基板搬送装置
【課題】従来よりも小型であり、併せてランニングコストを低減することができる基板搬送装置を提供する。
【解決手段】基板搬送装置10は、水平かつ上向きの加熱面を有する加熱ユニット12と、この加熱ユニット12の加熱面に沿って基板100を搬送するための3台の昇降可能なチェーン式コンベヤ18と、を備えている。コンベヤ18は、上昇状態で基板100を搬送し、当該基板100が所定の停止位置に到達すると、下降される。これにより、基板100は、コンベヤ18の搬送側キャリア26の上面と加熱ユニット12の加熱面とから成る一連の基板載置面上に載置され、当該基板載置面を介して、一様に加熱される。この加熱後、コンベヤ18は、改めて上昇され、基板100を搬送する。
【解決手段】基板搬送装置10は、水平かつ上向きの加熱面を有する加熱ユニット12と、この加熱ユニット12の加熱面に沿って基板100を搬送するための3台の昇降可能なチェーン式コンベヤ18と、を備えている。コンベヤ18は、上昇状態で基板100を搬送し、当該基板100が所定の停止位置に到達すると、下降される。これにより、基板100は、コンベヤ18の搬送側キャリア26の上面と加熱ユニット12の加熱面とから成る一連の基板載置面上に載置され、当該基板載置面を介して、一様に加熱される。この加熱後、コンベヤ18は、改めて上昇され、基板100を搬送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送装置に関し、特に、平板状の基板の主面を略水平に保ちながら当該基板を搬送すると共に当該基板の温度を制御する機能を備えた、基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PVD(Physical Vapor Deposition)装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置等の表面処理装置、とりわけインライン式やループ式,ターンバック式等の搬送機構を備えた装置、においては、例えば特許文献1に開示されているように、被処理物としての基板がトレイに載置された状態で搬送されることが多い。また、表面処理の際に、基板が積極的に加熱されることがあるが、この場合、トレイとして例えばカーボン繊維のように熱伝導性(熱拡散性)の高い素材で形成されたものが採用されると共に、このトレイ上に基板が密着された状態(要するに寝かした状態)で載置されることによって、基板全体にわたって一様な加熱が実現される。なお、従来技術では、トレイが大気に曝されることのないよう工夫されており、この工夫によって、トレイに水分等の不純物が付着するのが防止され、良好な膜質が得られる、とされている。また、トレイの温度低下が防止されるので、当該トレイの予熱が必要とされる場合に、その予熱に掛かる時間が短縮され、生産性が向上する、ともされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−135704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、基板と一緒にこれよりもサイズの大きいトレイが搬送されるので、その分、装置全体が大型化する。しかも、トレイは一種の消耗品であるため、ランニングコストが掛かり、不経済である。特に、上述のカーボン繊維製のように高価なトレイが採用されると、より一層不経済である。さらに、基板のみならずトレイも加熱されるため、その分、無駄なエネルギが消費される。これもまた、ランニングコストの増大を招く。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりも小型であり、併せてランニングコストを低減することができる基板搬送装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、平板状の基板の主面を略水平に保ちながら当該基板を搬送すると共に当該基板の温度を制御する機能を備えた基板搬送装置であって、略水平かつ上向きの平面を有し、この平面の温度を一様に制御する温度制御手段を、具備する。そして、基板を搬送するための無端紐帯を有し、この無端紐帯の搬送側が当該平面、言わば温度制御面、に沿って延伸するように設けられた搬送手段をも、具備する。さらに、無端紐帯の搬送側の上面、言わば基板搬送面、が温度制御面よりも上方に位置する第1状態と、当該基板搬送面が温度制御面に連なると共に温度制御手段による温度制御を享受する第2状態と、のいずれかに、無端紐帯の状態を遷移させる状態遷移手段を、具備する。そして、基板を搬送するとき、無端紐帯は第1状態とされた上で走行され、当該基板の温度を制御するとき、無端紐帯は停止された上で第2状態とされる、というものである。
【0007】
この構成によれば、基板を搬送するとき、搬送手段の無端紐帯は、状態遷移手段によって、第1状態とされる。つまり、当該無端紐帯の搬送側の上面である基板搬送面が、温度制御手段の有する温度制御面よりも上方に位置する状態とされる。その上で、無端紐帯が走行され、この走行中の無端紐帯に、基板が搬入される。搬入された基板は、無端紐帯によって、搬送され、詳しくは温度制御面の上方を当該温度制御面に沿う方向に搬送される。この搬送過程において、基板が所定の停止位置に到達すると、無端紐帯が停止される。その上で、無端紐帯は、第1状態から第2状態へと遷移される。この第2状態において、無端紐帯の基板搬送面は、温度制御面と連なって、一連の水平面、言わば基板載置面、を形成する。そして、この基板載置面上に、基板が載置され、詳しくは当該基板の下側主面が密着される。さらに、基板搬送面は、温度制御手段によって、温度制御面と同様の温度に制御される。この結果、これら基板搬送面および温度制御面から成る基板載置面全体が、一様な温度に制御される。そして、この基板載置面を介して、基板全体もまた、一様な温度に制御される。この基板の温度制御が所期の通りに行われた後、無端紐帯は、改めて第2状態から第1状態へと遷移され、その上で、走行される。これによって、基板は、再び搬送され、最終的に搬出される。
【0008】
なお、本発明において、温度制御面に、平板状の均熱板が密着さてもよい。この均熱板は、自身の面内方向における熱を均一化するものであり、このような均熱板が温度制御面に密着されることで、当該温度制御面の熱が均熱板の面内方向に一様に拡散され、ひいては基板全体がより一様な温度に制御される。ただし、この場合、無端紐帯が第1状態にあるとき、当該無端紐帯の基板搬送面は、均熱板の上面よりも上方に位置するものとする。そして、無端紐帯が第2状態にあるとき、基板搬送面は、均熱板の上面と連なって、基板載置面を形成するものとする。
【0009】
また、無端紐帯の基板搬送面と温度制御手段との間の熱伝導性は、均熱板の上面と当該温度制御面との間の熱伝導性よりも高いことが、望ましい。このようにすれば、無端紐帯が第1状態から第2状態に遷移したときに、当該無端紐帯の基板搬送面が短時間で均熱板の上面と同様の温度となり、ひいては基板載置面全体が短時間で一様な温度に制御される。このことは、基板の温度制御の短縮化に、大きく貢献する。
【0010】
さらに、温度制御面は、その温度次第で膨張し、または収縮するため、このことによる当該温度制御面の変形(歪み)を防止するべく、複数に分割されるのが、望ましい。この場合、分割された各温度制御面間に隙間が形成されるので、この隙間部分において各温度制御面全体にわたっての温度の均一性が崩れることが、懸念される。しかし、この懸念は、当該隙間部分を覆うように各温度制御面全体にわたって上述の均熱板が設けられることで、払拭される。
【0011】
加えて、本発明においては、無端紐帯が第2状態にあるとき、当該無端紐帯の戻り側の下面に対して温度制御手段による温度制御を享受させる温度制御享受手段が、さらに設けられてもよい。即ち、上述したように、無端紐帯が第2状態にあるとき、当該無端紐帯の基板搬送面(搬送側の上面)は、温度制御手段によって温度制御される。このとき、無端紐帯のそれ以外の部分、例えば次に搬入される基板が載せられるであろう(つまり次に基板搬送面となるであろう)戻り側の下面、についても、温度制御手段によって言わば事前に温度制御されれば、当該次に搬入される基板の温度制御が短時間で実現される。このために、当該温度制御享受手段が、さらに設けられてもよい。
【0012】
本発明は、上述したPVD装置やCVD装置等の表面処理装置に適用可能である。この場合、無端紐帯が第2状態にあるときに、表面処理が行われる。そして、この表面処理は、基板の上側主面に対して施される。ところが、この表面処理過程において、表面処理の対象とされていない部分、つまり基板が載置されていない部分、に対しても、当該表面処理が施されることがある。このように基板の非載置部分に対して不本意な表面処理が施されるのを防止するべく、本発明では、当該非載置部分を遮蔽する遮蔽手段が、さらに設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明によれば、従来技術とは異なり、トレイを用いることなく基板を搬送すると共に当該基板全体を一様な温度に制御することができる。ゆえに、従来よりも、基板搬送装置全体を小型化し、併せてランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図2】同実施形態の基板搬送時の状態を示す図解図である。
【図3】同実施形態の基板加熱時の状態を示す図解図である。
【図4】図2の要部を拡大して示す図解図である。
【図5】図3の要部を拡大して示す図解図である。
【図6】図3の別の要部を拡大して示す図解図である。
【図7】同実施形態の設置例を示す図解図である。
【図8】図6とは別の例を示す図解図である。
【図9】図4および図5とは別の例を示す図解図である。
【図10】同実施形態における加熱ユニットの別例を示す図解図である。
【図11】同加熱ユニットの図10とはさらに異なる例を示す図解図である。
【図12】同実施形態が設置されたインライン式の表面処理装置の一例を示す図解図である。
【図13】図12の表面処理装置に設置される同実施形態の別例の要部を拡大して示す図解図である。
【図14】図13の構成が別の状態にあるときの図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、例えばインライン式の表面処理装置に適用される基板搬送装置10を例に挙げて、説明する。なお、このインライン式の表面処理装置においては、これを構成する成膜処理室やロードロック室等の個々の室に、本実施形態に係る基板搬送装置10が1台ずつ設置される。
【0016】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る基板搬送装置10は、矩形平板状の基板、例えば太陽電池用のガラス基板100、を被処理物として搬送すると共に加熱する機能を備えるものであり、当該基板100の載置台となる温度制御手段としての概略扁平台状の加熱ユニット100を有している。ここで、図1は、基板搬送装置10の平面図であり、図2は、当該基板搬送装置10によって特に基板100が搬送されるときの状態を示す図である。そして、図3は、基板搬送装置10によって基板100が加熱されるときの状態を示す図であり、この図3の状態においては、基板100の表面(上側主面)に所定の被膜を形成するための成膜処理も並行される。なお、図2(a)および図3(a)においては、図示の便宜上、加熱ユニット12を省略してある。
【0017】
加熱ユニット12は、水平な上面(加熱面)を有しており、この上面を一様に加熱するべく、図示しない加熱手段としてのヒータを内蔵している。そして、この加熱を速やかに実現するために、当該加熱ユニット12の上面を含む筐体は、比較的に熱伝導率の高い素材、例えばアルミニウム合金、によって形成されている。なお、このアルミニウム合金の熱伝導率は、例えば137[W・m−1・K−1]である。
【0018】
さらに、加熱ユニット12の上面には、厚さ寸法が2[mm]〜8[mm]の平板状の均熱板14が密着されている。この均熱板14は、加熱ユニット12の筐体(アルミニウム合金)よりも熱伝導率が低いものの、特にその面内方向(水平方向)の熱伝導率が面外方向(鉛直方向)の熱伝導率よりも高い、という性質を有しており、例えばカーボンファイバコンポジット材によって形成されている。なお、この均熱板14の面内方向熱伝導率は、例えば31[W・m−1・K−1]であり、面外方向(鉛直方向)の熱伝導率は、例えば4[W・m−1・K−1]である。このような均熱板14が加熱ユニット12の上面に密着されることで、当該加熱ユニット12の上面の熱が均熱板14の面内方向に一様に拡散され、ひいては当該熱が均熱板14の上面に一様に現れる。
【0019】
この均熱板14を含む加熱ユニット12には、当該均熱板14の上面から加熱ユニット12の下面に貫通し、かつ、当該均熱板14を含む加熱ユニット12の一方の端縁から他方の端縁に至り、さらに、互いに平行を成して延伸する、複数、例えば3つ、の直線状の貫通条16,16および16が設けられている。つまり、厳密に言えば、当該均熱板14を含む加熱ユニット12は、これら3つの貫通条16,16および16によって、4つに分割されている。そして、この4つに分割されたそれぞれの加熱ユニット12ごとに上述のヒータが内蔵されており、これらのヒータは(加熱ユニット12の上面全体の温度が一様になるように)互いに独立して制御可能とされている。なお、3つの貫通条16,16および16のうちの1つは、均熱板14を含む加熱ユニット12の中央をその長手方向に沿って延伸するように設けられている。そして、他の2つの貫通条16および16は、中央の貫通条16に関して互いに対称となるように、均熱板14を含む加熱ユニット12の側縁寄りに設けられている。また、これらの貫通条16,16および16によって4分割された均熱板14を含む加熱ユニット12は、図示しない固定部材によって、表面処理装置の筐体200、に固定されている。
【0020】
そして、それぞれの貫通条16に嵌装されるように、搬送手段としてのコンベヤ18が設けられている。具体的には、コンベヤ18は、いわゆるチェーン式のものであり、無端紐帯としてのローラチェーン20を有している。そして、このコンベヤ18は、ローラチェーン20の搬送側(キャリア側)が貫通条16の上方側において当該貫通条16に沿って延伸すると共に、ローラチェーン20の戻り側(リターン側)が貫通条16の下方側において当該貫通条16に沿って延伸するように設けられている。このため、ローラチェーン20を張架する1対のスプロケット22および24は、均熱板14を含む加熱ユニット12の両端縁よりも外側に設けられている。なお、ローラチェーン20は、いわゆるアタッチメント付きのものであり、このアタッチメントとして、当該ローラチェーン20の走行方向(連結方向)を横切る断面が概略T字状のキャリア26,26,…が設けられている。このキャリア26,26,…は、均熱板14よりも熱伝導率の高い素材によって形成されており、例えば加熱ユニット12の筐体と同じアルミニウム合金製とされている。
【0021】
各コンベヤ18,18および18は、互いに共通の図示しない駆動手段としてのモータによって一括して駆動される。このため、当該モータの回転軸に結合された駆動軸28が、各コンベヤ18,18および18の駆動側スプロケット22,22および22の中心を通る直線と平行を成すように、当該直線の斜め下方に設けられている。そして、この駆動軸28には、各コンベヤ18,18および18に対応する3つの同軸スプロケット30,30および30が取り付けられており、それぞれの同軸スプロケット30に、駆動力伝達手段としての駆動用チェーン32を介して、対応するコンベヤ18の駆動側スプロケット22が連結されている。なお、それぞれのコンベヤ18の従動側スプロケット24には、これに駆動側スプロケット22から離れる方向の外力を加えることでローラチェーン20に一定の張力を付与するための自動テンション機構34が付属されている。これは、ローラチェーン20の周囲温度が変化することに伴う当該ローラチェーン20の伸縮を吸収するためである。また、駆動側スプロケット22と従動側スプロケット24との間には、この間を走行するローラチェーン20を案内するためのガイドフレーム36が設けられている。
【0022】
それぞれのコンベヤ18は、状態遷移手段としての昇降ユニット38によって、垂直方向に変位可能な状態に支持されている。具体的には、昇降ユニット38は、コンベヤ18の数の整数倍、例えば2倍、の合計6つの支持機構40,40,…を有している。そして、それぞれのコンベヤ18は、2つの支持機構40および40によって支持されており、詳しくは、ガイドフレーム36の適当な2箇所において、適当な2つの支持部材42および42を介して、当該2つの支持機構40および40のリフトピン40aおよび40aの先端に固定されている。また、それぞれの支持機構40は、真空フィールドスルー40bを有しており、この真空フィードスルー40bを介して、それぞれのリフトピン40aの基部(下端側)が、表面処理装置の筐体(底板)200の外部に引き出され、当該外部に設けられた駆動力変換伝達機構44に結合されている。駆動力変換機構44は、図示しないラック・アンド・ピニオンを内蔵しており、駆動源としての減速機付きモータ46の回転駆動力を直線駆動力に変換して、各リフトピン40a,40a,…に伝達する。つまり、各リフトピンリフトピン40a,40a,…は、それぞれに共通の1台のモータ46によって、一括して駆動される。言い換えれば、各コンベヤ18,18,…は、当該モータ46によって、一括して昇降される。
【0023】
さらに、加熱ユニット12の下面には、それぞれの貫通条16の一側縁に沿って延伸するように、温度制御享受手段としての合計3つのチェーンホルダ48,48および48が設けられている。これらのチェーンホルダ48,48および48は、各ローラチェーン20,20および20の戻り側のキャリア26,26,…の下面に対向する水平のホルダ面48a,48aおよび48a(後述する図4および図5参照)を有しており、このため、当該戻り側のキャリア26,26,…の走行方向を横切る断面が概略L字状となるように形成されている。なお、これらのチェーンホルダ48,48および48は、熱伝導率が比較的に高い素材、例えば上述したアルミニウム合金製、とされている。また、図2(a)および図3(a)から分かるように、昇降ユニット38の各支持機構40,40,…が設けられている部分、言い換えれば支持部材42,42,…と干渉する部分、については、当該チェーンホルダ48は除外されている。
【0024】
加えて、均熱板14を含む加熱ユニット12の上方には、遮蔽手段としての昇降式のシールドプレート50が設けられている。このシールドプレート50は、基板100の外周よりも少し小さい内周の矩形の開口窓50aを有しており、この開口窓50aが均熱板14の上面と対向するように、上述した昇降ユニット38とは別の図示しない昇降機構によって、垂直方向に変位可能な状態に支持されている。なお、このシールドプレート50は、耐熱性および耐腐食性の高い素材、例えばステンレスまたは上述したカーボンファイバコンポジット材、によって形成されている。また、図示しないが、このシールドプレート50には、その機械的強度を向上させるためのリブ等の適当な補強策が施されている。
【0025】
このように構成された本実施形態の基板搬送装置10は、加熱ユニット12(ヒータ)が通電された上で、次のように動作する。
【0026】
まず、図2に示すように、シールドプレート50が所定の上昇位置にまで上昇されると共に、各コンベヤ18,18および18もまた所定の上昇位置にまで上昇される。なお、図2においては、基板100が記載されているが、この時点では、まだ当該基板100は存在しない。また、このとき、特に図2(a)に示すように、それぞれの駆動用チェーン28は、適度に張架された状態にある。
【0027】
この状態において、各コンベヤ18,18および18が駆動され、詳しくは図2(a)においてそれぞれの駆動側スプロケット22が時計方向に回転される。これによって、各コンベヤ18,18および18のローラチェーン20,20および20の搬送側が、図2(a)に矢印300で示す方向(図2(a)において左側から右側に向かう方向)に走行する。そして、各コンベヤ18,18および18の上流側に当たる方向(図2(a)における左側の方向)から、基板100が、その主面を水平にした状態で、当該各コンベヤ18,18および18上に搬入され、詳しくは各ローラチェーン20,20および20の搬送側のキャリア26,26,…上に載せられる。搬入された基板100は、各コンベヤ18,18および18によって、当該各コンベヤ18,18および18の下流側に当たる方向(図2(a)において右側の方向)に搬送され、詳しくは均熱板14の上方を当該均熱板14の上面に沿って搬送される。この基板100の搬送時の状態、特にチェーンホルダ48を含む部分の状態を、図4に拡大して示す。
【0028】
この図4に示すように、基板100は、それぞれのローラチェーン20の搬送側のキャリア26,26,…によって、均熱板14の上方に持ち上げられた状態で搬送される。このときの均熱板14の上面と基板100の下面との間隔Daは、当該基板100の材質や寸法等を含む基板搬送装置10全体の規模や用途によって異なるが、例えば5[mm]〜10[mm]である。なお、図4においては、戻り側のキャリア26,26…の下面と上述したチェーンホルダ48のホルダ面48aとが互いに離れた状態にあり、言わば当該戻り側のキャリア26,26,…が宙に浮いた状態にあるが、実際には、当該戻り側のキャリア26,26…の下面とチェーンホルダ48のホルダ面48aとは互いに接触した状態にある。これは、戻り側のキャリア26,26,…を含む当該戻り側のローラチェーン20が自重によって下方に撓むからである。つまり、戻り側のキャリア26,26,…は、その下面をチェーンホルダ48のホルダ面48aに接触させた状態で走行(摺動)する。また、図4から分かるように、それぞれの貫通条16の上方側開口部周縁には、後述するように搬送側のキャリア26,26,…を収容するための凹状の窪み52が形成されている。また、この窪み52の底部に当たる部分は、加熱ユニット12の筐体が露出した状態にある。
【0029】
この基板100の搬送過程において、当該基板100が所定の停止位置に到達すると、詳しくは図2(a)に示す位置に到達すると、各コンベヤ18,18および18が停止される。その上で、各コンベヤ18,18および18は、図3に示すように下降される。これによって、図5に拡大して示すように、それぞれのコンベヤ18の搬送側のキャリア26,26,…が上述した窪み52に収容され、当該搬送側のキャリア26,26,…の上面と均熱板14の上面とが連なって、一連の基板載置面54が形成される。そして、この基板載置面54上に、基板100が載置され、詳しくは当該基板100の下側主面が密着される。なお、このとき、図3(a)に示すように、それぞれの駆動用チェーン28が撓むが、この撓みは微少であるので、当該撓みによって駆動用チェーン28が外れることはない。
【0030】
このように、搬送側のキャリア26,26,…が窪み52に収容されることによって、当該窪み52の底部において、搬送側キャリア26,26,…と加熱ユニット12とが直接的に接触する。これにより、搬送側のキャリア26,26,…は、均熱板14と同様に加熱される。しかも、当該搬送側を含む全てのキャリア26,26,…は、熱伝導率の高いアルミニウム合金製であるので、比較的に短時間で均熱板14と同程度の温度に加熱される。この結果、これら搬送側のキャリア26,26,…の上面と均熱板14の上面とから成る基板載置面54全体が、比較的に短時間で一様な温度となる。そして、この基板載置面54を介して、基板100全体が一様に加熱される。なお、搬送側のキャリア26,26,…に加熱ユニット12からの熱が極力早く伝わるように、これら両者の接触寸法La(接触面積)は極力大きくなるように設計されている。一方、搬送側キャリア26,26,…と窪み52との間には、必然的に多少の隙間56が形成されるが、この隙間56の寸法Lbは極力小さくなるように設計されている。
【0031】
さらに、この図5(図3)に示す状態においては、戻り側のキャリア26,26,…の下面が、チェーンホルダ48のホルダ面48aに対して確実に接触する(そのように設計されている)。つまり、戻り側のキャリア26,26,…の下面は、チェーンホルダ48を介して、加熱ユニット12と言わば熱的に結合される。従って、戻り側のキャリア26,26,…の下面もまた、搬送側のキャリア26,26,…の上面と同様に、当該加熱ユニット12によって加熱される。これは、後述するように、次に搬入される基板100を加熱するのに好都合であり、そのための事前の処置である。なお、上述の如く、図4(図2)に示した状態においても、戻り側のキャリア26,26,…の下面は、チェーンホルダ48のホルダ面48aに接触した状態にあるので、当該チェーンホルダ48を介して、加熱ユニット12からの熱を受ける。
【0032】
そしてさらに、上述したシールドプレート50が、所定の下降位置、詳しくは基板100の上面すれすれの位置、にまで下降される。このとき、基板100の成膜対象となる部分、つまり当該基板100の上側主面のみが、シールドプレート50の開口窓50aを介して、上方に露出され、それ以外の部分については、当該シールドプレート50によって遮蔽されるように、これら基板100およびシールドプレート50の位置関係が設定されている。なお、シールドプレート50の開口窓50aの内周は、基板100の外周よりも少し小さいので、図6に拡大して示すように、基板100の外周縁近傍は、当該シールドプレート50の開口窓50aの内周縁近傍によって覆われる。このシールドプレート50と基板100とが重なる部分の寸法Lcは、当然に小さい方が好ましく、例えば基板100の長手方向および短辺方向それぞれにおいて当該基板100の寸法の1/100以下とされ、より好ましくは1/200とされる。これを数値に置き換えると、当該重なり部分の寸法Lcは、10[mm]以下が好ましく、より好ましくは5[mm]以下とされる。また、図6においては、図示の便宜上、シールドプレート50の下面と基板100の上面とが互いに接触した状態にあるが、実際には、上述からも分かるように、これら両者間は非接触であり、詳しくは当該両者間には1[mm]〜2[mm]程度の隙間が設けられている。このように両者間に隙間が設けられているのは、当該両者が接触することによる基板100の破損を防止するためである。
【0033】
このようにして基板100の上側主面のみが露出され、それ以外の部分についてはシールドプレート50によって覆われた状態で、成膜処理が行われる。これによって、成膜対象である基板100の上側主面のみに当該成膜処理が施され、それ以外の部分に言わば不本意な成膜処理が施されるのが防止される。
【0034】
また、この不本意な成膜処理をより確実に防止するべく、加熱ユニット12の下面側にも、シールドプレート50とは別のプレート58が設けられている。この別のプレート58は、加熱ユニット12の下面を恒常的に覆うように設けられており、これによって、当該加熱ユニット12の下面への不本意な成膜処理が防止され、特に成膜粒子の回り込みが防止される。この別のプレート58も、シールドプレート50と同様、ステンレスやカーボンファイバコンポジット材等の耐熱性および耐腐食性の高い素材で形成されている。なお、上述した図2および図3においては、図示の便宜上、当該別のプレート58を省略してある。
【0035】
この基板100を加熱しながらの当該基板100の成膜処理が所期の通り行われた後、シールドプレート50が上述した所定の上昇位置にまで上昇され、続いて、各コンベヤ18,18および18が所定の上昇位置にまで上昇される。つまり、図2に示した状態に戻される。その上で、各コンベヤ18,18および18が改めて駆動され、これにより、基板100が再び搬送され、最終的に各コンベヤ18,18および18上から搬出される。
【0036】
以上のように、本実施形態の基板搬送装置10によれば、上述した従来技術とは異なり、トレイを用いることなく基板100を搬送することができると共に、当該基板100全体を一様に加熱することができる。ゆえに、従来技術に比べて、基板搬送装置10全体を小型化し、併せてランニングコストを低減することができる。
【0037】
なお、上述したように、本実施形態の基板搬送装置10は、表面処理装置を構成する複数の室に1台ずつ設置される。このとき、或る基板搬送装置10と、その前段の基板搬送装置10とが、図7に示すような位置関係とされることで、基板100の連続処理が効果的に行われる。
【0038】
即ち、基板100の搬送方向300における加熱ユニット12の有効寸法Ldは、当然に同方向300における基板100の寸法Leよりも大きい(La>Le)。そして、加熱ユニット12に結合されたそれぞれのチェーンホルダ48のホルダ面48aの当該搬送方向300における有効寸法Lfもまた、同方向300における基板100の寸法Leよりも大きく(Lf>Le)、例えば加熱ユニット12の同方向300における有効寸法Ldと略等しい(Lf≒Ld)。ここで、或る基板搬送装置10の加熱ユニット12の有効寸法Ldの終端から当該或る基板搬送装置10のホルダ面48aの有効寸法Lfの始端までの折り返し部分の距離をLgとし、併せて、当該或る基板搬送装置10によって搬送されている基板100の後方端から前段の基板搬送装置10によって搬送されている基板(つまり或る基板搬送装置10に対して次に搬入される基板)100の前方端までの距離をLhとすると、折り返し部分の距離Lgは、基板間距離Lhよりも小さく(Lg<Lh)なるように設定される。さらに、これら折り返し部分の距離Lgと基板間距離Lhとの差分(Lh−Lg)をホルダ面48aの有効寸法Lfから差し引いた値(Lf−(Lh−Lg))が、基板100の寸法Leよりも大きく(Lf−(Lh−Lg)>Le)なるように設定される。このような位置関係とされることで、或る基板搬送装置10に対して次の基板100が搬入される際に、当該或る基板搬送装置10において、チェーンホルダ48を介して事前に加熱された戻り側のキャリア26,26,…に当該次の基板100が載置されることになり、当該次の基板100の加熱がスムーズに行われる。
【0039】
また、本実施形態においては、図6に示したように、シールドプレート50の開口窓50aの内周縁近傍が、基板100の外周縁近傍に重なるように、これら両者の位置関係が設定されたが、これに限らない。例えば、シールドプレート50の開口窓50aの内周が、基板100の外周よりも少し大きめに設定されることで、図8に拡大して示すように、当該シールドプレート50と基板100とが重ならないようにしてもよい。この場合、シールドプレート50の開口窓50aの内周縁と、基板100の外周縁と、の間に隙間が形成されるが、この隙間部分の寸法Lkは、当然に小さい方が好ましい。例えば、基板100の長手方向および短辺方向それぞれにおいて、この隙間部分の寸法Lkは、当該基板100の寸法の1/200以下とされるのが好ましく、より好ましくは1/500とされる。これを数値に置き換えると、当該隙間部分の寸法Lkは、5[mm]以下が好ましく、より好ましくは2[mm]以下とされる。
【0040】
さらに、それぞれのコンベヤ18のキャリア26,26,…について、図9に示すように、テーパ26aを設けると共に、搬送側のキャリア26,26,…を収容するための窪み52についても、当該キャリア26,26,…のテーパ26aに合致するようにテーパ状に形成されてもよい。このようにすれば、搬送側のキャリア26,26,…の窪み52への収容がスムーズに行われる。また、当該搬送側のキャリア26,26,…が窪み52に収容されているときのこれら両者間の隙間寸法Lb’も縮小化される。併せて、両者間の接触寸法La’が増大するので、搬送側のキャリア26,26,…の加熱がより効果的に行われる。
【0041】
ところで、加熱ユニット12の筐体は、上述したようにアルミニウム合金製であるが、このアルミニウム合金の熱膨張率(線膨張率)は、例えば22[×10−6/K]〜24[×10−6/K]と比較的に大きいため、当該加熱ユニット12の筐体が熱膨張によって変形することが懸念される。この懸念を払拭するために、当該加熱ユニット12は、さらに分割されてもよく、例えば図10に示すように12分割されてもよい。この場合、分割された各ブロック間(各貫通条16,16および16を除く)の距離は、加熱ユニット12の寸法や加熱温度,筐体の熱膨張率(素材)等によって異なるが、例えば5[mm]〜10[mm]とされる。また、このように各ブロック間に隙間が形成されることによって、この隙間部分で温度が低下することが懸念されるが、均熱板14については、(各貫通条16,16および16を除いて)非分割とすることによって、この懸念は払拭され、つまり当該隙間部分での温度の低下が補償される。なお、均熱板14の素材であるカーボンファイバコンポジット材の熱膨張率は、極めて小さく、例えば面内方向で0.08[×10−6/K]であり、面外方向で5.8[×10−6/K]である。従って、加熱ユニット12とは異なり、この均熱板14が実用上問題となる程度に熱変形することはない。状況によっては、加熱ユニット12は、より細かく分割されてもよく、例えば図11に示すように22分割されてもよい。
【0042】
また、加熱ユニット12の筐体は、アルミニウム合金製ではなく、ステンレス等の当該アルミニウム合金以外の素材によって形成されてもよい。それぞれのローラチェーン20のキャリア26,26,…についても、アルミニウム合金製に限らず、ステンレス等の他の金属製とされてもよい。特に、基板100を短時間で加熱する必要がない場合には、当該キャリア26,26,…は、セラミックスや上述したカーボンファイバコンポジット材等のような比較的に比熱容量の大きい素材によって形成されてもよい。さらに、シールドプレート50および加熱ユニット12の下面側に設けられた別のプレート58についても、ステンレス以外の素材によって形成されてもよい。
【0043】
そして、均熱板14についても、カーボンファイバコンポジット材に限らず、他の素材によって形成されてもよい。ただし、この均熱板14については、比較的に比熱容量の大きい素材によって形成されるのが好ましく、より好ましくは面内方向の熱伝導率が面外方向の熱伝導率よりも大きい素材によって形成されるのがよい。
【0044】
さらに、本実施形態においては、1台の基板搬送装置10に3台のコンベヤ18,18および18が設けられ、これら3台のコンベヤ18,18および18が、互いに共通の1台のモータによって駆動されることとしたが、これに限らない。即ち、各コンベヤ18,18および18は、互いに別々のモータによって駆動されてもよい。この場合、各コンベヤ18,18および18は、互いに同期しながら駆動される。また、コンベヤ18の台数は、3台に限らず、基板100を含む基板搬送装置10の規模に応じて適宜の台数、実用的には複数台、とされ、例えば最大で5台程度とされる。勿論、このコンベヤ18の台数に応じて、当該コンベヤ18が設置される貫通条16の数も変わり、言い換えれば均熱板14を含む加熱ユニット12の分割数も変わる。
【0045】
加えて、それぞれのコンベヤ18を構成するキャリア26,26,…については、上記移した概略T字状のものに限らず、適宜の形状のものが採用されてもよい。また、当該コンベヤ18は、チェーン式のものに限らず、無端紐帯として無端ベルトを採用するベルト式のものであってもよい。この場合、特に当該無端ベルトは、耐熱性および耐腐食性を有するものであることが、肝要である。
【0046】
そして、各コンベヤ18,18および18を昇降させるための昇降ユニット38は、モータ46を駆動源とするモータ式のものに限らず、油圧式等の他の方式を採用するものであってもよい。このことは、シールドプレート50を昇降させるための昇降機構についても同様である。
【0047】
また、本実施形態の基板搬送装置10は、図7に示したように、複数台が直列に設置された状態で運用されるが、この場合、或る基板搬送装置10の搬入側が、その前段の基板搬送装置10の搬出側よりも若干下方に位置するように設置されるのが、望ましい。このようにすれば、これら両者間で基板100が受け渡される際に、当該基板100に(その薄さに起因する)撓みが生じたとしても、当該基板100の受け渡しがスムーズに行われる。
【0048】
さらに、図3に示した状態で基板100が加熱される際に、当該基板100の上側主面に対しても、図示しない別の手段によって熱が加えられるようにしてもよい。特に、成膜処理が行われない予備加熱用のロードロック室等においては、基板100の上方に当該別の手段として例えば熱(赤外線)放射手段が設けられ、この熱放射手段によって基板100の上側主面が加熱されるようにしてもよい。なお、当該ロードロック室等の成膜処理室以外の室においては、シールドプレート50および下側のプレート58は不要である。
【0049】
そして、それぞれのコンベヤ18(ローラチェーン20)の折り返し部分についても、熱放射手段等の適宜の加熱手段によって熱が加えられるようにしてもよい。特に、図3(a)に示したように、ローラチェーン20の戻り側のうち、チェーンホルダ48(ホルダ面48a)が除外されている部分についても同様に、図示しない適宜の手段によって加熱されるようにしてもよい。
【0050】
上述したように、本実施形態の基板搬送装置10は、インライン式の表面処理装置に適用されるが、ここで、例えば、当該インライン式の表面処理装置として、図12に示すものを具体的に想定する。この図12に示す表面処理装置によれば、基板100(同図では省略)は、まず、大気に開放された搬入ステージ500に搬入される。そして、この搬入ステージ500に搬入された基板100は、同図に矢印300で示すように、当該搬入ステージ500から搬入側ロードロック室502へと搬送される。搬入側ロードロック室502への基板100の搬送(搬入)が完了すると、当該搬入側ロードロック室502は、真空引き(真空置換)される。そして、この真空引きされた搬入側ロードロック室502において、基板100は、予備加熱される。さらに、この予備加熱された基板100は、搬入側ロードロック室502から成膜処理室504へと搬送される。成膜処理室504は、予め搬入側ロードロック室502と同程度に真空引きされており、この成膜処理室504への基板100の搬送が完了すると、当該成膜処理室504は、さらに高真空状態にまで真空引きされる。そして、この高真空状態とされた成膜処理室504において、基板100は、加熱されながら所定の成膜処理を施される。この成膜処理が完了すると、基板100は、成膜処理室504から搬出側ロードロック506室へと搬送される。搬出側ロードロック室506もまた、予め真空引きされており、この搬出側ロードロック室506への基板100の搬送が完了すると、その時点から一定の冷却期間が置かれる。そして、この冷却期間の経過後、搬出側ロードロック室506は、大気に開放され、当該搬出側ロードロック室506から搬出ステージ508へと基板100が搬送される。搬出ステージ508に搬送された基板100は、当該搬出ステージ508から搬出され、次工程に移される。
【0051】
このように、図12の表面処理装置によれば、基板100は、搬入側ロードロック室502および成膜処理室504において、高温に加熱され、それ以外の搬入ステージ500,搬出側ロードロック室506および搬出ステージ508においては、常温とされる。そして、厳密に言えば、本実施形態で説明した基板搬送装置10は、成膜処理室504のみに設置され、それ以外の室、例えば搬入側ロードロック室502には、図13および図14に示すような熱絶縁手段としての熱絶縁アダプタ60,60,…を有する基板搬送装置10aが、設置される。
【0052】
即ち、搬入側ロードロック室502には、その前段の搬入ステージ500から、常温の基板100が搬入されるため、例えば、当該搬入側ロードロック室502に本実施形態で説明した基板搬送装置10が設置される、と仮定すると、常温の基板100は、高温に加熱されたキャリア26,26,…上に載せられることになる。すると、基板100に対して熱的ストレスが掛かり、この熱的ストレスによって、当該基板100が変形したり破損したりする等の不都合が生じる。この不都合を回避するべく、搬入側ロードロック室502に設置される基板搬送装置10aとしては、図13および図14に示すように、キャリア26,26,…上に適宜のピッチLpで設けられた半球状の絶縁アダプタ60,60,…を有するものが、採用される。なお、この絶縁アダプタ60,60,…は、熱伝導率が比較的に低く、かつ、耐摩耗性が比較的に高い素材、例えばステンレスやセラミックス、によって形成される。ただし、極端に高い耐熱性が要求されない場合には、当該絶縁アダプタ60,60,…として、樹脂製のものも採用可能である。ピッチLpは、基板100を含む基板搬送装置10aの規模によって変わり、例えば75[mm]〜300[mm]の範囲内で適宜に設定される。
【0053】
このような絶縁アダプタ60,60,…が設けられることによって、図13に示す基板100の搬送時に、当該基板100は、搬送側のキャリア26,26,…の上面には直接接触せずに、絶縁アダプタ60,60,…によって部分的(点状)に接触した状態で、言い換えれば搬送側のキャリア26,26,…の上面と熱的(熱伝導的)に絶縁された状態で、搬送される。従って、常温の基板100に対する熱的ストレスが軽減される。また、図14に示す基板100の加熱時においても、当該基板100は、搬送側のキャリア26,26,…の上面および均熱板14の上面から成る基板載置面54とは直接接触せず、当該基板載置面54との間に絶縁アダプタ60,60,…の高さ寸法に応じた間隔Dbを置いた位置にある。この間隔Dbもまた、基板100を含む基板搬送装置10aの規模によって変わり、例えば5[mm]〜10[mm]の範囲内で適宜に設定される。このような間隔Dbを置くことで、基板載置面54の熱が基板100に対して直接的に伝導することはなく、熱輻射によって言わば間接的に伝わるようになる。ゆえに、基板100の加熱時にも、当該基板100への熱的ストレスが軽減される。
【0054】
なお、絶縁アダプタ60,60,…は、半球状に限らず、円錐状や角錐状のもの、或いは山脈状のものでもよく、要するに基板100との接触面積を制限しつつ当該基板100を確実に支持し得る突起状のものであればよい。また、絶縁アダプタ60,60,…は、キャリア26,26,…に対して任意に着脱可能なものであってもよいし、当該キャリア26,26,…と一体形成されたものであってもよい。ただし、絶縁アダプタ60,60,…に関しては、上述の如く比較的に低い熱伝導率が要求されるのに対して、キャリア26,26,…に関しては、比較的に高い熱伝導率を要求されるので、これら両者が一体形成される場合には、その時々の状況に応じて適宜の素材が選定される。さらに、上述したように、この搬入側ロードロック室502用の基板搬送装置10aにおいては、シールドプレート50および下側のプレート58は不要である。また、戻り側のキャリア26,26,…を積極的に加熱する必要がないので、当該戻り側のキャリア26,26,…を支持するためのチェーンホルダ48も不要である。このことから、図13および図14においては、上述の図4および図5とは異なり、チェーンホルダ48が記載されておらず、支持部材42を含む部分が示されている。
【0055】
図12に戻って、搬出側ロードロック室506に注目すると、この搬出側ロードロック室506は常温であるのに対して、その前段の成膜処理室504からは高温に加熱された基板100が搬入される。従って、詳しい図示は省略するが、この搬出側ロードロック室506に設置される基板搬送装置10bとしても、搬入側ロードロック室502用の基板搬送装置10aと同様に、キャリア26,26,…上に絶縁アダプタ60,60,…が設けられたものが採用される。これによって、高温の成膜処理室504から常温の搬出側ロードロック室506に基板100が搬送される際の、言い換えれば互いの温度環境が異なる2つの室間で基板100が受け渡される際の、当該基板100に対する熱的ストレスが軽減される。なお、この搬出側ロードロック室506用の基板搬送装置10bにおいても、シールドプレート50および下側のプレート58が不要であり、また、チェーンホルダ48も不要である。併せて、均熱板14を含む加熱ユニット12も不要であり、これに代えて、単なる載置台が設けられてもよく、さらに、基板100を強制的に冷却するための水冷式等の冷却ユニットが設けられてもよい。このような強制冷却ユニットが設けられる場合に、絶縁アダプタ60,60,…の効果がより一層発揮される。
【0056】
搬入ステージ500に設置される基板搬送装置10cとしては、基板100を搬送するためだけに特化したものでよい。つまり、当該搬入ステージ500用の基板搬送装置10cに関しては、加熱ユニット12或いは強制冷却ユニットは不要であり、また、シールドプレート50,下側プレート58およびチェーンホルダ48も不要である。なお、絶縁アダプタ60,60,…については、設けられても、そうでなくてもよい。搬出ステージ508に関しても、同様の基板搬送装置10cが設置される。
【0057】
この図12に示すインライン式の表面処理装置は、一例であり、この構成に限定されない。例えば、搬入側ロードロック室502とは別に予備加熱専用の室が設けられてもよく、また、搬出側ロードロック室506とは別に冷却専用の室が設けられてもよい。いずれにせよ、それぞれの室の性質に応じて、適宜の基板搬送装置10,10a,10bおよび10cが設置される。
【0058】
本実施形態においては、インライン式の表面処理装置を例に挙げたが、これに限らない。即ち、基板100を加熱または冷却する機能を有すると共に、当該基板100を搬送する装置であれば、本発明を適用することができる。そして、基板100として、太陽電池用のガラス基板を例に挙げたが、それ以外のガラス基板や、半導体基板等の当該ガラス基板以外の各種基板が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 基板搬送装置
12 加熱ユニット
18 コンベヤ
20 ローラチェーン
46 昇降ユニット
100 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送装置に関し、特に、平板状の基板の主面を略水平に保ちながら当該基板を搬送すると共に当該基板の温度を制御する機能を備えた、基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PVD(Physical Vapor Deposition)装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置等の表面処理装置、とりわけインライン式やループ式,ターンバック式等の搬送機構を備えた装置、においては、例えば特許文献1に開示されているように、被処理物としての基板がトレイに載置された状態で搬送されることが多い。また、表面処理の際に、基板が積極的に加熱されることがあるが、この場合、トレイとして例えばカーボン繊維のように熱伝導性(熱拡散性)の高い素材で形成されたものが採用されると共に、このトレイ上に基板が密着された状態(要するに寝かした状態)で載置されることによって、基板全体にわたって一様な加熱が実現される。なお、従来技術では、トレイが大気に曝されることのないよう工夫されており、この工夫によって、トレイに水分等の不純物が付着するのが防止され、良好な膜質が得られる、とされている。また、トレイの温度低下が防止されるので、当該トレイの予熱が必要とされる場合に、その予熱に掛かる時間が短縮され、生産性が向上する、ともされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−135704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、基板と一緒にこれよりもサイズの大きいトレイが搬送されるので、その分、装置全体が大型化する。しかも、トレイは一種の消耗品であるため、ランニングコストが掛かり、不経済である。特に、上述のカーボン繊維製のように高価なトレイが採用されると、より一層不経済である。さらに、基板のみならずトレイも加熱されるため、その分、無駄なエネルギが消費される。これもまた、ランニングコストの増大を招く。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりも小型であり、併せてランニングコストを低減することができる基板搬送装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、平板状の基板の主面を略水平に保ちながら当該基板を搬送すると共に当該基板の温度を制御する機能を備えた基板搬送装置であって、略水平かつ上向きの平面を有し、この平面の温度を一様に制御する温度制御手段を、具備する。そして、基板を搬送するための無端紐帯を有し、この無端紐帯の搬送側が当該平面、言わば温度制御面、に沿って延伸するように設けられた搬送手段をも、具備する。さらに、無端紐帯の搬送側の上面、言わば基板搬送面、が温度制御面よりも上方に位置する第1状態と、当該基板搬送面が温度制御面に連なると共に温度制御手段による温度制御を享受する第2状態と、のいずれかに、無端紐帯の状態を遷移させる状態遷移手段を、具備する。そして、基板を搬送するとき、無端紐帯は第1状態とされた上で走行され、当該基板の温度を制御するとき、無端紐帯は停止された上で第2状態とされる、というものである。
【0007】
この構成によれば、基板を搬送するとき、搬送手段の無端紐帯は、状態遷移手段によって、第1状態とされる。つまり、当該無端紐帯の搬送側の上面である基板搬送面が、温度制御手段の有する温度制御面よりも上方に位置する状態とされる。その上で、無端紐帯が走行され、この走行中の無端紐帯に、基板が搬入される。搬入された基板は、無端紐帯によって、搬送され、詳しくは温度制御面の上方を当該温度制御面に沿う方向に搬送される。この搬送過程において、基板が所定の停止位置に到達すると、無端紐帯が停止される。その上で、無端紐帯は、第1状態から第2状態へと遷移される。この第2状態において、無端紐帯の基板搬送面は、温度制御面と連なって、一連の水平面、言わば基板載置面、を形成する。そして、この基板載置面上に、基板が載置され、詳しくは当該基板の下側主面が密着される。さらに、基板搬送面は、温度制御手段によって、温度制御面と同様の温度に制御される。この結果、これら基板搬送面および温度制御面から成る基板載置面全体が、一様な温度に制御される。そして、この基板載置面を介して、基板全体もまた、一様な温度に制御される。この基板の温度制御が所期の通りに行われた後、無端紐帯は、改めて第2状態から第1状態へと遷移され、その上で、走行される。これによって、基板は、再び搬送され、最終的に搬出される。
【0008】
なお、本発明において、温度制御面に、平板状の均熱板が密着さてもよい。この均熱板は、自身の面内方向における熱を均一化するものであり、このような均熱板が温度制御面に密着されることで、当該温度制御面の熱が均熱板の面内方向に一様に拡散され、ひいては基板全体がより一様な温度に制御される。ただし、この場合、無端紐帯が第1状態にあるとき、当該無端紐帯の基板搬送面は、均熱板の上面よりも上方に位置するものとする。そして、無端紐帯が第2状態にあるとき、基板搬送面は、均熱板の上面と連なって、基板載置面を形成するものとする。
【0009】
また、無端紐帯の基板搬送面と温度制御手段との間の熱伝導性は、均熱板の上面と当該温度制御面との間の熱伝導性よりも高いことが、望ましい。このようにすれば、無端紐帯が第1状態から第2状態に遷移したときに、当該無端紐帯の基板搬送面が短時間で均熱板の上面と同様の温度となり、ひいては基板載置面全体が短時間で一様な温度に制御される。このことは、基板の温度制御の短縮化に、大きく貢献する。
【0010】
さらに、温度制御面は、その温度次第で膨張し、または収縮するため、このことによる当該温度制御面の変形(歪み)を防止するべく、複数に分割されるのが、望ましい。この場合、分割された各温度制御面間に隙間が形成されるので、この隙間部分において各温度制御面全体にわたっての温度の均一性が崩れることが、懸念される。しかし、この懸念は、当該隙間部分を覆うように各温度制御面全体にわたって上述の均熱板が設けられることで、払拭される。
【0011】
加えて、本発明においては、無端紐帯が第2状態にあるとき、当該無端紐帯の戻り側の下面に対して温度制御手段による温度制御を享受させる温度制御享受手段が、さらに設けられてもよい。即ち、上述したように、無端紐帯が第2状態にあるとき、当該無端紐帯の基板搬送面(搬送側の上面)は、温度制御手段によって温度制御される。このとき、無端紐帯のそれ以外の部分、例えば次に搬入される基板が載せられるであろう(つまり次に基板搬送面となるであろう)戻り側の下面、についても、温度制御手段によって言わば事前に温度制御されれば、当該次に搬入される基板の温度制御が短時間で実現される。このために、当該温度制御享受手段が、さらに設けられてもよい。
【0012】
本発明は、上述したPVD装置やCVD装置等の表面処理装置に適用可能である。この場合、無端紐帯が第2状態にあるときに、表面処理が行われる。そして、この表面処理は、基板の上側主面に対して施される。ところが、この表面処理過程において、表面処理の対象とされていない部分、つまり基板が載置されていない部分、に対しても、当該表面処理が施されることがある。このように基板の非載置部分に対して不本意な表面処理が施されるのを防止するべく、本発明では、当該非載置部分を遮蔽する遮蔽手段が、さらに設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明によれば、従来技術とは異なり、トレイを用いることなく基板を搬送すると共に当該基板全体を一様な温度に制御することができる。ゆえに、従来よりも、基板搬送装置全体を小型化し、併せてランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図2】同実施形態の基板搬送時の状態を示す図解図である。
【図3】同実施形態の基板加熱時の状態を示す図解図である。
【図4】図2の要部を拡大して示す図解図である。
【図5】図3の要部を拡大して示す図解図である。
【図6】図3の別の要部を拡大して示す図解図である。
【図7】同実施形態の設置例を示す図解図である。
【図8】図6とは別の例を示す図解図である。
【図9】図4および図5とは別の例を示す図解図である。
【図10】同実施形態における加熱ユニットの別例を示す図解図である。
【図11】同加熱ユニットの図10とはさらに異なる例を示す図解図である。
【図12】同実施形態が設置されたインライン式の表面処理装置の一例を示す図解図である。
【図13】図12の表面処理装置に設置される同実施形態の別例の要部を拡大して示す図解図である。
【図14】図13の構成が別の状態にあるときの図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、例えばインライン式の表面処理装置に適用される基板搬送装置10を例に挙げて、説明する。なお、このインライン式の表面処理装置においては、これを構成する成膜処理室やロードロック室等の個々の室に、本実施形態に係る基板搬送装置10が1台ずつ設置される。
【0016】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る基板搬送装置10は、矩形平板状の基板、例えば太陽電池用のガラス基板100、を被処理物として搬送すると共に加熱する機能を備えるものであり、当該基板100の載置台となる温度制御手段としての概略扁平台状の加熱ユニット100を有している。ここで、図1は、基板搬送装置10の平面図であり、図2は、当該基板搬送装置10によって特に基板100が搬送されるときの状態を示す図である。そして、図3は、基板搬送装置10によって基板100が加熱されるときの状態を示す図であり、この図3の状態においては、基板100の表面(上側主面)に所定の被膜を形成するための成膜処理も並行される。なお、図2(a)および図3(a)においては、図示の便宜上、加熱ユニット12を省略してある。
【0017】
加熱ユニット12は、水平な上面(加熱面)を有しており、この上面を一様に加熱するべく、図示しない加熱手段としてのヒータを内蔵している。そして、この加熱を速やかに実現するために、当該加熱ユニット12の上面を含む筐体は、比較的に熱伝導率の高い素材、例えばアルミニウム合金、によって形成されている。なお、このアルミニウム合金の熱伝導率は、例えば137[W・m−1・K−1]である。
【0018】
さらに、加熱ユニット12の上面には、厚さ寸法が2[mm]〜8[mm]の平板状の均熱板14が密着されている。この均熱板14は、加熱ユニット12の筐体(アルミニウム合金)よりも熱伝導率が低いものの、特にその面内方向(水平方向)の熱伝導率が面外方向(鉛直方向)の熱伝導率よりも高い、という性質を有しており、例えばカーボンファイバコンポジット材によって形成されている。なお、この均熱板14の面内方向熱伝導率は、例えば31[W・m−1・K−1]であり、面外方向(鉛直方向)の熱伝導率は、例えば4[W・m−1・K−1]である。このような均熱板14が加熱ユニット12の上面に密着されることで、当該加熱ユニット12の上面の熱が均熱板14の面内方向に一様に拡散され、ひいては当該熱が均熱板14の上面に一様に現れる。
【0019】
この均熱板14を含む加熱ユニット12には、当該均熱板14の上面から加熱ユニット12の下面に貫通し、かつ、当該均熱板14を含む加熱ユニット12の一方の端縁から他方の端縁に至り、さらに、互いに平行を成して延伸する、複数、例えば3つ、の直線状の貫通条16,16および16が設けられている。つまり、厳密に言えば、当該均熱板14を含む加熱ユニット12は、これら3つの貫通条16,16および16によって、4つに分割されている。そして、この4つに分割されたそれぞれの加熱ユニット12ごとに上述のヒータが内蔵されており、これらのヒータは(加熱ユニット12の上面全体の温度が一様になるように)互いに独立して制御可能とされている。なお、3つの貫通条16,16および16のうちの1つは、均熱板14を含む加熱ユニット12の中央をその長手方向に沿って延伸するように設けられている。そして、他の2つの貫通条16および16は、中央の貫通条16に関して互いに対称となるように、均熱板14を含む加熱ユニット12の側縁寄りに設けられている。また、これらの貫通条16,16および16によって4分割された均熱板14を含む加熱ユニット12は、図示しない固定部材によって、表面処理装置の筐体200、に固定されている。
【0020】
そして、それぞれの貫通条16に嵌装されるように、搬送手段としてのコンベヤ18が設けられている。具体的には、コンベヤ18は、いわゆるチェーン式のものであり、無端紐帯としてのローラチェーン20を有している。そして、このコンベヤ18は、ローラチェーン20の搬送側(キャリア側)が貫通条16の上方側において当該貫通条16に沿って延伸すると共に、ローラチェーン20の戻り側(リターン側)が貫通条16の下方側において当該貫通条16に沿って延伸するように設けられている。このため、ローラチェーン20を張架する1対のスプロケット22および24は、均熱板14を含む加熱ユニット12の両端縁よりも外側に設けられている。なお、ローラチェーン20は、いわゆるアタッチメント付きのものであり、このアタッチメントとして、当該ローラチェーン20の走行方向(連結方向)を横切る断面が概略T字状のキャリア26,26,…が設けられている。このキャリア26,26,…は、均熱板14よりも熱伝導率の高い素材によって形成されており、例えば加熱ユニット12の筐体と同じアルミニウム合金製とされている。
【0021】
各コンベヤ18,18および18は、互いに共通の図示しない駆動手段としてのモータによって一括して駆動される。このため、当該モータの回転軸に結合された駆動軸28が、各コンベヤ18,18および18の駆動側スプロケット22,22および22の中心を通る直線と平行を成すように、当該直線の斜め下方に設けられている。そして、この駆動軸28には、各コンベヤ18,18および18に対応する3つの同軸スプロケット30,30および30が取り付けられており、それぞれの同軸スプロケット30に、駆動力伝達手段としての駆動用チェーン32を介して、対応するコンベヤ18の駆動側スプロケット22が連結されている。なお、それぞれのコンベヤ18の従動側スプロケット24には、これに駆動側スプロケット22から離れる方向の外力を加えることでローラチェーン20に一定の張力を付与するための自動テンション機構34が付属されている。これは、ローラチェーン20の周囲温度が変化することに伴う当該ローラチェーン20の伸縮を吸収するためである。また、駆動側スプロケット22と従動側スプロケット24との間には、この間を走行するローラチェーン20を案内するためのガイドフレーム36が設けられている。
【0022】
それぞれのコンベヤ18は、状態遷移手段としての昇降ユニット38によって、垂直方向に変位可能な状態に支持されている。具体的には、昇降ユニット38は、コンベヤ18の数の整数倍、例えば2倍、の合計6つの支持機構40,40,…を有している。そして、それぞれのコンベヤ18は、2つの支持機構40および40によって支持されており、詳しくは、ガイドフレーム36の適当な2箇所において、適当な2つの支持部材42および42を介して、当該2つの支持機構40および40のリフトピン40aおよび40aの先端に固定されている。また、それぞれの支持機構40は、真空フィールドスルー40bを有しており、この真空フィードスルー40bを介して、それぞれのリフトピン40aの基部(下端側)が、表面処理装置の筐体(底板)200の外部に引き出され、当該外部に設けられた駆動力変換伝達機構44に結合されている。駆動力変換機構44は、図示しないラック・アンド・ピニオンを内蔵しており、駆動源としての減速機付きモータ46の回転駆動力を直線駆動力に変換して、各リフトピン40a,40a,…に伝達する。つまり、各リフトピンリフトピン40a,40a,…は、それぞれに共通の1台のモータ46によって、一括して駆動される。言い換えれば、各コンベヤ18,18,…は、当該モータ46によって、一括して昇降される。
【0023】
さらに、加熱ユニット12の下面には、それぞれの貫通条16の一側縁に沿って延伸するように、温度制御享受手段としての合計3つのチェーンホルダ48,48および48が設けられている。これらのチェーンホルダ48,48および48は、各ローラチェーン20,20および20の戻り側のキャリア26,26,…の下面に対向する水平のホルダ面48a,48aおよび48a(後述する図4および図5参照)を有しており、このため、当該戻り側のキャリア26,26,…の走行方向を横切る断面が概略L字状となるように形成されている。なお、これらのチェーンホルダ48,48および48は、熱伝導率が比較的に高い素材、例えば上述したアルミニウム合金製、とされている。また、図2(a)および図3(a)から分かるように、昇降ユニット38の各支持機構40,40,…が設けられている部分、言い換えれば支持部材42,42,…と干渉する部分、については、当該チェーンホルダ48は除外されている。
【0024】
加えて、均熱板14を含む加熱ユニット12の上方には、遮蔽手段としての昇降式のシールドプレート50が設けられている。このシールドプレート50は、基板100の外周よりも少し小さい内周の矩形の開口窓50aを有しており、この開口窓50aが均熱板14の上面と対向するように、上述した昇降ユニット38とは別の図示しない昇降機構によって、垂直方向に変位可能な状態に支持されている。なお、このシールドプレート50は、耐熱性および耐腐食性の高い素材、例えばステンレスまたは上述したカーボンファイバコンポジット材、によって形成されている。また、図示しないが、このシールドプレート50には、その機械的強度を向上させるためのリブ等の適当な補強策が施されている。
【0025】
このように構成された本実施形態の基板搬送装置10は、加熱ユニット12(ヒータ)が通電された上で、次のように動作する。
【0026】
まず、図2に示すように、シールドプレート50が所定の上昇位置にまで上昇されると共に、各コンベヤ18,18および18もまた所定の上昇位置にまで上昇される。なお、図2においては、基板100が記載されているが、この時点では、まだ当該基板100は存在しない。また、このとき、特に図2(a)に示すように、それぞれの駆動用チェーン28は、適度に張架された状態にある。
【0027】
この状態において、各コンベヤ18,18および18が駆動され、詳しくは図2(a)においてそれぞれの駆動側スプロケット22が時計方向に回転される。これによって、各コンベヤ18,18および18のローラチェーン20,20および20の搬送側が、図2(a)に矢印300で示す方向(図2(a)において左側から右側に向かう方向)に走行する。そして、各コンベヤ18,18および18の上流側に当たる方向(図2(a)における左側の方向)から、基板100が、その主面を水平にした状態で、当該各コンベヤ18,18および18上に搬入され、詳しくは各ローラチェーン20,20および20の搬送側のキャリア26,26,…上に載せられる。搬入された基板100は、各コンベヤ18,18および18によって、当該各コンベヤ18,18および18の下流側に当たる方向(図2(a)において右側の方向)に搬送され、詳しくは均熱板14の上方を当該均熱板14の上面に沿って搬送される。この基板100の搬送時の状態、特にチェーンホルダ48を含む部分の状態を、図4に拡大して示す。
【0028】
この図4に示すように、基板100は、それぞれのローラチェーン20の搬送側のキャリア26,26,…によって、均熱板14の上方に持ち上げられた状態で搬送される。このときの均熱板14の上面と基板100の下面との間隔Daは、当該基板100の材質や寸法等を含む基板搬送装置10全体の規模や用途によって異なるが、例えば5[mm]〜10[mm]である。なお、図4においては、戻り側のキャリア26,26…の下面と上述したチェーンホルダ48のホルダ面48aとが互いに離れた状態にあり、言わば当該戻り側のキャリア26,26,…が宙に浮いた状態にあるが、実際には、当該戻り側のキャリア26,26…の下面とチェーンホルダ48のホルダ面48aとは互いに接触した状態にある。これは、戻り側のキャリア26,26,…を含む当該戻り側のローラチェーン20が自重によって下方に撓むからである。つまり、戻り側のキャリア26,26,…は、その下面をチェーンホルダ48のホルダ面48aに接触させた状態で走行(摺動)する。また、図4から分かるように、それぞれの貫通条16の上方側開口部周縁には、後述するように搬送側のキャリア26,26,…を収容するための凹状の窪み52が形成されている。また、この窪み52の底部に当たる部分は、加熱ユニット12の筐体が露出した状態にある。
【0029】
この基板100の搬送過程において、当該基板100が所定の停止位置に到達すると、詳しくは図2(a)に示す位置に到達すると、各コンベヤ18,18および18が停止される。その上で、各コンベヤ18,18および18は、図3に示すように下降される。これによって、図5に拡大して示すように、それぞれのコンベヤ18の搬送側のキャリア26,26,…が上述した窪み52に収容され、当該搬送側のキャリア26,26,…の上面と均熱板14の上面とが連なって、一連の基板載置面54が形成される。そして、この基板載置面54上に、基板100が載置され、詳しくは当該基板100の下側主面が密着される。なお、このとき、図3(a)に示すように、それぞれの駆動用チェーン28が撓むが、この撓みは微少であるので、当該撓みによって駆動用チェーン28が外れることはない。
【0030】
このように、搬送側のキャリア26,26,…が窪み52に収容されることによって、当該窪み52の底部において、搬送側キャリア26,26,…と加熱ユニット12とが直接的に接触する。これにより、搬送側のキャリア26,26,…は、均熱板14と同様に加熱される。しかも、当該搬送側を含む全てのキャリア26,26,…は、熱伝導率の高いアルミニウム合金製であるので、比較的に短時間で均熱板14と同程度の温度に加熱される。この結果、これら搬送側のキャリア26,26,…の上面と均熱板14の上面とから成る基板載置面54全体が、比較的に短時間で一様な温度となる。そして、この基板載置面54を介して、基板100全体が一様に加熱される。なお、搬送側のキャリア26,26,…に加熱ユニット12からの熱が極力早く伝わるように、これら両者の接触寸法La(接触面積)は極力大きくなるように設計されている。一方、搬送側キャリア26,26,…と窪み52との間には、必然的に多少の隙間56が形成されるが、この隙間56の寸法Lbは極力小さくなるように設計されている。
【0031】
さらに、この図5(図3)に示す状態においては、戻り側のキャリア26,26,…の下面が、チェーンホルダ48のホルダ面48aに対して確実に接触する(そのように設計されている)。つまり、戻り側のキャリア26,26,…の下面は、チェーンホルダ48を介して、加熱ユニット12と言わば熱的に結合される。従って、戻り側のキャリア26,26,…の下面もまた、搬送側のキャリア26,26,…の上面と同様に、当該加熱ユニット12によって加熱される。これは、後述するように、次に搬入される基板100を加熱するのに好都合であり、そのための事前の処置である。なお、上述の如く、図4(図2)に示した状態においても、戻り側のキャリア26,26,…の下面は、チェーンホルダ48のホルダ面48aに接触した状態にあるので、当該チェーンホルダ48を介して、加熱ユニット12からの熱を受ける。
【0032】
そしてさらに、上述したシールドプレート50が、所定の下降位置、詳しくは基板100の上面すれすれの位置、にまで下降される。このとき、基板100の成膜対象となる部分、つまり当該基板100の上側主面のみが、シールドプレート50の開口窓50aを介して、上方に露出され、それ以外の部分については、当該シールドプレート50によって遮蔽されるように、これら基板100およびシールドプレート50の位置関係が設定されている。なお、シールドプレート50の開口窓50aの内周は、基板100の外周よりも少し小さいので、図6に拡大して示すように、基板100の外周縁近傍は、当該シールドプレート50の開口窓50aの内周縁近傍によって覆われる。このシールドプレート50と基板100とが重なる部分の寸法Lcは、当然に小さい方が好ましく、例えば基板100の長手方向および短辺方向それぞれにおいて当該基板100の寸法の1/100以下とされ、より好ましくは1/200とされる。これを数値に置き換えると、当該重なり部分の寸法Lcは、10[mm]以下が好ましく、より好ましくは5[mm]以下とされる。また、図6においては、図示の便宜上、シールドプレート50の下面と基板100の上面とが互いに接触した状態にあるが、実際には、上述からも分かるように、これら両者間は非接触であり、詳しくは当該両者間には1[mm]〜2[mm]程度の隙間が設けられている。このように両者間に隙間が設けられているのは、当該両者が接触することによる基板100の破損を防止するためである。
【0033】
このようにして基板100の上側主面のみが露出され、それ以外の部分についてはシールドプレート50によって覆われた状態で、成膜処理が行われる。これによって、成膜対象である基板100の上側主面のみに当該成膜処理が施され、それ以外の部分に言わば不本意な成膜処理が施されるのが防止される。
【0034】
また、この不本意な成膜処理をより確実に防止するべく、加熱ユニット12の下面側にも、シールドプレート50とは別のプレート58が設けられている。この別のプレート58は、加熱ユニット12の下面を恒常的に覆うように設けられており、これによって、当該加熱ユニット12の下面への不本意な成膜処理が防止され、特に成膜粒子の回り込みが防止される。この別のプレート58も、シールドプレート50と同様、ステンレスやカーボンファイバコンポジット材等の耐熱性および耐腐食性の高い素材で形成されている。なお、上述した図2および図3においては、図示の便宜上、当該別のプレート58を省略してある。
【0035】
この基板100を加熱しながらの当該基板100の成膜処理が所期の通り行われた後、シールドプレート50が上述した所定の上昇位置にまで上昇され、続いて、各コンベヤ18,18および18が所定の上昇位置にまで上昇される。つまり、図2に示した状態に戻される。その上で、各コンベヤ18,18および18が改めて駆動され、これにより、基板100が再び搬送され、最終的に各コンベヤ18,18および18上から搬出される。
【0036】
以上のように、本実施形態の基板搬送装置10によれば、上述した従来技術とは異なり、トレイを用いることなく基板100を搬送することができると共に、当該基板100全体を一様に加熱することができる。ゆえに、従来技術に比べて、基板搬送装置10全体を小型化し、併せてランニングコストを低減することができる。
【0037】
なお、上述したように、本実施形態の基板搬送装置10は、表面処理装置を構成する複数の室に1台ずつ設置される。このとき、或る基板搬送装置10と、その前段の基板搬送装置10とが、図7に示すような位置関係とされることで、基板100の連続処理が効果的に行われる。
【0038】
即ち、基板100の搬送方向300における加熱ユニット12の有効寸法Ldは、当然に同方向300における基板100の寸法Leよりも大きい(La>Le)。そして、加熱ユニット12に結合されたそれぞれのチェーンホルダ48のホルダ面48aの当該搬送方向300における有効寸法Lfもまた、同方向300における基板100の寸法Leよりも大きく(Lf>Le)、例えば加熱ユニット12の同方向300における有効寸法Ldと略等しい(Lf≒Ld)。ここで、或る基板搬送装置10の加熱ユニット12の有効寸法Ldの終端から当該或る基板搬送装置10のホルダ面48aの有効寸法Lfの始端までの折り返し部分の距離をLgとし、併せて、当該或る基板搬送装置10によって搬送されている基板100の後方端から前段の基板搬送装置10によって搬送されている基板(つまり或る基板搬送装置10に対して次に搬入される基板)100の前方端までの距離をLhとすると、折り返し部分の距離Lgは、基板間距離Lhよりも小さく(Lg<Lh)なるように設定される。さらに、これら折り返し部分の距離Lgと基板間距離Lhとの差分(Lh−Lg)をホルダ面48aの有効寸法Lfから差し引いた値(Lf−(Lh−Lg))が、基板100の寸法Leよりも大きく(Lf−(Lh−Lg)>Le)なるように設定される。このような位置関係とされることで、或る基板搬送装置10に対して次の基板100が搬入される際に、当該或る基板搬送装置10において、チェーンホルダ48を介して事前に加熱された戻り側のキャリア26,26,…に当該次の基板100が載置されることになり、当該次の基板100の加熱がスムーズに行われる。
【0039】
また、本実施形態においては、図6に示したように、シールドプレート50の開口窓50aの内周縁近傍が、基板100の外周縁近傍に重なるように、これら両者の位置関係が設定されたが、これに限らない。例えば、シールドプレート50の開口窓50aの内周が、基板100の外周よりも少し大きめに設定されることで、図8に拡大して示すように、当該シールドプレート50と基板100とが重ならないようにしてもよい。この場合、シールドプレート50の開口窓50aの内周縁と、基板100の外周縁と、の間に隙間が形成されるが、この隙間部分の寸法Lkは、当然に小さい方が好ましい。例えば、基板100の長手方向および短辺方向それぞれにおいて、この隙間部分の寸法Lkは、当該基板100の寸法の1/200以下とされるのが好ましく、より好ましくは1/500とされる。これを数値に置き換えると、当該隙間部分の寸法Lkは、5[mm]以下が好ましく、より好ましくは2[mm]以下とされる。
【0040】
さらに、それぞれのコンベヤ18のキャリア26,26,…について、図9に示すように、テーパ26aを設けると共に、搬送側のキャリア26,26,…を収容するための窪み52についても、当該キャリア26,26,…のテーパ26aに合致するようにテーパ状に形成されてもよい。このようにすれば、搬送側のキャリア26,26,…の窪み52への収容がスムーズに行われる。また、当該搬送側のキャリア26,26,…が窪み52に収容されているときのこれら両者間の隙間寸法Lb’も縮小化される。併せて、両者間の接触寸法La’が増大するので、搬送側のキャリア26,26,…の加熱がより効果的に行われる。
【0041】
ところで、加熱ユニット12の筐体は、上述したようにアルミニウム合金製であるが、このアルミニウム合金の熱膨張率(線膨張率)は、例えば22[×10−6/K]〜24[×10−6/K]と比較的に大きいため、当該加熱ユニット12の筐体が熱膨張によって変形することが懸念される。この懸念を払拭するために、当該加熱ユニット12は、さらに分割されてもよく、例えば図10に示すように12分割されてもよい。この場合、分割された各ブロック間(各貫通条16,16および16を除く)の距離は、加熱ユニット12の寸法や加熱温度,筐体の熱膨張率(素材)等によって異なるが、例えば5[mm]〜10[mm]とされる。また、このように各ブロック間に隙間が形成されることによって、この隙間部分で温度が低下することが懸念されるが、均熱板14については、(各貫通条16,16および16を除いて)非分割とすることによって、この懸念は払拭され、つまり当該隙間部分での温度の低下が補償される。なお、均熱板14の素材であるカーボンファイバコンポジット材の熱膨張率は、極めて小さく、例えば面内方向で0.08[×10−6/K]であり、面外方向で5.8[×10−6/K]である。従って、加熱ユニット12とは異なり、この均熱板14が実用上問題となる程度に熱変形することはない。状況によっては、加熱ユニット12は、より細かく分割されてもよく、例えば図11に示すように22分割されてもよい。
【0042】
また、加熱ユニット12の筐体は、アルミニウム合金製ではなく、ステンレス等の当該アルミニウム合金以外の素材によって形成されてもよい。それぞれのローラチェーン20のキャリア26,26,…についても、アルミニウム合金製に限らず、ステンレス等の他の金属製とされてもよい。特に、基板100を短時間で加熱する必要がない場合には、当該キャリア26,26,…は、セラミックスや上述したカーボンファイバコンポジット材等のような比較的に比熱容量の大きい素材によって形成されてもよい。さらに、シールドプレート50および加熱ユニット12の下面側に設けられた別のプレート58についても、ステンレス以外の素材によって形成されてもよい。
【0043】
そして、均熱板14についても、カーボンファイバコンポジット材に限らず、他の素材によって形成されてもよい。ただし、この均熱板14については、比較的に比熱容量の大きい素材によって形成されるのが好ましく、より好ましくは面内方向の熱伝導率が面外方向の熱伝導率よりも大きい素材によって形成されるのがよい。
【0044】
さらに、本実施形態においては、1台の基板搬送装置10に3台のコンベヤ18,18および18が設けられ、これら3台のコンベヤ18,18および18が、互いに共通の1台のモータによって駆動されることとしたが、これに限らない。即ち、各コンベヤ18,18および18は、互いに別々のモータによって駆動されてもよい。この場合、各コンベヤ18,18および18は、互いに同期しながら駆動される。また、コンベヤ18の台数は、3台に限らず、基板100を含む基板搬送装置10の規模に応じて適宜の台数、実用的には複数台、とされ、例えば最大で5台程度とされる。勿論、このコンベヤ18の台数に応じて、当該コンベヤ18が設置される貫通条16の数も変わり、言い換えれば均熱板14を含む加熱ユニット12の分割数も変わる。
【0045】
加えて、それぞれのコンベヤ18を構成するキャリア26,26,…については、上記移した概略T字状のものに限らず、適宜の形状のものが採用されてもよい。また、当該コンベヤ18は、チェーン式のものに限らず、無端紐帯として無端ベルトを採用するベルト式のものであってもよい。この場合、特に当該無端ベルトは、耐熱性および耐腐食性を有するものであることが、肝要である。
【0046】
そして、各コンベヤ18,18および18を昇降させるための昇降ユニット38は、モータ46を駆動源とするモータ式のものに限らず、油圧式等の他の方式を採用するものであってもよい。このことは、シールドプレート50を昇降させるための昇降機構についても同様である。
【0047】
また、本実施形態の基板搬送装置10は、図7に示したように、複数台が直列に設置された状態で運用されるが、この場合、或る基板搬送装置10の搬入側が、その前段の基板搬送装置10の搬出側よりも若干下方に位置するように設置されるのが、望ましい。このようにすれば、これら両者間で基板100が受け渡される際に、当該基板100に(その薄さに起因する)撓みが生じたとしても、当該基板100の受け渡しがスムーズに行われる。
【0048】
さらに、図3に示した状態で基板100が加熱される際に、当該基板100の上側主面に対しても、図示しない別の手段によって熱が加えられるようにしてもよい。特に、成膜処理が行われない予備加熱用のロードロック室等においては、基板100の上方に当該別の手段として例えば熱(赤外線)放射手段が設けられ、この熱放射手段によって基板100の上側主面が加熱されるようにしてもよい。なお、当該ロードロック室等の成膜処理室以外の室においては、シールドプレート50および下側のプレート58は不要である。
【0049】
そして、それぞれのコンベヤ18(ローラチェーン20)の折り返し部分についても、熱放射手段等の適宜の加熱手段によって熱が加えられるようにしてもよい。特に、図3(a)に示したように、ローラチェーン20の戻り側のうち、チェーンホルダ48(ホルダ面48a)が除外されている部分についても同様に、図示しない適宜の手段によって加熱されるようにしてもよい。
【0050】
上述したように、本実施形態の基板搬送装置10は、インライン式の表面処理装置に適用されるが、ここで、例えば、当該インライン式の表面処理装置として、図12に示すものを具体的に想定する。この図12に示す表面処理装置によれば、基板100(同図では省略)は、まず、大気に開放された搬入ステージ500に搬入される。そして、この搬入ステージ500に搬入された基板100は、同図に矢印300で示すように、当該搬入ステージ500から搬入側ロードロック室502へと搬送される。搬入側ロードロック室502への基板100の搬送(搬入)が完了すると、当該搬入側ロードロック室502は、真空引き(真空置換)される。そして、この真空引きされた搬入側ロードロック室502において、基板100は、予備加熱される。さらに、この予備加熱された基板100は、搬入側ロードロック室502から成膜処理室504へと搬送される。成膜処理室504は、予め搬入側ロードロック室502と同程度に真空引きされており、この成膜処理室504への基板100の搬送が完了すると、当該成膜処理室504は、さらに高真空状態にまで真空引きされる。そして、この高真空状態とされた成膜処理室504において、基板100は、加熱されながら所定の成膜処理を施される。この成膜処理が完了すると、基板100は、成膜処理室504から搬出側ロードロック506室へと搬送される。搬出側ロードロック室506もまた、予め真空引きされており、この搬出側ロードロック室506への基板100の搬送が完了すると、その時点から一定の冷却期間が置かれる。そして、この冷却期間の経過後、搬出側ロードロック室506は、大気に開放され、当該搬出側ロードロック室506から搬出ステージ508へと基板100が搬送される。搬出ステージ508に搬送された基板100は、当該搬出ステージ508から搬出され、次工程に移される。
【0051】
このように、図12の表面処理装置によれば、基板100は、搬入側ロードロック室502および成膜処理室504において、高温に加熱され、それ以外の搬入ステージ500,搬出側ロードロック室506および搬出ステージ508においては、常温とされる。そして、厳密に言えば、本実施形態で説明した基板搬送装置10は、成膜処理室504のみに設置され、それ以外の室、例えば搬入側ロードロック室502には、図13および図14に示すような熱絶縁手段としての熱絶縁アダプタ60,60,…を有する基板搬送装置10aが、設置される。
【0052】
即ち、搬入側ロードロック室502には、その前段の搬入ステージ500から、常温の基板100が搬入されるため、例えば、当該搬入側ロードロック室502に本実施形態で説明した基板搬送装置10が設置される、と仮定すると、常温の基板100は、高温に加熱されたキャリア26,26,…上に載せられることになる。すると、基板100に対して熱的ストレスが掛かり、この熱的ストレスによって、当該基板100が変形したり破損したりする等の不都合が生じる。この不都合を回避するべく、搬入側ロードロック室502に設置される基板搬送装置10aとしては、図13および図14に示すように、キャリア26,26,…上に適宜のピッチLpで設けられた半球状の絶縁アダプタ60,60,…を有するものが、採用される。なお、この絶縁アダプタ60,60,…は、熱伝導率が比較的に低く、かつ、耐摩耗性が比較的に高い素材、例えばステンレスやセラミックス、によって形成される。ただし、極端に高い耐熱性が要求されない場合には、当該絶縁アダプタ60,60,…として、樹脂製のものも採用可能である。ピッチLpは、基板100を含む基板搬送装置10aの規模によって変わり、例えば75[mm]〜300[mm]の範囲内で適宜に設定される。
【0053】
このような絶縁アダプタ60,60,…が設けられることによって、図13に示す基板100の搬送時に、当該基板100は、搬送側のキャリア26,26,…の上面には直接接触せずに、絶縁アダプタ60,60,…によって部分的(点状)に接触した状態で、言い換えれば搬送側のキャリア26,26,…の上面と熱的(熱伝導的)に絶縁された状態で、搬送される。従って、常温の基板100に対する熱的ストレスが軽減される。また、図14に示す基板100の加熱時においても、当該基板100は、搬送側のキャリア26,26,…の上面および均熱板14の上面から成る基板載置面54とは直接接触せず、当該基板載置面54との間に絶縁アダプタ60,60,…の高さ寸法に応じた間隔Dbを置いた位置にある。この間隔Dbもまた、基板100を含む基板搬送装置10aの規模によって変わり、例えば5[mm]〜10[mm]の範囲内で適宜に設定される。このような間隔Dbを置くことで、基板載置面54の熱が基板100に対して直接的に伝導することはなく、熱輻射によって言わば間接的に伝わるようになる。ゆえに、基板100の加熱時にも、当該基板100への熱的ストレスが軽減される。
【0054】
なお、絶縁アダプタ60,60,…は、半球状に限らず、円錐状や角錐状のもの、或いは山脈状のものでもよく、要するに基板100との接触面積を制限しつつ当該基板100を確実に支持し得る突起状のものであればよい。また、絶縁アダプタ60,60,…は、キャリア26,26,…に対して任意に着脱可能なものであってもよいし、当該キャリア26,26,…と一体形成されたものであってもよい。ただし、絶縁アダプタ60,60,…に関しては、上述の如く比較的に低い熱伝導率が要求されるのに対して、キャリア26,26,…に関しては、比較的に高い熱伝導率を要求されるので、これら両者が一体形成される場合には、その時々の状況に応じて適宜の素材が選定される。さらに、上述したように、この搬入側ロードロック室502用の基板搬送装置10aにおいては、シールドプレート50および下側のプレート58は不要である。また、戻り側のキャリア26,26,…を積極的に加熱する必要がないので、当該戻り側のキャリア26,26,…を支持するためのチェーンホルダ48も不要である。このことから、図13および図14においては、上述の図4および図5とは異なり、チェーンホルダ48が記載されておらず、支持部材42を含む部分が示されている。
【0055】
図12に戻って、搬出側ロードロック室506に注目すると、この搬出側ロードロック室506は常温であるのに対して、その前段の成膜処理室504からは高温に加熱された基板100が搬入される。従って、詳しい図示は省略するが、この搬出側ロードロック室506に設置される基板搬送装置10bとしても、搬入側ロードロック室502用の基板搬送装置10aと同様に、キャリア26,26,…上に絶縁アダプタ60,60,…が設けられたものが採用される。これによって、高温の成膜処理室504から常温の搬出側ロードロック室506に基板100が搬送される際の、言い換えれば互いの温度環境が異なる2つの室間で基板100が受け渡される際の、当該基板100に対する熱的ストレスが軽減される。なお、この搬出側ロードロック室506用の基板搬送装置10bにおいても、シールドプレート50および下側のプレート58が不要であり、また、チェーンホルダ48も不要である。併せて、均熱板14を含む加熱ユニット12も不要であり、これに代えて、単なる載置台が設けられてもよく、さらに、基板100を強制的に冷却するための水冷式等の冷却ユニットが設けられてもよい。このような強制冷却ユニットが設けられる場合に、絶縁アダプタ60,60,…の効果がより一層発揮される。
【0056】
搬入ステージ500に設置される基板搬送装置10cとしては、基板100を搬送するためだけに特化したものでよい。つまり、当該搬入ステージ500用の基板搬送装置10cに関しては、加熱ユニット12或いは強制冷却ユニットは不要であり、また、シールドプレート50,下側プレート58およびチェーンホルダ48も不要である。なお、絶縁アダプタ60,60,…については、設けられても、そうでなくてもよい。搬出ステージ508に関しても、同様の基板搬送装置10cが設置される。
【0057】
この図12に示すインライン式の表面処理装置は、一例であり、この構成に限定されない。例えば、搬入側ロードロック室502とは別に予備加熱専用の室が設けられてもよく、また、搬出側ロードロック室506とは別に冷却専用の室が設けられてもよい。いずれにせよ、それぞれの室の性質に応じて、適宜の基板搬送装置10,10a,10bおよび10cが設置される。
【0058】
本実施形態においては、インライン式の表面処理装置を例に挙げたが、これに限らない。即ち、基板100を加熱または冷却する機能を有すると共に、当該基板100を搬送する装置であれば、本発明を適用することができる。そして、基板100として、太陽電池用のガラス基板を例に挙げたが、それ以外のガラス基板や、半導体基板等の当該ガラス基板以外の各種基板が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 基板搬送装置
12 加熱ユニット
18 コンベヤ
20 ローラチェーン
46 昇降ユニット
100 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板の主面を略水平に保ちながら該基板を搬送すると共に該基板の温度を制御する機能を備えた基板搬送装置であって、
略水平かつ上向きの平面を有し該平面の温度を一様に制御する温度制御手段と、
上記基板を搬送するための無端紐帯を有し該無端紐帯の搬送側が上記平面に沿って延伸するように設けられた搬送手段と、
上記搬送側の上面が上記平面よりも上方に位置する第1状態と該搬送側の上面が該平面に連なると共に上記温度制御手段による温度制御を享受する第2状態とのいずれかに上記無端紐帯の状態を遷移させる状態遷移手段と、
を具備し、
上記基板を搬送するとき上記無端紐帯は上記第1状態とされた上で走行され、該基板の温度を制御するとき該無端紐帯は停止された上で上記第2状態とされる、
基板搬送装置。
【請求項2】
上記平面に密着され面内方向の熱を均一化する平板状の均熱板をさらに備え、
上記無端紐帯が上記第1状態にあるとき上記搬送側の上面は上記均熱板の上面よりも上方に位置し、該無端紐帯が上記第2状態にあるとき該搬送側の上面は該均熱板の上面に連なる、
請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
上記搬送側の上面と上記温度制御面との間の熱伝導性は上記均熱板の上面と該温度制御面との間の熱伝導性よりも高い、
請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
上記平面は複数に分割されている、
請求項2または3に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
上記無端紐帯が上記第2状態にあるとき該無端紐帯の戻り側の下面に対して上記温度制御手段による温度制御を享受させる温度制御享受手段をさらに備える、
請求項1ないし4のいずれかに記載の基板搬送装置。
【請求項6】
上記無端紐帯が上記第2状態にあるとき上記基板の非載置部分を遮蔽する遮蔽手段をさらに備える、
請求項1ないし5のいずれかに記載の基板搬送装置。
【請求項1】
平板状の基板の主面を略水平に保ちながら該基板を搬送すると共に該基板の温度を制御する機能を備えた基板搬送装置であって、
略水平かつ上向きの平面を有し該平面の温度を一様に制御する温度制御手段と、
上記基板を搬送するための無端紐帯を有し該無端紐帯の搬送側が上記平面に沿って延伸するように設けられた搬送手段と、
上記搬送側の上面が上記平面よりも上方に位置する第1状態と該搬送側の上面が該平面に連なると共に上記温度制御手段による温度制御を享受する第2状態とのいずれかに上記無端紐帯の状態を遷移させる状態遷移手段と、
を具備し、
上記基板を搬送するとき上記無端紐帯は上記第1状態とされた上で走行され、該基板の温度を制御するとき該無端紐帯は停止された上で上記第2状態とされる、
基板搬送装置。
【請求項2】
上記平面に密着され面内方向の熱を均一化する平板状の均熱板をさらに備え、
上記無端紐帯が上記第1状態にあるとき上記搬送側の上面は上記均熱板の上面よりも上方に位置し、該無端紐帯が上記第2状態にあるとき該搬送側の上面は該均熱板の上面に連なる、
請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
上記搬送側の上面と上記温度制御面との間の熱伝導性は上記均熱板の上面と該温度制御面との間の熱伝導性よりも高い、
請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
上記平面は複数に分割されている、
請求項2または3に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
上記無端紐帯が上記第2状態にあるとき該無端紐帯の戻り側の下面に対して上記温度制御手段による温度制御を享受させる温度制御享受手段をさらに備える、
請求項1ないし4のいずれかに記載の基板搬送装置。
【請求項6】
上記無端紐帯が上記第2状態にあるとき上記基板の非載置部分を遮蔽する遮蔽手段をさらに備える、
請求項1ないし5のいずれかに記載の基板搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−69642(P2012−69642A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211951(P2010−211951)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000192567)神港精機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000192567)神港精機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
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