説明

基板洗浄方法及び基板洗浄装置

【課題】洗浄液を基板裏面側の接着剤に接触させないようにしながら、確実かつ効率的に基板表面を洗浄できるようにする。
【解決手段】基板洗浄装置10は、基板12を下向き姿勢で支持できる基板支持部16と、液体支持面22を有する洗浄板24であって、基板支持部16に支持された基板12の第1面12aに液体支持面22が所定寸法の隙間Gを介して対向できる作業位置に、上向き姿勢で配置される洗浄板24と、洗浄板24の液体支持面22の中央領域22aに洗浄液を供給する洗浄液供給部26と、洗浄板24を、液体支持面22に略直交する洗浄板軸線24aを中心に回転させる洗浄板駆動部28とを備える。基板洗浄装置10は、洗浄板軸線24aを中心に回転する洗浄板24の液体支持面22に沿って流動する洗浄液を、基板12の第1面12aに接触させて、第1面12aを洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面を洗浄するための基板洗浄方法及び基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造技術において、所定厚みのウエハの一表面に回路を形成した後、回路形成表面(以下、回路面と称する。)にフィルムやガラス等からなる支持板を保護及び支持のために貼付した状態で、回路面の反対側の裏面を研削してウエハの厚みを一様に削減し、薄肉化したウエハを切削により分断する(一般にダイシングと称する。)ことで複数の半導体チップを作製する手法が知られている。ダイシングに際しては、薄肉化したウエハの裏面に保護及び支持用の支持フィルムを貼付する一方、ウエハの回路面から支持板を剥離して、露出した回路面を切削する。ここで、支持板を剥離したウエハの回路面に、支持板を貼付するために用いられていた接着剤が残留する場合があるので、ダイシングを実施する前に、一般に回路面を洗浄している。
【0003】
例えば特許文献1は、「ウエハを破損させることなく容易かつ迅速にウエハをサポートプレートから剥離することが可能な基板処理装置および基板処理方法」を開示する。特許文献1には、「気体供給手段11は、厚さ方向に貫通している気体供給口11a、真空口11bおよび溶液/気体供給口11cを有している。」、「気体供給手段11は、溶解液が供給されることによって溶解した接着剤層3に対して気体を供給することによって、接着剤層3にサポートプレート2から基板1を分離する方向に圧力を加える。このとき、サポートプレート2は気体供給手段11に固定されているため、接着剤層3に加わる圧力によって基板1をサポートプレート2から剥離することができる。」、「洗浄液供給手段は、基板1からサポートプレート2を剥離した後、基板1の表面を洗浄する手段である。」、「気体供給手段11の真空口11bおよび溶液/気体供給口11cは、洗浄液供給手段の真空口および洗浄液供給口を兼ねている。」、「気体供給手段11を基板1と対向するように配置し、洗浄液供給口11cから洗浄液を供給する。そして、洗浄液供給口11cから供給された洗浄液は、気体供給手段11の端に環状に設けられた真空口11bから吸引される。このときの洗浄液の流れを、図9中に矢印によって示す。これにより、露出しているダイシングテープ4aは、洗浄液に曝されることなく、基板1を良好に洗浄することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−059776号公報(段落0008、0023、0026、0035、0037、0071)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体チップの作製工程におけるダイシング前のウエハ洗浄工程のように、支持体(ウエハの場合は支持フィルム)を基板の裏面(第2面)に貼付した状態で、基板の表面(第1面)を例えば残留接着剤の除去の目的で洗浄する際に、支持体を基板裏面に貼付するために用いられている接着剤に、表面洗浄用の洗浄液が接触しないようにすることが要求される場合がある。この場合には、洗浄液を基板裏面側の接着剤に接触させないようにしながら、より確実かつ効率的に基板表面を洗浄できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、基板洗浄方法であって、第1面及び第1面の反対側の第2面を有する基板と、液体支持面を有する洗浄板とを用意するステップと、基板を、第1面が下方を向く下向き姿勢にするステップと、洗浄板を、液体支持面が上方を向く上向き姿勢にするステップと、下向き姿勢の基板と上向き姿勢の洗浄板とを、第1面と液体支持面とが予め定めた寸法の隙間を介して対向する作業位置に配置するステップと、上向き姿勢の洗浄板の液体支持面の中央領域に洗浄液を供給するステップと、上向き姿勢の洗浄板を、中央領域にて液体支持面に略直交する軸線として洗浄板に定められる洗浄板軸線を中心に回転させるステップと、洗浄板の液体支持面に沿って流動する洗浄液を基板の第1面に接触させて、基板の第1面を洗浄するステップと、を含む基板洗浄方法である。
【0007】
本発明の他の態様は、第1面及び第1面の反対側の第2面を有する基板の、第1面を洗浄する基板洗浄装置において、基板を、第1面が下方を向く下向き姿勢で支持できる基板支持部と、液体支持面を有する洗浄板であって、基板支持部に支持された基板の第1面に液体支持面が予め定めた寸法の隙間を介して対向できる作業位置に、液体支持面が上方を向く上向き姿勢で配置される洗浄板と、洗浄板の液体支持面の中央領域に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、洗浄板を、中央領域にて液体支持面に略直交する軸線として洗浄板に定められる洗浄板軸線を中心に回転させる洗浄板駆動部とを具備し、洗浄液を基板の第1面に接触させて、基板の第1面を洗浄することができる、基板洗浄装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る基板洗浄方法によれば、基板をその第1面が下方を向く下向き姿勢にする一方、洗浄板をその液体支持面が上方を向く上向き姿勢にして、第1面と液体支持面とが所定の隙間を介して互いに対向する作業位置で、洗浄工程が実行される。
【0009】
本発明の他の態様に係る基板洗浄装置によれば、基板支持部が、基板をその第1面が下方を向く下向き姿勢で支持する一方、洗浄板を、その液体支持面が上方を向く上向き姿勢で、かつ液体支持面が基板の第1面に対し所定の隙間を介して対向する作業位置に配置した状態で、洗浄工程が実行される。
【0010】
したがって、本発明の上記いずれの態様によっても、洗浄板の回転に伴って生じる遠心力により液体支持面の中央領域から外方へ流れる洗浄液を、回転する液体支持面に追従させて回転方向へ移動させながら基板の第1面に満遍無く接触させることができ、その結果、洗浄液の、基板の第1面に接触する部分を継続して迅速に更新しながら、洗浄液により第1面を確実かつ効率的に洗浄することができる。しかも、本発明の上記いずれの態様も、上向き姿勢の洗浄板の液体支持面を洗浄液が流動する構成であるから、基板の第2面に別部材である支持体を貼付している場合であっても、洗浄液を支持体に接触しない位置に容易に配置できる。したがって、支持体を基板の第2面に貼付するために用いられる接着剤が、洗浄液により洗浄されて溶解することを、未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態による基板洗浄装置を模式図的に示す一部断面図である。
【図2】図1の基板洗浄装置の洗浄板ユニットを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による基板洗浄方法を適用可能な基板の斜視図である。
【図4】図1の基板洗浄装置を用いた本発明の第1の実施形態による基板洗浄方法を示す図である。
【図5】図4の基板洗浄方法における洗浄ステップを示す拡大断面図である。
【図6】図4の洗浄ステップを模式図的に示す平面図である。
【図7】(a)〜(g)図1の基板洗浄装置で使用可能な種々の洗浄板を模式図的に示す平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による基板洗浄装置を模式図的に示す一部断面図である。
【図9】図8の基板洗浄装置を用いた本発明の第2の実施形態による基板洗浄方法を示す図で、洗浄ステップを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態による基板洗浄装置10を示す図、図3は、本発明の実施形態による基板洗浄方法を適用可能な基板12を示す図、図4〜図6は、基板洗浄装置10を用いた本発明の第1の実施形態による基板洗浄方法を示す図である。
【0013】
図示の基板洗浄方法及び基板洗浄装置10は、第1面12aとその反対側の第2面12bとを有する基板12に対し、別部材である支持体14を第2面12bに貼付した状態で、第1面12aを例えば残留接着剤の除去の目的で洗浄するものであり、例として、半導体チップの作製工程におけるダイシング前のウエハ洗浄工程に適用できる。ダイシング前のウエハ洗浄工程の場合、基板(ウエハ)12の第2面12bに貼付される支持体14は、後述する支持フィルム14である。しかし、本発明の一態様に係る基板洗浄方法、及び本発明の他の態様に係る基板洗浄装置の用途は、これに限定されない。
【0014】
基板洗浄装置10は、第2面12bに支持体14を貼付した基板12を、第1面12aが重力方向下方を向く下向き姿勢で支持できる基板支持部16を備える(図1、図4)。基板支持部16は、支持体14に接触する表面18aを有して基板12及び支持体14を表面18aに固定的に支持するテーブル18と、テーブル18の表面18aに基板12及び支持体14を解除可能に固定する固定機構20とを備える。テーブル18は、外力に抗して基板12及び支持体14を表面18a上に安定して支持できかつ固定できるに十分な剛性を有する。テーブル18は、例えば、表面18aが真空吸着面として作用する有孔体として構成される。テーブル18の表面18aが真空吸着面として作用する構成では、固定機構20は、テーブル18の表面18aに連通する真空ポンプ等を含む真空装置から構成されて、真空作用によりテーブル表面18aに基板12及び支持体14を解除可能に固定する。また、基板12や支持体14等の支持対象物の素材によっては、固定機構20を磁石装置から構成することもできる。なお、テーブル18及び固定機構20の構成は、特に限定されない。
【0015】
基板洗浄装置10は、液体支持面22を有する洗浄板24と、洗浄板24の液体支持面22の中央領域22aに洗浄液L(図5)を供給する洗浄液供給部26と、洗浄板24を、中央領域22aにて液体支持面22に略直交する軸線として洗浄板24に定められる洗浄板軸線24aを中心に回転させる洗浄板駆動部28とを、さらに備える(図1、図2)。洗浄板24は、基板支持部16に支持された基板12の第1面12aに液体支持面22が予め定めた寸法の隙間Gを介して対向できる作業位置(図4)に、液体支持面22が重力方向上方を向く上向き姿勢で配置される。洗浄板24は、洗浄板駆動部28による回転時に自己形状を保持して液体支持面22に洗浄液Lを支持できる剛性を有する。洗浄板24の液体支持面22は、洗浄液Lを全体に円滑に行き渡らせる鏡面状の表面構造を有することができる。
【0016】
図示構成では、洗浄板24は、液体支持面22を有する板状の主部30と、主部30の中心に連結され、洗浄板軸線24aに沿って延びるとともに液体支持面22の中央領域22aに開口する中空の軸部32とを有する。洗浄板24は、軸部32に取り付けた軸受装置34を介してハウジング36に回転自在に支持される。ハウジング36は、洗浄板24の少なくとも主部30を回転自在に収容する洗浄室38を、内部に画定する。
【0017】
洗浄液供給部26は、洗浄液供給源40と、洗浄液供給源40から供給された洗浄液Lを洗浄板24の液体支持面22の中央領域22aに向けて放出するノズル42とを有する。図示構成では、洗浄液供給源40とノズル42とを相互に接続して洗浄液Lを流通させる液管44が、洗浄板24の中空の軸部32に収容される。また図示構成では、液体支持面22の中央領域22aにおける軸部32の開口部に、中央領域22aに供給される洗浄液Lを一時的に受け止めることができる肩面46が形成され、ノズル42が、液管44の末端で肩面46に向けて洗浄液Lを放出するようになっている。
【0018】
洗浄板駆動部28は、ハウジング36に固定して支持されるエアモータ等の原動機48と、原動機48の回転出力を洗浄板24の軸部32に伝達するベルト/プーリ等の動力伝達機構50とを備える。洗浄板駆動部28は、洗浄板24を前述した作業位置に配置した状態で、基板支持部16に支持された基板12の第1面12aと洗浄板24の液体支持面22との間の隙間Gを安定して維持しながら、洗浄板軸線24aを中心に洗浄板24を回転させることができる。図示構成では、洗浄板24と洗浄板駆動部28とが、いずれもハウジング36に支持されることで、洗浄板24を前述した作業位置に配置可能な洗浄板ユニット52を構成している(図2)。
【0019】
基板支持部16、洗浄板24、洗浄液供給部26及び洗浄板駆動部28を備えた基板洗浄装置10は、洗浄板軸線24aを中心に回転する洗浄板24の液体支持面22に沿って流動する洗浄液Lを、基板支持部16が支持した基板12の第1面12aに接触させることで、液体支持面22と基板12の第1面12aとを非接触状態に維持しながら、基板12の第1面12aを洗浄することができる(図4)。この洗浄工程は、基板支持部16が、基板12をその第1面12aが重力方向下方を向く下向き姿勢で支持する一方、洗浄板24を、その液体支持面22が重力方向上方を向く上向き姿勢で、かつ液体支持面22が基板12の第1面12aに対し隙間Gを介して対向する作業位置に配置した状態で、実行される。したがって、洗浄板24の回転に伴って生じる遠心力により液体支持面22の中央領域22aから外方へ流れる洗浄液Lを、回転する液体支持面22に追従させて回転方向へ移動させながら基板12の第1面12aに満遍無く接触させることができ、その結果、洗浄液Lの、基板第1面12aに接触する部分を継続して迅速に更新しながら、洗浄液Lにより基板12の第1面12aを確実かつ効率的に洗浄することができる。しかも、上向き姿勢の洗浄板24の液体支持面22を洗浄液Lが流動する構成であるから、洗浄液Lを、基板12の第2面12bに貼付した支持体14に接触しない位置に容易に配置できる。したがって、支持体14を基板第2面12bに貼付するために用いられる接着剤が、洗浄液Lにより洗浄されて溶解することを、未然に防止できる。
【0020】
基板洗浄装置10を用いた本発明の第1の実施形態による基板洗浄方法は、上記したように、第1面12a及び第2面12bを有する基板12と、液体支持面22を有する洗浄板24とを用意するステップと、基板12を、第1面12aが重力方向下方を向く下向き姿勢にするステップと、洗浄板24を、液体支持面22が重力方向上方を向く上向き姿勢にするステップと、下向き姿勢の基板12と上向き姿勢の洗浄板24とを、第1面12aと液体支持面22とが予め定めた寸法の隙間Gを介して互いに対向する作業位置に配置するステップと、上向き姿勢の洗浄板24の液体支持面22の中央領域22aに洗浄液Lを供給するステップと、上向き姿勢の洗浄板24を、中央領域22aにて液体支持面22に略直交する軸線として洗浄板24に定められる洗浄板軸線24aを中心に回転させるステップと、作業位置で、洗浄板軸線24aを中心に回転する洗浄板24の液体支持面22に沿って流動する洗浄液Lを基板12の第1面12aに接触させて、基板12の第1面12aを洗浄するステップとを有する。
【0021】
上記した基板洗浄方法では、基板12の第1面12aを洗浄する際に、洗浄液Lを第1面12aに接触させた状態で、基板支持部16が支持した基板12の第1面12aと洗浄板24の液体支持面22とを、洗浄板軸線24aを中心とする洗浄板24の回転方向以外の方向へ相対的に移動させることができる。この相対移動を実施するべく、基板洗浄装置10は、洗浄板24と基板支持部16に支持された基板12とを、第1面12aに略直交する軸線としてテーブル18上で基板12に定められる基板軸線12cを中心に、相対的に回転させる回転駆動部54をさらに備えている。図示構成では、回転駆動部54は、基板軸線12cを中心にテーブル18を回転させるテーブル駆動部(図示しない原動機及び動力伝達機構を含む)として構成される。そして、上記基板洗浄方法における洗浄ステップは、洗浄液Lを第1面12aに接触させた状態で、基板軸線12cを中心に、基板12と洗浄板24とを相対的に回転させるステップを含むものとなる。
【0022】
回転駆動部54を備えることにより、液体支持面22に支持されている洗浄液Lと基板12の第1面12aとの接触時の相対移動速度を容易に増加させることができ、また、第1面12aよりも小さな液体支持面22を用いて第1面12aを洗浄できる。その結果、洗浄液Lによる洗浄効率を向上させることができる。なお、回転駆動部54を、基板軸線12cを中心にテーブル18を回転させるテーブル駆動部として構成する代りに、又はそれに加えて、基板軸線12cを中心に洗浄板ユニット52を回転させる洗浄板ユニット駆動部として構成することもできる。また、基板支持部16が支持した基板12の第1面12aと洗浄板24の液体支持面22とを、基板軸線12cを中心とする回転以外の動作(例えば直線往復動作)で相対的に移動させることもできる。しかし、機械構成及び制御構成の両観点で、回転駆動部54を備えることが有利である。
【0023】
上記した基板洗浄方法では、下向き姿勢の基板12と上向き姿勢の洗浄板24とを作業位置に配置する際に、基板12と洗浄板24とを予め定めた作業位置に精度良く迅速に位置決めすることができる。この位置決めを実施するべく、基板洗浄装置10は、洗浄板24と基板12を支持するテーブル18とを、液体支持面22と基板12の第1面12aとが対向しない待機位置と、液体支持面22と基板12の第1面12aとが略一様な隙間Gを介して略平行に対向する作業位置との間で、相対的に移動させるとともに、作業位置に位置決めする位置決め駆動部56をさらに備える。図示構成では、位置決め駆動部56は、テーブル18を待機位置と作業位置との間で移動させるテーブル駆動機構(図示しない原動機及び動力伝達機構を含む)として構成される。位置決め駆動部56を備えることにより、待機位置で、基板支持部16に基板12を支持させた後、基板12と洗浄板24とを作業位置に精度良く迅速に位置決めして配置することができる。また、基板洗浄後、待機位置で基板12を基板支持部16から容易に脱離することができる。
【0024】
上記した基板洗浄方法を適用可能な一例としての基板12は、図3に示すように、基板軸線12cを中心とする円形面からなる第1面12a及び第2面12bを有する円板状部材である。基板12の第1面12a及び第2面12bは、いずれも略平坦面であって、互いに略平行に配置される。基板12の第2面12bには、第2面12bよりも大きな表面14aを有する円板状の支持体14が、図示しない接着剤を用いて貼付される。基板12が、半導体チップの母材となるウエハである場合、支持体14は、裏面研削したウエハのダイシングに際し、ウエハの裏面(第2面12b)に保護及び支持のために貼付される可撓性を有する支持フィルムである。この場合、支持体(支持フィルム)14の外周縁に沿って配置可能な環状の形状及び寸法を有するとともに、支持体(支持フィルム)14よりも高い剛性を有するフレーム部材58が、図示しない接着剤等の接合手段を用いて支持体(支持フィルム)14に固定される。
【0025】
基板12は、例えば、シリコン、ガリウムヒ素、水晶、サファイヤ、ガラス等からなるウエハや他の基板であることができる。基板12が円板状の形状を有する場合、基板12の直径は、例えば約50mm〜約500mmであることができる。基板12がウエハである場合、第1面12aは、所要の回路パターンが形成された回路面である。ウエハの厚みは、例えば約0.5mm〜約1mm程度であり、直径と共に標準化されている。また、裏面研削後の半導体チップの厚みは、例えば約50μm〜約100μmである。なお、基板12の素材、形状、寸法等は特に限定されない。
【0026】
支持体(支持フィルム)14は、柔軟な膜状要素であり、例えば、樹脂等から全体に一様な厚みに作製される。支持体(支持フィルム)14は、基板(ウエハ)12のダイシングに際して、所望の接着剤により基板(ウエハ)12の第2面(裏面)12bに固着されることで第2面12bを保護及び支持することができる。この接着剤として放射線硬化型の接着剤を使用する場合には、支持体(支持フィルム)14は十分な放射線透過性を有することが望ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂等からなるポリマーフィルムであることができる。また、一態様として支持体(支持フィルム)14は、基板(ウエハ)12の第2面(裏面)12bを、ダイシングの間、汚損しないように保護し得る物性を有することが望ましい。この場合、支持体(支持フィルム)14の厚みは、例えば約5μm〜約200μmである。なお、図示の支持体(支持フィルム)14は、基板12の円板形状に相似する円形の形状(基板軸線12cを共有する)を備えているが、基板12の第2面12bよりも大きな表面14aを有する点を除いて、支持体14の素材、形状、寸法等は特に限定されない。
【0027】
基板(ウエハ)12の第2面(裏面)12bに支持体(支持フィルム)14を貼付するために用いられる接着剤は、硬化又は固化することで基板12の第2面12bに支持体14の表面14aを強固に固定した状態に保持する接着力を発揮できるものであって、例えば、硬化性接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト型接着剤を含む熱可塑性樹脂、水分散型接着剤等であることができる。ここで、硬化性接着剤は、熱や紫外線等のエネルギー線によって硬化される液状接着剤であり、溶剤系接着剤は、溶剤の蒸発により固化する液状接着剤であり、ホットメルト型接着剤は、加熱により溶融し、冷却により固化される接着剤である。また、水分散型接着剤は水中に接着剤成分が分散したものであって、水の蒸発により、固化する接着剤である。硬化性接着剤としては、エポキシ、ウレタンをベースとする一液熱硬化型接着剤、エポキシ、ウレタン、アクリルをベースとする二液混合反応型接着剤、アクリル、エポキシをベースとする紫外線硬化型、電子線硬化型接着剤が挙げられる。また、溶剤系接着剤としては、ゴム、エラストマー等を溶剤に溶解したゴム系接着剤が挙げられる。なお本願では、狭義の硬化及び固化を「固化」と総称する。
【0028】
基板12がウエハである場合、上記した接着剤は、ウエハの裏面研削工程に際して回路面(第1面12a)に保護及び支持用の支持板を貼付するために用いられる接着剤と同様のものであることができる。ダイシングに際しては、薄肉化したウエハの裏面に保護及び支持用の支持フィルム(支持体14)を貼付する一方、ウエハの回路面から支持板を剥離して、露出した回路面を切削する。ここで、支持板を剥離したウエハの回路面に、支持板を貼付するために用いられていた接着剤が残留する場合があるので、ダイシングを実施する前に、必要に応じて回路面を洗浄する。この回路面の洗浄工程に、本発明の実施形態による基板洗浄装置10及び基板洗浄方法を適用することができる。
【0029】
フレーム部材58は、例えば、金属、樹脂等から全体に一様な厚みに作製される。フレーム部材58は、支持体14の外周縁に沿って表面14aに固定されることで、フレーム部材58の内側に位置する支持体14の中央領域を伸展した状態に維持できるに十分な剛性を有する。フレーム部材58の剛性は、素材、寸法、形状等によって設定できるが、例えば支持体14に何らかの張力が加わったときにもフレーム部材58自体に顕著な撓みや変形が生じない程度の剛性であればよい。例えば、フレーム部材58がステンレス鋼製の円環状のものである場合、厚みが約1mm〜約2mm程度、内径が約350mm程度、外径が約400mm程度の寸法を有することが、特に直径30mmのシリコンウエハ用として適当である。なお、図示のフレーム部材58は、基板12の円板形状に相似する円環状の形状(基板軸線12cを共有する)を備えているが、支持体14の外周縁に沿って配置可能な形状及び寸法を有する点、及び支持体14よりも高い剛性を有する点を除いて、フレーム部材58の素材、形状、寸法等は特に限定されない。フレーム部材58は、支持体14と同一の素材から形成されてもよい。
【0030】
上記した一例としての基板12の第1面12aを洗浄するのに用いられる基板洗浄装置10の具体的態様の構成を、図1〜図6を参照してさらに詳細に説明する。
基板支持部16のテーブル18は、基板12及び支持体14の円板形状に相似する略平坦な円形の表面18aを有して、支持体14の全体を表面18aに支持することができる。固定機構20は、真空作用によりテーブル18の表面18aに基板12及び支持体14を解除可能に固定する前述した真空装置から構成できる。支持体14の外周縁に沿って固定したフレーム部材58が金属製の場合は、固定機構20を磁石装置から構成することもできる。
【0031】
洗浄板24の液体支持面22は、洗浄板軸線24aを中心とする円形面であることができる(図2)。この場合、液体支持面22の直径は、基板12の第1面12aの直径以下かつ半径以上に設定される。液体支持面22の直径が第1面12aの直径よりも小さい場合、作業位置は、基板軸線12cと洗浄板軸線24aとが互いに略平行にずれて配置される位置である(図4)。
【0032】
洗浄板24の液体支持面22は、略平坦な凹面部分60と、凹面部分60に隣接する凸面部分62とを有することができる(図1、図2)。凸面部分62は、全体として略平坦であり、凹面部分60から洗浄板軸線24aに沿った方向へ突出して位置する。凹面部分60を基準とする凸面部分62の突出高さは、例えば約1mm〜約2mmである。この構成では、作業位置において基板支持部16に支持された基板12の第1面12aと洗浄板24の液体支持面22との間に形成される隙間Gは、基板12の第1面12aと液体支持面22の凸面部分62との間に形成されることになる。隙間Gは、例えば約0.1mm〜約0.5mmである。そして洗浄板24は、洗浄板駆動部28の駆動により洗浄板軸線24aを中心に回転する間に、隙間Gを安定して維持しながら、凹面部分60を流動する洗浄液Lを基板12の第1面12aに接触させることなく、凸面部分62を流動する洗浄液Lを基板12の第1面12aに接触させることができる(図5)。
【0033】
洗浄板24の液体支持面22の凸面部分62は、洗浄板軸線24aを中心とし、かつ直径が基板12の第1面12aの半径に略等しい仮想円周Pの、少なくとも一部分を含む領域に形成される(図6)。図示構成では、凸面部分62は、仮想円周Pの全体を含む領域に形成される円環状部分であり、円形の液体支持面22の外周縁に沿って配置されて、凹面部分60の全体を囲繞する(図2)。この場合、作業位置は、基板軸線12cと洗浄板軸線24aとが、基板12の第1面12aの半径の略半分の距離だけ互いに略平行にずれて配置される位置になる(図4、図6)。
【0034】
洗浄板24の軸部32は、中空円筒形状を有し、液体支持面22の中央領域22aに設けられる肩面46は、軸部32の円筒状内周面と液体支持面22との間に円滑に延びる円錐台形状を有することができる(図1、図2)。この場合、洗浄液供給部26のノズル42は、その洗浄液放出口が洗浄板24の肩面46に対向する位置に配置される。
【0035】
洗浄板ユニット52のハウジング36は、内部に洗浄室38を画定する円筒状の外壁64を備えることができる(図1、図2)。また、洗浄室38が開口する外壁64の軸線方向上端には、洗浄室38に収容した洗浄板24の主部30に向かって内方へ張り出す環状フランジ部分66を形成できる。外壁64及び環状フランジ部分66は、洗浄板軸線24aを中心に回転する洗浄板24の液体支持面22に沿って流動して洗浄板24の外方へ飛散する洗浄液Lを、洗浄板24の外側で回収する洗浄液回収部として機能する(図5)。この構成では、ハウジング36に、外壁64及び環状フランジ部分66によって回収された洗浄液Lを図示しない洗浄液貯留部に向けて排出する排出口68を設けることができる(図1)。
【0036】
洗浄板ユニット52は、洗浄室38を陰圧にする排気部70を備えることができる(図1)。排気部70は、洗浄板24の液体支持面22に供給された洗浄液Lの蒸気を洗浄室38から吸引して、例えば図示しない濾過装置に向けて排気するように構成できる。排気部70を備えることにより、洗浄工程中に洗浄液Lの蒸気がハウジング36の外部に流出して拡散することを防止できる。
【0037】
洗浄板ユニット52は、洗浄板24の周囲空間に窒素を供給する窒素供給装置や、洗浄板24の周囲空間に温風を供給する温風供給装置等の、所要の機能を有する付属装置72をさらに備えることができる(図1)。付属装置72として窒素供給装置を備えることにより、引火性の洗浄液Lを用いた場合であっても、洗浄工程中に洗浄板24の周囲空間に窒素を継続して供給することで、雰囲気の酸素濃度を下げて洗浄液Lの発火を未然に防止することができる。また、付属装置72として温風供給装置を備えることにより、洗浄工程終了後に洗浄板24の周囲空間に温風を継続して供給することで、洗浄後の基板12の第1面12aを迅速に乾燥させることができる。これらの窒素や温風は、洗浄板24の軸部32を通して洗浄板24の周囲空間に供給することができる。
【0038】
洗浄工程に際しては、組成の異なる複数種類の洗浄液Lを用意することができる。この場合、洗浄液供給部26は、複数種類の洗浄液Lを予め定めた順序で、洗浄板24の液体支持面22の中央領域22aに供給することができる。それにより、洗浄工程では、複数種類の洗浄液Lを予め定めた順序で基板12の第1面12aに接触させることができる。例えば、洗浄力に富む一方でアセトン等の乾燥し難い溶剤を含有する第1の洗浄液Lを最初に用いて、基板12の第1面12aを洗浄した後、イソプロピルアルコール等の第2の洗浄液Lで基板12の第1面12aを洗浄して第1の洗浄液Lを除去することで、基板12の第1面12aを乾燥し易くすることができる。
【0039】
図示構成を有する基板洗浄装置10による、図3に示す基板12に対する基板洗浄方法は、以下の手順で実施される。
基板12の第2面12bに、外周縁に沿ってフレーム部材58を固定した支持体14を貼付する。基板洗浄装置10は、洗浄板ユニット52の洗浄板24が予め作業位置に設置される一方、基板支持部16のテーブル18が待機位置に置かれる。第2面12bに支持体14を貼付した基板12を、第1面12aの全体が露出する姿勢で、待機位置に置かれたテーブル18の表面18aに固定機構20により固定し、位置決め駆動部56により、テーブル18を待機位置から作業位置に移動して、基板12の第1面12aが洗浄板24の液体支持面22に対し略一様な隙間Gを介して略平行に対向する作業位置に位置決めする。作業位置では、基板12の基板軸線12cと洗浄板24の洗浄板軸線24aとが、基板12の第1面12aの半径の略半分の距離だけ互いに略平行にずれて配置され、洗浄板24の液体支持面22の凸面部分62が、洗浄板軸線24aを中心とし、かつ直径が基板12の第1面12aの半径に略等しい仮想円周Pの全体を含む領域に配置される(図4、図6)。
【0040】
作業位置において、基板12を支持したテーブル18を回転駆動部54により基板軸線12cを中心に回転させるとともに、洗浄板24を洗浄板駆動部28により洗浄板軸線24aを中心に回転させる。基板12の回転方向と洗浄板24の回転方向とは、同一であっても反対であっても良い。基板12(すなわちテーブル18)の回転速度は、例えば約2rpm〜約20rpmであり、洗浄板24の回転速度は、例えば約100rpm〜約2000rpmである。基板12及び洗浄板24は、隙間Gを安定して維持しながら、それぞれに回転する。
【0041】
洗浄板軸線24aを中心に洗浄板24を回転させながら、洗浄液供給部26により洗浄液Lを、洗浄板24の液体支持面22の中央領域22aに連続的又は断続的に供給する。このとき、ノズル42から放出される洗浄液Lは、液体支持面22の中央領域22aに設けた肩面46に一時的に受け止められた後、洗浄板24の回転に伴って生じる遠心力により液体支持面22の凹面部分60に乗り上げて外方へ流動する(図5)。洗浄液Lを肩面46で一時的に受け止めることにより、洗浄液Lが液体支持面22の凹面部分60上で広範囲に広がって流れるようになる。なお、肩面46は、図示の円錐台形状に限定されず、階段状等の他の形状を採用できるが、洗浄液Lが肩面46に残留しないような形状であることが望ましい。
【0042】
洗浄液Lは、洗浄板24の回転に伴って生じる遠心力により、基板12の第1面12aに接触することなく液体支持面22の中央領域22aから凹面部分60を外方へ流れ、凸面部分62に乗り上げたときに、回転する液体支持面22に追従して回転方向へ移動しながら基板12の第1面12aに接触する(図5)。洗浄板軸線24aを中心に回転する洗浄板24に対し、基板12が基板軸線12cを中心に回転することで、凸面部分62と第1面12aとの前述した位置及び寸法関係(図6)により、基板12の第1面12aの全体に洗浄液Lが満遍無く接触する。その結果、洗浄液Lは、基板第1面12aに接触する部分を継続して迅速に更新しながら、基板12の第1面12aを確実かつ効率的に洗浄する。
【0043】
凸面部分62は、液体支持面22の外周縁に沿って形成されているから、凸面部分62の周速度を容易に増加させることができる。したがって、凸面部分62に追従して回転方向へ移動する洗浄液Lの移動速度を容易に増加させることができ、以て、洗浄液Lによる基板第1面12aの洗浄能力を容易に向上させることができる。
【0044】
基板12の第1面12aを洗浄した洗浄液Lは、洗浄板24の回転に伴って生じる遠心力により、液体支持面22の凸面部分62から洗浄板24の外方へ飛散する。飛散した洗浄液Lは、洗浄板ユニット52のハウジング36の外壁64及び環状フランジ部分66に受け止められて、外壁64の内面に沿って流下し、排出口68から排出されて回収される(図4、図5)。このようにして、基板12の第2面12bに貼付した支持体14に洗浄液Lを接触させることなく、洗浄液Lにより確実かつ効率的に基板12の第1面12aを洗浄できる。したがって、支持体14を基板12の第2面12bに貼付するために用いられる接着剤が、洗浄液Lにより洗浄されて溶解することを、未然に防止できる。
【0045】
上記した洗浄工程の間、必要に応じて、排気部70(図1)により洗浄室38を陰圧にして、洗浄液Lの蒸気がハウジング36の外部に流出して拡散することを防止したり、付属装置72(図1)としての窒素供給装置により洗浄板24の周囲空間に窒素を供給して、引火性の洗浄液Lの発火を未然に防止したり、洗浄液供給部26(図1)から複数種類の洗浄液Lを予め定めた順序で洗浄板24の液体支持面22の中央領域22aに供給したりすることができる。また、必要に応じて洗浄工程終了後に、付属装置72(図1)としての温風供給装置により洗浄板24の周囲空間に温風を供給して、洗浄後の基板12の第1面12aを迅速に乾燥させることができる。
【0046】
図7は、基板洗浄装置10で使用可能な種々の洗浄板24の液体支持面22の構成を模式図的に示す。液体支持面22の構成は、(a)の、上記した1つの円環状の凸面部分62を含む構成に限定されず、例えば、(b)同心円状に配置される大小2個の円環状の凸面部分62を含む構成、(c)周方向へ分割された複数の弓型の凸面部分62を含む構成、(d)洗浄板24の直径に沿って直線状に配置される凸面部分62を含む構成、(e)放射状に配置される複数の凸面部分62を含む構成等を採用できる。いずれの構成でも、少なくとも1つの凸面部分62は、前述した仮想円周P(図6)の少なくとも一部分を含む領域に形成される。また、(f)及び(g)に示すように、液体支持面22の中央領域22aに、軸部32の開口(図1)や肩面46を設けない構成とすることもできる。この場合には、ノズル42を液体支持面22の上方の遊休空間に設置することができる。
【0047】
図8及び図9を参照して、本発明の第2の実施形態による基板洗浄装置80、及び基板洗浄装置80を用いた本発明の第2の実施形態による基板洗浄方法を説明する。第2の実施形態による基板洗浄装置80及び基板洗浄方法は、洗浄板24の構成が異なる点を除いて、図1〜図7を参照して説明した基板洗浄装置10及び基板洗浄方法と同様の構成を有する。したがって、対応する構成要素には同一の参照符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0048】
基板洗浄装置80は、全体に一様な平面からなる液体支持面82を有する洗浄板24を備えている。液体支持面82は、洗浄板軸線24aを中心とする円形面であることができる。この場合、液体支持面82の直径は、基板12の第1面12aの直径以下かつ半径以上に設定される。液体支持面82の直径が第1面12aの直径よりも小さい場合、作業位置は、基板軸線12cと洗浄板軸線24aとが互いに略平行にずれて配置される位置である(図8)。液体支持面82の直径が第1面12aの直径に等しい場合には、作業位置は、基板軸線12cと洗浄板軸線24aとが互いに一致する位置である。
【0049】
基板洗浄装置80は、洗浄板軸線24aを中心に洗浄板24を回転させる洗浄板駆動部28と、洗浄板24と基板支持部16に支持された基板12とを基板軸線12cを中心に相対的に回転させる回転駆動部54を備えている。洗浄板24の液体支持面82の直径が基板12の第1面12aの直径に等しい場合には、洗浄工程において、基板12を洗浄板24と同一の方向へ同一の速度で回転させる態様を除いて、基板12を適宜回転させたり回転させなかったりすることができる。
【0050】
図示構成を有する基板洗浄装置80による、図3に示す基板12に対する基板洗浄方法は、基板洗浄装置10による前述した基板洗浄方法と同様の手順で実施される。
洗浄工程では、作業位置において、基板12を支持したテーブル18を回転駆動部54により基板軸線12c(図1)を中心に回転させるとともに、洗浄板24を洗浄板駆動部28により洗浄板軸線24aを中心に回転させる。洗浄板軸線24aを中心に洗浄板24を回転させながら、洗浄液供給部26により洗浄液Lを、洗浄板24の液体支持面82の中央領域82aに連続的又は断続的に供給する。洗浄液Lは、洗浄板24の回転に伴って生じる遠心力により、基板12の第1面12aに接触しながら液体支持面82の中央領域82aから外方へ流れ、同時に、回転する液体支持面82に追従して回転方向へ移動しながら基板12の第1面12aに接触する(図9)。洗浄板軸線24aを中心に回転する洗浄板24に対し、基板12が基板軸線12cを中心に回転することで、基板12の第1面12aの全体に洗浄液Lが満遍無く接触する(液体支持面82の直径が第1面12aの直径に等しい場合には、基板12を回転させなくても良い)。その結果、洗浄液Lは、基板第1面12aに接触する部分を継続して迅速に更新しながら、基板12の第1面12aを確実かつ効率的に洗浄する。
【0051】
基板12の第1面12aを洗浄した洗浄液Lは、洗浄板24の回転に伴って生じる遠心力により、液体支持面82から洗浄板24の外方へ飛散する。飛散した洗浄液Lは、洗浄板ユニット52のハウジング36の外壁64及び環状フランジ部分66に受け止められて、外壁64の内面に沿って流下し、排出口68から排出されて回収される(図8、図9)。このようにして、基板12の第2面12bに貼付した支持体14に洗浄液Lを接触させることなく、洗浄液Lにより確実かつ効率的に基板12の第1面12aを洗浄できる。したがって、支持体14を基板12の第2面12bに貼付するために用いられる接着剤が、洗浄液Lにより洗浄されて溶解することを、未然に防止できる。
【符号の説明】
【0052】
10、80 基板洗浄装置
12 基板
12a 第1面
12b 第2面
12c 基板軸線
14 支持体
16 基板支持部
18 テーブル
20 固定機構
22、82 液体支持面
24 洗浄板
24a 洗浄板軸線
26 洗浄液供給部
28 洗浄板駆動部
32 軸部
38 洗浄室
42 ノズル
46 肩面
52 洗浄板ユニット
54 回転駆動部
60 凹面部分
62 凸面部分
64 外壁
70 排気部
72 付属装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板洗浄方法であって、
第1面及び該第1面の反対側の第2面を有する基板と、液体支持面を有する洗浄板とを用意するステップと、
前記基板を、前記第1面が下方を向く下向き姿勢にするステップと、
前記洗浄板を、前記液体支持面が上方を向く上向き姿勢にするステップと、
前記下向き姿勢の前記基板と前記上向き姿勢の前記洗浄板とを、前記第1面と前記液体支持面とが予め定めた寸法の隙間を介して対向する作業位置に配置するステップと、
前記上向き姿勢の前記洗浄板の前記液体支持面の中央領域に洗浄液を供給するステップと、
前記上向き姿勢の前記洗浄板を、前記中央領域にて前記液体支持面に略直交する軸線として前記洗浄板に定められる洗浄板軸線を中心に回転させるステップと、
前記洗浄板の前記液体支持面に沿って流動する前記洗浄液を前記基板の前記第1面に接触させて、前記基板の前記第1面を洗浄するステップと、
を含む基板洗浄方法。
【請求項2】
前記基板の前記第1面を洗浄するステップは、前記第1面に略直交する軸線として前記基板に定められる基板軸線を中心に、前記基板と前記洗浄板とを相対的に回転させるステップを含む、請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項3】
第1面及び該第1面の反対側の第2面を有する基板の、該第1面を洗浄する基板洗浄装置において、
前記基板を、前記第1面が下方を向く下向き姿勢で支持できる基板支持部と、
液体支持面を有する洗浄板であって、前記基板支持部に支持された前記基板の前記第1面に該液体支持面が予め定めた寸法の隙間を介して対向できる作業位置に、該液体支持面が上方を向く上向き姿勢で配置される洗浄板と、
前記洗浄板の前記液体支持面の中央領域に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
前記洗浄板を、前記中央領域にて前記液体支持面に略直交する軸線として前記洗浄板に定められる洗浄板軸線を中心に回転させる洗浄板駆動部とを具備し、
前記洗浄液を前記基板の前記第1面に接触させて、前記基板の前記第1面を洗浄することができる、
基板洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄板と前記基板支持部に支持された前記基板とを、前記第1面に略直交する軸線として前記基板に定められる基板軸線を中心に、相対的に回転させる回転駆動部をさらに具備する、請求項3に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記基板の前記第1面は前記基板軸線を中心とする円形面であり、前記洗浄板の前記液体支持面は前記洗浄板軸線を中心とする円形面であり、前記液体支持面の直径が前記第1面の直径以下である、請求項4に記載の基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−253185(P2012−253185A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124375(P2011−124375)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】