説明

基礎杭の支持構造および基礎杭の施工方法

【課題】さほど大きな翼を設けなくても、高い先端支持力が得られる基礎杭の支持構造を提供するとともに、この支持構造を容易に施工できる基礎杭の施工方法を提供する。
【解決手段】先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭と、地盤中の支持層あるいは支持層を含む区間に形成されているとともに、前記鋼管杭の先端部が挿入され、一体化されてなる根固め柱とを有することを特徴とする基礎杭の支持構造、及びその施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に貫入した基礎杭の支持構造および基礎杭の施工方法に関し、特に高い先端支持力を有し、かつ施工性が良好な基礎杭の支持構造および基礎杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の基礎等に用いる基礎杭の構造として、鋼管杭の先端部外周に取り付けた翼の木ネジとしての作用により、鋼管杭を埋設する施工方法が特許文献1に提案されている。この基礎杭の施工方法は、中掘回転貫入方式と一般に称されている。
この基礎杭の施工方法は、図12に示すように、ダブルオーガー回転モーター32により、杭体10とオーガーヘッド22とを互いに反対方向に回転させつつ、地盤中に貫入させる施工方法であり、その際、杭体10の回転貫入中に支持層または支持層を含む所望の区間にオーガーヘッド22から硬化性流動物23(セメントミルク等の固化材液)を噴出し、翼10Aとオーガーヘッド22の回転により土砂と硬化性流動物23を撹拌混合し、その後、所定の深さまで撹拌混合が終了したとき、杭を残置してオーガー20を引き抜き、時間の経過に伴い軟化した土砂を固化させる方法である。
【0003】
なお、図12において、41はホースであり、ホース41はオーガー20内に設けられた貫通孔21に連通している。70は土砂と硬化性流動物23(セメントミルク等の固化材液)との混合物であり、固化した根固め柱と杭体10とを一体化させるようにしている。
しかしながら、基礎杭として必要な先端支持力を得るため、杭径の1.5〜2倍程度の径を有する翼を杭先端部外周に取り付けた鋼管杭は、図13に示す大がかりな翼10Aを杭体10に取り付ける加工費が高くなり、基礎杭のコスト上昇が避けられないという欠点がある。また、大きな面積を有する翼10Aを杭先端部外周に取り付けた鋼管杭は、翼10Aと杭体10との接合部に応力集中が発生することになるため、基礎杭の支持構造として構造上の弱点部となりやすい。
【0004】
また、大きな面積を有する翼10Aを杭先端部外周に取り付けた鋼管杭は、杭体10の先端部に設けた翼10Aの木ネジ作用により地盤中に回転貫入させる際、特に硬質な地盤の場合、貫入抵抗が大きく施工性が劣るという問題がある。
また、基礎杭としては、高さが20mm以下の螺旋状の突起を杭外周に周設した鋼管杭が特許文献2に記載されている。
【0005】
この鋼管杭を用い、ドリル回転貫入方式により貫入し、基礎杭とした場合、杭径が600mm以下の場合には、回転貫入させる際に、杭先端に生じる土の閉塞蓋により、先端支持力が発現されるが、閉塞蓋の断面積と杭の閉塞面積とが同じであり、杭先端部における先端支持力が不足するという問題がある一方、杭径が600mmを超えた場合には、先端閉塞効果が低下して、先端支持力が不足するという問題があった。
【0006】
またさらに、構造物の基礎等に用いる基礎杭の構造として、杭先端の支持力をさらに向上させれば、地盤面積当たりに埋設する杭数を少なくできる効果が期待できるので、杭先端支持力をさらに向上させたいという強い要望がある。
【特許文献1】特開2000-144728 号公報
【特許文献2】特許第2512503 号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、さほど大きな翼を設けなくても、高い先端支持力が得られる基礎杭の支持構造を提供するとともに、この支持構造を容易に施工できる基礎杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねて、先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭を用いることにより上記課題を解決できるとの知見に基づいて、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1. 先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭と、地盤中の支持層あるいは支持層を含む区間に形成されているとともに、前記鋼管杭の先端部が挿入され、一体化されてなる根固め柱とを有することを特徴とする基礎杭の支持構造。
【0009】
2. 前記根固め柱の高さHを前記鋼管杭の杭径D1寸法の1倍以上、5倍以下とすることを特徴とする上記1.に記載の基礎杭の支持構造。
3. 前記根固め柱の径D2を前記鋼管杭の杭径D1の1.2〜2.0倍とすることを特徴とする上記1または2に記載の基礎杭の支持構造。
4. 先端部外周に高さが6mm以上の螺旋状の突起を設けた鋼管杭を地盤中の支持層または支持層を含む区間まで貫入させ、該区間に前記鋼管杭の先端部が挿入された根固め柱を構築する基礎杭の施工方法であって、前記鋼管杭の中空部にオーガーを挿入し、該オーガーにより地盤を掘削するとともに前記鋼管杭を回転貫入させ、前記区間にオーガーヘッドが達した段階で、前記オーガーヘッドの掘削径を構築する根固め柱の径相当に拡大し、構築する根固め柱の高さ分だけ掘削するとともに、前記オーガーヘッドより固化液を噴出し、その後に、前記鋼管杭の先端部を拡大して掘削した区間に残置して前記オーガーを引き抜き、前記固化液を固化させて根固め柱を構築することを特徴とする基礎杭の施工方法。
【0010】
5. 先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭を地盤中の支持層または支持層を含む区間まで貫入させ、該区間に前記鋼管杭の先端部が挿入された根固め柱を構築する基礎杭の施工方法であって、先ず、オーガーにより地盤を掘削し、前記区間にオーガーヘッドが達した段階で、前記オーガーヘッドの掘削径を構築する根固め柱の径相当に拡大し、構築する根固め柱の高さ分だけ掘削するとともに、前記オーガーヘッドより固化液を噴出し、その後に、前記オーガーを引き抜き、前記固化液が固化する前に前記鋼管杭を掘削した掘削孔に貫入し、前記鋼管杭の先端部を拡大して掘削した区間に挿入し、前記固化液を固化させて根固め柱を構築することを特徴とする基礎杭の施工方法。
【0011】
6. 前記根固め柱の高さHを前記鋼管杭の杭径D1寸法の1倍以上、5倍以下とすることを特徴とする上記4.または5.に記載の基礎杭の施工方法。
7. 前記根固め柱の径D2を前記鋼管杭の杭径D1の1.2〜2.0倍とすることを特徴とする上記4.〜6.のいずれかに記載の基礎杭の施工方法。
8. 前記オーガーヘッドは拡翼機構を有し、該オーガーヘッドを拡翼することにより前記区間の掘削を行うことを特徴とする上記4.〜7.のいずれかに記載の基礎杭の施工方法。
【0012】
9. 前記オーガーヘッドは前記固化液を噴射可能な高圧噴射機構を有し、該オーガーヘッドより前記固化液を高圧噴射することにより前記区間の掘削を行うことを特徴とする上記4.〜7.のいずれかに記載の基礎杭の施工方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基礎杭の支持構造によれば、先端部に突起を設けた鋼管杭と根固め柱とが一体化され、高い先端支持力を有する基礎杭が得られる。また、本発明の基礎杭の施工方法によれば、良好な施工性を確保したまま、高い先端支持力を有する基礎杭の施工が可能となる。さらに、周辺地盤との周辺摩擦力を十分確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
先ず、本発明の基礎杭の構造について図を用いて詳細に説明する。
図1(a)は本発明の基礎杭の構造を示す縦断面模式図であり、図1(b)は図1のX−X断面図である。
図1中、符号1は鋼管杭(以下、単に杭ともいう)、11Aは鋼管杭1の先端部外周に設けた突起である。2は根固め柱であり、この場合、根固め柱2は支持層内に形成されていると共に、根固め柱2には、鋼管杭1の先端部が挿入され、根固め柱2と鋼管杭1の先端部とが一体化されている。図中3は地盤、3Aは支持層上端、3Bは地表面である。また、D1は杭径、D2は根固め柱の径であり、Sは根固め柱内における杭先端部挿入長さ、Hは根固め柱の高さである。Dtは、突起を含めた杭先端部の径、すなわち、突起高さをtとするとDt=D1+2×t(図2参照)である。
【0015】
また、図2は、本発明に用いる鋼管杭の要部断面図であり、図2において、図2(a)、(b)、(c)では突起部材が異なる。すなわち、11A、11B、11Cはそれぞれ丸棒、角棒、三角棒であり、これらの突起部材を螺旋状に鋼管杭1の先端部外周に巻き付かせ、固着してある。また、図2(d)は、丸棒11Dを環状に先端部外周に巻き付かせ、固着した鋼管杭1を示した。θは突起部材の巻き付き方向と杭周方向となす突起巻き付き角度であり、Lは突起を設けた杭先端からの長さである。なお、鋼管内面には、一般の中掘り根固め杭と同様に、先端閉塞を保持するためのずれ止めが取り付けられる。
【0016】
本発明では、先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭1を用い、該鋼管杭1の先端部が根固め柱内に挿入され、一体化されている基礎杭の支持構造としたことが特徴である。
以下、鋼管杭1の先端部外周に設けた高さが6mm以上の突起の総称を11とする。なお、後述する施工上の観点から本発明に用いる鋼管杭1に設ける突起11の高さtは、杭径D1の10%以下とすることが好ましい。また、本発明では突起11を形成する部材は特に限定されず、板材等とすることができる。但し、板材に比較して、丸棒あるいは角棒の方が螺旋状または環状に加工することが容易であり、さらに鋼管杭への取り付けも容易であるため、加工コストが比較的安価になるという利点を有する。また、本発明では突起11を鋼管杭周方向に断続的(船舶等のスクリュウのように)に設けることもできるが、施工時、杭を地盤中に回転貫入させることを考慮すると、突起は螺旋状に取り付けられていることが好ましい。鋼管杭1の先端部外周に上記突起11を固着するには、溶接による他、圧延もしくは鋳込みにより鋼管杭と突起とを一体形成することもできる。このようにして固着した鋼管杭1と突起11との接合部強度は、突起11間にある根固め柱が圧縮により破壊する破壊強度(すなわち、根固め柱を形成するコンクリートの強度である圧縮強度をσc、あるいは割裂強度をτcとした場合のτc×p:図15(b)参照 )より大きくするのが、突起を設けたことによる先端支持力向上効果を確実にするうえで望ましい。
【0017】
本発明では、上述したように、鋼管杭1の先端部外周に設けた突起11の高さが6mm以上でかつ根固め柱2は突起11の高さを含めた鋼管杭の径Dtよりも大きな径D2を有し、図1(a)、(b)に示すように、杭先端部が根固め柱2へ挿入され、杭先端部が根固め柱から抜けないように根固め柱2と鋼管杭1先端部とが一体化されている支持構造を有しているので、高い先端支持力を得ることができる。
【0018】
本発明の支持構造により高い先端支持力が得られる原理は、次のように説明できる。本発明では、杭先端部外周に突起11が設けてあるので、図3(a)に示すように、杭に対して作用する下向きの力Fが突起11により根固め柱2の多数の箇所に分散して伝わり、さらに、根固め柱2の径方向にも力が伝播(図3(a)中の破線矢印)するので、根固め柱2の割れが生じにくくなる一方、図3(b)に示すように、鋼管杭1の先端部に突起がない場合には、杭の下端にのみ力が伝播(図3(b)中の破線矢印)し、杭の下端に応力集中が発生するので、上記と同じ力Fに対し割れが生じやすい。
【0019】
このように、本発明では、杭に作用する下向きの力が根固め柱に完全に埋め込まれた突起11により分散されるので、突起11の高さをさほど高くしなくても杭先端部に大きな支持力が発現するのである。その際、杭先端部外周面に設けた突起11が小さすぎると、突起の凹部に土砂が付着したり、回転貫入時における地盤との摩擦による突起凸部の摩耗や突起凸部の腐食により、突起高さが低くなった場合に杭と根固め柱との一体化効果や根固め柱への力の分散効果が低くなる恐れがある。このため、突起の高さhを6mm以上としてある。
【0020】
また、杭先端から地盤への力の分散効果は、突起の形状にもよるが、一般に図4に示すように杭軸方向に対してβの角度で広がり、βの値としては45°程度以下(β≦45°)である。このため、突起を含めた杭径Dt 、根固め柱の径D2とは次式を満足することが好ましい。
t+2・h・tan β≦D2
ここで、hは根固め柱に埋め込まれた最上段の突起から根固め柱底面までの長さである。なお、鋼管杭1に作用する下向きの力Fを、根固め柱2内で効率良く径方向に伝播させるためには、図2(a)と(d)に示す突起11が丸棒11Aにより構成されている場合や、図2(c)に示す突起11が三角棒11Cにより構成されている場合にように、突起11が下方向外向きになるように傾斜して面を有することが好ましい。さらに、図5に示すように、突起11の高さを根固め柱11の上部にいくほど高くなるようにすると、効果的に根固め柱2に力を分散させることができる。
【0021】
また、本発明において、回転貫入により鋼管杭を地盤中の支持層または支持層を含む区間に貫入する際には、杭先端に木ネジとしての機能により鋼管杭に推進力が発生するようにして施工性を確保できるよう、突起は螺旋状であることが好ましい。さらに、突起が螺旋状であると、回転貫入時に杭先端付近の土が杭周面上側へと運ばれるため、杭周辺地盤が締め固められ、周面摩擦支持力が向上するという効果もある。この際、突起の高さが6mm以上あると回転貫入時の推進力が高くなり、杭の貫入性が向上する。
【0022】
また、突起を杭に対して螺旋状に巻き付けて取り付ける場合には、図2に示す突起巻き付き角度θを45゜以下とすることが好ましい。これは、突起巻き付き角度θが大きすぎると、杭に対して作用する下向きの力が効率よく突起から根固め柱に伝えられなくなるためである。突起は、平板状の翼のように広い面積を有するもの、すなわち、D1に対する突起の高さtが大きい場合には、杭の回転貫入時の貫入抵抗が大きくなり、施工性を悪化させる。したがって、杭の貫入時の施工性を考慮すると、突起の高さはある程度小さいことが好ましく、杭径D1の10%以下であることが好ましい。突起は、螺旋状または環状に1巻あれば突起がない場合に比較して支持力が向上する。前述の杭に作用する力を分散させる効果を十分に得るため、螺旋状または環状に複数巻とすることが好ましい。突起を複数巻とした場合は、全ての突起が根固め柱に覆われるように、杭の軸方向に突起間隔を設けるとよい。
【0023】
ところで、図1(a)では、根固め柱2の高さ方向全区間が地盤3の支持層内に位置していると示してあるが、地盤3によっては、根固め柱2の高さ方向区間の一部、もしくは根固め柱の高さ方向区間の途中から下方を支持層内に位置させるようにすることもできる。
ここで、上記の根固め柱2の大きさは、根固め柱2の高さHを鋼管杭1の杭径D1寸法の1倍以上、5倍以下とすることが好ましい。この理由は、根固め柱2の高さHを鋼管杭1の杭径D1寸法の1倍未満とした場合、根固め柱2内における杭先端部挿入長さSが短くなってしまい、先端支持力が不十分となり、一方、根固め柱2の高さHを鋼管杭1の杭径D1寸法の5倍を超えるようにした場合、根固め柱構築のための施工コストが増大してしまう。このため、根固め柱2の高さHを上記の範囲とし、根固め柱2内における杭先端部挿入長さSを適切にすることができ、根固め柱2と鋼管杭1先端部との間に十分な固着力を与えることができるようにした。その際、根固め柱2内における杭先端部挿入長さSを根固め柱2の高さHの0.6〜0.9倍とすることが、限定された根固め柱2の高さの範囲内で先端支持力を効果的に高くすることができるのでより好ましい。
【0024】
また、根固め柱2の径D2が鋼管杭1の杭径D1の1.2倍以上、2.0倍以下とすることが好ましい。このように限定する理由は次のとおりである。根固め柱2の径D2が2.0倍を超えるようになると、後述するオーガーヘッドおよび施工機械が大がかりなものとなる。一方、根固め柱2の径D2が鋼管杭1の杭径D1の1.2倍未満であると、必要な先端支持力向上効果が得られない不都合が発生する場合がある。このため、根固め柱2の径D2を鋼管杭1の杭径D1の1.2〜2.0倍とすることが好ましい。
【0025】
なお、本発明の基礎杭の支持構造においては、杭径D1が100〜2000mmの鋼管杭に特に好適である。以上説明した本発明の基礎杭の支持構造において、図1(a)では、根固め柱2に固着されている鋼管杭1の先端部を除く部分は、周辺の地盤と直接接触しているとして示したが、本発明の基礎杭の支持構造では、鋼管杭1の先端部を除く部分がセメントミルク等の固化液を用いて固定化処理した土砂を介して周辺の地盤と接触するようにしてもよい。
【0026】
次に、上述した基礎杭の支持構造を得る本発明の基礎杭の施工方法について説明する。
先ず、図1(a)、図1(b)に示した基礎杭の構造を得る施工方法の第1の実施形態を、図6〜図8を用いて説明する。
図6は、本発明の基礎杭の施工過程を示す縦断面模式図であり、図7は本発明の施工方法に用いるオーガーを示す要部断面図である。図7(a)はスクリュー5Aを撹拌部材としたオーガー5であり、図7(b)はロッド5Bを撹拌部材としたオーガー5である。また、図8は杭1とオーガー5を回転させるダブルオーガー回転モーター32を示す概略断面図である。図6、図7において、6はオーガーヘッド、51は貫通孔であり、図8で33は外軸、34は内軸、41はオーガー5内に設けた貫通孔51に連通させてあるホースである。
【0027】
本実施形態では、例えば図8に示すように、ダブルオーガー回転モーター32に鋼管杭1とオーガー5を連結して、鋼管杭1の先端に配置された拡翼可能なオーガーヘッド6を回転させると共に、鋼管杭1をオーガー5の回転と反対方向に回転させて、オーガーヘッド6と共に、地盤3の表面3Bから地盤3中に鋼管杭1を順次貫入させる。その際、先端部外周に高さが6mm以上の螺旋状の突起が設けられた鋼管杭1を用い、この突起による木ネジの作用と、オーガー5による地盤の掘削軟化作用により、杭の回転貫入時の施工性を確保できる。そして、図6(b)に示すように、オーガーヘッド6が根固め柱を構築する支持層または支持層より上方の所定位置まで達した段階でオーガーヘッド6を拡翼し、オーガーヘッド6からセメントミルク等の固化材液を噴出し、セメントミルク等の固化液と土砂とを撹拌混合して、根固め柱を構築する。
【0028】
拡翼後のオーガーヘッド6による掘削径は、突起を含めた鋼管杭1の径Dtよりも大きく、構築する根固め柱の径D2相当とする。また、拡翼後のオーガーヘッド6による掘削長さは、構築する根固め柱の高さH相当とする。このようにして、構築する根固め柱の区間の回転貫入が終了した後、鋼管杭1の先端部を拡大して掘削した区間に残置してオーガー5を引き抜き、時間の経過に伴い固化液を固化させて根固め柱2を構築する。
【0029】
このようにして施工することにより、図1(a)、図1(b)に示したような基礎杭の支持構造を得ることができる。
この際、構築する根固め柱2の高さHを鋼管杭の杭径D1寸法の1倍以上、5倍以下とするのが好ましく、またさらに、根固め柱内における杭先端部挿入長さSを根固め柱の高さHの0.6〜0.9倍とすることがより好ましい。これらの理由は上述したので省略する。
【0030】
また、構築する根固め柱2の径D2を杭径D1の2倍を超えるようにした場合、オーガーヘッド6を拡翼後の掘削径があまりに大きくなって、オーガーヘッドおよび施工機械を大がかりなものとする必要が生じてくるため、杭径D1の2倍以下とすることが好ましく、一方、根固め柱の径D2を鋼管杭の杭径D1の1.2未満とした場合、必要な先端支持力向上効果が得られない不都合が発生する場合があるので、根固め柱の径D2を鋼管杭の杭径D1の1.2倍以上とするのが好ましい。
【0031】
ここで、鋼管杭1とオーガー5を回転させるには、ダブルオーガー回転モーター32を用いずに、図9に示すように、杭回転モーター35とオーガー回転モーター36を用いるようにしてもよい。また、オーガーと鋼管杭との回転方向は、同方向とすることもできる。さらに、上記の例では、オーガーヘッド6を拡翼機構を有するものを用いたが、本発明に用いるオーガーヘッドはこれに限定されず、例えば、図11に示すように、オーガーヘッド6は固化液を噴射可能な高圧噴射機構を有し、オーガーヘッド6より前記固化液を高圧噴射することにより構築する根固め柱の区間の掘削を行うようにしてもよい。
【0032】
以上説明した本発明の第1の実施の形態に係る基礎杭の施工方法では、図2(a)、(b)、(c)で説明したような螺旋状の突起を先端部外周に設けた鋼管杭1を用い、オーガーヘッド6が根固め柱を構築しようとする区間の上端に達するまでは、オーガーヘッド6による掘削径を拡大することなく掘削し、さらに鋼管杭1を回転貫入するようにするので、施工時の回転トルクを小さくできて、施工性を良好にすることができると共に、杭周辺の地盤を大きく乱すことがないので、施工後の杭と周辺地盤との間の周面摩擦力および水平地盤反力を十分な大きさとすることができるうえに、突起を設けた先端部を根固めして、根固め部に固着させるために、高い先端支持力が得られる。また、本発明の第1の実施形態に係る基礎杭の施工方法は、軟弱地盤の大深度施工に向いている。
【0033】
次いで、第2の実施形態に係る基礎杭の施工方法について、図10(a)〜図10(c)を用いて説明する。第2の実施形態の施工方法によれば、図10(c)に示すような基礎杭の支持構造を得ることができる。
第2の実施形態の施工方法は、オーガーを鋼管杭の中空部に挿入して掘削を開始するのではなく、オーガーのみを地盤中に回転貫入させて、予め杭穴を掘削する。
【0034】
オーガー5としては、オーガーヘッド6が拡翼機構を有するものを用い、拡翼した時の掘削径は、突起を含めた鋼管杭1の径Dtよりも大きく、構築する根固め柱の径D2相当とする。また、拡翼後のオーガーヘッド6による掘削長さは、構築する根固め柱の高さH相当とする。なお、オーガーヘッド6が構築する根固め柱の区間の上端に到達するまでの間は、オーガーヘッド6を拡翼せずに掘削を行い、構築する根固め柱の区間の上端に到達した時点で、図10(b)に示すように、オーガーヘッド6を拡翼して掘削を行う。さらに、この区間を掘削する際には、セメントミルク等の固化材液を噴出し続け、セメントミルク等の固化液と土砂とを撹拌混合して、根固め柱7を構築する。根固め柱の支持力を向上させる目的で、固化液に砂、砂礫等を混入させてもよい。そして、オーガーヘッド6が、構築する根固め部2の下端に到達したときに、オーガーの回転貫入を終了させて、オーガー5を引き抜く。構築する根固め部2の大きさは、上述した第1の実施形態と同様な寸法とするのが好ましい。
【0035】
次いで、根固め柱7が固化する前に、図2で説明した先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭1を貫入させ、鋼管杭1の先端部を拡大して掘削した区間の根固め柱7に挿入し、時間の経過に伴い軟化した土砂を固化させ、杭先端部と根固め柱2とを一体化させる。
なお、第2の実施形態に係る基礎杭の施工方法では、オーガーにより掘削した杭穴に鋼管杭を貫入することとなるため、必ずしも螺旋状の突起を設けた鋼管杭を回転貫入する必要はなく、図2(d)に示すような環状突起の設けた鋼管杭を用いてもよい。また、杭と周辺地盤との間の周面摩擦力および水平地盤反力を得るために、根固め柱を構築しようとする区間にオーガーヘッドが到達する前からソイルセメント等の固化液を注入するようにしてもよい。また、オーガーヘッドとして、図11に示すセメントミルク等の固化液の高圧噴射機構を有するものを用いてもよいことは言うまでもない。
【0036】
このような本発明の第2の実施形態に係る基礎杭の施工方法は、予め杭穴を掘削して根固め柱7を構築してから、根固め柱7が固化する前に、鋼管杭1を貫入するので、鋼管杭1を貫入する際の施工性がよくなる。この予め杭穴を掘削する施工方法は、一般に30mより浅い、比較的硬質な地盤に向いている。
【実施例】
【0037】
上述した本発明に係る基礎杭の支持構造の効果を確認するため、先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭を用い、該鋼管杭の先端部の周囲に枠体を形成し、この枠体内にセメントミルクに砂、砂礫等を混入させたコンクリートを注入し、杭先端部と根固め柱とが一体化されている試験体を作製し、室内で載荷試験を行った。その際、表1に示すように、先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭を用い、発明例(試験体2〜8)とした。この場合、鋼管杭1の先端部外周に直径の異なる丸棒を螺旋状に巻き付かせ、溶接により突起と鋼管杭とを接合した。突起の巻き付き段数は、1〜6段とした。
【0038】
また、先端部外周に突起を設けていない鋼管杭を用い、比較例(試験体1)とした。
なお、載荷試験は、根固め柱側を下として剛性の高い床上に載置し、鋼管杭と根固め柱と間で破壊が発生するまで、鋼管杭の上部に載荷する荷重(図3と同じ方向に力Fを作用させた)を徐々に増大させて行い、鋼管杭と根固め柱と間で破壊が発生したときの最大先端支持荷重を求めた。
【0039】
載荷試験により得られた最大先端支持荷重を表1および図14に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1および図14に示す結果から、発明例(試験体2〜8)の場合には、比較例(試験体1)の場合より高い先端支持力を有することがわかる。
なお、発明例(試験体2〜8)の場合、杭先端部外周に突起が設けてあるので、図3(a)で説明したようにして、杭1に対して作用する下向きの力Fが突起11により根固め柱2の多数の箇所に分散して伝わり、さらに、根固め柱2の径方向にも力が伝播し、その結果、根固め柱2内において、角度αが25〜50°である破断面(図15(a)中の破線)が生じた。一方、比較例(試験体1)の場合、鋼管杭1の先端部外周に突起が設けてないので、図3(b)に示すように、杭の下端にのみ力が伝播し、杭の下端に応力集中が発生し、上記発明例(試験体2〜8)の場合より低い先端支持荷重で割れが生じた。
【0042】
また、発明例(試験体2〜8)の場合において、図15(a)に示すbの長さを調べた結果、b/h=2〜5(hは突起高さ)であった。発明例(試験体2〜8)の場合、突起間の間隔p(ピッチp)を突起高さhの5倍以上(表1ではp/h=7.7 〜33)としたので、図15(a)に模式的に示した角度αが25〜50°である破断面が発生したものと考えられる。
【0043】
また、根固め柱の強度(根固め柱を形成するコンクリート強度)を測定したところ、圧縮強度σcが25N/mm2、割裂強度τcが2.5 N/mm2で、σcc =10であった。突起下のコンクリート圧縮耐力はh×σc、突起間のコンクリートせん断耐力はp×τc(図15(b)参照)で表されることより、この両者の耐力バランスが突起による先端支持力向上に寄与していると考えると、k×(h×σc)=p×τcの関係式において、比例定数k≒0.77〜3.3とすると発明例の場合におけるp/h=7.7〜33にほぼ一致する結果となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)は本発明の基礎杭の構造を示す縦断面模式図であり、(b)は図1のX−X断面図である。
【図2】本発明に用いる鋼管杭の要部断面図であり、(a)と(b)と(c)と(d)とは突起部材が異なる。
【図3】根固め柱に対する力の伝播を示す模式図であり、(a)は鋼管杭先端に突起がある場合(本発明)を、(b)は鋼管杭先端に突起がない場合を示す。
【図4】根固め柱に対する力の伝播を示す模式図である。
【図5】根固め柱に対する力の伝播を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る基礎杭の施工方法を示す説明図である。
【図7】本発明の施工方法に用いるオーガーを示す要部断面図であり、(a)と(b)とはオーガーの撹拌部材の形状が異なる。
【図8】ダブルオーガー回転モーターを示す概略断面図である。
【図9】杭とオーガーをそれぞれ回転させる回転モーターを示す概略断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る基礎杭の施工方法を示す説明図である。
【図11】本発明に用いる他のオーガー例を示す説明図である。
【図12】従来の基礎杭の施工方法を示す説明図であり、(a)は貫入初期の状態、(b)は杭体先端が支持層内の所望深さに到達した状態、(c)はオーガーを引き上げた状態である。
【図13】従来の鋼管杭の先端部に取り付けられた翼の形状を示す斜視図である。
【図14】本発明の基礎杭の効果を示すグラフである。
【図15】本発明の基礎杭における先端支持効果を説明する要部断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 鋼管杭(杭)
11、11A 、11B 、11C 、11D 突起
12 管内ずれ止め
t 突起高さ
L 突起を設けた杭先端からの長さ
2 根固め柱
3 地盤
3A 支持層上端
3B 地面
1 杭径
t 突起を含めた杭先端部の径
2 根固め柱の径
S 根固め柱内における杭先端部挿入長さ
H 根固め柱の高さ
θ 突起巻き付き角度
5 オーガー
51 貫通孔
5A、5B 撹拌部材
6 オーガーヘッド
7 土砂と固化材液との混合物
32 ダブルオーガー回転モーター
33 外軸
34 内軸
35 杭回転モーター
36 オーガー回転モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭と、地盤中の支持層あるいは支持層を含む区間に形成されているとともに、前記鋼管杭の先端部が挿入され、一体化されてなる根固め柱とを有することを特徴とする基礎杭の支持構造。
【請求項2】
前記根固め柱の高さHを前記鋼管杭の杭径D1寸法の1倍以上、5倍以下とすることを特徴とする請求項1に記載の基礎杭の支持構造。
【請求項3】
前記根固め柱の径D2を前記鋼管杭の杭径D1の1.2〜2.0倍とすることを特徴とする請求項1または2に記載の基礎杭の支持構造。
【請求項4】
先端部外周に高さが6mm以上の螺旋状の突起を設けた鋼管杭を地盤中の支持層または支持層を含む区間まで貫入させ、該区間に前記鋼管杭の先端部が挿入された根固め柱を構築する基礎杭の施工方法であって、
前記鋼管杭の中空部にオーガーを挿入し、該オーガーにより地盤を掘削するとともに前記鋼管杭を回転貫入させ、
前記区間にオーガーヘッドが達した段階で、前記オーガーヘッドの掘削径を構築する根固め柱の径相当に拡大し、構築する根固め柱の高さ分だけ掘削するとともに、前記オーガーヘッドより固化液を噴出し、
その後に、前記鋼管杭の先端部を拡大して掘削した区間に残置して前記オーガーを引き抜き、前記固化液を固化させて根固め柱を構築することを特徴とする基礎杭の施工方法。
【請求項5】
先端部外周に高さが6mm以上の突起を設けた鋼管杭を地盤中の支持層または支持層を含む区間まで貫入させ、該区間に前記鋼管杭の先端部が挿入された根固め柱を構築する基礎杭の施工方法であって、
先ず、オーガーにより地盤を掘削し、前記区間にオーガーヘッドが達した段階で、前記オーガーヘッドの掘削径を構築する根固め柱の径相当に拡大し、構築する根固め柱の高さ分だけ掘削するとともに、前記オーガーヘッドより固化液を噴出し、
その後に、前記オーガーを引き抜き、前記固化液が固化する前に前記鋼管杭を掘削した掘削孔に貫入し、前記鋼管杭の先端部を拡大して掘削した区間に挿入し、前記固化液を固化させて根固め柱を構築することを特徴とする基礎杭の施工方法。
【請求項6】
前記根固め柱の高さHを前記鋼管杭の杭径D1寸法の1倍以上、5倍以下とすることを特徴とする請求項4または5に記載の基礎杭の施工方法。
【請求項7】
前記根固め柱の径D2を前記鋼管杭の杭径D1の1.2〜2.0倍とすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の基礎杭の施工方法。
【請求項8】
前記オーガーヘッドは拡翼機構を有し、該オーガーヘッドを拡翼することにより前記区間の掘削を行うことを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の基礎杭の施工方法。
【請求項9】
前記オーガーヘッドは前記固化液を噴射可能な高圧噴射機構を有し、該オーガーヘッドより前記固化液を高圧噴射することにより前記区間の掘削を行うことを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の基礎杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−249928(P2006−249928A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175740(P2006−175740)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【分割の表示】特願2002−86508(P2002−86508)の分割
【原出願日】平成14年3月26日(2002.3.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】