説明

基板搬送教示方法および基板搬送装置

【課題】落とし込み型の基板保持部を用いながらも、高精度な基板搬送情報を自動生成できる基板搬送教示方法を提供する。
【解決手段】シャトル搬送機構のハンド19Aに対する主搬送ロボットのハンド13Aの適正位置を教示するオートティーチングのために、被検出側治具基板110およびセンサ側治具基板120が用いられる。被検出側治具基板110がハンド19Aに保持させられ、センサ側治具基板120がハンド13Aに保持させられる。ハンド13A,19Aは、いわゆる落とし込み型のハンドであり、基板との間にバックラッシュが生じている。オートティーチングの際は、シリンダ100,53Aのロッド101,54Aによってバックラッシュを解消した状態とする。ハンド13Aの適正位置を表す教示位置情報は、バックラッシュ分を補正して求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置等において用いられる基板搬送装置およびこのような基板搬送装置に対して基板搬送のための情報を教示するための方法に関する。搬送対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において用いられる枚葉型の基板処理装置は、インデクサ部と処理部とを備えている。処理部は、基板に対して処理を施すための処理ユニットと、この処理ユニットに対して基板の搬入/搬出を行う主搬送ロボットとを備えている。インデクサ部は、基板を複数枚積層状態で収容可能なキャリヤを保持するキャリヤ保持部と、このキャリヤ保持部に保持されたキャリヤと主搬送ロボットとの間で基板を搬送するインデクサロボットとを備えている。
【0003】
未処理の基板は、インデクサロボットによってキャリヤから取り出されて主搬送ロボットに受け渡され、この主搬送ロボットによって処理ユニットに搬入される。処理ユニットによって処理された後の基板は、主搬送ロボットによって処理ユニットから搬出されてインデクサロボットに受け渡され、このインデクサロボットによってキャリヤ内に収容される。
【0004】
主搬送ロボットおよびインデクサロボットは、たとえば、それぞれ、進退可能な基板保持ハンドを備えている。すなわち、主搬送ロボットは、基板保持ハンドによってインデクサロボットから未処理の基板を受け取って、処理ユニット内の基板保持部に受け渡すとともに、この基板保持部から処理済みの基板を受け取ってインデクサロボットに受け渡すように動作する。また、インデクサロボットは、未処理の基板を基板保持ハンドによってキャリヤから搬出し、所定の受け渡し位置で主搬送ロボットインデクサロボットの基板保持ハンドに受け渡すとともに、当該受け渡し位置において主搬送ロボットから処理済みの基板を基板保持ハンドに受け取り、キャリヤへと搬送する。
【0005】
キャリヤ内の基板の位置には比較的大きなばらつきがある。そこで、インデクサロボットの基板保持ハンドには、当該基板保持ハンド上における基板位置を補正するとともに、搬送中における基板の脱落を防ぐ目的で、基板把持機構が備えられている。
一方、主搬送ロボットの基板保持ハンドには、基板を所定位置に落とし込む案内面を有する落とし込み型のものが適用される場合が多い。これは、インデクサロボットの基板保持ハンド上では前記基板把持機構の働きにより正確な位置に基板が保持され、処理ユニットにおいても定位置に基板が保持されるため、主搬送ロボットの基板保持ハンド上における精密な位置制御が不必要だからである。このような落とし込み型の基板保持ハンドを採用することで、基板の把持に要する時間を省くことができるので、主搬送ロボットによる基板搬送時間を短縮できるという利益がある。
【0006】
むろん、主搬送ロボットには、処理ユニット内の基板受け渡し位置に正確に基板を搬送し、かつ、インデクサロボットとの基板受け渡し位置に正確に基板を搬送することが要求される。同様に、インデクサロボットには、主搬送ロボットとの間の基板受け渡し位置に基板を正確に搬送し、かつ、キャリヤの基板収容位置に基板を正確に搬送することが要求される。これらの要求が満たされなければ、基板の受け渡しに失敗し、基板を落下させてしまうなどの搬送不良が生じる。
【0007】
一方、基板保持ハンドやこの基板保持ハンドを進退させるためのアームなどのロボット構成部品の加工誤差や組み立て誤差のために、正確な搬送位置へと基板を搬送させるためには、個々の基板処理装置ごとの調整が必要であり、また、部品交換、分解洗浄その他メンテナンス後には、必要に応じてインデクサロボットおよび主搬送ロボットの再調整を行う必要がある。このような調整は、ティーチング(搬送教示)と呼ばれている。
【0008】
このティーチングは、従来では、基板保持ハンドを少しずつ動かしながら、オペレータが目視で基板保持ハンドの位置が適正かどうかを判断するようにして行われてきたが、最近では、下記特許文献1に示されているように、ティーチングの自動化が提案されている。
この特許文献1に開示された先行技術では、搬送ロボットの基板保持ハンドに基板と同形同大のセンサ治具を保持させ、搬送位置には被検出部を保持させて、センサ治具に設けられたセンサヘッドによって被検出部を検出することによって、適正な搬送位置に対応した基板保持ハンドの位置を求めるようにしている。
【特許文献1】特開2001−156153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、たとえば、主搬送ロボットの基板保持ハンドが、前述の落とし込み型のものである場合には、必ずしも精度の高いティーチングを行うことができない。すなわち、落とし込み型の基板保持ハンドは、基板端面に対向する基板規制面を有する基板保持部に基板を落とし込んで位置規制する構造であるため、必然的に、基板規制面と基板との間にはバックラッシュ(ガタ)が生じている。このバックラッシュは、たとえば、0.5mm程度である。
【0010】
ところが、最近の基板処理装置内では、0.2mmの精度での基板搬送が求められるようになってきており、基板保持ハンドにおいて生じている前述のバックラッシュのために、目標精度での自動ティーチングを行うことが困難である。
主搬送ロボット基板保持ハンドとして、インデクサロボットの基板保持ハンドのように、バックラッシュのない把持型のものを用いることが考えられるが、基板受け渡しのたびに基板把持/解除動作が必要となるから、基板受け渡しに要する時間が長くなる。したがって、高速な基板搬送が阻害されるので、好ましくない。
【0011】
そこで、この発明の目的は、落とし込み型の基板保持部を用いながらも、高精度な基板搬送情報を自動生成できる基板搬送教示方法を提供することである。
また、この発明の他の目的は、落とし込み型の基板保持部を用いながらも、高精度な基板搬送情報を自動生成でき、これにより、精密な基板搬送を行うことができる基板搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、所定の基板保持位置へと基板(W)を案内して落とし込む落とし込み案内部(98)を有し、さらに所定のバックラッシュが生じている状態で基板の端面に対向する規制面(97)を有する第1基板保持部(13A,13B)と、この第1基板保持部との間で基板が受け渡される第2基板保持部(19A,19B)と、前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の相対位置関係を変化させることにより、前記第1および第2基板保持部間で基板の受け渡しを行わせる基板保持部駆動機構(14,71,72)とを備えた基板搬送装置(6,11,15,70)に適用され、前記第1および第2基板保持部間での基板の受け渡し時における前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の適正な相対位置関係を表す教示情報を生成する方法であって、前記基板とほぼ同形同大の外形を有するとともに被検出部(112)およびこの被検出部を検出するためのセンサ(123,124)のうちの一方を備えた治具基板(120)を、前記落とし込み案内部によって位置合わせして前記第1基板保持部に保持させるステップと、前記第1基板保持部に保持された治具基板を、所定方向(X)に沿って前記規制面に向けて押し付ける治具基板押し付けステップと、前記第2基板保持部に、前記被検出部および前記センサのうちの他方を位置固定するステップと、前記センサによる前記被検出部の検出状態と前記所定のバックラッシュとに基づいて、前記第1および第2基板保持部の前記適正な相対位置関係を表す教示情報を生成する教示情報生成ステップとを含むことを特徴とする基板搬送教示方法である。
【0013】
なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
請求項2記載の発明は、前記教示情報生成ステップが、前記センサによって前記被検出部が検出されるときの前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の相対位置関係を求める位置関係検出ステップと、この位置関係検出ステップによって求められた相対位置関係に対して、前記所定のバックラッシュに基づく補正を施す補正ステップとを含むことを特徴とする請求項1記載の基板搬送教示方法である。
【0014】
請求項3記載の発明は、所定の基板保持位置へと基板(W)を案内して落とし込む落とし込み案内部(98)、および前記基板保持位置に落とし込まれた基板の端面に所定のバックラッシュが生じている状態で対向する規制面(97)を有する第1基板保持部(13A,13B)と、この第1基板保持部との間で基板が受け渡される第2基板保持部(19A,19B)と、前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の相対位置関係を変化させることにより、前記第1および第2基板保持部間で基板の受け渡しを行わせる基板保持部駆動機構(14,71,72)と、基板の受け渡し時における前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の適正な相対位置関係を表す教示情報を記憶する教示情報記憶手段(141)と、この教示情報記憶手段に記憶された教示情報に基づいて、前記基板保持部駆動機構の動作を制御する制御手段(107)と、前記基板とほぼ同形同大の外形を有するとともに被検出部(112)およびこの被検出部を検出するためのセンサ(123,124)のうちの一方を有する治具基板(120)を、前記落とし込み案内部によって位置合わせして前記第1基板保持部に保持させた状態で、前記保持された治具基板を、所定方向(X)に沿って前記規制面に向けて押し付ける治具基板押し付け手段(100,101)と、この治具基板押し付け手段によって前記規制面に向けて押し付けられた状態で前記治具基板を前記第1基板保持部に保持させ、前記第2基板保持部に前記被検出部および前記センサのうちの他方(110)を位置固定した状態で、前記センサによる前記被検出部の検出状態と前記バックラッシュとに基づいて、前記第1および第2基板保持部の適正な相対位置関係を表す教示情報を生成して前記教示情報記憶手段に格納する教示情報生成手段(140)とを含むことを特徴とする基板搬送装置である。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記教示情報生成手段は、前記センサによって前記被検出部が検出されるときの前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の相対位置関係を求める位置関係検出手段(145)と、この位置関係検出手段によって求められた相対位置関係に対して、前記バックラッシュに基づく補正を施す補正手段(146)とを含むことを特徴とする請求項3記載の基板搬送装置である。
【0016】
前記基板保持部駆動機構は、前記第2基板保持部を所定位置で静止状態とし、前記第1基板保持部を駆動することによって基板の受け渡しを行わせるものであってもよい。この場合、前記教示情報は、前記所定位置にある第2基板保持部に対して適正な第1基板保持部の位置を表すものであることが好ましい。
また、前記基板保持部駆動機構は、前記第1基板保持部を所定位置で静止状態とし、前記第2基板保持部を駆動することによって基板の受け渡しを行わせるものであってもよい。この場合、前記教示情報は、前記所定位置にある第1基板保持部に対して適正な第2基板保持部の位置を表すものであることが好ましい。
【0017】
被検出部を保持した被検出側治具基板と、センサを保持したセンサ側治具基板とを用いてもよい。この場合、たとえば、センサ側治具基板を第1基板保持部に保持させ、被検出側治具基板を第2基板保持部に保持させてもよい。このとき、第2基板保持部には、ガタのない状態で被検出側治具基板を保持させることにより、この第2基板保持部に対して被検出部を位置固定できる。
【0018】
むろん、第1基板保持部に被検出側治具基板を保持させる一方で、第2基板保持部にセンサ側治具基板を保持させることとしてもよい。この場合には、第2基板保持部にセンサ側治具基板をガタのない状態で保持させることによって、第2基板保持部に対してセンサを位置固定できる。
さらに、第2基板保持部側には、治具基板を保持させるのではなく、被検出部を固定したり、センサを固定したりしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
請求項1および請求項3の発明によれば、落とし込み型の第1基板保持部に治具基板を保持させ、さらに、この治具基板を第1基板保持部の規制面に向けて所定方向に沿って押し付けるようにしている。これにより、治具基板と規制面との間のバックラッシュが解消される。この状態で、センサによって被検出部の検出が行われ、その検出状態と前記バックラッシュとに基づいて、第1および第2基板保持部の適正な相対位置関係を表す教示情報が自動生成される。
【0020】
すなわち、第1基板保持部と治具基板との間にガタのない状態で被検出部が検出されるので、高精度な教示情報を生成することが可能になる。
こうして、落とし込み型の基板保持部を備えた基板搬送装置において、そのバックラッシュの影響を抑制または解消した高精度な搬送教示が可能となる。
請求項2および請求項4の発明によれば、センサによって被検出部が検出されるときの第1および第2基板保持部の位置関係が検出され、これに対して、バックラッシュに基づく補正が行われる。バックラッシュは、第1基板保持部の設計段階ですでに既知であるから、この既知のバックラッシュに基づく補正を行うことによって、高精度な教示情報を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。この基板処理装置は、インデクサ部1と、このインデクサ部1に結合された処理部2とを備えている。インデクサ部1は、複数枚の基板W(たとえば半導体ウエハ)を積層状態で保持することができるキャリヤ3を所定方向に沿って整列状態で保持することができるキャリヤ保持部4と、このキャリヤ保持部4に沿って形成された搬送路5内を走行することができるインデクサロボット6とを備えている。このインデクサロボット6は、一対のアーム7,8を独立して駆動することができるダブルアーム型のロボットであって、アーム7,8の先端部には、上下に位置をずらせて上ハンド9Aおよび下ハンド9Bがそれぞれ結合されている。インデクサロボット6は、アーム7,8を駆動することによって、上ハンド9Aおよび下ハンド9Bを独立して進退させる進退駆動機構10を備えている。さらに、図示は省略するが、インデクサロボット6は、アーム7,8を鉛直軸線回りに回転させるアーム回転駆動機構と、アーム7,8を昇降させる昇降駆動機構と、インデクサロボット6を搬送路5内で往復移動させるための往復移動機構とを備えている。
【0022】
一方、処理部2は、中央に配置された主搬送ロボット11と、この主搬送ロボット11を取り囲んで配置された4つの処理ユニット12と、インデクサロボット6と主搬送ロボット11との間の基板Wの受け渡しを仲介するシャトル搬送機構15とを備えている。処理ユニット12は、たとえば、基板Wの周端面に接触する複数本の挟持ピン64を備えたスピンチャック65(いわゆるメカニカルチャック)を備え、このスピンチャック65によって基板Wを回転させながら、処理液や洗浄ブラシによる処理などを行うものである。
【0023】
主搬送ロボット11は、上下に重なり合って配置された上ハンド13Aおよび下ハンド13Bと、これらの上ハンド13Aおよび13Bを独立して水平方向に進退させるための進退駆動機構14とを備えている。さらに、主搬送ロボット11は、上ハンド13Aおよび13Bを鉛直軸線回りに回転させる回転駆動機構71と、上ハンド13Aおよび13Bを昇降させるための昇降駆動機構72とを備えている。主搬送ロボット11は、その基台部(図示せず)が処理部2に対して固定されており、この処理部2内で直線走行することはできない。なお、上述のインデクサロボット6、主搬送ロボット11、およびシャトル搬送機構15が、本発明の基板搬送装置に相当する。
【0024】
シャトル搬送機構15は、インデクサ部1の搬送路5のほぼ中間部から、この搬送路5と直交する方向に延びる搬送路16に沿って、インデクサロボットアクセス位置17と、主搬送ロボットアクセス位置18との間で往復移動することができる。このシャトル搬送機構15は、上下方向にずれて配置された上ハンド19Aおよび下ハンド19Bを備えており、これらの上ハンド19Aおよび19Bを独立して上下動させることができる構成となっている。
【0025】
図2は、インデクサロボット6の上下のハンド9A,9Bに共通する構成を拡大して示す平面図である。ハンド9A,9Bは、基部80と、この基部80から延び出た互いにほぼ平行な一対の腕部81,82とを有し、二股フォーク状に形成されている。一対の腕部81,82の各先端部には、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持面83a,84aと、基板Wの周端面に当接して基板Wの水平移動を規制する規制面83b,84bとをそれぞれ有する規制部材83,84が固定されている。一方、基部80には、基板Wの周縁部を下方から支持する一対の基板支持部材87と、この一対の基板支持部材87の間に配置され、基板Wを規制面83b,84bに向かって押し付けるためのシリンダ85とが設けられている。シリンダ85は、基板Wの周端面に当接可能な位置で基板Wの中心に向かって進退するロッド86を備えている。
【0026】
この構成により、インデクサロボット6のハンド9A,9Bは、それぞれ、シリンダ85のロッド86と規制部材83,84の規制面83b,84bとの間で、基板Wを挟持して保持することができるようになっている。
キャリヤ3内における基板Wの位置には、ばらつきが生じているのが通常である。そこで、キャリヤ3内の基板Wをハンド9A,9Bですくいとるときには、シリンダ85のロッド86は収縮状態に制御される。そして、基板Wが規制部材83,84および基板支持部材87によって下方から支持された後に、シリンダ85のロッド86は伸張状態に制御される。これにより、基板Wは、規制部材83,84の基板支持面83a,84aおよび基板支持部材87上でスライドし、規制面83b,84bに押し付けられた適正位置へと導かれる。こうして、基板Wは、ロッド86と規制面83b,84bとの間で挟持された状態で、インデクサロボットアクセス位置17まで搬送されることになる。
【0027】
その後は、シリンダ85のロッド86は収縮状態に制御されて、基板Wの挟持が解かれ、シャトル搬送機構15との間での基板受け渡しが行われる。
シャトル搬送機構15から基板Wを受け取る際には、シリンダ85のロッド86は収縮状態に制御される。そして、シャトル搬送機構15から基板Wが受け渡されると、シリンダ85のロッド86が伸張状態に制御され、これにより、当該基板Wは、ロッド86と規制面83b,84bとの間に挟持された状態となる。この状態で、その基板Wは、キャリヤ3へと搬送される。
【0028】
図3は、主搬送ロボット11の上下のハンド13A,13Bに共通する構成を説明するための平面図である。ハンド13A,13Bは、基部90と、この基部90から延び出た互いにほぼ平行な一対の腕部91,92とを備え、ほぼ二股フォーク状に形成されている。腕部91,92の先端部には、基板Wの周縁部を保持する基板ガイド93,94が一つずつ取り付けられており、基部90には、同じく基板Wの周縁部を保持する一対の基板ガイド95が取り付けられている。
【0029】
図4に拡大断面を示すように、各基板ガイド93〜95は、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持面96と、この基板支持面96から鉛直上方に立ち上がり、基板Wの周端面に対向することになる基板規制面97と、この基板規制面97の上端に連なり、基板Wの中心から離反する斜め上方へと向かう傾斜面である案内傾斜面98とを有している。
この構成により、基板Wは、案内傾斜面98によってその周端面が案内されることによって、基板支持面96へと落とし込まれ、その後は、基板規制面97によって水平移動が規制される。ハンド13A,13Bは、この落とし込み状態で基板Wを保持して、シャトル搬送機構15と処理ユニット12との間で基板Wを搬送している。このように、ハンド13A,13Bは、いわゆる落とし込み型のハンドを構成している。
【0030】
ハンド13A,13Bは、基板Wを搬送するとき、すなわち基板Wに対して処理を施す通常運転時には、前述のような落とし込み状態で基板Wを搬送するようにしているが、基板Wの搬送位置を教示するためのオートティーチングの実施時において後述の治具基板を挟持するために、治具基板押し付け機構としてのシリンダ100(図3参照)を備えている。シリンダ100は、基部90に取り付けられており、ハンド13A,13Bの進退方向に沿って進退するロッド101を一対の基板ガイド95間に備えている。このロッド101は、通常運転時には、伸縮状態に制御されているが、オートティーチング実施時には、治具基板の挟持のために伸張状態に制御されるようになっている。これにより、基板Wは、基板ガイド93,94の基板規制面97へと押し付けられる。
【0031】
ロッド101を収縮させている状態では、基板規制面97と基板Wとの間には、既知のバックラッシュ(ガタ)B1が生じている。このバックラッシュB1は、ロッド101を伸張させることによって、解消される。
図5は、シャトル搬送機構15の平面図であり、図6は、図5の矢印A方向から見た正面図であり、図7は図5の矢印B方向から見た側面図である。
【0032】
シャトル搬送機構15は、搬送路16に沿って配置された一対のレール21と、このレール21上を往復移動する本体部22と、この本体部22をレール21に沿って往復移動させるための直動機構23とを備えている。本体部22は、水平に配置された座板部24と、この座板部24の底面に固定され、レール21上を摺動する摺動ブロック25と、座板部24から立ち上げられた4本の支柱26と、この支柱26の上端に水平に固定された支持板27と、この支持板27の下面に、搬送路16の延在方向に沿って位置をずらせて固定された一対の支持梁28A,28Bと、この支持梁28A,28Bにそれぞれ取り付けられた上ハンド駆動機構30Aおよび下ハンド駆動機構30Bとを備えている。
【0033】
上ハンド駆動機構30Aおよび下ハンド駆動機構30Bは、それぞれ、支持梁28A,28Bの下方において上下動するほぼ矩形の昇降板31A,31Bと、この昇降板31A,31Bの四隅に結合部材32によって取り付けられて立設された4本のガイド軸33A,33Bと、支持梁28A,28Bの下面に取り付けられたほぼ矩形の取付板34A,34Bと、この取付板34A,34Bの四隅に設けられ、4本のガイド軸33A,33Bの上下動をそれぞれ案内するガイド35A,35Bと、昇降板31A,31Bを上下動させるためのボールねじ機構36A,36Bとを備えている。ボールねじ機構36A,36Bは、ねじ軸39を備え、このねじ軸39は、取付板34A,34Bに固定された軸受37によって回転自在に支持されているとともに、昇降板31A,31Bに固定されたボールナット38に螺合している。ねじ軸39の上端には、プーリ40が固定されており、このプーリ40に巻き掛けられたベルト43には、モータ41A,41Bからの回転力が与えられるようになっている。このモータ41A,41Bは、取付板34A,34Bの下面に取り付けられており、その出力軸は、支持梁28A,28Bに形成された貫通孔42内に収容されている。この貫通孔42は、平面視において長孔形状を有し、ねじ軸39の上端のプーリ40およびベルト43もこの貫通孔42内に収容されている。貫通孔42の上側は支持板27によって覆われている。
【0034】
各ボールねじ機構36A,36Bを挟んで対向する二対のガイド軸33A,33Bの上端には、ハンド19A,19Bを構成する基板支持部45A,46A;45B,46Bがそれぞれほぼ水平に固定されている。基板支持部45A,46A;45B,46Bは、搬送路16の両側縁の上方に対応する位置にあって、互いに対向しており、それぞれの内方側の上面には、基板Wの周縁部を下方から支持する各一対の支持爪47A,48A;47B,48Bが固定されている。上ハンド19Aでは4つの支持爪47A,48Aにより、下ハンド19Bでは4つの支持爪47B,48Bにより、それぞれ、基板Wがほぼ水平に支持されるようになっている。支持爪47A,48A;47B,48Bは、主搬送ロボット11のハンド13A,13Bに設けられた基板ガイド93〜95と類似した構成となっていて、詳しい図示は省略するが、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持面と、基板Wの水平移動を規制する基板規制面と、この基板規制面に連なり、斜め外方に延びたテーパー面からなる案内傾斜面とを有している。したがって、ハンド19A,19Bは、基板Wを支持爪47A,48A;47B,48Bの基板支持面に落とし込み、その基板規制面によって水平移動を規制した状態で保持する落とし込み型のハンドとなっている。
【0035】
上ハンド19Aの基板支持部45A,46Aと、下ハンド19Bの基板支持部45B,46Bとは、搬送路16の長手方向に沿ってずれて配置されており、これらは、モータ41A,41Bを駆動することによって、それぞれ独立して昇降させることができるようになっている。
上ハンド19Aは、この実施形態では、インデクサ部1寄りに配置された基板支持部45A,46Aによって構成されており、下ハンド19Bは、主搬送ロボット11側に配置された基板支持部45B,46Bによって構成されている。
【0036】
ハンド19A,19Bは、基板Wを搬送するとき、すなわち基板Wに対して処理を施す通常運転時には、前述のような落とし込み状態で基板Wを搬送するようにしているが、基板Wの搬送位置を教示するためのオートティーチングの実施時において後述の治具基板110を挟持するために、治具基板押し付け機構としてのシリンダ53A,53Bを備えている。これらは、ロッド54A,54Bを他方の基板支持部46A,46Bに向かって進退させることができるように配置されており、ロッド54A,54Bを治具基板110の端面に押し付けることにより、バックラッシュB2を解消した状態で、基板支持部46A,46Bとの間で治具基板110を挟持できるようになっている。
【0037】
本体部22の座板部24には、直動機構23の駆動部55が、結合部材56を介して結合されている。直動機構23は、たとえば、ケース内にボールねじ機構およびこれに駆動力を与えるモータを内蔵した、いわゆる電動シリンダからなり、駆動部55は、レール21と平行な方向に動くようになっている。これにより、直動機構23を付勢することにより、本体部22を、その上方に保持された上ハンド19Aおよび19Bとともにレール21に沿って、搬送路16内を往復移動させることができる。直動機構23としては、ほかにも、ロッドレスシリンダなどを適用することもできる。
【0038】
シャトル搬送機構15の上ハンド19Aおよび下ハンド19Bは、それぞれインデクサロボット6の上ハンド9Aおよび9Bとの間で基板Wの受け渡しを行う。また、シャトル搬送機構15の上ハンド19Aおよび下ハンド19Bは、主搬送ロボット11の上ハンド13Aおよび下ハンド13Bとの間でそれぞれ基板Wの受け渡しを行う。この基板Wの受け渡しの際には、したがって、インデクサロボット6の上ハンド9Aおよび下ハンド9Bは、インデクサロボットアクセス位置17に位置しているときのシャトル搬送機構15の上ハンド19Aおよび下ハンド19Bに対応した位置まで進出させられる。同様に、シャトル搬送機構15と主搬送ロボット11との間で基板Wの受け渡しを行うときは、主搬送ロボットアクセス位置18に位置しているときのシャトル搬送機構15の上ハンド19A,19Bに対応する位置まで主搬送ロボット11の上ハンド13Aおよび下ハンド13Bがそれぞれ進出させられることになる。
【0039】
図8は、主搬送ロボット11が主搬送ロボットアクセス位置18にアクセスするときのハンドの位置を自動的に教示するオートティーチングのための構成を説明するための図解的な斜視図である。とくに、この図8には、主搬送ロボットの上ハンド13Aがシャトル搬送機構15の上ハンド19Aにアクセスするときの位置を教示するための構成が示されている。
【0040】
オートティーチングのために、2種類の治具基板110および120が用意される。
一方の治具基板110は被検出側治具基板である。この被検出側治具基板110は、処理対象の基板Wと同形同大の円盤状治具本体111と、この治具本体の中心から垂直に立ち上がった被検出部112とを備えている。被検出部112は、たとえば、円柱形状を有しており、治具本体111に結合された小径部113と、この小径部113の上端に結合された大径部114とを有し、小径部113と大径部114との間に段差部115が形成された構成となっている。
【0041】
他方の治具基板120はセンサ側治具基板である。このセンサ側治具基板120も、処理対象の基板Wと同形同大の円盤状治具本体121を備えている。この円盤状治具本体121の中央部には、前記被検出部112を受け入れるための円形の孔122が形成されている。この円形の孔122の縁部には、第1および第2透過型センサ123,124が配置されている。第1透過型センサ123は、孔122の縁部に対向配置された発光部125および受光部126の対を備えており、これらは、発光部125から発した光が孔122の中心の上方を通って受光部126に受光されるように配置されている。発光部125から受光部126に向かう光路は第1検出ライン127を形成している。第2透過型センサ123も同様に、発光部128および受光部129の対を備えており、これらは、発光部128から発した光が孔122の中心の上方を通って受光部129に受光されるように配置されている。発光部128から受光部129に向かう光路は第2検出ライン130を形成している。そして、第1検出ライン127と第2検出ライン130とは、互いに直交するように設定されている。
【0042】
この図8の例では、シャトル搬送機構15の上ハンド19Aに被検出側治具基板110を保持させてあり、主搬送ロボット11の上ハンド13Aにセンサ側治具基板120を保持させてある。
図9は、上記の基板処理装置の制御に関する構成を示すブロック図である。この基板処理装置は、制御装置60を備えており、この制御装置60により、インデクサロボット6、主搬送ロボット11およびシャトル搬送機構15の各部を制御する。制御装置60には、作業者が各種の指令を入力するための入力操作部61が接続されている。
【0043】
制御装置60は、マイクロコンピュータによって構成されるもので、第1および透過型センサ123,124の発光部125,128を駆動するためのセンサ駆動部135と、第1透過型センサ123の出力信号(受光部126の出力信号)および第2透過型センサ124の出力信号(受光部129)の出力信号が入力されるセンサ信号入力部136とを備えている。さらに、制御装置60は、機能処理部として、インデクサロボット6の各部を制御するインデクサロボット制御部105と、シャトル搬送機構15の各部を制御するシャトル搬送機構制御部106と、主搬送ロボット11の各部を制御する主搬送ロボット制御部107とを備えている。主搬送ロボット制御部107は、具体的には、進退駆動機構14、回転駆動機構71および昇降駆動機構72を制御して、上下のハンド13A,13Bの位置を制御する。
【0044】
制御装置60は、さらに、機能処理部として、主搬送ロボット11のハンド13A,13Bの位置に対応した位置情報を生成するハンド位置生成部139とを備えている。また、制御装置60は、センサ信号入力部136に入力される信号と、ハンド位置生成部139が生成する位置情報とに基づいて、ハンド13A,13Bの適正位置を表す教示位置情報を生成する教示情報生成部140を備え、さらにこの教示情報生成部140によって生成された教示位置情報を記憶する教示情報記憶部141を備えている。
【0045】
教示情報生成部140は、第1および第2透過型センサ123,124によって被検出部112が検出されるときにハンド位置生成部139が形成する位置情報を取得する位置検出部145と、この位置検出部145によって検出された位置情報に対して、主搬送ロボット11のハンド13A,13BのバックラッシュB1およびシャトル搬送機構15のハンド19A,19BのバックラッシュB2に基づく補正を施す補正処理部146とを備えている。
【0046】
オートティーチングに際しては、図8に示すように、被検出側治具基板110が、シャトル搬送機構15の上ハンド19Aに載せられ、センサ側治具基板120が主搬送ロボット11の上ハンド13Aに載せられる。このとき、センサ側治具基板120は、たとえば、第2透過型センサ124に対応した第2検出ライン130が上ハンド13Aの進退方向であるX方向に沿い、第1透過型センサ123に対応した第1検出ライン127がX方向に直交する水平方向であるY方向に沿うようにされる。
【0047】
この状態から、制御装置60に接続された入力操作部61から、オートティーチング実行指令を与えると、制御装置60は、シャトル搬送機構15の上ハンド19Aに設けられたシリンダ53A(図5参照)を作動させ、ロッド54Aを進出させる。これにより、被検出側治具基板110は、基板支持部46A側の支持爪48Aの基板規制面に対してY方向に沿って押し付けられ、上ハンド19A上でロッド54Aと支持爪48Aとの間に挟持状態で保持される。これにより、被検出側治具基板110と支持爪48Aとの隙間が零とされ、バックラッシュB2が解消される。
さらに、制御装置60は、シャトル搬送機構15のハンド19A,19Bを主搬送ロボットアクセス位置18まで移動させる。その一方で、制御装置60は、主搬送ロボット11の上ハンド13Aに備えられたシリンダ100を作動させ、そのロッド101を進出させる。これにより、センサ側治具基板120は、上ハンド13A上において、基板ガイド93,94の基板規制面97に対してX方向に沿って押し付けられ、ロッド101と当該基板ガイド93,94との間に挟持される。すなわち、センサ側治具基板120と基板ガイド93,94との間の隙間が零とされ、バックラッシュB1が解消される。
【0048】
基板ガイド93,94,95の基板規制面97は、基板Wの径よりも大きな径の仮想円筒面に接する位置に配置されており、これにより、基板Wと基板規制面97との間には所定のバックラッシュ(基板Wの径と前記仮想円筒面の径との差)B1が生じている。このバックラッシュB1が、ロッド101の進出によって排除される。これにより、センサ側治具基板120が上ハンド13A上の定位置に精度良く位置決めされることになる。
【0049】
シャトル搬送機構15の上ハンド19Aについても同様であり、バックラッシュB2が解消された状態で、被検出側治具基板110が上ハンド19A上の定位置に精度良く位置決めされることになる。
なお、センサ側治具基板120を固定するロッド101は制御装置60の指令で動作するものでなくともよく、たとえば、ロッド101に連結されたスプリングを、手動で、縮んだ状態から伸びた状態にリリースすることで、センサ側治具基板120にロッド101が押し付けられるものであってもよい。シャトル搬送機構15のハンド19A,19Bに設けられるロッド54A,54Bについても同様の構成を採ることができる。
【0050】
また、治具基板押し付け手段としてのシリンダ100およびロッド101ならびにシリンダ53A,53Bおよびロッド54A,54Bは、ハンド13A,13B;19A,19Bではなく、治具基板120,110に取り付けられていてもよい。
前述のように治具基板110,120がハンド19A,13Aにそれぞれ挟持状態で保持された状態で、制御装置60の主搬送ロボット制御部107は、センサ側治具基板120の孔122内に被検出側治具基板110の被検出部112が遊挿される位置に上ハンド13Aを導く。この状態から、さらに、主搬送ロボット制御部107は、上ハンド13Aを一定高さに保持し、X方向に沿って前後に微動(進退駆動機構14による進退)させる。
【0051】
この微動の過程で、図10(a)の図解的な拡大平面図に示すように、第1検出ライン127は、被検出部112によって横切られる。より詳細に説明すると、上ハンド13AをX方向に沿って一方向に移動させていくと、或る第1X方向位置X1で第1検出ライン127が被検出部112によって遮光されはじめ、或る第2X方向位置X2で第1検出ライン127の被検出部112による遮光が終わる。したがって、これらの第1および第2X方向位置X1,X2の中間のX方向位置Xmが被検出側治具基板110の中心位置に相当する。
【0052】
次に、同様にして、主搬送ロボット制御部107は、上ハンド13Aを一定高さに保持し、前記Y方向に沿って左右に微動(回転駆動機構71による揺動)させる。この微動の過程で第2検出ライン130が被検出部112によって横切られることになり、遮光状態と非遮光状態で切り換わる第1および第2Y方向位置Y1,Y2が求まる。これらの中間のY方向位置Ymが、被検出側治具基板110の中心位置に相当する。
【0053】
次いで、主搬送ロボット制御部107は、前記第1および第2X方向位置X1,X2ならびに前記第1および第2Y方向位置Y1,Y2に基づいて、被検出部112の小径部113と大径部114との間の段差部115に対応する位置(平面視における位置)に第1検出ライン127または第2検出ライン130が配置されるように、上ハンド13Aの水平位置を制御する。この状態を図10(b)の拡大正面図に示す。
【0054】
その状態で、主搬送ロボット制御部107は、上ハンド13Aを、その水平位置を変えずに、上下方向(Z方向)に微動(昇降駆動機構72による昇降)させる。このとき、第1Z方向位置Z1および別の第2Z方向位置Z2において、検出ライン127,130の遮光/非遮光が切り換わることになる。これらの2つのZ方向位置Z1,Z2の中間の高さ位置Zmが、大径部114の中間高さ位置に相当する。
【0055】
教示情報生成部140の位置検出部145は、第1および第2透過型センサ123,124の出力とハンド位置生成部139が形成するハンド位置情報とに基づいて、前述のような位置X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2を検出する。さらに、位置検出部145は、第1および第2X方向位置X1,X2の中間のX方向位置Xm、第1および第2Y方向位置Y1,Y2の中間のY方向位置Ym、ならびに第1および第2Z方向位置Z1,Z2の中間のZ方向位置Zmを演算する。これらの組み合わせの位置情報(Xm,Ym,Zm)が、位置検出部145から補正処理部146へと与えられる。
【0056】
補正処理部146は、位置検出部145から与えられる位置情報(Xm,Ym,Zm)に対して、バックラッシュB1,B2の各半分B1/2,B2/2の補正を施す。すなわち、主搬送ロボット11の上ハンド13Aは、オートティーチング時には、バックラッシュをシリンダ100によってX方向に解消した状態となっているが、基板処理のための通常運転時には、むろん、バックラッシュに起因する隙間が基板Wの周端面と基板規制面97との間に生じている。したがって、通常運転時における基板Wの位置の期待値は、基板ガイド93〜95の基板規制面97が接する仮想円筒面の中央位置である。シャトル搬送機構15のハンド19Aについても同様のことが言える。
【0057】
そこで、補正処理部146は、位置検出部145が生成するX方向位置Xmに対してバックラッシュB1の半分B1/2だけ補正を行い、位置検出部145が生成するY方向位置Ymに対してバックラッシュB2の半分B2/2だけ補正を行う。この補正によって得られる教示位置情報(Xt,Yt,Zt)は、(Xt,Yt,Zt)=(Xm−(B1/2),Ym−(B2/2),Zm)となる。こうして求められた教示位置情報が教示情報記憶部141に格納されることになる。
【0058】
シャトル搬送機構15の下ハンド19Bに対する主搬送ロボット11の下ハンド13Bのアクセス位置を教示するためのオートティーチングも同様にして行われ、求められた教示位置情報は教示情報記憶部141に格納される。
処理ユニット12に備えられたスピンチャック65に対する主搬送ロボット11の上下のハンド13A,13Bのアクセス位置の教示も同様にして行われ、求められた教示位置情報は教示情報記憶部141に格納される。この場合には、スピンチャック65に被検出側治具基板110を保持させればよい。
【0059】
むろん、主搬送ロボット11のハンド13A,13Bに被検出側治具基板110を保持させ、シャトル搬送機構15のハンド19A,19Bやスピンチャック65にセンサ側治具基板120を保持させても、同様なオートティーチングが可能である。
通常運転時には、主搬送ロボット制御部107は、教示情報記憶部141に格納された教示位置情報に従って、主搬送ロボット11を駆動する。これにより、バックラッシュを解消した状態で求められた精密な教示位置情報に基づいてハンド13A,13Bの位置が制御されるので、確実な基板受け渡しを行うことができる。しかも、通常運転時には、主搬送ロボット11およびシャトル搬送機構15は、シリンダ100,53A,53Bを用いた基板Wの挟持は行わず、基板Wを基板ガイド93〜95や支持爪47A,47B,48A,48Bへの落とし込みによって保持するようにしているから、高速な基板搬送が可能になる。
【0060】
シャトル搬送機構15のハンド19A,19Bに対するインデクサロボット6のハンド9A,9Bの位置の教示も同様にして行うことができる。ただし、インデクサロボット6のハンド9A,9Bは、通常運転時にも、基板Wを挟持して保持するので、主搬送ロボット11のハンド13A,13Bの位置の教示の際のようなバックラッシュの補正は不要であり、シャトル搬送機構15のハンド19A,19BにおけるY方向のバックラッシュB2の半分の補正を行えば足りる。
【0061】
以上のように、この実施形態によれば、落とし込み型のハンド13A,13B;19A,19Bにオートティーチングのための治具基板120,110をそれぞれ保持させ、さらに、ハンド13A,13B;19A,19BのバックラッシュB1,B2をX方向およびY方向に沿ってそれぞれ解消した状態で、オートティーチングを行い、その結果得られた位置情報をバックラッシュB1,B2の各1/2だけ補正して教示位置情報を得ている。これにより、バックラッシュB1,B2の影響を最小限に抑制した高精度な教示位置情報が得られるから、基板搬送動作の精度を格段に向上することができる。しかも、通常の運転時には、主搬送ロボット11は、基板Wの挟持を行わないから、高速な基板搬送が阻害されることもない。
【0062】
図11は、この発明の他の実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。この図11において、前述の図1に示された各部と同等の部位には、図1の場合と同一の参照符号を付して示す。この基板処理装置には、処理部2には一対の処理ユニット12が設けられており、これらの処理ユニット12とインデクサ部1との間に主搬送ロボット11が配置されている。そして、処理部2内において、インデクサ部1の搬送路5の一端付近の位置には、インデクサロボット6および主搬送ロボット11の両方によるアクセスが可能な位置に受け渡し仲介機構70が配置されている。この受け渡し仲介機構70は、直線移動のための構成が設けられていないことと、上下のハンドを水平方向にずらしていないことを除き、前述のシャトル搬送機構15と同様の構成を有している。この実施形態においては、インデクサロボット6、主搬送ロボット11、および受け渡し仲介機構70が、本願発明の基板搬送装置に相当する。
【0063】
また、この実施形態の構成の場合、インデクサロボット6と主搬送ロボット11との間で基板Wを直接受け渡すことも可能である。そこで、このような直接基板受け渡しを行うか、受け渡し仲介機構70を介する間接基板受け渡しを行うかを選択できるようにしてもよい。たとえば、インデクサロボット6および主搬送ロボット11の動作状況に応じて、直接基板受け渡しと間接基板受け渡しとの搬送時間を見積り、搬送時間がより短くなるいずれかの受け渡し方法を選択して実行するように、インデクサロボット6および主搬送ロボット11ならびに受け渡し仲介機構70を制御することとしてもよい。
【0064】
主搬送ロボット11に関するオートティーチングは、受け渡し仲介機構70および/またはインデクサロボット6に被検出側治具基板110を保持させ、主搬送ロボット11のハンド13A,13Bにセンサ側治具基板120を保持させることにより、前述の第1の実施形態の場合と同様にして行うことができる。むろん、受け渡し仲介機構70およびまたはインデクサロボット6にセンサ側治具基板120を保持させ、主搬送ロボット11のハンド13A,13Bに被検出側治具基板110を保持させるようにしてもよい。
【0065】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、処理ユニット12には、メカニカルチャックからなるスピンチャック65が備えられていて、処理ユニット12内において基板Wが正確な定位置に保持されるようになっている。一方、スピンチャックには、別の種類のものとして、図12に示すように、回転軸148の上端に水平に固定された円盤状の真空吸着ヘッド149によって基板の下面中央領域を真空吸着して保持するバキュームチャックがある。このバキュームチャックを処理ユニット12におけるスピンチャックとして用いる構成としてもよい。
【0066】
この場合、たとえば、図12に示すように、被検出側治具基板110の下面に、真空吸着ヘッド149に整合する円形の凹部150を形成しておき、この凹部150に真空吸着ヘッド149をはめ込んだ状態とする。この状態で、主搬送ロボット11のハンド13A,13Bの位置のオートティーチングを実行すればよい。真空吸着ヘッド149には、凹部150との間のバックラッシュを解消するための治具基板押し付け機構151が取り付けられている。治具基板押し付け機構151は、たとえば、真空吸着ヘッド149の下面に取り付けられたシリンダ153と、このシリンダ153によって駆動されるL字型のレバー154とを備えている。シリンダ153によってレバー154を引き込むと、レバー154は、治具基板110の端面に当接し、この治具基板110を中心方向に付勢する。これにより、治具基板110の凹部150の内側面155が、真空吸着ヘッド149の外周面である規制面156に押し付けられることになる。
【0067】
このようにしてバックラッシュを解消した状態でオートティーチングを行った後は、当該バックラッシュに対応した補正を行うことによって、適正な教示位置情報を得ることができる。
なお、治具基板押し付け機構151は、着脱式のものとし、オートティーチングの際にのみ真空吸着ヘッド149に取り付けられることが好ましい。
【0068】
同様な構成は、基板を把持することなく処理する処理ユニットに対する主搬送ロボット11のハンド13A,13Bの位置教示のために適用することができる。このような処理ユニットとしては、熱処理プレート(ホットプレートまたはクールプレート)上に基板を載置して熱処理を行う熱処理ユニットや、基板保持台に基板を載置した状態で薬液蒸気やケミカルガスによって基板を処理する気相処理装置を挙げることができる。
【0069】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
【図2】インデクサロボットに備えられたハンドの構成を拡大して示す平面図である。
【図3】主搬送ロボットに備えられたハンドの構成を説明するための平面図である。
【図4】主搬送ロボットのハンドに備えられた基板ガイドの拡大断面図である。
【図5】前記基板処理装置に備えられたシャトル搬送機構の平面図である。
【図6】図5の矢印A方向から見た正面図である。
【図7】図5の矢印B方向から見た側面図である。
【図8】主搬送ロボットのハンドの位置を自動的に教示するオートティーチングのための構成を説明するための図解的な斜視図である。
【図9】上記の基板処理装置の制御に関する構成を示すブロック図である。
【図10】オートティーチングの原理を説明するための図解図である。
【図11】この発明の他の実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
【図12】この発明のさらに他の実施形態に係る構成を説明するため図解図である。
【符号の説明】
【0071】
1 インデクサ部
2 処理部
3 キャリヤ
4 キャリヤ保持部
5 搬送路
6 インデクサロボット
7,8 アーム
9A 上ハンド
9B 下ハンド
10 進退駆動機構
11 主搬送ロボット
12 処理ユニット
13A 上ハンド
13B 下ハンド
14 進退駆動機構
15 シャトル搬送機構
16 搬送路
17 インデクサロボットアクセス位置
18 主搬送ロボットアクセス位置
19A 上ハンド
19B 下ハンド
21 レール
22 本体部
23 直動機構
24 座板部
25 摺動ブロック
26 支柱
27 支持板
28A,28B 支持梁
30A 上ハンド駆動機構
30B 下ハンド駆動機構
31A,31B 昇降板
32 結合部材
33A,33B ガイド軸
34A,34B 取付板
35A,35B ガイド
36A,36B ボールねじ機構
37 軸受
38 ボールナット
39 ねじ軸
40 プーリ
41A,41B モータ
42 貫通孔
43 ベルト
45A,45B 基板支持部
46A,46B 基板支持部
47A,47B,48A,48B 支持爪
53A,53B シリンダ
54A,54B ロッド
55 駆動部
56 結合部材
60 制御装置
61 入力操作部
64 挟持ピン
65 スピンチャック
70 受け渡し仲介機構
71 回転駆動機構
72 昇降駆動機構
80 基部
81,82 腕部
83,84 規制部材
83a,84a 基板支持面
83b,84b 規制面
85 シリンダ
86 ロッド
87 基板支持部材
90 基部
91,92 腕部
93〜95 基板ガイド
96 基板支持面
97 基板規制面
98 案内傾斜面
100 シリンダ
101 ロッド
105 インデクサロボット制御部
106 シャトル搬送機構制御部
107 主搬送ロボット制御部
110 被検出側治具基板
111 治具本体
112 被検出部
113 小径部
114 大径部
115 段差部
120 センサ側治具基板
121 治具本体
122 孔
123 第1透過型センサ
124 第2透過型センサ
125 発光部
126 受光部
127 第1検出ライン
128 発光部
129 受光部
130 第2検出ライン
135 センサ駆動部
136 センサ信号入力部
139 ハンド位置生成部
140 教示情報生成部
141 教示情報記憶部
145 位置検出部
146 補正処理部
148 回転軸
149 真空吸着ヘッド
150 凹部
151 治具基板押し付け機構
153 シリンダ
154 レバー
155 内側面
156 規制面
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基板保持位置へと基板を案内して落とし込む落とし込み案内部を有し、さらに所定のバックラッシュが生じている状態で基板の端面に対向する規制面を有する第1基板保持部と、この第1基板保持部との間で基板が受け渡される第2基板保持部と、前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の相対位置関係を変化させることにより、前記第1および第2基板保持部間で基板の受け渡しを行わせる基板保持部駆動機構とを備えた基板搬送装置に適用され、前記第1および第2基板保持部間での基板の受け渡し時における前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の適正な相対位置関係を表す教示情報を生成する方法であって、
前記基板とほぼ同形同大の外形を有するとともに被検出部およびこの被検出部を検出するためのセンサのうちの一方を備えた治具基板を、前記落とし込み案内部によって位置合わせして前記第1基板保持部に保持させるステップと、
前記第1基板保持部に保持された治具基板を、所定方向に沿って前記規制面に向けて押し付ける治具基板押し付けステップと、
前記第2基板保持部に、前記被検出部および前記センサのうちの他方を位置固定するステップと、
前記センサによる前記被検出部の検出状態と前記所定のバックラッシュとに基づいて、前記第1および第2基板保持部の前記適正な相対位置関係を表す教示情報を生成する教示情報生成ステップとを含むことを特徴とする基板搬送教示方法。
【請求項2】
前記教示情報生成ステップは、
前記センサによって前記被検出部が検出されるときの前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の相対位置関係を求める位置関係検出ステップと、
この位置関係検出ステップによって求められた相対位置関係に対して、前記所定のバックラッシュに基づく補正を施す補正ステップとを含むことを特徴とする請求項1記載の基板搬送教示方法。
【請求項3】
所定の基板保持位置へと基板を案内して落とし込む落とし込み案内部、および前記基板保持位置に落とし込まれた基板の端面に所定のバックラッシュが生じている状態で対向する規制面を有する第1基板保持部と、
この第1基板保持部との間で基板が受け渡される第2基板保持部と、
前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の相対位置関係を変化させることにより、前記第1および第2基板保持部間で基板の受け渡しを行わせる基板保持部駆動機構と、
基板の受け渡し時における前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の適正な相対位置関係を表す教示情報を記憶する教示情報記憶手段と、
この教示情報記憶手段に記憶された教示情報に基づいて、前記基板保持部駆動機構の動作を制御する制御手段と、
前記基板とほぼ同形同大の外形を有するとともに被検出部およびこの被検出部を検出するためのセンサのうちの一方を有する治具基板を、前記落とし込み案内部によって位置合わせして前記第1基板保持部に保持させた状態で、前記保持された治具基板を、所定方向に沿って前記規制面に向けて押し付ける治具基板押し付け手段と、
この治具基板押し付け手段によって前記規制面に向けて押し付けられた状態で前記治具基板を前記第1基板保持部に保持させ、前記第2基板保持部に前記被検出部および前記センサのうちの他方を位置固定した状態で、前記センサによる前記被検出部の検出状態と前記バックラッシュとに基づいて、前記第1および第2基板保持部の適正な相対位置関係を表す教示情報を生成して前記教示情報記憶手段に格納する教示情報生成手段とを含むことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項4】
前記教示情報生成手段は、
前記センサによって前記被検出部が検出されるときの前記第1基板保持部および前記第2基板保持部の相対位置関係を求める位置関係検出手段と、
この位置関係検出手段によって求められた相対位置関係に対して、前記バックラッシュに基づく補正を施す補正手段とを含むことを特徴とする請求項3記載の基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−332543(P2006−332543A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157716(P2005−157716)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】