説明

基板洗浄装置および基板洗浄方法

【課題】 基板上に第1洗浄液の液膜が形成された状態で、基板を良好に洗浄できる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供する。
【解決手段】 回転保持部10により回転される基板Wに、第1洗浄液供給部40からの第1洗浄液が供給され、基板W上に液膜LF1が形成される。導入プレート60aおよび超音波付与部70が、退避位置から洗浄処理位置に向けて揺動させられ、基板Wの外縁部付近に配置される。これにより、基板W上に液盛りされた第1洗浄液の一部が、表面張力により基板W上から導入プレート60a上に導入され、導入プレート60aに外方液膜LF2が形成される。そして、超音波付与部70による超音波振動と、第2洗浄液の供給に基づいた波立振動とが、外方液膜LF2に付与される。これにより、基板Wへのダメージを低減させつつ、基板Wに付着するパーティクルの除去率を各段に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等(以下、単に「基板」と称する)に対して洗浄処理を施す基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波振動が付与された洗浄液を基板に供給することによって、基板表面の付着物を除去して洗浄する技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、基板表面に供給された洗浄液に超音波振動を付与することによって、基板表面の付着物を除去して洗浄する技術も、従来より知られている(例えば、特許文献2ないし4)。
【0003】
【特許文献1】特開平09−330283号公報
【特許文献2】特許第3493492号公報
【特許文献3】特開2001−087725号公報
【特許文献4】特開2006−326486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の洗浄技術において、基板上に形成された配線パターンは、洗浄液が基板に着液する付近でダメージを受け、パターン倒れ等の問題が生ずる。また、特許文献2ないし4の洗浄技術では、超音波振動が付与される付近でダメージを受け、パターン倒れ等の問題が生ずる。
【0005】
そこで、本発明では、基板上に第1洗浄液の液膜が形成された状態で、基板を良好に洗浄できる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、基板上に第1洗浄液の液膜が形成された状態で、前記基板を洗浄する基板洗浄装置であって、前記基板の周縁部付近に配置可能とされており、前記基板上の第1洗浄液を導入させることにより、前記基板の外方に外方液膜を形成可能とされた導入部と、前記基板の外方に前記外方液膜が形成される場合において、前記外方液膜に第2洗浄液を供給する供給部と、前記外方液膜に超音波振動を付与する超音波付与部と、前記超音波振動が前記外方液膜に付与されるように前記超音波付与部を動作させつつ、前記超音波振動とは異なる振動が前記外方液膜に付与されるように前記供給部から前記外方液膜に前記第2洗浄液を供給させる制御部とを備え、前記超音波付与部は、前記供給部から見て前記基板の遠方側に設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の基板洗浄装置において、前記導入部は、前記基板の周縁部付近にて前記基板の主面と略平行に配置可能なプレート、を有しており、前記外方液膜は、前記プレート上に前記第1洗浄液が導入されることにより前記プレート上に形成されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の基板洗浄装置において、前記制御部は、前記第2洗浄液の液滴を前記外方液膜に滴下させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板洗浄装置において、前記超音波付与部は、前記第2洗浄液の着液位置から見て前記基板の遠方側の位置で、前記超音波振動を付与することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板洗浄装置において、前記供給部は、1つのノズルから前記第2洗浄液を供給することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の基板洗浄装置において、前記超音波付与部は、前記導入部に対して固定配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の基板洗浄装置において、前記第1および第2洗浄液は、同種の処理液であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8の発明は、基板上に第1洗浄液の液膜が形成された状態で、前記基板を洗浄する基板洗浄方法であって、a)前記基板上の第1洗浄液が導入され、前記基板の外方に外方液膜が形成されるように、前記基板の周縁部付近に導入部を配置する工程と、b)前記外方液膜に超音波振動を付与する工程と、c)前記工程b)と並列的に実行され、前記超音波振動とは異なる振動が前記外方液膜に付与されるように、前記外方液膜に第2洗浄液を供給する工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9の発明は、請求項8に記載の基板洗浄方法において、前記工程c)は、前記第2洗浄液の液滴を前記外方液膜に滴下することを特徴とする。
【0015】
また、請求項10の発明は、請求項8または請求項9に記載の基板洗浄方法において、前記工程c)は、前記基板の周縁部付近に前記第2洗浄液を着液させ、前記工程b)は、前記着液位置から見て前記基板の遠方側の位置に前記超音波振動を付与することを特徴とする。
【0016】
また、請求項11の発明は、請求項8ないし請求項10のいずれかに記載の基板洗浄方法において、前記工程c)は、1つのノズルから前記第2洗浄液を供給することを特徴とする。
【0017】
また、請求項12の発明は、請求項8ないし請求項11のいずれかに記載の基板洗浄方法において、前記工程b)は、前記導入部に対して固定配置された超音波付与部によって、前記超音波振動を付与することを特徴とする。
【0018】
また、請求項13の発明は、請求項8ないし請求項12のいずれかに記載の基板洗浄方法において、前記第1および第2洗浄液は、同種の処理液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1ないし請求項13に記載の発明によれば、超音波振動の付与および第2洗浄液の供給を基板外方の外方液膜に対して実行することができ、超音波振動および第2洗浄液供給による振動(波立振動)を基板上に形成された液膜に伝搬させることができる。そのため、基板に付着するパーティクルの除去率を向上させつつ、基板上に形成された配線パターンへのダメージを低減させることができる。
【0020】
特に、請求項3および請求項9に記載の発明によれば、外方液膜に液滴を滴下することにより、基板上の液膜に対して波立振動をさらに良好に付与することができる。そのため、パーティクル除去率をさらに向上させることができる。
【0021】
特に、請求項4および請求項10に記載の発明によれば、超音波振動が付与される位置は、第2洗浄液の着液位置から見てさらに基板の遠方側の位置となる。そのため、基板へのダメージをさらに低減させることができる。
【0022】
特に、請求項5および請求項11に記載の発明によれば、第2洗浄液は1つのノズルから供給されており、第2洗浄液の供給に起因した基板ダメージの影響をさらに低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
<1.基板洗浄装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態における基板洗浄装置1の全体構成の一例を示す側断面図である。また、図2は、超音波付与部70および導入プレート60a付近の構成の一例を示す上面図である。また、図3は、超音波付与部70および導入プレート60a付近の構成の一例を示す側断面図である。ここで、基板洗浄装置1は、いわゆる枚葉式の基板処理装置であり、円形の基板Wの表面に付着したパーティクルなどの汚染物質を除去して洗浄する。より具体的には、基板洗浄装置1は、配線パターン等が形成された基板Wの表面(上面)に第1洗浄液の液膜LF1が形成された状態で基板Wを洗浄する。
【0025】
図1に示すように、基板洗浄装置1は、主として、回転保持部10と、飛散防止部20と、第1および第2洗浄液供給部40、50と、導入部60と、超音波付与部70と、制御部90と、を備えている。なお、図1および以降の各図には、方向関係を明確にすべく、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系が付されている。
【0026】
回転保持部10は、基板Wを保持しつつ回転する。また、回転保持部10は、基板Wの下方から薬液や純水等の処理液を供給可能とされている。図1に示すように、回転保持部10は、主として、円板形状のスピンベース11と、回転軸15と、モータ17と、を有している。
【0027】
スピンベース11は、基板Wよりも若干大きな平面サイズを有している。また、スピンベース11の上面周縁部には、複数の支持ピン12が立設されている。各支持ピン12と基板Wの周縁部とが当接することによって、基板Wは、その主面が上方に向けられた状態で、略水平姿勢にてスピンベース11側に保持される。
【0028】
回転軸15は、図1に示すように、スピンベース11の中心部下面側に垂設されている。また、回転軸15は、ベルト16を介してモータ17の出力回転軸18と連動連結されている。これにより、モータ17が駆動させられると、モータ17の駆動力は、ベルト16を介して回転軸15に伝達される。そのため、スピンベース11側に保持された基板Wは、スピンベース11および回転軸15とともに、略水平面内にて鉛直方向(略Z軸方向)に沿った回転軸心Paを中心に回転する。
【0029】
また、図1に示すように、回転軸15の内側は中空となっており、その中空部分には処理液ノズル15aが挿設されている。本実施の形態では、この処理液ノズル15aから基板W下面側に向け、薬液や純水等の処理液が供給可能とされている。さらに、回転軸15と処理液ノズル15aとの間の隙間は、不図示の不活性ガス供給源と連通接続されており、基板Wの下面側に向けて不活性ガス(例えば、アルゴン(Ar)や窒素ガス(N2)等)が供給可能とされている。
【0030】
飛散防止部20は、回転の遠心力により基板Wから飛散する処理液を捕集する。また、飛散防止部20は、捕集された処理液を、処理液の種類に応じて、回収側または廃棄側に導く。図1に示すように、飛散防止部20は、主として、飛散防止カップ21と、カップ昇降駆動機構22と、を有している。
【0031】
飛散防止カップ21は、略円環形状を有しており、スピンベース11に保持された基板Wの水平方向外方を囲繞可能とされている。また、飛散防止カップ21は、カップ昇降駆動機構22により昇降可能とされている。これにより、カップ昇降駆動機構22により飛散防止カップ21の高さ位置(Z軸方向の位置)が制御されると、飛散防止カップ21は、捕集された処理液を高さ位置に応じた排液槽(回収側または廃棄側)に案内することができる。
【0032】
また、不図示の基板搬送ユニットとスピンベース11との間で基板Wの受け渡しが行われる場合や、導入部60の導入プレート60aが基板Wの周縁部に移動させられる場合には、飛散防止カップ21の高さ位置は、下降位置(図1参照)に設定される。
【0033】
第1洗浄液供給部40は、基板W上の液膜形成に使用される第1洗浄液を基板Wの表面(上面)に供給する。図1に示すように、第1洗浄液供給部40は、主として、ノズル41と、ノズル昇降駆動機構46と、を有している。
【0034】
ノズル41は、スピンベース11に保持された基板Wの上方に配置可能とされている。図1に示すように、ノズル41は、供給管44を介して第1洗浄液供給源43と連通接続されている。また、ノズル41と第1洗浄液供給源43との間において、供給管44には流量調整弁42が設けられている。これにより、流量調整弁42が開放されると、ノズル41から第1洗浄液が吐出される。なお、本実施の形態において、第1洗浄液としては純水が使用される。
【0035】
ノズル昇降駆動機構46は、ノズル41を揺動および昇降させる駆動部である。図1に示すように、ノズル昇降駆動機構46の上端付近には、略水平方向に伸びる水平ビーム45が片持ち梁状に取り付けられている。また、水平ビーム45について、水平方向から見た基板W側の端部には、ノズル41が取り付けられている。
【0036】
これにより、ノズル昇降駆動機構46が駆動させられると、ノズル41は、回動軸Pbを中心として揺動可能となり、鉛直方向に昇降可能となる。そのため、ノズル昇降駆動機構46の駆動制御によって、ノズル41は、スピンベース11に保持された基板Wの回転中心(回転軸心Pa)の上方に移動可能とされる。そして、基板Wの回転速度が調整されつつ、基板Wの回転中心付近にノズル41からの第1洗浄液が供給されると、基板Wの表面には第1洗浄液の液膜LF1が形成される。
【0037】
なお、基板W上に第1洗浄液の基板側液膜LF1を液盛りする場合において、例えば、回転保持部10による基板Wの回転速度は100(rpm)程度に、流量調整弁42による第1洗浄液の流量は300(mL/min)程度に、それぞれ設定されてもよい。これにより、基板W表面には、2〜3mm程度の液膜LF1が形成される。
【0038】
第2洗浄液供給部50は、基板W外方の導入プレート60aに外方液膜LF2が形成されている場合において、外方液膜LF2に波立振動を付与するために、導入プレート60aの上方から第2洗浄液を供給する。図1に示すように、第2洗浄液供給部50は、主として、ノズル51と、ノズル昇降駆動機構56と、を有している。
【0039】
ここで、波立振動とは、第2洗浄液が供給されることにより基板側液膜LF1および外方液膜LF2に付与される振動であり、超音波付与部70による超音波振動とは異なる振動を言うものとする。
【0040】
そして、本実施の形態における基板洗浄装置1は、基板側液膜LF1または外方液膜LF2に対して超音波振動および波立振動が付与されると、超音波振動のみが付与される場合と比較して基板Wのパーティクル除去率が飛躍的に向上するという知見に基づいてなされたものである。
【0041】
ノズル51は、波立振動が付与される場合において、基板Wの周縁部付近に移動させられた導入プレート60aの上方に配置可能とされている。図1に示すように、ノズル51は、供給管54を介して第2洗浄液供給源53と連通接続されている。また、ノズル51と第2洗浄液供給源53との間において、供給管54には流量調整弁52が設けられている。これにより、流量調整弁52が開放されると、ノズル51からは第2洗浄液の吐出が開始される。なお、本実施の形態において、第2洗浄液としては、第1洗浄液と同種の純水が使用される。
【0042】
ノズル昇降駆動機構56は、ノズル51を揺動および昇降させる駆動部である。図1に示すように、ノズル昇降駆動機構56の上端付近には、略水平方向に伸びる水平ビーム55が片持ち梁状に取り付けられている。また、水平ビーム55について、水平方向から見た基板W側の端部には、ノズル51が取り付けられている。
【0043】
これにより、ノズル昇降駆動機構56が駆動させられると、ノズル51は、回動軸Pcを中心として揺動可能となり、鉛直方向に昇降可能となる。そのため、ノズル昇降駆動機構56の駆動制御によって、ノズル51は、基板Wの周縁部付近の洗浄処理位置(図2および図3の位置)と、基板Wの遠方の退避位置との間で移動可能とされる。
【0044】
そして、ノズル51が、洗浄処理位置に移動させられることにより基板Wの周縁部付近に移動させられた導入プレート60aの上方に配置されるとともに、流量調整弁52が開放されると、ノズル51から導入プレート60a側に第2洗浄液が供給される。
【0045】
なお、ノズル昇降駆動機構56およびプレート駆動機構62により導入プレート60aの上面(さらに言うと、外方液膜LF2の液面)と、ノズル51先端との間の距離D1(図3参照)が調整され、かつ、流量調整弁52の開閉動作により第2洗浄液の流量FRが調整されることによって、ノズル51から吐出されて外方液膜LF2に着液する第2洗浄液の着液状態が制御される。例えば、ノズル51と導入プレート60aと間の距離D1が増大すると、第2洗浄液の着液状態は、液柱状態から液滴状態に遷移する。また、第2洗浄液の流量FRが減少すると、第2洗浄液の着液状態は、液柱状態から液滴状態に遷移する。
【0046】
導入部60は、基板W上に供給された第1洗浄液を基板Wの径方向AR1外方に導入することによって、基板Wの外方に外方液膜LF2を形成する。図1に示すように、導入部60は、主として、導入プレート60aと、アーム部材61と、プレート駆動機構62と、を有している。
【0047】
導入プレート60aは、図1ないし図3に示すように、基板Wの周縁部付近において基板Wの主面と略平行に配置可能な板状体である。導入プレート60aは、洗浄対象となる基板Wの表面と比較して高い親水性を有する材料(例えば、石英)にて形成されている。これにより、導入プレート60aが基板Wの周縁部付近に配置されると、基板側液膜LF1を形成する第1洗浄液が、表面張力の差により基板W側から導入プレート60a側に導入される。その結果、導入プレート60a上には、基板側液膜LF1と連続する外方液膜LF2が形成される。
【0048】
プレート駆動機構62は、導入プレート60aと、導入プレート60a側に固定配置された超音波付与部70とを、一体的に揺動および昇降させる駆動部である。図1に示すように、プレート駆動機構62は、主として、回転モータ63と、昇降モータ67と、を有している。
【0049】
回転モータ63は、昇降ベース65に取り付けられており、その回転駆動力は略鉛直方向に伸びる回転軸63aに伝達される。また、回転軸63aは、略水平方向に伸びるアーム部材61の一端部と連動連結されている。また、アーム部材61の他端部には、図1および図3に示すように、超音波付与部70が取り付けられている。さらに、超音波付与部70は、側板60bにより導入プレート60aに対して固定配置されている。
【0050】
昇降モータ67は、昇降ベース65の下方に配設されており、その回転駆動力は略鉛直方向に伸びるボールネジ66aに伝達される。また、ボールネジ66aは、昇降ベース65のフランジ65aと螺合されている。さらに、フランジ65aには、ボールネジ66aと略平行に配設されたガイド66が挿通されている。
【0051】
これにより、回転モータ63が回転駆動させられると、導入プレート60aおよび超音波付与部70は、回転軸63aを中心に揺動して、基板Wの周縁部付近の洗浄処理位置(図2および図3の位置)と、基板Wの遠方の退避位置と、の間で移動可能とされる。また、昇降モータ67の回転駆動力がボールネジ66aに伝達されると、昇降ベース65はガイド66に案内され、導入プレート60aおよび超音波付与部70は昇降する。
【0052】
なお、本実施の形態において、導入プレート60aが洗浄処理位置(基板Wの周縁部付近)に配置されているとき、導入プレート60aは、基板側液膜LF1と外方液膜LF2とが連続可能な程度に基板Wの周縁端部と下面に近接配置されている。そのため、波立振動が付与される場合において、導入プレート60aと基板Wとが接触して基板Wが損傷を受けることを防止できる。
【0053】
図4は、超音波付与部70の構成の一例を示す側断面図である。超音波付与部70は、上述のように、導入部60に対して固定配置されており、導入プレート60a上の外方液膜LF2に超音波振動を付与する。
【0054】
超音波付与部70の本体部71は、例えば、四フッ化テフロン(登録商標)(polytetrafluor ethylene)等のフッ素樹脂により形成されており、本体部71の底面側開口には振動板72が取り付けられている。
【0055】
振動板73は、略円盤形状を有しており、その主面が振動面VFとなる。すなわち、超音波振動が付与される場合、振動板73は、その主面が導入プレート60aの上面と対向するように配置される。また、振動板73の上面には、超音波発振器75からのパルス信号に応じた超音波振動を出力する振動子72が貼付されている。したがって、超音波発振器75から振動子72にパルス信号が送信されると、超音波付与部70は、外方液膜LF2に対して超音波振動を付与する。
【0056】
制御部90は、基板洗浄装置1の各構成要素の動作制御やデータ処理を実現する。図1に示すように、制御部90は、主として、RAM91と、ROM92と、CPU93と、を有している。
【0057】
RAM(Random Access Memory)91は、揮発性の記憶部であり、種々のデータが格納可能とされている。また、ROM(Read Only Memory)92は、いわゆる不揮発性の記憶部であり、例えばプログラム92aが格納される。なお、ROM92としては、読み書き自在の不揮発性メモリであるフラッシュメモリが使用されてもよい。
【0058】
CPU(Central Processing Unit)93は、ROM92に格納されているプログラム92aに従って、例えば、回転モータ63、67の回転制御、超音波付与部70により付与される超音波振動の制御、第1および第2洗浄液供給部40、50による洗浄液の吐出制御、および各ノズル昇降駆動機構46、56の昇降・揺動動作の制御等のような各構成要素の動作制御やデータ処理を所定のタイミングで行う。
【0059】
<2.基板の洗浄手順>
ここでは、超音波振動および波立振動を用いて基板Wを洗浄する手順について説明する。なお、洗浄手順に先立ち、回転保持部10により回転される基板Wに対して第1洗浄液供給部40からの第1洗浄液が供給され、基板W上に液膜LF1が形成されるものとする。また、少なくとも基板側液膜LF1の形成が完了する前の時点において、ノズル51、導入部60、および超音波付与部70は、退避位置に配置されており、流量調整弁52は、閉鎖されているものとする。さらに、基板側液膜LF1の形成が完了した後の時点において、回転保持部10による基板Wの回転処理が停止されるものとする。
【0060】
まず、回転保持部10により基板Wが回転されていない状態において、飛散防止カップ21の高さ位置が下降位置に設定され、導入プレート60aおよび超音波付与部70が、退避位置から洗浄処理位置(図2および図3の位置)に向けて揺動させられ、基板Wの外縁部付近に配置される。
【0061】
ここで、導入プレート60aは、側板60bに接続される側とは反対側の遊端側が基板Wの下面側に進入される。そして、導入プレート60a遊端側の端部上面が基板Wの周縁部下面に対向近接して配置される。これにより、導入プレート60aの上面の大部分は、基板Wの周縁端部から径方向AR1に並列配置され、基板Wにより覆われていない状態となる。
【0062】
これにより、基板W上に液盛りされた第1洗浄液の一部が、表面張力により基板W上から導入プレート60a上に導入される。その結果、導入プレート60aに外方液膜LF2が形成される。第1洗浄液供給部40からの第1洗浄液の供給を停止し、また、振動板73の振動面VFが外方液膜LF2と接液する。
【0063】
また、導入プレート60aおよび超音波付与部70の揺動動作と並列的に、ノズル51が、ノズル昇降駆動機構56の駆動により退避位置から洗浄処理位置に向かって揺動する。ただし、ノズル51の揺動動作はこのタイミングに限定されるものでなく、導入プレート60aおよび超音波付与部70の揺動動作が完了した後に、ノズル51の揺動動作が開始されてもよい。また、ノズル51の揺動動作が完了した後に、導入プレート60aおよび超音波付与部70の揺動動作が開始されてもよい。
【0064】
ここで、図1および図3に示すように、導入プレート60aおよび超音波付与部70が基板Wの周縁部付近に配置される場合において、超音波付与部70の振動板73は、ノズル51から見て基板Wの径方向AR1の遠方側に配置される。
【0065】
次に、制御部90は、超音波振動が外方液膜LF2に付与されるように超音波付与部70を動作させつつ、超音波振動とは異なる振動(波立振動)が外方液膜LF2に付与されるように第2洗浄液供給部50から外方液膜LF2に第2洗浄液を供給させる。
【0066】
より具体的には、流量調整弁52が開放され、外方液膜LF2の着液位置P3に第2洗浄液が供給される。また、第2洗浄液の供給と並行して、超音波発振器75から振動子72に向けてパルス信号が出力され、外方液膜LF2の超音波振動付与位置P4に超音波振動が付与される。この超音波振動付与位置P4は、第2洗浄液供給部50から供給される第2洗浄液の着液位置P3から見て基板W遠方側である。
【0067】
このように、本実施の形態では、外方液膜LF2に対して液滴の第2洗浄液を滴下している。そのため、基板側液膜LF1側に対して波立振動を良好に付与することができる。また、洗浄処理において、超音波振動付与および第2洗浄液の供給に起因した基板Wへのダメージを低減させつつ、基板Wに付着するパーティクルの除去率を各段に向上させることができる。
【0068】
また、超音波振動の付与だけでは基板Wにダメージを与えないが、他方、基板W上のパーティクルを良好に除去できない超音波振動の出力範囲内および発振周波数の範囲内においても、超音波振動と波立振動とを併用することにより、基板Wから良好にパーティクルを除去することができる。そのため、外方液膜LF2に超音波振動のみを付与して洗浄する場合と比較して、基板Wに付着するパーティクルの除去率を向上させつつ、基板W上に形成された配線パターンへのダメージを低減させることができる。
【0069】
さらに、図2および図3に示すように、第2洗浄液供給部50は、基板W外の位置で、かつ、1つのノズル51から外方液膜LF2に向けて第2洗浄液を供給可能とされている。これにより、ノズル51から吐出される第2の洗浄液が外方液膜LF2と衝突する範囲を最小限とすることができる。そのため、基板ダメージの影響を低減させることができる。
【0070】
なお、本実施の形態において、超音波付与部70による超音波振動の発振出力は1W以上10W以下(好ましくは、3W以上6W以下)に、発振周波数は1MHz以上6MHz以下(好ましくは、2MHz以上3MHz以下)に、それぞれ設定されている。これにより、基板Wおよび基板W上に形成された配線パターン等が、超音波振動に起因したダメージを受けることを防止できる。
【0071】
続いて、パーティクルの除去が完了すると、流量調整弁52が閉鎖されて第2洗浄液の液滴の滴下が停止されるとともに、超音波付与部70による超音波の付与が停止される。そして、超音波付与部70が退避させられて、回転保持部10により基板Wが高速に回転させられる。これにより、基板Wに付着した第1および第2洗浄液は回転の遠心力により振り切られ、基板乾燥(スピン乾燥)がなされて、洗浄処理が完了する。
【0072】
<3.本実施の形態における基板洗浄装置の利点>
以上のように、本実施の形態の基板洗浄装置1は、基板W上に基板側液膜LF1を形成するとともに、スピンベース11に保持された基板W外方の導入プレート60a上に外方液膜LF2を形成する。そして、基板洗浄装置1は、この外方液膜LF2に対して、超音波振動を付与し、第2洗浄液を供給する。これにより、基板洗浄装置1は、超音波振動および波立振動を液膜LF1、LF2に伝搬させることができる。そのため、基板Wへのダメージを低減させつつ、基板Wに付着するパーティクルの除去率を各段に向上させることができる。
【0073】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0074】
(1)本実施の形態において、第1洗浄液および第2洗浄液は、いずれも純水(同種の処理液)であるものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、第1および第2洗浄液は、SC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)などのウエハ洗浄に用いられる薬液であってもよい。また、第1および第2洗浄液は、異なる処理液であってもよい。
【0075】
(2)また、本実施の形態において、ノズル41からの第1洗浄液は、基板W上の液膜形成用に基板W上に供給され、ノズル51からの第2洗浄液は、波立振動付与のために導入部60の導入プレート60a上に供給されるものとして説明したが、第1および第2洗浄液の供給手法はこれに限定されるものでない。
【0076】
例えば、第1および第2洗浄液が同種の処理液である場合、洗浄液は、1つのノズルから供給されてもよい。この場合において、基板側液膜LF1が形成されるときには、ノズルは基板Wの回転中心上方に移動させられ、波立振動が付与されるときには、ノズルは外方液膜LF2が形成された導入プレート60aの上方に移動させられる。
【0077】
(3)また、本実施の形態において、導入部60の導入プレート60aは、回転モータ63および昇降モータ67により揺動および昇降可能とされており、第2洗浄液を吐出可能なノズル51は、ノズル昇降駆動機構56により揺動および昇降可能であるものとして説明したが、導入プレート60aおよびノズル51の揺動および昇降手法はこれに限定されるものでない。例えば、ノズル51は、導入プレート60aと同様にアーム部材61に取り付けられてもよい。この場合、揺動および昇降機構を共通化することができる。そのため、部品点数を減少させるとともに、基板洗浄装置のフットプリントを低減させることができる。
【0078】
(4)また、本実施の形態において、超音波付与部70は、導入部60に対して固定配置されているものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、導入部60の導入プレート60aの高さ位置と、超音波付与部70の振動板73の高さ位置とが、独立して位置決め可能とされるように、導入部60および超音波付与部70のハードウェアが構成されてもよい。この場合、振動板73の振動面VFと、導入プレート60aの上面との間隔を高精度に制御することが可能となり、外方液膜LF2に対して良好に超音波振動を付与することが可能となる。
【0079】
(5)また、本実施の形態において、基板Wは、支持ピン12によりスピンベース11に保持されるものとして説明したが、これに限定されるものでなく、例えば基板Wより小さい吸着チャックにより基板Wが吸着され保持されるようにしてもよい。
【0080】
この場合、基板Wを洗浄する間に導入プレート60aを配置した状態で吸着チャックを回転することで、基板Wを回転するようにしても良い。具体的には、洗浄処理時間が60秒であれば、この間に少なくとも1回転(1rpm)すればよい。これにより、基板Wの全面における洗浄効果の均一性を良好にすることができる。
【0081】
また、本実施の形態のように、支持ピン12により基板Wを保持する形態においても、スピンベース11の洗浄処理中の回転に伴い、導入プレート60aが支持ピン12と当接する位置において退避し、支持ピン12が行き過ぎると進入するように制御しながら基板Wを回転するようにしてもよい。
【0082】
(6)さらに、本実施の形態においては、1個の超音波付与部70を配置する構成としたが、基板Wの外縁部付近に超音波付与部70を複数個配置するようにしても良い。図5は、導入プレート60aおよび超音波付与部70付近の構成の他の例を示す上面図である。例えば3個の支持ピン12により保持された基板Wに対して洗浄処理が施される場合、複数(図5の場合、それぞれ3個)の導入プレート60aおよび超音波付与部70は、基板Wの周方向から見て隣接する支持ピン12の間となるように配置される。また、各超音波付与部70は、基板Wの周方向に沿って略等間隔(角度R1間隔:約120°間隔)となるように配置される。これにより、基板Wの全面における洗浄効果の均一性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態における基板洗浄装置の全体構成の一例を示す側断面図である。
【図2】超音波付与部および導入プレート付近の構成の一例を示す上面図である。
【図3】超音波付与部および導入プレート付近の構成の一例を示す側断面図である。
【図4】超音波付与部の構成の一例を示す側断面図である。
【図5】超音波付与部および導入プレート付近の構成の他の例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 基板洗浄装置
10 回転保持部
20 飛散防止部
40 第1洗浄液供給部
41、51 ノズル
50 第2洗浄液供給部
60 導入部
60a 導入プレート
70 超音波付与部
90 制御部
P3 着液位置
P4 超音波振動付与位置
LF1 基板側液膜
LF2 外方液膜
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1洗浄液の液膜が形成された状態で、前記基板を洗浄する基板洗浄装置であって、
a) 前記基板の周縁部付近に配置可能とされており、前記基板上の第1洗浄液を導入させることにより、前記基板の外方に外方液膜を形成可能とされた導入部と、
b) 前記基板の外方に前記外方液膜が形成される場合において、前記外方液膜に第2洗浄液を供給する供給部と、
c) 前記外方液膜に超音波振動を付与する超音波付与部と、
d) 前記超音波振動が前記外方液膜に付与されるように前記超音波付与部を動作させつつ、前記超音波振動とは異なる振動が前記外方液膜に付与されるように前記供給部から前記外方液膜に前記第2洗浄液を供給させる制御部と、
を備え、
前記超音波付与部は、前記供給部から見て前記基板の遠方側に設けられていることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板洗浄装置において、
前記導入部は、
前記基板の周縁部付近にて前記基板の主面と略平行に配置可能なプレート、
を有しており、
前記外方液膜は、前記プレート上に前記第1洗浄液が導入されることにより前記プレート上に形成されることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板洗浄装置において、
前記制御部は、前記第2洗浄液の液滴を前記外方液膜に滴下させることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板洗浄装置において、
前記超音波付与部は、前記第2洗浄液の着液位置から見て前記基板の遠方側の位置で、前記超音波振動を付与することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板洗浄装置において、
前記供給部は、1つのノズルから前記第2洗浄液を供給することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の基板洗浄装置において、
前記超音波付与部は、前記導入部に対して固定配置されていることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の基板洗浄装置において、
前記第1および第2洗浄液は、同種の処理液であることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項8】
基板上に第1洗浄液の液膜が形成された状態で、前記基板を洗浄する基板洗浄方法であって、
a) 前記基板上の第1洗浄液が導入され、前記基板の外方に外方液膜が形成されるように、前記基板の周縁部付近に導入部を配置する工程と、
b) 前記外方液膜に超音波振動を付与する工程と、
c) 前記工程b)と並列的に実行され、前記超音波振動とは異なる振動が前記外方液膜に付与されるように、前記外方液膜に第2洗浄液を供給する工程と、
を備えることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項9】
請求項8に記載の基板洗浄方法において、
前記工程c)は、前記第2洗浄液の液滴を前記外方液膜に滴下することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の基板洗浄方法において、
前記工程c)は、前記基板の周縁部付近に前記第2洗浄液を着液させ、
前記工程b)は、前記着液位置から見て前記基板の遠方側の位置に前記超音波振動を付与することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のいずれかに記載の基板洗浄方法において、
前記工程c)は、1つのノズルから前記第2洗浄液を供給することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項12】
請求項8ないし請求項11のいずれかに記載の基板洗浄方法において、
前記工程b)は、前記導入部に対して固定配置された超音波付与部によって、前記超音波振動を付与することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項13】
請求項8ないし請求項12のいずれかに記載の基板洗浄方法において、
前記第1および第2洗浄液は、同種の処理液であることを特徴とする基板洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−200331(P2009−200331A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41701(P2008−41701)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】