説明

基板洗浄装置及び基板洗浄方法並びに基板洗浄プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】基板の表面にダメージを与えることなく良好に洗浄することができる基板洗浄装置及び基板洗浄方法並びに基板洗浄プログラムを提供すること。
【解決手段】本発明では、洗浄液の液層(52)を形成するノズル(40)を備えた液層保持手段(25)と、基板(2)の表面を洗浄液の沸点以上に加熱する基板加熱手段(24)と、ノズル(40)を基板(2)に近接させる昇降機構(41a)とを有し、ノズル(40)に形成した液層(52)を基板加熱手段(24)で加熱した基板(2)の表面の熱で沸騰させて基板(2)の表面と液層(52)との間に蒸気層(60)を形成するように昇降機構(41a)を制御して、基板(2)の表面を洗浄することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄液で洗浄するための基板洗浄装置及び基板洗浄方法並びに基板洗浄プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体部品やフラットディスプレイなどを製造する場合には、半導体ウエハや液晶基板などの基板に対して基板洗浄装置を用いて洗浄液で洗浄処理した後に、リンス液でリンス処理し、その後、基板を乾燥させる乾燥処理を行っている。
【0003】
そして、従来の基板洗浄装置では、基板の表面を良好に洗浄するために、基板の表面に物理力を作用させて洗浄するようにしたものが知られている。たとえば、2流体ノズルを用いて基板の表面を洗浄する基板洗浄装置では、2流体ノズルによって洗浄液とガスとを霧状に混合させた混合流体を基板の表面に噴射し、噴射した混合流体によって基板の表面を洗浄するようにしている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−288390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の2流体ノズル等を用いて基板の表面に物理力を作用させて洗浄する基板洗浄装置では、洗浄液の噴射圧力等の物理力の作用で基板の表面に形成した回路パターンやエッチングパターンなどが倒壊等のダメージを受けてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明では、基板を洗浄液で洗浄する基板洗浄装置において、洗浄液の液層を形成するノズルを備えた液層保持手段と、基板の表面を洗浄液の沸点以上に加熱する基板加熱手段と、ノズルを基板に近接させる昇降機構と、ノズルに形成した液層を基板加熱手段で加熱した基板の表面の熱で沸騰させて基板の表面と液層との間に蒸気層を形成するように昇降機構を制御する制御手段とを有することにした。
【0007】
また、前記液層保持手段は、洗浄液を貯留するための洗浄液貯留部を前記ノズルに形成することにした。
【0008】
また、前記液層保持手段は、ノズルに供給する洗浄液を貯留するための洗浄液貯留カップを有することにした。
【0009】
また、前記液層保持手段は、ノズルで洗浄液を吸引するための吸引機構を有することにした。
【0010】
また、前記液層保持手段は、ノズルに洗浄液を供給するとともにノズルに形成した液層を排出するための洗浄液供給排出機構を有することにした。
【0011】
また、前記液層保持手段は、ノズルに形成した液層を排出用のガスで排出させるための液層排出機構を有することにした。
【0012】
また、前記制御手段は、洗浄液の液層を基板の表面の熱で膜沸騰させるように前記基板加熱手段を制御することにした。
【0013】
また、前記液層保持手段で保持した洗浄液の液層を基板の表面に沿って移動させる水平移動機構を有することにした。
【0014】
また、前記制御手段は、前記液層保持手段で保持した洗浄液の液層を基板の外周端よりも外方で排出させるように前記水平移動機構を制御することにした。
【0015】
また、本発明では、基板を洗浄液で洗浄する基板洗浄方法において、基板の表面を加熱するとともに基板の表面にノズルで保持した洗浄液の液層を近づけることによって基板の表面の熱で洗浄液の液層を沸騰させて基板の表面と洗浄液の液層との間に洗浄液の蒸気層を形成し、基板の表面を洗浄することにした。
【0016】
また、前記基板の表面の異物を前記洗浄液の蒸気層を介して液層に取り込むことにした。
【0017】
また、前記洗浄液の液層を基板の表面の熱で膜沸騰させることにした。
【0018】
また、前記洗浄液の液層を基板の表面に沿って相対的に移動させることにした。
【0019】
また、前記洗浄液の液層を基板の外周端よりも外方で排出させることにした。
【0020】
また、洗浄後に前記ノズルに洗浄液を供給することで洗浄後の液層を排出するとともに新たに洗浄液の液層を形成することにした。
【0021】
また、洗浄後に前記ノズルに排出用のガスを供給することで洗浄後の液層を排出することにした。
【0022】
また、本発明では、基板を洗浄液で洗浄する基板洗浄装置を用いて基板の洗浄を行うための基板洗浄プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、基板の表面を加熱する基板加熱工程と、前記基板加熱工程で加熱した基板の表面にノズルで保持した洗浄液の液層を近づけることによって基板の表面の熱で洗浄液の液層を沸騰させて基板の表面と洗浄液の液層との間に洗浄液の蒸気の層を形成する蒸気層形成工程とを基板洗浄装置に実行させることにした。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、基板の表面にダメージを与えることなく良好に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】基板洗浄装置を示す平面図。
【図2】基板処理室を示す側面模式図。
【図3】基板処理室を示す平面模式図。
【図4】ノズルを示す側面断面図。
【図5】基板洗浄方法(基板洗浄プログラム)を示す説明図。
【図6】基板処理室の動作(基板受取工程)を示す説明図。
【図7】基板処理室の動作(基板加熱工程)を示す説明図。
【図8】基板処理室の動作(液層保持工程)を示す説明図。
【図9】基板処理室の動作(蒸気層形成工程)を示す説明図。
【図10】基板処理室の動作(液層移動工程)を示す説明図。
【図11】基板処理室の動作(液層排出工程)を示す説明図。
【図12】基板処理室の動作(リンス処理工程)を示す説明図。
【図13】基板処理室の動作(乾燥処理工程)を示す説明図。
【図14】基板処理室の動作(基板受渡工程)を示す説明図。
【図15】基板処理室を示す側面模式図。
【図16】基板処理室を示す側面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る基板洗浄装置及び基板洗浄方法並びに基板洗浄プログラムの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示すように、基板洗浄装置1は、前端部に被処理体としての基板2(ここでは、半導体ウエハ。)を複数枚(たとえば、25枚。)まとめてキャリア3で搬入及び搬出するための基板搬入出部4を形成するとともに、基板搬入出部4の後部にキャリア3に収容された基板2を搬送するための基板搬送部5を形成し、基板搬送部5の後部に基板2の洗浄や乾燥などの各種の処理を施すための基板処理部6を形成している。
【0027】
基板搬入出部4は、4個のキャリア3を基板搬送部5の前壁7に密着させた状態で左右に間隔をあけて載置できるように構成している。
【0028】
基板搬送部5は、内部に基板搬送装置8と基板受渡台9とを収容しており、基板搬送装置8を用いて基板搬入出部4に載置されたいずれか1個のキャリア3と基板受渡台9との間で基板2を搬送するように構成している。
【0029】
基板処理部6は、中央部に基板搬送装置10を収容するとともに、基板搬送装置10の左右両側に基板処理室11〜22を前後に並べて収容している。
【0030】
そして、基板処理部6は、基板搬送装置10を用いて基板搬送部5の基板受渡台9と各基板処理室11〜22との間で基板2を1枚ずつ搬送するとともに、各基板処理室11〜22を用いて基板2を1枚ずつ処理するようにしている。
【0031】
各基板処理室11〜22は、同様の構成となっており、代表して基板処理室11の構成について説明する。基板処理室11は、図2及び図3に示すように、基板2を水平に保持しながら回転させるための基板保持手段23と、基板2の表面を加熱するための基板加熱手段24と、基板2を洗浄処理する洗浄液を液層の状態で保持するための液層保持手段25と、基板2をリンス処理するリンス液を基板2の表面に向けて吐出するためのリンス液吐出手段26とを有しており、これらの基板保持手段23と基板加熱手段24と液層保持手段25とリンス液吐出手段26を制御手段27で制御するように構成している。なお、制御手段27は、基板搬送装置8,10など基板洗浄装置1の全体を制御するようにしている。
【0032】
基板保持手段23は、回転軸28の上端部に円板状のテーブル29を水平に取付けるとともに、テーブル29の周縁部に基板2の周縁部と接触して基板2を水平に保持する複数個の基板保持体30を円周方向に間隔をあけて取付けている。回転軸28には、回転駆動機構31を接続しており、回転駆動機構31によって回転軸28及びテーブル29を回転させ、テーブル29に基板保持体30で保持した基板2を回転させるようにしている。この回転駆動機構31は、制御手段27に接続しており、制御手段27で回転制御するようにしている。
【0033】
また、基板保持手段23は、テーブル29の周囲に上方を開口させたカップ32を昇降自在に設け、テーブル29に載置した基板2をカップ32で囲んでリンス液の飛散を防止するとともに、洗浄液やリンス液を回収するようにしている。カップ32には、昇降機構33を接続しており、昇降機構33によってカップ32を基板2に対して相対的に上下に昇降させるようにしている。この昇降機構33は、制御手段27に接続しており、制御手段27で昇降制御するようにしている。
【0034】
基板加熱手段24は、テーブル29よりも上方にアーム34を昇降自在に配置し、アーム34の先端部に平面視で略半円弧状の支持板35を取付け、支持板35の下面(基板2の上面と対向する面)に複数個の発光素子36を取付けている。アーム34には、昇降機構37を接続しており、昇降機構37によって支持板35に取付けた発光素子36を基板2の上面に近接させた加熱位置と基板2の上面から上方へ離反させた退避位置との間で上下に移動させるようにしている。この昇降機構37は、制御手段27に接続しており、制御手段27で昇降制御するようにしている。また、発光素子36には、駆動機構38を接続しており、駆動機構38によって発光素子36のON−OFFや発光強度などの駆動を行うようにしている。この駆動機構38は、制御手段27に接続しており、制御手段27で駆動制御するようにしている。
【0035】
ここで、発光素子36は、基板2に良好に吸収される波長の光を基板2に照射して基板2の表面を加熱するものであり、発光ダイオードや半導体レーザなどを用いることができ、たとえば、400nm〜1000nmの波長領域(近赤外線領域)にピーク波長を有するAlGaAs、GaN、GaInN、AlGaInP、ZnO等の発光ダイオードを用いることができる。なお、基板加熱手段24は、基板2の上面を加熱することができればよく、光照射による場合に限られずテーブル29を加熱して基板2を加熱する熱伝導によるものやランプヒータで基板2を加熱する熱輻射によるものなどでもよい。
【0036】
そして、基板加熱手段24は、駆動機構38によって発光素子36を駆動することで、発光素子36から基板2の表面に光を照射し、その光が基板2の表面で吸収されることで基板2の表面を加熱するようにしている。
【0037】
液層保持手段25は、テーブル29よりも上方にアーム39を昇降及び水平移動自在に配置し、アーム39の先端部に円筒形状のノズル40を取付けている。アーム39には、昇降機構41aと水平移動機構41bとからなる変位機構41を接続しており、昇降機構41aによってノズル40を上下に移動させるとともに水平移動機構41bによってノズル40を基板2の中央部上方の開始位置と基板2の外方の退避位置との間で水平に移動させるようにしている。この昇降機構41a及び水平移動機構41bは、制御手段27に接続しており、制御手段27で昇降制御及び水平移動制御するようにしている。
【0038】
また、液層保持手段25は、図4に示すように、ノズル40の内部に中空状の洗浄液貯留部42を形成し、洗浄液貯留部42の下端部に円形状の開口43を形成するとともに、洗浄液貯留部42の上端部に管状の連通孔44を形成している。この連通孔44には、連通路45を接続し、連通路45に開閉弁46を介して吸引機構47(たとえば、アスピレータ)を接続するとともに、連通路45の中途部を分岐させて大気開放弁48を介して大気に開放させることができるようにしている。
【0039】
さらに、液層保持手段25は、テーブル29の外方に洗浄液を貯留する洗浄液貯留カップ49を配置し、洗浄液貯留カップ49に洗浄液を供給する洗浄液供給源50を流量調整器51を介して接続しており、流量調整器51によって洗浄液供給源50から洗浄液貯留カップ49に貯留しておく洗浄液の量を調整するようにしている。この流量調整器51は、制御手段27に接続しており、制御手段27で開閉制御及び流量制御するようにしている。
【0040】
そして、液層保持手段25は、変位機構41によってノズル40を移動させることで洗浄液貯留カップ49の上部開口からノズル40の下端部を洗浄液に浸漬させ、吸引機構47によって吸引することでノズル40の開口43から洗浄液を吸引して洗浄液貯留部42に貯留し、開閉弁46を閉塞することでノズル40の開口43に洗浄液の表面張力の作用で滴状に形成された洗浄液の液層52を保持するようにしている。
【0041】
また、液層保持手段25は、大気開放弁48を開放状態にすることでノズル40の洗浄液貯留部42に貯留した洗浄液を外部に排出するようにしている。
【0042】
なお、液層保持手段25のノズル40は、下端部に液層52を形成できればよく、円筒形状に限られず、基板2の表面に沿って水平に伸延する横棒形状のものでもよい。
【0043】
また、液層保持手段25は、吸引機構47で洗浄液を吸引する場合に限られず、大気開放弁48を開放させた状態でノズル40の下端部を洗浄液貯留カップ49に貯留した洗浄液に浸漬させ、その後、大気開放弁48を閉塞させることでノズル40の開口43に洗浄液の液層52を形成するようにしてもよい。
【0044】
また、液層保持手段25は、洗浄液貯留カップ49に貯留した洗浄液を吸引機構47で吸引する構成に限られず、図15に示すように、ノズル40に接続した連通路45に洗浄液を供給する洗浄液供給源62を開閉弁63を介して接続した構成として、洗浄液供給源62からノズル40の洗浄液貯留部42に洗浄液を直接供給するようにしてもよい。この場合には、制御手段27で開閉弁63を一定時間開放状態とした後に開閉弁63を閉塞状態とすることで、ノズル40の洗浄液貯留部42に洗浄液を供給して、ノズル40の開口43に液層52を形成することができる。また、洗浄処理後には、再び制御手段27で開閉弁63を一定時間開放状態とした後に開閉弁63を閉塞状態とすることで、処理後の洗浄液をノズル40の開口43から排出するとともにノズル40の開口43に液層52を形成することができる。このように、ノズル40に洗浄液を供給するとともにノズル40に形成した液層52を排出するための洗浄液供給排出機構を液層保持手段25に設けて、洗浄後にノズル40に洗浄液を供給することで洗浄後の液層52を排出するとともに新たに洗浄液の液層52を形成するようにしてもよい。
【0045】
さらに、液層保持手段25は、大気開放弁48を開放状態にすることでノズル40の洗浄液貯留部42に貯留した洗浄液を外部に排出する構成に限られず、図16に示すように、ノズル40に接続した連通路45に排出用のガスとして不活性ガスを供給する排出ガス供給源64を開閉弁65を介して接続した構成として、ノズル40の洗浄液貯留部42に貯留した洗浄液を不活性ガスの圧力で外部に排出するようにしてもよい。この場合には、制御手段27で開閉弁65を一定時間開放状態とした後に開閉弁65を閉塞状態とすることで、処理後の洗浄液をノズル40の開口43から排出することができる。このように、ノズル40に形成した液層52を排出用のガスで排出させるための液層排出機構を液層保持手段25に設けて、洗浄後にノズル40に排出用のガスを供給することで洗浄後の液層52を排出するようにしてもよい。
【0046】
リンス液吐出手段26は、図2及び図3に示すように、テーブル29よりも上方にアーム53を水平移動自在に配置し、アーム53の先端部にリンス液吐出ノズル54を取付けている。アーム53には、移動機構55を接続しており、移動機構55によってリンス液吐出ノズル54を基板2の中央部上方の開始位置と基板2の外方の退避位置との間で移動させるようにしている。この移動機構55は、制御手段27に接続しており、制御手段27で移動制御するようにしている。
【0047】
また、リンス液吐出手段26は、リンス液を供給するためのリンス液供給源56にリンス液吐出ノズル54を流量調整器57とリンス液供給流路58を介して接続しており、流量調整器57によってリンス液吐出ノズル54から基板2に供給するリンス液の流量を調整するようにしている。この流量調整器57は、制御手段27に接続しており、制御手段27で開閉制御及び流量制御するようにしている。
【0048】
基板洗浄装置1は、以上に説明したように構成しており、制御手段27(コンピュータ)で読み取り可能な記録媒体59に記録した基板洗浄プログラムにしたがって各基板処理室11〜22で基板2を処理するようにしている。なお、記録媒体59は、基板洗浄プログラム等の各種プログラムを記録できる媒体であればよく、ROMやRAMなどの半導体メモリ型の記録媒体であってもハードディスクやCD−ROMなどのディスク型の記録媒体であってもよい。
【0049】
上記基板洗浄装置1では、基板洗浄プログラムによって図5に示す工程に従って以下に説明するようにして各基板処理室11〜22において基板2の処理を行うようにしている。なお、以下の説明では、代表して基板処理室11での基板2の処理について説明するが、他の基板処理室12〜22でも同様の処理を行う。
【0050】
まず、基板洗浄プログラムは、図5に示すように、基板搬送装置10から基板2を基板処理室11の基板保持手段23で受取る基板受取工程を実行する。
【0051】
この基板受取工程において基板洗浄プログラムは、図6に示すように、制御手段27によって基板加熱手段24の支持板35と液層保持手段25のノズル40とリンス液吐出手段26のリンス液吐出ノズル54を退避位置に退避させるとともに、基板保持手段23の昇降機構33を制御してカップ32を所定位置まで降下させ、その後、基板搬送装置10から基板2を受け取り、基板2を基板保持体30で支持し、その後、制御手段27によって昇降機構33を制御してカップ32を所定位置まで上昇させる。
【0052】
次に、基板洗浄プログラムは、図5に示すように、基板受取工程で受取った基板2に対して洗浄液で洗浄処理する洗浄処理工程を実行する。
【0053】
この洗浄処理工程では、図5に示すように、まず、基板加熱手段24で基板2を加熱する基板加熱工程を実行する。
【0054】
この基板加熱工程において基板洗浄プログラムは、図7に示すように、制御手段27によって基板保持手段23の回転駆動機構31を制御してテーブル29及びテーブル29の基板保持体30で保持する基板2を所定回転速度で回転させるとともに、基板加熱手段24の昇降機構37を制御して支持板35及び発光素子36を基板2の表面(上面)に所定距離だけ近接させた加熱位置まで降下させ、基板加熱手段24の駆動機構38を制御して発光素子36から基板2の表面に向けて光を照射する。これにより、基板加熱手段24は、発光素子36から照射した光を基板2が吸収することで基板2を加熱している。ここで、基板加熱手段24は、基板2の表面が洗浄液の沸点よりも高い温度となるように加熱し、洗浄液の液層52を基板2の表面に近づけることで洗浄液が沸騰(好ましくは膜沸騰)して洗浄液の蒸気が生成される温度にまで基板2の表面を加熱する。なお、基板加熱工程は、洗浄処理工程の実行中継続して基板2を加熱するようにしている。この基板加熱工程では、基板処理室11の内部を減圧することで洗浄液の沸点を下げた状態で基板2の表面を基板加熱手段24で加熱するようにしてもよい。
【0055】
その後、洗浄処理工程では、図5に示すように、液層保持手段25でノズル40の下端部で液層52を保持する液層保持工程を実行する。なお、液層保持工程は、基板加熱工程よりも前に行っても良く、また、基板加熱工程と同時に行ってもよい。
【0056】
この液層保持工程において基板洗浄プログラムは、図8に示すように、制御手段27によって液層保持手段25の変位機構41を制御してノズル40を洗浄液貯留カップ49の開口部上方まで移動させるとともにノズル40の下端部が洗浄液貯留カップ49に貯留した洗浄液に浸漬するまで降下させる。
【0057】
また、基板洗浄プログラムは、制御手段27によって液層保持手段25の大気開放弁48を閉塞させるとともに開閉弁46を開放させた状態で吸引機構47を制御して洗浄液貯留カップ49に貯留した洗浄液をノズル40で洗浄液貯留部42が液密になるまで所定時間吸引し、その後、開閉弁46を閉塞させるとともに吸引機構47を停止させて、ノズル40の下端部の開口43において洗浄液の表面張力によって下方に膨出した状態の液層52を保持し、その後、変位機構41を制御してノズル40を基板2の中央部上方の開始位置まで移動させる。なお、基板洗浄プログラムは、制御手段27によって流量調整器51を制御して洗浄液供給源50から洗浄液を洗浄液貯留カップ49の内部に供給させて洗浄液貯留カップ49で所定量の洗浄液を貯留させておくようにしている。
【0058】
その後、洗浄処理工程では、図5に示すように、基板加熱手段24で加熱した基板2の表面に液層保持手段25で保持した液層52を近づけて基板2の表面と液層52との間に洗浄液の蒸気層60(図4参照。)を形成する蒸気層形成工程を実行する。
【0059】
この蒸気層形成工程において基板洗浄プログラムは、図9に示すように、制御手段27によって液層保持手段25の昇降機構41aを制御してノズル40を基板2の中央部において基板2の表面とノズル40の下端との間に一定の間隙を形成するように基板2の表面から所定の距離まで降下させる。これにより、液層保持手段25は、ノズル40の下端で保持した液層52を基板加熱手段24で加熱された基板2の表面の熱によって加熱し、液層52の表面で洗浄液を沸騰させて洗浄液の蒸気を生成し、その蒸気によって基板2の表面と液層52との間に蒸気層60を形成するようにしている(図4参照。)。ここで、洗浄液の沸騰の状態は、基板2の表面の温度や基板2の表面の性質や基板周囲の気圧などの条件で変わるが、定常的な膜沸騰状態とするのが好ましい。基板加熱手段24によって洗浄液の液層52を基板2の表面の熱で膜沸騰させた場合には、洗浄液の沸騰の状態が定常化されて安定して基板2の洗浄を行うことができる。
【0060】
このように、加熱した基板2の表面に洗浄液の液層52を近づけると、図4に示すように、基板2の表面の熱で液層52が蒸発して基板2の表面と液層52との間に蒸気層60が形成される。すると、基板2の上面のパーティクル61は、洗浄液の蒸気の物理力で基板2の表面から除去し、蒸気層60の内部で対流及び熱拡散によって液層52の内部に取り込まれ、さらに、液層52の内部でも対流及び熱拡散によってノズル40の洗浄液貯留部42の内部に取り込まれる。これにより、基板2の表面のパーティクル61を除去することができる。なお、洗浄液は、蒸気となって蒸発するが、その後、パーティクル61とともに液層52の内部に戻ってくるために、ほとんど消費されない。
【0061】
その後、洗浄処理工程では、図5に示すように、液層保持手段25で保持した液層52を基板2の表面に沿って相対的に移動させる液層移動工程を実行する。
【0062】
この液層移動工程において基板洗浄プログラムは、図10に示すように、制御手段27によって基板保持手段23の回転駆動機構31を制御してテーブル29及びテーブル29の基板保持体30で保持した基板2を所定回転速度で回転させたまま、かつ、液層保持手段25のノズル40の下端で液層52を保持させたまま、液層保持手段25の水平移動機構41bを制御してアーム39を水平に移動させることでノズル40を基板2の中央部から基板2の外周端縁部に移動させる。このように、液層保持手段25のノズル40の下端で保持した液層52を蒸気層60とともに基板2の表面に沿って相対的に移動させることで、基板2の表面全体を洗浄することができる。なお、基板2の表面のパーティクルは、液層52の内部に連続して取り込まれていく。
【0063】
その後、洗浄処理工程では、図5に示すように、液層保持手段25で保持した液層52を排出する液層排出工程を実行する。
【0064】
この液層排出工程において基板洗浄プログラムは、図11に示すように、制御手段27によって液層保持手段25の水平移動機構41bを制御してアーム39を水平に移動させることでノズル40を基板2の外周端縁部よりも外方まで移動させ、液層保持手段25の大気開放弁48を開放させる。これにより、液層保持手段25は、ノズル40の洗浄液貯留部42に貯留した洗浄液とともに液層52をノズル40から排出し、パーティクルを含む洗浄液をカップ32で回収するようにしている。このように、液層保持手段25で保持した洗浄液の液層52を基板2の外周端よりも外方で排出させることで、使用済みの液層52とともに基板2の表面から除去したパーティクルを同時に廃棄することができる。
【0065】
次に、基板洗浄プログラムは、図5に示すように、洗浄処理した基板2に対してリンス液でリンス処理するリンス処理工程を実行する。
【0066】
このリンス処理工程において基板洗浄プログラムは、図12に示すように、制御手段27によって液層保持手段25の変位機構41を制御してノズル40を基板2の外周外方の退避位置に移動させるとともに、基板加熱手段24の昇降機構37を制御して支持板35及び発光素子36を上方に移動させ、基板保持手段23の回転駆動機構31を制御してテーブル29及びテーブル29の基板保持体30で保持した基板2を所定回転速度で回転させたまま、リンス液吐出手段26の移動機構55を制御してリンス液吐出ノズル54を基板2の中央部上方の開始位置に移動させ、流量調整器57を開放及び流量制御してリンス液供給源56から供給されるリンス液をリンス液吐出ノズル54から基板2の上面に向けて一定時間吐出させ、その後、流量調整器57を閉塞制御してリンス液吐出ノズル54からのリンス液の吐出を停止し、移動機構55を制御してリンス液吐出ノズル54を基板2の外周外方の退避位置に移動させる。
【0067】
次に、基板洗浄プログラムは、図5に示すように、リンス処理した基板2を乾燥処理する乾燥処理工程を実行する。
【0068】
この乾燥処理工程において基板洗浄プログラムは、図13に示すように、制御手段27によって基板保持手段23の回転駆動機構31を制御してテーブル29及びテーブル29の基板保持体30で保持した基板2をこれまでの液処理(洗浄処理、リンス処理)時よりも高速な回転速度で回転させることによって、遠心力の作用で基板2の上面からリンス液を振り切って基板2を乾燥させるようにしている。
【0069】
基板洗浄プログラムは、最後に、図5に示すように、基板2を基板処理室11の基板保持手段23から基板搬送装置10に受渡す基板受渡工程を実行する。
【0070】
この基板受渡工程において基板洗浄プログラムは、図14に示すように、制御手段27によって基板保持手段23の昇降機構33を制御してカップ32を所定位置まで降下させ、その後、基板保持体30で支持した基板2を基板搬送装置10に受け渡し、その後、昇降機構33を制御してカップ32を所定位置まで上昇させる。なお、この基板受渡工程は、先の基板受取工程と同時に行うようにすることもできる。
【0071】
以上に説明したように、上記基板洗浄装置1では、加熱した基板2の表面に洗浄液の液層52を近づけることによって基板2の表面の熱で洗浄液の液層52を沸騰させて基板2の表面と洗浄液の液層52との間に洗浄液の蒸気層60を形成し、洗浄液の蒸気で基板2の表面を洗浄するようにしている。
【0072】
このように、上記基板洗浄装置1では、洗浄液の蒸気で基板2の表面を洗浄しているために、基板2の表面にダメージを与えることなく基板2の表面を良好に洗浄することができる。
【0073】
また、上記基板洗浄装置1では、蒸気となって一旦蒸発した洗浄液がパーティクルとともに液層52の内部に戻ってくるために、従来の2流体洗浄方式と比較して、洗浄液の消費量を低減することができ、洗浄処理に要するランニングコストを低減することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 基板洗浄装置 2 基板
3 キャリア 4 基板搬入出部
5 基板搬送部 6 基板処理部
7 前壁 8 基板搬送装置
9 基板受渡台 10 基板搬送装置
11〜22 基板処理室 23 基板保持手段
24 基板加熱手段 25 液層保持手段
26 リンス液吐出手段 27 制御手段
28 回転軸 29 テーブル
30 基板保持体 31 回転駆動機構
32 カップ 33 昇降機構
34 アーム 35 支持板
36 発光素子 37 昇降機構
38 駆動機構 39 アーム
40 ノズル 41 変位機構
41a 昇降機構 41b 水平移動機構
42 洗浄液貯留部 43 開口
44 連通孔 45 連通路
46 開閉弁 47 吸引機構
48 大気開放弁 49 洗浄液貯留カップ
50 洗浄液供給源 51 流量調整器
52 液層 53 アーム
54 リンス液吐出ノズル 55 移動機構
56 リンス液供給源 57 流量調整器
58 リンス液供給流路 59 記録媒体
60 蒸気層 61 パーティクル
62 洗浄液供給源 63 開閉弁
64 排出ガス供給源 65 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を洗浄液で洗浄する基板洗浄装置において、
洗浄液の液層を形成するノズルを備えた液層保持手段と、
基板の表面を洗浄液の沸点以上に加熱する基板加熱手段と、
ノズルを基板に近接させる昇降機構と、
ノズルに形成した液層を基板加熱手段で加熱した基板の表面の熱で沸騰させて基板の表面と液層との間に蒸気層を形成するように昇降機構を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記液層保持手段は、洗浄液を貯留するための洗浄液貯留部を前記ノズルに形成したことを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記液層保持手段は、ノズルに供給する洗浄液を貯留するための洗浄液貯留カップを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記液層保持手段は、ノズルで洗浄液を吸引するための吸引機構を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記液層保持手段は、ノズルに洗浄液を供給するとともにノズルに形成した液層を排出するための洗浄液供給排出機構を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記液層保持手段は、ノズルに形成した液層を排出用のガスで排出させるための液層排出機構を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記制御手段は、洗浄液の液層を基板の表面の熱で膜沸騰させるように前記基板加熱手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記液層保持手段で保持した洗浄液の液層を基板の表面に沿って移動させる水平移動機構を有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記液層保持手段で保持した洗浄液の液層を基板の外周端よりも外方で排出させるように前記水平移動機構を制御することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
基板を洗浄液で洗浄する基板洗浄方法において、
基板の表面を加熱するとともに基板の表面にノズルで保持した洗浄液の液層を近づけることによって基板の表面の熱で洗浄液の液層を沸騰させて基板の表面と洗浄液の液層との間に洗浄液の蒸気層を形成し、基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項11】
前記基板の表面の異物を前記洗浄液の蒸気層を介して液層に取り込むことを特徴とする請求項10に記載の基板洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄液の液層を基板の表面の熱で膜沸騰させることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
前記洗浄液の液層を基板の表面に沿って相対的に移動させることを特徴とする請求項10〜請求項12のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項14】
前記洗浄液の液層を基板の外周端よりも外方で排出させることを特徴とする請求項10〜請求項13のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項15】
洗浄後に前記ノズルに洗浄液を供給することで洗浄後の液層を排出するとともに新たに洗浄液の液層を形成することを特徴とする請求項10〜請求項14のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項16】
洗浄後に前記ノズルに排出用のガスを供給することで洗浄後の液層を排出することを特徴とする請求項10〜請求項14のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項17】
基板を洗浄液で洗浄する基板洗浄装置を用いて基板の洗浄を行うための基板洗浄プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
基板の表面を加熱する基板加熱工程と、
前記基板加熱工程で加熱した基板の表面にノズルで保持した洗浄液の液層を近づけることによって基板の表面の熱で洗浄液の液層を沸騰させて基板の表面と洗浄液の液層との間に洗浄液の蒸気の層を形成する蒸気層形成工程と、
を基板洗浄装置に実行させることを特徴とする基板洗浄プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−222253(P2012−222253A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88664(P2011−88664)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】