説明

基板用コネクタ

【課題】基板挿入の一動作により基板の装着作業を簡便に達成するとともに、基板挿入時における基板の損傷を防止し、しかも、アクチュエータ等の破損を防止する基板用コネクタを提供すること。
【解決手段】第1挟持部131a及び第2挟持部132aと、第1挟持部131aを支持する第1ビーム部131と、第2挟持部132aを支持する第2ビーム部132とを有するコンタクト130と、コンタクト130を保持するハウジング110と、第1ビーム部131に一体化されるアクチュエータ120とを備え、アクチュエータ120は、挟持部131aより基板挿入方向Xの前方X1側に形成され、基板T1の挿入時に、基板T1により押動される力点部122を有している基板用コネクタ100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関し、特に、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)等の平板状の接続対象物と他の接続対象物とを接続する基板用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング510と、ハウジング510に支持された複数のコンタクト530とを具備し、複数のコンタクト530が第1接触部531aと第2接触部532aを1組とする複数組の接触部531a、532aを具備し、第1接触部531aと第2接触部532aが非接触状態で対向するとともに、その対向面間に挿入される接続対象T500によって変位して接続対象T500の両面と弾性接触し、第1接触部531aと第2接触部532aの対向面が、その変位方向の間隔を略一定とする凹凸形状に形成されているコネクタ500が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところが、特許文献1に記載されるような従来のコネクタ500では、図15に示すように、コンタクト530の第1接触部531aと第2接触部532aとの間に挿入される接続対象(フレキシブルプリント配線板)T500が、公差の範囲内で厚めに製造された場合、接続対象T500の挿入時に、接続対象T500の表面が第1接触部531a及び第2接触部532aにより擦られるため、接続対象T500の端部が切断面であることに起因して、接続対象T500のパッドの剥がれが生じやすいという問題があった。
【0004】
また、接続対象T500の厚みによっては、第1接触部531aと第2接触部532aとの間への接続対象T500の挿入自体が困難になるという問題があった。
【0005】
そこで、このような接続対象T500の破損や、コンタクトの接触部531a、532a間への接続対象T500の挿入の困難さの問題を解消するために考案された発明として、特許文献2に記載されたフレキシブルプリント配線板用コネクタ装置600が知られている。
【0006】
この特許文献2に記載されたフレキシブルプリント配線板用コネクタ装置600は、図16及び図17に示すように、ハウジング610と、夫々が上側コンタクト部631aとこれと対向する下側コンタクト部632aとを有し、上側コンタクト部631aと下側コンタクト部632aとの間隔が、接続されるフレキシブルプリント配線板T600が挿入される程度に開いており、上記のハウジング610に並んで設けてある複数のコンタクト部材630と、操作されて上側コンタクト部631aと下側コンタクト部632aとの間隔を狭めるアクチュエータ620とからなり、フレキシブルプリント配線板T600を挿入し、上記アクチュエータ620を操作することによって、上側コンタクト部631aと下側コンタクト部632aとが所定の接触圧力でフレキシブルプリント配線板T600を挟むように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−351288号公報
【特許文献2】特開2004−39479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来のフレキシブルプリント配線板用コネクタ装置600では、フレキシブルプリント配線板T600の装着時に、フレキシブルプリント配線板T600の挿入動作及びアクチュエータ620の操作の二動作を必要とするため、フレキシブルプリント配線板T600の装着に係る作業負担が大きいという問題があった。
【0009】
また、アクチュエータ620の操作が手動により行われるため、アクチュエータ620等の各構成部材に対して過度な力が作用し、構成部材の破損が生じる恐れがあるという問題があった。
【0010】
さらに、コネクタ装置600を小さなサイズで設計した場合、通常の作業者の指ではアクチュエータ620を手動で操作すること自体が困難であるという事態が発生し、フレキシブルプリント配線板T600の装着作業がより一層困難になるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、フレキシブルプリント配線板(基板)挿入の一動作により基板の装着作業を簡便に達成するとともに、基板挿入時における基板の損傷を防止し、しかも、アクチュエータ等の破損を防止する基板用コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の基板用コネクタは、外部から挿入された接続対象物の基板を相互間で挟持する第1挟持部及び第2挟持部と、前記第1挟持部を支持する第1ビーム部と、前記第2挟持部を支持する第2ビーム部とを有するコンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングと、前記第1ビーム部に一体化されるアクチュエータとを備え、前記アクチュエータは、前記挟持部より基板挿入方向の前方側に形成され前記基板の挿入時に前記基板により押動される力点部を有していることにより、前述した課題を解決したものである。
なお、本発明で言うところの「一体化」とは、複数の部材が一体に動作することを意味し、複数の部材が一体に成形されているという意味には限定されず、例えば、別個に成形された複数の部材を相互に嵌合させることで一体に動作させることも含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基板用コネクタは、基板用コネクタに対して挿入された接続対象物の基板を利用して、コンタクトの挟持部間の間隔を広げるように構成されていることにより、基板の挿入動作とは別途にアクチュエータの操作を必要としないため、基板挿入の一動作により基板の装着作業を達成でき、基板の装着作業に係る作業負担を著しく低減できる。
【0014】
また、基板の挿入により、コンタクトの挟持部間の間隔が一定の必要量だけ自動的に広がるため、接続対象物である基板が公差の範囲内で厚めに製造された場合であっても、基板がコンタクトの挟持部に対して過度に褶動することを回避して、基板の損傷を防止できる。
【0015】
また、本発明の基板用コネクタでは、手動でアクチュエータを操作することなく、基板の挿入によりアクチュエータを動かすように構成されていることにより、基板挿入時におけるアクチュエータの移動量が必要量に限定されるとともに、手動によってアクチュエータを操作した場合のように過度な力がアクチュエータ等に作用することを回避するため、アクチュエータ等の破損を防止できる。
【0016】
また、前述したように、手動でのアクチュエータの操作を必要としないため、基板用コネクタ全体を小さなサイズで設計した場合であっても、アクチュエータを手動で操作する従来のコネクタ装置のように、通常の作業者の指ではアクチュエータを手動で操作するのが困難になるという事態を回避でき、基板の装着作業を容易に達成できる。
【0017】
また、基板の挿入による力点部の押動と挟持部間の拡幅とを連動させる連動機構として、アクチュエータとコンタクトのビーム部とを一体化させるという簡素な構成を採用していることにより、連動機構の不具合に起因する基板用コネクタの動作不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例である基板用コネクタを示す斜視図である。
【図2】図1に示す基板用コネクタに第1基板を装着した状態を示す斜視図である。
【図3】第1基板の取り付け前の状態の基板用コネクタを示す断面図である。
【図4】基板用コネクタを基板挿入方向の後方側から見て示す背面図である。
【図5】折り曲げ前のコンタクトを示す斜視図である。
【図6】製造途中の基板用コネクタを示す斜視図である。
【図7】図4のA−A線位置で矢印方向に見て、コンタクトを折り曲げる前の基板用コネクタを示す説明図である。
【図8】図4のA−A線位置で矢印方向に見て、コンタクトを折り曲げた後の基板用コネクタを示す説明図である。
【図9】図4のB−B線位置で矢印方向に見て、コンタクトを折り曲げる前の基板用コネクタを示す説明図である。
【図10】図4のB−B線位置で矢印方向に見て、コンタクトを折り曲げた後の基板用コネクタを示す説明図である。
【図11】第1基板の取り付け前の状態を断面視して示す説明図である。
【図12】第1基板の取り付け途中の状態を断面視して示す説明図である。
【図13】第1基板の取り付け完了の状態を断面視して示す説明図である。
【図14】第1基板の取り外し途中の状態を示す断面視して示す説明図である。
【図15】従来のコネクタを示す断面図である。
【図16】従来のコネクタ装置のフレキシブルプリント配線板の取り付け前の状態を断面視して示す説明図である。
【図17】従来のコネクタ装置のフレキシブルプリント配線板の取り付け完了の状態を断面視して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施例である基板用コネクタ100を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0020】
基板用コネクタ100は、図3等に示すように、第1接続対象物である第1基板(FPC、Flexible Printed Circuit)T1と、第2接続対象物である第2基板(プリント基板)T2との間を接続するものである。
【0021】
基板用コネクタ100は、図1や図3に示すように、ハウジング110と、アクチュエータ120と、複数のコンタクト130とを備えている。
ハウジング110及びアクチュエータ120は、絶縁性の樹脂から成形され、コンタクト130は、リン青銅から成形されている。
【0022】
ハウジング110は、図3等に示すように、その内部に第2ビーム部132を埋入させた状態で第1ビーム部131に一体化されている。
ハウジング110は、図1、図3、図6等に示すように、受容空間111と、基板設置面112と、複数の力点部受容部113と、一対の凹部(係合部)114とを備えている。
【0023】
受容空間111は、図3等に示すように、第1基板T1の挿入時に、第1基板T1を受容する空間である。
基板設置面112は、図6等に示すように、第1基板T1の設置面として機能している。
力点部受容部113は、図6や図7等に示すように、基板設置面112に凹設され、アクチュエータ120の力点部122をそれぞれ受容するようになっている。
凹部114は、図1に示すように、ハウジング110のコンタクト幅方向Yの両側壁にそれぞれ凹設されている。
【0024】
アクチュエータ120は、図1や図3等に示すように、本体部121と、複数の力点部122と、一対の突出部(係合部)123とを備えている。
【0025】
本体部121は、図3等に示すように、第1ビーム部131を内部に埋入させた状態で第1ビーム部131に一体化されている。
力点部122は、図3、図6等に示すように、本体部121の基板挿入方向Xの前方X1側で、本体部121のコンタクト幅方向Yの両側及び中央の3箇所にそれぞれ設けられ、基板設置面112側に向けて本体部121から突出している。力点部122は、図3等に示すように、コンタクト130の第1挟持部131a及び第2挟持部132aより基板挿入方向Xの前方X1側に配置されている。力点部122は、図3等に示すように、基板挿入方向Xの後方X2側に向かって基板設置面112に近接するように傾斜した傾斜面122aを基板挿入方向Xの前方X1側に有している。
突出部123は、図1に示すように、本体部121のコンタクト幅方向Yの両側からコンタクト幅方向Yの外側に向けて突出形成され、ハウジング110の凹部114内に配置されている。
【0026】
コンタクト130は、図3等に示すように、所謂ノーマルクローズ型で設計され、すなわち、後述する第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間隔が、第1基板T1を挿入していない状態で第1基板T1の厚みより狭く設定されている。コンタクト130は、図3等に示すように、第1ビーム部131と、第2ビーム部132と、連結部133とを一体に備えている。
【0027】
第1ビーム部131は、図3等に示すように、その大部分をアクチュエータ120の本体部121の内部に埋入され、本体部121に一体化されている。第1ビーム部131は、図3や図6等に示すように、受容空間111に露出した第1挟持部131aを有している。第1挟持部(接点部)131aは、第1基板T1に形成されたパッド(図示しない)との間の接点部として機能する。第1挟持部131aは、後述する第2挟持部132aに対向している。なお、本実施例では、上記の通り、第1挟持部131aと第2挟持部132aとが相互に対向している、すなわち、基板挿入方向Xにおける第1挟持部131aの位置と第2挟持部132aの位置とが相互に一致しているが、基板挿入方向Xにおける第1挟持部131aの位置と第2挟持部132aの位置とが相互にずれていても何ら構わない。
第2ビーム部132は、図3等に示すように、その大部分をハウジング110の内部に埋入され、ハウジング110に一体化されている。第2ビーム部132は、図3等に示すように、受容空間111に露出した第2挟持部132aと、第2挟持部132aより基板挿入方向Xの後方X2側に形成され、第2基板T2にハンダ付けされる第1端子部132bと、第2挟持部132aより基板挿入方向Xの前方X1側に形成され、第2基板T2にハンダ付けされる第2端子部132cとを有している。
連結部133は、図3等に示すように、第1ビーム部131の基板挿入方向Xの後方X2側の端部と、第2ビーム部132の基板挿入方向Xの後方X2側の端部とを連結している。連結部133は、第1挟持部131aと第2挟持部132aとを相互に接近させるように、第1ビーム部131と第2ビーム部132とを付勢している、換言すると、第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間の挟持力を生じさせている。また、連結部133と力点部122との間の距離は、図3等に示すように、連結部133と第1挟持部131aとの間の距離より長く設定されている。
【0028】
第1接続対象物である第1基板(FPC)T1は、図13等に示すように、コンタクト幅方向Yの両側および中央の3箇所にそれぞれ形成されてアクチュエータ120の力点部122を受容する複数の力点部受容部T1aと、コンタクト130の第1挟持部131aに接続されるパッド(図示しない)とを有している。
なお、本実施例では、第1挟持部131aに面する第1基板T1の表面にのみパッド及び導体パターンが形成されているが、第1基板T1の裏面側にも表面側と同一のパッド及び導体パターンを形成しても何ら構わない。この場合、第2挟持部132aも、第1基板T1との間の接点として用いる。
【0029】
第2接続対象物である第2基板(プリント基板)T2には、基板用コネクタ100のホールドダウン(図示しない)がハンダ付けされる。
このホールドダウン(図示しない)により、ハウジング110と第2基板T2とは、相互に固定される。
【0030】
以下に、基板用コネクタ100の製造方法について、図5乃至図10に基づいて説明する。
【0031】
まず、図5に示すように、連結部133を折り曲げていない状態の多数のコンタクト130を並列配置する。
なお、第1挟持部131aは、第1ビーム部131に曲げ加工を施すことにより形成される。
【0032】
次に、図6、図7、図9に示すように、複数の第1ビーム部131をアクチュエータ120の内部に埋入させた状態でアクチュエータ120をインサート成形し、アクチュエータ120とコンタクト130とを一体に成形する。
なお、このアクチュエータ120の成形時には、複数の第1ビーム部131の動きを抑える必要があり、その結果として、図6等に示すように、複数の孔124がアクチュエータ120に形成される。
【0033】
また、複数の第2ビーム部132をハウジング110の内部に埋入させた状態でハウジング110をインサート成形し、ハウジング110とコンタクト130とを一体に成形する。
【0034】
そして、最後に、図6、図8、図10に示すように、コンタクト130を連結部133で折り曲げる。
この時、ハウジング110の凹部114とアクチュエータ120の突出部123とは、アクチュエータ120及びハウジング110の間の相対的な位置合わせの目印として機能しており、突出部123が凹部114内に配置されるように、コンタクト130を折り曲げる。これにより、正確なコンタクト130の折り曲げを達成できる。
なお、本実施例では、アクチュエータ120に突出部(係合部)123を設けるとともに、ハウジング110に凹部(係合部)114を設け、これら突出部123と凹部114とを相互に係合させるように構成したが、反対に、アクチュエータ120側に凹部を設けるとともに、ハウジング110側に突出部を設けても何ら構わない。
【0035】
以下に、基板用コネクタ100に対する第1基板T1の取り付け方法、及び、第1基板T1の取り付け時における各構成部材の作用について、図11乃至図13に基づいて説明する。
【0036】
まず、図11に示すように、作業者は、基板挿入方向Xの前方X1側から基板挿入方向Xの後方X2側に向けて、ハウジング110とアクチュエータ120との間に、第1基板T1を挿入する。
【0037】
この際、アクチュエータ120の力点部122が、基板挿入方向Xの後方X2側に向かって基板設置面112に近接するように傾斜した傾斜面122aを有しているため、図12に示すように、アクチュエータ120の力点部122は、第1基板T1の挿入により、基板設置面112から離間する方向に押し上げられる。
この際、図12に示すように、アクチュエータ120と一体化された第1ビーム部131は、アクチュエータ120と共に、基板設置面112から離間する方向に押し上げられる。この際、連結部133は、弾性変形する。
その結果、図12に示すように、第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間隔は広げられ、この時の第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間隔は、第1基板T1の厚みより広くなる。
【0038】
次に、作業者により、基板挿入方向Xの後方X2側に向けて更に押し進められた第1基板T1は、第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間に入り込む。
【0039】
次に、第1基板T1は、作業者により、基板挿入方向Xの後方X2側に向けて更に押し進められ、図13に示すように、第1基板T1の力点部受容部T1aの位置が、アクチュエータ120の力点部122の位置に一致する。
この際、アクチュエータ120の力点部122が第1基板T1による支持を失うため、連結部133が弾性復帰し、アクチュエータ120は、アクチュエータ120の力点部122が基板設置面112側に接近する方向に移動する。
その結果、図13に示すように、コンタクト130の第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間隔は、通常の間隔に戻ろうとする、すなわち、第1基板T1の厚みより狭くなろうとする。
そして、第1挟持部131aと第2挟持部132aとは、第1基板T1を挟持し、第1挟持部131aと第1基板T1のパッド(図示しない)との間の接続が確立される。
同時に、アクチュエータ120の力点部122は、第1基板T1の力点部受容部T1a内に入り込み、受容される。
これにより、第1基板T1は、基板用コネクタ100に対して位置決めされるとともに、基板用コネクタ100からの第1基板T1の抜け出しが防止される。
【0040】
以下に、基板用コネクタ100からの第1基板T1の取り外し方法について、図14に基づいて説明する。
【0041】
まず、作業者は、アクチュエータ120の力点部122と第1基板T1との間に、楔形状の先端部M1を有する治具Mを差し込む。
【0042】
その結果、アクチュエータ120の力点部122は、基板設置面112から離間する方向に押し上げられる。
この際、図14に示すように、アクチュエータ120と一体化された第1ビーム部131は、アクチュエータ120と共に、基板設置面112から離間する方向に押し上げられる。この際、連結部133は、弾性変形する。
その結果、第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間隔は広げられ、この時の第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間隔は、第1基板T1の厚みより広くなる。
【0043】
これにより、作業者は、第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間から、第1基板T1を容易に引き抜くことができる。
【0044】
なお、仮に、第1基板T1を引き抜く際に、第1基板T1がアクチュエータ120に係合した場合(引っ掛かった場合)であっても、突出部123が凹部114に係合して、アクチュエータ120が第1基板T1と共に基板挿入方向Xの前方X1側に向けて移動することを阻止するため、アクチュエータ120の移動に伴うコンタクト130の変形を阻止できる。
【0045】
このようにして得られた本実施例の基板用コネクタ100では、基板用コネクタ100に対して挿入された第1基板T1を利用して、コンタクト130の第1挟持部131a及び第2挟持部132aの間隔を広げるように構成されていることにより、第1基板T1の挿入動作とは別途にアクチュエータ120の操作を必要としないため、第1基板T1の挿入の一動作により第1基板T1の装着作業を達成でき、第1基板T1の装着作業に係る作業負担を著しく低減できる。
【0046】
また、第1基板T1の挿入により、第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間隔が一定の必要量だけ自動的に広がるため、第1基板T1が公差の範囲内で厚めに製造された場合であっても、第1基板T1が第1挟持部131a及び第2挟持部132aに対して過剰に褶動することを回避して、第1基板T1の損傷を防止できる。
【0047】
また、本実施例の基板用コネクタ100では、手動でアクチュエータ120を操作することなく、第1基板T1の挿入によりアクチュエータ120を移動させるように構成されていることにより、第1基板T1の挿入時におけるアクチュエータ120の移動量が、第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間に第1基板T1を挿入することが可能な程度に限定されるとともに、手動によってアクチュエータ120を操作した場合のように過度な力がアクチュエータ120等に作用することを回避するため、アクチュエータ120等の破損を防止できる。
【0048】
さらに、前述したように、手動でのアクチュエータ120の操作を必要としないため、基板用コネクタ100全体を小さなサイズで設計した場合であっても、アクチュエータ120を手動で操作する従来のコネクタ装置のように、通常の作業者の指ではアクチュエータ120を手動で操作するのが困難になるという事態を回避でき、第1基板T1の装着作業を容易に達成できる。
【0049】
連結部133と力点部122との間の距離は、連結部133と第1挟持部131aとの間の距離より長く設定されている。
これにより、必要とされる第1基板T1の挿入力を低減し、作業性を向上するとともに、第1基板T1の挿入時における第1基板T1とアクチュエータ120の力点部122との間の過度な物理的接触を回避して、第1基板T1の損傷を防止できる。
【0050】
アクチュエータ120とコンタクト130とは一体に成形されているとともに、ハウジング110とコンタクト130とは一体に成形されている。
これにより、多数のコンタクト130をアクチュエータ120及びハウジング110に組み付ける作業が不要になり、また、コンタクト130及びアクチュエータ120及びハウジング110を単一部材として取り扱うことが可能であるため、製造負担を低減できる。また、アクチュエータ120とコンタクト130との間の外れ、及び、ハウジング110とコンタクト130との間の外れを回避することが可能であるため、製品の信頼性を向上できる。
【0051】
第1挟持部131aと第2挟持部132aとの間の挟持力は、金属材料に折り曲げ加工を施すことにより形成された連結部133により生み出されている。
そのため、コンタクト130の構造が簡素化するだけでなく、アクチュエータ120及びハウジング110をコンタクト130と一体に成形した後、コンタクト130を折り曲げるだけで、基板用コネクタ100の製造を達成することが可能であるため、基板用コネクタ100の製造負担を著しく低減できる。
【0052】
また、第1基板T1の挿入による力点部122の押動と第1挟持部131a及び第2挟持部132a間の拡幅とを連動させる連動機構として、本実施例では、アクチュエータ120とコンタクト130の第1ビーム部131とを一体化させるという簡素な構成を採用していることにより、連動機構の不具合に起因する基板用コネクタ100の動作不良の発生を抑制できる。
【0053】
ハウジング110と第1基板T1とが、アクチュエータ120の力点部122を受容する力点部受容部113、T1aを有している。
したがって、基板用コネクタ100全体の厚みを低減でき、また、第1基板T1が基板用コネクタ100に対して位置決めされるとともに、基板用コネクタ100からの第1基板T1の抜け出しが防止されるため、第1基板T1のパッド(図示しない)とコンタクト130の第1挟持部131aとの間の接続を確実に維持できる。
【0054】
アクチュエータ120の力点部122は、基板挿入方向Xの後方X2側に向かって基板設置面112に近接するように傾斜した傾斜面122aを有している。
したがって、第1基板T1の小さな挿入力により、力点部122を容易に押し上げることが可能であるため、第1基板T1と力点部122との間の過度な物理的接触を回避でき、また、円滑な第1基板T1の挿入作業を達成できる。
【0055】
連結部133は、第1挟持部131aと第2挟持部132aとを相互に接近させるように、第1ビーム部131と第2ビーム部132とを付勢しているため、第1基板T1の装着完了後または装着前に、アクチュエータ120がハウジング110に対して不用意に移動して浮き上がることを防止できる。
【0056】
前述した実施例では、第1基板が、FPC(Flexible Printed Circuit)であるものとして説明したが、平板状の接続対象物であれば如何なるものであってもよく、例えば、FFC(Flexible Flat Cable)であっても何ら構わない。
【0057】
100 ・・・ 基板用コネクタ
110 ・・・ ハウジング
111 ・・・ 受容空間
112 ・・・ 基板設置面
113 ・・・ 力点部受容部
114 ・・・ 凹部(係合部)
120 ・・・ アクチュエータ
121 ・・・ 本体部
122 ・・・ 力点部
122a ・・・ 傾斜面
123 ・・・ 突出部(係合部)
124 ・・・ 孔
130 ・・・ コンタクト
131 ・・・ 第1ビーム部
131a ・・・ 第1挟持部(接点部)
132 ・・・ 第2ビーム部
132a ・・・ 第2挟持部
132b ・・・ 第1端子部
132c ・・・ 第2端子部
133 ・・・ 連結部
T1 ・・・ 第1基板(FPCまたは基板)
T1a ・・・ 力点部受容部
T2 ・・・ 第2基板(プリント基板)
X ・・・ 基板挿入方向
X1 ・・・ 基板挿入方向の前方
X2 ・・・ 基板挿入方向の後方
Y ・・・ コンタクト幅方向
M ・・・ 治具
M1 ・・・ 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から挿入された接続対象物の基板を相互間で挟持する第1挟持部及び第2挟持部と、前記第1挟持部を支持する第1ビーム部と、前記第2挟持部を支持する第2ビーム部とを有するコンタクトと、
前記コンタクトを保持するハウジングと、
前記第1ビーム部に一体化されるアクチュエータとを備え、
前記アクチュエータは、前記挟持部より基板挿入方向の前方側に形成され前記基板の挿入時に前記基板により押動される力点部を有していることを特徴とする基板用コネクタ。
【請求項2】
前記コンタクトは、前記第1ビーム部と前記第2ビーム部とを連結する連結部を有していることを特徴とする請求項1に記載の基板用コネクタ。
【請求項3】
前記連結部は、前記第1挟持部と前記第2挟持部とを相互に接近させるように、前記第1ビーム部と前記第2ビーム部とを付勢していることを特徴とする請求項2に記載の基板用コネクタ。
【請求項4】
前記力点部と前記連結部との間の距離は、前記挟持部と前記連結部との間の距離より長く設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の基板用コネクタ。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記コンタクトと一体に成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の基板用コネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記コンタクトと一体に成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の基板用コネクタ。
【請求項7】
前記挟持部は、前記ビーム部に曲げ加工を施すことにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の基板用コネクタ。
【請求項8】
前記力点部は、前記ハウジング側に近接するように傾斜した傾斜面を有し、
前記ハウジングは、前記力点部を受容する力点部受容部を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の基板用コネクタ。
【請求項9】
前記アクチュエータ及び前記ハウジングは、相互に係合し前記ハウジングに対する前記基板挿入方向の前方側への前記アクチュエータの移動を規制する係合部をそれぞれ有していることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の基板用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−89379(P2012−89379A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235684(P2010−235684)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【特許番号】特許第4859261号(P4859261)
【特許公報発行日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】