説明

基板洗浄方法および基板洗浄装置

【課題】基板に付着するリンス液に起因する基板の処理不良を防止することができる基板洗浄方法および基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】基板Wが回転するとともに、気液供給ノズル453の液体ノズル453aが回転する基板Wの中心部WCの上方の位置まで移動する。この状態で、液体ノズル453aから回転する基板Wにリンス液が吐出される。気液供給ノズル453が基板Wの外方位置に向かって移動する。ガスノズル453bが回転する基板Wの中心部WCの上方位置に到達することにより、気液供給ノズル453が一時的に停止する。気液供給ノズル453が停止した状態で、回転する基板W上の中心部WCに一定時間不活性ガスが吐出される。その後、気液供給ノズル453が再び基板Wの外方位置に向かって移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に所定の処理を行う基板洗浄方法および基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶ディスプレイ等の製造工程におけるフォトリソグラフィー工程では、まず基板上にレジスト膜が形成される。次に、基板上に形成されたレジスト膜が所定のパターンで露光される。続いて、露光処理後の基板に現像処理が施される。これにより、基板上にレジストパターンが形成される。
【0003】
上記の現像処理を行うために現像装置が用いられる。現像装置は、基板を水平に保持して上下方向の軸の周りで回転させるスピンチャック、基板に現像液を供給する現像液ノズル、および基板にリンス液を供給するリンス液ノズルを備える。現像処理時には、スピンチャックにより基板が回転する状態で、現像液ノズルが現像液を吐出しつつ基板の外側から基板の中心部上方に移動する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
この場合、基板上の全体に現像液が供給され、基板上のレジスト膜を覆うように現像液の液層が形成される。その状態で、基板上のレジスト膜の溶解反応が進行する。続いて、リンス液ノズルが現像液ノズルと入れ替わるように基板の中心部上方に移動し、所定時間リンス液を吐出する。これにより、基板上の現像液が除去される。その後、基板へのリンス液の供給が停止されると、スピンチャックにより基板が高速回転することにより基板上の液体が振り切られる(スピン乾燥)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現像液の液層が形成された基板上では、半導体デバイスを製造する上で必要な回路パターンが露光されていることから、基板上のレジスト膜の溶解反応が進行した後、レジストパターンが形成される部分とレジストパターンが形成されない部分とが混在する。この場合、レジストパターンの形成部分の表面が親水性を有し、レジストパターンの非形成部分の表面が疎水性を有する。
【0007】
そのため、上記のスピン乾燥時には、親水性を有する部分(親水性部分)と疎水性を有する部分(疎水性部分)との間で乾燥時間に差が生じ、疎水性部分が乾燥しているにもかかわらず親水性部分にリンス液が残留する場合がある。
【0008】
この場合、乾燥した疎水性部分に親水性部分から振り切られたリンス液の飛沫が付着する。疎水性部分に付着する微小液滴は、遠心力により振り切ることが困難である。その結果、スピン乾燥後に基板上に微小液滴が残留して乾燥むらが生じると、ウォーターマーク等の反応生成物が生成され、基板の処理不良の原因となる。
【0009】
本発明の目的は、基板に付着するリンス液に起因する基板の処理不良を防止することができる基板洗浄方法および基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)第1の発明に係る基板洗浄方法は、基板の洗浄および乾燥を行う基板洗浄方法であって、基板を略水平に保持しつつ基板に垂直な軸の周りで回転させる工程と、リンス液を吐出する第1のノズルを用いて回転する基板上の中心部にリンス液を吐出する工程と、第1のノズルから吐出されたリンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から基板上の周縁部に向かって一定距離移動するように第1のノズルを移動させる工程と、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から一定距離離間した状態を保持しつつ、気体を吐出する第2のノズルを用いて基板上の中心部に一定時間気体を吐出することにより基板上の中心部に乾燥領域を形成する工程と、基板上の中心部に乾燥領域が形成された後、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に向かって連続的に移動するように第1のノズルを移動させるとともに、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置がリンス液を受ける基板上の位置から一定距離離間しつつリンス液を受ける基板上の位置の移動経路をたどるように第2のノズルを連続的に移動させる工程とを備えるものである。
【0011】
この基板洗浄方法においては、基板が略水平に保持されつつ基板に垂直な軸の周りで回転される。回転する基板上の中心部に第1のノズルからリンス液が吐出される。これにより、回転する基板上の中心部に吐出されたリンス液が基板の周縁部に向かって広がることにより、基板の全面に液層が形成される。
【0012】
次に、第1のノズルから吐出されたリンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から基板上の周縁部に向かって一定距離移動される。リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から一定距離離間した状態が保持されつつ、基板上の中心部に第2のノズルから一定時間気体が吐出され、基板上の中心部に乾燥領域が形成される。これにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界が形成される。
【0013】
その後、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に向かって連続的に移動されるとともに、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置がリンス液を受ける基板上の位置から一定距離離間しつつリンス液を受ける基板上の位置をたどるように連続的に移動される。
【0014】
第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置においては、基板の表面が強制的に乾燥される。したがって、基板の表面が親水性を有する部分と疎水性を有する部分とを含む場合でも、気体を受ける基板上の位置では確実にリンス液が除去される。
【0015】
基板上に吐出されたリンス液は、遠心力により基板上の周縁部に向かって流れる。そのため、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置がリンス液を受ける基板上の位置の移動経路をたどるように移動されることにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界が形成された状態で、基板上の中心部に形成された乾燥領域が基板上の中心部から周縁部に向かって拡大される。このように、基板上に形成される乾燥領域の外側に確実にリンス液の液層が形成される。それにより、乾燥領域以外の基板上の領域が遠心力により乾燥することが防止される。
【0016】
これらより、基板上に乾燥むらが生じることが確実に防止される。その結果、洗浄後の基板に付着する液体に起因する基板の処理不良を防止することができる。
【0017】
(2)基板を回転させる工程は、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部に位置する状態で基板が第1の回転速度で回転し、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に位置する状態で基板が第1の回転速度より低い第2の回転速度で回転するように基板の回転速度を段階的または連続的に変化させる工程を含んでもよい。
【0018】
回転する基板の周縁部の周速度は基板の中心部の周速度よりも高い。そのため、基板の周縁部に吐出されるリンス液に作用する遠心力は、基板の中心部に吐出されるリンス液に作用する遠心力に比べて大きくなる。リンス液に作用する遠心力が大きくなりすぎると基板上に吐出されるリンス液と気体とを安定して干渉させることが難しい。一方、リンス液に作用する遠心力が小さすぎると基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなり、基板の表面からリンス液が跳ねやすくなる。
【0019】
そこで、基板上の周縁部にリンス液が吐出される状態での基板の回転速度が基板の中心部にリンス液が吐出される状態での基板の回転速度より低く設定されることにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界が形成されるとともに、基板上でリンス液が跳ねにくくなる。
【0020】
(3)一定距離は、12mm以上22mm以下であってもよい。
【0021】
この場合、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置とリンス液を受ける基板上の位置との間の距離が12mm以上であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなりすぎることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができるとともに、基板上でリンス液が跳ねにくくすることができる。
【0022】
また、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置とリンス液を受ける基板上の位置との間の距離が22mm以下であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体とを確実に干渉させることができる。
【0023】
(4)第1のノズルはリンス液を吐出する第1の吐出口を有し、第2のノズルは、気体を吐出する第2の吐出口を有し、基板の表面から第1の吐出口までの高さおよび基板の表面から第2の吐出口までの高さは、10mm以上40mm以下であってもよい。
【0024】
この場合、基板の表面から第1のノズルの吐出口までの高さおよび基板の表面から第2のノズルの吐出口までの高さが10mm以上であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなりすぎることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができるとともに、基板上でリンス液を跳ねにくくすることができる。
【0025】
また、基板の表面から第1のノズルの吐出口までの高さおよび基板の表面から第2のノズルの吐出口までの高さが40mm以下であることにより、基板に吐出されるリンス液および気体が基板の上部の空間に発生する気流の影響を受けることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができる。
【0026】
(5)第1および第2の吐出口の内径は、2mm以上6mm以下であってもよい。
【0027】
この場合、基板上に吐出されるリンス液と気体とを確実に干渉させることができるとともに、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができる。
【0028】
(6)第1の吐出口から吐出されるリンス液の流量は、150mL/min以上800mL/min以下であり、第2の吐出口から吐出される気体の流量は、10L/min以上40L/min以下であってもよい。
【0029】
この場合、リンス液の流量が150mL/min以上であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体とを確実に干渉させることができる。また、リンス液の流量が800mL/min以下であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなりすぎることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができるとともに、基板上でリンス液を跳ねにくくすることができる。
【0030】
さらに、気体の流量が10L/min以上であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体とを確実に干渉させることができる。また、気体の流量が40L/min以下であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなりすぎることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成するとともに、基板上でリンス液を跳ねにくくすることができる。
【0031】
(7)第2の発明に係る基板洗浄装置は、基板の洗浄および乾燥を行う基板洗浄装置であって、基板を略水平に保持する基板保持手段と、基板保持手段により保持された基板をその基板に垂直な軸の周りで回転させる回転駆動手段と、回転する基板上にリンス液を吐出する第1のノズルと、第1のノズルを移動させる第1のノズル移動手段と、回転する基板上に気体を吐出する第2のノズルと、第2のノズルを移動させる第2のノズル移動手段と、基板保持手段、回転駆動手段、第1のノズル移動手段および第2のノズル移動手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、回転駆動手段により基板を略水平に保持しつつ基板に垂直な軸の周りで回転させ、回転する基板上の中心部に第1のノズルからリンス液を吐出させ、第1のノズルから吐出されたリンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から基板上の周縁部に向かって一定距離移動するように第1のノズル移動手段により第1のノズルを移動させ、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から一定距離離間した状態を保持しつつ、基板上の中心部に一定時間第2のノズルから気体を吐出させることにより基板上の中心部に乾燥領域を形成し、基板上の中心部に乾燥領域が形成された後、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に向かって連続的に移動するように第1のノズル移動手段により第1のノズルを移動させるとともに、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置がリンス液を受ける基板上の位置から一定距離離間しつつリンス液を受ける基板上の位置の移動経路をたどるように第2のノズル移動手段により第2のノズルを連続的に移動させるものである。
【0032】
この基板洗浄装置においては、回転駆動手段により基板が略水平に保持されつつ基板に垂直な軸の周りで回転される。回転する基板上の中心部に第1のノズルからリンス液が吐出される。これにより、回転する基板上の中心部に吐出されたリンス液が基板の周縁部に向かって広がることにより、基板の全面に液層が形成される。
【0033】
次に、第1のノズルから吐出されたリンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から基板上の周縁部に向かって一定距離移動するように第1のノズル移動手段により第1のノズルが移動される。リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から一定距離離間した状態が保持されつつ、基板上の中心部に第2のノズルから一定時間気体が吐出され、基板上の中心部に乾燥領域が形成される。これにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界が形成される。
【0034】
その後、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に向かって連続的に移動するように第1のノズル移動手段により第1のノズルが移動されるとともに、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置がリンス液を受ける基板上の位置から一定距離離間しつつリンス液を受ける基板上の位置の移動経路をたどって連続的に移動するように、第2のノズル移動手段により第2のノズルが移動される。
【0035】
第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置においては、基板の表面が強制的に乾燥される。したがって、基板の表面が親水性を有する部分と疎水性を有する部分とを含む場合でも、気体を受ける基板上の位置では確実にリンス液が除去される。
【0036】
基板上に吐出されたリンス液は、遠心力により基板上の周縁部に向かって流れる。そのため、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置がリンス液を受ける基板上の位置の移動経路をたどるように移動されることにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界が形成された状態で、基板上の中心部に形成された乾燥領域が基板上の中心部から周縁部に向かって拡大される。このように、基板上に形成される乾燥領域の外側に確実にリンス液の液層が形成される。それにより、乾燥領域以外の基板上の領域が遠心力により乾燥することが防止される。
【0037】
これらより、基板上に乾燥むらが生じることが確実に防止される。その結果、洗浄後の基板に付着する液体に起因する基板の処理不良を防止することができる。
【0038】
(8)制御手段は、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部に位置する状態で基板が第1の回転速度で回転し、リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に位置する状態で基板が第1の回転速度より低い第2の回転速度で回転するように回転駆動手段により基板の回転速度を段階的または連続的に変化させてもよい。
【0039】
回転する基板の周縁部の周速度は基板の中心部の周速度よりも高い。そのため、基板の周縁部に吐出されるリンス液に作用する遠心力は、基板の中心部に吐出されるリンス液に作用する遠心力に比べて大きくなる。リンス液に作用する遠心力が大きくなりすぎると基板上に吐出されるリンス液と気体とを安定して干渉させることが難しい。一方、リンス液に作用する遠心力が小さすぎると基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなり、基板の表面からリンス液が跳ねやすくなる。
【0040】
そこで、基板上の周縁部にリンス液が吐出される状態での基板の回転速度が基板の中心部にリンス液が吐出される状態での基板の回転速度より低く設定されることにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界が形成されるとともに、基板上でリンス液が跳ねにくくなる。
【0041】
(9)一定距離は、12mm以上22mm以下であってもよい。
【0042】
この場合、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置とリンス液を受ける基板上の位置との間の距離が12mm以上であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなりすぎることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができるとともに、基板上でリンス液が跳ねにくくすることができる。
【0043】
また、第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置とリンス液を受ける基板上の位置との間の距離が22mm以下であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体とを確実に干渉させることができる。
【0044】
(10)基板洗浄装置は、第1のノズルおよび第2のノズルを保持する保持手段をさらに備え、第1のノズルはリンス液を吐出する第1の吐出口を有し、第2のノズルは、気体を吐出する第2の吐出口を有し、保持手段は、基板の表面から第1の吐出口までの高さおよび基板の表面から第2の吐出口までの高さが10mm以上40mm以下となるように第1のノズルおよび第2のノズルを保持してもよい。
【0045】
この場合、基板の表面から第1のノズルの吐出口までの高さ、および基板の表面から第2のノズルの吐出口までの高さが10mm以上であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなりすぎることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができるとともに、基板上でリンス液を跳ねにくくすることができる。
【0046】
また、基板の表面から第1のノズルの吐出口までの高さ、および基板の表面から第2のノズルの吐出口までの高さが40mm以下であることにより、基板に吐出されるリンス液および気体が基板の上部の空間に発生する気流の影響を受けることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができる。
【0047】
(11)第1および第2の吐出口の内径は、2mm以上6mm以下であってもよい。
【0048】
この場合、基板上に吐出されるリンス液と気体とを確実に干渉させることができるとともに、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができる。
【0049】
(12)第1の吐出口から吐出されるリンス液の流量は、150mL/min以上800mL/min以下であり、第2の吐出口から吐出される気体の流量は、10L/min以上40L/min以下であってもよい。
【0050】
この場合、リンス液の流量が150mL/min以上であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体とを確実に干渉させることができる。また、リンス液の流量が800mL/min以下であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなりすぎることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成することができるとともに、基板上でリンス液を跳ねにくくすることができる。
【0051】
さらに、気体の流量が10L/min以上であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体とを確実に干渉させることができる。また、気体の流量が40L/min以下であることにより、基板上に吐出されるリンス液と気体との干渉が大きくなりすぎることを防止することができる。それにより、リンス液の液層と乾燥領域との間に安定して境界を形成するとともに、基板上でリンス液を跳ねにくくすることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、液体を基板から確実に除去することができるので、基板に付着する液体に起因する基板の処理不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の平面図である。
【図2】図1の基板処理装置の一方の概略側面図である。
【図3】図1の基板処理装置の他方の概略側面図である。
【図4】図3の現像処理装置の構成を示す平面図である。
【図5】図4の現像処理装置のQ−Q線断面図である。
【図6】現像液ノズルの概略斜視図である。
【図7】(a)は図4および図5の気液供給ノズルの正面図であり、(b)は図4および図5の気液供給ノズルの一側面図である。
【図8】現像処理装置の制御系を示すブロック図である。
【図9】基板の現像処理時における基板の回転速度、現像液の流量、リンス液の流量および不活性ガスの流量の変化を示すタイミング図である。
【図10】液層形成工程における現像処理装置の動作について説明するための模式図である。
【図11】洗浄乾燥工程における現像処理装置の動作について説明するための図である。
【図12】洗浄乾燥工程における現像処理装置の動作について説明するための図である。
【図13】洗浄乾燥工程において気液供給ノズルから基板Wにリンス液および不活性ガスが供給される状態を示す側面図である。
【図14】液位置とガス位置との間の距離が境界の形成に与える影響を説明するための側面図である。
【図15】基板の表面を基準とする気液供給ノズルの高さが境界の形成に与える影響を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板洗浄方法および基板洗浄装置について図面を用いて説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板等をいう。
【0055】
本発明の一実施の形態に係る基板洗浄方法は、以下に説明する基板処理装置で用いられる。なお、以下の説明では基板洗浄装置の一例として基板処理装置に設けられる現像処理装置について説明する。
【0056】
(1)基板処理装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の平面図である。なお、図1ならびに後述する図2および図3には、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は上下方向に相当する。なお、各方向において矢印が向かう方向を+方向、その反対の方向を−方向とする。
【0057】
図1に示すように、基板処理装置100は、インデクサブロック1、反射防止膜用処理ブロック2、レジスト膜用処理ブロック3、現像処理用ブロック4およびインターフェースブロック5を含む。インターフェースブロック5に隣接するように露光装置6が配置される。
【0058】
以下、インデクサブロック1、反射防止膜用処理ブロック2、レジスト膜用処理ブロック3、現像処理ブロック4およびインターフェースブロック5の各々を処理ブロックと呼ぶ。
【0059】
インデクサブロック1は、複数のキャリア載置台10、メインコントローラ11およびインデクサロボットIRを含む。メインコントローラ11は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータからなり、基板処理装置100内の各構成要素の動作を制御する。インデクサロボットIRには、基板Wを受け渡すためのハンドIRHが設けられる。
【0060】
反射防止膜用処理ブロック2は、反射防止膜用熱処理部20,21、反射防止膜用塗布処理部200および第1のセンターロボットCR1を含む。反射防止膜用塗布処理部200は、第1のセンターロボットCR1を挟んで反射防止膜用熱処理部20,21に対向して設けられる。第1のセンターロボットCR1には、基板Wを受け渡すためのハンドCRH1が設けられる。
【0061】
レジスト膜用処理ブロック3は、レジスト膜用熱処理部30,31、レジスト膜用塗布処理部300および第2のセンターロボットCR2を含む。レジスト膜用塗布処理部300は、第2のセンターロボットCR2を挟んでレジスト膜用熱処理部30,31に対向して設けられる。第2のセンターロボットCR2には、基板Wを受け渡すためのハンドCRH2が設けられる。
【0062】
現像処理用ブロック4は、現像用熱処理部40,41、現像処理部400および第3のセンターロボットCR3を含む。現像処理部400は、第3のセンターロボットCR3を挟んで現像用熱処理部40,41に対向して設けられる。第3のセンターロボットCR3には、基板Wを受け渡すためのハンドCRH3が設けられる。
【0063】
インターフェースブロック5は、第4のセンターロボットCR4、送りバッファSBF、戻りバッファRBF、インターフェース用搬送機構IFRおよびエッジ露光部EEWを含む。第4のセンターロボットCR4には、基板Wを受け渡すためのハンドCRH4が設けられる。インターフェース用搬送機構IFRは、後述する基板載置部PASS8と露光装置6との間で基板Wの受け渡しを行う。
【0064】
本実施の形態に係る基板処理装置100においては、インデクサブロック1、反射防止膜用処理ブロック2、レジスト膜用処理ブロック3、現像処理用ブロック4およびインターフェースブロック5がこの順で並ぶように配置されている。
【0065】
各処理ブロックの間には隔壁が設けられている。各隔壁には、各処理ブロック間で基板Wの受け渡しを行うための基板載置部PASS1〜PASS6が2個ずつ上下に近接して設けられている。
【0066】
また、現像処理用ブロック4の現像用熱処理部41には、後述するように、基板載置部PASS7が設けられている。さらに、インターフェースブロック5のエッジ露光部EEWに積層するように基板載置部PASS8が設けられている。基板載置部PASS1〜PASS8には、固定設置された複数本の支持ピンが設けられている。また、基板載置部PASS1〜PASS8には、基板Wの有無を検出する光学式のセンサ(図示せず)が設けられている。それにより、基板載置部PASS1〜PASS8において基板Wが載置されているか否かの判定を行うことが可能となる。
【0067】
基板載置部PASS1,PASS3,PASS5は、未処理の基板Wを受け渡す場合に用いられ、基板載置部PASS2,PASS4,PASS6は、処理済みの基板Wを受け渡す場合に用いられる。
【0068】
図2は、図1の基板処理装置100の一方の概略側面図であり、図3は、図1の基板処理装置100の他方の概略側面図である。なお、図2においては、基板処理装置100の一側方に設けられるものを主に示し、図3においては、基板処理装置100の他側方に設けられるものを主に示している。
【0069】
まず、図2を用いて、基板処理装置100の構成について説明する。図2に示すように、反射防止膜用処理ブロック2の反射防止膜用熱処理部20には、2個の受け渡し部付き熱処理ユニットPHP(以下、単に熱処理ユニットと呼ぶ。)と3個のホットプレートHPが上下に積層配置され、反射防止膜用熱処理部21には、2個の密着強化剤塗布処理部AHLおよび4個のクーリングプレートCPが上下に積層配置される。また、反射防止膜用熱処理部20,21には、最上部に熱処理ユニットPHP、ホットプレートHP、密着強化剤塗布処理部AHLおよびクーリングプレートCPの温度を制御するローカルコントローラLCが各々配置される。
【0070】
レジスト膜用処理ブロック3のレジスト膜用熱処理部30には、6個の熱処理ユニットPHPが上下に積層配置され、レジスト膜用熱処理部31には、4個のクーリングプレートCPが上下に積層配置される。また、レジスト膜用熱処理部30,31には、最上部に熱処理ユニットPHPおよびクーリングプレートCPの温度を制御するローカルコントローラLCが各々配置される。
【0071】
現像処理用ブロック4の現像用熱処理部40には、4個のホットプレートHPおよび4個のクーリングプレートCPが上下に積層配置され、現像熱処理部41には、基板載置部PASS7、5個の熱処理ユニットPHPおよびクーリングプレートCPが上下に積層配置されている。また、現像用熱処理部40,41には、最上部に熱処理ユニットPHP、ホットプレートHPおよびクーリングプレートCPの温度を制御するローカルコントローラLCが各々配置される。
【0072】
インターフェースブロック5には、2個のエッジ露光部EEW、戻りバッファRBF、基板載置部PASS8が上下に積層配置されるとともに、送りバッファSBF、第4のセンターロボットCR4およびインターフェース搬送機構IFR(図1および図3)が配置される。
【0073】
次に、図3を用いて、基板処理装置100の構成について説明する。図3に示すように、反射防止膜用処理ブロック2の反射防止膜用熱処理部200には、3個の塗布ユニットBARCが上下に積層配置されている。レジスト膜用処理ブロック3のレジスト膜用塗布処理部300には、3個の塗布ユニットRESが上下に積層配置されている。現像処理用ブロック4の現像処理部400には、5個の現像処理装置DEVが上下に積層配置されている。
【0074】
(2)基板処理装置の動作
基板処理装置100の動作について主として図1を参照しつつ説明する。インデクサブロック1のキャリア載置台10上に複数枚の基板Wを多段に収納するキャリアCが搬入される。インデクサロボットIRは、基板Wの受け渡しをするためのハンドIRHを用いてキャリアC内に収納された未処理の基板Wを取り出す。その後、インデクサロボットIRは±X方向に移動しつつ回転し、未処理の基板Wを基板載置部PASS1に載置する。
【0075】
なお、本実施の形態においては、キャリアCとしてFOUP(front opening unified pod)を採用しているが、これに限定されず、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドまたは収納基板Wを外気に曝すOC(open cassette)等を用いてもよい。さらに、インデクサロボットIR、第1〜第4のセンターロボットCR1〜CR4およびインターフェース用搬送機構IFRには、それぞれ基板Wに対して直線的にスライドさせてハンドの進退動作を行う直動型搬送ロボットを用いているが、これに限定されず、関節を動かすことにより直線的にハンドの進退動作を行う多関節型搬送ロボットを用いてもよい。
【0076】
基板載置部PASS1に載置された未処理の基板Wは、反射防止膜用処理ブロック2の第1のセンターロボットCR1のハンドCRH1により受け取られる。第1のセンターロボットCR1は、基板Wを反射防止膜用塗布処理部200に搬入する。この反射防止膜用塗布処理部200では、露光時に発生する定在波およびハレーションを減少させるために、塗布ユニットBARC(図3)により基板W上に反射防止膜が塗布形成される。
【0077】
その後、第1のセンターロボットCR1は、反射防止膜用塗布処理部200から塗布処理後の基板Wを取り出し、反射防止膜用熱処理部20,21に搬入する。反射防止膜用熱処理部20,21において所定の熱処理が施された後、第1のセンターロボットCR1は、反射防止膜用熱処理部20,21から熱処理後の基板Wを取り出し、基板載置部PASS3に載置する。
【0078】
基板載置部PASS3に載置された基板Wは、レジスト膜用処理ブロック3の第2のセンターロボットCR2のハンドCRH2により受け取られる。第2のセンターロボットCR2は、基板Wをレジスト膜用塗布処理部300に搬入する。このレジスト膜用塗布処理部300では、反射防止膜が塗布形成された基板W上にフォトレジスト膜が塗布ユニットRES(図3)により塗布形成される。その後、第2のセンターロボットCR2は、レジスト膜用塗布処理部300から塗布処理後の基板Wを取り出し、レジスト膜用熱処理部30,31に搬入する。レジスト膜用熱処理部30,31において所定の熱処理が施された後、第2のセンターロボットCR2は、レジスト膜用熱処理部30,31から熱処理後の基板Wを取り出し、基板載置部PASS5に載置する。
【0079】
基板載置部PASS5に載置された基板Wは、現像処理用ブロック4の第3のセンターロボットCR3のハンドCRH3により受け取られる。第3のセンターロボットCR3は、基板Wを基板載置部PASS7に載置する。基板載置部PASS7に載置された基板Wは、インターフェースブロック5の第4のセンターロボットCR4のハンドCRH4により受け取られる。第4のセンターロボットCR4は、基板Wをエッジ露光部EEWに搬入する。エッジ露光部EEWにおいて基板Wの周縁部の露光処理(エッジ露光処理)が施された後、第4のセンターロボットCR4は、エッジ露光部EEWからエッジ露光処理後の基板Wを取り出し、エッジ露光部EEWに積層して設けられた基板載置部PASS8に載置する。
【0080】
基板載置部PASS8に載置された基板Wは、インターフェース用搬送機構IFRにより受け取られる。インターフェース用搬送機構IFRは、基板Wを露光装置6に搬入する。
【0081】
ここで、露光装置6による露光処理の時間は、通常、他の処理工程および搬送工程よりも長い。その結果、露光装置6が後の基板Wの受け入れをできない場合が多い。この場合、基板Wは送りバッファSBF(図1)に一時的に収納保管される。
【0082】
露光装置6においては、基板Wに露光処理が施される。その後、インターフェース用搬送機構IFRは、露光装置6より露光処理後の基板Wを受け取り、基板載置部PASS8に載置する。
【0083】
なお、現像処理装置DEV(図3)の故障等により、現像処理ブロック12が一時的に基板Wの受け入れをできないときは、戻りバッファRBFに露光処理後の基板Wを一時的に収納保管することができる。
【0084】
基板載置部PASS8に載置された基板Wは、インターフェースブロック5の第4のセンターロボットCR4のハンドCRH4により受け取られる。第4のセンターロボットCR4は、基板Wを現像用熱処理部41に搬入する。現像用熱処理部41においては、基板Wに対して所定の熱処理が行われる。その後、第4のセンターロボットCR4は、現像用熱処理部41から熱処理後の基板Wを取り出し、基板載置部PASS7に載置する。
【0085】
基板載置部PASS7に載置された基板Wは、現像処理ブロック12の第3のセンターロボットCR3のハンドCRH3により受け取られる。第3のセンターロボットCR3は、基板Wを現像処理部400に搬入する。現像処理部400においては、露光された基板Wに対して現像処理装置DEV(図3)により現像処理が施される。その後、第3のセンターロボットCR3は、現像処理部400から基板Wを取り出し、現像用熱処理部40に搬入する。現像用熱処理部40において所定の熱処理が施された後、第3のセンターロボットCR3は、現像用熱処理部40から熱処理後の基板Wを取り出し、レジスト膜用処理ブロック3に設けられた基板載置部PASS6に載置する。
【0086】
基板載置部PASS6に載置された基板Wは、レジスト膜用処理ブロック3の第2のセンターロボットCR2により基板載置部PASS4に載置される。基板載置部PASS4に載置された基板Wは反射防止膜用処理ブロック2の第1のセンターロボットCR1により基板載置部PASS2に載置される。
【0087】
基板載置部PASS2に載置された基板Wは、インデクサブロック1のインデクサロボットIRによりキャリアC内に収納される。
【0088】
(3)現像処理装置の構成
図3の現像処理部400の現像処理装置DEVについて詳細を説明する。図4は、図3の現像処理装置DEVの構成を示す平面図であり、図5は図4の現像処理装置DEVのQ−Q線断面図である。
【0089】
図4および図5に示すように、現像処理装置DEVは、基板Wを水平姿勢で吸着保持するスピンチャック410を備える。スピンチャック410は、モータ411(図5)の回転軸412(図5)の先端部に固定され、上下方向の軸の周りで回転可能に構成されている。スピンチャック410の周囲には、基板Wを取り囲むように円形の内側カップ413が上下動自在に設けられている。また、内側カップ413を取り囲むように正方形の外側カップ414が設けられている。
【0090】
図4に示すように、外側カップ414の側方には、待機ポッド415が設けられている。また、外側カップ414および待機ポッド415が並ぶ方向に沿って延びるようにガイドレール416が設けられている。ガイドレール416に沿って移動可能にアーム駆動部417が設けられている。アーム駆動部417には、水平面内でガイドレール416に直交する方向に延びるノズルアーム418が取り付けられている。ノズルアーム418はアーム駆動部417により駆動され、ガイドレール416に沿った方向に移動するとともに、上下方向に昇降する。
【0091】
スピンチャック410に関してガイドレール416と反対側の領域には、モータ450が設けられている。モータ450には、回転軸451が接続されている。また、回転軸451には、ノズルアーム452が水平方向に延びるように連結され、ノズルアーム452の先端に気液供給ノズル453が取り付けられている。気液供給ノズル453は、液体ノズル453aおよびガスノズル453bを含む。
【0092】
モータ450により回転軸451が回転するとともにノズルアーム452が回動する。それにより、気液供給ノズル453が、スピンチャック410により保持された基板Wの中心部上方の位置と基板Wの外方位置との間で移動する(図4の矢印R1参照)。
【0093】
図5に示すように、ノズルアーム418の先端部には、複数(本例では5つ)の現像液吐出口422を有する現像液ノズル421が設けられている。基板Wの現像処理時には、ノズルアーム418が移動することにより、現像液ノズル421が待機ポッド415から基板Wの上方に移動する。
【0094】
現像液ノズル421は、現像液供給管431を介して現像液供給源G1に接続されている。現像液供給管431には、バルブV1が設けられている。バルブV1を開くことにより、現像液供給源G1から現像液ノズル421に現像液が供給される。
【0095】
気液供給ノズル453の液体ノズル453aは、リンス液供給管461を介してリンス液供給源G2に接続されている。リンス液供給管461には、バルブV2が設けられている。バルブV2を開くことにより、リンス液供給源G2から液体ノズル453aにリンス液が供給される。
【0096】
気液供給ノズル453のガスノズル453bは、不活性ガス供給管471を介して不活性ガス供給源G3に接続されている。不活性ガス供給管471には、バルブV3が設けられている。バルブV3を開くことにより、不活性ガス供給源G3から不活性ガス供給管471を通してガスノズル453bに不活性ガスが供給される。
【0097】
なお、上記のバルブV1〜V3は流量調整バルブである。これにより、各バルブV1〜V3を制御することにより、現像液ノズル421への現像液の供給量、液体ノズル453aへのリンス液の供給量およびガスノズル453bへの不活性ガスの供給量が調整される。
【0098】
本実施の形態において、リンス液は純水であり、不活性ガスは窒素(N)ガスである。なお、リンス液として、例えば純水、炭酸水、水素水、電解イオン水、HFE(ハイドロフルオロエーテル)または有機系の液体等を用いてもよいし、不活性ガスとして、例えば窒素ガス(N)、アルゴンガスまたはヘリウムガス等を用いてもよい。
【0099】
現像液ノズル421の構成について説明する。図6は、現像液ノズル421の概略斜視図である。図6に示すように、現像液ノズル421には、下方に向けられた複数の現像液吐出口422が現像液ノズル421の幅方向(図4のガイドレール416に平行な方向)に沿って等間隔で設けられている。現像液ノズル421に供給された現像液は複数の現像液吐出口422から吐出される。各現像液吐出口422は、現像液ノズル421の移動に伴いスピンチャック410に保持された基板Wの中心部の上方を通過するように配置されている。
【0100】
気液供給ノズル453の構成について説明する。ここで、上述のように、気液供給ノズル453はノズルアーム452の先端に取り付けられる(図4および図5)。
【0101】
図7(a)は図4および図5の気液供給ノズル453の正面図であり、図7(b)は図4および図5の気液供給ノズル453の一側面図である。
【0102】
図7(a)および図7(b)に示すように、気液供給ノズル453は、液体ノズル453a、ガスノズル453bおよびケーシング454を備える。
【0103】
ケーシング454は、直方体形状を有し、下端部が開放されている。ケーシング454に、液体ノズル453aおよびガスノズル453bが取り付けられている。
【0104】
液体ノズル453aおよびガスノズル453bは、それぞれ上下方向に延びる筒形状を有し、ケーシング454の幅方向(図4のノズルアーム452の軸に対して直交する水平方向)に並ぶように配置される。液体ノズル453aおよびガスノズル453bの下端およびその近傍の部分は、ケーシング454の下端部から下方に突出している。
【0105】
液体ノズル453aおよびガスノズル453bのそれぞれの側面の上端部近傍には、接続孔UHa,UHbが形成されている。液体ノズル453aおよびガスノズル453bのそれぞれの下端部には吐出口BHa,BHbが形成されている。液体ノズル453aおよびガスノズル453bの接続孔UHa,UHbの部分には、それぞれリンス液供給管461および不活性ガス供給管471が接続されている。
【0106】
リンス液供給管461から液体ノズル453aにリンス液が供給されると、供給されたリンス液が吐出口BHaから下方に吐出される。不活性ガス供給管471からガスノズル453bに不活性ガスが供給されると、供給された不活性ガスが吐出口BHbから下方に吐出される。
【0107】
ここで、図7(a)に示すように、本実施の形態では、後述する洗浄乾燥工程において、基板W上で後述するリンス液の液層RL(図13)と乾燥領域DA(図13)との境界B(図13)を形成するために、液体ノズル453aの軸心とガスノズル453bの軸心との間の距離ND1、液体ノズル453aの内径IDa、およびガスノズル453bの内径IDbが定められる。距離ND1および内径IDa,IDbの好ましい範囲については後述する。
【0108】
図8は、現像処理装置DEVの制御系を示すブロック図である。図8に示すように、現像処理装置DEVは制御部490を備える。スピンチャック410、モータ411,450、アーム駆動部417およびバルブV1,V2,V3の動作は、制御部490により制御される。
【0109】
なお、制御部490に代えて、図1のメインコントローラ11がスピンチャック410、モータ411,450、アーム駆動部417およびバルブV1,V2,V3の動作を制御してもよい。
【0110】
(4)現像処理装置の動作
次に、現像処理装置DEVの動作について説明する。図9は、基板Wの現像処理時における基板Wの回転速度、現像液の流量、リンス液の流量および不活性ガスの流量の変化を示すタイミング図である。本実施の形態では、現像処理の工程が、液層形成工程、現像工程および洗浄乾燥工程に分けられる。なお、以下に説明する現像処理は、基板W上に形成されたレジスト膜に露光処理が施された後に行われる。
【0111】
図9に示すように、液層形成工程の時点t1で、スピンチャック410(図4)により基板Wの回転が開始される。続く時点t2で、現像液ノズル421(図4)からの現像液の吐出が開始される。時点t1〜t3の期間において、基板Wの回転速度が例えば1000rpmに維持される。
【0112】
時点t3で基板Wの回転速度が例えば200rpmに下降し、時点t4で基板Wの回転速度が例えば50rpmに下降する。続いて、時点t5で、基板Wの回転が停止される。また、時点t6で、現像液ノズル421からの現像液の吐出が停止される。なお、時点t2〜t6の期間において、現像液ノズル421は、現像液を吐出しながら基板Wの中心部の上方と周縁部の上方との間を移動する。現像液の吐出流量は、例えば400ml/minで維持される。
【0113】
この液層形成工程においては、基板W上のレジスト膜を覆うように現像液の液層が形成される。液層形成工程の詳細については後述する。
【0114】
現像工程の時点t6〜t7の期間には、現像液の吐出および基板Wの回転が停止した状態で維持される。この期間に、基板W上に保持された現像液によりレジスト膜のパターン部を除く部分の溶解反応が進行する。
【0115】
時点t7で洗浄乾燥工程が開始される。洗浄乾燥工程においては、時点t7〜t8の期間にスピンチャック410により基板Wが例えば700rpmで回転し、時点t8〜t10の期間に基板Wが高速の例えば2000rpmで回転する。時点t10〜t11の期間に基板Wの回転が低速の例えば1500rpmまで減速する。
【0116】
時点t7〜t11の期間には、液体ノズル453a(図4)から基板Wにリンス液が吐出される。それにより、基板W上の現像液および溶解したレジストが洗い流される。リンス液の吐出流量は、例えば500mL/minで維持される。
【0117】
時点t9〜t11の期間には、ガスノズル453b(図4)から基板Wに不活性ガスが吐出される。これにより、基板Wの表面が乾燥する。不活性ガスの吐出流量は、例えば30L/minで維持される。
【0118】
なお、時点t8〜t11の期間においては、図4のモータ450が動作することにより液体ノズル453aおよびガスノズル453bが基板Wの中心部の上方から周縁部の上方に向かって移動する。洗浄乾燥工程の詳細については後述する。
【0119】
(5)液層形成工程
次に、図9および図10を参照しながら液層形成工程における現像処理装置DEVの動作の詳細について説明する。図10は、液層形成工程における現像処理装置DEVの動作について説明するための模式図である。図10(a),(c),(e)は現像処理装置DEVの模式的平面図であり、図10(b),(d),(f)は現像処理装置DEVの模式的側面図である。
【0120】
図9の時点t2において、図10(a),(b)に示すように、現像液ノズル421が回転する基板Wの中心部の上方に位置する状態で現像液の吐出を開始する。これにより、回転する基板W上の中心部に現像液の液層が形成される。
【0121】
図9の時点t2〜t3の期間に、図10(c),(d)に示すように、現像液ノズル421が現像液を吐出しつつ回転する基板Wの中心部の上方から周縁部の上方まで移動する。これにより、基板W上の全体に現像液が供給され、基板W上の全体に現像液の液層が形成される。
【0122】
図9の時点t3〜t4の期間には、基板Wの回転速度が下降するとともに、図10(e),(f)に示すように、現像液ノズル421が現像液を吐出しつつ回転する基板Wの周縁部の上方から中心部の上方まで移動する。この場合、基板Wの外方に振り切られる現像液の量が減少し、供給された現像液が基板W上で保持される。それにより、基板W上に現像液の液層が形成される。
【0123】
(6)洗浄乾燥工程
図9、図11および図12を参照しながら洗浄乾燥工程における現像処理装置DEVの動作について説明する。図11および図12は、洗浄乾燥工程における現像処理装置DEVの動作について説明するための図である。
【0124】
以下の説明では、液体ノズル453aにより吐出されるリンス液の基板W上の到達位置(吐出されたリンス液を受ける基板W上の位置)を液位置P1と呼び、ガスノズル453bにより吐出される不活性ガスの基板W上の到達位置(吐出された不活性ガスを受ける基板W上の位置)をガス位置P2と呼ぶ。
【0125】
図11(a),(c),(e)および図12(a),(c)は現像処理装置DEVの模式的平面図であり、図11(b),(d),(f)および図12(b),(d)は現像処理装置DEVの模式的側面図である。
【0126】
図9の時点t7において、図11(a),(b)に示すように、基板Wが回転するとともに、図4のモータ450が動作することにより気液供給ノズル453の液体ノズル453aが回転する基板Wの中心部WCの上方の位置まで移動する。この状態で、液体ノズル453aから回転する基板Wにリンス液が吐出される。
【0127】
これにより、図11(a),(b)に点線の矢印で示すように、回転する基板Wに供給されたリンス液が、遠心力により中心部WCから周縁部に向かって流れる。現像液の液層がリンス液で置換され、基板Wの表面が洗浄される。このようにして、回転する基板Wの上面の全域にリンス液の液層RLが形成される。
【0128】
図9の時点t8において、図4のモータ450が動作することにより気液供給ノズル453が基板Wの外方位置に向かって移動する。
【0129】
モータ450の動作時においては、液体ノズル453aおよびガスノズル453bが、回転する基板Wの上方でほぼ同一の経路に沿って移動する。図11(a),(c),(e)および図12(a),(c)においては、液体ノズル453aおよびガスノズル453bの移動経路を一点鎖線Mで示す。
【0130】
図9の時点t9において、図11(c),(d)に示すように、ガスノズル453bが回転する基板Wの中心部WCの上方位置に到達することにより、図4のモータ450が停止し、気液供給ノズル453が一時的に停止する。気液供給ノズル453が停止した状態で、ガスノズル453bから回転する基板Wの中心部WCに不活性ガスが吐出される。
【0131】
図11(e),(f)に示すように、図9の時点t9から時点t9iまでの間、気液供給ノズル453が停止した状態で、回転する基板Wの中心部WCに不活性ガスが吐出される。これにより、液位置P1が基板W上の中心部WCから一定距離(本例では距離ND1(図7))離間した状態で、回転する基板W上の中心部WCに一定時間不活性ガスが吐出される。それにより、回転する基板Wの中心部WCに乾燥領域DAが形成され、液位置P1とガス位置P2との間に乾燥領域DAと液層RLとの境界Bが形成される。時点t9から時点t9iまでの時間は、例えば約0.5secである。
【0132】
回転する基板W上に吐出されるリンス液には、基板Wの中心から周縁部に向かうように遠心力が作用する。また、本例では、ガスノズル453bが液体ノズル453aよりも基板Wの中心に近い位置で基板Wの表面上に不活性ガスを吐出する。これにより、液位置P1とガス位置P2との間で乾燥領域DAと液層RLとの境界Bが形成される場合、基板W上には中心部WCを中心として、中心部WCから境界Bまでの距離を半径とする略円形の乾燥領域DAが形成される。
【0133】
図9の時点t9iにおいて、図4のモータ450が再び動作し、気液供給ノズル453が再び基板Wの外方位置に向かって移動する。
【0134】
図12(a),(b)に示すように、図9の時点t9iから気液供給ノズル453が基板Wの外方位置に向かって移動すると、基板W上での液位置P1およびガス位置P2の移動とともに、液位置P1とガス位置P2との間の境界Bも基板Wの周縁部に向かって移動する。それにより、略円形の乾燥領域DAの外縁が境界Bの移動とともに拡大され、乾燥領域DAが基板Wの中心部WCから基板Wの周縁部に向かって広がる。
【0135】
図9の時点t11において、液体ノズル453aおよびガスノズル453bが基板Wの周縁部の上方位置から外れた位置まで移動することにより、図12(c),(d)に示すように、基板Wの上面の全域が乾燥される。
【0136】
上記のように、この洗浄乾燥工程においては、基板W上で液位置P1とガス位置P2との間に液層RLと乾燥領域DAとの境界Bが形成される。
【0137】
基板W上のガス位置P2においては、不活性ガスによりリンス液が確実に除去されるとともに、基板Wの表面が強制的に乾燥される。したがって、基板Wの表面が親水性を有する部分(親水性部分)と疎水性を有する部分(疎水性部分)とを含む場合でも、ガス位置P2で確実にリンス液が除去される。それにより、乾燥領域DAに乾燥むらが生じることが防止される。
【0138】
また、基板W上の液位置P1にはリンス液が吐出される。吐出されたリンス液は、遠心力により基板Wの外方に向かって流れる。これにより、乾燥領域DAの外側に確実にリンス液の液層RLが形成される。それにより、ガス位置P2の外側の領域(不活性ガスにより乾燥される乾燥領域DA以外の基板W上の領域)でリンス液が遠心力等により乾燥することが防止される。したがって、基板W上に乾燥むらが生じることが防止される。
【0139】
(7)境界を形成するための好ましい条件
(7−1)境界形成のメカニズム
図13は、洗浄乾燥工程において気液供給ノズル453から基板Wにリンス液および不活性ガスが供給される状態を示す側面図である。
【0140】
図13に示すように、液位置P1は液体ノズル453aの軸心L1と基板Wの表面との交差部に位置し、ガス位置P2は気体ノズル453bの軸心L2と基板Wの表面との交差部に位置する。
【0141】
液体ノズル453aから吐出されるリンス液の一部は、液位置P1で基板Wの表面に衝突することにより遠心力に抗して液位置P1から中心部WCに向かって流れる。
【0142】
このとき、気体ノズル453bの先端部から吐出される不活性ガスは、ガス位置P2を中心とする所定幅の範囲で基板Wの表面に衝突する。それにより、液位置P1とガス位置P2との間で、液位置P1から中心部WCに向かって流れるリンス液と、基板Wに衝突する不活性ガスとが干渉する。その結果、リンス液と不活性ガスとの干渉部分で境界Bが形成される。
【0143】
(7−2)気液供給ノズルの構造
上記のように、境界Bは液位置P1とガス位置P2との間でリンス液と不活性ガスとを干渉させることにより形成される。図14は、液位置P1とガス位置P2との間の距離が境界Bの形成に与える影響を説明するための側面図である。
【0144】
まず、図14(a)に示すように、液位置P1とガス位置P2との間の距離が小さすぎると、液位置P1から中心部WCに向かって流れるリンス液とガス位置P2に衝突する不活性ガスとの干渉が大きくなりやすい。この場合、境界Bが安定して形成されにくくなるとともに、基板Wの表面からリンス液が跳ねやすくなる。
【0145】
一方、図14(b)に示すように、液位置P1とガス位置P2との間の距離が大きすぎると、遠心力によりリンス液が振り切られることにより、液位置P1とガス位置P2との間において基板Wの表面が局部的に乾燥する可能性がある(図14(b)の符号DBの領域参照)。この場合、境界Bが形成されにくくなる。
【0146】
そこで、リンス液と不活性ガスとを確実に干渉させるとともに安定して境界Bを形成するために、液位置P1とガス位置P2との間の距離、すなわち液体ノズル453aの軸心L1とガスノズル453bの軸心L2との間の距離ND1は、12mm以上22mm以下であることが好ましく、17mmであることがより好ましい。
【0147】
上記に加えて、リンス液と不活性ガスとを確実に干渉させるとともに安定して境界Bを形成するために、液体ノズル453aの吐出口BHa(図7)の内径IDa(図7)、および気体ノズル453bの吐出口BHb(図7)の内径IDb(図7)は、2mm以上6mm以下であることが好ましく、4mmであることがより好ましい。なお、内径IDa,IDbは互いに等しくてもよく、互いに異なってもよい。
【0148】
(7−3)気液供給ノズルの配置
図15は、基板Wの表面を基準とする気液供給ノズル453の高さが境界Bの形成に与える影響を説明するための側面図である。
【0149】
図15に示すように、基板Wの表面から液体ノズル453aの吐出口BHaおよび気体ノズル453bの吐出口BHbまでの高さが小さすぎると、液位置P1から中心部WCに向かって流れるリンス液とガス位置P2に衝突する不活性ガスとの干渉が大きくなりやすい。この場合、境界Bが安定して形成されにくくなるとともに、基板Wの表面からリンス液が跳ねやすくなる。
【0150】
また、基板Wの表面から液体ノズル453aの吐出口BHaおよび気体ノズル453bの吐出口BHbまでの高さが大きすぎると、吐出口BHa,BHbから基板Wに吐出されるリンス液および不活性ガスが、基板W上部の空間に発生する気流の影響を受けやすい。この場合、境界Bが安定して形成されにくくなる。
【0151】
そこで、リンス液と不活性ガスとを確実に干渉させるとともに安定して境界Bを形成するために、気液供給ノズル453は、基板Wの表面から吐出口BHa,BHbまでの高さが10mm以上40mm以下となるように配置することが好ましい。
【0152】
(7−4)リンス液の吐出流量
液体ノズル453aから基板Wに吐出されるリンス液の流量が多すぎると、リンス液と不活性ガスとの干渉が大きくなり、境界Bが安定して形成されにくくなるとともに、基板Wの表面からリンス液が跳ねやすくなる。また、液体ノズル453aから基板Wに吐出するリンス液の流量が少なすぎると、リンス液と不活性ガスとが干渉しにくくなり、境界Bが安定して形成されにくくなる。
【0153】
そこで、リンス液と不活性ガスとを確実に干渉させるとともに安定して境界Bを形成するために、液体ノズル453aから基板Wに吐出するリンス液の流量は、150mL/min以上800mL/min以下であることが好ましい。
【0154】
(7−5)不活性ガスの吐出流量
気体ノズル453bから基板Wに吐出される不活性ガスの流量が多すぎると、リンス液と不活性ガスとの干渉が大きくなり、境界Bが安定して形成されにくくなるとともに、基板Wの表面からリンス液が跳ねやすくなる。また、気体ノズル453bから基板Wに吐出される不活性ガスの流量が少なすぎると、リンス液と不活性ガスとが干渉しにくくなり、境界Bが安定して形成されにくくなる。
【0155】
そこで、リンス液と不活性ガスとを確実に干渉させるとともに安定して境界Bを形成するために、気体ノズル453bから基板Wに吐出される不活性ガスの流量は、10L/min以上40L/min以下であることが好ましい。
【0156】
(7−6)基板の回転速度
洗浄乾燥工程においては、図5のスピンチャック410により基板Wが回転する。これにより、図13に示すように、液体ノズル453aから基板W上に吐出されるリンス液には、基板Wの中心部WCから液位置P1までの距離および基板Wの回転速度に応じて基板Wの中心部WCから外方に向かう遠心力が作用する。
【0157】
リンス液に作用する遠心力が小さいと、液位置P1(図13)から中心部WC(図13)に向かって多量のリンス液が流れる。この場合、リンス液と不活性ガスとの干渉が大きくなり、基板Wの表面からリンス液が跳ねやすくなる。
【0158】
一方、リンス液に作用する遠心力が大きいと、液位置P1(図13)から中心部WC(図13)に向かってリンス液が流れにくくなる。この場合、リンス液と不活性ガスとが干渉しにくくなり、境界Bが安定して形成されにくくなる。
【0159】
基板Wが一定の速度で回転している状態で液位置P1が基板Wの中心部WCから周縁部に向かって移動する場合、液位置P1上のリンス液に作用する遠心力は、液位置P1が中心部WCから離間するにつれて大きくなる。
【0160】
また、液位置P1が基板Wの中心部WCと周縁部との間の任意の位置で維持された状態で基板Wの回転速度が変化する場合、液位置P1上のリンス液に作用する遠心力は、回転速度が高くなるにつれて大きくなる。
【0161】
これらより、液位置P1が基板Wの中心部WC近傍を移動する際には基板Wの回転速度を高くし(例えば、2000rpm以上)、液位置P1が基板Wの周縁部に近づくにつれて回転速度を低くする(例えば、1500rpm以下)ことが好ましい。
【0162】
具体例としては、処理対象となる基板Wの直径が300mmである場合、液位置P1が中心部WCから周縁部に向かって基板W半径の約半分の距離(70mm程度)移動するまでの間は、基板Wの回転速度を2000rpm以上に維持する。一方、液位置P1が中心部WCから基板W半径の約半分の距離(70mm程度)を超えて周縁部まで移動する間は、基板Wの回転を1500rpm以下まで減速する。これにより、リンス液と不活性ガスとを確実に干渉させるとともに安定して境界Bを形成することができる。
【0163】
(7−7)気液供給ノズルの移動速度
基板Wの中心部WCから周縁部に向かって移動する液位置P1およびガス位置P2の移動速度が高すぎると、基板W上に十分な量の不活性ガスを吐出することができない。この場合、基板W上のリンス液を除去することが難しくなり、境界Bが安定して形成されにくくなる。
【0164】
また、基板Wの中心部WCから周縁部に向かって移動する液位置P1およびガス位置P2の移動速度が低すぎると、リンス液と不活性ガスとの干渉が大きくなり、基板Wの表面からリンス液が跳ねやすくなる。
【0165】
そこで、リンス液と不活性ガスとを確実に干渉させるとともに安定して境界Bを形成するために、気液供給ノズル453の移動速度は、2mm/sec以上15mm/sec以下であることが好ましい。
【0166】
(8)効果
上記のように、本実施の形態に係る現像処理装置DEVにおいては、洗浄乾燥工程が開始されることにより、基板Wが回転するとともに気液供給ノズル453の液体ノズル453aが回転する基板Wの中心部WCの上方の位置まで移動する。この状態で、液体ノズル453aから回転する基板Wにリンス液が吐出される。これにより、回転する基板W上の中心部WCに吐出されたリンス液が基板Wの周縁部に向かって広がることにより、基板Wの全面に液層RLが形成される。
【0167】
続いて、気液供給ノズル453が基板Wの外方位置に向かって移動する。ガスノズル453bが回転する基板Wの中心部WCの上方位置に到達することにより、気液供給ノズル453が一時的に停止する。気液供給ノズル453が停止した状態で、回転する基板W上の中心部WCに一定時間不活性ガスが吐出される。これにより、基板W上の中心部WCに乾燥領域DAが形成される。それにより、リンス液の液層RLと乾燥領域DAとの間に安定して境界Bが形成される。
【0168】
その後、気液供給ノズル453が再び基板Wの外方位置に向かって移動する。ガス位置P2においては、基板Wの表面が強制的に乾燥される。したがって、基板Wの表面が親水性を有する部分と疎水性を有する部分とを含む場合でも、ガス位置P2では確実にリンス液が除去される。
【0169】
基板W上に吐出されたリンス液は、遠心力により基板W上の周縁部に向かって流れる。そのため、ガス位置P2が液位置P1の移動経路をたどるように移動されることにより、リンス液の液層RLと乾燥領域DAとの間に安定して境界Bが形成された状態で、基板W上の中心部WCに形成された乾燥領域DAが基板W上の中心部WCから周縁部に向かって拡大される。このように、基板W上に形成される乾燥領域DAの外側に確実にリンス液の液層RLが形成される。それにより、乾燥領域DA以外の基板W上の領域が遠心力により乾燥することが防止される。
【0170】
これらより、基板W上に乾燥むらが生じることが確実に防止される。その結果、洗浄後の基板Wに付着するリンス液に起因する基板Wの処理不良を防止することができる。
【0171】
(9)他の実施の形態
(9−1)
気液供給ノズル453は、液体ノズル453aおよび気体ノズル453bの軸心L1,L2が基板Wの表面に対して傾斜するようにノズルアーム452に取り付けられてもよい。
【0172】
例えば、リンス液および不活性ガスが基板の回転方向に沿って基板W上に吐出されるように、気液供給ノズル453がノズルアーム452に取り付けられる。これにより、液体ノズル453aおよび気体ノズル453bからそれぞれ吐出されるリンス液および不活性ガスが基板Wの表面に接触する際に、リンス液および不活性ガスと基板Wの表面との間で発生する衝突力が低減される。その結果、リンス液が跳ねることを十分に抑制することができる。
【0173】
(9−2)
上記実施の形態では、基板W上にリンス液を吐出しつつ不活性ガスを吐出することにより基板Wを乾燥させる基板洗浄方法について説明したが、この基板洗浄方法は、上記の現像処理に限らず、基板Wを洗浄および乾燥する工程を含む種々の処理に適用することができる。
【0174】
(9−3)
上記実施の形態では、基板Wを乾燥させるために基板W上に不活性ガスを吐出する例を説明したが、基板Wを乾燥させるための気体として、不活性ガスに代えて空気等の他の気体を用いてもよい。
【0175】
(10)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0176】
上記実施の形態においては、液体ノズル453aが第1のノズルの例であり、気体ノズル453bが第2のノズルの例であり、吐出口BHaが第1の吐出口の例であり、吐出口BHbが第2の吐出口の例である。
【0177】
また、現像処理装置DEVが基板洗浄装置の例であり、スピンチャック410が基板保持手段の例であり、モータ411および回転軸412が回転駆動手段の例である。
【0178】
さらに、モータ450、回転軸451およびノズルアーム452が第1のノズル移動手段および第2のノズル移動手段の例であり、制御部490が制御手段の例であり、モータ450、回転軸451、ノズルアーム452およびケーシング454が保持手段の例である。
【0179】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、種々の基板の処理に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0181】
1 インデクサブロック
2 反射防止膜用処理ブロック
3 レジスト膜用処理ブロック
4 現像処理用ブロック
5 インターフェースブロック
6 露光装置
10 キャリア載置台
11 メインコントローラ
20,21 反射防止膜用熱処理部
30,31 レジスト膜用熱処理部
40,41 現像用熱処理部
100 基板処理装置
200 反射防止膜用塗布処理部
300 レジスト膜用塗布処理部
400 現像処理部
410 スピンチャック
411 モータ
412 回転軸
413 内側カップ
414 外側カップ
415 待機ポッド
416 ガイドレール
417 アーム駆動部
418 ノズルアーム
421 現像液ノズル
422 現像液吐出口
431 現像液供給管
450 モータ
451 回転軸
452 ノズルアーム
453 気液供給ノズル
453a 液体ノズル
453b ガスノズル
454 ケーシング
450 モータ
461 リンス液供給管
471 不活性ガス供給管
AHL 密着強化剤塗布処理部
B 境界
BARC,RES 塗布ユニット
BHa,BHb 吐出口
C キャリア
CP クーリングプレート
CR1 第1のセンターロボット
CR2 第2のセンターロボット
CR3 第3のセンターロボット
CR4 第4のセンターロボット
CRH1〜CRH4 ハンド
DA 乾燥領域
DEV 現像処理装置
EEW エッジ露光部
G1 現像液供給源
G2 リンス液供給源
G3 不活性ガス供給源
HP ホットプレート
IDa,IDb 内径
IFR インターフェース用搬送機構
IR インデクサロボット
IRH ハンド
LC ローカルコントローラ
L1,L2 軸心
ND1 距離
P1 液位置
P2 ガス位置
PASS1〜PASS8 基板載置部
PHP 熱処理ユニット
RBF 戻りバッファ
RL 液層
SBF 送りバッファ
UHa,UHb 接続孔
V1〜V3 バルブ
W 基板
WC 中心部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の洗浄および乾燥を行う基板洗浄方法であって、
基板を略水平に保持しつつ基板に垂直な軸の周りで回転させる工程と、
リンス液を吐出する第1のノズルを用いて回転する基板上の中心部にリンス液を吐出する工程と、
前記第1のノズルから吐出されたリンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から基板上の周縁部に向かって一定距離移動するように前記第1のノズルを移動させる工程と、
前記リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から一定距離離間した状態を保持しつつ、気体を吐出する第2のノズルを用いて基板上の中心部に一定時間気体を吐出することにより基板上の中心部に乾燥領域を形成する工程と、
基板上の中心部に乾燥領域が形成された後、前記リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に向かって連続的に移動するように前記第1のノズルを移動させるとともに、前記第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置が前記リンス液を受ける基板上の位置から前記一定距離離間しつつ前記リンス液を受ける基板上の位置の移動経路をたどるように前記第2のノズルを連続的に移動させる工程とを備えることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】
基板を回転させる工程は、
前記リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部に位置する状態で基板が第1の回転速度で回転し、前記リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に位置する状態で基板が前記第1の回転速度より低い第2の回転速度で回転するように基板の回転速度を段階的または連続的に変化させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の基板洗浄方法。
【請求項3】
前記一定距離は、12mm以上22mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
前記第1のノズルはリンス液を吐出する第1の吐出口を有し、
前記第2のノズルは、気体を吐出する第2の吐出口を有し、
基板の表面から前記第1の吐出口までの高さおよび基板の表面から前記第2の吐出口までの高さは、10mm以上40mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項5】
前記第1および第2の吐出口の内径は、2mm以上6mm以下であることを特徴とする請求項4記載の基板洗浄方法。
【請求項6】
前記第1の吐出口から吐出されるリンス液の流量は、150mL/min以上800mL/min以下であり、
前記第2の吐出口から吐出される気体の流量は、10L/min以上40L/min以下であることを特徴とする請求項4または5記載の基板洗浄方法。
【請求項7】
基板の洗浄および乾燥を行う基板洗浄装置であって、
基板を略水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段により保持された基板をその基板に垂直な軸の周りで回転させる回転駆動手段と、
回転する基板上にリンス液を吐出する第1のノズルと、
前記第1のノズルを移動させる第1のノズル移動手段と、
回転する基板上に気体を吐出する第2のノズルと、
前記第2のノズルを移動させる第2のノズル移動手段と、
前記基板保持手段、前記回転駆動手段、前記第1のノズル移動手段および前記第2のノズル移動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記回転駆動手段により基板を略水平に保持しつつ基板に垂直な軸の周りで回転させ、回転する基板上の中心部に前記第1のノズルからリンス液を吐出させ、前記第1のノズルから吐出されたリンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から基板上の周縁部に向かって一定距離移動するように前記第1のノズル移動手段により前記第1のノズルを移動させ、前記リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部から一定距離離間した状態を保持しつつ、基板上の中心部に一定時間前記第2のノズルから気体を吐出させることにより基板上の中心部に乾燥領域を形成し、基板上の中心部に乾燥領域が形成された後、前記リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に向かって連続的に移動するように前記第1のノズル移動手段により前記第1のノズルを移動させるとともに、前記第2のノズルから吐出された気体を受ける基板上の位置が前記リンス液を受ける基板上の位置から前記一定距離離間しつつ前記リンス液を受ける基板上の位置の移動経路をたどるように前記第2のノズル移動手段により前記第2のノズルを連続的に移動させることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記リンス液を受ける基板上の位置が基板上の中心部に位置する状態で基板が第1の回転速度で回転し、前記リンス液を受ける基板上の位置が基板上の周縁部に位置する状態で基板が前記第1の回転速度より低い第2の回転速度で回転するように前記回転駆動手段により基板の回転速度を段階的または連続的に変化させることを特徴とする請求項7記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記一定距離は、12mm以上22mm以下であることを特徴とする請求項7または8記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
前記第1のノズルおよび前記第2のノズルを保持する保持手段をさらに備え、
前記第1のノズルはリンス液を吐出する第1の吐出口を有し、
前記第2のノズルは、気体を吐出する第2の吐出口を有し、
前記保持手段は、基板の表面から前記第1の吐出口までの高さおよび基板の表面から前記第2の吐出口までの高さが10mm以上40mm以下となるように前記第1のノズルおよび前記第2のノズルを保持することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項11】
前記第1および第2の吐出口の内径は、2mm以上6mm以下であることを特徴とする請求項10記載の基板洗浄装置。
【請求項12】
前記第1の吐出口から吐出されるリンス液の流量は、150mL/min以上800mL/min以下であり、
前記第2の吐出口から吐出される気体の流量は、10L/min以上40L/min以下であることを特徴とする請求項10または11記載の基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−19002(P2012−19002A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154509(P2010−154509)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(506322684)株式会社SOKUDO (158)
【Fターム(参考)】