説明

基板洗浄装置

【課題】洗浄槽の上部からの洗浄液が漏れ出るのを抑制あるいは防止した、基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】略垂直姿勢の基板Wを上方から洗浄槽1内に収容し、基板Wの表面および裏面にそれぞれ対向しかつ略水平方向に延在して配置された管状部材2a1〜2a3,2a4〜2a6から、基板Wの両面にそれぞれ洗浄液を噴射して洗浄する基板洗浄装置Sである。基板Wの両面にそれぞれ対向する洗浄槽1の側壁11aと、側壁11a側に配置された管状部材2a1〜2a3,2a4〜2a6との間に形成される通気路F1に、邪魔板C1〜C3,C4〜C6を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プリント基板は、エッチング処理等の化学処理によってパターン配線を形成し、このパターン配線によって複数の電子部品を相互接続することによって所望の電子回路を基板上に構成するものである。このようなプリント基板は、複数の製造工程を経て製造されるが、製造工程の1つに、穴あけ加工及びめっき処理からなるスルーホール形成工程を経た基板の表面を、専用の基板洗浄装置によって洗浄する洗浄工程がある。下記特許文献1には、このようなプリント基板の製造工程に用いられる基板洗浄装置の一例が開示されている。
【0003】
前記の基板洗浄装置では、プリント基板がハンガー式の基板搬送装置によって垂直状態かつ上端部が支持される状態で基板が搬送される構成となっており、基板洗浄装置の洗浄槽は、上方から搬入された基板を略垂直姿勢で収容する有底の容器で構成されている。
洗浄槽内に設けられた洗浄液噴射部は、基板の両面側となる位置にそれぞれ3本ずつ配置された、合計6本の洗浄アームによって構成されている。これら洗浄アームは、該洗浄アームの軸線に沿って一定間隔で設けられた洗浄ノズルから、洗浄液を基板に向けて噴射するように構成されている。
【0004】
このような基板洗浄装置は、洗浄槽の上方から搬入された基板の両面に、洗浄槽内の上段、中段、下段に配置した各洗浄アームの洗浄ノズルから洗浄液を噴射する。そして、基板を洗浄槽内の下方で一旦停止させた後、上昇する過程において、再び基板の両面に洗浄液を噴射するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第09/096483号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来の基板洗浄装置では、洗浄槽内に設けられた洗浄液噴射部が洗浄槽内の上段、中段、下段に配置されており、これら各洗浄アームの洗浄ノズルから基板の両面に向けて洗浄液を霧状に噴射するため、噴射された霧状の洗浄液は一部が基板の両面から跳ね返る。
【0007】
基板の両面から跳ね返った霧状の洗浄液は、周囲の空気を巻き込んで洗浄槽の底面に向けて流下する。その際、各洗浄アームの洗浄ノズルは若干下方を向いているので、基板の両面から跳ね返った霧状の洗浄液は巻き込んだ周囲の空気によって洗浄槽底面に向く流れを形成し、洗浄槽底部側の内圧を高める。したがって、霧状洗浄液は、基板と洗浄槽の内壁(側壁)との間隙を通って気圧の低い洗浄槽の上部外方に吹き抜けていく。
これにより、洗浄槽の上部外方に吹き抜けた霧状洗浄液は、洗浄槽の上部周囲や搬送装置のハンガー等に付着し、それらの表面を汚してしまう。さらに、このような汚れがハンガーや基板に滴下することで、洗浄品質を低下させてしまう。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、洗浄槽の上部から洗浄液が漏れ出るのを抑制あるいは防止した、基板洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねたところ、霧状洗浄液が洗浄槽の上部開口を通過して外方に吹き抜け、洗浄槽の上部周囲などに付着する現象は、特に対象基板として複数の基板を治具等で保持して一体に洗浄処理した際、すなわち基板が見掛け上大型化した際に、多く起こることを見いだした。そして、このような現象をさらに詳しく分析した結果、霧状洗浄液の上部外方への吹き抜けは、従来のサイズの基板では主に基板の側端と洗浄槽の内壁との間隙を霧状洗浄液が通ることで生じると考えられていたが、前記したような見掛け上大型化した基板では、主に、基板の両面と洗浄槽の側壁との間隙を霧状洗浄液が通ることで生じることが分かった。
そこで、本発明者は前記知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の基板洗浄装置は、略垂直姿勢の基板を上方から洗浄槽内に収容し、前記基板の表面および裏面にそれぞれ対向しかつ略水平方向に延在して配置された管状部材から、前記基板の両面にそれぞれ洗浄液を噴射して洗浄する基板洗浄装置であって、前記基板の両面にそれぞれ対向する前記洗浄槽の側壁と、該側壁側に配置された前記管状部材との間に形成される通気路に、邪魔板を配設したことを特徴とする。
【0011】
また、前記基板洗浄装置において、前記管状部材は上下方向に複数段配設され、前記邪魔板は、前記管状部材の各段に対応して複数配設されていることが好ましい。
【0012】
また、前記基板洗浄装置において、前記邪魔板は、前記洗浄槽の側壁に、先端側が下方に向くように傾斜して設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基板洗浄装置によれば、洗浄槽の側壁と、該側壁側に配置された管状部材との間に形成される通気路に邪魔板を配設したので、基板への洗浄液の噴射によって空気を巻き込んで流下した霧状洗浄液が、洗浄槽底部側の内圧が高まることで通気路を上昇し、上部外方に吹き抜けようとしても、前記邪魔板によってこの流れを遮断することができる。したがって、洗浄槽の上部開口からの洗浄液の漏れを抑制あるいは防止することができ、これにより、洗浄槽の上部周囲や搬送装置のハンガー等に霧状洗浄液が付着するのを防止し、汚れや洗浄品質への影響を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置の一部断面を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示した基板洗浄装置の要部拡大斜視図である
【図3】図1の要部拡大図である基板洗浄装置の上部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の基板洗浄装置の一実施形態を示す図であり、図1中符号Sは基板洗浄装置である。この基板洗浄装置Sは、主な構成として、洗浄槽1、洗浄液噴射部2A,2Aと、図示しない洗浄液回収部、洗浄タンク、仕上洗浄タンク、供給ポンプ、オーバーフロー配管等を備えたもので、プリント基板(以下、基板という)の製造工程において、前工程から搬入された基板Wに洗浄処理を施す装置である。
【0016】
ここで、基板Wとしては、複数の基板を治具(図示せず)等で保持して一体化し、見掛け上大型化したものが用いられるが、図1及び以降の図では、見やすくするために便宜上、基板Wを一枚の矩形状基板として記載している。
また、洗浄槽1は、複数の槽から構成される場合もあるが、本実施形態では上部を開口した単一の有底洗浄槽として、説明する。
【0017】
洗浄槽1は、上方から搬入された基板Wを略垂直姿勢で収容する容器であって、矩形状の底板10と、底板10の各辺から立ち上がった側板(側壁)11a、11a、11b、11bとからなる有底四角筒状のものである。底板10の長辺から立ち上がった側板11a、11aは、収容する基板Wの横幅より広い幅に形成されている。また、底板10の短辺から立ち上がった側板11b、11bは、収容する基板Wの厚さより充分に広い幅に形成されている。これによって前記11a、11aと基板Wとの間には、前記洗浄液噴射部2A,2Aが配置可能になっている。すなわち、前記洗浄液噴射部2A,2A間に、基板Wが出し入れ可能になっている。なお、洗浄槽1としては、一般的な箱形容器と異なり、上下方向における中間部の幅が、上から下に向かって一定の傾斜で徐々に狭くなるように形成してもよい。
【0018】
洗浄液噴射部2A,2Aは、図示しない支持部材によって洗浄槽1内に配置され、かつ、図示しない配管や供給ポンプ等を介して洗浄液貯留部(図示せず)に接続したもので、洗浄槽1内に収容される基板Wに対してその表裏両面にそれぞれ、洗浄液貯留部から供給された洗浄液Pを霧状に噴射するものである。洗浄液噴射部2A,2Aのうちの一方は、洗浄槽1の対向する一対の側板11a、11aのうちの一方の側板11a側に配置され、洗浄液噴射部2A,2Aのうちの他方は、側板11a、11aのうちの他方の側板11a側に配置されている。これにより、これら洗浄液噴射部2A,2A間には、側板11aの面方向に沿って所定の間隙が形成され、この間隙内に基板Wが出し入れ可能に収容されるようになっている。
【0019】
一方の洗浄液噴射部2Aは、一方の側板11a側において、その上下方向(鉛直方向)に3本の洗浄アーム2a1〜2a3を配置して構成されており、他方の洗浄液噴射部2Aも、他方の側板11a側において、その上下方向(鉛直方向)に3本の洗浄アーム2a4〜2a6を配置して構成されている。すなわち、各洗浄液噴射部2Aは、洗浄アーム2a1〜2a3(2a4〜2a6)が、対応する側板11a側において、上段、中段、下段の3段(複数段)に配置されている。
【0020】
各洗浄アーム2a1〜〜2a6は、内部に洗浄液Pが通過する孔が形成された管状部材であり、図1の要部拡大図である図2に示すように、複数の洗浄ノズルNを各洗浄アーム2a1〜〜2a6の軸線に沿って一定間隔で設けている。このような構成によって各洗浄アーム2a1〜2a6は、洗浄液貯留部から供給され、内部を流れる洗浄液Pを、各洗浄ノズルNから基板Wに向けて霧状に噴射する(噴霧する)ようになっている。
【0021】
ここで、洗浄液Pを噴射する各洗浄ノズルNは、基板Wに向けて噴射する際の噴射角度が水平方向より下方となるように、その向きが設定されている。すなわち、洗浄ノズルNから所定の拡がりをもって噴射される洗浄液Pが、基板Wに対してその下方に向く角度で噴き付けられるようになっている。これにより、基板Wに噴き付けられた洗浄液Pは、基板Wから跳ね返って下降するようになっており、跳ね返った後直接上昇して、洗浄槽1の上部外方に飛散することがないようになっている。
【0022】
前記6本の洗浄アーム2a1〜2a3,2a4〜2a6のうち、一方の洗浄液噴射部2Aを構成する洗浄アーム2a1〜2a3は、洗浄槽1の正面側に配置され、各洗浄ノズルNから基板Wの一方の面(表面)に洗浄液Pを噴射するようになっている。また、他方の洗浄液噴射部2Aを構成する洗浄アーム2a4〜2a6は、洗浄槽1の背面側に配置され、各洗浄ノズルNから基板の他方の面(裏面)に洗浄液Pを噴射するようになっている。
【0023】
基板Wの両側、すなわち基板Wの表裏面(両面)にそれぞれ対向する側板(側壁)11a、11aのそれぞれの側には、該側板11aと3本(3段)配置された洗浄アーム2a1〜2a3(2a4〜2a6)との間に、所定の間隙が形成されている。そして、この間隙が、洗浄槽1の底部側から上昇する気流の通り道、すなわち本発明における通気路となる第1通気路F1となっている。
【0024】
これら第1通気路F1、F1には、基板洗浄装置Sの上部側断面図である図3に示すように、該第1通気路F1、F1をそれぞれ遮断するようにして、3枚ずつの邪魔板C1〜C3、C4〜C6が、上下方向に所定間隔で3段に配置されている。これら邪魔板C1〜C3、C4〜C6は、鋼板等からなる細長い矩形板状のもので、3枚ずつ連結板12に保持されたことより、一体に構成されている。そして、連結板12が洗浄槽1の側板11aの上端部に引っ掛けられて取り付けられたことにより、邪魔板C1〜C3、C4〜C6はそれぞれが所定位置に配置されている。
【0025】
すなわち、これら邪魔板C1〜C3、C4〜C6は、本実施形態では同じ側板11a側に配置された洗浄アーム2a1〜2a3(2a4〜2a6)に対し、それぞれ少しずつ上方に位置するようにして配置されている。なお、これら邪魔板C1〜C3、C4〜C6は、連結板12を介して側板11aに取り付けられたことで、実質的には側板11a、11bに設けられたものとなっている。ただし、これら邪魔板C1〜C3、C4〜C6については、連結板12を介して側板11aに取り付けることなく、側板11aにネジ止め等によって直接取り付けてもよい。
【0026】
また、各邪魔板C1〜C6は、洗浄アーム2a1〜2a6と平行に、すなわち水平方向に配置されている。ただし、本実施形態では、各邪魔板C1〜C6はその先端側(基板W側)が下方に向くように傾斜して配置されている。水平方向に対する傾斜角θとしては、特に限定されないものの、5°〜30°程度とするのが好ましい。このように先端側が下方に向くように邪魔板C1〜C6を傾斜させておくことにより、後述するように洗浄アーム2a1〜2a6から基板Wに対して洗浄液Pを噴射した際、洗浄槽1の底部側(下方)から上昇する霧状洗浄液Pを含む上昇気流を邪魔板C1〜C6で遮断し、霧状洗浄液Pを邪魔板C1〜C6の下面にトラップすることができるとともに、トラップした洗浄液Pが別に上昇してきた気流に同伴され、再度第1通気路F1を流れてしまう(上昇してしまう)ことを防止することができる。
【0027】
また、図1に示すように洗浄アーム2a1〜2a3(2a4〜2a6)の両端部側、すなわち洗浄アーム2a1〜2a3(2a4〜2a6)の各端部とこれに対向する側板11bとの間は、洗浄槽1の底部側から上昇する気流の通り道となる、第2通気路F2となっている。これら第2通気路F2に関しては、特に見掛け上大型の基板Wを洗浄処理する場合、前記第1通気路F1に比べて霧状洗浄液Pの上昇量が格段に少ないものの、多少は霧状洗浄液Pが洗浄槽1の上部外方に吹き抜ける可能性がある。
【0028】
したがって、本実施形態では、これら第2通気路F2にも、該第2通気路F2、F2をそれぞれ遮断するようにして、3枚(3段)ずつの邪魔板D1〜D3、D4〜D6を配置している。これら邪魔板D1〜D3、D4〜D6は、横断面L字状のL型アングルからなるもので、一方の板部が側板11bに取り付けられたことにより、他方の板部が側板11bより突出し、邪魔板として機能するようになっている。
【0029】
また、これら邪魔板D1〜D3、D4〜D6は、邪魔板として機能する他方の板部が、基板Wの両面と略直交するように水平に保持されて配置されている。さらに、他方の板部は、側板11bの幅より少し狭い幅に形成され、かつ、基板Wに干渉しない程度に洗浄槽1内に突出して配置されている。
【0030】
次に、このように構成された基板洗浄装置Sの動作について説明する。
本実施形態の基板洗浄装置Sによる洗浄の対象となる基板Wとしては、専用の基板搬送装置によって所定の工程順に搬送され、順次処理されることによって製造されたものである。基板Wの製造装置の1つとしてこれに含まれる製造設備では、例えばハンガー式の基板搬送装置によって垂直状態かつ上端が支持される状態で、基板Wが搬送される。
【0031】
搬送装置によりハンガーに吊下されて垂直姿勢で搬送されてきた基板Wは、洗浄槽1の上部で一次停止したのち、下降して洗浄槽1内の洗浄液噴射部2A,2A間に収容される。なお、ここで洗浄槽1内に収容される基板Wは、前述したように複数の基板を治具(図示せず)等で保持して一体化し、見掛け上大型化したものとする。
【0032】
洗浄槽1内に収容される基板Wは、洗浄槽1内をその上方から下方に移動する過程において洗浄される。すなわち、洗浄槽1の上部にて基板Wの停止が確認されると、洗浄槽1内部の上段、中段、下段に配置された各洗浄アーム2a1〜2a3,2a4〜2a6の複数の洗浄ノズルNから、洗浄液Pが霧状に一斉に噴出される。
【0033】
この状態で基板Wが洗浄槽1の上部側から底部側に下降すると、この移動過程において基板Wの両面には霧状の洗浄液Pが噴き付けられる。そして、下降位置で一端停止した後、再び上昇するが、この移動過程においても、基板Wの両面に霧状の洗浄液Pが噴き付けられる。
【0034】
その際、基板Wの表裏両面に噴き付けられた後、各面から跳ね返った霧状の洗浄液Pは、周囲の空気を霧状の洗浄液P内に巻き込んだ状態で、洗浄槽1の下方(底部側)に流下する。このようにして空気を含む洗浄液Pが流下すると、洗浄槽1の底部側ではその内部圧力が徐々に高まる。また、空気を含む洗浄液Pは、その一部が洗浄槽1の底面に衝突することで、その流れの向きを反転させる。
【0035】
これにより、洗浄槽1の内部に上昇気流が発生するので、この上昇気流に同伴された霧状の洗浄液Pは、洗浄噴射部2A,2Aと各側板11a、11bとの間、すなわち第1通気路F1、第2通気路F2を上昇する。なお、基板Wが配置されている洗浄液噴射部2A,2A間には、各洗浄アーム2a1〜2a6から洗浄液Pが霧状に噴出しているため、この洗浄液Pに遮られることにより、前記上昇気流に同伴された霧状の洗浄液Pは、洗浄噴射部2A,2A間を通り抜けることはない。
【0036】
図3中矢印で示すように第1通気路F1を上昇する洗浄液Pは、まず、最下段に配置された一対の邪魔板C3,C6に衝突して上昇移動が遮られる。したがって、この上昇気流は、洗浄槽1の内部側、すなわち基板W側に向く流れにその方向が変えられる。そして、この基板W側に向けられた流れは、洗浄アーム2a1〜2a6から基板Wに対して霧状に噴出された洗浄液Pの流れに乗って、洗浄槽1の底部側に流れる。なお、前記上昇気流に同伴された洗浄液Pは、大部分がそのまま流れに同伴されるが、一部は邪魔板C3,C6にトラップされ、液状となって邪魔板C3,C6の下面に付着する。
【0037】
さらに、これら一対の邪魔板C3,C6を通過した上昇気流は、中段に配置された一対の邪魔板C2,C5に衝突して上昇移動が遮られる。そして、この上昇気流は、邪魔板C2,C5に衝突した場合と同様にその方向が変えられ、洗浄槽1の底部側に流れる。同様に、これら一対の邪魔板C2,C5を通過した上昇気流は、上段に配置された一対の邪魔板C1,C4に衝突して上昇移動が遮られ、その流れの方向を変えて洗浄槽1の底部側に流れる。
【0038】
このようにして、上昇気流は3段の邪魔板C1〜C3、C4〜C6で順次遮られ、その上昇力が弱められることにより、上段の邪魔板C1、C4を通過する上昇気流はその勢いが充分に減じられ、上昇速度が小さくなる。したがって、このように上昇速度が充分に小さくなったことにより、この上昇気流に同伴される霧状洗浄液Pの量も充分に少なくなり、結果として洗浄槽1の上部開口から外方に漏れ出る洗浄液Pの量は激減し、ほとんどゼロに近くなる。
【0039】
また、第2通気路F2を上昇する洗浄液Pは、まず、最下段に配置された一対の邪魔板D3,D6に衝突して上昇移動が遮られる。したがって、この上昇気流も、第1通気路F1を上昇する上昇気流と同様にその流れの向きが変えられ、一部が洗浄槽1の底部側に向かって流れるようになる。
【0040】
そして、邪魔板D3,D6を通過した上昇気流は、中段に配置された一対の邪魔板D2,D5に衝突して上昇移動が遮られ、一部が洗浄槽1の底部側に向かって流れるようになり、さらにこれら一対の邪魔板D2,D5を通過した上昇気流も、上段に配置された一対の邪魔板D1,D4に衝突して上昇移動が遮られ、一部が洗浄槽1の底部側に向かって流れるようになる。
【0041】
このようにして、上昇気流は3段の邪魔板D1〜D3、D4〜D6で順次遮られ、その上昇力が弱められることにより、第1通気路F1を上昇した上昇気流と同様に、上段の邪魔板D1、D4を通過する上昇気流はその勢いが充分に減じられ、上昇速度が小さくなる。したがって、このように上昇速度が充分に小さくなったことにより、この上昇気流に同伴される霧状洗浄液Pの量も充分に少なくなり、結果として洗浄槽1の上部開口から外方に漏れ出る洗浄液Pの量は激減し、ほとんどゼロに近くなる。
【0042】
このように、本実施形態の基板洗浄槽Sにあっては、第1通気路F1に邪魔板C1〜C3,C4〜C6を、また第2通気路F2に邪魔板D1〜D3,D4〜D6をそれぞれ3枚ずつ所定間隔で上下に重ねて配置したので、所謂ラビリンス効果を得ることができる。したがって、最上段の両邪魔板C1,C2(D1,D4)を通過した上昇気流は、その上昇力が弱められていることで霧状の洗浄液Pがほとんど含まれなくなる(同伴されなくなる)。これにより、洗浄液Pが洗浄槽1から漏れ出ることによって洗浄槽1の上部周囲や搬送装置のハンガー等に洗浄液Pが付着するのを防止し、汚れや洗浄品質への影響を解消することができる。
【0043】
また、邪魔板C1〜C3,C4〜C6を、その先端側が下方に向くように傾斜して側板11aに設けているので、洗浄槽1の底部側(下方)から上昇する霧状洗浄液Pを含む上昇気流を邪魔板C1〜C6で遮断し、霧状洗浄液Pを邪魔板C1〜C6の下面にトラップすることができるとともに、トラップした洗浄液Pが別に上昇してきた気流に同伴され、再度第1通気路F1を流れてしまう(上昇してしまう)ことを防止することができる。すなわち、邪魔板C1〜C3,C4〜C6が傾斜して設けられているので、これら邪魔板C1〜C3,C4〜C6に上昇気流が衝突すると、邪魔板C1〜C6の下面にトラップされた洗浄液Pは上昇気流に押されることで邪魔板C1〜C6の下面に沿ってその上方、つまり側壁11a側に向かうようになる。したがって、トラップされた洗浄液Pは邪魔板C1〜C6の先端側を通過する上昇気流には同伴されることなく、側壁11aに付着するようになる。よって、邪魔板C1〜C3,C4〜C6を、その先端側が下方に向くように傾斜して側板11aに設けたことにより、洗浄液Pが洗浄槽1から漏れ出ることをより良好に抑制あるいは防止することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)前記実施形態では、各洗浄アーム2a1〜2a3,2a4〜2a6と側壁11a、11aとの間隙にそれぞれ3枚ずつの邪魔板C1〜C3,C4〜C6を配置した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、一枚ずつの邪魔板C3,C6を、最下段の洗浄アーム2a3,2a6の両端側における第1通気路F1に配設してもよい。これによっても、霧状洗浄液Pを含む上昇気流は、洗浄槽1の内部に向く流れに変換されるので、その上昇力が弱まる。
【0045】
(2)前記実施形態では、邪魔板C1〜C3,C4〜C6の先端側を下方に向けて傾斜させて配置した例について説明したが、これら邪魔板D1〜D3,D4〜D6を水平に配置してもよい。これによっても、霧状洗浄液Pを含む上昇気流を邪魔板によって遮断することにより、上昇気流の上昇力を十分に弱めることができる。
【0046】
(3)前記実施形態では、第2通気路F2に邪魔板D1〜D3,D4〜D6を配置した例について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、これら邪魔板D1〜D3,D4〜D6の第2通気路F2への配置を省略してもよい。
(4)さらに、邪魔板C1〜C3,C4〜C6については、その外形や間隔を、洗浄の対象となる基板Wのサイズに応じて交換または変更可能とすることもできる。これにより、例えばサイズが小さい基板を洗浄するときに、拡張された通気路に対応した形状の邪魔板を使用することで、上方に向く流れをより確実に遮断することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…洗浄槽、2A,2A…洗浄液噴射部、2a1〜2a3,2a4〜2a6…洗浄アーム(管状部材)、11a…側板(側壁)、11b…側板(側壁)、F1…第1通気路(通気路)、C1〜C3,C4〜C6…邪魔板、N…洗浄ノズル、P…洗浄液、S…基板洗浄装置、W…基板(プリント基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略垂直姿勢の基板を上方から洗浄槽内に収容し、前記基板の表面および裏面にそれぞれ対向しかつ略水平方向に延在して配置された管状部材から、前記基板の両面にそれぞれ洗浄液を噴射して洗浄する基板洗浄装置であって、
前記基板の両面にそれぞれ対向する前記洗浄槽の側壁と、該側壁側に配置された前記管状部材との間に形成される通気路に、邪魔板を配設したことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記管状部材は上下方向に複数段配設され、
前記邪魔板は、前記管状部材の各段に対応して複数配設されていることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記邪魔板は、前記洗浄槽の側壁に、先端側が下方に向くように傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55110(P2013−55110A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190532(P2011−190532)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000232357)横河電子機器株式会社 (109)
【Fターム(参考)】