説明

基板表面を研磨するための方法

【課題】半導体デバイスをつくるための基板材料として窒化アルミニウム(AlN)を用いる場合に、エピタキシャル成長に適した基板表面を導くためのAlN表面の質を向上させる。
【解決手段】基板表面を下処理する改善された工程が提供され、ここで、基板表面は、化学的機械的研磨(CMP)工程で下処理され、CMP工程は、基板表面に施され、および基板表面は、CMP工程からの如何なる活性原料をも洗浄するために仕上げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、同時に係属する米国仮出願番号No.60/331,868の米国特許法第119条(e)の利益を主張し、それはLeo J. Schowalter、J. Carlos Rojo、Javier Martinez LopezおよびKenneth Morganにより、2001年11月20日に出願され、タイトルが“化学的機械的研磨(CMP)工程”であって、ここでは参考として内容が組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般に半導体基板表面の下処理(preparation)に関し、および特に化学的機械的研磨(CMP)を用いて基板表面を下処理することに関する。
【背景技術】
【0003】
化学的機械的研磨(CMP)は、半導体ウエハー表面を研磨するために用いられる工程である。特に、CMPは、ウエハー表面を研磨するために化学的および物理的な力を使う。まず、研磨パッド上にウエハーを置く間、ウエハーの裏に負荷を与える。次に、研磨剤および反応性物質の双方を含有するスラリーを下方に流しながら、パッドとウエハーとの双方を逆回転させる。
CMPは、典型的には、集積回路をつくる目的で、ウエハー表面を平坦化するために用いられる。CMPは、旧来の平坦化技術よりより広い範囲を平坦化することができるため、平坦化方法として浮上してきた。上記したように、CMPは化学的反応と機械的作用との組み合わせである。まず、スラリーがウエハー表面を弱め、スラリー粒子が、パッド上の粒子に加えて、ウエハー表面からの物質除去を達成する。
【0004】
商業的半導体デバイスをつくるための基板材料としては窒化アルミニウム(AlN)を用いることが好ましいが、エピタキシャル成長(epitaxial growth)に適した基板表面を導くためのAlN表面の処理において、問題がある。エピタキシャル成長に適した良質の表面を製造する、AlNウエハーを研磨するための改善された方法があると有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の要約
本発明の一つの具体的な態様は、基板表面の下処理方法を対象にし、該方法は、化学的機械的研磨(CMP)工程のために基板表面を下処理する、基板表面にCMP工程を施す、および基板表面を仕上げる行為を含み、ここで、CMP工程を施す行為は、さらにCMP工程中研磨懸濁溶液を適用する行為を含む。本発明のある面においては、基板が窒化アルミニウム(AlN)である方法が提供される。
【0006】
本発明の他の面によれば、研磨懸濁溶液は、さらに水酸化物(塩基性)溶液のシリカ懸濁液を含む。本発明の他の面によれば、研磨懸濁液は、KOHベーススラリーを含む。本発明の一面によれば、研磨懸濁溶液は、アンモニアベーススラリー中に懸濁するシリカ粒子を含む。
【0007】
本発明の他の面によれば、CMP工程を施す行為は、直径8.0インチの円形の研磨表面に対し、毎分約0.5mLの割合で、研磨懸濁液を適用する行為を含む。本発明の一面によれば、CMP工程を施す行為が、サンプルの研磨スピードを約13〜18m/secの範囲で維持する行為を含む。
【0008】
本発明の他の面によれば、下処理する行為が、基板の表面を研磨する前に、研磨表面の汚染を実質的に減少させるため、研磨装置を洗浄することを含む。本発明の一面によれば、基板表面を仕上げる行為が、基板の表面から、研磨懸濁液を実質的にリンスする(すすぐ)行為を含む。本発明の他の面によれば、前記方法が、下処理行為中に、基板の表面を溶媒で洗浄することをさらに含む。本発明の他の面によれば、基板が、軸上、Al−極性、c−面表面であり、および研磨懸濁液のpH値が約10.5またはそれ以上である。本発明の他の面によれば、基板は前記方法により製造される。本発明の他の面によれば、前記方法により製造される基板が提供される。
【0009】
本発明の他の面によれば、方法は、基板表面を下処理するために提供される。その方法は、化学的機械的研磨(CMP)工程のために基板表面を下処理する行為、基板の配向を決定する行為、および配向に基づき基板表面の除去を施すことを含む。本発明の他の面によれば、基板はAlNであり、および配向を決定する行為が、AlN基板について、AlN基板の少なくとも1つの面および研磨すべき表面への配向を決定する行為を含む。本発明の他の面によれば、除去を施す行為が、配向に基づいた除去時間を決定する行為を含む。
【0010】
本発明の他の面によれば、除去を施す行為が、基板表面から露出した軸外の物質を除去する行為を含む。他の面によれば、露出した軸外の物質を除去する行為が、基板表面から物質を50〜100μm除去することを含む。
【0011】
他の面によれば、基板が研磨すべき表面法線を含み、および配向を決定する行為が、基板の所定の面のために、所定の面に関して、垂直な表面の配向を決定することを含む。本発明の他の面によれば、基板表面の除去を施す行為が、所定の面に関して、垂直な方面の配向に基づいている。
【0012】
他の面によれば、基板がc−面基板のAl―極性側を含み、および除去を施す行為が、c−面基板のAl―極性側を下処理するために、ポリマーダイヤモンド懸濁液を用いて、乾式研削および研磨の少なくとも1種を施すことを含む。本発明の他の面によれば、AlN基板が非極性表面を含み、および除去を施す行為が、非極性表面を10〜20μm除去する行為をさらに含む。
【0013】
本発明の他の面によれば、方法が、化学的機械的研磨(CMP)工程を施す行為をさらに含み、および基板表面の研磨が、配向に基づいて施される。他の面によれば、研磨が、あるpH値を有するスラリーで基板表面を研磨する行為をさらに含み、およびスラリーが基板面およびpH値に基づき選択される。
【0014】
他の面によれば、基板はAlNであり、基板表面が、軸上Al−極性、c−面表面であり、および選択されるスラリーのpH値が10.5より大きい。本発明の他の面によれば、基板は、前記方法により製造される。本発明の他の面によれば、前記方法により製造される基板を有するデバイスが提供される。
【0015】
本発明の様々の態様の構造および操作だけでなく、更なる特徴および利点が、添付図面に関連して以下に詳細に記載されている。図中、似た参照番号は、同様なまたは機能的に類似した要素を示す。付加的に、参照番号の最も左の1桁または2桁は、参照番号が最初に現れる図と一致する。
【0016】
図面の簡単な説明
本発明は、付加したクレームで詳細に説明される。本発明の上記したおよび更なる利点は、類似する参照番号が同様または類似の要素を示すことを併せて、以下の記載を参照してより理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一つの態様により、CMP工程における基板表面を研磨するために用いることができる通常のCMP装置を示す図である。
【図2】本発明の一つの態様により、基板表面を研磨するために用いられる工程のフローチャートを示す図である。
【図3】本発明の一つの態様により、基板表面を研磨するためのより詳細な工程を示す図である。
【図4】本発明の一つの態様により、CMP研磨を施した後のAlN基板のAl−極性c−面のAFMイメージを示す図である。
【図5】本発明の一態様により、CMP研磨を施した後に撮影された表面である、AlN基板のc−軸方向に関し、45度傾いたAlN基板表面のAFMイメージを示す図である。
【0018】
単結晶III窒化物の使用は、改善された熱伝導性だけでなく、改善されたエピタキシャル成長、改善された熱的および化学的適合性をも与える。バンドギャップが広く高温の半導体の応用は、ブルー/UV固体電荷注入レーザー、UV光源および検知器、高出力マイクロ波デバイス、高出力スイッチ、および高温用途の開発を含む。しかしながら、エピタキシャル成長のために、窒化アルミニウム(AlN)基板表面を適切に整備する方法を得、これらのデバイスを製造する需要がある。例えば、窒化物(例えば、AlN、Al、Ga(1−x)Nなど)は、例えば、有機金属気相エピタキシー(OMVPE)および他の形成工程により、単結晶AlN基板上にエピタキシャルに成長することができる。
【0019】
AlN基板のデバイス製造は、一般的にデバイス層のエピタキシャル成長を含む。このデバイス層の質は、AlN基板表面の質に依存する。最善の研磨技術であっても、ウエハー表面は、マイクロダメージおよび表面粗さなどの研磨欠陥がある。表面欠陥は、エピタキシャル成長で下処理され、仕上げられた半導体の質に影響することが知られている。通常の研磨手段は、サブミクロンスケールおよびAlN表面直下の双方で、その基板がエピタキシャル成長に適さないように、AlN表面にダメージを与える。AlN表面は、通常のCMP工程を用いて表面欠陥を起こさずに研磨することはできないから、そのような表面を下処理する際に困難が生じる。通常のCMP技術はAlN表面にダメージを与えるため、AlN結晶に対しエピタキシャル成長に適した、原子レベルで平坦な表面を製造する方法が希求されている。
本発明の一面によれば、基板表面を下処理する改善された工程が提供され、ここで該基板表面は、化学的機械的研磨(CMP)工程のために下処理され、該CMP工程は基板上に施され、および基板表面は、CMP工程からの如何なる活性原料をも基板表面から洗浄し、仕上げられる。また、該方法により製造された改善された基板が提供される。本発明の一面によれば、AlN基板表面の質を改善することを可能にする特別な研磨物質および研磨手段を用いることができる。
【0020】
他の複合半導体、例えばGaN、InN、または2H−SiCのエピタキシャル成長のための基板としてAlN結晶を用いるために、大面積で高い完成度のAlNウエハーが必要である。AlNブール(boules)を成長させた後、該ブールを一般的に輪状のダイヤモンドソー(diamond saws)またはワイヤーソー(wire saws)を用いて、ウエハーに切断し、そして各々の表面はとがれ、および平坦に研磨される。本発明の一つの態様によれば、AlN結晶表面(例えば、AlNのa表面、+c表面または−c表面)は、エピタキシャル成長に適した表面を得るために、CMPを用いて研磨される。最適には、これらの研磨された表面は、平坦で高い完成度であり、スクラッチ、ピット、またはダメージ転位(damage dislocation)および他の表面下のダメージは最小限である。また、これらの研磨された表面は、酸化アルミニウムコーティングまたはアイランド(islands)がない。
【0021】
研削工程において、研削に用いられる粉末は、粉状結晶の微小硬度と同じかそれ以上の微小硬度を有すべきである。基本的な目的は、短時間で結晶から物質を除去することである。研磨は、表面に対しミラーのような仕上がりを与え、および表面下をダメージのない結晶にすることを目的とする。この研磨は、“化学的機械的平坦化”工程に酷似しており、多層デバイスのウエハー表面を平坦化するために、最も頻繁に用いられる技術として知られている。この工程において、研磨滑剤は実際に研磨される表面とゆっくり反応する。スラリーおよび研磨パッドは、下にある結晶に感知できるほどのダメージを与えることなく、反応生成物を継続的に除去するようにデザインされる。
【0022】
CMPにおいて、ウエハーの高い高度の物は選択的に除去され(すなわち、高い高度の物からの物質は、より低い高度の物質より迅速に除去される)、改善された平坦性を有する表面が得られる。化学的作用により補助される機械的研磨は、そのような選択的材料除去を生み出す。その工程は、ウエハーをキャリアー上にうつ伏せにのせて施される。そのキャリアーはその後に、研磨パッドを備えた回転圧盤に対し加圧される。キャリアーそれ自体も回転する。研磨剤を含有する水性スラリーは、テーブル上に滴下し、パッドを浸す。通常、スラリーは、塩基性媒体または酸性媒体中に懸濁させたシリカ、アルミナ、セリア、または他のナノメーターサイズの粒子の研磨剤を含む。
【0023】
本発明の一面によれば、配向性は、CMP処理の前の基板表面の機械的下処理に影響を与えることを理解する。AlN結晶を結晶のc−軸と直角に薄く切るときに、いわゆるc−面基板が製造される。これらのc−面基板は有極性であり、および基板の両側の表面は全く異なる性質を有するだろう。基板の一方の側面はアルミニウム(Al)で終結しており(またはいわゆるAl―極性、c―面)、および他の側面は窒素(N)で終結している(またはいわゆるN−極性、c−面)。
【0024】
AlN結晶がカットされ、結晶のc−軸が基板面に含まれるとき、非極性基板が製造され、ここで2つの表面は同一の性質を有する。c−軸から離れ、ある角度(90°以外)で切られる基板は、ある極性効果を示すが、これらの効果は、c−面基板の効果ほど強くない。c−面基板は、電子デバイスを製造するために現在用いられ、ドーピングを必要としないか最低限のドーピングで、高密度の電子ガスをつくれる極性効果の利点を有する。しかしながら、非極性デバイスが用いられる場合、光電子デバイスがより良いと予想されている。
【0025】
本発明の一つの態様によれば、基板表面の最適な下処理と、異なる結晶配向とに実質的な差異が存在することを理解する。AlN基板の場合、Alで終結したc−面は水と反応しないが、Nで終結したc−面は、非極性面とともに水と反応することを理解する。ウエットラッピングおよび研磨の間、Al−極性面は、非Al−極性面、およびAl−極性面を機械的研磨するのに適した同一条件下で削り続けられ、ここでc−軸は、基板の表面法線から20度またはそれ以上配向している。(効果的に、軸上c−面以外の配向に用いられるウエットメカニカル処理は、実際、固定研磨剤を伴う化学的機械的処理である。)本発明の一つの態様によれば、乾式研削およびポリマーダイアモンド懸濁液が、ほぼ軸上の(約20°未満のミス配向(misorientation))c―面基板のAl―極性側を下処理するために用いられる。厳密な機械的研磨でも、軸上Al−極性表面で観察される除去割合は、他のすべての結晶配向よりも低い。
【0026】
本発明の一つの態様によれば、精密機械的研磨およびCMPより前の機械的処理中で除去されるべき物質量は、ソーカット(saw cut)の質に依存することが理解される。輪状ソーに対し、ソーの不規則なカットを平坦化するために、典型的に50〜100μm除去しなければならない。この点において、サンプルは平面であり、および低いピット密度を有すべきであり、ならびにサンプルは精密機械的処理を受けることができる。この段階で、一つの態様によれば、サンプルの平坦化は、c−面、Al−極性基板表面に対する最も高いレベルに引き上げることが理解されるが、それは露出された如何なる軸外物質もCMP中、所望の表面の価値を低下させる原因となることを理解するからである。非極性表面に対して、高い化学的反応性は、CMP中で平坦化を可能とし(微視的に認識可能なピットおよびスクラッチは許容できる)、およびCMPがAl−極性表面の効果を低下させることを引き起こさない。精密機械的処理は、一般的に、サンプル厚みの全体的に10〜20μmの除去を含む。
【0027】
本発明の一つの態様によれば、CMP中の除去割合は、基板表面の結晶配向と非常に関係があることが理解される。表面法線とc−軸の間の角度を、約0から20°を越えるぐらいまで増加させると、Al−極性、c−面基板に対し、除去割合は、1時間当たり約1μmから10μmを越えるぐらいまで増加する。非極性およびN−極性、c−面表面に対し、除去割合はスラリーの研磨粒子により、機械的に限定される。
【0028】

図1は、通常のCMP装置を示し、それは、本発明の一態様によるCMP工程の基板表面を研磨するために用いることができる。研磨されるウエハー101は、ウエハーキャリアー102上に取り付けられ、該ウエハーキャリアーは、ウエハー101とチャック108との間に位置し、ウエハーおよびウエハーキャリアー102を保持するバッキングフィルム109を含む。ウエハーキャリアー102は、支軸105により回転される。力がウエハーキャリアー102に加えられ、ウエハー101が1つまたは2つ以上の研磨パッド103A−103Bと接触する。1つまたは2つ以上の研磨パッド103A−103Bが、回転する圧盤106に接着される。さらにスラリー107が、パッド103A−103Bに適用され、および滴下速度が、例えばコントロールフローディスペンサー(control flow dispenser)(図示せず)により、調節される。
【0029】
当然のことながら、他のCMP用具および/または研磨装置を用いることができ、本発明は、如何なる特別なCMP用具または研磨構成にも限定されない。
本発明の一面によれば、CMP工程は、スラリーおよび研磨懸濁溶液を含むスラリーを用いて、基板を研磨することを含むことができ、スラリーは、基板表面をエッチングすることができ、およびエピタキシャル成長に適した仕上げ表面をつくることができる。例えば、シリカ懸濁溶液を用いることができる。この溶液は、例えば、水酸化物溶液(塩基性)であることができる。そのようなスラリーは商業的に入手可能で、例えば、SS−25(Semi−Sperse25)として当該分野で知られるKOHベースのCMPスラリーとして、カボット マイクロエレクトロニクス(Cabot Microelectronics)から入手可能であり、またシトン(Syton)スラリーとして、モンサント(Monsanto)から入手可能である。
【0030】
本発明の一つの態様によれば、より高いpHのKOHスラリーが、Al−極性、c−面表面に対しより作用することが理解される。SS25スラリーは、11.0のpHを有する。その高いpHにより、SS25と、より低いpHを有する他の商業的に入手できるKOHスラリー(SytonおよびGlanzoxのようなもの)とを区別することができる。軸上Al−極性、c−面の表面に対し、本発明の一つの態様によれば、観察可能な除去割合を得るためには、pHは10.5を越えるべきであることが理解される。
【0031】
当然のことながら、他のスラリータイプも用いることができる。例えば、ダイアモンド、炭化ケイ素、または他の物質をスラリー中に用いることができる。また、他の商業的に入手可能なスラリー(例えばCabot Microelectronisから入手できるSS−25−EおよびSS−225(水酸化アンモニウムベース)、AM100、およびRodel2371(アンモニアベースのスラリー))も利用できる。
【0032】
そのような化学的/機械的研磨方法は、非常に硬い表面、例えば窒化アルミニウム(AlN)表面を下処理するのに特に適している。当然のことながら、本発明の様々な面は、不純物の量、および研磨手段によってAlN結晶基板に導入される表面欠陥を減少させる。
【0033】
図2は、本発明の一つの態様により、基板を研磨するための工程200を示す。ブロック201において、工程200は開始される。ブロック202において、基板は研磨のために下処理される。これは、基板表面、研磨装置、および周囲からの汚染除去を含むことができる。そのような汚染は、一般的に研磨工程中の表面欠陥の導入原因となる。ブロック203において、CMP工程が基板表面に施される。AlNの場合において、CMP工程は、水酸化物溶液を有するスラリーを用いて、表面を研磨することを含むことができる。例えば、Cabot Microelecronicsから入手可能なSS−25を用いることができる。当然のことながら、本発明は、スラリーのタイプに限定されず、および上記したように、他の適切なスラリーを用いることができる。ブロック204において、研磨サンプルは仕上げられる。これは、例えば、研磨装置からのサンプル除去を含み、および研磨工程により導入されるあらゆる反応性剤を除去するための注意深い洗浄も含むことができる。ブロック205において、工程200が終了する。
【0034】
図3は、本発明の一つの態様により、基板を研磨するためのより詳細な工程300を示す。ブロック301において、工程300が開始される。
本発明の一つの態様によれば、AlN基板はCMP工程のために下処理される。より詳しくは、周囲およびウエハーの可能な汚染物を洗浄し、および研磨装置は、ウエハーに正確な研磨圧力を適用するために調節される。以下の例は、本発明の一つの態様により基板を下処理するための手段である。
【0035】
基板の下処理およびCMP工程のための装置
1.サンプル表面およびマウンティングブロックの実質的にすべての可能な汚染粒子(例えば、ワックス、汚れ、およびより大きな機械的粗粒子)を洗浄すべきである。これは典型的には、例えば有機溶媒(例えば、アセトンおよび/またはメタノールにより)でなされ、洗浄はブロック302で施される。また、以前の処理から残存するあらゆる粒子(例えばCMP流動性残留物)は、研磨領域と接触する全領域で表面から洗浄すべきであり、それにより、研磨表面を汚染する可能性、および基板表面にダメージを与えことになりかねない可能性を低下させる。
【0036】
2.マウンティングブロックはその後に準備され、ブロック303でサンプルを保持する。例えば、サンプルは、マウンティングブロックの表面に接着することができる。マウンティングブロックはその後に、“機械的”工程治具から“CMP”工程治具へ取りかえられる。本発明の一つの態様によれば、これらの治具は同一のものであることができ、それらの使用は、機械的研磨と化学的機械的研磨との二次汚染を避けるために、分離される。
【0037】
3.取り付けられたサンプルは、垂直なオフセットを補正し、サンプルを適切に研磨表面に接触することを可能とする。適切な下向きの力を確保するための質量を、304でブロックに加えることができる。5×10〜7×10N/mの圧力が適していると示される。これらが非極性面および極性面の双方に対し、最も一致した結果を与える条件である。しかしながら、当然のことながら、本発明は条件の如何なる組み合わせにも限定されない。
【0038】
本発明の一つの態様によれば、CMP工程は、下処理された基板表面上に施すことができる。本発明の一面において、Cabot Microelectronics Corporationから入手できるSS−25(Semi−Sperse25)スラリーを、AlN基板を研磨するために用いることができる。
【0039】
II CMP工程
以下は、本発明の一つの態様による、AlN基板表面を下処理する段階の詳細な順序、および本発明の一つの態様による、CMP工程のための滴下速度である。
新規の“Multitex1000”精密研磨パッドまたは他の適切な精密研磨パッドを研磨テーブル(圧盤)に適用すべきである。一般的に、そのような研磨パッドは、圧盤表面に接着するように自己吸着裏地を有する。ブロック305において、研磨パッドは、圧盤表面に接着される。最も良い結果のために、研磨パッドは、起伏をパッドに引き起こす空間をパッドの裏に伴わないように、研磨デッキに適用されるべきである。例えば、研磨パッドは、先頭の端から他方の端まで、洗浄された棒で転がすことができ、パッドの裏の空間を避けることができる。
【0040】
ブロック306で、パッド表面を洗浄することができる。例えば、パッドは、蒸留水で洗浄することができ、水で浸され、ならびに空のパッドおよび圧盤表面を10〜15分間パッド上で回転する(例えば、サンプル軌道で45−60RPMまたは13〜18m/sec)。この洗浄工程中、サンプル(研磨される基板を備えた)は、研磨表面と接触しないよう持ち上げられるべきである。この間に、パッド表面は、濾過された蒸留水で完全にリンスされるべきである。これは、パッドおよび治具の双方のすべてのほこりおよび二次的汚染粒子を完全に洗浄することを確保するために施される。
【0041】
ブロック307において、スラリー滴下速度および治具の回転を、研磨のために設定すべきである。表面の回転洗浄中に、滴下速度がフローコントロールディスペンサーを用いて設定されるべきである。最も良好で最も一致した研磨をもたらす該割合は、毎分、3滴のSS−25スラリーおよび蒸留水である(直径8.0インチの円形の研磨表面に対し、CMP流体および蒸留水それぞれ約0.5mL/分)。しかしながら、当然のことながら、本発明は、如何なる特別の滴下速度にも限定されず、および滴下速度は、用いられるスラリーのタイプ、加えられる圧力、および回転スピードに依存する。この平均的な滴下速度で設定し、SS−25スラリーは、研磨表面に滴下され、ラッピング治具に溶液を均等に広げさせ、サンプル領域を、基板表面を研磨する前に、一致したレベルの研磨粒子および反応性溶液で満たす。研磨パッドは、スラリーおよびエッチング液をパッド表面上に実質的に均等に分散させるために、約30〜60分または他の適切な時間の研磨の前に、このように前提条件を調整することができる。
【0042】
適切な速度を確認した後、および治具の適切な回転を観察して、サンプルをCMP工程を開始するために、表面上に降ろすことができる。ブロック308において、サンプルは研磨される。
この段階の典型的な工程時間(研磨時間)は約1時間であるが、5分〜100時間の範囲の工程時間が、表面を十分に研磨することが示されている。本発明は特別な工程時間に限定されず、むしろ例として、工程時間範囲が提供されると理解すべきである。
【0043】
物質除去は、結晶の質およびサンプルの配向に非常に依存するが、通常の値は、1時間の処理に対し、0.1μm(Al表面c−軸)〜60μm(N面c−軸)の範囲にわたる。
本発明の一つの態様によれば、サンプルは洗浄され、CMP工程からのあらゆる汚染物を除去し、および基板との残留反応を阻止するため基板表面からの微量の反応性化学物質を除去する。
【0044】
III 仕上げ
1.ブロック309において、サンプルはリンスされる。CMP工程の最後に、サンプルは研磨表面から降ろされ、例えば蒸留水で即座にリンスされる。これは、AlNとスラリー中の活性原料との間の反応を阻止するのを確実にし、および下処理された表面にまで乾燥し得る研磨剤を除去するために、施される。
【0045】
2.このリンスの後、サンプルは、ブロック310で、好適な有機溶媒で注意深く洗浄され、基板を基板ホルダーに結合する剤を除去する。他の粘着フィルムおよび真空チャッキング(vacuum chucking)技術だけでなく、これらの溶媒に可溶なマウンティングワックス、および他の通常のサンプルホールディング(sample holding)技術も、基板を保持するために用いることができる。これらのホールディング技術の各々は、ブロック311で、様々な基板剥離手段を必要とし得、それは当該分野で周知である。
【0046】
3.CMP処理の後、サンプル表面はブロック312で確実に洗浄すべきである。例えば、マウンティングブロックからサンプルを取り外す前に、サンプル表面を洗浄すべきであり、その後、取り外すときに、サンプル全体を洗浄することができる。
【0047】
4.ブロック311で、工程300は終了する。
図4は、本発明の一つの態様による研磨を施した後の、c面基板のAl―極性のAFMイメージを示す。基板表面は、その法線がc−軸の方向から通常約5°離れて配向する。表面がほぼ原子レベルで平坦なことがわかる。広範囲の分析は、全ての機械的ダメージが除去されているのを示している。同様に、滑らかな表面は、c−面基板のN−極性に対しても得ることができる。
図5は、本発明の一つの態様による研磨を施した後の基板のAFMイメージを示す。表面はc−軸方向に関し45°傾いている。基板表面がほぼ原子レベルで平坦であることを観察することができる。機械的ダメージの痕跡が除去されている。中央の交差したボックスが、統計分析に対するイメージから除去されている。
【0048】
本発明の詳細な幾つかの態様を記載したが、当業者には、様々な変更および改善が思いつくだろう。そのような変更および改善は、本発明の精神および範囲内でなされる。従って、先の記載は単なる例であり、限定を意図しない。本発明は、以下のクレームにより定義されるもの、およびそれらの均等なものだけに限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウム基板の表面を整備する方法であって、該方法は、
化学的機械的研磨(CMP)工程のために、AlN基板の表面を下処理すること、
AlN基板の表面にCMP工程を施すこと、および
AlN基板の表面を仕上げること、ここでCMP工程を施す行為には、さらにCMP工程中に、研磨懸濁溶液を適用する行為を含むこと
の行為を含む、前記方法。
【請求項3】
研磨懸濁液が、さらに水酸化物溶液(塩基性)のシリカ懸濁液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
研磨懸濁液が、KOHベースのスラリーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
研磨懸濁溶液が、アンモニウムベースのスラリーに懸濁したシリカ粒子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
CMP工程を施す行為に、直径8.0インチ(20.32cm)の円形の研磨表面に対し、毎分約0.5mLの割合で、研磨懸濁液を適用する行為を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
CMP工程を施す行為が、サンプルの研磨スピードを約13〜18m/secの範囲で維持する行為を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
下処理する行為が、AlN基板の表面を研磨する前に、研磨表面の汚染を実質的に減少させるため、研磨装置を洗浄することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
AlN基板表面を仕上げる行為が、AlN基板の表面から、研磨懸濁液を実質的にリンスする行為を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
下処理行為中に、AlN基板を溶媒で洗浄することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
AlN基板が、軸上、Al−極性、c−面表面であり、および研磨懸濁液のpH値が約10.5またはそれ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法により製造される基板。
【請求項13】
請求項1に記載の方法により製造される基板を有するデバイス。
【請求項14】
窒化アルミニウム(AlN)の表面を下処理するための方法であって、該方法は、
化学的機械的研磨(CMP)工程のために、AlN基板の表面を下処理する行為
を含み、該下処理工程が
AlN基板の配向を決定すること、および
配向に基づいてAlN基板表面の除去を施すことの行為を含む、
前記方法。
【請求項15】
配向を決定する行為が、AlN基板のために、少なくとも1つの面および研磨すべき表面への配向を決定する行為を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
除去を施す行為が、配向に基づいた除去の周期を決定する行為を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
除去を施す行為が、AlN基板表面から露出した軸外の物質を除去する行為を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
露出した軸外の物質を除去する行為が、AlN基板表面から物質を50〜100μm除去することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
AlN基板が、研磨すべき通常の表面を含み、および配向を決定する行為が、AlN基板の所定の面のために、所定の面に関して、通常の表面の配向を決定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
AlN基板表面の除去を施す行為が、所定の面に関して、通常の表面の配向に基づいている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
AlN基板が、c−面基板のAl―極性側を含み、および除去を施す行為が、c−面基板のAl―極性側を下処理するために、ポリマーダイヤモンド懸濁液を用いて、乾式研削および研磨することの少なくとも1種を施すことを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
AlN基板が、非極性表面を含み、および除去を施す行為が、非極性表面を10〜20μm除去する行為をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
方法が、化学的機械的研磨(CMP)工程を施す行為をさらに含み、およびAlN基板表面の研磨が、配向に基づいて施される、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
研磨が、pHを有するスラリーでAlN基板表面を研磨する行為をさらに含み、およびスラリーが、基板面およびpH値に基づき選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
AlN基板表面が、軸上Al−極性、c−面表面であり、および選択されるスラリーのpH値が10.5より大きい、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項14に記載の方法により製造される基板。
【請求項27】
請求項14に記載の方法により製造される基板を有するデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−134515(P2012−134515A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−22627(P2012−22627)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2003−545445(P2003−545445)の分割
【原出願日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【出願人】(502263411)レンセラール ポリテクニック インスティチュート (14)
【Fターム(参考)】