芳香族ヘテロ環または脂肪族ジカルボン酸;芳香族、芳香族ヘテロ環または脂肪族ジオール;芳香族、芳香族ヘテロ環または脂肪族ジアミン;アミノフェノール;ヒドロキシ安息香酸;およびアミノ安息香酸よりなる群から選択でき、好ましくは芳香族、芳香族ヘテロ環または脂肪族ジオール;アミノフェノール;およびアミノ安息香酸の少なくとも一つを使用する。
【0095】
例えば、熱硬化性液晶オリゴマーは溶液重合またはバルク重合によって製造できる。溶液重合およびバルク重合は、適切な攪拌手段が取り付けられた一つの反応タンク内で行われ得る。
【0096】
溶液重合方法について例を挙げて説明すると、まず、塩化イソフタロイル(isophthaloyl chloride)、アミノフェノール、2,6−ジヒドロキシナフタレン(2,6-dihydroxynaphthalene)、トリエチルアミン(triethylamine)を反応器に入れた後、常温で攪拌しながら反応を行わせる。一定の時間経過後、熱硬化性基を付加することが可能な化合物(例えばマレイミド−ベンゾイルクロライドなどのように、マレイミド、ネドイミドまたはアセチレンなどを付加することが可能な化合物)をさらに添加して反応させて熱硬化性液晶オリゴマーを得た後、これを分離精製することにより、前記熱硬化性液晶オリゴマーを合成することができる。
【0097】
一方、バルク重合によって熱硬化性液晶オリゴマーを製造する場合には、イソフタル酸、アミノフェノール、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、および酢酸無水物を反応器に添加した後、攪拌させながら徐々に150℃まで昇温した後、還流させながら一定の時間反応させる。次いで、留出する副生酢酸および無水酢酸を除去した後、4−ヒドロキシ安息香酸をさらに添加し、320℃まで昇温して反応させる。こうして主鎖の両末端の少なくとも一つに、アルコール基を有する液晶オリゴマーを合成する。両末端にアルコール基を有する液晶オリゴマーが得られると、液晶オリゴマーを溶媒(例えば、DMF)に溶解させた後、熱硬化性基を付加することが可能な化合物を添加して反応させる。すると、主鎖の両末端の少なくとも一つに熱硬化性基が付加された熱硬化性液晶オリゴマーを得ることができる。
【0098】
別のバルク重合によって熱硬化性液晶オリゴマーを製造する場合には、イソフタル酸、アミノフェノール、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、および酢酸無水物を反応器に添加し、攪拌させながら150℃まで昇温した後、還流させながら一定の時間反応させる。次いで、230℃まで徐々に昇温しながら副生酢酸および無水酢酸を除去してオリゴマーを合成する。ネオイミド安息香酸をさらに添加し、250℃まで昇温して熱硬化性液晶オリゴマーを得ることができる。
【0099】
本発明では、上述したLCTオリゴマーを主なマトリクスとして使用する。また、本発明では、従来の充填剤導入および添加量に依存してCTEを低める方式ではなく、有機金属化合物を用いてLCTオリゴマーマトリクスにナノスケールの無機物クラスターをインシチュ(in-situ)にて形成し、生成されたクラスターに、LCTオリゴマーの両末端に存在する基と熱硬化反応を行うことが可能な反応基、例えばビニル基、アクリル基、メタクリル基またはメルトカプト基を含有させる。メインマトリクスであるLCTオリゴマーが硬化反応を行うとき、生成されたクラスターに堅固に共有結合されている反応基が反応に直接参与してLCTオリゴマーマトリクスと無機物クラスター間の堅固な共有結合形態を成すようにする。これは熱的膨張に主原因となる高分子鎖の流動度を、無機クラスターとの堅固な共有結合を形成することにより著しく低下させる。
【0100】
前記共有結合可能な反応基を有する有機金属化合物、すなわちアルコキシド金属化合物としては、下記化学式9〜12で表される化合物を例示することができるが、特にこれに限定されない。
【0101】
【化23】

【0102】
式中、R〜Rはそれぞれ独立に通常の置換基であって、例えばアルキル基などである。
【0103】
【化24】

【0104】
式中、R〜Rはそれぞれ独立に通常の置換基であって、例えばアルキル基などである。
【0105】
【化25】

【0106】
式中、R〜R11はそれぞれ独立に通常の置換基であって、例えばアルキル基などである。
【0107】
【化26】

【0108】
式中、R12〜R14はそれぞれ独立に通常の置換基であって、例えばアルキル基などである。
【0109】
一方、前記アルコキシド金属化合物の金属としては、上記に例示したSiに限定されず、様々な金属(例えば、Ti、Al、Ge、Co、Ca、Hf、Fe、Ni、Nb、Mo、La、Re、Sc、Ta、W、Y、Zr、Vなど)が含まれる。また、前記共有結合可能な反応基としては、例えばビニル基(化学式9)、アクリル基(化学式10)、メタクリル基(化学式12)、メルカプト基(化学式12)などを挙げることができるが、特にこれに限定されない。
【0110】
一方、上述したLCTオリゴマーとアルコキシド金属化合物を含む組成物は、ゾルゲル法による20〜100nmの3次元網目構造のMOR””1−x(Mは金属、R””は通常の置換基を示す。)を生成した後、生成された無機3次元網目構造の共有結合で連結された反応基が、マトリクスであるLCTオリゴマーの主鎖との共有結合を形成する。この際、無機クラスターを形成する材料は、一つの反応基を有する各金属化合物が単独で使用されてもよく、様々な反応基を有するそれぞれの金属化合物の組み合わせが使用されてもよい。
【0111】
また、CTEを低めることを極大化するために、少量(約5〜20重量%)のナノ無機充填剤がさらに添加されてもよい。
【0112】
前記アルコキシド金属化合物の含量は、LCTオリゴマーの100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは40〜80重量部である。一方、アルコキシド金属化合物の加水分解部分縮合反応には、例えば塩酸、硫酸、硝酸、および蟻酸などから選ばれる酸触媒、または例えばアンモニア、アミン、水酸化ナトリウムなどの塩基触媒を使用することができる。触媒の使用量は、アルコキシド金属化合物1モルに対して0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.2モルである。加水分解部分縮合反応に必要とする反応時間は、触媒の種類または使用量によって異なるが、0.1〜20時間、好ましくは0.5〜5時間である。ところが、これに限定されない。
【0113】
また、本発明の具現例に係る基板形成用組成物は、溶媒キャスティング(solvent casting)工程に適用可能であって、ガラス繊維などの含浸が容易である。前記基板形成用組成物への溶媒は、特に限定されないが、極性非プロトン性溶媒を使用することができる。例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−メチルカプロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピンアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチルラクトン、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルリン酸アミド、エチルセロソルブアセテート、およびこれらの組み合わせを選択的に使用することができる。前記基板形成用組成物は、溶媒100重量部に対して熱硬化性液晶オリゴマー0.1〜300重量部を含むことができる。
【0114】
他の具現例において、基板形成用組成物は、強化剤(toughening agent)をさらに含むことができる。熱硬化性液晶オリゴマーに強化剤を昆用すると、組成物の柔軟性が向上できる。前記強化剤は芳香族高分子である。前記芳香族高分子の数平均分子量は2,000〜500,000であってもよい。このような芳香族高分子としては、主鎖にエステル、エステル−アミド、エステル−イミド、エステル−エーテル、およびエステル−カルボネートよりなる群から選ばれた一つまたは二つ以上のメソゲン基を含む芳香族高分子を例示することができるが、これに限定されない。前記熱硬化性液晶オリゴマーと強化剤の混合比は、重量比で99.5:0.5〜35:65であってもよい。
【0115】
本発明の具現例の基板形成用組成物は、必要に応じて充填剤、軟化剤、可塑剤、潤滑剤、静電気防止剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤およびUV吸収剤などの少なくとも一つの添加剤をさらに含むことができる。充填剤の例は、例えばエポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末およびスチレン樹脂などの有機充填剤と、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタニウム、ジルコニア、カオリン、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムなどの無機充填剤を含む。
【0116】
前記基板形成用組成物は、銅箔との接着強度が高く、耐熱性、低膨張性および機械的特性に優れるので、優れたパッケージング材料として使用できる。基板形成用組成物は、基板に成形されるか、あるいは含浸またはコーティング用バニッシュを形成することができる。前記組成物はプリント基板、多層基板の各層、銅箔積層物(例えば、RCC、CCL)、およびTAB用フィルムに適用可能であるが、前記基板形成用組成物の用途はこれに限定されない。
【0117】
前記組成物を基板などの材料として使用するためには、基板上にキャスティングし、硬化させて製造することができる。
【0118】
このように合成されたLCTオリゴマーを用いた有機−無機ナノ複合材料は、ガラス繊維織物に含浸してプリプレグ形態で製作されるか、あるいはビルドアップフィルム自体で製作されてプリント基板などの基板の絶縁材料として使用できる。
【0119】
プリプレグは、組成物を補強材に含浸させて製造するが、具体的には、基板形成用組成物を補強材に含浸させた後、硬化させてシート状に製造して使用することができる。前記補強材は、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維織物、アルミナガラス繊維織物、ガラス繊維織物、セルロース織物、カーボン繊維織物、および高分子織物などを例示することができる。補強材に基板形成用組成物を含浸させる方法としては、ディップコーティング法やロールコーティング法などがあり、その他の通常の含浸方法を使用することができる。
【0120】
前記基板形成用組成物を用いて基板を製造することができる。前記基板は、特に限定されず、例えば多層基板の各層、金属箔と結合した積層物形態、プリント基板などである。また、前記基板は、前記プリプレグが金属箔などと結合する形態であってもよい。
【0121】
前記基板は、様々な形態であってもよく、フィルム形態であってもよい。このフィルム形態は前記基板形成用組成物を薄膜化して製造できる。
【0122】
フィルム形態以外の前記基板は、金属箔と結合した積層物形態であってもよい。前記金属箔としては銅箔やアルミニウム箔などが使用される。金属箔の厚さは用途によって異なるが、好ましくは5〜100μmである。金属箔被覆積層板の金属箔に対して回路加工を施すことにより、プリント基板に製作することができる。プリント積層板の表面にさらに前記金属箔被覆積層板を同一に積層し、加工して多層プリント基板に製作することができる。
【0123】
前記金属箔と結合する積層物は、特に制限されず、例えば樹脂コーティング銅箔(resin coated copper;RCC)や銅張積層板(copper clad laminate;CCL)などがある。
【実施例】
【0124】
以下、下記実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例に本発明の範疇が限定されるのではない。
【0125】
製造例1
1−1.4−ネドイミド安息香酸の合成
1000mLのフラスコに5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物32.83g(0.2mol)と氷酢酸400mLを入れ、110℃で加熱して溶解させた後、過量の4−アミノ安息香酸41.1g(0.3mol)を投入した。投入の後に2時間攪拌しながら反応させた後、常温で沈殿させた。沈殿物は、氷酢酸と水でそれぞれ洗浄した後、60℃の真空オーブンで乾燥させてネドイミド安息香酸を製造した。この際、収率は95%であった。
【0126】
1−2.熱硬化性液晶オリゴマーの合成
凝縮器(condenser)と攪拌機(mechanical stirrer)を取り付けた500mLのフラスコにイソフタル酸10.789g(0.065mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸47.948g(0.254mol)、4−アミノフェノール14.187g(0.130mol)、および酢酸無水物58.396g(9.5mol)を仕込み、窒素雰囲気の下で140℃まで徐々に昇温した後、温度を維持しながら3時間反応させてアセチル化反応を完結した。次いで、前記製造例1−1で得た4−ネドイミド安息香酸36.79g(0.130mol)を添加した後、反応副産物としての酢酸および未反応の酢酸無水物を除去しながら分当たり1〜2℃の速度で215℃まで昇温した後、その温度で4時間反応させて、主鎖の両末端の少なくとも一つにネドイミド基が導入された下記化学式13の熱硬化性液晶オリゴマーを得た。
【0127】
【化27】

【0128】
製造例1−2で合成された熱硬化性液晶オリゴマーの末端への反応性官能基導入有無を調べるために、NMR(Bruker NMR、DPX300)を用いて分析した。使用した溶媒はDMSO d6であった。図2に示すように、ネドイミドによるピークが6.2〜6.4の範囲に現れているため、末端にネドイミド基が導入されたことを確認することができる。
【0129】
製造例1−2で合成された熱硬化性液晶オリゴマーの反応温度をDSC(TA Instrument DSC2010)を用いて測定し、その結果を図3に示した。昇温速度は、320℃まで20℃/minであった。図3より確認されるように、反応性官能基による反応ピークが280℃から320℃にかけて現れているため、末端に反応性官能基が成功的に導入されたことが分かる。
【0130】
製造例2
2−1.4−マレイミド−ベンゾイルクロライドの合成
250mLのフラスコにp−アミノ安息香酸41.1g(0.3mol)および酢酸300mLを入れて溶解させた後、マレイン酸無水物29.4g(0.3mol)を10℃で徐々に添加して黄色の沈殿物を得た。この沈殿物をDMF/エタノール(50:50、w/w)溶液で再結晶させた。再結晶した中間体を酢酸ナトリウムと酢酸無水物を用いて85℃で15分間処理し、常温に冷却させた後、氷浴中に沈殿させて沈殿物を得た。得られた沈殿物を酢酸エチル/n−ヘキサン(50:50、w/w)溶液で再結晶させてN−(p−カルボキシフェニル)マレイミドを得た。
【0131】
N−(p−カルボキシフェニル)マレイミド15g(0.07mol)を80mLのベンゼンに添加した。ここに塩化オキサリル21.83g(0.172mol)をゆっくり添加し、昇温して2時間還流させた。未反応の塩化オキサリルを除去し、常温に冷却させた後、フィルタリングし、ヘキサンで洗浄して4−マレイミド−ベンゾイルクロライドを得た。
【0132】
2−2.熱硬化性液晶オリゴマーの合成
250mLのフラスコに100mLのジメチルホルムアミドを入れた後、4−アミノフェノール3.274g(0.03mol)、4,4−ジヒドロキシビフェニル4.655g(0.025mol)、トリエチルアミン18mLを添加して溶解させた後、氷浴中に浸けて冷却させた状態で塩化イソフタロイル10.151g(0.05mol)を添加した。常温で60時間反応させ、水とエタノールを用いて精製した後、乾燥させた。
【0133】
乾燥した試料1gを9gのNMPに溶解させた後、前記製造例2−1で得た4−マレイミド−塩化ベンゾイル0.1gおよびトリエチレアミン10mLを添加し、常温で12時間反応させて主鎖の両末端の少なくとも一つにマレイミド反応基を導入し、下記化学式14の熱硬化性液晶オリゴマーを得た。
【0134】
【化28】

【0135】
実施例1
コンデンサーおよび攪拌機を取り付けた100mLのフラスコに、製造例1で得た熱硬化性液晶オリゴマー15gおよびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)25gを入れ、90℃まで徐々に昇温しながら攪拌を行って熱硬化性液晶オリゴマーを溶かす。次いで、アクリルシラン化合物7gとTEOS(TetraEthyl Orthosilicate)5gを入れて攪拌し続ける。前記組成物に水4gと60%の硝酸0.2gを入れて温度を維持しながら2時間反応させる。反応の後に得られた溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)の表面にフィルムキャスティングし、60℃のオーブンで1時間乾燥させる。よく乾燥したフィルムのPETを除去し、250℃のオーブンで3時間熱硬化させる。
【0136】
実施例2
実施例1と同様の方式で製造するが、この際、使用される酸触媒の代わりに塩基触媒の20%水酸化ナトリウム0.4gを用いて溶液を得る。
【0137】
比較例1
コンデンサーおよび攪拌機を取り付けた100mLのフラスコに20gのビスフェノールA型エポキシおよび7.5gのジアミノジフェニルメタン(DDM)を20gの2−メトキシエタノール(2−ME)に入れ、90℃までゆっくり昇温しながら攪拌を行うことによりエポキシとDDMとを混合する。温度を維持しながら2時間硬化反応を行わせ、キャスティングに適した適正粘度の溶液状態を作る。反応の後、得られた溶液をPETの表面にフィルムキャスティングし、60℃のオーブンで1時間乾燥させる。よく乾燥したフィルムのPETを除去し、190℃のオーブンで2時間完全硬化させる。
【0138】
比較例2
コンデンサーおよび攪拌機を取り付けた100mLのフラスコに15gのビスフェノールA型エポキシ、8.5gのアミノシラン、および6gのTEOSを15gの2−MEに入れ、90℃までゆっくり昇温しながら攪拌を行い、エポキシとシラン化合物との混合物を作る。その後、温度を維持しながら2時間反応させる。反応の後、得られた溶液をPETの表面にフィルムキャスティングし、60℃のオーブンで1時間乾燥させる。よく乾燥したフィルムのPETを除去し、190℃のオーブンで2時間完全硬化させる。
【0139】
比較例3
比較例2と同様の方式で製造するが、この際、使用される酸触媒の代わりに塩基触媒としての20%水酸化ナトリウム0.4gを用いて溶液を得る。
【0140】
実験例1
実施例1〜2および比較例1〜3で得たフィルムに対してTA社のTMA Q400を用いてそれぞれ熱膨張係数(CTE)およびガラス転移温度を測定し、その結果を表1に示した。測定の際に、窒素をパージした状態で昇温速度10℃/minにして測定した。低温熱膨張係数は50〜100℃で測定した平均値であり、高温熱膨張係数は170〜220℃で測定した平均値である。
【0141】
【表1】

【0142】
表1から分かるように、従来の技術によって製造されたフィルム(比較例1〜3)は、高温熱膨張係数が急激に増加する傾向を示すが、これに対し、本発明によって熱硬化性液晶オリゴマーとアルコキシド金属化合物を用いて製造されたフィルム(実施例1〜2)は、相対的に一層小さい高温熱膨張係数を示す。また、本発明の基板形成用組成物から製造されたフィルムは、ガラス転移温度を有しないので、特定のポイントで流動度に対する急激な変化なしで安定的な物性的特性を示すものと予想される。
【0143】
以上、本発明を具体的な実施例によって詳細に説明したが、これらの実施例は本発明を具体的に説明するためのものに過ぎない。本発明に係る基板形成用組成物、ならびにこれを用いたプリプレグおよび基板は、これらの実施例に限定されず、当該分野における通常の知識を有する者によって本発明の技術的思想内で変形及び改良可能である。それら単純な変形ないし変更はいずれも本発明の領域に属するものである。本発明の具体的な保護範囲は特許請求の範囲によって明確になるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖に少なくとも一つの可溶性構造単位を有し、主鎖の末端の少なくとも一つに熱硬化性基を有する熱硬化性液晶オリゴマー(Liquid Crystal Thermosetting Oligomer)、および前記熱硬化性基と共有結合が可能な反応基を有するアルコキシド金属化合物を含むことを特徴とする、基板形成用組成物。
【請求項2】
前記可溶性構造単位はC4〜C30のアリール−アミン基またはC4〜C30のアリール−アミド基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項3】
前記可溶性構造単位は下記化学式1で表される化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【化1】

(式中、ArはC4〜C30のアリール基であり、XおよびYはそれぞれ独立にCOO、O、CONR”、NR”’およびCOよりなる群から選ばれ、ここで、前記R”および前記R”’はそれぞれ独立に水素原子、C1〜C20のアルキル基およびC6〜C30のアリール基よりなる群から選ばれ、XおよびYの少なくとも一つはCONR”またはNR”’である。)
【請求項4】
前記可溶性構造単位は下記化学式2で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位を含むことを特徴とする、請求項3に記載の基板形成用組成物。
【化2】

(式中、ArはC4〜C30のアリール基である。)
【請求項5】
前記Arは下記化学式3で表される化合物の中から選ばれるアリール基またはこれらの置換体であることを特徴とする、請求項4に記載の基板形成用組成物。
【化3】

【請求項6】
前記可溶性構造単位は全体構造単位の合計に対して5モル%超過60モル%以下で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項7】
前記熱硬化性液晶オリゴマーは、主鎖に、下記化学式4で表される構造単位をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【化4】

(式中、ArはC4〜C30のアリール基であり、XおよびYはそれぞれ独立にCOO、O、CONR”、NR”’およびCOよりなる群から選ばれ、ここで、前記R”およびR”’はそれぞれ独立に水素原子、C1〜C20のアルキル基およびC6〜C30のアリール基よりなる群から選ばれる。)
【請求項8】
前記化学式4で表される構造単位は、下記化学式5で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位を含むことを特徴とする、請求項7に記載の基板形成用組成物。
【化5】

(式中、ArはC4〜C30のアリール基である。)
【請求項9】
前記Arは下記化学式3で表される化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の基板形成用組成物。
【化6】

【請求項10】
前記熱硬化性基は熱架橋性反応基であることを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項11】
前記熱硬化性基は、マレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項12】
前記熱硬化性液晶オリゴマーは下記化学式6で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【化7】

(式中、Rは下記化学式2で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位であり;Rは下記化学式5で表される化合物の中から選ばれる一つまたは二つ以上の構造単位であり;ZおよびZは互いに同じでも異なってもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、マレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択され;ZおよびZの少なくとも一つはマレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択され;nとmはそれぞれ独立に1〜50の整数であり;n/(n+m+2)は5%超過60%以下である。)
【化8】

(式中は、ArはC4〜C30のアリール基である。)
【化9】

(式中、ArはC4〜C30のアリール基である。)
【請求項13】
前記熱硬化性液晶オリゴマーは下記化学式7または化学式8で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【化10】

【化11】

(式中、ZおよびZは互いに同じでも異なってもよく、それぞれマレイミド(maleimide)、ネドイミド(nedimide)、フタルイミド(phthalimide)、アセチレン(acetylene)、プロパジルエーテル(propagyl ether)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)、シアネート(cyanate)、およびこれらの置換体または誘導体よりなる群から選択され;mは1〜50の整数であり、nは1〜50の整数である。)
【請求項14】
前記熱硬化性液晶オリゴマーの数平均分子量は500〜15,000であることを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項15】
前記熱硬化性基と共有結合が可能な反応基は、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項16】
前記アルコキシド金属化合物の金属は、Ti、Al、Ge、Co、Ca、Hf、Fe、Ni、Nb、Mo、La、Re、Si、Sc、Ta、W、Y、Zr、およびVよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項17】
前記熱硬化性液晶オリゴマー100重量部に対して5〜200重量部のアルコキシド金属化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項18】
前記組成物は無機充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項19】
請求項1の基板形成用組成物から製造されるプリプレグ。
【請求項20】
請求項1の基板形成用組成物から製造される基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−261006(P2010−261006A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170294(P2009−170294)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】