説明

基板用保持治具

【課題】密着層から基板を容易に取り外すことができ、耐熱性を付与したり、構成の簡素化を図ることのできる基板用保持治具を提供する。
【解決手段】半導体ウェーハWと略同じ大きさの積層保持体2に薄い半導体ウェーハWを保持させる基板用保持治具1で、積層保持体2を、剛性を有する複数の基材層3と、基材層3に着脱自在に積層されて半導体ウェーハWに密着可能な複数の自己密着層4とから積層構造に形成し、積層保持体2の表面に自己密着層4を位置させ、積層保持体2の裏面には基材層3を位置させる。また、複数の基材層3と自己密着層4とに可撓性と耐熱性とをそれぞれ付与する。積層保持体2が複数の基材層3と自己密着層4の多層化により十分な抗張力を有するので、半導体ウェーハWのハンドリングや搬送の便宜を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやガラス基板等を保持する基板用保持治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハに所定の処理を施したり、加工する場合には、半導体ウェーハのハンドリングや搬送の便宜を図る観点から、図示しない各種の基板用保持治具が使用されている。
【0003】
この種の基板用保持治具は、例えば半導体ウェーハよりも大きい中空のフレームを備え、このフレームの中空部に半導体ウェーハ用の密着層が張架して覆着されたタイプが知られている。また、基材の凹凸の表面に半導体ウェーハ用の密着層が変形可能に覆着されて基材の表面と密着層との間に空間が区画形成され、この空間の空気を外部に排気して密着層を凹凸に変形させることにより、半導体ウェーハと密着層とを分離するタイプも知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−260224号公報
【特許文献2】特開2009−194183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における基板用保持治具は、以上のように構成され、大きなフレームの中空部に半導体ウェーハ用の密着層を覆着する場合には、特殊な剥離剤や溶剤等を使用しなければ、密着層から半導体ウェーハを容易に取り外すことができず、しかも、半導体ウェーハと同じ大きさに製造して各種の工程にそのまま供することが困難であるという問題がある。また、基材の凹凸の表面に半導体ウェーハ用の密着層が覆着されて基材と密着層との間に空間が区画された基板用保持治具の場合には、優れた作用効果が期待できるものの、簡易に耐熱性を付与したり、さらなる構成の簡素化を図りたいという要望がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、密着層から基板を容易に取り外すことができ、耐熱性を付与したり、構成の簡素化を図ることのできる基板用保持治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、基板と略同じ大きさの積層保持体に基板を保持させるものであって、
積層保持体は、抗張力を有する複数の基材層と、基材層に着脱自在に積層されて基板に密着可能な複数の自己密着層とを含み、表面に自己密着層を位置させ、裏面には基材層を位置させ、複数の基材層と自己密着層とに可撓性と耐熱性とをそれぞれ付与したことを特徴としている。
なお、複数の基材層と自己密着層とを交互に積層することができる。
【0008】
ここで、特許請求の範囲における積層保持体は、基板の形状に応じ、平面円形、矩形、多角形等に形成することができる。また、基板には、少なくとも半導体ウェーハ(例えばφ200、300、450mmタイプ)、液晶基板、ガラス基板、マスク基板、回路基板等が含まれる。基材層と自己密着層とは、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。さらに、本発明に係る基板用保持治具は、耐熱性が要求される環境や工程(例えば、ハンダリフロー工程等)で使用することができる。
【0009】
本発明によれば、積層保持体が複数の基材層と自己密着層との多層化により十分な剛性を有するので、基板の取り扱いや搬送の便宜を図ることができる。また、基板を取り外す場合には、積層保持体の最裏面側から基材層と自己密着層とを順次剥離し、最後に基板から自己密着層を剥離すれば良いので、特殊な剥離剤や溶剤等を使用しなくても、密着層から基板を簡単に取り外すことができる。また、耐熱性を有する材料により基材層と自己密着層とをそれぞれ形成して積層保持体を得るので、簡単に耐熱性を付与したり、構成の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、積層保持体を、抗張力を有する複数の基材層と、基材層に着脱自在に積層されて基板に密着可能な複数の自己密着層とから形成し、これら複数の基材層と自己密着層とに可撓性と耐熱性とをそれぞれ付与するので、密着層から基板を容易に取り外すことができ、しかも、耐熱性を付与したり、構成の簡素化を図ることができるという効果がある。
【0011】
また、積層保持体を基板と略同じ大きさに形成してその表面には自己密着層を位置させ、積層保持体の裏面には基材層を位置させるので、積層保持体表面の自己密着層に基板を密着させ、所定の製造工程にそのまま供給して製造の円滑化、迅速化、容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る基板用保持治具の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板用保持治具の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板用保持治具1は、図1や図2に示すように、積層保持体2に薄い半導体ウェーハWを保持させる治具で、積層保持体2を、抗張力を有する複数の基材層3と、基材層3に着脱自在に積層されて半導体ウェーハWに密着可能な複数の自己密着層4とから多段構造に形成するようにしている。
【0014】
積層保持体2は、例えば複数の基材層3と自己密着層4との組み合わせにより0.2〜2mm程度の厚さを有する平面円形に形成され、全体として剛性を有しており、各種の製造工程にそのままの状態で供給することができるよう、半導体ウェーハWと同じ大きさ・形状とされる。
【0015】
半導体ウェーハWは、例えばφ200mmの薄く脆いシリコンウェーハからなり、回路パターンの形成、バックグラインドやハンダリフローの処理等が施される。
【0016】
複数の基材層3と自己密着層4とは、基板用保持治具1や積層保持体2の強度を確保する観点から、上下方向に交互に積層され、積層保持体2の最表面に自己密着層4が位置するとともに、積層保持体2の最裏面に基材層3が位置する。
【0017】
各基材層3は、例えば25〜200μm程度の厚さを有し、可撓性(例えば、手作業で剥離できる柔軟性)、耐熱性(例えば、ハンダリフロー工程で5分間耐えられる耐熱性)、抗張力(例えば、引張り弾性率が1GPa程度以上)を有する金属箔(SUS、アルミニウム、銅、ニッケル等)、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、ガラス複合材料(エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミドトリアジン樹脂等からなる熱硬化性樹脂、フェノール等を含有)等を用いて平面円形に形成され、可撓性と耐熱性とがそれぞれ付与される。
【0018】
各自己密着層4は、例えば5〜200μm程度の厚さを有し、可撓性(例えば、手作業で剥離できる柔軟性)と耐熱性(例えば、ハンダリフロー工程で5分間耐えられる耐性)とを有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等を用いて基材層3と同じ平面円形に形成され、表裏両面が弱粘着性、すなわち自己密着性を有しており、半導体ウェーハWや基材層3に着脱自在に密着する。
【0019】
上記構成において、基板用保持治具1に半導体ウェーハWを保持させて各種の工程に供したい場合には、積層保持体2表面の自己密着層4に半導体ウェーハWを隙間なく密着させ、この状態で各種の工程にそのまま供すれば良い。この際、半導体ウェーハWに複数の基材層3と自己密着層4とを交互に密着することにより、半導体ウェーハWと積層保持体2とを密着させても良い。積層保持体2が複数の基材層3と自己密着層4との多層化により十分な剛性を有するので、半導体ウェーハWのハンドリングや搬送に支障を来たすことがない。
【0020】
工程での処理や加工が終了したら、積層保持体2の最裏面側から基材層3と自己密着層4とを順次半導体ウェーハWから剥離する。この際、必要に応じ、自己密着層4や基材層3を屈曲させて順次剥離し、下層の自己密着層4を露出させて新規に使用することができる。基板用保持治具1に半導体ウェーハWを再び保持させて工程に供したい場合には、積層保持体2表面の新たな自己密着層4に半導体ウェーハWを密着させ、この状態で各種の工程にそのまま供することができる。積層保持体2の強度が不足する場合には、新たな基材層3と自己密着層4とを適宜積層すれば良い。
【0021】
上記構成によれば、柔軟な基材層3と自己密着層4との多層構造により積層保持体2が十分な剛性を有するので、半導体ウェーハWを確実にハンドリングしたり、円滑に搬送することができる。また、半導体ウェーハWを取り外す場合には、基材層3と自己密着層4とを最裏面側から順次剥離し、最後に半導体ウェーハWから自己密着層4を剥離すれば良いので、特殊な剥離剤や溶剤等を使用しなくても、密着層から半導体ウェーハWを簡単に取り外すことができる。
【0022】
また、最も外側の基材層3から順次剥離し、最後に半導体ウェーハWに密着している自己密着層4を剥離すれば、半導体ウェーハWを損傷することなく、半導体ウェーハWから自己密着層4を簡単に取り外すことができる。
【0023】
また、積層保持体2を半導体ウェーハWよりも拡径とするのではなく、半導体ウェーハWと同じ大きさとするので、各種の工程にそのまま供して製造の円滑化、迅速化、容易化を図ることが可能になる。さらに、耐熱性を有する材料により基材層3と自己密着層4とをそれぞれ形成すれば、積層保持体2を容易に得ることができるので、簡単に耐熱性を付与したり、構成の簡素化を図ることが可能になる。
【0024】
なお、上記実施形態では複数の基材層3と自己密着層4とを交互に積層したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、基材層3の表面に複数の自己密着層4を積層してその上に別の基材層3を積層し、この別の基材層3の表面に複数の自己密着層4を新たに積層しても良い。また、上記実施形態における複数の基材層3は、同じ厚さでも良いし、異なる厚さでも良い。この複数の基材層3は、半導体ウェーハWに対するダメージを抑制する観点から、半導体ウェーハWに近い基材層3を薄くし、半導体ウェーハWから離れた基材層3を厚くすることができる。
【0025】
また、複数の自己密着層4は、同じ厚さでも良いし、異なる厚さでも良い。この複数の自己密着層4についても、半導体ウェーハWに対するダメージを抑制する観点から、半導体ウェーハWに近い自己密着層4を薄くし、半導体ウェーハWから離れた自己密着層4を厚くすることができる。さらに、積層保持体2から半導体ウェーハWを剥離する際、積層保持体2の最裏面側から基材層3と自己密着層4とを順次剥離することで、積層保持体2と半導体ウェーハWとを分離しても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 基板用保持治具
2 積層保持体
3 基材層
4 自己密着層
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と略同じ大きさの積層保持体に基板を保持させる基板用保持治具であって、積層保持体は、抗張力を有する複数の基材層と、基材層に着脱自在に積層されて基板に密着可能な複数の自己密着層とを含み、表面に自己密着層を位置させ、裏面には基材層を位置させ、複数の基材層と自己密着層とに可撓性と耐熱性とをそれぞれ付与したことを特徴とする基板用保持治具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate