説明

基礎構造物の構築方法

【課題】基礎構造物4の施工において大規模な地盤開削を必要とせず、しかも既存の道路1又は軌道上に高架構造物を構築する場合に、道路又は軌道における交通への影響を軽微に抑えて、安全かつ容易に基礎構造物4の施工を可能とする方法を提供する。
【解決手段】任意の断面形状を有するエレメント410を長手方向に接続した複数の基礎梁41,41を、地中の任意の深さに略水平に、かつ上下に互いに交差させて埋設して互いに連結し、地上に構築される地上構造物と連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレメントの連結によって基礎構造物を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高架式道路等の基礎構造としては、従来から、例えば下記の特許文献1に開示されたような杭基礎によるものが知られている。
【特許文献1】特開2001−49617号公報
【0003】
図3は、特許文献1と同種の、杭基礎による高架式道路の基礎構造を示す断面図で、すなわち、参照符号100は地盤、101は地盤100上に形成された道路、102は高架式道路本体を構成する橋梁、103はこの橋梁102を地盤100上に支持する橋脚柱である。杭基礎による基礎構造は、橋脚柱103の下端と、地中に打設した基礎杭104の杭頭との間を、フーチング105を介して接合している。また、図示の従来構造においては、フーチング105,105間を地中梁106によって水平方向に連結している。なお、図中の参照符号110は、地上道路101あるいは橋梁(高架式道路本体)102上を通行する車両を示している。
【0004】
また、このような杭基礎によるもののほか、比較的地盤100の支持力が大きい場合に採用される直接基礎によるものも知られている。図4は、直接基礎による高架式道路の基礎構造を示す断面図で、すなわちこの基礎構造では、橋脚柱103の下端に形成したフーチング105及びこのフーチング105を水平方向に連結している地中梁106を、地盤100を5m程度の深さに掘削して固結剤等を混合した改良地盤100a上に支持している。
【0005】
しかし、上述した従来の技術によれば、いずれの場合も、基礎工事には大規模な地盤開削を伴うため、例えば既存の地上道路101上に高架式道路を建設する場合は、作業区間となる既存の地上道路101の通行が大規模な車線規制を余儀なくされ、工事中の交通渋滞が避けられなくなるといった問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、基礎構造物の施工において大規模な地盤開削を必要とせず、しかも既存の道路又は軌道上に高架構造物を構築する場合に、道路又は軌道における交通への影響を軽微に抑えて、安全かつ容易に基礎構造物の施工を可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る基礎構造物の構築方法は、任意の断面形状を有するエレメントを長手方向に接続した複数の基礎梁を、地中の任意の深さに略水平に、かつ上下に互いに交差させて埋設して互いに連結し、地上に構築される地上構造物と連結するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明に係る基礎構造物の構築方法によれば、任意の断面形状を有する既製の基礎梁を、地中の任意の深さに略水平に配置することによって、地上構造物を支持する基礎構造物とするものであるため、大規模な地盤開削を必要とせず、容易に施工することができ、複数の基礎梁を上下に互いに交差させて配置して連結することによって、少ない本数の基礎梁でも平面面積が広くかつ支持強度の大きい基礎構造物を構築することができる。しかも、開削面積が少なくて済むため、例えば地上道路上に建設する高架式道路の基礎構造物の場合、既存の地上道路の交通規制を最小限に抑えることができる。また、基礎梁の内部はコンクリートやモルタルを充填しても良いし、電力線、通信線、ガス管、上下水道管などを通す共同溝として利用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る基礎構造物の構築方法を、高架式道路の基礎構造物4の構築に適用した好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、この実施の形態を示す説明図である。
【0010】
図1において、参照符号10は地盤、1は地盤10上に形成された既存の地上道路、2は高架式道路本体を構成する橋梁、3はこの橋梁2を支持する橋脚柱、4は本発明により地中に構築され橋脚柱3を介して橋梁2の荷重を受ける基礎構造物である。なお、図中の参照符号5は、地上道路1あるいは橋梁(高架式道路本体)2上を通行する車両を示している。
【0011】
基礎構造物4は、断面が正方形又は長方形を呈する中空エレメント410を用いて、複数の基礎梁41を、構築予定の橋梁2の延長方向へ延びるように略水平に配置し、その下側に、橋梁2の延長方向に対して直交する方向へ、かつ延長方向に互いに密接するか又は短い間隔で、複数の基礎梁41を埋設し、互いに連結したものである。上側の基礎梁41は、橋脚柱3の真下を通って、前記延長方向へ延びている。
【0012】
各基礎梁41,41は、断面が正方形又は長方形を呈する中空エレメント410を、その長手方向へ直線的に連結したものである。この基礎梁41,41の構築には、推進工法全般を採用可能であるが、以下、施工手順の一例として、公知のHEP(High Speed Element Pull)工法を採用した場合について説明する。図2は、基礎梁41又は41を地中に埋設する工程を示す説明図である。
【0013】
HEP工法により基礎梁を地中に埋設する工程においては、まず図2(A)に示されるように、地盤10に発進立坑11及び到達立坑12が開削され、この発進立坑11と到達立坑12間に水平ボーリングによる複数の小径孔(不図示)を削孔して、それぞれ鋼撚り線61を通し、その一端を、発進立坑11に配置した掘削装置7に結合すると共に、他端を、到達立坑12内に設置した牽引ジャッキ6に接続する。先頭の掘削装置7としては、ケーシングにオーガ等の掘削機構や排土機構を装備した簡易なものが採用可能である。そして、鋼撚り線61を介して牽引ジャッキ6で掘削装置7を牽引しながら、この掘削装置7を駆動することによって、地中掘進を開始する。
【0014】
発進立坑11では、掘削装置7が中空エレメント410の長さ以下の所定距離だけ地中を推進した時点で、その後端に、図2(B)に示されるように、第一段目の中空エレメント410を接続し、更に中空エレメント410の一個分の長さに相当する距離だけ推進した時点で、第一段目の中空エレメント410の後端に、第二段目の中空エレメント410を継ぎ足す。このようにして、中空エレメント410の一個分の長さに相当する距離だけ推進する度に、最後段の中空エレメント410の後端に、次の中空エレメント410を順次継ぎ足して行く。この継ぎ足しは、突合せ溶接や、インサート金具のボルト止め等によって行うことができる。
【0015】
そして図2(C)に示されるように、やがて掘削装置7が到達立坑12内に到達し、第n段目の中空エレメント410までの全ての中空エレメント410を埋設し終えたら、掘削装置7を中空エレメント410から取り外す。このようにして、地盤10内には、長手方向に互いに連結された複数の中空エレメント410からなる基礎梁(基準梁)41が、発進立坑11と到達立坑12間に水平に構築されることになる。
【0016】
そしてこの工程では、発進立坑11及び到達立坑12を開削するだけで、地盤10を広範囲に開削する必要がないため、図1に示される地上道路1の大規模な車線規制を行う必要がなく、このため、交通渋滞の発生を可及的に抑制することができる。
【0017】
基礎梁41の埋設が終わったら、基礎梁41の内部にコンクリートCを充填する。
【0018】
このようにして基礎梁41,41による基礎構造物4の構築が完了したら、図1に示される橋脚柱3の施工予定箇所の地盤10を開削する。そして、この場合の開削は、橋脚柱施工予定箇所のみで行われるため、確保すべき作業領域は比較的狭いもので良く、したがって、この作業においても地上道路1における車線規制を、小規模なものに抑えることができる。
【0019】
次に、上述の開削箇所に橋脚柱3を施工する。この場合、基礎構造物4の基礎梁41における橋脚柱3の施工位置には、予め柱結合孔(図示省略)を設けておき、ここに鉄筋等を通して、橋脚柱3との結合を行うようにする。そして、この場合の柱結合孔は、基礎梁41の内部から作業員がハンマーなどで叩いたりするだけで、簡単に開口させることのできる蓋体で閉塞した構造とすることが好ましい。
【0020】
以上のような工程を経て、順次橋脚柱3を施工し、その上に、図1に示される橋梁2を構築し、既存の地上道路1上への高架式道路の建設を行うものである。そして、上述の方法により構築された基礎構造物4は、橋脚柱3の直下にある基礎梁41に作用する荷重が、これと直交する基礎梁41を介して基礎構造物4全体に伝達され、少ない本数の基礎梁41,41でも平面面積が広くかつ支持強度の大きい基礎構造物4とすることができる。
【0021】
なお、基礎構造物4を構成する基礎梁41,41のうち、一部の基礎梁にはコンクリートCを充填せず、中空とすることができる。そしてこのような中空の基礎梁41の内部空間は、例えば電力線、通信線、ガス管、上下水道管などを通す共同溝として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る基礎構造物の構築方法を、高架式道路の基礎構造物の構築に適用した好ましい実施の形態を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態において、基礎梁を地中に埋設する工程を示す説明図である。
【図3】杭基礎による高架式道路の基礎構造を示す断面図である。(従来技術)
【図4】直接基礎による高架式道路の基礎構造を示す断面図である。(従来技術)
【符号の説明】
【0023】
1 地上道路
2 橋梁
3 橋脚柱
4 基礎構造物
41,41,41 基礎梁
410 中空エレメント
5 車両
6 牽引ジャッキ
61 鋼撚り線
7 掘削装置
10 地盤
11 発進立坑
12 到達立坑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の断面形状を有するエレメントを長手方向に接続した複数の基礎梁を、地中の任意の深さに略水平に、かつ上下に互いに交差させて埋設して互いに連結し、地上に構築される地上構造物と連結することを特徴とする基礎構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−255783(P2008−255783A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181126(P2008−181126)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【分割の表示】特願2003−281462(P2003−281462)の分割
【原出願日】平成15年7月29日(2003.7.29)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】