基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法
【課題】防蟻性能の無い既設の基礎コンクリートの外断熱部に対し、薬剤を散布せず身体に安全な物理的方法によって防蟻面を形成することにより、シロアリの食害を防止する防蟻改修をすることが可能な基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法を提供する。
【解決手段】基礎コンクリートの外側に配置される既存断熱材を有する基礎コンクリートの外断熱構造であって、前記既存断熱材には、周囲方向に沿って延在する切欠き部が形成され、前記切欠き部が前記基礎コンクリートの外面に達するように形成され、前記切欠き部には、防蟻性を有する充填断熱材が嵌合され、前記既存断熱材と、前記基礎コンクリートと、前記充填断熱材との間の隙間には、液状物質の硬化物が充填してあり、前記液状物質の硬化物は防蟻性を有することを特徴とする。
【解決手段】基礎コンクリートの外側に配置される既存断熱材を有する基礎コンクリートの外断熱構造であって、前記既存断熱材には、周囲方向に沿って延在する切欠き部が形成され、前記切欠き部が前記基礎コンクリートの外面に達するように形成され、前記切欠き部には、防蟻性を有する充填断熱材が嵌合され、前記既存断熱材と、前記基礎コンクリートと、前記充填断熱材との間の隙間には、液状物質の硬化物が充填してあり、前記液状物質の硬化物は防蟻性を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既に工事が終了した既設の基礎コンクリートの外断熱部位に防蟻性能を付与するための基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、基礎外断熱部位に防蟻性能を持たない汎用的な発泡プラスチック断熱材を用いると、発泡プラスチック断熱材の部分が地下シロアリの蟻道になってしまうことが知られるようになった。しかし、この事実が公知になったのは、基礎外断熱が実際に広く行われるようになってしまった後の事である。最近においては、基礎外断熱用の断熱材として、断熱材に薬剤を混入して防蟻性能を付与した物やシロアリが食害しにくい硬質な断熱材などが用いられるようになったが、地下シロアリに無防備な汎用的発泡プラスチック断熱材を用いた既存の基礎外断熱部位の多くは、蟻害をただ待つ状態に置かれているといっても過言ではない。蟻害が築年数の経過と共に増加することはこれまでの多くの調査で明らかになっているが、既存の基礎外断熱の場合も同様であり、基礎外断熱部が地下シロアリの蟻道になりやすく、かえって蟻害を助長する可能性を考えれば、一刻も早く解決すべき問題である。
【0003】
また、この問題の解決は、日本の木造住宅の短命化を防止し、さらには長寿住宅の実現には不可欠である。住宅の長寿化には様々なアイディアが公表されているが、本課題に関しては、殆ど無策の状態である。木造住宅建築の長寿化は、何も新築住宅に限ったことではなく、現在あるストックを如何に安心な住まいとして維持するかという問題を置き去りにしては考えられない。
【0004】
しかし、ここに猶予すべき大きな問題がある。それは、防蟻に対してはこれまで薬剤でシロアリを駆除、殺傷するという方法が蔓延していたことである。シックハウスに関して或る種の防蟻薬剤の使用禁止が法的に強制化されたが、危険な薬剤の禁止の歴史が示すことは、新たな防蟻の方法の出現である。それは、薬剤を使わずに、かつ、人為を多く加えることなく、物理的に継続する防蟻効果が出せる方法である。特に、既存の基礎外断熱を蟻害から保護する事は、薬剤ではいたって困難である。既に人が住んでいる建築物に、たとえ屋外からであろうと薬剤を散布する事は、人体にとって危険であり、また、決してエコロジーな行為とはいえないからである。薬剤の効用が長くて5年間と考えられている現在においては、薬剤を繰り返し使用するわけには行かない事は明白である。その様なことが明らかであるのも係わらず、この問題は技術的な困難さとコストの関係で放置されており、さらにはシロアリの蟻害に無頓着な住宅建設が現在も少なからず行われていることも事実である。地下シロアリの蟻害に無防備な既存の基礎外断熱の住宅建築の物件数は、数万件を優に超えると考えられる。
【0005】
これまでに施工された基礎外断熱部位の断熱材部分がヤマトシロアリ、イエシロアリ等の地下シロアリの蟻道、または営巣場となる事は、数年前から指摘され、またシロアリの食害による被害も全国的に散見される様になってきた。シロアリ対策に無防備な基礎外断熱の施工棟数は、数万件にも及ぶといわれ、その具体的な対策の実施は急務である。
【0006】
基礎外断熱の断熱材部分が地下シロアリの蟻道になるという具体的な意味は、断熱材自体がシロアリに食害されて空洞が蟻道となり、地下に生息するシロアリが地下から蟻道を通って建物の土台等の構造躯体や内装下地の木部に達し、食害することである。ただし、基礎外断熱の断熱材は多くが発泡プラスチックであり、シロアリの栄養にはならず、シロアリは消化不良により死亡するといわれるが、食害されやすい硬さであることが、次から次へ押し寄せるシロアリによって蟻道が作られやすい条件を備えているといわれる。
【0007】
既設の少なからずの物件の基礎外断熱部が、シロアリに対しては無防備である状態にあることは公知であるにも係わらず、防蟻性能を有さない既設の基礎外断熱部位の防蟻を目的とした改修方法は、それほど多くの種類が発案されているわけではなく、また実施された件数も費用的、工期的、技術的問題などが重なり合って既存の基礎外断熱全体の数から見ればほんの僅かである。
【0008】
断熱改修工事に対する意識が、決して強いとはいえないのが一般的状況であろうことは、例えば、既存の不適格住宅の耐震改修の一環として特許文献1「既存不適格住宅の耐震基礎改築方法」に見られる。特許文献1においては、あくまでも建築構造自体の改修が目的といえばそれまでであろうが、しかし、断熱の方法は構造躯体の寿命を大きく左右することは、今日では周知のことである。特許文献1における改修での防蟻対策は防蟻剤浸透木製土台か鋼製土台を用いることである。防蟻薬剤を散布することが困難なことから、防蟻薬剤を浸透させた土台を新たに設置するというものであるが、断熱工法に関しては何も触れられていない。暗黙のうちに、一般的な在来工法や内断熱が前提とされている。
【0009】
一方、新築の基礎外断熱部位に関して防蟻に対する認識は、少数ではあるが提案されている。例えば、シロアリに食害されない材料で食害される材料を保護する事などが考えられる。断熱材の中を地下から上部の建物に上昇してくるシロアリの経路を遮断する為にシロアリに食害されない物を利用する事は、その一例である。課題は、どの様な材料を用いてどの様に施工すればシロアリの経路を実際に遮断できるかにある。
【0010】
この具体策の一つとして、この様な食害され易い断熱に食害されない材料を挟み込むことによって、蟻道が建物に至ることを阻止しようという考えがある。特許文献2「外張り断熱構造及び木造家屋」においては、シロアリ防止部材を断熱材の地上部分の厚み方向の全体にわたって覆うとともに、基礎立ち上がり部の外周面にもシロアリ防止部材が当接して設けられる防蟻方法が提案されている。また、シロアリ防止部材として、銅を含む金属板やシート状の物を含めた合成樹脂板が開示されている。
【0011】
特許文献2では「地上部分の厚み方向の全体にわたって覆う」ことが提案されている。覆う場合に重要な事は、基礎コンクリートとシロアリ防止部材との間にシロアリが通過するような隙間を生じないことである。新築工事の場合はコンクリートの打ち込みによってコンクリートがシロアリ防止部材と密着することは想定されるが、特許文献2の詳細な説明には改修工事の場合の記述はないものの、改修工事においてはその実施はほぼ不可能と思われる。コンクリート面は不陸、凹凸、ジャンカの状態になっていることが少なくないからである。また、特許文献2においては、基礎布部のコンクリート面の状態も考慮されていないことを見ると、新築工事に関する提案である事が前提となっていと考えられる。コンクリートの打ち込みという方法が採れる新築工事とは異なり、改修工事においては、防蟻性能を持つ物と基礎布部のコンクリートとの防蟻上有効な密な接合がいかにして現実的に可能であるかという防蟻の要件を解決しなくてはならない。
【0012】
改修工事の場合、食害されない材料を食害されやすい断熱材に挟み込むことによって建物に至る蟻道の形成を阻止する場合の難点は、阻止する部材と基礎のコンクリート布部及びモルタル等の表面層との密着にある。隙間が1mm程度以上あればシロアリは食害なしで通過しえるといわれる。とくにコンクリート布部との密着は布部のコンクリート自体が平滑になっているとは限らない。むしろ断熱材の型枠への取り付け時の凹凸のために、コンクリートもそれにしたがって打ち込まれ、布部のコンクリートと断熱材は凸凹のままで付いており、布部のコンクリート面は、平滑にはなっていないと考える方が現実に沿っている。つまり、食害のない防止材と布部コンクリートとを布にそって密着させて施工することは、そう簡単ではないし、またその確実性を確保することも困難である。
【0013】
既設の基礎外断熱部位の基礎布部のコンクリート表面の不均一性に対応した基礎外断熱部位の改修工法として、特許文献3「既築建築物の防蟻改修方法」がある。特許文献3は、ステンレスメッシュを用いた特殊な工法であるが、改修時における防蟻性能を持つ物と基礎コンクリートとの密着という課題に関しては、一応の解決策を提案している。既設の断熱材の厚さ方向を防蟻性を有する材料(この場合にはステンレスメッシュであるが)で覆うという着想である。特許文献3が注力しているところは基礎コンクリートとの密着である。
【0014】
特許文献3のように防蟻性能を有する物としてステンレスメッシュを用いるのは好ましくない。またステンレスメッシュを強引に基礎コンクリートに押し付け、馴染ませるというような力を必要とする方法も好ましくない。すなわち、改修工事を行う環境は、多くの場合新築時よりもはるかに施工に不適格な環境であり、かつ作業の姿勢も窮屈な状態にある場合が少なくない。その様な場合には、施工性が良く簡便で確実な方法が必要とされる。地表面を掘り起こして、基礎下方のコンクリート部にステンレスメッシュを押し付けて樹脂モルタルで接着してゆく時の作業姿勢は、狭い溝の中での不自然な姿勢となり、施工精度と防蟻の確実性の不安が伴う事は否めない。
【0015】
既設の基礎外断熱部位の防蟻のための改修方法の技術的に重要な要件は、防蟻性能を持ちかつ食害され易い断熱材の水平断面を食害されない材料で覆うことよりも、むしろ食害されない防蟻性能を持つ物と基礎布部のコンクリートとの防蟻に有効な密着や一体化にある。
【0016】
上述のように、既設住宅の基礎外断熱部位の防蟻改修工法は、多くはない。現段階では、当面の課題である新築時の防蟻に注力している段階とも言えなくない。また、防蟻改修は、建築物に近接している構築物の移動、撤去また屋外設備の移動や設定などの防蟻改修工事を行う為の付帯工事の期間や費用が小さくはなく、防蟻のみの工事で済むことはほとんどない。付帯工事は、防蟻改修工事の費用と期間を押し上げ、改修工事の大きなネックとなっている。
【0017】
その様に考えるとき、出来るだけ簡便で確実な、かつコストを抑えた方法が望まれるのは当然である。家全体の財産価値と比較すれば防蟻改修工事のコストは小さいが、数百万円を要する場合が少なくない現実においては、必要性を感じつつも実施に戸惑う、大きな要因になっている。
【0018】
既築住宅建築の基礎外断熱部位の防蟻のための改修方法の技術的に重要な課題は、防蟻性能を持つ物と基礎布部のコンクリートとの防蟻に有効な密着や一体化にあるが、防蟻工事自体の施工の容易さと工期の短さ、コストの低さはまさにその点に係る方法にかかっているといえる。
【0019】
蟻害の被害額は明らかではないが、住宅の経年と共に被害に遭う確率は高くなる。基礎外断熱は屋内の優れた温熱環境には有効な手段であるが、防蟻性能を必須とする。しかし、これまでの少なからぬ既築の住宅建築の基礎外断熱部位は、地下シロアリに対しては無防備である。
【0020】
本発明の主眼とするところは、防蟻性能を薬剤を使用せずに物理的に得る事と、外断熱の工法の熱橋の無い温熱環境的性能を維持することにある。そのためには、防蟻性能を有する断熱材で補修することであるが、外断熱部位の断熱材を防蟻性のある断熱材で張り替える等の大掛かりな工事で、またコストも多く掛かるようでは、普及する為の現実性にかける。要所を突いた補修、改修でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2007−255036号公報
【特許文献2】特開2000−17747号公報
【特許文献3】特開2004−293164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、防蟻性能の無い既設の基礎コンクリートの外断熱部に対し、薬剤を散布せず身体に安全な物理的方法によって防蟻面を形成することにより、シロアリの食害を防止する防蟻改修をすることが可能な基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明に係る基礎コンクリートの外断熱構造は、
基礎コンクリートの外側に配置される既存断熱材を有する基礎コンクリートの外断熱構造であって、
前記既存断熱材には、周囲方向に沿って延在する切欠き部が形成され、前記切欠き部が前記基礎コンクリートの外面に達するように形成され、
前記切欠き部には、防蟻性を有する充填断熱材が嵌合され、
前記既存断熱材と、前記基礎コンクリートと、前記充填断熱材との間の隙間には、液状物質の硬化物が充填してあり、前記液状物質の硬化物は防蟻性を有することを特徴とする。
【0024】
これにより、既設の断熱材をすべて張り替えることなく必要最低限の改修工事コストで、しかもコンクリート面の状態(凹凸、不陸等)を考慮した防蟻性の外断熱構造にすることができる。さらに、既設の断熱材を生かして基礎外断熱の屋内温熱環境のメリットを維持することで、良好な屋内温熱環境の維持が可能である。また、作業者や居住者の健康を害するおそれのある薬剤を散布しないので、健康的で安心して住むことのできる住居にすることができる。このようにして蟻害を防止することにより、家屋財産を長期間にわたって維持することができる。
【0025】
好ましくは、前記切欠き部に露出する前記既存断熱材の表面に接触する前記充填断熱材と、前記液状物質の硬化物とによって、蟻道の発生を防ぐ防蟻面が形成される。好ましくは、前記充填断熱材の少なくとも上面に面取り部が形成されており、前記充填断熱材の上面の前記面取り部に沿うように、前記充填断熱材の上部に前記液状物質の硬化物が充填してある。好ましくは、前記充填断熱材の少なくとも下面に面取り部が形成されており、前記切欠き部に露出する前記断熱材の表面に、前記充填断熱材の下面の前記面取り部に沿うように前記液状物質の硬化物が充填してある。
【0026】
充填断熱材の下面および/または上面の面取り部に沿うように液状物質を塗布するので、液状物質の量を必要最小限に抑えることができ、改修工事コストの削減になる。さらに、切欠き部に露出する断熱材の表面に接触する充填断熱材と、硬化後の液状物質とによって、防蟻面が形成される。そのために、シロアリが断熱材の中を地下から上昇することを物理的に妨げ、シロアリが断熱材を通って建築物へ侵入するのを阻止することができる。
【0027】
好ましくは、前記充填断熱材のデュロメータ硬度が80以上であり、前記液状物質の硬化物のデュロメータ硬度が70以上である。充填断熱材と、硬化後の液状物質の硬化物とが、シロアリに蟻道を作られてしまうのを防止するのに十分な硬度を有することで、物理的に蟻害の発生を防止することができる。さらに、物理的に蟻害の発生を防止することにより、薬剤の散布に頼らずに蟻道の発生を防止することができる。
【0028】
前記充填断熱材は、前記基礎コンクリートの全周にわたって連続して配置してあることが好ましい。
【0029】
前記充填断熱材の上端と前記既存断熱材の切欠き部露出下向き面とに接するように補助断熱材が挿入してあっても良い。これにより、充填断熱材が切欠き部に嵌合された後、充填断熱材の上端と前記既存断熱材の切欠き部露出下向き面との間に隙間が生じている場合に、その隙間を防蟻性の補助断熱材を嵌め込むことによって密閉性を向上させ、隙間が生じることのないように微調整をすることができる。
【0030】
前記充填断熱材が挿入された部分と、前記既存断熱材の外面とを一体的に覆うように表面仕上げ材が施工してあっても良い。前記表面仕上げ材がメッシュ状の補強材で補強してあっても良い。
【0031】
本発明に係る基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法は、
基礎コンクリートの外側に設けられた既存断熱材を周方向に沿って切り欠いて切欠き部を作る工程と、
前記切欠き部に露出する前記既存断熱材の表面の少なくとも一部に対して液状物質を塗布する工程と、
前記断熱材の切欠き部露出上向き面に接するように防蟻性を持つ充填断熱材を嵌め込み、前記充填断熱材を前記基礎コンクリートの全周にわたって配置する工程と、
前記液状物質を硬化させ、防蟻性を付与する工程とを有する。
【0032】
作業者が既設の断熱材に切欠きを設け、液状物質を注入し、防蟻性を有する充填断熱材を嵌め込むというシンプルな作業によって、基礎コンクリートの外断熱部位の防蟻構造を容易に、しかも確実に得ることができる。
【0033】
好ましくは、前記液状物質の硬化前の粘度は、20℃において600cps以上であり、前記液状物質の硬化後のデュロメータ硬度が70以上である。
【0034】
液状物質の硬化前の粘度が、20℃において600cps以上を有することにより、施工時の液だれを防止することができ、改修作業が容易となる。また、液状物質の硬化後に防蟻性を有する十分な硬さになることで、物理的に蟻道の発生を防止することができる。
【0035】
前記液状物質が、前記充填断熱材どうしの間を接着するように塗布されても良い。これにより、充填断熱材どうしの間に隙間がある場合に、その隙間を液状物質で埋めることで、蟻道の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、既設の基礎コンクリートの外断熱構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る基礎コンクリートの外断熱構造の欠き部の状態を示す概略断面図である。
【図3】図3は、図2に示す切欠き部に液状樹脂を塗布した状態を示す概略断面図である。
【図4】図4は、図2に示す切欠き部に充填断熱材を嵌合し、防蟻面が形成された状態を示す概略断面図である。
【図5】図5は、図4に示す切欠き部に充填断熱材を嵌合した状態の充填断熱材と液状樹脂との対応関係を示す分解斜視図である。
【図6】図6(A)は、図4に示す充填断熱材の上端部を示す断面図、図6(B)は、図4に示す充填断熱材の下端部を示す断面図である。
【図7】図7は、図4に示す充填断熱材間が連結された改修部の側面図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態に係る液状樹脂の塗布パターンを切欠き部に施工した状態を示す概略断面図である。
【図9】図9(A)は、図8に示す切欠き部に充填断熱材を嵌合した状態を示す概略断面図、図9(B)は、図9(A)に示す充填断熱材の面取り部分を液状樹脂で埋めた状態を示す部分概略断面図である。
【図10】図10(A)および図10(B)は、本発明の他の実施形態に係る充填断熱材の概略断面図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施形態に係る方法により、基礎コンクリートの外断熱構造の改修部に充填断熱材が挿入された改修部の側面図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施形態に係る改修部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
第一実施形態
【0038】
図1に示すように、基礎コンクリートの既存の外断熱構造は、基礎コンクリート1の外側に既存断熱材2が装着してあり、その外側にモルタル3が装着してある。断熱材2は、一般的にポリウレタンフォーム等のスポンジ状の物質や、発泡スチロール等の発泡体で形成されている。
【0039】
しかし、薬剤を使用していない既存断熱材2は柔らかく、シロアリが蟻道を作りやすい。このため、シロアリが基礎コンクリート1の上部に到達するのが容易なために、基礎コンクリート1の上部の既存断熱材や木造物が蟻害に遭いやすい。
【0040】
そこで、既存断熱材2を有効に生かして防蟻性をもたせるために、改修工事を行うことが好ましい。本実施形態における基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法について、図1から順に説明する。図1において、まず既存断熱材2とモルタル3とを切欠き、Y軸に垂直な断面が略矩形になるように、切欠き部2aを基礎コンクリート1の全周にわたって連続して設ける。なお、切欠き部2aの形状は断面が矩形に限らず、その他の多角形状、あるいは略円形またはその他の形状であっても良い。切欠き部2aは、図2に示す基礎コンクリート1の外周面5に到達するように形成する。ここで、X軸、Y軸およびZ軸の定義をする。X軸は、基礎コンクリート1の外面に垂直な方向である。Y軸は、基礎コンクリート1の周方向であり、Z軸は鉛直方向である。
【0041】
切欠き部2aの作成工程について説明する。既存断熱材2の切欠き作業は、まず、切欠き部2aの墨出しを正確に行う。そして、電動丸鋸を定規に当てて、墨出しに沿ってモルタル3および既存断熱材2に切り込みを入れる。次に、バールなどを用いて、モルタル3および既存断熱材2を剥がし取っていく。既存断熱材が剥がし取られた後の基礎コンクリート1の外周面5に既存断熱材2の破片が付着していると、その部分が蟻道となる可能性がある。したがって、基礎コンクリート1の外周面5に付着している既存断熱材2の破片を掻き取ったり、サンダー等を用いてケレン(余計なものを剥がし取る作業)をして、基礎コンクリート1の外周面5に不純物が付着していない状態にしておく。このようにして基礎コンクリート1の外周面5を浄化した後に、エアーブロー等により細かな塵等をなくしておく。
【0042】
このようにして切欠き部2aが形成された状態を図2に示す。切欠き部2aを形成することにより、基礎コンクリート1の外周面5が露出する。外周面5は凸凹、不陸、ジャンカ等の状態になっているのが一般的である。また、既存断熱材2を切欠くことによって、既存断熱材2の露出上向き面4および露出下向き面6がY軸に沿って露出することになる。なお、それぞれの露出面は、Y軸に厳密に沿っていなくても良い。図3に示すように、既存断熱材2の切欠き部2aのX軸方向の一辺の長さはL2であり、切欠き部2aのZ軸方向の一辺の長さはL1である。
【0043】
切欠き部2aを設けた後、図3に示すように、既存断熱材2の露出上向き面4に対して、液状物質である反応硬化型樹脂10をY軸に沿って塗布する。そして、反応硬化型樹脂10のX軸方向に厚みができるようにする。反応硬化型樹脂10は、少なくとも2種類の液を混合することにより、経時硬化する。反応硬化型樹脂10は、混合時の粘度を一定以上にすることが施工のしやすさ(施工者が低い体勢で施工する)という観点から重要である。例えば、主剤のエポキシ系樹脂と硬化剤とを混合した時の混合液の粘度は、20℃において600cps以上であることが好ましい。一定の水準の粘度を保たないと、反応硬化型樹脂10が簡単に流れ落ちて、型が崩れてしまう。一方で、粘度が高すぎると、反応硬化型樹脂10を小さな隙間に入り込むようにすることができないと共に、充填するためのカートリッジから押し流すことが容易でなくなってしまう。したがって、両者のバランスを考慮した粘度にする必要がある。エポキシ系樹脂と硬化剤とは、たとえばカートリッジの先端にあるミキシングノズル内において均一に混合された後、反応硬化型樹脂10はミキシングノズルの先端にある充填ノズルから吐出される。
【0044】
反応硬化型樹脂10を塗布する際に最低限必要な点は二つある。図3に示すように、一つには、反応硬化型樹脂10の少なくとも一辺が基礎コンクリート1の外周面5に接するように反応硬化型樹脂10を露出上向き面4に幅Lで塗布することである。幅Lは、後に説明する図6(B)に示す幅L6と略等しい。二つには、後に切欠き部2aに挿入する充填断熱材9(後に詳細に説明する)の面取り部に沿うように反応硬化型樹脂10を露出上向き面4に塗布する。その結果、Y軸方向に沿って塗布された反応硬化型樹脂10は、ロの字形状7のように4辺が閉じられた形状を有する。
【0045】
次に、図5に示す充填断熱材9の上面の面取り部96に沿って、反応硬化型樹脂10を充填断熱材9の上面の面取り部96に直接に塗布する。そして、図4に示すように、反応硬化型樹脂10が塗布された充填断熱材9を、X軸方向から切欠き部2aに挿入する(嵌め込み工程)。
【0046】
このとき、充填断熱材9を、図6(B)に示すように、充填断熱材9の下面92と既存断熱材2の露出上向き面4とが接するように図4に示す切欠き部2aに挿入する。これにより、充填断熱材9の下面92と反応硬化型樹脂10とにより、図6(B)に示すように物理的な防蟻面20が形成される。
【0047】
そして、充填断熱材9の挿入後には、充填断熱材9の上面に対しても、前述したロの字形状のように反応硬化型樹脂10をY軸方向に連続塗布してもよい。さらに、図7に示すように、充填断熱材9どうしが接する面にもZ軸に沿って面取り部96aを設け、この面取り部96aに対して、Z軸に沿って反応硬化型樹脂10aを塗布する。この場合に、液垂れを防止するために、反応硬化型樹脂10aの粘度を増しても良い。たとえば、フィラーをさらに混合して粘度をコントロールしても良い。
【0048】
充填断熱材9は、一定以上の硬度をもつことによって防蟻性能を有する。充填断熱材9は樹脂であり、好ましくはポリカーボネート発泡体である。充填断熱材9は、デュロメータ硬度が80以上のものを用いる。このような充填断熱材9を、基礎コンクリート1の全周にわたって配置する。
【0049】
反応硬化型樹脂10は、硬化した後に防蟻性能を発揮するのに十分な硬度を有するようになる(防蟻性付与工程)。具体的には、デュロメータ硬度で少なくとも70以上の硬度が必要である。反応硬化型樹脂10は、注入された後に硬化して、その硬度によって防蟻性能を発揮することになるが、密閉された場所でも硬化しなければならないことから、反応硬化型樹脂が用いられる。
【0050】
切欠き部2aに充填断熱材9を挿入した後に、仕上げ工程を行っても良い。具体的には、充填断熱材9が挿入された部分と、既存断熱材2の外面とを一体的に覆うように、仕上げ下地塗装をし、図12に示す表面仕上げ材であるモルタル13等を施工する。具体的には、接着性の良いカチオン系、アクリル系等の接着用添加剤入りのモルタル13を塗った後に乾燥させる。しかし、施工方法はこれに限定されず、シート状のものや板状のものを貼ってもよいし、またタイルを貼っても良い。仕上げ工程は、現場ごとの要請に合わせられるように湿式で行う。こうすることで、施工中に生じるおそれのある隙間の充填をすることもできる。
【0051】
仕上げ工程で施工された後のモルタルは、図4に示す防蟻面20と接触し、外側から覆うことにより、防蟻面のひび割れを防止する。仕上げ加工の時に、図12に示すように、モルタル13の中にさらにメッシュ状の補強材15で切欠き部2aを補強しても良い。補強材は特に限定されないが、たとえば、ガラスメッシュや金属メッシュ等が挙げられる。
【0052】
このような方法により得られた本実施形態に係る基礎コンクリートの外断熱構造について詳細に説明する。図4に示すように、基礎コンクリート1のX軸外側には、既存断熱材2が配置されており、既存断熱材2のX軸外側にはモルタル3が配置されている。既存断熱材2には切欠き部2aが形成されており、切欠き部2aはZ軸方向に幅L1を有し、X軸方向に幅L2を有する。切欠き部2aには、既存断熱材2の露出上向き面4と露出下向き面6とが、高さ方向の幅L1を保つように対向している。
【0053】
切欠き部2aには、既存断熱材2の露出上向き面4に接するように充填断熱材9が配置されている。図5に示すように、充填断熱材9は、Z軸方向に幅L3、X軸方向に幅L4を有する。幅L3は、幅L1と比較して略等しいか、やや小さい。また、幅L4は、幅L2と比較して略等しいか、やや小さい。
【0054】
図5に示すように、充填断熱材9には、充填断熱材9の上面91および下面92に面取り部96が設けられている。図6(A)に示すように、充填断熱材9の上面91における面取り部96のX軸方向の幅L5は特に限定されないが、充填断熱材9の厚さ方向の幅L4に比較して1/6から1/4程度が好ましいが、この値に限定されない。また、図6(B)に示すように、充填断熱材9の下面92における面取り部96のX軸方向の幅L6は特に限定されないが、充填断熱材9の厚さ方向の幅L4に比較して1/6から1/4程度が好ましいが、この値に限定されない。
【0055】
図5に示すように、充填断熱材9の下面92における面取り部96に沿うようにY軸方向に反応硬化型樹脂10がロの字形状に連続して接している。そして、反応硬化型樹脂10が、少なくとも充填断熱材9と、基礎コンクリート1の外周面5と、既存断熱材2との間の隙間を埋めるように配置されている。
【0056】
このように、充填断熱材9の下面92と応硬化型樹脂10とによって、図4に示すように連続した防蟻面20が形成されている。また、充填断熱材9の上面91には、図6(A)に示すように面取り部96に沿って反応硬化型樹脂10が盛られている。
【0057】
上記のような構成にすることにより、既存断熱材2をすべて張り替えることなく必要最低限の改修工事コストで、しかも基礎コンクリート1の外周面5の状態(不陸、凹凸、ジャンカ等)を考慮した防蟻性の外断熱構造にすることができる。さらに、既存断熱材2を生かして基礎外断熱の屋内温熱環境のメリットを維持することで、良好な屋内温熱環境の維持が可能である。また、作業者や居住者の健康を害するおそれのある薬剤を散布しないので、健康的で安心して住むことのできる住居にすることができる。このようにして蟻害を防止することにより、家屋財産を長期間にわたって維持することができる。
【0058】
充填断熱材の下面および/または上面の面取り部に沿うように反応硬化型液状物質10を塗布するので、反応硬化型液状物質10の量を必要最小限に抑えることができ、改修工事コストの削減になる。さらに、切欠き部2aに露出する既存断熱材2の露出上向き面4に接触する充填断熱材9と、反応硬化型液状物質10とによって、防蟻面20が形成される。そのために、シロアリが既存断熱材2の中を地下から上昇することを物理的に妨げ、シロアリが断熱材を通って建築物へ侵入するのを阻止することができる。
【0059】
充填断熱材9と、硬化後の反応硬化型液状物質10の硬化物とが、シロアリに蟻道を作られてしまうのを防止するのに十分な硬度を有することで、物理的に蟻害の発生を防止することができる。さらに、物理的に蟻害の発生を防止することにより、薬剤の散布に頼らずに蟻道の発生を防止することができる。
【0060】
作業者が既設の断熱材に切欠き部2aを設け、反応硬化型液状物質10を注入し、防蟻性を有する充填断熱材9を嵌め込むというシンプルな作業によって、基礎コンクリート1の外断熱部位の防蟻構造を容易に、しかも確実に得ることができる。
【0061】
反応硬化型液状物質10の硬化前の粘度が、20℃において600cps以上を有することにより、施工時の液だれを防止することができ、改修作業が容易となる。
さらに、モルタル13等を用いることによって、改修部の長期にわたる機能を維持することが可能である。
第2実施形態
【0062】
第2実施形態に係る基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法は、図8に示すように反応硬化型樹脂10がY軸方向に塗布されること以外は、図1〜図7に示す第1実施形態に係る基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法と同様であり、重複する説明は省略する。
【0063】
本実施形態では、図8に示すように、反応硬化型樹脂10のX軸外側の辺がないように、Y軸方向に反応硬化型樹脂10を塗布する。反応硬化型樹脂10を塗布する際に最低限必要な点は第1実施形態と同様に、二つある。図8に示すように、一つには、反応硬化型樹脂10の少なくとも一辺が、基礎コンクリート1の外周面5に接するように反応硬化型樹脂10を露出上向き面4に幅Lで塗布することである。幅Lは、図6(B)に示す幅L6と略等しい。二つには、後に切欠き部2aに挿入する充填断熱材9の面取り部96に沿うように反応硬化型樹脂10を露出上向き面4に塗布する。その結果、Y軸方向に塗布された反応硬化型樹脂10は、コの字形状8のように、ロの字の一辺が欠けたような形状を有する。
【0064】
次に、図5に示す充填断熱材9の上面の面取り部96に沿って、反応硬化型樹脂10を充填断熱材9の上面の面取り部96に直接に塗布する。そして、図9(A)に示すように、反応硬化型樹脂10が塗布された充填断熱材9を、X軸方向から切欠き部2aに挿入する(嵌め込み工程)。
【0065】
このとき、充填断熱材9を、充填断熱材9の下面92と既存断熱材2の露出上向き面4とが接するように切欠き部2aに挿入する。さらに、図9(B)に示すように、反応硬化型樹脂10bを充填断熱材9の面取り部96に沿うようにY軸に沿って塗布する。これにより、充填断熱材9の下面92と反応硬化型樹脂10、および反応硬化型樹脂10bとにより、図9(B)に示すように物理的な防蟻面20bが形成される。すなわち、最初にコの字に塗布した反応硬化型樹脂10に後から塗布した反応硬化型樹脂10bを加えることにより、四辺の閉じたロの字形状の反応硬化型樹脂の連続が形成されることになる。
【0066】
なお、第1実施形態で述べたロの字形状7と、第2実施形態で述べたコの字形状8とを組み合わせても良い。また、図10(A)に示す充填断熱材9aのように、充填断熱材9の側面93と充填断熱材9aの下面92とが交差する辺に面取りが形成されなくても良い。また、充填断熱材9の側面93と充填断熱材9aの上面91とが交差する辺に面取りが形成されなくても良い。さらにまた、図10(B)に示す充填断熱材9bのように、充填断熱材9bのY軸端面98と充填断熱材9aの上面91とが交差する辺に面取りが形成されなくても良い。このよう面取りをしない場合には、上述した嵌め込み工程の後に、図9(B)に示す反応硬化型樹脂10bを塗布する工程を不要にすることができる。
【0067】
なお、図11に示すように、Y軸方向に連続配置される充填断熱材9どうしの間に、幅L7だけの間隔を有するように施工しても良い。この場合には、充填断熱材9どうしの間の空間97を埋めるように、反応硬化型樹脂10を塗布する必要がある。
【0068】
また、図12に示すように、補助断熱材12を、充填断熱材9の上面91と既存断熱材2の露出下向き面6とに接するようにX軸方向から挿入しても良い。補助断熱材12のZ軸の幅は、施工現場の状況に応じて適宜変更される。充填断熱材9の上面91と既存断熱材2の露出下向き面6との間に隙間がある場合に、その隙間を完全に塞ぐことができ、より防蟻性を高めることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…基礎コンクリート
2…既存断熱材
2a…切欠き部
4…露出上向き面
5…基礎コンクリートの外周面
9…充填断熱材
10…反応硬化型樹脂
20…防蟻面
96…面取り部
【技術分野】
【0001】
本発明は、既に工事が終了した既設の基礎コンクリートの外断熱部位に防蟻性能を付与するための基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、基礎外断熱部位に防蟻性能を持たない汎用的な発泡プラスチック断熱材を用いると、発泡プラスチック断熱材の部分が地下シロアリの蟻道になってしまうことが知られるようになった。しかし、この事実が公知になったのは、基礎外断熱が実際に広く行われるようになってしまった後の事である。最近においては、基礎外断熱用の断熱材として、断熱材に薬剤を混入して防蟻性能を付与した物やシロアリが食害しにくい硬質な断熱材などが用いられるようになったが、地下シロアリに無防備な汎用的発泡プラスチック断熱材を用いた既存の基礎外断熱部位の多くは、蟻害をただ待つ状態に置かれているといっても過言ではない。蟻害が築年数の経過と共に増加することはこれまでの多くの調査で明らかになっているが、既存の基礎外断熱の場合も同様であり、基礎外断熱部が地下シロアリの蟻道になりやすく、かえって蟻害を助長する可能性を考えれば、一刻も早く解決すべき問題である。
【0003】
また、この問題の解決は、日本の木造住宅の短命化を防止し、さらには長寿住宅の実現には不可欠である。住宅の長寿化には様々なアイディアが公表されているが、本課題に関しては、殆ど無策の状態である。木造住宅建築の長寿化は、何も新築住宅に限ったことではなく、現在あるストックを如何に安心な住まいとして維持するかという問題を置き去りにしては考えられない。
【0004】
しかし、ここに猶予すべき大きな問題がある。それは、防蟻に対してはこれまで薬剤でシロアリを駆除、殺傷するという方法が蔓延していたことである。シックハウスに関して或る種の防蟻薬剤の使用禁止が法的に強制化されたが、危険な薬剤の禁止の歴史が示すことは、新たな防蟻の方法の出現である。それは、薬剤を使わずに、かつ、人為を多く加えることなく、物理的に継続する防蟻効果が出せる方法である。特に、既存の基礎外断熱を蟻害から保護する事は、薬剤ではいたって困難である。既に人が住んでいる建築物に、たとえ屋外からであろうと薬剤を散布する事は、人体にとって危険であり、また、決してエコロジーな行為とはいえないからである。薬剤の効用が長くて5年間と考えられている現在においては、薬剤を繰り返し使用するわけには行かない事は明白である。その様なことが明らかであるのも係わらず、この問題は技術的な困難さとコストの関係で放置されており、さらにはシロアリの蟻害に無頓着な住宅建設が現在も少なからず行われていることも事実である。地下シロアリの蟻害に無防備な既存の基礎外断熱の住宅建築の物件数は、数万件を優に超えると考えられる。
【0005】
これまでに施工された基礎外断熱部位の断熱材部分がヤマトシロアリ、イエシロアリ等の地下シロアリの蟻道、または営巣場となる事は、数年前から指摘され、またシロアリの食害による被害も全国的に散見される様になってきた。シロアリ対策に無防備な基礎外断熱の施工棟数は、数万件にも及ぶといわれ、その具体的な対策の実施は急務である。
【0006】
基礎外断熱の断熱材部分が地下シロアリの蟻道になるという具体的な意味は、断熱材自体がシロアリに食害されて空洞が蟻道となり、地下に生息するシロアリが地下から蟻道を通って建物の土台等の構造躯体や内装下地の木部に達し、食害することである。ただし、基礎外断熱の断熱材は多くが発泡プラスチックであり、シロアリの栄養にはならず、シロアリは消化不良により死亡するといわれるが、食害されやすい硬さであることが、次から次へ押し寄せるシロアリによって蟻道が作られやすい条件を備えているといわれる。
【0007】
既設の少なからずの物件の基礎外断熱部が、シロアリに対しては無防備である状態にあることは公知であるにも係わらず、防蟻性能を有さない既設の基礎外断熱部位の防蟻を目的とした改修方法は、それほど多くの種類が発案されているわけではなく、また実施された件数も費用的、工期的、技術的問題などが重なり合って既存の基礎外断熱全体の数から見ればほんの僅かである。
【0008】
断熱改修工事に対する意識が、決して強いとはいえないのが一般的状況であろうことは、例えば、既存の不適格住宅の耐震改修の一環として特許文献1「既存不適格住宅の耐震基礎改築方法」に見られる。特許文献1においては、あくまでも建築構造自体の改修が目的といえばそれまでであろうが、しかし、断熱の方法は構造躯体の寿命を大きく左右することは、今日では周知のことである。特許文献1における改修での防蟻対策は防蟻剤浸透木製土台か鋼製土台を用いることである。防蟻薬剤を散布することが困難なことから、防蟻薬剤を浸透させた土台を新たに設置するというものであるが、断熱工法に関しては何も触れられていない。暗黙のうちに、一般的な在来工法や内断熱が前提とされている。
【0009】
一方、新築の基礎外断熱部位に関して防蟻に対する認識は、少数ではあるが提案されている。例えば、シロアリに食害されない材料で食害される材料を保護する事などが考えられる。断熱材の中を地下から上部の建物に上昇してくるシロアリの経路を遮断する為にシロアリに食害されない物を利用する事は、その一例である。課題は、どの様な材料を用いてどの様に施工すればシロアリの経路を実際に遮断できるかにある。
【0010】
この具体策の一つとして、この様な食害され易い断熱に食害されない材料を挟み込むことによって、蟻道が建物に至ることを阻止しようという考えがある。特許文献2「外張り断熱構造及び木造家屋」においては、シロアリ防止部材を断熱材の地上部分の厚み方向の全体にわたって覆うとともに、基礎立ち上がり部の外周面にもシロアリ防止部材が当接して設けられる防蟻方法が提案されている。また、シロアリ防止部材として、銅を含む金属板やシート状の物を含めた合成樹脂板が開示されている。
【0011】
特許文献2では「地上部分の厚み方向の全体にわたって覆う」ことが提案されている。覆う場合に重要な事は、基礎コンクリートとシロアリ防止部材との間にシロアリが通過するような隙間を生じないことである。新築工事の場合はコンクリートの打ち込みによってコンクリートがシロアリ防止部材と密着することは想定されるが、特許文献2の詳細な説明には改修工事の場合の記述はないものの、改修工事においてはその実施はほぼ不可能と思われる。コンクリート面は不陸、凹凸、ジャンカの状態になっていることが少なくないからである。また、特許文献2においては、基礎布部のコンクリート面の状態も考慮されていないことを見ると、新築工事に関する提案である事が前提となっていと考えられる。コンクリートの打ち込みという方法が採れる新築工事とは異なり、改修工事においては、防蟻性能を持つ物と基礎布部のコンクリートとの防蟻上有効な密な接合がいかにして現実的に可能であるかという防蟻の要件を解決しなくてはならない。
【0012】
改修工事の場合、食害されない材料を食害されやすい断熱材に挟み込むことによって建物に至る蟻道の形成を阻止する場合の難点は、阻止する部材と基礎のコンクリート布部及びモルタル等の表面層との密着にある。隙間が1mm程度以上あればシロアリは食害なしで通過しえるといわれる。とくにコンクリート布部との密着は布部のコンクリート自体が平滑になっているとは限らない。むしろ断熱材の型枠への取り付け時の凹凸のために、コンクリートもそれにしたがって打ち込まれ、布部のコンクリートと断熱材は凸凹のままで付いており、布部のコンクリート面は、平滑にはなっていないと考える方が現実に沿っている。つまり、食害のない防止材と布部コンクリートとを布にそって密着させて施工することは、そう簡単ではないし、またその確実性を確保することも困難である。
【0013】
既設の基礎外断熱部位の基礎布部のコンクリート表面の不均一性に対応した基礎外断熱部位の改修工法として、特許文献3「既築建築物の防蟻改修方法」がある。特許文献3は、ステンレスメッシュを用いた特殊な工法であるが、改修時における防蟻性能を持つ物と基礎コンクリートとの密着という課題に関しては、一応の解決策を提案している。既設の断熱材の厚さ方向を防蟻性を有する材料(この場合にはステンレスメッシュであるが)で覆うという着想である。特許文献3が注力しているところは基礎コンクリートとの密着である。
【0014】
特許文献3のように防蟻性能を有する物としてステンレスメッシュを用いるのは好ましくない。またステンレスメッシュを強引に基礎コンクリートに押し付け、馴染ませるというような力を必要とする方法も好ましくない。すなわち、改修工事を行う環境は、多くの場合新築時よりもはるかに施工に不適格な環境であり、かつ作業の姿勢も窮屈な状態にある場合が少なくない。その様な場合には、施工性が良く簡便で確実な方法が必要とされる。地表面を掘り起こして、基礎下方のコンクリート部にステンレスメッシュを押し付けて樹脂モルタルで接着してゆく時の作業姿勢は、狭い溝の中での不自然な姿勢となり、施工精度と防蟻の確実性の不安が伴う事は否めない。
【0015】
既設の基礎外断熱部位の防蟻のための改修方法の技術的に重要な要件は、防蟻性能を持ちかつ食害され易い断熱材の水平断面を食害されない材料で覆うことよりも、むしろ食害されない防蟻性能を持つ物と基礎布部のコンクリートとの防蟻に有効な密着や一体化にある。
【0016】
上述のように、既設住宅の基礎外断熱部位の防蟻改修工法は、多くはない。現段階では、当面の課題である新築時の防蟻に注力している段階とも言えなくない。また、防蟻改修は、建築物に近接している構築物の移動、撤去また屋外設備の移動や設定などの防蟻改修工事を行う為の付帯工事の期間や費用が小さくはなく、防蟻のみの工事で済むことはほとんどない。付帯工事は、防蟻改修工事の費用と期間を押し上げ、改修工事の大きなネックとなっている。
【0017】
その様に考えるとき、出来るだけ簡便で確実な、かつコストを抑えた方法が望まれるのは当然である。家全体の財産価値と比較すれば防蟻改修工事のコストは小さいが、数百万円を要する場合が少なくない現実においては、必要性を感じつつも実施に戸惑う、大きな要因になっている。
【0018】
既築住宅建築の基礎外断熱部位の防蟻のための改修方法の技術的に重要な課題は、防蟻性能を持つ物と基礎布部のコンクリートとの防蟻に有効な密着や一体化にあるが、防蟻工事自体の施工の容易さと工期の短さ、コストの低さはまさにその点に係る方法にかかっているといえる。
【0019】
蟻害の被害額は明らかではないが、住宅の経年と共に被害に遭う確率は高くなる。基礎外断熱は屋内の優れた温熱環境には有効な手段であるが、防蟻性能を必須とする。しかし、これまでの少なからぬ既築の住宅建築の基礎外断熱部位は、地下シロアリに対しては無防備である。
【0020】
本発明の主眼とするところは、防蟻性能を薬剤を使用せずに物理的に得る事と、外断熱の工法の熱橋の無い温熱環境的性能を維持することにある。そのためには、防蟻性能を有する断熱材で補修することであるが、外断熱部位の断熱材を防蟻性のある断熱材で張り替える等の大掛かりな工事で、またコストも多く掛かるようでは、普及する為の現実性にかける。要所を突いた補修、改修でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2007−255036号公報
【特許文献2】特開2000−17747号公報
【特許文献3】特開2004−293164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、防蟻性能の無い既設の基礎コンクリートの外断熱部に対し、薬剤を散布せず身体に安全な物理的方法によって防蟻面を形成することにより、シロアリの食害を防止する防蟻改修をすることが可能な基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明に係る基礎コンクリートの外断熱構造は、
基礎コンクリートの外側に配置される既存断熱材を有する基礎コンクリートの外断熱構造であって、
前記既存断熱材には、周囲方向に沿って延在する切欠き部が形成され、前記切欠き部が前記基礎コンクリートの外面に達するように形成され、
前記切欠き部には、防蟻性を有する充填断熱材が嵌合され、
前記既存断熱材と、前記基礎コンクリートと、前記充填断熱材との間の隙間には、液状物質の硬化物が充填してあり、前記液状物質の硬化物は防蟻性を有することを特徴とする。
【0024】
これにより、既設の断熱材をすべて張り替えることなく必要最低限の改修工事コストで、しかもコンクリート面の状態(凹凸、不陸等)を考慮した防蟻性の外断熱構造にすることができる。さらに、既設の断熱材を生かして基礎外断熱の屋内温熱環境のメリットを維持することで、良好な屋内温熱環境の維持が可能である。また、作業者や居住者の健康を害するおそれのある薬剤を散布しないので、健康的で安心して住むことのできる住居にすることができる。このようにして蟻害を防止することにより、家屋財産を長期間にわたって維持することができる。
【0025】
好ましくは、前記切欠き部に露出する前記既存断熱材の表面に接触する前記充填断熱材と、前記液状物質の硬化物とによって、蟻道の発生を防ぐ防蟻面が形成される。好ましくは、前記充填断熱材の少なくとも上面に面取り部が形成されており、前記充填断熱材の上面の前記面取り部に沿うように、前記充填断熱材の上部に前記液状物質の硬化物が充填してある。好ましくは、前記充填断熱材の少なくとも下面に面取り部が形成されており、前記切欠き部に露出する前記断熱材の表面に、前記充填断熱材の下面の前記面取り部に沿うように前記液状物質の硬化物が充填してある。
【0026】
充填断熱材の下面および/または上面の面取り部に沿うように液状物質を塗布するので、液状物質の量を必要最小限に抑えることができ、改修工事コストの削減になる。さらに、切欠き部に露出する断熱材の表面に接触する充填断熱材と、硬化後の液状物質とによって、防蟻面が形成される。そのために、シロアリが断熱材の中を地下から上昇することを物理的に妨げ、シロアリが断熱材を通って建築物へ侵入するのを阻止することができる。
【0027】
好ましくは、前記充填断熱材のデュロメータ硬度が80以上であり、前記液状物質の硬化物のデュロメータ硬度が70以上である。充填断熱材と、硬化後の液状物質の硬化物とが、シロアリに蟻道を作られてしまうのを防止するのに十分な硬度を有することで、物理的に蟻害の発生を防止することができる。さらに、物理的に蟻害の発生を防止することにより、薬剤の散布に頼らずに蟻道の発生を防止することができる。
【0028】
前記充填断熱材は、前記基礎コンクリートの全周にわたって連続して配置してあることが好ましい。
【0029】
前記充填断熱材の上端と前記既存断熱材の切欠き部露出下向き面とに接するように補助断熱材が挿入してあっても良い。これにより、充填断熱材が切欠き部に嵌合された後、充填断熱材の上端と前記既存断熱材の切欠き部露出下向き面との間に隙間が生じている場合に、その隙間を防蟻性の補助断熱材を嵌め込むことによって密閉性を向上させ、隙間が生じることのないように微調整をすることができる。
【0030】
前記充填断熱材が挿入された部分と、前記既存断熱材の外面とを一体的に覆うように表面仕上げ材が施工してあっても良い。前記表面仕上げ材がメッシュ状の補強材で補強してあっても良い。
【0031】
本発明に係る基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法は、
基礎コンクリートの外側に設けられた既存断熱材を周方向に沿って切り欠いて切欠き部を作る工程と、
前記切欠き部に露出する前記既存断熱材の表面の少なくとも一部に対して液状物質を塗布する工程と、
前記断熱材の切欠き部露出上向き面に接するように防蟻性を持つ充填断熱材を嵌め込み、前記充填断熱材を前記基礎コンクリートの全周にわたって配置する工程と、
前記液状物質を硬化させ、防蟻性を付与する工程とを有する。
【0032】
作業者が既設の断熱材に切欠きを設け、液状物質を注入し、防蟻性を有する充填断熱材を嵌め込むというシンプルな作業によって、基礎コンクリートの外断熱部位の防蟻構造を容易に、しかも確実に得ることができる。
【0033】
好ましくは、前記液状物質の硬化前の粘度は、20℃において600cps以上であり、前記液状物質の硬化後のデュロメータ硬度が70以上である。
【0034】
液状物質の硬化前の粘度が、20℃において600cps以上を有することにより、施工時の液だれを防止することができ、改修作業が容易となる。また、液状物質の硬化後に防蟻性を有する十分な硬さになることで、物理的に蟻道の発生を防止することができる。
【0035】
前記液状物質が、前記充填断熱材どうしの間を接着するように塗布されても良い。これにより、充填断熱材どうしの間に隙間がある場合に、その隙間を液状物質で埋めることで、蟻道の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、既設の基礎コンクリートの外断熱構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る基礎コンクリートの外断熱構造の欠き部の状態を示す概略断面図である。
【図3】図3は、図2に示す切欠き部に液状樹脂を塗布した状態を示す概略断面図である。
【図4】図4は、図2に示す切欠き部に充填断熱材を嵌合し、防蟻面が形成された状態を示す概略断面図である。
【図5】図5は、図4に示す切欠き部に充填断熱材を嵌合した状態の充填断熱材と液状樹脂との対応関係を示す分解斜視図である。
【図6】図6(A)は、図4に示す充填断熱材の上端部を示す断面図、図6(B)は、図4に示す充填断熱材の下端部を示す断面図である。
【図7】図7は、図4に示す充填断熱材間が連結された改修部の側面図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態に係る液状樹脂の塗布パターンを切欠き部に施工した状態を示す概略断面図である。
【図9】図9(A)は、図8に示す切欠き部に充填断熱材を嵌合した状態を示す概略断面図、図9(B)は、図9(A)に示す充填断熱材の面取り部分を液状樹脂で埋めた状態を示す部分概略断面図である。
【図10】図10(A)および図10(B)は、本発明の他の実施形態に係る充填断熱材の概略断面図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施形態に係る方法により、基礎コンクリートの外断熱構造の改修部に充填断熱材が挿入された改修部の側面図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施形態に係る改修部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
第一実施形態
【0038】
図1に示すように、基礎コンクリートの既存の外断熱構造は、基礎コンクリート1の外側に既存断熱材2が装着してあり、その外側にモルタル3が装着してある。断熱材2は、一般的にポリウレタンフォーム等のスポンジ状の物質や、発泡スチロール等の発泡体で形成されている。
【0039】
しかし、薬剤を使用していない既存断熱材2は柔らかく、シロアリが蟻道を作りやすい。このため、シロアリが基礎コンクリート1の上部に到達するのが容易なために、基礎コンクリート1の上部の既存断熱材や木造物が蟻害に遭いやすい。
【0040】
そこで、既存断熱材2を有効に生かして防蟻性をもたせるために、改修工事を行うことが好ましい。本実施形態における基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法について、図1から順に説明する。図1において、まず既存断熱材2とモルタル3とを切欠き、Y軸に垂直な断面が略矩形になるように、切欠き部2aを基礎コンクリート1の全周にわたって連続して設ける。なお、切欠き部2aの形状は断面が矩形に限らず、その他の多角形状、あるいは略円形またはその他の形状であっても良い。切欠き部2aは、図2に示す基礎コンクリート1の外周面5に到達するように形成する。ここで、X軸、Y軸およびZ軸の定義をする。X軸は、基礎コンクリート1の外面に垂直な方向である。Y軸は、基礎コンクリート1の周方向であり、Z軸は鉛直方向である。
【0041】
切欠き部2aの作成工程について説明する。既存断熱材2の切欠き作業は、まず、切欠き部2aの墨出しを正確に行う。そして、電動丸鋸を定規に当てて、墨出しに沿ってモルタル3および既存断熱材2に切り込みを入れる。次に、バールなどを用いて、モルタル3および既存断熱材2を剥がし取っていく。既存断熱材が剥がし取られた後の基礎コンクリート1の外周面5に既存断熱材2の破片が付着していると、その部分が蟻道となる可能性がある。したがって、基礎コンクリート1の外周面5に付着している既存断熱材2の破片を掻き取ったり、サンダー等を用いてケレン(余計なものを剥がし取る作業)をして、基礎コンクリート1の外周面5に不純物が付着していない状態にしておく。このようにして基礎コンクリート1の外周面5を浄化した後に、エアーブロー等により細かな塵等をなくしておく。
【0042】
このようにして切欠き部2aが形成された状態を図2に示す。切欠き部2aを形成することにより、基礎コンクリート1の外周面5が露出する。外周面5は凸凹、不陸、ジャンカ等の状態になっているのが一般的である。また、既存断熱材2を切欠くことによって、既存断熱材2の露出上向き面4および露出下向き面6がY軸に沿って露出することになる。なお、それぞれの露出面は、Y軸に厳密に沿っていなくても良い。図3に示すように、既存断熱材2の切欠き部2aのX軸方向の一辺の長さはL2であり、切欠き部2aのZ軸方向の一辺の長さはL1である。
【0043】
切欠き部2aを設けた後、図3に示すように、既存断熱材2の露出上向き面4に対して、液状物質である反応硬化型樹脂10をY軸に沿って塗布する。そして、反応硬化型樹脂10のX軸方向に厚みができるようにする。反応硬化型樹脂10は、少なくとも2種類の液を混合することにより、経時硬化する。反応硬化型樹脂10は、混合時の粘度を一定以上にすることが施工のしやすさ(施工者が低い体勢で施工する)という観点から重要である。例えば、主剤のエポキシ系樹脂と硬化剤とを混合した時の混合液の粘度は、20℃において600cps以上であることが好ましい。一定の水準の粘度を保たないと、反応硬化型樹脂10が簡単に流れ落ちて、型が崩れてしまう。一方で、粘度が高すぎると、反応硬化型樹脂10を小さな隙間に入り込むようにすることができないと共に、充填するためのカートリッジから押し流すことが容易でなくなってしまう。したがって、両者のバランスを考慮した粘度にする必要がある。エポキシ系樹脂と硬化剤とは、たとえばカートリッジの先端にあるミキシングノズル内において均一に混合された後、反応硬化型樹脂10はミキシングノズルの先端にある充填ノズルから吐出される。
【0044】
反応硬化型樹脂10を塗布する際に最低限必要な点は二つある。図3に示すように、一つには、反応硬化型樹脂10の少なくとも一辺が基礎コンクリート1の外周面5に接するように反応硬化型樹脂10を露出上向き面4に幅Lで塗布することである。幅Lは、後に説明する図6(B)に示す幅L6と略等しい。二つには、後に切欠き部2aに挿入する充填断熱材9(後に詳細に説明する)の面取り部に沿うように反応硬化型樹脂10を露出上向き面4に塗布する。その結果、Y軸方向に沿って塗布された反応硬化型樹脂10は、ロの字形状7のように4辺が閉じられた形状を有する。
【0045】
次に、図5に示す充填断熱材9の上面の面取り部96に沿って、反応硬化型樹脂10を充填断熱材9の上面の面取り部96に直接に塗布する。そして、図4に示すように、反応硬化型樹脂10が塗布された充填断熱材9を、X軸方向から切欠き部2aに挿入する(嵌め込み工程)。
【0046】
このとき、充填断熱材9を、図6(B)に示すように、充填断熱材9の下面92と既存断熱材2の露出上向き面4とが接するように図4に示す切欠き部2aに挿入する。これにより、充填断熱材9の下面92と反応硬化型樹脂10とにより、図6(B)に示すように物理的な防蟻面20が形成される。
【0047】
そして、充填断熱材9の挿入後には、充填断熱材9の上面に対しても、前述したロの字形状のように反応硬化型樹脂10をY軸方向に連続塗布してもよい。さらに、図7に示すように、充填断熱材9どうしが接する面にもZ軸に沿って面取り部96aを設け、この面取り部96aに対して、Z軸に沿って反応硬化型樹脂10aを塗布する。この場合に、液垂れを防止するために、反応硬化型樹脂10aの粘度を増しても良い。たとえば、フィラーをさらに混合して粘度をコントロールしても良い。
【0048】
充填断熱材9は、一定以上の硬度をもつことによって防蟻性能を有する。充填断熱材9は樹脂であり、好ましくはポリカーボネート発泡体である。充填断熱材9は、デュロメータ硬度が80以上のものを用いる。このような充填断熱材9を、基礎コンクリート1の全周にわたって配置する。
【0049】
反応硬化型樹脂10は、硬化した後に防蟻性能を発揮するのに十分な硬度を有するようになる(防蟻性付与工程)。具体的には、デュロメータ硬度で少なくとも70以上の硬度が必要である。反応硬化型樹脂10は、注入された後に硬化して、その硬度によって防蟻性能を発揮することになるが、密閉された場所でも硬化しなければならないことから、反応硬化型樹脂が用いられる。
【0050】
切欠き部2aに充填断熱材9を挿入した後に、仕上げ工程を行っても良い。具体的には、充填断熱材9が挿入された部分と、既存断熱材2の外面とを一体的に覆うように、仕上げ下地塗装をし、図12に示す表面仕上げ材であるモルタル13等を施工する。具体的には、接着性の良いカチオン系、アクリル系等の接着用添加剤入りのモルタル13を塗った後に乾燥させる。しかし、施工方法はこれに限定されず、シート状のものや板状のものを貼ってもよいし、またタイルを貼っても良い。仕上げ工程は、現場ごとの要請に合わせられるように湿式で行う。こうすることで、施工中に生じるおそれのある隙間の充填をすることもできる。
【0051】
仕上げ工程で施工された後のモルタルは、図4に示す防蟻面20と接触し、外側から覆うことにより、防蟻面のひび割れを防止する。仕上げ加工の時に、図12に示すように、モルタル13の中にさらにメッシュ状の補強材15で切欠き部2aを補強しても良い。補強材は特に限定されないが、たとえば、ガラスメッシュや金属メッシュ等が挙げられる。
【0052】
このような方法により得られた本実施形態に係る基礎コンクリートの外断熱構造について詳細に説明する。図4に示すように、基礎コンクリート1のX軸外側には、既存断熱材2が配置されており、既存断熱材2のX軸外側にはモルタル3が配置されている。既存断熱材2には切欠き部2aが形成されており、切欠き部2aはZ軸方向に幅L1を有し、X軸方向に幅L2を有する。切欠き部2aには、既存断熱材2の露出上向き面4と露出下向き面6とが、高さ方向の幅L1を保つように対向している。
【0053】
切欠き部2aには、既存断熱材2の露出上向き面4に接するように充填断熱材9が配置されている。図5に示すように、充填断熱材9は、Z軸方向に幅L3、X軸方向に幅L4を有する。幅L3は、幅L1と比較して略等しいか、やや小さい。また、幅L4は、幅L2と比較して略等しいか、やや小さい。
【0054】
図5に示すように、充填断熱材9には、充填断熱材9の上面91および下面92に面取り部96が設けられている。図6(A)に示すように、充填断熱材9の上面91における面取り部96のX軸方向の幅L5は特に限定されないが、充填断熱材9の厚さ方向の幅L4に比較して1/6から1/4程度が好ましいが、この値に限定されない。また、図6(B)に示すように、充填断熱材9の下面92における面取り部96のX軸方向の幅L6は特に限定されないが、充填断熱材9の厚さ方向の幅L4に比較して1/6から1/4程度が好ましいが、この値に限定されない。
【0055】
図5に示すように、充填断熱材9の下面92における面取り部96に沿うようにY軸方向に反応硬化型樹脂10がロの字形状に連続して接している。そして、反応硬化型樹脂10が、少なくとも充填断熱材9と、基礎コンクリート1の外周面5と、既存断熱材2との間の隙間を埋めるように配置されている。
【0056】
このように、充填断熱材9の下面92と応硬化型樹脂10とによって、図4に示すように連続した防蟻面20が形成されている。また、充填断熱材9の上面91には、図6(A)に示すように面取り部96に沿って反応硬化型樹脂10が盛られている。
【0057】
上記のような構成にすることにより、既存断熱材2をすべて張り替えることなく必要最低限の改修工事コストで、しかも基礎コンクリート1の外周面5の状態(不陸、凹凸、ジャンカ等)を考慮した防蟻性の外断熱構造にすることができる。さらに、既存断熱材2を生かして基礎外断熱の屋内温熱環境のメリットを維持することで、良好な屋内温熱環境の維持が可能である。また、作業者や居住者の健康を害するおそれのある薬剤を散布しないので、健康的で安心して住むことのできる住居にすることができる。このようにして蟻害を防止することにより、家屋財産を長期間にわたって維持することができる。
【0058】
充填断熱材の下面および/または上面の面取り部に沿うように反応硬化型液状物質10を塗布するので、反応硬化型液状物質10の量を必要最小限に抑えることができ、改修工事コストの削減になる。さらに、切欠き部2aに露出する既存断熱材2の露出上向き面4に接触する充填断熱材9と、反応硬化型液状物質10とによって、防蟻面20が形成される。そのために、シロアリが既存断熱材2の中を地下から上昇することを物理的に妨げ、シロアリが断熱材を通って建築物へ侵入するのを阻止することができる。
【0059】
充填断熱材9と、硬化後の反応硬化型液状物質10の硬化物とが、シロアリに蟻道を作られてしまうのを防止するのに十分な硬度を有することで、物理的に蟻害の発生を防止することができる。さらに、物理的に蟻害の発生を防止することにより、薬剤の散布に頼らずに蟻道の発生を防止することができる。
【0060】
作業者が既設の断熱材に切欠き部2aを設け、反応硬化型液状物質10を注入し、防蟻性を有する充填断熱材9を嵌め込むというシンプルな作業によって、基礎コンクリート1の外断熱部位の防蟻構造を容易に、しかも確実に得ることができる。
【0061】
反応硬化型液状物質10の硬化前の粘度が、20℃において600cps以上を有することにより、施工時の液だれを防止することができ、改修作業が容易となる。
さらに、モルタル13等を用いることによって、改修部の長期にわたる機能を維持することが可能である。
第2実施形態
【0062】
第2実施形態に係る基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法は、図8に示すように反応硬化型樹脂10がY軸方向に塗布されること以外は、図1〜図7に示す第1実施形態に係る基礎コンクリートの外断熱構造および基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法と同様であり、重複する説明は省略する。
【0063】
本実施形態では、図8に示すように、反応硬化型樹脂10のX軸外側の辺がないように、Y軸方向に反応硬化型樹脂10を塗布する。反応硬化型樹脂10を塗布する際に最低限必要な点は第1実施形態と同様に、二つある。図8に示すように、一つには、反応硬化型樹脂10の少なくとも一辺が、基礎コンクリート1の外周面5に接するように反応硬化型樹脂10を露出上向き面4に幅Lで塗布することである。幅Lは、図6(B)に示す幅L6と略等しい。二つには、後に切欠き部2aに挿入する充填断熱材9の面取り部96に沿うように反応硬化型樹脂10を露出上向き面4に塗布する。その結果、Y軸方向に塗布された反応硬化型樹脂10は、コの字形状8のように、ロの字の一辺が欠けたような形状を有する。
【0064】
次に、図5に示す充填断熱材9の上面の面取り部96に沿って、反応硬化型樹脂10を充填断熱材9の上面の面取り部96に直接に塗布する。そして、図9(A)に示すように、反応硬化型樹脂10が塗布された充填断熱材9を、X軸方向から切欠き部2aに挿入する(嵌め込み工程)。
【0065】
このとき、充填断熱材9を、充填断熱材9の下面92と既存断熱材2の露出上向き面4とが接するように切欠き部2aに挿入する。さらに、図9(B)に示すように、反応硬化型樹脂10bを充填断熱材9の面取り部96に沿うようにY軸に沿って塗布する。これにより、充填断熱材9の下面92と反応硬化型樹脂10、および反応硬化型樹脂10bとにより、図9(B)に示すように物理的な防蟻面20bが形成される。すなわち、最初にコの字に塗布した反応硬化型樹脂10に後から塗布した反応硬化型樹脂10bを加えることにより、四辺の閉じたロの字形状の反応硬化型樹脂の連続が形成されることになる。
【0066】
なお、第1実施形態で述べたロの字形状7と、第2実施形態で述べたコの字形状8とを組み合わせても良い。また、図10(A)に示す充填断熱材9aのように、充填断熱材9の側面93と充填断熱材9aの下面92とが交差する辺に面取りが形成されなくても良い。また、充填断熱材9の側面93と充填断熱材9aの上面91とが交差する辺に面取りが形成されなくても良い。さらにまた、図10(B)に示す充填断熱材9bのように、充填断熱材9bのY軸端面98と充填断熱材9aの上面91とが交差する辺に面取りが形成されなくても良い。このよう面取りをしない場合には、上述した嵌め込み工程の後に、図9(B)に示す反応硬化型樹脂10bを塗布する工程を不要にすることができる。
【0067】
なお、図11に示すように、Y軸方向に連続配置される充填断熱材9どうしの間に、幅L7だけの間隔を有するように施工しても良い。この場合には、充填断熱材9どうしの間の空間97を埋めるように、反応硬化型樹脂10を塗布する必要がある。
【0068】
また、図12に示すように、補助断熱材12を、充填断熱材9の上面91と既存断熱材2の露出下向き面6とに接するようにX軸方向から挿入しても良い。補助断熱材12のZ軸の幅は、施工現場の状況に応じて適宜変更される。充填断熱材9の上面91と既存断熱材2の露出下向き面6との間に隙間がある場合に、その隙間を完全に塞ぐことができ、より防蟻性を高めることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…基礎コンクリート
2…既存断熱材
2a…切欠き部
4…露出上向き面
5…基礎コンクリートの外周面
9…充填断熱材
10…反応硬化型樹脂
20…防蟻面
96…面取り部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートの外側に配置される既存断熱材を有する基礎コンクリートの外断熱構造であって、
前記既存断熱材には、周囲方向に沿って延在する切欠き部が形成され、前記切欠き部が前記基礎コンクリートの外面に達するように形成され、
前記切欠き部には、防蟻性を有する充填断熱材が嵌合され、
前記既存断熱材と、前記基礎コンクリートと、前記充填断熱材との間の隙間には、液状物質の硬化物が充填してあり、前記液状物質の硬化物は防蟻性を有することを特徴とする基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項2】
前記切欠き部に露出する前記既存断熱材の表面に接触する前記充填断熱材と、前記液状物質の硬化物とによって、蟻道の発生を防ぐ防蟻面が形成されることを特徴とする請求項1に記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項3】
前記充填断熱材の少なくとも上面に面取り部が形成されており、前記充填断熱材の上面の前記面取り部に沿うように、前記充填断熱材の上部に前記液状物質の硬化物が充填してあることを特徴とする請求項1または2に記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項4】
前記充填断熱材の少なくとも下面に面取り部が形成されており、前記切欠き部に露出する前記断熱材の表面に、前記充填断熱材の下面の前記面取り部に沿うように前記液状物質の硬化物が充填してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項5】
前記充填断熱材は、前記基礎コンクリートの全周にわたって連続して配置してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項6】
前記充填断熱材のデュロメータ硬度が80以上であり、前記液状物質の硬化物のデュロメータ硬度が70以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項7】
前記充填断熱材が挿入された部分と、前記既存断熱材の外面とを一体的に覆うように表面仕上げ材が施工してあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項8】
前記表面仕上げ材がメッシュ状の補強材で補強してあることを特徴とする請求項7に記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項9】
前記充填断熱材の上端と前記既存断熱材の切欠き部露出下向き面とに接するように補助断熱材が挿入してあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項10】
基礎コンクリートの外側に設けられた既存断熱材を周方向に沿って切り欠いて切欠き部を作る工程と、
前記切欠き部に露出する前記既存断熱材の表面の少なくとも一部に対して液状物質を塗布する工程と、
前記断熱材の切欠き部露出上向き面に接するように防蟻性を持つ充填断熱材を嵌め込み、前記充填断熱材を前記基礎コンクリートの全周にわたって配置する工程と、
前記液状物質を硬化させ、防蟻性を付与する工程とを有することを特徴とする基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法。
【請求項11】
前記液状物質の硬化前の粘度は、20℃において600cps以上であり、前記液状物質の硬化後のデュロメータ硬度が70以上であることを特徴とする請求項10に記載の基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法。
【請求項12】
前記液状物質が、前記充填断熱材どうしの間を接着するように塗布されることを特徴とする請求項10または11に記載の基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法。
【請求項1】
基礎コンクリートの外側に配置される既存断熱材を有する基礎コンクリートの外断熱構造であって、
前記既存断熱材には、周囲方向に沿って延在する切欠き部が形成され、前記切欠き部が前記基礎コンクリートの外面に達するように形成され、
前記切欠き部には、防蟻性を有する充填断熱材が嵌合され、
前記既存断熱材と、前記基礎コンクリートと、前記充填断熱材との間の隙間には、液状物質の硬化物が充填してあり、前記液状物質の硬化物は防蟻性を有することを特徴とする基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項2】
前記切欠き部に露出する前記既存断熱材の表面に接触する前記充填断熱材と、前記液状物質の硬化物とによって、蟻道の発生を防ぐ防蟻面が形成されることを特徴とする請求項1に記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項3】
前記充填断熱材の少なくとも上面に面取り部が形成されており、前記充填断熱材の上面の前記面取り部に沿うように、前記充填断熱材の上部に前記液状物質の硬化物が充填してあることを特徴とする請求項1または2に記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項4】
前記充填断熱材の少なくとも下面に面取り部が形成されており、前記切欠き部に露出する前記断熱材の表面に、前記充填断熱材の下面の前記面取り部に沿うように前記液状物質の硬化物が充填してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項5】
前記充填断熱材は、前記基礎コンクリートの全周にわたって連続して配置してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項6】
前記充填断熱材のデュロメータ硬度が80以上であり、前記液状物質の硬化物のデュロメータ硬度が70以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項7】
前記充填断熱材が挿入された部分と、前記既存断熱材の外面とを一体的に覆うように表面仕上げ材が施工してあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項8】
前記表面仕上げ材がメッシュ状の補強材で補強してあることを特徴とする請求項7に記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項9】
前記充填断熱材の上端と前記既存断熱材の切欠き部露出下向き面とに接するように補助断熱材が挿入してあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の基礎コンクリートの外断熱構造。
【請求項10】
基礎コンクリートの外側に設けられた既存断熱材を周方向に沿って切り欠いて切欠き部を作る工程と、
前記切欠き部に露出する前記既存断熱材の表面の少なくとも一部に対して液状物質を塗布する工程と、
前記断熱材の切欠き部露出上向き面に接するように防蟻性を持つ充填断熱材を嵌め込み、前記充填断熱材を前記基礎コンクリートの全周にわたって配置する工程と、
前記液状物質を硬化させ、防蟻性を付与する工程とを有することを特徴とする基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法。
【請求項11】
前記液状物質の硬化前の粘度は、20℃において600cps以上であり、前記液状物質の硬化後のデュロメータ硬度が70以上であることを特徴とする請求項10に記載の基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法。
【請求項12】
前記液状物質が、前記充填断熱材どうしの間を接着するように塗布されることを特徴とする請求項10または11に記載の基礎コンクリートの外断熱構造の改修方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−190010(P2010−190010A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38228(P2009−38228)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(503400916)マツミハウジング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(503400916)マツミハウジング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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