説明

基礎の載荷試験方法

【課題】試験版の沈下量を確保しつつ、作業性が向上された基礎の載荷試験方法を得ることを目的とする。
【解決手段】載荷用ジャッキ20の上には、上台座28を介して主桁22が設置されている。主桁22の両端部22Aは、移動機構30を介して一対の反力杭24にそれぞれ連結されている。移動機構30は、移動台32と、移動用ジャッキ34と、反力梁36を備えている。移動台32は、吊り材38によって主桁22の両端部22Aから吊り下げられている。移動台32の上には、移動用ジャッキ34を介して反力梁36が設置されている。反力梁36は、アンカー40によって反力杭24の杭頭24Aに連結されている。このアンカー40によって反力梁36の上方への移動が拘束されており、移動用ジャッキ34が反力梁36に反力を取って移動台32を下方へ押圧可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎の載荷試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイルド・ラフト基礎のように大変形域までの試験が必要な基礎の載荷試験において、試験杭の杭頭に設けられたコンクリート試験版に対し、複数の載荷用ジャッキで鉛直荷重を付加する建物基礎の載荷試験方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示された建物基礎の載荷試験方法では、載荷用ジャッキのスロークが足りなくなったときに、複数の載荷用ジャッキのうち、一群の載荷用ジャッキによりコンクリート試験版に鉛直荷重を付加した状態で、他群の載荷用ジャッキを収縮させる。そして、収縮した他群の載荷用ジャッキと土台との間にプレートを挿入した後、これらの載荷用ジャッキを再度伸長してコンクリート試験版に鉛直荷重を付加する。これと同様の手順により、一群の載荷用ジャッキと土台との間にプレートが挿入される。このように載荷用ジャッキと土台との間に挿入された複数のプレートによって載荷用ジャッキのスローク不足を補うことにより、コンクリート試験版の沈下量(変形量)を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−17233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された建物基礎の載荷試験方法では、載荷用ジャッキと土台との間にプレートを挿入するなどの作業に手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、試験版の沈下量を確保しつつ、作業性が向上された基礎の載荷試験方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の基礎の載荷試験方法は、地盤に埋設された試験杭の杭頭に設けられた試験版と該試験版の上方に設けられた地上反力体との間に設置された載荷用ジャッキにより、前記地上反力体に反力をとって前記試験版を下方へ押圧する第1載荷工程と、前記第1載荷工程と同時に又は該第1載荷工程に前後して、前記地上反力体を下方へ移動し、前記載荷用ジャッキを介して前記試験版を下方へ押圧する第2載荷工程と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の基礎の載荷試験方法によれば、第1載荷工程と、第1載荷工程と同時に又は第1載荷工程に前後して行われる第2載荷工程と、を備えている。第1載荷工程では、試験版と地上反力体との間に設置された載荷用ジャッキにより、当該地上反力体に反力をとって試験版を下方へ押圧する。一方、第2載荷工程では、地上反力体を下方へ移動し、載荷用ジャッキを介して試験版を下方へ押圧する。
【0008】
このように第2載荷工程において、地上反力体を下方へ移動することにより、即ち、載荷用ジャッキを下方へ移動することにより、載荷用ジャッキのストローク不足が補われる。従って、試験版の沈下量(変形量)を確保することができる。また、従来技術(例えば、特許文献1)のように、載荷用ジャッキと土台との間にプレートを挿入する必要がないため、作業性が向上する。
【0009】
請求項2に記載の基礎の載荷試験方法は、請求項1に記載の基礎の載荷試験方法において、前記第2載荷工程において、地盤に埋設された反力杭と前記地上反力体とに連結された移動機構により、前記反力杭に対して前記地上反力体を接近させることにより、前記地上反力体を下方へ移動する。
【0010】
請求項2に記載の基礎の載荷試験方法によれば、第2載荷工程において、移動機構により反力杭に対して地上反力体を接近させることにより、地上反力体が下方へ移動され、載荷用ジャッキを介して試験版が下方へ押圧される。従って、試験版の沈下量を確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記の構成としたので、試験版の沈下量を確保しつつ、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態における載荷試験装置を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る基礎の載荷試験方法を説明する説明図であって、第1載荷工程が実施された状態を示す正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る基礎の載荷試験方法を説明する説明図であって、第2載荷工程が実施された状態を示す正面図である。
【図4】本発明の第2実施形態における載荷試験装置を示す正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における載荷試験装置を上方から見た平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る基礎の載荷試験方法を説明する説明図であって、第1載荷工程が実施された状態を示す正面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る基礎の載荷試験方法を説明する説明図であって、第2載荷工程が実施された状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る基礎の載荷試験方法について説明する。
【0014】
先ず、載荷試験装置の構成について説明する。
【0015】
図1には、第1実施形態における載荷試験装置10が示されている。載荷試験装置10は、パイルド・ラフト基礎を模擬した基礎試験体12に鉛直荷重を載荷し、載荷した鉛直荷重と基礎試験体12の沈下量(変形量)を計測するものである。基礎試験体12は、杭を模擬した試験杭14と、試験杭14の杭頭14Aに設けられ、基礎スラブ等の基礎底版を模擬した試験版16を備えている。試験杭14は、その杭頭14Aが地表18Aから突出しないように地盤18に埋設されている。試験版16はコンクリート製で、下面の略中央部を試験杭14の杭頭14Aに接触させた状態で地表18Aに設置されている。
【0016】
なお、本実施形態では、試験杭14の杭頭14Aに試験版16を接触させた状態、即ち、試験杭14の杭頭14Aと試験版16との縁を切った状態とされているが、試験杭14の杭頭14Aと試験版16とを接合することも可能である。
【0017】
載荷試験装置10は、載荷用ジャッキ20と、地上反力体としての主桁22と、一対の反力杭24と、移動機構30とを備えている。載荷用ジャッキ20は、一般的な油圧式のジャッキとされ、ピストンの伸長方向を上下方向にし、下台座26を介して試験版16の上に設置されている。なお、本実施形態では、試験版16に略均等に鉛直荷重が載荷されるように、9つの載荷用ジャッキ20が平面視にてマトリックス状(縦3つ×横3つ)に配列されている。また、載荷用ジャッキ20としては、油圧式に限らず、エアー式や機械式(例えば、ネジ機構)等の従来周知の種々のジャッキを用いることができる。
【0018】
載荷用ジャッキ20の上には、上台座28を介して主桁22が設置されている。主桁22の長手方向の両端部22Aは、移動機構30を介して地盤18に埋設された一対の反力杭24にそれぞれ連結されている。これにより、載荷用ジャッキ20が主桁22に反力を取って基礎試験体12を下方へ押圧可能になっている。
【0019】
移動機構30は、移動台32と、移動手段としての移動用ジャッキ34と、反力梁36を備えている。移動台32は、主桁22の両端部22Aと反力杭24との間に配置され、PC鋼棒、PC鋼線等で構成された吊り材38によって主桁22の両端部22Aから吊り下げられている。また、移動台32は、反力杭24の杭頭24Aから上方へ離れた位置に配置されており、移動台32と反力杭24の杭頭24Aとの間に移動台32の移動ペースが設けられている。
【0020】
移動台32の上には、移動用ジャッキ34が設置されている。移動用ジャッキ34は、一般的な油圧式のジャッキとされ、ピストンの伸長方向を上下方向にして移動台32の上に設置されている。移動用ジャッキ34の上には、反力梁36が設置されている。反力梁36は、主桁22の両端部22Aと移動用ジャッキ34の間にそれぞれ設置されており、PC鋼棒、PC鋼線等で構成されたアンカー40によって反力杭24の杭頭24Aに連結されている。このアンカー40によって反力梁36の上方への移動が拘束されており、移動用ジャッキ34が反力梁36に反力を取って移動台32を下方へ押圧可能になっている。
【0021】
一対の反力杭24は、基礎試験体12の両側であって、主桁22の両端部22Aの下方の地盤18にそれぞれ埋設されており、基礎試験体12に載荷する鉛直荷重に応じた引き抜き力に対し、充分に抵抗可能な剛性、耐力を有している。
【0022】
次に、第1実施形態に係る基礎の載荷試験方法の一例について説明する。
【0023】
先ず、図1に示されるように、地盤18に基礎試験体12を構築する。具体的には、地盤18に試験杭14を構築し、試験杭14の上に試験版16を設置する。この際、試験版16の下面の略中央部に試験杭14の杭頭14Aが接触するように、試験版16を地表18Aに設置する。なお、図示を省略するが、試験版16には、当該試験版16の沈下量(変位量)を計測するダイヤルゲージ式等の変位計を設置しておく。
【0024】
次に、載荷試験装置10を構築する。具体的には、下台座26を介して試験版16の上に複数の載荷用ジャッキ20を平面視にてマトリックス状に設置する。また、基礎試験体12の両側の地盤18に反力杭24を構築する。次に、載荷用ジャッキ20の上に、上台座28を介して主桁22を設置する。次に、吊り材38によって主桁22の両端部22Aから移動台32を吊り下げる。この際、反力杭24の杭頭24Aから上方へ離れた位置に移動台32を配置し、反力杭24の杭頭24Aと移動台32との間に移動台32の移動スペースを設けておく。次に、移動台32の上に移動用ジャッキ34を介して反力梁36を設置し、アンカー40によって反力梁36と反力杭24の杭頭24Aとを連結する。
【0025】
なお、図示を省略するが、各載荷用ジャッキ20には、下台座26に載荷した鉛直荷重を計測するロードセル等の軸力計を設置しておく。これと同様に、移動用ジャッキ34には、移動台32に載荷した鉛直荷重を計測するロードセル等の軸力計を設置しておく。
【0026】
このように構築された載荷試験装置10を用いて載荷試験を行う。本載荷試験では、載荷用ジャッキ20及び移動用ジャッキ34に設置された図示しない軸力計を用いて試験版16に載荷される鉛直荷重を計測しながら、試験版16の沈下量(変形量)が所定値以上になるまで試験版16に鉛直荷重を載荷する。ここで、一般的な杭の載荷試験では、杭の沈下量(変形量)が、例えば杭径の1/10以上に設定されるのに対し、パイルド・ラフト基礎を模擬した本実施形態における基礎試験体12では、試験杭14だけでなく試験版16の鉛直支持力も評価対象になるため、基礎試験体12の沈下量は、例えば試験版16の幅(1辺の長さ)の1/10以上に設定される。これは、例えば、試験版16の1辺の長さが4mの場合、試験版16の沈下量は40cm以上となる。このように本載荷試験は、一般的な杭の載荷試験と比較して、基礎試験体12の必要沈下量が大きくなっている。
【0027】
本載荷試験では、先ず、図2に示されるように、第1載荷工程において、各載荷用ジャッキ20を作動し、上台座28を介して主桁22に反力を取って載荷用ジャッキ20のピストンを伸長させ、下台座26を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。この際、主桁22が受けた反力は、吊り材38、移動台32、移動用ジャッキ34、反力梁36、アンカー40を介して反力杭24に伝達される(矢印R)。
【0028】
この状態で、試験版16に設置された図示しない変位計を用いて試験版16の沈下量(変位量)を計測し、試験版16の沈下量が所定値(例えば、試験版16の幅の1/10)未満であれば、載荷用ジャッキ20を再度作動し、下台座26を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。この手順を繰り返し、試験版16の沈下量が所定値以上になるまで試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。
【0029】
ここで、試験版16の沈下量が所定値以上になる前に、載荷用ジャッキ20のピストンのストローク量が不足した場合は、第2載荷工程へ移行する。第2載荷工程では、図3に示されるように、移動用ジャッキ34を作動し、反力梁36に反力を取って移動用ジャッキ34のピストンを伸長させ、移動台32を押し下げる(矢印D)。これにより、吊り材38によって下方へ引っ張られた主桁22が反力杭24に接近すると共に、主桁22によって上台座28及び載荷用ジャッキ20が押し下げられ、下台座26を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)が載荷される。即ち、移動用ジャッキ34の作動に伴って主桁22が下方へ移動し、載荷用ジャッキ20を介して試験版16が下方へ押圧される。この際、反力梁36が受けた反力は、アンカー40を介して反力杭24に伝達される(矢印K)。
【0030】
この状態で、試験版16に設置された図示しない変位計を用いて試験版16の沈下量(変位量)を計測し、試験版16の沈下量が所定値未満であれば、移動用ジャッキ34を再度作動し、下台座26を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。この手順を繰り返し、試験版16の沈下量が所定値以上になるまで試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。
【0031】
以上の手順により、試験版16を所定値以上沈下させた後、載荷用ジャッキ20及び移動用ジャッキ34に設置された図示しない軸力計を用いて試験版16に載荷された鉛直荷重を計測し、この鉛直荷重と試験版16の沈下量から基礎試験体12の鉛直支持力を算出する。
【0032】
このように本実施形態では、第2載荷工程において、移動機構30により反力杭24に対して主桁22を接近させることにより、主桁22及び載荷用ジャッキ20が押し下げられ、載荷用ジャッキ20を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)が載荷される。これにより、載荷用ジャッキ20のピストンのストローク量が不足した場合であっても、試験版16の沈下量(変形量)を確保することができる。また、従来技術(例えば、特許文献1)のように、載荷用ジャッキと土台との間にプレートを挿入する必要がないため、作業性が向上すると共に、プレートの挿入に伴う各種計測値の計測誤差が低減される。
【0033】
また、従来技術(例えば、特許文献1)では、一群の載荷用ジャッキのピストンを収縮して当該載荷用ジャッキと土台との間にプレートを挿入する際に、他群の載荷用ジャッキによりコンクリート試験版に鉛直荷重を載荷して、コンクリート試験版の浮き上がり(リバウンド)を防止する必要がある。従って、少なくとも2つの載荷用ジャッキが必要となる。これに対して本実施形態では、載荷用ジャッキ20のピストンを収縮する必要がないため、載荷用ジャッキ20の収縮に伴う試験版16の浮き上がりの問題が発生しない。従って、少なくとも1つ載荷用ジャッキ20で、試験版16の沈下量を確保することができる。
【0034】
次に、第2実施形態に係る基礎の載荷試験方法について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成のものについて、同符合を付すると共に適宜省略して説明する。
【0035】
先ず、載荷試験装置の構成について説明する。
【0036】
図4には、第2実施形態における載荷試験装置50が示されている。載荷試験装置50では、移動機構60の構成が第1実施形態における載荷試験装置10と異なっている。具体的には、移動機構60は、移動手段としての移動用ジャッキ64と、反力梁(副桁)66を備えている。移動用ジャッキ64は、主桁22の長手方向の両端部22Aの上に設置されている。この移動用ジャッキ64の上には、反力梁66が設置されている。
【0037】
図5に示されるように、反力梁66は、主桁22と略直交するように設置されている。また、反力梁66の長手方向の両端部66Aの下方における地盤18には、反力杭68がそれぞれ埋設されており、これらの反力杭68の杭頭68Aに反力梁66の両端部66AがPC鋼棒、PC鋼線等で構成されたアンカー70によって連結されている。このアンカー70によって反力梁66の上方への移動が拘束されており、移動用ジャッキ64が反力梁66に反力を取って主桁22を下方へ押圧可能になっている。なお、反力杭68は、基礎試験体12に載荷する鉛直荷重に応じた引き抜き力に対し、充分に抵抗可能な剛性、耐力を有している。
【0038】
次に、第2実施形態に係る基礎の載荷試験方法の一例について説明する。なお、第1実施形態に係る基礎の載荷試験方法と同様の手順は、適宜省略して説明する。
【0039】
先ず、図4に示されるように、地盤18に基礎試験体12を構築すると共に、載荷試験装置50を構築する。載荷試験装置50は、第1実施形態と同様に上台座28の上に主桁22を設置した後、主桁22の両端部22Aの上に移動用ジャッキ64をそれぞれ設置する。次に、移動用ジャッキ64の上に、主桁22と略直交するように反力梁66を設置し、アンカー70によって反力梁66の両端部66Aと反力杭68の杭頭68Aとを連結する。
【0040】
なお、図示を省略するが、各載荷用ジャッキ20には、下台座26に載荷した鉛直荷重を計測するロードセル等の軸力計を設置しておく。これと同様に、移動用ジャッキ64には、主桁22に載荷した鉛直荷重を計測するロードセル等の軸力計を設置しておく。
【0041】
このように構築された載荷試験装置50を用いて載荷試験を行う。本載荷試験では、載荷用ジャッキ20及び移動用ジャッキ64に設置された図示しない軸力計を用いて試験版16に載荷される鉛直荷重を計測しながら、試験版16の沈下量(変形量)が所定値以上になるまで試験版16に鉛直荷重を載荷する。
【0042】
先ず、図6に示されるように、第1載荷工程において、各載荷用ジャッキ20を作動し、上台座28を介して主桁22に反力を取って載荷用ジャッキ20のピストンを伸長させ、下台座26を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。この際、主桁22が受けた反力は、移動用ジャッキ64、反力梁66、アンカー70を介して反力杭68に伝達される(矢印R)。
【0043】
この状態で、試験版16に設置された図示しない変位計を用いて試験版16の沈下量(変位量)を計測し、試験版16の沈下量が所定値(例えば、試験版16の幅の1/10)未満であれば、載荷用ジャッキ20を再度作動し、下台座26を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。この手順を繰り返し、試験版16の沈下量が所定値以上になるまで試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。
【0044】
ここで、試験版16の沈下量が所定値以上になる前に、載荷用ジャッキ20のピストンのストローク量が不足した場合は、第2載荷工程へ移行する。第2載荷工程では、図7に示されるように、移動用ジャッキ64を作動し、反力梁66に反力を取って移動用ジャッキ64のピストンを伸長させ、主桁22を押し下げて反力杭68に接近させる(矢印D)。これにより、主桁22によって上台座28及び載荷用ジャッキ20が押し下げられ、下台座26を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)が載荷される。即ち、移動用ジャッキ64の作動に伴って主桁22が下方へ移動し、載荷用ジャッキ20を介して試験版16が下方へ押圧される。この際、反力梁36が受けた反力は、アンカー70を介して反力杭68に伝達される(矢印K)。
【0045】
この状態で、試験版16に設置された図示しない変位計を用いて試験版16の沈下量(変位量)を計測し、試験版16の沈下量が所定値未満であれば、移動用ジャッキ64を再度作動し、下台座26を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。この手順を繰り返し、試験版16の沈下量が所定値以上になるまで試験版16に鉛直荷重(矢印V)を載荷する。
【0046】
以上の手順により、試験版16を所定値以上沈下させた後、載荷用ジャッキ20及び移動用ジャッキ64に設置された図示しない軸力計を用いて試験版16に載荷された鉛直荷重を計測し、この鉛直荷重と試験版16の沈下量から基礎試験体12の鉛直支持力を算出する。
【0047】
このように本実施形態では、第2載荷工程において、移動機構60により反力杭68に対して主桁22を接近させることにより、主桁22及び載荷用ジャッキ20が下方へ移動され、載荷用ジャッキ20を介して試験版16に鉛直荷重(矢印V)が載荷される。これにより、載荷用ジャッキ20のピストンのストローク量が不足した場合であっても、試験版16の沈下量(変形量)を確保することができる。従って、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
なお、上記第1,第2実施形態では、第1載荷工程の後に第2載荷工程を行ったが、これに限らない。第1載荷工程及び第2載荷工程の実施順序は順不同であり、第1載荷工程の前に第2載荷工程を行っても良い。また、第1載荷工程及び第2載荷工程を同時に、又は並行して行っても良い。
【0049】
また、上記第1,第2実施形態では、移動手段として油圧式の移動用ジャッキ34,64を用いたが、エアー式や機械式(例えば、ネジ機構)等の従来周知の種々のジャッキを用いることができる。また、移動手段はジャッキに限らず、例えば、第2実施形態において、移動手段としてのターンバックや巻き取り装置によってアンカー70に張力を付与することにより、主桁22を下方へ移動させても良い。
【0050】
更に、上記第1,第2実施形態は、既製杭や場所打ち杭等の種々の試験杭に対して適用可能ある。更に、新築建物に限らず、改修建物における既存の基礎に対しても適用可能である。この場合、既存の既製杭や既存の梁を流用して反力杭24,68や主桁22を構築しても良い。
【0051】
更にまた、上記第1,第2実施形態は、パイルド・ラフト基礎に限らず、一般的な杭基礎にも適用可能である。この場合、試験杭の杭頭に設けられる載荷試験のための載荷版等が上記実施形態における試験版に相当する。
【0052】
以上、本発明の第1,第2実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1,第2実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
14 試験杭
14A 杭頭
16 試験版
18 地盤
20 載荷用ジャッキ
22 主桁(地上反力体)
24 反力杭
30 移動機構
50 載荷試験装置
60 移動機構
68 反力杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設された試験杭の杭頭に設けられた試験版と該試験版の上方に設けられた地上反力体との間に設置された載荷用ジャッキにより、前記地上反力体に反力をとって前記試験版を下方へ押圧する第1載荷工程と、
前記第1載荷工程と同時に又は該第1載荷工程に前後して、前記地上反力体を下方へ移動し、前記載荷用ジャッキを介して前記試験版を下方へ押圧する第2載荷工程と、
を備える基礎の載荷試験方法。
【請求項2】
前記第2載荷工程において、地盤に埋設された反力杭と前記地上反力体とに連結された移動機構により、前記反力杭に対して前記地上反力体を接近させることにより、前記地上反力体を下方へ移動する請求項1に記載の基礎の載荷試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−255305(P2012−255305A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129446(P2011−129446)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】