説明

基板搬送装置

【課題】走行中の基板を基板停止位置で停止させる時間を短くすることができ、タクトタイムが無駄に長くなるのを抑えることができる基板搬送装置を提供する。
【解決手段】基板を搬送する搬送部と、前記搬送部を駆動させることにより、基板を加速、定速、減速走行させるとともに、基板を特定の割合で減速させる設定減速度が設定可能な搬送駆動部と、前記搬送駆動部を制御する駆動制御部と、を備える基板搬送装置であって、前記搬送部には、走行中の基板の位置を検知する位置センサーと、走行中の基板を停止させる基板停止位置が設定されており、前記駆動制御部は、前記基板停止位置と設定減速度とから減速開始遅延時間を演算し、前記位置センサーにより定速走行中の基板が検知された後、減速開始遅延時間だけ基板を定速で走行させ、減速開始遅延時間経過後、減速を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を搬送及び停止させる基板搬送装置に関するものであり、特に基板を所定方向に搬送し、定速走行中の基板を所定の位置で停止させることができる基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)のフォトリソグラフィの技術分野では、基板に所定処理を行う基板処理装置から次工程における基板処理装置への基板の搬送に基板搬送装置が使用されている。例えば、下記特許文献1に示すように、各基板処理装置の間をローラを備える基板搬送装置により処理中の基板が搬送される。このような基板搬送装置は、ローラ等の基板を搬送する搬送部と、ローラを駆動させるサーボモータ等の搬送駆動部と、搬送駆動部を制御する駆動制御部とを備えており、駆動制御部に制御されるサーボモータによりローラの回転が制御されることにより、基板を所定の方向に搬送し、また所定の位置で停止させることができるようになっている。
【0003】
具体的には、上流側の基板処理装置から基板が排出されてローラ上に基板が載置されると、駆動制御部によりサーボモータが駆動制御されることにより、基板が所定速度に達するまで加速される。そして、設定された速度に達するとその設定速度で定速運転が行われ、下流側の基板処理装置に近づくと減速され、設定された基板停止位置で停止される。
【0004】
通常、基板を所定の基板停止位置で停止させる場合には、搬送部に減速開始センサと停止センサとを用いて行われる。すなわち、減速開始センサと停止センサとを適当な位置に配置されており、設定された速度(第1設定速度)で定速走行している基板に減速開始センサが反応することにより基板停止位置で確実に無理なく停止できる速度(第2設定速度)まで減速させる。そして、第2設定速度で定速走行している基板に停止センサが反応することによりさらに減速させ基板停止位置に停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−138498
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記基板搬送装置では、タクトタイムが長くなってしまうという問題があった。すなわち、減速開始センサと停止センサとは、基板停止位置に対して適当に設定されるため、タクトタイムが長くなる傾向がある。具体的には、それぞれのセンサを設定し、実際に走行状態の基板を停止させることにより基板停止位置に無理なく止まることを確認して設定される。通常、基板停止位置には、ストッパが設けられており、基板の走行速度が高すぎると基板がストッパに衝突し、基板を損傷する虞がある。そのため、減速開始センサ及び停止センサは、基板の走行速度が十分に落とせる距離を確保して設定される傾向があり、本来、第1設定速度で走行させても基板を停止できる区間であっても、減速開始センサを設置して早めに第2設定速度で走行させる傾向がある。その結果、第1設定速度で走行させてもよい区間を第1設定速度より遅い第2設定速度で走行させることになり、タクトタイムを無駄に長くしてしまうという問題がある。
【0007】
また、基板は一度加速させた後、減速するまで定速走行させるが、この定速走行の速度の設定が変更されると、減速開始センサと停止センサの位置を再度設定し直す必要がある。すなわち、定速走行の速度を変更すると段取り時間が長くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、走行中の基板を基板停止位置で停止させる時間を短くすることができ、タクトタイムが無駄に長くなるのを抑えることができる基板搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の基板搬送装置は、基板を搬送する搬送部と、前記搬送部を駆動させることにより、基板を加速、定速、減速走行させるとともに、基板を特定の割合で減速させる設定減速度が設定可能な搬送駆動部と、前記搬送駆動部を制御する駆動制御部と、を備える基板搬送装置であって、前記搬送部には、走行中の基板の位置を検知する位置センサーと、走行中の基板を停止させる基板停止位置が設定されており、前記駆動制御部は、前記基板停止位置と設定減速度とから減速開始遅延時間を演算し、前記位置センサーにより定速走行中の基板が検知された後、減速開始遅延時間だけ基板を定速で走行させ、減速開始遅延時間経過後、減速を開始させることを特徴としている。
【0010】
上記基板搬送装置によれば、駆動制御部により前記基板停止位置と設定減速度とから減速開始遅延時間が演算され、基板の位置が位置センサで確認されると、減速開始遅延時間経過後、減速を開始させるため、タクトタイムが無駄に長くなるのを抑えることができる。ここで、減速開始遅延時間は、モータ等の搬送駆動部に設定される設定減速度(一定割合の減速度)で減速させた場合に停止できるまでの時間であり、本発明では、設定減速度で減速させた場合に基板停止位置で停止できる最短の時間である。すなわち、定速走行中の基板が位置センサで検知されることにより、基板の位置が確認された後、減速開始遅延時間だけ、そのままの速度で走行させる。そして、減速開始遅延時間だけ走行させた後、設定減速度で減速させることにより基板を基板停止位置で確実に停止させることができる。したがって、設定減速度で減速しなければならない地点まで定速走行中の速度そのままで走行させることができるため、定速走行中の速度(第1設定速度)より遅い速度(第2設定速度)に早めに減速させる従来の方法に比べてタクトタイムが無駄に長くなるのを抑えることができる。また、基板停止位置と設定減速度とから減速開始遅延時間が演算され、減速開始遅延時間経過後に減速させればよいため、定速走行の速度が変更された場合でも停止センサ類の設置位置を変更する作業を行う必要がない。よって、定速走行速度変更に伴う段取り時間を無くすことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の基板搬送装置によれば、走行中の基板を基板停止位置で停止させる時間を短くすることができ、タクトタイムが無駄に長くなるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における基板搬送装置の概略側面図である。
【図2】上記基板搬送装置の概略上面図である。
【図3】上記基板搬送装置において、基板が定速走行から基板停止位置で停止するまでの時間と速度を示す図であり、図3(a)は、従来における時間と速度を示す図、図3(b)は本実施形態における時間と速度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板搬送装置に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、基板搬送装置の一実施形態を示す概略側面図であり、図2は、基板搬送装置の概略上面図である。
【0015】
図1、図2において、基板搬送装置は、平板状の基板2を搬送するものであり、基板2を搬送する搬送部10と、搬送部10を駆動させて基板2を走行させる搬送駆動部20と、この搬送駆動部20を制御する駆動制御部30とを有している。そして、搬送駆動部20が駆動制御部30に制御されることにより搬送部10を駆動させて基板2を所定の方向に走行させて搬送できるようになっている。
【0016】
なお、以下の説明では、基板2が搬送される搬送方向をX軸方向とし、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0017】
搬送部10は、基板2を所定の方向に搬送するものである。本実施形態では、一軸方向に延びるローラー11が複数並べて配置されて構成されている。すなわち、略円筒状のローラー11がX軸方向に同一高さで並べて配置されており、そのローラー11それぞれが軸回りに回転可能に支持されている。そして、基板2がローラー11上に載置された状態でローラー11を回転させることにより、基板2はローラー11配置方向(X軸方向)に搬送されるようになっている。
【0018】
この搬送部10には、基板停止位置12が設けられている。この基板停止位置12は、基板2が次工程に進むために一時的に停止する位置であり、例えば、ロボットハンドなどに基板2を把持させるために基板2を一時的に停止させる位置である。具体的には、任意の2つのローラー11間には、ローラー11の表面高さよりも突出するストッパー13が設けられており、搬送された基板2がストッパー13に当接することにより基板2を基板停止位置12に停止させることができる。すなわち、ストッパー13を設ける位置は、基板停止位置12に応じて適宜設置することができる。
【0019】
また、搬送部10には、基板2の位置を確認するための位置センサー14が設けられている。この位置センサー14は、具体的には光電センサーであり、各ローラー11の配列方向途中に取付けられている。そして、搬送中の基板2が光を遮蔽することにより基板2の先端位置を確認できるようになっている。なお、この位置センサー14は駆動制御部30に接続されており、位置センサー14の信号は駆動制御部30に取り込まれるようになっている。
【0020】
搬送駆動部20は、搬送部10を駆動させて基板2を走行させるものであり、駆動力を発生させるサーボモータ21と、このサーボモータ21の駆動力を各ローラー11に伝達するベルト22とを有している。サーボモータ21は、駆動制御部30の指令を受けることにより、回転軸の回転数を調整できる。この回転軸にはギア24が取付けられており、この回転軸のギア24と、各ローラー11端部に取付けられたそれぞれのギア10aとがベルト22で連結されている。したがって、サーボモータ21の回転軸が回転すると、それぞれのローラー11が軸回りに回転できるようになっている。そして、回転軸の回転数が制御されることによりローラー11の回転数が調節され、ローラー11上に載置された基板2が加速走行、定速走行、減速走行できるようになっている。
【0021】
また、サーボモータ21は、基板2の走行速度を減速させる割合である減速度が1つ任意に設定することができる。本実施形態では、基板2がローラー11上を滑ることなく減速できる減速度を設定減速度として設定されており、設定減速度が設定された状態で基板2を減速させた場合には、常に設定減速度で減速される。具体的には、サーボモータ21の起動時に基板2が最高速度(モータ最高速度)を発生する状態から、基板2が停止するまでの時間を入力することにより設定減速度を設定する。これにより、基板2のいかなる速度からの減速も設定減速度で減速されるようになる。
【0022】
また、駆動制御部30は、上記搬送駆動部20であるサーボモータ21を制御するものである。具体的には、ローラー11上に載置された基板2を加速走行、定速走行、減速走行させるようにサーボモータ21を制御する。具体的には、位置センサー14からの入力があれば、後述する減速開始遅延時間後に設定減速度により基板2の走行を減速させる。
【0023】
また、駆動制御部30には、入力機器を介して各種パラメータを入力できるようになっており、この入力情報を基に減速開始遅延時間を演算することができる。ここで、減速開始遅延時間とは、サーボモータ21に設定される設定減速度で減速させた場合に基板2が所定の位置に停止できるまでの時間であり、本実施形態では、設定減速度で減速させた場合に基板停止位置12で停止できる最短の時間である。
【0024】
この減速開始遅延時間taは、以下の式で算出することができる。
【0025】
ta=(L−(0.5×Va×(Va/V0)×t0))/Va
L:位置センサー14からストッパー13までの距離
V0:モータ最高速度
t0:V0における減速時間
Va:定速走行速度
ここで、定速走行速度Vaは、製品を生産する際の基板2の速度であり、ユーザーのタクトタイムに合わせて設定されるものである。すなわち、駆動制御部30は、ユーザーによりVaが入力されると、それに応じた減速開始遅延時間taを演算し、走行中の基板2が位置センサー14により検知されると、減速開始遅延時間taだけそのまま基板2を定速走行させ、減速開始遅延時間taの経過とともに設定減速度で減速させて基板停止位置12に停止させる。
【0026】
これにより、従来に比べて基板停止位置12に基板2を停止させるまでの時間を短縮させることができる。ここで、図3は、基板2が定速走行から基板停止位置12で停止するまでの時間と速度を示す図であり、図3(a)は、従来における時間と速度を示す図、図3(b)は本実施形態における時間と速度を示す図である。従来では、V1で定速走行している基板2を減速センサが検知すると安全に停止できる速度V2(<V1)に減速する。そして、そのまま基板2を速度V2で定速走行させ、停止センサが基板2を検知することによりさらに減速させて停止させる。
【0027】
一方、本実施形態では、定速走行速度Vaで走行中の基板2が減速センサにより検知されると、減速開始遅延時間taだけ、そのまま定速走行速度Vaで走行し減速開始遅延時間taの経過とともに設定減速度で減速し停止する。したがって、位置センサー14が検知してから基板停止位置12で停止するまで、安全に基板停止位置12で停止できる極限位置まで定速走行速度で走行し続けるため、定速走行速度よりも小さい速度で走行する区間が存在する従来に比べて、基板停止位置12に基板2を停止させるまでの時間を短縮させることができる。
【0028】
また、定速走行速度Va変更した場合であっても、それに応じて減速開始遅延時間taが演算される。そして、変更後の定速走行速度Vaで走行する基板2を位置センサー14が検知した後、そのまま変更後の定速走行速度Vaで減速開始遅延時間ta走行させた後、設定減速度で減速させて停止させるため、従来のように、停止センサ類の設置位置を変更する作業を行う必要がない。よって、定速走行速度Va変更に伴う段取り時間を無くすことができる。
【0029】
また、上記実施形態では、搬送部10が複数のローラー11を配列させたローラーコンベアの例について説明したが、基板2を載置する載置面からエアや超音波等で基板2を載置面から浮上させた状態で搬送させる浮上搬送装置に適用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 搬送部
12 基板停止位置
14 位置センサー
20 搬送駆動部
30 駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する搬送部と、
前記搬送部を駆動させることにより、基板を加速、定速、減速走行させるとともに、基板を特定の割合で減速させる設定減速度が設定可能な搬送駆動部と、
前記搬送駆動部を制御する駆動制御部と、
を備える基板搬送装置であって、
前記搬送部には、走行中の基板の位置を検知する位置センサーと、走行中の基板を停止させる基板停止位置が設定されており、
前記駆動制御部は、前記基板停止位置と設定減速度とから減速開始遅延時間を演算し、前記位置センサーにより定速走行中の基板が検知された後、減速開始遅延時間だけ基板を定速で走行させ、減速開始遅延時間経過後、減速を開始させることを特徴とする基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−33785(P2013−33785A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168018(P2011−168018)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】