説明

基準電圧発生回路

【課題】高電位の電源電圧が供給される場合であっても、回路面積の増大を招くことなく、安定して基準電圧を発生することができる基準電圧発生回路を実現する。
【解決手段】ノードn11とGND間の第1のトランジスタ301と、ノードn11とGND間の第2のトランジスタ302と、第6のトランジスタ313とGND間の第3のトランジスタ303と、ノードn12とノードn11間の第4のトランジスタ304と、VCC2とノードn12間の第5のトランジスタ305と、抵抗312と第3のトランジスタ303間の第6のトランジスタ313と、を備える基準電圧発生回路である。第5のトランジスタ305の制御端子は第6のトランジスタ313及び抵抗312の接続点に接続されており、第6のトランジスタ313の制御端子は第2のノードn12に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に搭載される基準電圧発生回路に関し、特に、バンドギャップ回路を用いた基準電圧発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
温度依存性、電源電圧依存性の少ない基準電圧発生回路として用いられているバンドギャップ回路は、半導体集積回路において高精度の基準電圧を得る場合に広く利用されている。
【0003】
バンドギャップ回路は種々の回路構成により実現可能であるが、その一例として、非特許文献1に開示されたバンドギャップ回路の回路図を図7に示す。
【0004】
このバンドギャップ回路において、出力端子に出力される基準電圧(VREF)は、以下の式で表わすことができる。なお、以下の式では、熱電圧をVT、第3のトランジスタ103のベース端子‐エミッタ端子間電圧をVBE、抵抗106の抵抗値をR106、抵抗107の抵抗値をR107、トランジスタ101とトランジスタ102とのコレクタ電流比をN、lnを自然対数とする。
【0005】
VREF=VBE+(R106/R107)×VT×lnN…(1)
ここで、VTとVBEとは温度特性の極性が逆であり、R106/R107の値を(1)式の右辺がバンドギャップ電圧VBG(約1.25V)に等しくなるように設定することにより、電源電圧VDDへの依存が少なくかつ温度依存性の無い基準電圧VREFを出力することができることが知られている。
【0006】
また近年においては、基準電圧発生回路の出力電圧をバンドギャップ電圧VBG以上にすることの必要性が高まっている。このような基準電圧発生回路として、例えば、図8に示す回路構成が挙げられる。
【0007】
この回路構成においては、出力端子に出力される基準電圧(VREF)は、以下の式で表わすことができる。なお、以下の式では、バンドギャップ電圧をVBG、抵抗210の抵抗値をR210、抵抗211の抵抗値をR211とする。
【0008】
VREF=((R210+R211)/R210)×2×VBG…(2)
ここで、抵抗209の抵抗値をR209、抵抗R206の抵抗値をR206、抵抗R207の抵抗値をR207とした場合、R209=1/((1/R206)+(1/R207))が成立するようにR209が設定されている。抵抗209を流れる電流は抵抗206及び抵抗207の各々を流れる電流の和であることから、上記のようにR209を設定することにより、ノードn2‐ノードn4間にかかる電圧もVBGとみなすことができる。このため、ノードn4における接地電圧GNDとの電位差である、抵抗210にかかる電圧は2×VBGとなる。したがって、抵抗210及び抵抗211に流れる電流が等しいことから、上記の式(2)でノードn3における接地電圧GNDとの電位差である、VREF端子に出力される基準電圧を表わすことができる。そして、抵抗210と抵抗211との抵抗値比である(R210+R211)/R210を調整することにより、バンドギャップ電圧以上の所望の基準電圧を発生させることができる。
【非特許文献1】P.R.グレイ他著、「システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術(上)」、初版、株式会社培風館、1990年11月、p.275
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図8の基準電圧発生回路においては、VREF電圧を5Vに設定する場合、第3のトランジスタ203のコレクタ電圧値は、VREF電圧に第5のトランジスタ205のゲート-ソース間電圧を加えた電圧となる。第5のトランジスタ205が高耐圧素子の場合、そのゲート-ソース間電圧は2V以上の値となり、第3のトランジスタ203のコレクタ端子には7V以上の電圧が印加される。このため、第3のトランジスタ203を高耐圧仕様にする必要がある。すると、出力電圧の高精度化のためには素子のばらつきを低減する必要があるため、この第3のトランジスタ203との組み合わせで回路を構成する第1のトランジスタ201、第2のトランジスタ202も同様に高耐圧仕様にする必要性が生じ、更に第2のトランジスタ202との組み合わせで回路を構成する第4のトランジスタ204も同様に高耐圧仕様にする必要性が生じてしまう。
【0010】
また、電源電圧VDDの立ち上がりスピードが急峻な場合、第3のトランジスタ203のコレクタ端子電圧は、上記直流電圧(VREF電圧+第5のトランジスタ205のゲート-ソース間電圧)に収束するまでにオーバーシュートが起こる。このため、第3のトランジスタ203のコレクタ端子に直流電圧より高い電圧が印加されてしまう。この現象も第5のトランジスタ205を高耐圧仕様にせざるをえない理由である。
【0011】
一般的に、高耐圧プロセスは素子面積の増大を招く傾向にあるため、上記のように高耐圧仕様の素子を用いた結果、基準電圧発生回路を大型化させてしまうことになる。このことは、高集積化、高密度化が常に要求される半導体集積回路においては非常に大きな問題である。
【0012】
また、図8の基準電圧発生回路においては、電源電圧VDDの供給開始時において第3のトランジスタ203のコレクタ端子への供給電圧に変動が発生すると、第5のトランジスタ205がONする前に第3のトランジスタ203が誤ってONしてしまう場合が起こり得る。この場合、第3のトランジスタ203のONによって第5のトランジスタ205のゲート端子に第5のトランジスタ205をONさせるために必要な閾値電圧が供給されなくなり、その結果、電源電圧VDDの供給開始にもかかわらず、第5のトランジスタ205はOFF状態を維持してしまう。すなわち、図8の基準電圧発生回路においては、基準電圧が立ち上がらない現象が発生する恐れがある。
【0013】
上記問題点に鑑み、本発明の目的は、高電位の電源電圧が供給される場合であっても、回路面積の増大を招くことなく、安定して基準電圧を発生することができる基準電圧発生回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明にかかる基準電圧発生回路は、第1のノードと接地電圧供給線との間に配置されており、前記第1のノードに第1の抵抗を介して接続されたコレクタ端子と、前記接地電圧供給線に接続されたエミッタ端子と、前記コレクタ端子と短絡されたベース端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成された第1のトランジスタと、前記第1のノードと前記接地電圧供給線との間において前記第1のトランジスタと並列に配置されており、前記第1のノードに第2の抵抗を介して接続されたコレクタ端子と、前記接地電圧供給線に第3の抵抗を介して接続されたエミッタ端子と、前記第1のトランジスタのベース端子及びコレクタ端子に接続されたベース端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成された第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタのコレクタ端子に接続されたベース端子と、前記接地電圧供給線に接続されたエミッタ端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成された第3のトランジスタと、基準電圧が出力される基準電圧端子に接続する第2のノードと前記第1のノードとの間に配置されており、前記第2のノードに接続されたコレクタ端子と、前記第1のノードに第4の抵抗を介して接続されたエミッタ端子と、前記第2のノードと前記接地電圧供給線との間に直列接続された第5及び第6の抵抗の接続点である第3のノードに接続されたベース端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成された第4のトランジスタと、電源電圧供給線と前記第2のノードとの間に配置されており、前記電源電圧供給線に負荷回路を介して接続された制御端子を有し、前記電源電圧供給線と前記第2のノードとの間における導通状態/非導通状態を切り替える第5のトランジスタと、前記電源電圧供給線に接続する負荷回路と前記第3のトランジスタのコレクタ端子との間に配置されており、前記第2のノードに接続された制御端子を有し、前記電源電圧供給線と前記第3のトランジスタのコレクタ端子との間における導通状態/非導通状態を切り替える第6のトランジスタとを備えることを特徴とする。
【0015】
上記の基準電圧発生回路では、第6のトランジスタを介して電源電圧を第1〜第4のトランジスタに供給するようにしているので、電源電圧が第1〜第4のトランジスタに直接供給されることがない。このため、第1〜第4のトランジスタを高耐圧構造としなければならない程の高電位の電源電圧である場合であっても、第6のトランジスタの存在により、第1〜第4のトランジスタを素子面積の小さい低耐圧構造のトランジスタを用いて構成することができる。したがって、電源電圧が上述したような高電位に上昇した場合でも、基準電圧発生回路の大型化を回避することができる。
【0016】
上記の基準電圧発生回路ではさらに、電源電圧の供給開始時における供給電圧の変動が生じた場合であっても、第3のトランジスタが誤って第5のトランジスタよりも先にON状態に遷移してしまうことを防止することができる。そうすることにより、電源電圧の供給開始時においても基準電圧VREFを安定して発生することができる。
【0017】
前記負荷回路は、抵抗であることが好ましい。
【0018】
この場合、基準電圧発生回路を簡単な回路構成により実現することができる。
【0019】
前記負荷回路は、定電流源であることが好ましい。
【0020】
この場合、電源電圧の変動や温度変化の影響を受けにくくなり、所定の電流を第6のトランジスタのドレイン端子側に安定して供給することができる。さらに、第6のトランジスタのドレイン端子側に供給される電流値が小さい場合、負荷回路を抵抗を用いて実現するよりも回路面積を小さくすることができる。
【0021】
前記第5のトランジスタは、前記第5のトランジスタの制御端子であるゲート端子と、前記電源電圧供給線に接続されたドレイン端子と、前記第2のノードに接続されたソース端子とを有するMOSトランジスタにより構成されており、前記第6のトランジスタは、前記第6のトランジスタの制御端子であるゲート端子と、前記負荷回路に接続されたドレイン端子と、前記第3のトランジスタのコレクタ端子に接続されたソース端子とを有するMOSトランジスタにより構成されていることが好ましい。
【0022】
この場合、第5及び第6のトランジスタをMOSトランジスタで構成するので、第5及び第6のトランジスタにより導通状態/非導通状態の切り替え動作を高速化することができる。
【0023】
前記第5のトランジスタは、前記第5のトランジスタの制御端子であるベース端子と、前記電源電圧供給線に接続されたコレクタ端子と、前記第2のノードに接続されたエミッタ端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成されており、前記第6のトランジスタは、前記第6のトランジスタの制御端子であるベース端子と、前記負荷回路に接続されたコレクタ端子と、前記第3のトランジスタのコレクタ端子に接続されたエミッタ端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成されていることが好ましい。
【0024】
この場合、第5及び第6のトランジスタを第1〜第4のトランジスタと同一の製造プロセスで製造することができるので、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる基準電圧発生回路は、以上のような構成となっているため、第1〜第4のトランジスタを高耐圧構造としなければならない程の高電位の電源電圧である場合であっても、第1〜第4のトランジスタを素子面積の小さい低耐圧構造のトランジスタを用いて構成することができる。したがって、基準電圧発生回路の大型化を回避することができる。さらに、第3のトランジスタが誤って第5のトランジスタよりも先にON状態に遷移してしまうことを確実に防止することができる。したがって、基準電圧が立ち上がらない現象を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一部分には同一符号を付し、図面で同一の符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる基準電圧発生回路を用いたモータ駆動機構の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態のモータ駆動機構10は、図1に示すように、モータ駆動IC11と、制御IC12と、モータ13と、を備えている。本実施の形態の基準電圧発生回路は、制御IC12に搭載されており、制御IC12内で利用される基準電圧を発生する。
【0028】
本実施の形態のモータ駆動機構10において、モータ駆動IC11は、3本のリード線を介してモータ13に接続されており、モータ13を回転させるためにモータ13に電圧を印加する。モータ駆動IC11は、この3本のリードを用いてモータ13に印加する電圧を調節することにより、モータ13の回転速度を調整する。
【0029】
制御IC12は、モータ駆動IC11がモータ13に印加する駆動電流を制御するためのICである。モータ駆動機構10の外部に配置され、モータ駆動機構10を管理するために用意されたマイコン(図示省略)からの制御信号が制御IC12に入力されており、制御IC12はその制御信号に基づいてモータ駆動IC11がモータ13の駆動電流の調節を行う際に利用するモータ駆動信号を生成し、モータ駆動IC11に出力する。
【0030】
モータ駆動IC11には2つの電源電圧、すなわち、第1の電源電圧VCC1及び第2の電源電圧VBBが供給される。第1の電源電圧VCC1はモータ駆動ICがモータ駆動電流を制御するための信号処理用の電源であり、例えば、15Vである。一方、第2の電源電圧VBBはモータ駆動電流生成用の電源であり、例えば、100〜200Vである。
【0031】
またモータ駆動IC11は内部の降圧回路によって第1の電源電圧VCC1を電圧低下させ、制御IC12用の電源である第3の電源電圧VCC2を生成している。第3の電源電圧VCC2は、例えば、7.5Vである。
【0032】
次に、本実施の形態にかかる基準電圧発生回路が搭載された制御IC12について説明する。本実施の形態の制御IC12は、図2に示すように、基準電圧発生回路121と、信号処理回路122と、を有しており、基準電圧発生回路121から信号処理回路122に基準電圧VREFが出力されている。
【0033】
本実施の形態の制御IC12においては、上述したように、モータ駆動IC11から供給される第3の電源電圧VCC2が基準電圧発生回路121に出力されており、基準電圧発生回路121はこの第3の電源電圧VCC2から例えば5Vの基準電圧VREFを生成させ、信号処理回路122に出力する。
【0034】
信号処理回路122は、基準電圧VREFを電源電圧として用い、マイコン等からの制御信号に従って、モータ駆動IC11に供給するモータ駆動信号を生成する。
【0035】
次に、本実施の形態の基準電圧発生回路121について説明する。本実施の形態の基準電圧発生回路121は、図3に示すように、第1のトランジスタ301、第2のトランジスタ302、第3のトランジスタ303、第4のトランジスタ304、第5のトランジスタ305、本発明の特徴部分である第6のトランジスタ313、抵抗306、抵抗307、抵抗308、抵抗309、抵抗310、抵抗311、抵抗312を備えている。なお、本実施の形態においては、第1のトランジスタ301、第2のトランジスタ302、第3のトランジスタ303及び第4のトランジスタ304はnpnバイポーラトランジスタで構成されており、第5のトランジスタ305及び第6のトランジスタ313はnMOSトランジスタで構成されている。
【0036】
本実施の形態にかかる基準電圧発生回路121においては、第1のトランジスタ301と第2のトランジスタ302とはカレントミラーを構成している。すなわち、第1のトランジスタ301のベース端子とコレクタ端子とは短絡されており、第1のトランジスタ301のコレクタ端子側へ電流が印加されている。第1のトランジスタ301の短絡されたベース端子及びコレクタ端子は、第1のトランジスタ301に近接する第2のトランジスタ302のベース端子に接続されている。また、第1のトランジスタ301と第2のトランジスタ302との間におけるトランジスタ面積比が1:Nとなるように規定されている。熱電圧をVT、抵抗308の抵抗値をR308、第1のトランジスタ301と第2のトランジスタ302とのコレクタ電流比をN、lnを自然対数とすると、第2のトランジスタ302のコレクタ電流はVT×lnN/R308となる。
【0037】
第1のトランジスタ301のコレクタ端子は抵抗306を介してノードn11に接続される一方、そのエミッタ端子は接地電圧GNDに接続されている。また、第2のトランジスタ302のコレクタ端子は抵抗307を介してノードn11に接続される一方、そのエミッタ端子は抵抗308を介して接地電圧GNDに接続されている。
【0038】
第3のトランジスタ303のコレクタ端子は第6のトランジスタ313のソース端子に、そのエミッタ端子は接地電圧GNDに、そのベース端子は第2のトランジスタ302のコレクタ端子に、それぞれ接続されている。また、第4のトランジスタ304のコレクタ端子はノードn12に、そのエミッタ端子は抵抗309を介してノードn11に、そのベース端子は抵抗310と抵抗311との接続点であるノードn13に、それぞれ接続されている。さらに、第5のトランジスタ305のドレイン端子は電源電圧VCC2に、そのソース端子はノードn12に、そのゲート端子は第6のトランジスタ313のドレイン端子に、それぞれ接続されている。さらに、第6のトランジスタ313のドレイン端子は抵抗312を介して電源電圧VCC2に、そのソース端子は第3のトランジスタ303のコレクタ端子に、そのゲート端子がノードn12に、それぞれ接続されている。
【0039】
本実施の形態にかかる基準電圧発生回路121の出力端子である基準電圧端子(VREF端子)はノードn12に接続されている。ノードn12における接地電圧GNDとの電位差を基準電圧として出力する。
【0040】
本実施の形態の基準電圧発生回路121においては、図8の回路構成と同様に、VREF端子に出力される基準電圧(VREF)は、以下の式で表わすことができる。なお、以下の式では、VBGはバンドギャップ電圧(約1.25V)であり、抵抗310の抵抗値をR310、抵抗311の抵抗値をR311とする。
【0041】
VREF=((R310+R311)/R310)×2×VBG…(3)
ここで、抵抗309の抵抗値をR309、抵抗306の抵抗値をR306、抵抗307の抵抗値をR307とした場合、R309=1/((1/R306)+(1/R307))が成立するようにR309が設定されている。抵抗309を流れる電流は抵抗306及び抵抗307の各々を流れる電流の和であることから、上記のようにR309を設定することにより、ノードn11‐ノードn13間にかかる電圧もVBGとみなすことができる。このため、ノードn13における接地電圧GNDとの電位差である、抵抗310にかかる電圧は2×VBGとなる。したがって、抵抗310及び抵抗311を流れる電流が等しいことから、上記の式(3)でノードn12における接地電圧GNDとの電位差である、VREF端子に出力される基準電圧を表わすことができる。そして、抵抗310と抵抗311との抵抗値比である(R310+R311)/R310を調整することにより、所望の基準電圧を発生させることができる。
【0042】
ここで、本実施の形態の基準電圧発生回路121が図8の回路構成と異なる点は、図3に示すように、第6のトランジスタ313が第3のトランジスタ303のコレクタ端子と電源電圧VCC2に接続された抵抗312との間に挿入された点である。第6のトランジスタ313の挿入により、次に述べる本願発明特有の効果を実現することができる。以下、この本願発明の特有の効果について説明する。
【0043】
第一に、本実施の形態にかかる基準電圧発生回路121は、第6のトランジスタ313の挿入により、第1のトランジスタ301、第2のトランジスタ302、第3のトランジスタ303及び第4のトランジスタ304の各々を低耐圧構造のnpnバイポーラトランジスタを用いて実現し、そうすることにより、基準電圧発生回路121の小型化を図ることができる効果を奏することができる。
【0044】
すなわち、本実施の形態にかかる基準電圧発生回路121に供給される電源電圧VCC2が7.5V以上であり、VREFに出力される電圧が5Vであるため、第6のトランジスタ313を挿入しない場合、第3のトランジスタ303のコレクタ端子にはVREF電圧に第5のトランジスタ305のゲート-ソース間電圧を加えた電圧がかかる。また、電源電圧VCC2を急峻に立ち上げた場合には、第3のトランジスタ303のコレクタ端子電圧は、収束するまでにオーバーシュートを起こすためVREF電圧に第5のトランジスタ305のゲート-ソース間電圧を加えた以上の電圧がかかる。このため、通常であれば、7.5V以上の耐圧を持つ高耐圧構造のnpnバイポーラトランジスタの使用が要求されるのが当然である。したがって、図8の回路構成を持つ従来の基準電圧発生回路であれば、出力電圧の高精度化のためには素子のばらつきを低減する必要があるため、第1のトランジスタ201、第2のトランジスタ202、第3のトランジスタ203及び第4のトランジスタ204の各々は高耐圧構造のnpnバイポーラトランジスタにより構成されなければならなくなる。一般的には、高耐圧構造の製造プロセスは低耐圧構造の製造プロセスと比べて素子面積を増大させるものであり、高耐圧構造のnpnバイポーラトランジスタを採用した結果、各トランジスタの素子面積は低耐圧構造を用いる場合よりも大きくなり、基準電圧発生回路が必然的に大型化してしまう。
【0045】
これに対し、本実施の形態にかかる基準電圧発生回路121においては、第6のトランジスタ313の挿入により、VREF電圧から第6のトランジスタ313のゲート-ソース間電圧を差し引いた電圧がかかる。例えば第6のトランジスタ313のゲート-ソース間電圧が1V、VREF電圧が5Vの場合、第3の303のコレクタ電圧は4Vとなる。また、電源電圧VCC2を急峻に立ち上げた場合にも、VREF電圧から第6のトランジスタ313のゲート-ソース間電圧を差し引いた電圧にて電圧がクランプされ、この電圧以上には上昇しない。上記理由により、第3のトランジスタ303を低耐圧構造のnpnバイポーラトランジスタを用いて実現することが可能となる。これに伴って、第3のトランジスタ303との組み合わせで回路を構成する第1のトランジスタ301、第2のトランジスタ302及び第4のトランジスタ304の各々も同様に低耐圧仕様にすることができ、基準電圧発生回路121の大型化を招いてしまうことがなくなる。なお本実施の形態においては、電源電圧VCC2が直接供給される第5のトランジスタ305及び第6のトランジスタ313は、高耐圧構造のnMOSトランジスタを用いて構成されることが必要とされる。
【0046】
第二に、本実施の形態にかかる基準電圧発生回路121は、第6のトランジスタ313の挿入により、電源電圧VCC2の供給開始時における供給電圧の変動が生じた場合であっても、第3のトランジスタ303が誤ってONしてしまうことを確実に防止することができる効果を奏することができる。
【0047】
すなわち、第6のトランジスタ313は、電源電圧VCC2の供給開始時において、そのゲート端子に供給されるVREF電圧が閾値を超えない限り、ON状態には遷移しない。このため、電源電圧VCC2の供給開始時においては、VREF電圧が一気に立ち上がることはないことから、第6のトランジスタ313が最初にONすることはなく、その結果、第6のトランジスタ313のドレイン端子の電位は電源電圧VCC2に維持されることになる。
【0048】
一方、第5のトランジスタ305のゲート端子は、第6のトランジスタ313のドレイン端子に接続されていることから、電源電圧VCC2の供給開始時においては、第5のトランジスタ305を確実にON状態に遷移させることができる。その結果、電源電圧VCC2の供給開始時においてVREF端子が0Vに収束してしまうことを防止することができる。
【0049】
ここで、本実施の形態にかかる基準電圧発生回路121における、電源電圧VCC2の変動に対する第3のトランジスタ303のコレクタ電圧値レベル、および図8に示した従来の形態の電源電圧VDDの変動に対する第3のトランジスタ203のコレクタ電圧値レベルについて、シミュレーションに基づいて説明する。
【0050】
図4は、電源電圧VCC2またはVDDの変動に対する図3及び図8に示した基準電圧発生回路における基準電圧及びコレクタ電圧の変化を表すグラフである。縦軸は、図3の基準電圧及び図8の基準電圧、及び、図3の第3のトランジスタ303のコレクタ電圧及び図8の第3のトランジスタ203のコレクタ電圧を示しており、横軸は図3及び図8の各回路に供給される電源電圧を示している。
【0051】
図4より、本実施の形態でのトランジスタ303のコレクタ電圧は、図8の回路構成を持つ従来例のトランジスタ203のコレクタ電圧と比較して低いことがわかる。本実施の形態では、トランジスタ303のコレクタ電圧はVREF電圧からトランジスタ313のゲート-ソース間電圧を差し引いた電圧となり、また、従来例では、トランジスタ203のコレクタ電圧はVREF電圧にトランジスタ205のゲート-ソース間電圧を加えた電圧となる。ここで本シミュレーション結果では、それぞれのコレクタ電圧は、従来の形態では7.5〜8.0Vとなり、本実施の形態では3.8〜4.0Vとなる。一般的な低耐圧素子では、絶対最大定格電圧が7Vとなっているため、従来例ではトランジスタ203を高耐圧素子で構成せざるを得ないのに対し、本実施の形態ではトランジスタ303を低耐圧仕様で構成できることがわかる。
【0052】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図5に、本実施の形態にかかる基準電圧発生回路の回路図を示す。本実施の形態にかかる基準電圧発生回路は、上記の実施の形態1の抵抗312を定電流源314に置き換えた構成を有している。その他の構成は上記の実施の形態1と同様であり、ここでは説明を繰り返さない。
【0053】
本実施の形態にかかる基準電圧発生回路においては、図5に示すように、第6のトランジスタ313のドレイン端子側へ印加される電流が定電流源314により供給されている。このため、抵抗312を用いた上記の実施の形態1と比較して、電源電圧VCC2の変動や周囲温度変化の影響を受けにくくなり、所定の電流を第6のトランジスタ313のドレイン端子側に安定して供給することができる。
【0054】
さらに、第6のトランジスタ313のドレイン端子側に供給される電流値が小さい場合、定電流源314を用いる方が抵抗312を用いるよりもそれらに必要とされる素子面積が小さくなる。このため、抵抗312を用いた上記の実施の形態1と比較して、製造コストをより低減することができる。
【0055】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図6に、本実施の形態にかかる基準電圧発生回路の回路図を示す。上記の実施の形態1においては第5及び第6のトランジスタ305及び313をnMOSトランジスタにより構成したが、本実施の形態においては、上記の実施の形態1のnMOSトランジスタである第5及び第6のトランジスタ305及び313に代えて、npnバイポーラトランジスタである第5及び第6のトランジスタ315及び316を配置した構成を有している。その他の構成は上記の実施の形態1と同様であり、ここでは説明を繰り返さない。
【0056】
本実施の形態にかかる基準電圧発生回路においては、図6に示すように、第5のトランジスタ315のコレクタ端子は電源電圧VCC2に、そのエミッタ端子はノードn12に、そのベース端子は第6のトランジスタ316のコレクタ端子に、それぞれ接続されている。一方、第6のトランジスタ316のコレクタ端子は抵抗312を介して電源電圧VCC2に、そのエミッタ端子は第3のトランジスタ303のコレクタ端子に、そのベース端子はノードn12に、それぞれ接続されている。
【0057】
本発明は、上述した実施の形態1〜3に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、温度変動や電源電圧変動に対して、より安定した基準電圧を出力する基準電圧発生回路を実現する上で特に有効であり、高電位の電源電圧が採用されるモータ駆動機構等に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるモータ駆動機構の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の制御ICの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
【図4】電源電圧とコレクタ電圧との関係及び電源電圧と基準電圧との関係を示すグラフ図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
【図6】本発明の実施の形態3にかかる基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
【図7】従来の基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
【図8】従来の基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0060】
10 モータ駆動機構
11 モータ駆動IC
12 制御IC
13 モータ
101、102、103、104、201、202、203、204、205、301、302、303、304、315、316 npnバイポーラトランジスタ
105、106、107、206、207、208、209、210、211、212 抵抗
108、314 定電流源
121 基準電圧発生回路
122 信号処理回路
305、313 nMOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のノードと接地電圧供給線との間に配置されており、前記第1のノードに第1の抵抗を介して接続されたコレクタ端子と、前記接地電圧供給線に接続されたエミッタ端子と、前記コレクタ端子と短絡されたベース端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成された第1のトランジスタと、
前記第1のノードと前記接地電圧供給線との間において前記第1のトランジスタと並列に配置されており、前記第1のノードに第2の抵抗を介して接続されたコレクタ端子と、前記接地電圧供給線に第3の抵抗を介して接続されたエミッタ端子と、前記第1のトランジスタのベース端子及びコレクタ端子に接続されたベース端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成された第2のトランジスタと、
前記第2のトランジスタのコレクタ端子に接続されたベース端子と、前記接地電圧供給線に接続されたエミッタ端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成された第3のトランジスタと、
基準電圧が出力される基準電圧端子に接続する第2のノードと前記第1のノードとの間に配置されており、前記第2のノードに接続されたコレクタ端子と、前記第1のノードに第4の抵抗を介して接続されたエミッタ端子と、前記第2のノードと前記接地電圧供給線との間に直列接続された第5及び第6の抵抗の接続点である第3のノードに接続されたベース端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成された第4のトランジスタと、
電源電圧供給線と前記第2のノードとの間に配置されており、前記電源電圧供給線に負荷回路を介して接続された制御端子を有し、前記電源電圧供給線と前記第2のノードとの間における導通状態/非導通状態を切り替える第5のトランジスタと、
前記負荷回路と前記第3のトランジスタのコレクタ端子との間に配置されており、前記第2のノードに接続された制御端子を有し、前記電源電圧供給線と前記第3のトランジスタのコレクタ端子との間における導通状態/非導通状態を切り替える第6のトランジスタと
を備えることを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項2】
前記負荷回路は、抵抗であることを特徴とする請求項1に記載の基準電圧発生回路。
【請求項3】
前記負荷回路は、定電流源であることを特徴とする請求項1に記載の基準電圧発生回路。
【請求項4】
前記第5のトランジスタは、前記第5のトランジスタの制御端子であるゲート端子と、前記電源電圧供給線に接続されたドレイン端子と、前記第2のノードに接続されたソース端子とを有するMOSトランジスタにより構成されており、
前記第6のトランジスタは、前記第6のトランジスタの制御端子であるゲート端子と、前記負荷回路に接続されたドレイン端子と、前記第3のトランジスタのコレクタ端子に接続されたソース端子とを有するMOSトランジスタにより構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基準電圧発生回路。
【請求項5】
前記第5のトランジスタは、前記第5のトランジスタの制御端子であるベース端子と、前記電源電圧供給線に接続されたコレクタ端子と、前記第2のノードに接続されたエミッタ端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成されており、
前記第6のトランジスタは、前記第6のトランジスタの制御端子であるベース端子と、前記負荷回路に接続されたコレクタ端子と、前記第3のトランジスタのコレクタ端子に接続されたエミッタ端子とを有するバイポーラトランジスタにより構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基準電圧発生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−277072(P2009−277072A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128552(P2008−128552)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】