説明

基準信号生成装置

【課題】 回路規模を増大させずに複数の外部基準信号を用いて所望の基準信号を生成でき、アンロック時にも安定した基準信号を出力する基準信号生成装置を提供する。
【解決手段】 分周された外部基準信号と分周された電圧制御発振器5の出力との位相を比較する位相比較器32を備え、複数の異なる周波数の外部基準信号を入力可能とし、可変フィルタ10が入力信号を帯域制限し、検波回路11が可変フィルタ出力の信号レベルを検出し、レベル判定回路12が、可変フィルタ10にいずれかの外部基準信号の周波数を通過させる帯域を設定し、信号レベルが適正範囲であれば、入力された外部基準信号の周波数を当該通過帯域の周波数として特定し、第1の分周器31に当該周波数に応じた分周値を設定すると共に、切替器6を位相比較器31側に切り替え、適正範囲外であれば、切替器6を固定電圧生成装置7側に切り替える基準信号生成装置としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定機器等に基準信号を供給する基準信号生成装置に係り、特に回路規模を増大させることなく、複数の周波数の外部基準信号を用いて所望の基準信号を安定して生成でき、更に、アンロック時にも安定した基準信号を供給することができる基準信号生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、複数の外部基準信号を用いて基準信号を生成する装置では、入力された外部基準信号の周波数を測定し、当該周波数の判定結果に基づいて所望の基準信号とするためのPLL(Phase Locked Loop)制御を行うようになっていた。
また、外部基準信号の周波数により、適切なループフィルタを選択するようにしていた。
【0003】
従来の基準信号生成装置としては、特開昭60−112324号公報「位相同期発振装置」(日本電気株式会社、特許文献1)、特開2001−136063号公報「外部基準入力周波数自動切換回路」(アンリツ株式会社、特許文献2)がある。
【0004】
特許文献1には、外部から入力された複数の基準信号を、フィルタによって選別して検波し、所望の位相比較周波数f0に合致するように分周比を制御することが記載されている。
また、特許文献2には、複数の外部基準信号を入力可能とし、PLLのアンロックが検出されると、分周比設定回路が、外部基準信号を分周する分周値を、当該外部基準信号に合った値に切り替える設定信号を分周器に出力することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−112324号公報
【特許文献2】特開2001−136063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の複数の外部基準信号を用いる基準信号生成装置では、入力された外部基準信号の周波数を判定するためのカウンタ回路や複数のフィルタが必要であり、回路規模が増大してしまうという問題点があり、また、アンロック時の基準信号出力が安定していないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、回路規模を増大させずに複数の外部基準信号を用いて所望の基準信号を生成でき、更に、アンロック時にも安定した基準信号を出力することを可能とする基準信号生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の異なる周波数の外部基準信号を入力可能とする外部基準信号入力部と、入力された外部基準信号を設定された分周値で分周して特定の位相比較周波数とする第1の分周器と、制御電圧に応じた周波数を発振し、基準信号として出力する電圧制御発振器と、電圧制御発振器の出力を特定の分周値で分周して位相比較周波数とする第2の分周器と、第1の分周器で分周された外部基準信号と第2の分周器で分周された電圧制御発振器出力との位相差を検出して、当該位相差に応じた電圧を出力する位相比較器と、入力された電圧を平滑化して電圧制御発振器に制御電圧を印加するループフィルタと、予め設定された固定電圧を生成する固定電圧生成部と、位相比較器の出力又は固定電圧生成部の出力のいずれかを選択してループフィルタに出力する切替部とを備えた基準信号生成装置であって、設定された帯域を通過させる可変フィルタと、可変フィルタ出力の信号レベルを検出する検波回路と、複数の外部基準信号に対応して、各外部基準信号の周波数を位相比較周波数に分周する分周値を予め記憶するメモリを有し、可変フィルタに、複数の外部基準信号のいずれかを通過させる帯域を設定し、検波回路で検出された信号レベルが予め設定された適正範囲内であれば、当該帯域の周波数が入力された外部基準信号の周波数であると特定して、第1の分周器に、特定された外部基準信号に対応してメモリに記憶された分周値を設定すると共に、切替器を位相比較器の出力を選択するよう切り替え、信号レベルが適正範囲外であれば、切替器を固定電圧生成部の出力を選択するよう切り替える制御部とを備えたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、上記基準信号生成装置において、制御部が、入力された外部基準信号の周波数が特定されるまでは、切替部を固定電圧生成部側の出力を選択するよう切り替えておくことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、上記基準信号生成装置において、位相比較器が、ロック/アンロックを検出するものであり、アンロックを検出した場合には、制御部にアンロック検出信号を出力し、制御部が、アンロック検出信号を受信すると、切替部を固定電圧生成部からの出力を選択するよう切り替えることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、上記基準信号生成装置において、可変フィルタを、ローパスフィルタ又はバンドパスフィルタで形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の異なる周波数の外部基準信号を入力可能とする外部基準信号入力部と、入力された外部基準信号を設定された分周値で分周して特定の位相比較周波数とする第1の分周器と、制御電圧に応じた周波数を発振し、基準信号として出力する電圧制御発振器と、電圧制御発振器の出力を特定の分周値で分周して位相比較周波数とする第2の分周器と、第1の分周器で分周された外部基準信号と第2の分周器で分周された電圧制御発振器出力との位相差を検出して、当該位相差に応じた電圧を出力する位相比較器と、入力された電圧を平滑化して電圧制御発振器に制御電圧を印加するループフィルタと、予め設定された固定電圧を生成する固定電圧生成部と、位相比較器の出力又は固定電圧生成部の出力のいずれかを選択してループフィルタに出力する切替部とを備えた基準信号生成装置であって、設定された帯域を通過させる可変フィルタと、可変フィルタ出力の信号レベルを検出する検波回路と、複数の外部基準信号に対応して、各外部基準信号の周波数を位相比較周波数に分周する分周値を予め記憶するメモリを有し、可変フィルタに、複数の外部基準信号のいずれかを通過させる帯域を設定し、検波回路で検出された信号レベルが予め設定された適正範囲内であれば、当該帯域の周波数が入力された外部基準信号の周波数であると特定して、第1の分周器に、特定された外部基準信号に対応してメモリに記憶された分周値を設定すると共に、切替器を位相比較器の出力を選択するよう切り替え、信号レベルが適正範囲外であれば、切替器を固定電圧生成部の出力を選択するよう切り替える制御部とを備えた基準信号生成装置としているので、1つの可変フィルタで外部基準信号の周波数を特定でき、回路規模を増大させることなく複数の外部基準信号を用いてPLL制御により所望の基準信号を生成することができ、また、外部基準信号の信号レベルが適正でない場合には、固定電圧による自走発振を行って安定した基準信号を提供することができる効果がある。
【0013】
また、本発明によれば、制御部が、入力された外部基準信号の周波数が特定されるまでは、切替部を固定電圧生成部側の出力を選択するよう切り替えておく上記基準信号生成装置としているので、外部基準信号の周波数をサーチしている間は固定電圧による自走発振を行って安定した基準信号を提供することができる効果がある。
【0014】
また、本発明によれば、位相比較器が、ロック/アンロックを検出するものであり、アンロックを検出した場合には、制御部にアンロック検出信号を出力し、制御部が、アンロック検出信号を受信すると、切替部を固定電圧生成部からの出力を選択するよう切り替える上記基準信号生成装置としているので、アンロック時には固定電圧による自走発振を行って安定した基準信号を提供することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る基準信号生成装置の構成ブロック図である。
【図2】可変フィルタ10の通過帯域を示した模式説明図であり、(a)は1MHz用の帯域、(b)は10MHz用の帯域を示している
【図3】外部基準信号分周値テーブルの説明図である。
【図4】レベル判定回路12の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る基準信号生成装置は、外部基準信号を特定の位相比較周波数とする分周値で分周する第1の分周器と、制御電圧に応じた周波数信号を基準信号として出力する電圧制御発振器と、電圧制御発振器の出力を位相比較周波数とする分周値で分周する第2の分周器と、第1の分周器で分周された外部基準信号と第2の分周器で分周された電圧制御発振器出力との位相を比較する位相比較器と、固定電圧を出力する固定電圧生成部と、入力された信号を平滑化して制御電圧として電圧制御発振器に印加するループフィルタと、位相比較器の出力又は固定電圧生成部の出力のいずれかをループフィルタに出力する切替器と、入力された外部基準信号を帯域制限する可変フィルタと、可変フィルタの出力信号を検波して信号レベルを検出する検波回路と、可変フィルタに通過帯域を設定し、検波回路からの外部基準信号のレベルが適正範囲であれば、第1の分周器に通過帯域の周波数に応じた分周値を設定すると共に、切替器を位相比較器側に切り替え、適正範囲外であれば、切替器を固定電圧側に切り替える制御部とを備えた基準信号生成装置としており、1つの可変フィルタで外部基準信号の周波数を判定してPLLにより所望の基準信号を生成することができ、また、外部基準信号の入力レベルが不適正なときには固定電圧を提供して、自走によって基準信号を安定的に供給することができるものである。
【0017】
また、本発明の実施の形態に係る基準信号生成装置は、位相比較器が、外部基準周波数の切り替え等により、アンロックを検出すると制御部にアンロックを報知し、制御部はアンロックを通知されると切替器を固定電圧側に切り替えるようにしているので、アンロック時には固定電圧に基づいて安定した基準信号を供給することができるものである。
【0018】
[本発明の実施の形態に係る基準信号生成装置の構成:図1]
本発明の実施の形態に係る基準信号生成装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る基準信号生成装置の構成ブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る基準信号生成装置(本装置)は、外部基準信号入力部1と、分配部2と、PLL−IC3と、ループフィルタ4と、電圧制御発振器5と、切替器6と、固定電圧生成部7と、可変フィルタ10と、検波回路11と、レベル判定回路12とを備えている。
更に、PLL−IC3は、第1の分周器31と、位相比較器32と、第2の分周器33とを備えている。
【0019】
[本装置の各部]
本装置の各構成部分について説明する。
外部基準信号入力部1は、外部基準信号を入力する端子を備えており、本装置では、1MHz、10MHzの2種類の外部基準信号の入力を可能としているが、これに限るものではなく、更に2MHzの外部基準信号を入力可能としてもよい。
分配器2は、入力された外部基準信号を2分配する。
第1の分周器31は、外部基準信号を、設定された分周比で分周する。分周比は後述するレベル判定回路12によって設定されるが、外部基準信号の周波数を、位相比較器32における位相比較周波数とする分周比が設定される。
【0020】
ループフィルタ4は、入力された信号を平滑化して制御電圧として電圧制御発振器5に印加する。
電圧制御発振器5は、制御電圧に応じた周波数を発振して、基準信号として出力する。本装置では、1MHzの基準信号を出力するものである。
第2の分周器33は、電圧制御発振器5の出力を設定された分周比で分周する。分周比はレベル判定回路12によって設定される。第2の分周器33の分周比は、電圧制御発振器5の出力を位相比較器32における位相比較周波数とする値である。
【0021】
位相比較器32は、第1の分周器31からの分周された外部基準信号と、第2の分周器33からの分周された電制御発振器5の出力との位相差を検出して、位相差に応じた電圧を出力する。
また、位相比較器32は、ロック/アンロックを検出し、アンロックを検出すると、アンロック検出信号をレベル判定回路12に出力する。
【0022】
固定電圧生成部7は、予め設定された固定電圧を生成して出力する。本装置では、電圧制御発振器5において1MHzの基準信号を出力させる制御電圧となる電圧を出力する。
切替器6は、レベル判定回路12からの指示に従って、ループフィルタ4に出力する電圧を切り替えるものであり、位相比較器32からの出力電圧又は固定電圧生成部7からの出力電圧のいずれかを出力する。
【0023】
また、本装置の特徴部分である可変フィルタ10は、レベル判定回路12からの指示に従って通過帯域(遮断帯域)を可変とし、入力された外部基準信号を帯域制限する。可変フィルタ10は、ローパスフィルタ又はバンドパスフィルタで構成される。
検波回路11は、可変フィルタ10の出力信号を検波して信号レベルを検出し、レベル判定回路12に出力する。
【0024】
レベル判定回路12は、本装置の特徴部分であり、入力された外部基準信号の周波数を判定し、それに応じて、第1の分周器31、第2の分周器33に分周比を設定する。
具体的には、レベル判定回路12は、可変フィルタ10の通過帯域を制御すると共に、検波回路11で検出された信号レベルに基づいて、入力された外部基準信号の周波数を判定する。レベル判定回路12には、予め外部基準信号の適正な信号レベルのしきい値(下限値、上限値)が設定されており、検波回路11からの信号レベルが適正範囲(下限値以上且つ上限値以下の範囲)であった場合に、入力された外部基準信号は、可変フィルタ10の通過帯域に対応する周波数であると判断するものである。
それと共に、レベル判定回路12は、切替器6を位相比較器32側に切り替えて、PLL制御を行わせる。
【0025】
また、レベル判定回路12は、外部基準信号の周波数を特定するまでの間や、検波回路11からの信号レベルが適正範囲ではなかった場合に、周波数のサーチ中であるとして、切替器6を固定電圧生成部7側に切り替えて、自走発振を行わせる。
【0026】
更に、レベル判定回路12は、位相比較器32からアンロック検出信号が入力されると、切替器6を固定電圧生成部7側に切り替える。
尚、レベル判定回路12は、マイコンやFPGA(Field-Programmable Gate Array)等で構成され、請求項に記載した制御部に相当する。
【0027】
つまり、レベル判定回路12は、適正なレベルの外部基準信号が入力された場合には、当該外部基準信号の周波数を判定して、それに応じて第1の分周器31及び第2の分周器33への分周値を設定し、切替器6を位相比較器32側に切り替え、適正なレベルの外部基準信号が入力されない場合及びアンロック検出信号が入力された場合には、切替器6を固定電圧生成器7側に切り替えて自走とする。
レベル判定回路12における処理については後で詳細に説明する。
【0028】
これにより、本装置では、単一の可変フィルタ10及び検波回路11を用いて外部基準信号の周波数を判定することができ、回路規模を増大させずに複数の外部基準信号に基づいて所望の基準信号を生成することができると共に、適正なレベルの外部基準信号が入力されていない場合や、アンロック時には、固定電圧による自走発振を行うことにより、出力エラーを防ぎ、安定して基準信号を測定器等に出力し続けることができるものである。
【0029】
[外部基準信号の周波数判定動作:図1,図2,図3]
次に、本装置における外部基準信号の周波数を判定する動作について図1及び図2を用いて説明する。図2は、可変フィルタ10の通過帯域を示した模式説明図であり、(a)は1MHz用の帯域、(b)は10MHz用の帯域を示している。また、図3は、外部基準信号分周値テーブルの説明図である。
【0030】
本装置の例では、外部基準信号としては、1MHz又は10MHzが入力可能であり、電圧制御発振器5からの出力基準信号を1MHzとし、位相比較器32における位相比較周波数を1MHzとしている。
このように、位相比較周波数を複数の外部基準信号の周波数と出力基準信号の周波数の公約数とすることにより、どの外部基準信号が選択されても、第1の分周器31における分周値を変えることで同一のループフィルタ4を用いることができ、回路規模の増大を抑えることができるものである。
また、ここでは、可変フィルタ10をローパスフィルタで構成している。
【0031】
[第1の分周器31の分周値/外部基準信号分周値テーブル:図3]
また、レベル判定回路12は、内部のメモリに、第1の分周器31に設定する分周値を記憶する外部基準信号分周値テーブルを備えている。
第1の分周器31の分周値は、入力された外部基準信号の周波数を位相比較周波数に分周する分周値である。
図3に示すように、本装置では、位相比較周波数を1MHz固定としており、外部基準信号分周値テーブルでは、1MHzの外部基準信号に対応して分周値「1」が記憶され、10MHzの外部基準信号に対応して分周値「10」が記憶されている。つまり、10MHzの外部基準信号は、第1の分周器31で1MHzの信号に変換される。
【0032】
[第2の分周器33の分周値]
更に、レベル判定回路12は、第2の分周器33の分周値を内部のメモリに記憶している。第2の分周器33の分周値は、外部基準信号の周波数にかかわらず、電圧制御発振器5の出力基準信号を位相比較周波数とするための分周値であり、位相比較周波数と電圧制御発振器5の出力基準信号の周波数の組み合わせに対応して記憶されている。
そして、レベル判定回路12は、位相比較周波数と出力基準信号の周波数が設定されると、当該組み合わせに対応する第2の分周器33の分周値を読み取って、第2の分周器33に設定する。
【0033】
ここでは、位相比較周波数と出力基準信号の周波数が共に1MHzであるから、レベル判定回路12のメモリに、第2の分周器33の分周値として「1」が記憶されており、レベル判定回路12が第2の分周器33に分周値「1」を設定する。
位相比較周波数と出力基準信号の周波数の組み合わせが複数考えられる場合には、第2の分周器の分周値を第1の分周値テーブル(外部基準信号分周値テーブル)と同様のテーブルとして記憶してもよい。
【0034】
[外部基準信号の周波数サーチ]
外部基準信号の周波数サーチの動作について具体的に説明する。
まず、レベル判定回路12は、切替器6を固定電圧生成部7側に切り替える。これにより、電圧制御発振器5は、固定電圧に基づいて自走発振を行う。
そして、レベル判定回路12は、図2(a)に示すように、可変フィルタ10の遮断周波数(又は通過周波数)を1MHz用に設定する。これにより、1MHzの外部基準周波数が可変フィルタ10を通過可能となる。
【0035】
そして、可変フィルタ10の出力信号は、検波回路11で信号レベルを検出され、レベル判定回路12は、信号レベルが予め設定された適正範囲内であるかどうかを判断し、適正範囲内であれば、外部基準信号の周波数は1MHzであると判断して、メモリから外部基準信号1MHzに対応する第1の分周器31の分周値を読み取って、第1の分周器31に分周値「1」を設定する。
【0036】
そして、レベル判定回路12は、切替器6に対して位相比較器32側に切り替えるよう指示を出力する。
これにより、本装置は、外部基準信号1MHzに基づいて1MHzの基準信号を生成するようPLL制御を行う。
【0037】
また、レベル判定回路12が、検波回路11から入力された信号レベルが適正範囲外(過小又は過大)であって、1MHzの外部基準信号が入力されていないと判断した場合、レベル判定回路12は、図2(b)に示すように、可変フィルタ10を10MHzまで通過させるよう遮断周波数(又は通過周波数)を変更するよう制御する。
【0038】
そして、検波回路11から信号レベルが入力されると、当該信号レベルが適正範囲内かどうかを判断し、適正範囲内であれば、外部基準信号の周波数は10MHzであると判断して、メモリから外部基準信号10MHzに対応する第1の分周器31の分周値を読み取って、第1の分周器31に分周値「10」を設定する。
【0039】
そして、レベル判定回路12は、切替器6に対して位相比較器32側に切り替えるよう指示を出力する。
これにより、本装置は、外部基準信号10MHzに基づいて1MHzの基準信号を生成するようPLL制御を行う。
【0040】
また、レベル判定回路12は、10MHzの外部基準信号も入力されていないと判断した場合には、再度、可変フィルタ10を1MHz用に設定して、外部基準信号周波数のサーチを行う。
つまり、本装置の特徴として、外部基準信号周波数のサーチを行っている間は、切替器6は固定電圧生成部7側に切り替えられたままであり、電圧制御発振器5は、固定電圧で自走発振を行う。
【0041】
ここでは、1MHzと10MHzの2種類の周波数のみについて行ったが、更に、2MHz、20MHz等の外部基準信号を入力可能としてもよく、その場合も、いずれかの外部基準信号の信号レベルが適正範囲内となるまで外部基準信号周波数のサーチを続ける。
尚、周波数サーチの動作は、電源投入時の他、運用途中で外部基準信号が切り替わった場合等に行われる。
【0042】
[レベル判定回路12における処理:図4]
次に、レベル判定回路12における外部基準信号の周波数サーチの処理について図4を用いて説明する。図4は、レベル判定回路12の処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、電源投入時等に周波数サーチが開始されると、レベル判定回路12は、切替器6を固定電圧生成部7側に切り替え(100)、第2の分周器33に、電圧制御発振器5の出力基準信号周波数と位相比較周波数の組み合わせに応じた分周値(本装置の例では「1」)を設定する(102)。
【0043】
そして、レベル判定回路12は、可変フィルタ10を1MHz用の帯域に設定し(104)、検波回路11からの信号レベルが適正範囲かどうかを判断する(106)。
信号レベルが適正範囲であった場合(Yesの場合)には、レベル判定回路12は、外部基準信号の周波数は1MHzであると判断して、メモリの外部基準信号分周値テーブルを参照し、第1の分周器31に1MHzに対応する分周値(本装置の例では「1」)を設定し(110)、処理130に移行する。
【0044】
また、処理106で信号レベルが適正範囲ではなかった場合(Noの場合)、レベル判定回路12は、可変フィルタ10の帯域を10MHz用に設定し(120)、信号レベルが適正範囲かどうかを判断する(122)。
処理122で、信号レベルが適正範囲内ではなかった場合(Noの場合)、レベル判定回路12は、処理104に移行して、再度、可変フィルタ10を1MHz用に設定する。
【0045】
また、処理122で、信号レベルが適正範囲内であった場合(Yesの場合)、レベル判定回路12は、外部基準信号の周波数は10MHzであると判断して、メモリの外部基準信号分周値テーブルを参照し、第1の分周器31に10MHzに対応する分周値(本装置の例では「10」)を設定する(124)。
【0046】
そして、レベル判定回路12は、処理110又は処理124で第1の分周器31に外部基準信号の周波数に応じた分周値を設定すると、切替器6を位相比較器32側に切り替えて(130)、自走からPLL制御に移行させる。
そして、レベル判定回路12は、位相比較器32からアンロック検出信号が入力されたかどうかを監視し(132)、アンロックが検出された場合には、処理100に移行して、切替器6を固定電圧生成部7側に切り替え、再度、外部基準信号の周波数サーチを行う。
このようにして、本装置のレベル判定回路12の処理が行われる。
【0047】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る基準信号生成装置によれば、外部基準信号入力部1が、複数の異なる周波数の外部基準信号を入力可能とし、可変フィルタ10が、入力された外部基準信号を入力可能な外部基準信号の周波数に合わせて帯域制限し、検波回路11が、可変フィルタ10の出力信号を検波して信号レベルを検出し、レベル判定回路12が、可変フィルタ10に通過帯域を設定し、検波回路11からの外部基準信号のレベルが適正範囲であれば、外部基準信号を分周する第1の分周器31に当該通過帯域の周波数に応じた分周値を設定すると共に、切替器6を位相比較器31側に切り替え、適正範囲外であれば、切替器6を固定電圧生成装置7側に切り替える基準信号生成装置としているので、1つの可変フィルタ10で外部基準信号の周波数を判定して、当該外部基準信号を用いてPLLにより所望の基準信号を生成することができ、更に、外部基準信号周波数のサーチ中などの外部基準信号の入力レベルが不適正なときには固定電圧を提供して、自走によって基準信号を安定的に供給することができる効果がある。
【0048】
また、本装置によれば、位相検出回路32がロック/アンロックを検出して、アンロックを検出するとレベル判定回路12にアンロック検出信号を出力し、レベル判定回路12が、アンロック検出信号を受信した場合には、切替器6を固定電圧生成部7側に切り替える基準信号生成装置としているので、アンロック時であっても、固定電圧を用いた自走発振を行って安定した基準信号を供給することができる効果がある。
【0049】
また、本装置によれば、位相比較周波数を、複数の外部基準信号周波数と、電圧制御発振器からの出力基準信号の周波数との公約数としているので、どの基準信号が選択されても同じ位相比較周波数とすることができ、ループフィルタ4が一つで済み、コストや回路規模を増大させないようにすることができる効果がある。
【0050】
尚、可変フィルタの代わりに複数の固定フィルタを設け、それぞれの固定フィルタに対応した検波回路を設けた構成とし、信号レベルが適正範囲となった固定フィルタの通過帯域を入力された外部基準信号の周波数として特定し、上述した本装置と同様の制御を行うことも可能であり、安定した基準信号を供給することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、回路規模を増大させることなく複数の周波数の外部基準信号を用いて所望の基準信号を安定して生成でき、更に、アンロック時にも安定した基準信号を供給することができる基準信号生成装置に適している。
【符号の説明】
【0052】
1...外部基準信号入力部、 2...分配器、 3...PLL−IC、 4...ループフィルタ、 5...電圧制御発振器、 6...切替器、 7...固定電圧生成部、 10...可変フィルタ、 11...検波回路、 12...レベル判定回路、 31...第1の分周器、 32...位相比較器、 33...第2の分周器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる周波数の外部基準信号を入力可能とする外部基準信号入力部と、
入力された外部基準信号を設定された分周値で分周して特定の位相比較周波数とする第1の分周器と、
制御電圧に応じた周波数を発振し、基準信号として出力する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の出力を特定の分周値で分周して前記位相比較周波数とする第2の分周器と、
前記第1の分周器で分周された外部基準信号と前記第2の分周器で分周された前記電圧制御発振器出力との位相差を検出して、当該位相差に応じた電圧を出力する位相比較器と、
入力された電圧を平滑化して前記電圧制御発振器に前記制御電圧を印加するループフィルタと、
予め設定された固定電圧を生成する固定電圧生成部と、
前記位相比較器の出力又は前記固定電圧生成部の出力のいずれかを選択して前記ループフィルタに出力する切替部とを備えた基準信号生成装置であって、
設定された帯域を通過させる可変フィルタと、
前記可変フィルタ出力の信号レベルを検出する検波回路と、
前記複数の外部基準信号に対応して、各外部基準信号の周波数を前記位相比較周波数に分周する分周値を予め記憶するメモリを有し、前記可変フィルタに、前記複数の外部基準信号のいずれかを通過させる帯域を設定し、前記検波回路で検出された信号レベルが予め設定された適正範囲内であれば、前記帯域の周波数が入力された外部基準信号の周波数であると特定して、前記第1の分周器に、前記特定された外部基準信号に対応して前記メモリに記憶された分周値を設定すると共に、前記切替器を前記位相比較器の出力を選択するよう切り替え、前記信号レベルが前記適正範囲外であれば、前記切替器を前記固定電圧生成部の出力を選択するよう切り替える制御部とを備えたことを特徴とする基準信号生成装置。
【請求項2】
制御部が、入力された外部基準信号の周波数が特定されるまでは、切替部を固定電圧生成部側の出力を選択するよう切り替えておくことを特徴とする請求項1記載の基準信号生成装置。
【請求項3】
位相比較器が、ロック/アンロックを検出するものであり、アンロックを検出した場合には、制御部にアンロック検出信号を出力し、
制御部が、アンロック検出信号を受信すると、切替部を固定電圧生成部からの出力を選択するよう切り替えることを特徴とする請求項1又は2記載の基準信号生成装置。
【請求項4】
可変フィルタを、ローパスフィルタ又はバンドパスフィルタで形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の基準信号生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46094(P2013−46094A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180335(P2011−180335)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】