説明

基板搬送機構

【課題】従来のテープキャリアを搬送する搬送機構は、パーフォレーションを利用する搬送機構、ローラ対で挟持して搬送するグリップローラ搬送機構、又はテープ表裏面をクランプして搬送するクランプ機構があるがいずれも、テープ表面に損傷を与えている。
【解決手段】スライド搬送部6A,6Bにおける吸着パッド25,30が交互にテープ状基板5の裏面を吸着保持したまま、搬送方向の上流から下流に搬送移動する。このような交互の往復移動を連続的に行うことにより、搬送方向上流側から下流側にテープ状基板5を移動させる基板テスタの搬送機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料からなるテープ状基板に形成された配線に対して電気的検査を行う基板テスタに等される基板搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウエハ上に形成された多数の集積回路は、1チップ毎に分離されてパッケージングされる。パッケージングされたデバイスは、プリント配線基板に実装されて製品に組み込まれている。このプリント配線基板として、可撓性を有する樹脂製基板(フレキシブル基板)が知られている。例えば、TAB( Tape Automated Bonding )、TBGA( Tape Ball Grid Array )、CSP( Chip Scale Package )、COF( Chip On Film )の各実装技術であれば、ポリイミド等の樹脂材料により形成される長尺のテープ状ベア基板が用いられている。
【0003】
テープ状ベア基板としては、公知なTABであれば、テープキャリアと称されている。一般的なテープキャリアは、35mm,48mm,70mmなどの幅を有し、ベースフィルム、接着剤及び導体からなる3層構造を成している。但し、接着剤を用いていない2層構造や、さらに階層を持つ多層構造のテープキャリアもある。テープキャリア(TABテープ)は長尺であるため、一般的にはリールに巻き取られた形態で、検査装置や実装装置への装着及び工程間の受け渡しが行われている。
【0004】
また同様に、公知なCOFに用いる長尺のテープ状ベア基板は、例えば、ポリイミド及び銅(Cu)2層フィルムからなり、 1つのデバイスチップをマウントするための実装エリア(スリット形状のボンディングスペース部分)からなるピースが長尺方向に沿って、列を成すように多数配置される。この実装エリアは、複数のインナーリード(接続用電極)がボンディングスペース部分に突出するように配置され、実装された際には、この電極部分にチップのバンプが接続される。この実装エリアの周囲には、外部の回路素子と間で信号のやり取りを行うための信号配線やPCB接続部(入力側アウターリード)/LCD接続部(出力側アウターリード)の電極(又はパッド)が設けられ、電気的な検査(断線や短絡等)が行われている。
【0005】
このようなテープ状ベア基板の搬送は、専用のリールに巻かれた状態で検査装置や実装装置に取り付けられて、処理部(検査部又は、ボンディング部等)に給送される。その搬送方式としては、例えば、特許文献1に記載されるように、テープキャリアの幅方向の両外側に設けられているパーフォレーション(又は、スプロケットホール)を利用するものがある。このテープキャリアは、パーフォレーションが装置側のスプロケットの突起部(歯部)に嵌合されて、スプロケットの回転に伴い送り出されて、搬送に用いられている。また、チップをボンディング実装する際の正確な位置決めとして、テープキャリア上のマーキングと共に、パーフォレーションが利用されている。
【0006】
また、特許文献2には、テープキャリアの幅方向の両端を下方位置決めブロックでガイドし、両側に設けられた二対の弾性ローラでテープキャリアを挟持して回転させて、搬送するグリップローラ搬送機構が開示されている。例えば、グリップローラ搬送機構は、図6に示すような基板テスタに搭載される。この基板テスタは、装置本体70の両側に設けられた支持アームに回転自在にテープ送出リール71及びテープ巻取リール72が装着される。テープ送出リール71に巻回されたテープキャリア74が搬送経路に送出され、電気検査部75で検査され、その結果がモニタに表示される。搬送経路には、テープキャリア74の搬送及びガイドを行うための複数のローラが配置される。これらのローラの内、幾つかのテープキャリア74を挟持するローラ対73が設けられている。その内の少なくとも一対は、駆動系を備えている。図6では、搬送経路の上流側に設けられたローラ対71,82が駆動機構を備えている。この構成は、図7に示すように搬送ガイド部85に搬送による振れをガイドし、ガイドレール86上をテープキャリア74が移動する。
【0007】
テープキャリア74を表裏面から駆動ローラ81と押さえローラ82で挟持して、駆動ローラ81をモータ84で回転させることによりテープキャリア74を搬送している。このグリップローラ搬送機構は、構成が簡単で比較的安価であり、搬送速度の変更や高速化が容易に実現できる。この他にも、テープキャリアの幅方向両側にテープ表裏面をクランプするクランプ機構がある。このクランプ機構は、それぞれスライド機構によりテープキャリアの搬送方向に沿ってスライド移動される。テープ表裏面をクランプしつつ搬送方向にスライド移動して、テープキャリアを断続的に搬送する。このクランプ搬送機構はテープキャリアがスリップせず、クランプによる正確な搬送が実現されている。
【特許文献1】実開平5−33530号公報
【特許文献2】特開2006−190881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したそれぞれの搬送機構において、パーフォレーションをスプロケットで移動させる機構においては、パーフォレーションは、張力がある程度働く中でスプロケットに嵌合・離脱されるため、少なからずダメージを受けている。
【0009】
特に実装装置がチップを実装する際に位置決めの重要な部位として扱っている場合には、その実装工程前の基板用テスタを用いて配線に対する電気的検査にパーフォレーションによる搬送を行い、パーフォレーションに損傷を与えていたならば、実装時に位置ずれが発生して実装エラーとなる。
【0010】
また前述したグリップローラ搬送は、長尺のテープ状ベア基板例えば、テープキャリア74の表裏面を挟持して回転により搬送している。このため、構成が簡易でありながら容易に搬送速度を高速低速の制御ができる。しかし、搬送時にテープキャリア74の幅方向両端の表裏面を2つのローラが滑らない程度の圧力を掛けて挟持して搬送時にするため、テープキャリア74の当接面が擦られているため、表面に傷を発生させたり、パーフォレーションに損傷を与える虞がある。
【0011】
また同様に、クランプ機構によるテープキャリアの搬送においても、テープキャリアの幅方向両端の表裏面に接触しクランプしているため、表面に傷を発生させたり、パーフォレーションに損傷を与える虞がある。
【0012】
そこで本発明は、長尺のテープ状ベア基板の表面及び両端のパーフォレーションに非接触で、テープ状ベア基板の裏面に吸着保持して移動させて、基板表面及び両端への損傷を防止し且つ搬送ずれが無く正確に搬送を行う基板用テスタの搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、真空吸着によりテープ状基板の面側から吸着保持する吸着パッドと、前記吸着パッドを搭載し、前記テープ状基板を吸着保持する状態の前記吸着パッドを搬送方向下流にスライド移動し、未吸着保持状態の前記吸着パッドを搬送方向上流に復帰させるスライド搬送部と、前記スライド搬送部を載設し、前記吸着パッドが搬送方向下流にスライド移動する際に上昇し、記吸着パッドを搬送方向上流に復帰する際に下降する昇降機構と、を備える基板搬送機構を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長尺のテープ状基板の表面及び両端のパーフォレーションに非接触で、テープ状基板の裏面に吸着保持して移動させて、基板表面及び両端への損傷を防止し、さらに、吸着保持によりスリップによる搬送ずれが無く正確に搬送を行う基板搬送機構を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る基板搬送機構を搭載する長尺テープ状ベア基板用テスタ(基板テスタと称する)を正面から見た外観構成を示している。
【0016】
この基板テスタ1は、装置本体2の両側に回転自在にテープ送出リール3及びテープ巻取リール4が装着される。テープ送出リール3から送出された長尺テープ状のベア基板(以下、テープ状基板と称する)5が後述する搬送機構6によって所定の搬送経路に沿って搬送されるテープ巻取リール4に巻き取られている。尚、テープ送出リール3及びテープ巻取リール4に、モータを駆動源とする図示しない駆動機構を設けて、搬送時にテープ状基板に垂れが発生しないようにテンションを掛けて、搬送機構6の搬送補助に用いてもよい。
【0017】
装置本体2の正面には、メンテナンス時などに開閉される扉が設けられ、正面上方には、表示画面を含む操作パネル8が設けられている。この操作パネル8には、操作や設定に必要なスイッチ類が複数配置され、表示画面として液晶表示パネル等が用いられている。スイッチとしては、液晶表示パネル上に設けられたタッチパネルを用いてもよい。
【0018】
装置本体2内には、装置の各構成部を制御するための図示しない制御部(例えば、シーケンサやパーソナルコンピュータ)が設けられている。また装置本体2には、設置床に対して固定し高さ調整(水平出し)を行うためのアジャスタと移動のためのキャスタとからなる脚部12が四隅に設けられている。
【0019】
さらに、本実施形態の搬送経路は、テープ状基板5の裏面側にのみ接触して搬送を行う構成である。テープ送出リール3から送り出されたテープ状基板5は、複数の支持ローラ13,14,15,16に支持されて、テープ巻取リール4に巻き取られている。また、テープ状基板5の両側に設けられた図示しないガイド機構により、給送時にテープ状基板5の幅方向への振れを防止している。このテープ状基板5が水平搬送される搬送経路上で上流から下流に向かって、電気検査部7と、NGマーキングユニット10と、搬送機構6とが設けられている。電気検査部7は、テープ状基板上に形成された回路配線や回路素子等の電気的な検査を行う。NGマーキングユニット10は、電気検査部7で実装エリア(ピース)が不良品であると判定された際に、そのピースに対してNGマーキング(穴あけ処理)を行う。勿論、マーキングは穴あけに限定されるものではなく、予め定めたシンボルマークを印字する又は、凹凸による型をマーキングしてもよい。
【0020】
また、装置本体2の上面で搬送系の後方に、装置の現況や検査結果又は、設定のための画面等を表示するモニタ部9及び警告を告知するためのシグナルタワー11が設けられている。警告は、光の点灯又は点滅による告知だけではなく、警告音(音声を含んでもよい)を伴ってもよい。また、緑色、黄色、赤色などの異なるカラー光を用いて、告知に意味を持たせてもよい。
【0021】
この本実施形態における基板テスタの特徴は、搬送経路において、テープ状基板5の表面である実装面にはローラ等の搬送機構の構成部位が非接触で搬送され、テープ状基板5の裏面(非実装面)のみに搬送機構の構成部位が接触するように搬送のための構成部位が略水平に配置されていることである。この例では、テープ送出リール3及びテープ巻取リール4がその水平位置より下方に配置され、テープ巻取リール4を巻き取り方向に回転によるテンションを掛けて、搬送経路上のテープ状基板5の浮き上がりを防止している。テープ状基板5の浮き上がり防止用のガイドを設けてもよい。勿論、図1に示す構成は一例であり、テープ状基板5の表面に搬送機構の構成部位が非接触で搬送できるのであれば、図1に示す構成に限定されるものではない。
【0022】
図2(a),(b)及び図3(a),(b)は、第1の実施形態に係る搬送機構6の概略的な構成を示す図である。ここで、図2(a)は、搬送機構6の外観構成を示す図、図2(b)は、基板テスタに搭載された状態を示す図、図3(a)は、搬送経路下流側から見た概略的な構成を示す図、図3(b)は、搬送機構6の内部構成例を示す図である。
この搬送機構6は、搬送方向に直交する方向に並設されている2つのスライド搬送部6A,6Bと、テープ状基板5の搬送時の振れを両側からガイドする搬送ガイド部33とで構成される。搬送ガイド部33のそれぞれの内壁面には、テープ状基板5を両端から支持するレール部34が設けられている。スライド搬送部6Aとスライド搬送部6Bとは、同じ構成である。搬送ガイド部33の少なくとも一方は、テープ状基板5の幅に合わせて、その幅方向に移動可能に構成されている。好ましくは、両方の搬送ガイド部33が同じ割合で拡がり移動、狭まり移動することがよい。この搬送ガイド部33の移動に合わせて、スライド搬送部6A,6Bの幅方向に移動する構成を有してもよい。
【0023】
スライド搬送部6Aは、スライド部A24と、スライド部A24の両端を上昇下降可能に支持するガイド部21,22と、スライド部A24の両端下面と連結する2つのシリンダ部23とで構成される。シリンダ部23は、応答が速い構成部位が好適し、例えば、エアーシリンダ又はオイルシリンダを用いることができる。この他にも、バネ等の弾性部材又は、磁石による吸引/反発を利用してもよい。
【0024】
スライド部A24は、搬送方向が長手となる直方体形状を成し、上面にはスリットが形成され、そのスリット上を往復移動する吸着パッド25が設けられている。この吸着パッド25は、例えば、ポリアセタルなどの樹脂材料により形成され、ベース部25a上に取り付けられる。このベース部25aは、図3(b)に示す往復移動部40に連結されている。往復移動部40は、例えば、ボールねじ41とモータ42により構成される。ボールねじ41に嵌合し前進後進するナット部43にスリット44を抜けてベース部25aが連結される。この構成により、モータ42の回転方向に従ってナット部43が前進後進するため、吸着パッド25がスリット44上を往復移動する。
【0025】
また、吸着パッド25には、複数の円形の孔26が開口されており、これらの孔26は、ビニールパイプなどの可撓性を有する吸気管35及び切換バルブ38を通じて吸引ポンプ36に連結されている。この吸引ポンプ36の駆動により、吸着パッド25の各孔26から外気が吸引される。この吸引により、吸着パッド25の各孔26にテープ状基板5の裏面に近接又は当接させると、その裏面を吸着所謂、真空吸着して保持することができる。この吸着パッド25が吸着保持した状態でボールねじ41を回転させると、テープ状基板5は吸着パッド25の移動に従って、搬送方向に移動される。
【0026】
また、スライド搬送部6Bは、スライド搬送部6Aと同じ構成であり、スライド部B29、ガイド部27,28及び2つのシリンダ部23とで構成される。さらに、複数の孔31が開口される吸着パッド30及びベース部30aが可撓性を有する吸気管37及び切換バルブ38を通じて吸引ポンプ36に連結されている。この構成において、切換バルブ38を吸気管35と吸気管37とを切り換えることにより、いずれの一方を吸引状態とすることができる。また本実施形態では、図3(a)に示すようにスライド搬送部6B,6Aは、シリンダ部23の動作により、交互に上昇下降状態となる。
【0027】
図4(a)乃至(d)を参照して、本実施形態の搬送機構6によるテープ状基板5の搬送について説明する。
図4(a)においては、搬送方向上流側でシリンダ部23に押し上げられたスライド部A24が上昇し、吸着パッド25が図示しないテープ状基板5の裏面に当接する。この当接と共に切換バルブ38の切換による吸引により吸着パッド25にテープ状基板5が吸着保持される。この時、スライド部B29は、搬送方向下流側でシリンダ部23に押し下げられて下降され、吸着パッド30がテープ状基板5の裏面から離れた状態となる。この時、切換バルブ38の切換により吸着パッド30は無吸引状態となっている。
【0028】
図4(b)においては、スライド部A24が上昇状態で吸着パッド25がテープ状基板5の裏面を吸着保持したまま、往復移動部により搬送方向上流から下流に搬送移動される。 同時に、スライド部B29が下降したまま、切換バルブ38の切換により無吸引状態である吸着パッド30が搬送方向下流側から上流側に移動される。
【0029】
本実施形態におけるテープ状基板5の搬送距離は、ボールねじの回転になりナット部が移動した距離、即ち、吸着パッド25が移動した距離分となる。但し、実際の搬送においては、1ピース毎にテープ状基板5の電気検査を行っている場合には、1ピース分の距離が搬送される。尚、搬送距離は、1ピース分に限定されるものではなく、1回の電気検査を行うピース分の距離であり、一度に2ピースの電気検査を行う基板テスタであれば、搬送距離は2ピース分の距離となる。勿論、ステップ的な移動だけではなく、連続搬送も可能である。
【0030】
図4(c)においては、スライド搬送部6Aとスライド搬送部6Bにおけるスライド部A24の上昇状態とスライド部B29の下降状態が入れ替わる。即ち、搬送方向の下流側で切換バルブ38の切換により吸着パッド25は無吸引状態となった後シリンダ部23に押し下げられたスライド部A24が下降し、吸着パッド25はテープ状基板5の裏面から離れる。一方、スライド部B29は、搬送方向の上流側でシリンダ部23に押し上げられて上昇し、吸着パッド30がテープ状基板5の裏面に当接する。この当接と共に切換バルブ38の切換により吸引状態の吸着パッド30にテープ状基板5が吸着保持される。
【0031】
図4(d)においては、スライド部B29が上昇状態で吸着パッド30がテープ状基板5の裏面を吸着保持したまま、往復移動部により搬送方向上流から下流に搬送移動される。この移動動作により、テープ状基板5は吸着パッド30が移動した距離分だけ搬送される。
【0032】
同時に、スライド部A24が下降したまま、切換バルブ38の切換により無吸引状態である吸着パッド25が搬送方向下流側から上流側に移動される。
【0033】
以上説明したように、スライド搬送部6A,6Bにおける吸着パッド25,30が交互にテープ状基板5の裏面を吸着保持したまま、搬送方向の上流から下流に搬送移動する。このような交互の往復移動を連続的に行うことにより、搬送方向上流側から下流側にテープ状基板5を移動させることができる。
【0034】
このテープ状基板5の搬送の際に、テープ状基板5の裏面のみに吸着パッド25,30が当接し、吸着保持状態で移動させている。この搬送により、テープ状基板5の実装面である表面に対して搬送機構を含む構成部位が全く接触せず、損傷を与えることがない。スライド搬送部6A,6Bに幅方向に移動させる移動機構を備えることにより、テープ状基板5の裏面の所望する位置に吸着パッド25,30に当接させることができる。従って、テープ状基板5の仕様や形状に合わせて吸引位置を設定することができる。
【0035】
また、搬送時に吸着保持するため、グリップローラ搬送に比べて、搬送ずれが無く正確に搬送を行い、且つ、テープ状基板の表裏面を擦ることなく、基板表面やパーフォレーションに損傷を与えることを回避することができる。同様に、クランプ搬送機構のようなテープ状基板5の表裏面を挟持しないため、基板表面やパーフォレーションに損傷を与えることを回避することができる。
【0036】
また、第1の実施形態における吸着パッドに開口された孔は、円形で複数配置した例であったが、他にも、長穴、楕円又は矩形であってもよい。また、孔の数は、設計に応じて適宜開口すればよい。また、吸着パッドの外形形状は、矩形を例としたが他にも、テープ状基板5の裏面に当接する面が、正円形又は、楕円となる円柱形状であってもよい。
【0037】
さらに、スライド搬送部に設けられた吸着パッドを往復移動させる往復移動部は、ボールねじ(ナット部を含む)とモータにより構成した例について説明したが、モータは、直流(又は交流)モータ又は、ステップモータを採用することができる。また通常のモータを用いる場合には、センサを設置して吸着パッドの位置情報を得ればよい。ステップモータであれば、印加した電源信号のステップ数で吸着パッドの位置情報得ることもできる。勿論、ステップモータとセンサを組み合わせて用いてもよい。また、他にも、ボールねじ(ナット部を含む)とモータの組み合わせに換わって、リニアモータを用いることもできる。
【0038】
次に、第1の実施形態の第1の変形例について説明する。
【0039】
第1の変形例において、スライド搬送部6のスライド部A24,B29を搬送方向にさらに長く、即ち、吸着パッド25,30の移動距離を長くすることで、吸着パッド25,30における一度の移動でテープ状基板の搬送距離を長くすることも可能である。また、反対に、一度の電気検査の移動距離になるように吸着パッド25,30の移動距離を設定してもよい。
【0040】
次に、第1の実施形態の第2の変形例について説明する。
この第2の変形例は、スライド搬送部6を2列に並設させるだけでなく、さらに多くのスライド搬送部6を列状に配置させるように構成する。
【0041】
第1の配置例としては、複数のスライド搬送部を2つのグループに分けて、一方が搬送方向上流から下流に移動する第1群と、他方が搬送方向下流から上流に復帰移動する第2群とする。第1群のスライド搬送部の吸着パッドがテープ状基板の幅方向に一列に並ぶように配置する。同様に、第2群のスライド搬送部の吸着パッドもテープ状基板の幅方向に一列に並ぶように配置する。勿論、第1群のスライド搬送部の吸着パッドが搬送方向の最上流に位置するときには、第2群のスライド搬送部の吸着パッドが搬送方向の最下流に位置するように配置して、常にすれ違うように往来させる。このような配置においては、第1群のスライド搬送部と第2群のスライド搬送部がテープ状基板の幅方向に交互に配置する。
【0042】
また、第2の配置例としては、同様に、複数のスライド搬送部を2つのグループに分けて、一方が搬送方向上流から下流に移動する第1群と、他方が搬送方向下流から上流に復帰移動する第2群とする。それぞれの郡で搬送方向の移動長さの中で略等間隔に吸着パッドを配置して、テープ状基板の幅方向に吸着パッドが重なって並ばないように配置する。勿論、2つの郡の間で吸着パッドがテープ状基板の幅方向に重なって並んでも構わない。このような配置においても、第1群のスライド搬送部と第2群のスライド搬送部がテープ状基板の幅方向に交互に配置することが好ましい。
【0043】
このような構成により、テープ状基板の搬送速度の高速化が実現しさらに、時間あたりの移動距離も長くすることもでき、且つスムーズな移動を実現する。また、吸着パッドの数を増加させることにより、1つあたりの吸引力を減じて、テープ状基板裏面の複数の位置で吸引することにより、テープ状基板の吸着保持の確実性を上げ、且つテープ状基板5への1つあたりの吸着パッドによる吸引力を減少させて、テープ状基板へのダメージをさらに少なくすることができる。
【0044】
次に、第1の実施形態の第3の変形例について説明する。
【0045】
この第3の変形例では、1つのスライド搬送部(例えば6A)のみで搬送機構を構成する。この構成では、電気検査部7において検査を実施している間に、スライド部A24が下降し、切換バルブ38の切換により無吸引状態である吸着パッド25が搬送方向下流側から上流側に復帰する。従って、第1の実施形態よりも搬送速度に高速性を求めなければ、1つのスライド搬送部のみで実現することができる。
【0046】
次に図5(a)〜(d)には、第2の実施形態に係る搬送機構の概念的な構成例を示し説明する。
前述した第1の実施形態では、スライド搬送部6Aであれば、シリンダ部23により吸着パッド25がスライド部A24と一体的に昇降された構成であった。
【0047】
本実施形態は、テープ状基板5の搬送時に吸着部(吸着パッド)自体が上昇して、テープ状基板5を吸着保持する。その保持状態で吸着部が搬送経路下流側に搬送移動する。その後、吸引が停止され、テープ状基板5から吸着部が離れて下降し、未吸着状態で搬送経路上流側に復帰移動する構成である。
【0048】
本実施形態の搬送機構51は、リニアモータ52に沿って直線的に移動可能なスライドベース部53が設けられる。スライドベース部53上には、吸着ベース部54が設けられる。吸着ベース部54には、両側面に上下方向に延びるガイド溝が形成され、吸着部55がガイドアーム56を差し込み上下方向に移動可能に保持している。
【0049】
吸着部55の上面には、枠形状に吸着用エッジ部57が形成され、内側が一段低くなり吸着用エリアを形成している。図5(c)に示すように、その吸着用エリア内には吸引口58が開口され、吸引口58から吸着ベース部54との当接面まで吸引用通路が貫通されている。また、吸着部55が上昇した位置(テープ状基板5の保持位置)で当接面における吸引用通路60の開口と、吸着ベース部54の連通する位置に吸引用通路61の開口が設けられている。この吸引用通路61は、吸着ベース部54の背面(当接面の反対側の面)に設けた吸引パイプ59に繋がっている。この吸引パイプ59には、図示しない吸引ポンプが可撓性を有する樹脂パイプ等を用いて連結されている。
【0050】
従って、図5(c)に示すような吸着部55が上昇した位置において、吸引用通路60と吸引用通路61とが連通して、吸引口58から吸気されるように構成される。一方、図5(d)に示すように、未吸着状態で搬送経路上流側に復帰移動する時には、吸着部55が下降しており、吸引用通路60と吸引用通路61とが上下に切り離された状態となる。尚、吸着ベース部54と吸着部55との間に移動のための僅かな隙間(又は、ガタ)があったとしても吸引用通路61の吸引により、吸着部55が吸い寄せられて密着状態となる。また、吸着部55が下降しているときにも吸引用通路61を吸引させた状態にして、常に吸着ベース部54へ吸着させていてもよい。
【0051】
さらに、図5(c),(d)に示すように、スライドベース部53上で吸着部55の下方には、円筒形状の駆動コイル62が配置され、その円筒(孔)内を挿通移動する磁石柱63が吸着部55の下面に取り付けられている。この駆動コイル62に磁石柱63の磁場とは反発するように磁場を発生させて、吸着部55を上方に押し上げて、テープ状基板5の保持位置を維持させる。一方、搬送経路上流側に復帰移動する時には、この駆動コイル62に磁石柱63と吸引するように磁場を発生させて、吸着部55を下降させて吸引保持状態となる。
【0052】
さらに、リニアモータ52の両端に固定用端部52a,52bを設けている。固定用端部52a,52bには、長穴を形成し、ねじ止めにより装置本体に固定する。固定用端部52a,52bのみが固定されているだけであるため、長穴を用いることにより、テープ状基板5の幅に合わせて移動させて容易に仕様変更ができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の搬送機構は、小型の搬送ユニットとして用いることにより、複数個を幅方向に又は、搬送方向に並べて、長い距離を搬送する搬送機構を構築することができる。
【0054】
また、本実施形態では、吸引ポンプを用いてテープ状基板5を吸着保持して搬送したが、これに限定されることはない。例えば、静電吸着機構を吸着部55に設けて、テープ状基板5等の搬送物を吸着させて搬送させることもできる。このような構成を用いれば、駆動機構及び吸着機構は、電源のみを用いているため、吸引ポンプの配管の引き廻しが難しい箇所にも容易に設置することができる。尚、静電吸着機構は、前述した第1の実施形態にも容易に適用することができる。
【0055】
以上説明した実施形態は、以下の発明を含んでいる。
【0056】
1.真空吸着によりテープ状ベア基板の非実装面となる裏面側から吸着保持する吸着パッドと、
前記吸着パッドを搭載し、前記テープ状ベア基板を吸着保持する状態の前記吸着パッドを搬送方向下流にスライド移動し、未吸着保持状態の前記吸着パッドを搬送方向上流に復帰させるスライド搬送部と、
前記スライド搬送部を載設し、前記吸着パッドが搬送方向下流にスライド移動する際に上昇し、記吸着パッドを搬送方向上流に復帰する際に下降する昇降機構と、
を具備することを特徴とする基板テスタの搬送機構。
【0057】
2.前記基板テスタの搬送機構において、
前記テープ状ベア基板下方に前記吸着パッドが配置されるように、2つ以上の前記スライド機構が配置され、
前記複数のスライド機構が搬送方向上流から下流に移動する第1群と搬送方向下流から上流に復帰移動する第2群とに二分され、常にすれ違うように往来移動されることを特徴とする前記1項に記載の基板テスタの搬送機構。
【0058】
3.前記基板テスタの搬送機構において、
前記スライド搬送部は、前記吸着パッドを載着するベース部と、
両端が回転可能に支持されるボールねじと、
前記ボールねじを回転させるモータと、
前記ボールねじに嵌合し、前記ベース部が固定されるナット部と、
を具備することを特徴とする前記1項に記載の基板テスタの搬送機構。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施形態に係る搬送機構を搭載する長尺テープ状ベア基板用テスタ(基板テスタ)を正面から見た外観構成を示す図である。
【図2】図2(a),(b)は、第1の実施形態に係る搬送機構の概略的な構成を示す図である。
【図3】図3(a)は、搬送経路下流側から見た概略的な構成を示す図、図3(b)は、搬送機構の内部構成例を示す図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、第1の実施形態に係る搬送機構の搬送動作について説明するための図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、第2の実施形態に係る搬送機構の概略的な構成を示す図である。
【図6】従来のグリップローラ搬送機構を搭載する長尺テープ状ベア基板用テスタを正面から見た外観構成を示す図である。
【図7】従来のグリップローラ搬送機構の詳細な構成を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1…基板テスタ、2…装置本体、3…テープ送出リール、4…テープ巻取リール、5…テープ状基板(長尺テープ状ベア基板)、6…搬送機構、6A,6B…スライド搬送部、7…電気検査部、8…操作パネル、9…モニタ部、10…NGマーキングユニット、11…シグナルタワー、12…脚部、13,14,15,16…支持ローラ、17…、18…、19…、20…、21,22,27,28…ガイド部、23…シリンダ部、24…スライド部A、25,30…吸着パッド、25a,30a…ベース部、26,31…孔、27…、28…、29…スライド部B、33…搬送ガイド部、34…レール部、35,37…吸気管、36…吸引ポンプ、38…切換バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空吸着によりテープ状基板の面を吸着保持する吸着パッドと、
前記吸着パッドを搭載し、前記テープ状基板を吸着保持する状態の前記吸着パッドを搬送方向下流にスライド移動し、未吸着保持状態の前記吸着パッドを搬送方向上流に復帰させるスライド搬送部と、
前記スライド搬送部を載設し、前記吸着パッドが搬送方向下流にスライド移動する際に上昇し、記吸着パッドを搬送方向上流に復帰する際に下降する昇降機構と、
を具備することを特徴とする基板搬送機構。
【請求項2】
前記基板搬送機構において、
前記テープ状基板の面下方に前記吸着パッドが配置されるように、2つ以上の前記スライド機構が配置され、
前記複数のスライド機構が搬送方向上流から下流に移動する第1群と搬送方向下流から上流に復帰移動する第2群とに二分され、常にすれ違うように往来移動されることを特徴とする請求項1に記載の基板搬送機構。
【請求項3】
前記基板搬送機構において、
前記スライド搬送部は、前記吸着パッドを載着するベース部と、
両端が回転可能に支持されるボールねじと、
前記ボールねじを回転させるモータと、
前記ボールねじに嵌合し、前記ベース部が固定されるナット部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の基板搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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