説明

基礎用あと施工アンカー

【課題】設置物を取り付けるための基礎として十分な強度を確保でき、施工のために既存防水層に形成した穴及びその周囲の防水処理を簡単に行え、しかも重量が軽く、容易に施工でき、工期短縮、低コスト化が可能な基礎用あと施工アンカーの提供。
【解決手段】下地のコンクリート母材に固定された定着用アンカーの雄ねじ部を筒状ベース部品の雌ねじ孔に螺着して固定し、筒状ベース部品の先端側にハット部材を載せ、その天板部の穴を通して筒状ベース部品の雌ねじ孔の先端側に設置物固定用ボルトの螺着用ボルト部をねじ込んで、ハット部材の接地板部が下地の表面に接地された状態でハット部材と設置物固定用ボルトとが下地側に固定され、設置物固定用ボルトの突出ボルト部にカバー部材を外挿し、突出ボルト部にナットを螺着してカバー部材がハット部の先端側を覆うように下地側に固定されるように構成した基礎用あと施工アンカー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あと施工アンカーに係り、コンクリート母材に定着状態にて高い剪断強度を確保することができ、太陽光発電パネル等の比較的大型の設置物をコンクリート母材に固定するための基礎として用いることが可能な基礎用あと施工アンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図14に示すように、ビル等のコンクリート造の建物屋上に太陽光発電パネル、太陽熱温水器等の比較的大型の設置物100を設置する場合、屋根のコンクリートスラブ110(以下、屋根スラブ)上に例えばキュービック状、円錐台状等に形成されたコンクリート製ブロック121にアンカー130が植設された構成の基礎120(以下、基礎ブロックとも言う)を複数設け、前記アンカー130の前記コンクリートブロック121上に突出させた部分(棒状の突出ねじ部131)に、例えば支持フレーム140等の取り付けベースを介して設置物100を固定することが広く行われている。
【0003】
図示例の設置物100は架台101上にパネル状の機器本体102を固定した構造であり、前記アンカー130の突出ねじ部131にナット132を用いて締結固定された前記支持フレーム140上にボルト締結等によって固定して、前記支持フレーム140を介して複数の基礎ブロック120上に支持されている。また、支持フレーム140等の取り付けベースを省略して、架台101をアンカー130の突出ねじ部131に直接締結固定する固定構造が採られることもある。
【0004】
前記基礎ブロック120を屋根スラブ110上に設置する工法としては、概ね、工場等にて作製したものを現場に搬入、設置する工法(以下、置き基礎工法とも言う)、あるいは現場にて配筋、型枠設置、コンクリート打設、脱型、養生を行って作製する工法(以下、現場構築工法とも言う)の2通りである。
前記アンカー130は、基礎ブロック120のコンクリート中に定着固定される部分である定着部を、基礎ブロック120の作製工程にて配筋によって組み立てた鉄筋かごに溶接等によって固定した後、打設コンクリート中に前記定着部を埋設固定するか、コンクリートブロック121を作製した後にあと施工にて固定してコンクリートブロック121に一体的に設けられる。
【0005】
基礎ブロック120にあと施工によって固定するアンカー130(あと施工アンカー)としては、例えば金属拡張アンカー等も使用可能であるが、接着系アンカーが多く用いられている。
なお、キュービック状、円錐台状等に形成された基礎ブロックを用いて設置物の架台を支持する技術としては例えば特許文献1記載のもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−145099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように建物屋上(屋根上)に設けた基礎ブロック上に設置物を固定する構造では、基礎ブロックの重量が大きいため建物躯体に与える負荷が大きく、建物に補強を施す必要が生じたり、場合によっては基礎ブロックを設置できないケースも発生する。
また、置き基礎工法では基礎ブロックの搬送、設置に要する労力が多大であり、一方、現場構築工法では配筋、型枠の組み立てが現場作業となるため工場作製に比べて作業性が悪く、設置物の設置完了までの工事日数の増大、コストの増大を招くといった問題があった。
【0008】
また、置き基礎工法、現場構築工法のいずれでも、コンクリート床上に既設の防水層が存在する場合、基礎ブロックとその周囲の既存防水層との間の防水処理等に手間が掛かるといった問題もある。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みて、設置物を取り付けるための基礎として機能させることができる強度を確保でき、施工のために既存防水層に形成した穴及びその周囲の防水処理を簡単に行え、しかも重量が軽く、容易に施工でき、工期短縮、低コスト化が可能な基礎用あと施工アンカーの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、コンクリート母材を含む下地に取り付ける設置物を支持するための基礎として用いる基礎用あと施工アンカーであって、
前記コンクリート母材に穿設された下穴に挿入して定着される定着部を先端側に有する定着用アンカーと、
前記定着用アンカーの後端側に設けられた雄ねじ部に螺着するための雌ねじ孔が貫設された筒状ベース部品と、
前記筒状ベース部品の前記下地に当接される底部とは反対側の先端面に接する穴付きの天板部と、該天板部の周縁から斜め下方に向けて張設されたテーパ筒部と、該テーパ筒部の先端に張設され、前記下地の表面に接する接地板部とを有するハット部材と、
回転操作部と該回転操作部から両側に突出するボルト部とが一体化されてなり、一方のボルト部である螺着用ボルト部を、前記ハット部材の前記天板部の穴に通して前記筒状ベース部品の先端側から前記雌ねじ孔にねじ込み、両側のボルト部に比べて太く形成された前記回転操作部と前記筒状ベース部品の先端面との間に前記ハット部材の前記天板部を挟み込んで前記筒状ベース部品に固定される設置物固定用ボルトと、
前記ハット部材の少なくとも上部を収納可能なカップ状に形成され、前記設置物固定用ボルトの他方のボルト部である突出ボルト部に挿通される穴を有し、該穴に前記突出ボルト部を挿通し、前記突出ボルト部に螺着したナットの締め付けにより該ナットと前記設置物固定用ボルトの前記回転操作部との間に挟みつけて固定されるカバー部材とを具備したことを特徴とする基礎用あと施工アンカーを提供する。
第2の発明は、前記筒状ベース部品をその前記雌ねじ孔に前記下地に固定された前記定着用アンカーの雄ねじ部を螺着して固定し、前記筒状ベース部品の先端側に前記ハット部材を載せ、前記天板部の穴を通して前記筒状ベース部品の雌ねじ孔の先端側に前記設置物固定用ボルトの前記螺着用ボルト部をねじ込んで、前記筒状ベース部品の先端面と前記設置物固定用ボルトの前記回転操作部との間に前記ハット部材を挟んで締め付けることで前記ハット部材の前記接地板部が前記下地の表面に接地された状態で前記ハット部材と前記設置物固定用ボルトとが前記下地側に固定され、前記設置物固定用ボルトの前記突出ボルト部に前記カバー部材を外挿し、かつ前記突出ボルト部にナットを螺着して該ナットと前記回転操作部との間に前記カバー部材を挟んで締め付けることで、前記カバー部材が前記ハット部の先端側を覆うように前記下地側に固定されるように構成したことを特徴とする第1の発明の基礎用あと施工アンカーを提供する。
第3の発明は、前記下地の前記コンクリート母材の表面に防水層が設けられ、前記下穴は前記防水層を貫通してコンクリート母材に到達するように穿設され、前記筒状ベース部品の底面に当たる部分の防水層が除去されて前記筒状ベース部品の底面がコンクリート母材に接しており、かつ前記ハット部材の前記接地板部の下面が前記防水層に接するように構成されたことを特徴とする前記第1又は第2の発明の基礎用あと施工アンカーを提供する。
第4の発明は、前記筒状ベース部品の前記雌ねじ孔の先端側にパッキンが設けられたことを特徴とする前記第1〜第3のいずれかの発明の基礎用あと施工アンカーを提供する。
第5の発明は、前記ハット部材の前記接地板部よりも外側の下地表面から前記天板部までの全域又は一部領域を覆う新規防水層が設けられたことを特徴とする前記第1〜第4のいずれかの発明の基礎用あと施工アンカーを提供する。
第6の発明は、前記新規防水層の少なくとも一部に補強材が埋設されていることを特徴とする前記第5の発明の基礎用あと施工アンカーを提供する。
第7の発明は、前記新規防水層と前記ハット部材の前記接地板部との間にゴムシートが設けられたことを特徴とする前記第5又は第6の発明の基礎用あと施工アンカーを提供する。
第8の発明は、前記下地が、前記コンクリート母材上に断熱防水層が設けられてなり、前記筒状ベース部品の先端が前記断熱防水層の表面よりも上方に存在し、前記ハット部材の前記接地板部が前記断熱防水層の表面に接地していることを特徴とする前記第1〜第7の発明のいずれかの基礎用あと施工アンカーを提供する。
第9の発明は、前記カバー部材の下端が前記新規防水層に当接していることを特徴とする前記第5〜第8のいずれかの発明の基礎用あと施工アンカーを提供する。
第10の発明は、前記設置物固定用ボルトの回転操作部が、前記ボルト部に螺着された複数のナットによって構成されたことを特徴とする前記第1〜第9の発明のいずれかの基礎用あと施工アンカーを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、定着用アンカーをコンクリート母材に定着させ、この定着用アンカーの雄ねじ部を螺着し固定した筒状ベース部品の先端面にハット部材を載せ、このハット部材の天板部の穴を通して筒状ベース部品の雌ねじ孔の先端側に設置物固定用ボルトの螺着用ボルト部をねじ込み、さらにカバー部材を設置物固定用ボルトの突出ボルト部に外挿し、突出ボルト部にナットを螺着して該ナットを締め付けてカバー部材を固定するだけで基礎部を簡単に組み立てることができる。
コンクリート母材に穿設する下穴は、定着用アンカーを定着し得る最小限の大きさとすることができ、下穴に定着用アンカーを定着し、これを筒状ベース部品、ハット部材及びカバー部材で覆うことで施工箇所廻りの防水処理も簡単に短時間で効率良く行える。このため、高い施工作業性を確保できるとともに、工期短縮を図ることができる。
ハット部材及びカバー部材は中空構造であり、従来のコンクリート製の基礎ブロックに比べて大幅な軽量化を容易に実現でき、しかも、低コスト化も容易に実現できる。また、前記定着用アンカーの先端側を筒状ベース部品で補強し、かつ筒状ベース部品に螺着用ボルト部をねじ込んで固定した設置物固定用ボルトを筒状ベース部品とハット部材とで支持する構成になっているため、高い強度を容易に確保できる。
【0012】
また、この基礎用あと施工アンカーによれば、設置物固定用ボルトの突出ボルト部に取り付けられた設置物から作用した剪断方向の荷重(剪断荷重)が、下地表面に接地板部を接地させたハット部材及び筒状ベース部品に支持された設置物固定用ボルトから定着用アンカーに伝達される構成であり、前記剪断荷重により定着用アンカーのコンクリート母材から外側に突出させた部分(突出部)に作用する回転モーメントをハット部材と定着用アンカーが固定された筒状ベース部品とで分散負担して抵抗力を発揮する。このため、例えば定着用アンカーの突出部に前記剪断荷重が直接作用する構成に比べて、高い剪断強度(剪断耐力)が得られる。
また、定着用アンカーがコンクリート母材に定着固定されることで、コンクリート母材に対する引き抜き強度を確保でき、コンクリート母材表面に沿う方向の位置ずれを防止できることも言うまでも無い。
【0013】
さらに、この基礎用あと施工アンカーによれば、下穴に定着した定着用アンカーの突出部を筒状ベース部品の雌ねじ孔にねじ込み、該雌ねじ孔の先端側から設置物固定用ボルトの螺着用ボルト部をねじ込んで塞ぎ、さらに筒状ベース部品をハット部材13及びカバー部材で覆った構成としたことで、ハット部材の接地板部周辺に防水を施すことで防水処理を簡単に行うことができる。
また、筒状ベース部品とハット部材との間、回転操作部とカップ部材との間にパッキンを設けることで、設置物固定用ボルト側からの浸水を防ぐことができる。従って、この基礎用あと施工アンカーによれば、防水性に優れた基礎部を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る第1実施形態の基礎用あと施工アンカーを説明する図であって、コンクリート床に外側層として防水層が設けられた構成の下地に固定施工した状態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の基礎用あと施工アンカーの分解斜視図である。
【図3】図1の基礎用あと施工アンカーを下地に固定施工する方法を説明する図であって、下地に施工用の下穴を穿設した状態を示す断面図である。
【図4】図3で穿設したの穴底に露出させたコンクリート床に基礎用あと施工アンカーの定着用アンカーを固定し、定着用アンカー後端部の雄ねじ部に螺着した筒状ベース部品を下地表面に当接させた状態を示す図である。
【図5】図4で定着用アンカーに螺着した筒状ベース部品の先端面にハット部材の天板部を載せ、筒状ベース部品の雌ねじ孔と天板部の穴とを位置合わせした状態を示す図である。
【図6】図5で位置合わせした天板部の穴を通して設置物固定用ボルトの螺着用ボルト部をねじ込んだ状態を示す図である。
【図7】設置物固定用ボルトの突出ボルト部にハット部材を外挿し、さらに突出ボルト部にナットを螺着する状態を示す図である。
【図8】ハット部材の上に新規防水層を形成した状態を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明に係る第2実施形態の基礎用あと施工アンカーを説明する図であって、コンクリート床に外側層として断熱防水層が設けられた構成の下地に固定施工した状態を示す断面図である。
【図10】本発明に係る第3実施形態の基礎用あと施工アンカーを説明する図であって、コンクリート床に外側層として防水層が設けられた構成の下地に固定施工した状態を示す断面図である。
【図11】本発明に係る第1〜第3実施形態の基礎用あと施工アンカーで用いた設置物固定用ボルトの別の変形例を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る第4実施形態の基礎用あと施工アンカーを説明する図であって、コンクリート床に外側層として防水層が設けられた構成の下地に固定施工した状態を示す断面図である。
【図13】建物屋上のコンクリート床(コンクリート母材)に複数固定施工した基礎用あと施工アンカーを利用して、パネル状の機器本体を具備する設置物をコンクリート床に固定設置してなる設置物固定構造の一例を示す全体図である。
【図14】コンクリート製基礎ブロックを用いて設置物を建物屋上のコンクリート床上に設置する設置構造の一例を説明する全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る基礎用あと施工アンカーの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図1〜図13において、図中、上側を上、下側を下として説明する。
図1〜図8及び図13は、本発明に係る第1実施形態の基礎用あと施工アンカーを説明する図であって、コンクリート床に外側層として防水層が設けられた構成の下地に固定施工した状態を示す断面図である。
【0016】
図13に示すように、この基礎用あと施工アンカー40a(以下、単に基礎用アンカーとも言う)は、コンクリート構造物に固定施工して、コンクリート構造物への設置物43の固定に用いられるものである。
この基礎用アンカー40aは、コンクリート床2(コンクリート母材)自体あるいはコンクリート床2上に防水層3が設けられた構成の下地1(防水層付きコンクリート母材)に固定施工することで、下地1に対する設置物43の固定に好適に用いることができる。図1、図3〜図8、図13に例示した下地1は、コンクリート床2上に防水層3が設けられてなる防水層付きコンクリート母材である。この防水層3は、コンクリート床2上に形成された塗膜防水層あるいは防水シートからなるメンブレン防水層などである。
【0017】
図1は、この下地1に基礎用アンカー40aを固定施工した状態(基礎アンカーの固定構造)、図13は、前記下地1に固定施工した複数の基礎用アンカー40aを利用して下地1に設置物43を固定した固定構造(設置物固定構造)を例示する。
なお、図示例の下地1はコンクリート造建物の陸屋根を例示するが、下地1としては陸屋根に限定されず例えばバルコニー床、道や道路の高架橋等の各種橋梁の床板などであっても良い。
【0018】
図1等に示すように、ここで説明する基礎用アンカー40aは、コンクリート床2に穿設された下穴4に挿入して定着される定着部6を先端側に有する定着用アンカー5と、この定着用アンカー5の後端側に設けられた雄ねじ部7に螺着するための雌ねじ孔8が貫設された筒状ベース部品9と、この筒状ベース部品9の下地1に当接される底部とは反対側の先端面に接する穴10a付きの天板部10とその周縁から斜め下方に向けて張設されたテーパ筒部11とその先端に張設されて下地1の表面に接する接地板部12とを有するハット部材13と、工具を係合して回転操作するための回転操作部14と該回転操作部14から両側に突出するボルト部とが一体化されてなり、一方のボルト部である螺着用ボルト部15をハット部材13の天板部10の穴10aに通して筒状ベース部品9の先端側から雌ねじ孔8にねじ込み、両側のボルト部に比べて太く形成された回転操作部14と筒状ベース部品9の先端面との間にハット部材13の天板部10を挟み込んで筒状ベース部品9に固定される設置物固定用ボルト17と、ハット部材13の少なくとも上部を収納可能なカップ状に形成され、設置物固定用ボルト17の他方のボルト部である突出ボルト部16を挿通する穴18を有し、該穴18に突出ボルト部16を挿通し、突出ボルト部16に螺着したナット19の締め付けにより該ナット19と設置物固定用ボルト17の回転操作部14との間に挟みつけて固定されるカバー部材20とを具備して構成されている。
【0019】
図示例の定着用アンカー5は金属拡張アンカーであり、具体的には、芯棒打ち込み式アンカーを例示している。
前記金属拡張アンカーは、スリーブ状本体の先端部(中心軸線方向片端)に、例えば芯棒の打ち込み、内部コーンの打ち込み、コーンの引き上げ等によって拡張される拡張部を備えるものである。この拡張部が前記定着部6として機能する。以下、定着部6が拡張部を指す場合、拡張部と称して説明する場合がある。
図2、図3に示すように、図示例の芯棒打ち込み式アンカーの定着部6は、スリーブ状本体33内側の内孔34への芯棒35の打ち込みによって拡張される拡張部である。
【0020】
但し、定着用アンカー5として採用可能な金属拡張アンカーとしては芯棒打ち込み式アンカーに限定されず、例えば、コーン引き上げ式アンカー、ウェッジ式アンカー、本体打ち込み式アンカー等、周知のものを採用できる。
また、本発明に係る定着用アンカー5としては、金属拡張アンカーに限定されず接着系アンカーであっても良い。
但し、工期短縮の点では、金属拡張アンカーを採用することがより好ましい。
【0021】
定着用アンカー5としては、定着部6とは反対の後端側に雄ねじ部7が設けられた構成のものを採用する。また、この定着用アンカー5は、コンクリート床2に定着したときに雄ねじ部7の一部又は全部が防水層3の上面から突出するように施工される。
【0022】
金属拡張アンカーの前記雄ねじ部7としては、スリーブ状本体33の後端部にねじ山を形成したものに限定されない。例えば、拡張部の拡張によってコンクリート母材(ここではコンクリート床)に定着固定した本体打ち込み式アンカーのスリーブ状本体にねじ込んで固定したボルト等、コンクリート母材に対する固定後にスリーブ状本体に螺着して設けられるものであっても良い。
【0023】
この定着用アンカー5の雄ねじ部7は、筒状ベース部品9の雌ねじ孔8にねじ込まれている。この筒状ベース部品9は、図2に示すように底部側が先端側よりも太くなった円筒状になっている。この筒状ベース部品9は、金属製の一体成形品であり、その軸線に沿って雌ねじ孔8が形成されている。雌ねじ孔8の先端側には、Oリング21を収容するためのパッキン用凹部8aが形成されている。
【0024】
前記筒状ベース部品9は、基礎用アンカー5の雄ねじ部7を、筒状ベース部品9の底面が下地1の上面に当接するまで雌ねじ孔8の底部側にねじ込んで固定される。これによって、筒状ベース部品9の底面が基礎用アンカー5の突出部で支持されて、該突出部がぐらつかないように安定に保持される。なお、筒状ベース部品9の形状は、円筒状に限定されず、正方形、六角形などの多角形筒状でもよい。
【0025】
前記雌ねじ孔8の先端側に形成されたパッキン用凹部8aに収容されるOリング21は、一般に防水用パッキンとして使用されているOリングを用いることができる。なお、雌ねじ孔8の先端側からの浸水を防止できるのであれば、Oリングに限定されず、別の防水機能を持ったパッキン等を使用してもよい。
【0026】
ハット部材13は、図2に示すように、中央に穴10aが設けられた円形の天板部10と、その周縁から斜め下方に張設されたテーパ筒部11と、該テーパ筒部11の周縁から水平方向に向けて張設された接地板部12とを有する金属製の一体成形品である。このハット部材13は、天板部10を上向きにして水平な面に置いた時、接地板部12が該水平な面上に接地され、テーパ筒部11は天板部10に向かうに従って水平な面から漸次上方に向けて離間するようになっている。また、天板部10の高さは、天板部10を前記筒状ベース部品9の先端面に載せた状態で、接地板部12が下地1の上面に接するようになっていることが好ましい。
【0027】
設置物固定用ボルト17は、多角形(図示した例では六角形)柱状の回転操作部14と、その両側から突出したボルト部とを有してなる。一方のボルト部は、前記筒状ベース部品9の雌ねじ孔8の先端側にねじ込まれる螺着用ボルト部15であり、他方のボルト部は、設置物43の取り付けに用いるための突出ボルト部16である。回転操作部14は、螺着用ボルト部15及び突出ボルト部16よりも太くなっている。
【0028】
設置物固定用ボルト17の螺着用ボルト部15は、ハット部材13の天板部10に設けた穴10aを通して雌ねじ孔8の先端側にねじ込まれ、これによって設置物固定用ボルト17は、定着用アンカー5及び筒状ベース部品9を介して下地1側に固定される。
【0029】
設置物固定用ボルト17の突出ボルト部16には、パッキン37及びカバー部材20が外挿される。
このパッキン37は、一般に防水用パッキンとして使用されているものを使用できる。なお、本例示では円環状のパッキン37を突出ボルト部16に外挿しているが、パッキン37はカバー部材20の穴18から内側への浸水を防止できればよく、本例示に限定されない。
【0030】
カバー部材20は、図2に示すように、中央に穴18が設けられた円形の天蓋部分とその周縁から垂下する筒状部分とからなるカップ形状をなしている金属製の一体成形品である。なお、カバー部材20は、降水又は降雪時、雨水等がハット部材13の天板部11側に侵入するのを防止できればよく、カバー部材20の形状や構造は本例示のみに限定されない。
【0031】
カバー部材20は、突出ボルト部16に螺着されたナット19の締め付けにより、このナット19と前記回転操作部14の上面との間に、このカバー部材20の天蓋部分が挟まれ、これによって設置物固定用ボルト17を介して下地1側に固定される。
【0032】
この基礎用アンカー40aにおいて、ハット部材13の接地板部12とテーパ筒部11の上面側には新規防水層22が設けられている。図8に示すように、この新規防水層22は、ハット部材13の接地板部12よりも外側の下地1の防水層3から、図1に示すようにハット部材13のテーパ筒部11上端付近までを被覆するように設けられている。なお、新規防水層22は、カバー部材20によりカバーされていない所までは覆われることが好ましい。この新規防水層22は、塗膜防水層あるいは防水シートからなるメンブレン防水層を形成したものでよいが、防水工事の容易さや工期の短さなどの点から、ウレタン塗膜による塗膜防水層とすることが好ましい。
【0033】
この新規防水層22には、図8に示すように、補強材32を埋設しておくことが好ましい。この補強材32としては、ポリアミド繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維などのメッシュ材を用いることが好ましい。新規防水層22にこのような補強材32を埋設しておくことで、ウレタン塗膜による塗膜防水層などからなる新規防水層22の連続性が良好に保たれ、特に、接地板部12の端と下地上面との間の段差が緩和されて新規防水層22が破れ難くなる。
【0034】
この新規防水層22を形成するにあたり、図8に示すように、接地板部12よりも外側の下地表面から接地板部12上面全体または上面先端部までの領域に、ゴムシート39を配置しておいても良い。このように接地板部12の先端部周辺にゴムシート39を設けておくことで、新規防水層22とハット部材13との間で若干の変位が生じた場合でも、ゴムシート39によってその変位を緩和でき、基礎用アンカー40aに設置物43を取り付けた場合や設置物43に強風などの外力が加わった際などでハット部材13が若干変位した場合でも、新規防水層22の連続性を維持できるようになる。
【0035】
この基礎用アンカー40aは、図13に示すように、ビル等のコンクリート造の建物屋上に太陽光発電パネル、太陽熱温水器等の比較的大型の設置物43を設置する場合に、その下地1に前記基礎用アンカー40aを複数設け、その突出ボルト部16に支持フレーム44等の取り付けベースを介して設置物43を固定するために用いられる。
図示例の設置物43は、架台42上にパネル状の機器本体41を固定した構造であり、前記基礎用アンカー40aの突出ねじ部16にナット45を用いて締結固定された前記支持フレーム44上にボルト締結等によって固定して、前記支持フレーム44を介して複数の基礎用アンカー40a上に支持されている。また、支持フレーム44等の取り付けベースを省略して、架台42を基礎用アンカー40aの突出ねじ部16に直接締結固定する固定構造とすることもできる。
【0036】
次に、下地1にあと施工にて基礎用アンカー40aを固定施工する方法(基礎用アンカーの固定施工方法)の一例を説明する。
まず、図3に示すように、ドリル等を用いて前記下地1のコンクリート床2に下穴4を穿設する。また、筒状ベース部品9の底面と接する下穴4周囲の防水層3を除去しておく。
次に、穿設した下穴4に接着剤36を注入し、続いて定着用アンカー5の定着部6を下穴4内に挿入する。この定着用アンカー5の雄ねじ部7は、図示したように筒状ベース部品9の雌ねじ孔8にねじ込んでおいてもよい。
【0037】
次に、図4に示すように、筒状ベース部品9の雌ねじ孔8内に打込み治具38の先端部を挿入し、前記雌ねじ孔8内にある定着用アンカー5の芯棒35に前記先端を当接して打ち込む。定着用アンカー5のスリーブ状本体33の内孔34に挿入された芯棒35の打ち込みによって、定着用アンカー5のスリーブ状本体33を拡張させ、その定着部6の機械的固着力により定着用アンカー5をコンクリート床2に固定させる(図4に示す状態)。また、これにより、定着用アンカー5の雄ねじ部7が雌ねじ孔8にねじ込まれた筒状ベース部品9がコンクリート床2に対して固定される。
【0038】
前記定着用アンカー5のコンクリート床2に対する固定作業は、下穴4に硬化性の液状の接着剤36を充填した後に定着用アンカー5を下穴4に挿入し、スリーブ状本体33の拡張による定着固定作業を行う。
ここで用いる接着剤36としては、液状の状態で下穴4に充填されて硬化することで、防水性を発現するとともに、定着用アンカー5をコンクリート床2に接着固定する接着剤としても機能するものを好適に採用できる。このような接着剤36としては、例えば2液あるいは3液以上を混合してなる反応硬化型の硬化性液状樹脂材料(エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等)や、セメント系のもの(主剤がセメント、硬化剤が水あるいは水ガラス)を採用可能である。但し、接着剤36は、コンクリート床2及び定着用アンカー5の材質によって選択されるものであり、コンクリート床2及び定着用アンカー5の材質に応じて適宜変更可能である。
【0039】
接着剤36を充填した下穴4に定着用アンカー5を挿入し、該定着用アンカー5のスリーブ状本体33を拡張してコンクリート床2に固定する構成であれば、スリーブ状本体33の拡張によってコンクリート床2に対する定着部6の機械的固着が実現されることで、接着剤36の硬化前であってもコンクリート床2に対する引き抜き強度が確保され、コンクリート床2に対する設置状態も安定するため、その後の工程(前記雌ねじ孔8の先端側に設置物固定用ボルト17の螺着用ボルト部16をねじ込み固定する工程)の作業性を良好に確保できる。
また、接着剤36が硬化すれば、スリーブ状本体33の拡張によってコンクリート床2に対する定着部6の機械的固着力に加えて接着剤36の接着固定力もコンクリート床2に対する定着用アンカー5の引き抜き強度に寄与するため、より高い引き抜き強度を確保できるようになる。
また、前記接着剤36の防水性によって下穴4の防水性を確保できることも言うまでもない。
【0040】
前記定着用アンカー5は、硬化時に防水性及び接着性を発揮する接着剤36を併用してコンクリート床2に固着する構成に限定されず、前記接着剤36を用いることなく、スリーブ状本体33の拡張による定着部6の機械的固着のみによってコンクリート床2に固定しても良い。
下穴4に充填した接着剤36による定着用アンカー5の接着固定、下穴4の防水性確保を行う場合は、前記下穴4は非貫通孔(図3等参照)とする。下穴4への接着剤36の充填を行わない場合は下穴4は非貫通孔、貫通孔のいずれであっても良い。
【0041】
前記筒状ベース部品9の先端側に設けられたパッキン用凹部8aには、予めOリング21を挿入しておいてもよいし、或いは前記螺着用ボルト部15をねじ込むまでのいずれかの工程でOリング21を挿入してもよい。
また、筒状ベース部品9の底面側には、下穴4から溢出した接着剤36を収容可能な凹所を設けておくこともできる。
【0042】
下穴4から溢出して前記凹所に充填された接着剤36が硬化すれば、前記定着用アンカー5のコンクリート床2に対する固着力に加えて、筒状ベース部品9と下地1との接着固定力もコンクリート床2に対する基礎用アンカー40aの引き抜き強度に寄与するため、より高い引き抜き強度を確保できる。また、接着剤36によって下穴4のみならず下穴4の開口部付近の防水性も確実に確保できる利点もある。
【0043】
コンクリート床2に対する定着用アンカー5及び筒状ベース部品9の固定が完了した後、図5に示すように、筒状ベース部品9の先端面にハット部材13の天板部10が載るように、筒状ベース部品9の上にハット部材13を被せる。そして、ハット部材13の天板部10中央に設けた穴10aと、筒状ベース部品9の雌ねじ孔8とを位置合わせする。
【0044】
次に、図6に示すように、ハット部材13の天板部10中央に設けた穴10aを通して筒状ベース部品9の雌ねじ孔8の先端側に設置物固定用ボルト17の螺着用ボルト部15をねじ込む。雌ねじ孔8に螺着用ボルト部15をねじ込み、締め付けるには、設置物固定用ボルト17の回転操作部14に周知の螺子締結用工具を係合して締め付けることにより容易に行うことができる。
【0045】
螺着用ボルト部15の締め付けにより、ハット部材13の天板部10が筒状ベース部品9の先端面と回転操作部14の下面との間に挟まれて締め付けが行われ、これによってハット部材13は、定着用アンカー5及び筒状ベース部品9を介して下地1側に固定され、ハット部材13及び設置物固定用ボルト17の下地1に対する固定施工が完了する。
ハット部材13の固定施工が完了した時点で、ハット部材13の接地板部12は下地1上面(防水層3上面)に接地している。また、筒状ベース部品9は、ハット部材13の天板部10及びテーパ筒部11と下地1上面との間に形成された空間に密閉された状態となっている。
ハット部材13の上方に露出している設置物固定用ボルト17の突出ボルト部16には、パッキン37を外挿し、該パッキン37は回転操作部14の上面に載せる。
【0046】
次に、図7に示すように、カバー部材20の穴18を前記突出ボルト部16に通してカバー部材20を外挿する。
次に、前記突出ボルト部16にナット19を螺着し、このナット19をしっかりと締め付け固定する。これにより、カバー部材20の下地1に対する固定施工が完了する。
以上の簡単な操作によって、図1に示すように、下地1にあと施工にて基礎用アンカー40aを固定施工することができる。
【0047】
本実施形態の基礎用アンカー40aによれば、定着用アンカー5をコンクリート床2に定着させ、定着用アンカー5の雄ねじ部を螺着して固定した筒状ベース部品9の先端面にハット部材13を載せ、このハット部材13の天板部10の穴10aを通して筒状ベース部品9の雌ねじ孔8の先端側に設置物固定用ボルト17の螺着用ボルト部15をねじ込み、さらにカバー部材20を設置物固定用ボルト17の突出ボルト部16に外挿し、突出ボルト部16にナット19を螺着して該ナット19を締め付けてカバー部材20を固定するだけで簡単に組み立てることができるので、工期の短縮化、工事費用の低コスト化を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態の基礎用アンカー40aでは、コンクリート床2に穿設する下穴4を、定着用アンカー5を定着し得る最小限の大きさとすることができ、下穴4に定着用アンカー5を定着し、これを筒状ベース部品9、ハット部材13及びカバー部材20で覆うことで施工箇所廻りの防水処理も簡単に短時間で効率良く行える。このため、高い施工作業性を確保できるとともに、工期短縮を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態の基礎用アンカー40aでは、ハット部材13及びカバー部材20は中空構造であり、従来のコンクリート製の基礎ブロックに比べて大幅な軽量化を容易に実現でき、しかも、低コスト化も容易に実現できる。また、前記定着用アンカー5の先端側を筒状ベース部品9で補強し、かつ筒状ベース部品9に螺着用ボルト部15をねじ込んで固定した設置物固定用ボルト17を筒状ベース部品9とハット部材13とで支持する構成になっているため、高い強度を容易に確保できる。
【0050】
太陽光発電パネル、太陽熱温水器等の比較的大型のパネル状の機器本体41を有する設置物43は強風によってコンクリート床2上面に沿う方向の変位力を受けやすい。このため、設置物43の架台42を支持する基礎としては、コンクリート床2に該コンクリート床2に対する変位を規制して設けられた状態にて、その上部に取り付けられる取付物(支持フレーム44等の取り付けベース、設置物43など)から作用する剪断方向(コンクリート床2上面に沿う方向)の荷重に対して充分な強度(剪断耐力)を有している必要がある。
本実施形態の基礎用アンカー40aによれば、設置物固定用ボルト17の突出ボルト部16に取り付けられた設置物から作用した剪断方向の荷重(剪断荷重)が、下地表面に接地板部12を接地させたハット部材13及び底面が接地された筒状ベース部品9によって支持された設置物固定用ボルト17を介して定着用アンカー5に伝達される構成であり、前記剪断荷重により定着用アンカー5のコンクリート床2から外側に突出させた部分(突出部)に作用する回転モーメントをハット部材13と定着用アンカー5が固定された筒状ベース部品9とで分散負担して抵抗力を発揮する。このため、例えば定着用アンカー5の突出部に前記剪断荷重が直接作用する構成に比べて、高い剪断強度(剪断耐力)が得られる。
また、定着用アンカー5がコンクリート床2に定着固定されることで、コンクリート床2に対する引き抜き強度を確保でき、コンクリート床2表面に沿う方向の位置ずれを防止できることも言うまでも無い。
【0051】
さらに、本実施形態の基礎用アンカー40aによれば、下穴4に定着した定着用アンカー5の雄ねじ部7を筒状ベース部品9の雌ねじ孔8にねじ込み、該雌ねじ孔8の先端側から設置物固定用ボルト17の螺着用ボルト部15をねじ込んで塞ぎ、さらに筒状ベース部品9をハット部材13及びカバー部材で覆った構成としたことで、ハット部材13の接地板部12周辺に新規防水層22を形成することで防水処理を簡単に行うことができる。
【0052】
また、筒状ベース部品9とハット部材13との間、回転操作部14とカップ部材20との間にOリング21やパッキン37を設けることで、設置物固定用ボルト17側からの浸水を防ぐことができる。従って、この基礎用アンカー40aによれば、防水性に優れた基礎部を構成することができる。
【0053】
図9は、本発明に係る第2実施形態の基礎用アンカーを説明する図である。
本実施形態の基礎用アンカー40bは、コンクリート床2上に、断熱層23と防水層3とからなる断熱防水層が設けられた下地1に本発明を適用させた場合を示している。
【0054】
図示例の断熱防水層は、発泡ポリスチレン等の硬質樹脂発泡体からなる断熱材の片面にFRP製の防水層3を一体化した構成の断熱防水パネルをコンクリート床2上面上に複数配列設置して構成されたものである。この断熱防水層において、前記断熱防水パネルの断熱材が断熱防水層の断熱層23を構成している。
但し、断熱防水層としては上述の構成に限定されず、例えば、コンクリート床2上面に複数配列設置した断熱材パネル上に、塗膜防水層あるいは防水シートからなるメンブレン防水層を形成したものであっても良い。
【0055】
本実施形態において、基礎用アンカー40bは、下地1の断熱層23の厚みに対応させて高さを増した筒状ベース部品25を用いたこと以外は、前述した第1実施形態による基礎用アンカー40aと同等とすることができ、同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0056】
本実施形態の基礎用アンカー40bに用いる筒状ベース部品25は、下地1の断熱層23の厚みに対応させて高さを増したこと以外は、前記第1実施形態の基礎用アンカー40aで用いた筒状ベース部品9と同様の構成としてよい。この筒状ベース部品25は、金属製の一体成形品であり、その軸線に沿って雌ねじ孔8が形成されている。雌ねじ孔8の先端側には、Oリング21を収容するためのパッキン用凹部8aが形成されている。
【0057】
また、筒状ベース部品25の底部には、他部よりも太い固定部26が形成されている。その底面には、下穴4から溢出した接着剤36を収容可能な凹所24が設けられている。下穴4から溢出して前記凹所24に充填された接着剤36が硬化すれば、前記定着用アンカー5のコンクリート床2に対する固着力に加えて、筒状ベース部品25と下地1との接着固定力もコンクリート床2に対する基礎用アンカー40aの引き抜き強度に寄与するため、より高い引き抜き強度を確保できる。また、接着剤36によって下穴4のみならず下穴4の開口部付近の防水性も確実に確保できる利点もある。
【0058】
本実施形態の基礎用アンカー40bを下地1に固定するには、まず、防水層3及び断熱層23を貫通する貫通孔を設け、次に下穴4を穿設するが、それ以降の工程は前記第1実施形態の基礎用アンカー40aの場合と同様に行うことができる。
【0059】
本実施形態の基礎用アンカー40bは、前記第1実施形態の基礎用アンカー40aの場合と同様の効果を得ることができる他、下地1の断熱層23の厚みに対応させて高さを増した筒状ベース部品25を用いたことによって、コンクリート床2上に断熱層23と防水層3とを含む断熱防水層が形成された下地1への基礎用アンカー施工が可能になる。
【0060】
図10は、本発明に係る第3実施形態の基礎用アンカーを説明する図である。
本実施形態の基礎用アンカー40cは、カバー部材27として、ハット部材13の上面に設けられた新規防水層22にカバー部材27の下端28が接するものを用い、このカバー部材27とハット部材13との隙間からの雨雪の侵入をより確実に防いだ構成を示している。
【0061】
この基礎用アンカー40cは、カバー部材27の筒状部分の長さを延長し、その下端28がハット部材13の上面に設けられた新規防水層22に接するように構成したこと以外は、前述した第1実施形態の基礎用アンカー40aと同様の構成とすることができ、同じ構成要素には同じ符号を付してある。
【0062】
本実施形態の基礎用アンカー40cは、前述した第1実施形態の基礎用アンカー40aと同じ効果が得られ、さらに、カバー部材27の筒状部分の長さを延長し、その下端28がハット部材13の上面に設けられた新規防水層22に接するように構成したことによって、カバー部材27とハット部材13との隙間からの雨雪の侵入を防ぐことができ、防水機能をより一層高めることができる。
【0063】
図11は、前述した第1〜第3実施形態において用いた設置物固定用ボルト17の変形例を示す図である。
本例による設置物固定用ボルト17は、ゆるみ止めナットもしくは2つのナット29,30を螺着してボルト長さ方向の所定位置で固定し、これら2つのナット29,30によって回転操作部31を構成し、また下側のナット30から突出したボルト部を螺着用ボルト部15とし、上側のナット29から突出したボルト部を突出ボルト部16としている。
本例による設置物固定用ボルト17は、前述した第1〜第3実施形態において用いた設置物固定用ボルト17と同様にして、基礎用アンカー40a,40b,40cの構成要素として用いることができる。
【0064】
図12は、本発明に係る第4実施形態の基礎用アンカーを説明する図である。
本実施形態の基礎用アンカー40dは、設置物固定用ボルト17として、図1〜図10に図示したものと比べ、より外径の大きな円筒形の回転操作部46を備えた設置物固定用ボルト17を用い、この回転操作部46を手で回して設置物固定用ボルト17の螺着用ボルト部15を筒状ベース部品9の雌ねじ孔8にねじ込み、最後にナット19で本締めするように構成されている。
【0065】
また、この回転操作部46は、下面側にOリング50を収容するための外側凹部47と、それよりも中心側の内側凹部48が設けられている。
さらに、回転操作部46の上面側には、前記パッキン37を収容するためのパッキン用凹部49が設けられている。
本実施形態の基礎用アンカー40dは、回転操作部46を前記の通り変更したこと以外は、第1実施形態の基礎用アンカー40aと同様の構成要素を用いて構成することができ、同じ構成要素には同一符号を付してある。
【0066】
本実施形態の基礎用アンカー40dの固定施工方法の一例を説明する。本例では、第1実施形態での下地1と同じく、コンクリート床2表面に防水層3を有する下地1に本実施形態の基礎用アンカー40dを固定する場合を示す。
まず、第1実施形態の基礎用アンカー40aの固定施工方法と同様に、ドリル等を用いて前記下地1のコンクリート床2に下穴4を穿設する。また、筒状ベース部品9の底面と接する下穴4周囲の防水層3を除去しておく。
【0067】
本例による固定施工方法では、筒状ベース部品9に予め接着剤等で定着用アンカー5とハット部材13とを固定し、複合部材を形成しておく。
また、設置物固定用ボルト17は、全ネジボルトに円筒状の回転操作部46を定位置までねじ込んで、接着剤等で固定して作製する。
【0068】
次に、下穴4に接着剤36を注入する。接着剤36としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系接着剤などが好ましい。
次に、この下穴4に、前記複合部材の定着用アンカー5のスリーブ状本体33を挿入し、筒状ベース部品9の雌ねじ孔8内に打込み治具の先端部を挿入し、前記雌ねじ孔8内にある定着用アンカー5の芯棒35に前記先端を当接して打ち込む。定着用アンカー5のスリーブ状本体33の内孔34に挿入された芯棒35の打ち込みによって、定着用アンカー5のスリーブ状本体33を拡張させ、その定着部6の機械的固着力により定着用アンカー5をコンクリート床2に固定させる。
【0069】
次に、設置物固定用ボルト17の螺着用ボルト部15を、ハット部材13の天板部10の穴10aを通して筒状ベース部品9の雌ねじ孔8に螺着する。
この設置物固定用ボルト17の取り付けは、回転操作部46を手で回して行う。回転操作部46の下面側の外側凹部には、Oリング50を挿入し、回転操作部46の上面側のパッキン用凹部49には、パッキン37を挿入する。
【0070】
次に、設置物固定用ボルト17の突出ボルト部16にカバー部材20を挿入し、その後、突出ボルト部16にナット19を螺着し、しっかりと締め付けて設置物固定用ボルト17とカバー部材20を筒状ベース部品9側に固定する。
以上の簡単な操作によって、図12に示すように、下地1にあと施工にて基礎用アンカー40dを固定施工することができる。
【0071】
本実施形態の基礎用アンカー40dは、前記第1実施形態の基礎用アンカー40aと同様の効果が得られ、さらに、外径の大きな回転操作部46を備えた設置物固定用ボルト17を用いて構成したことで、設置物固定用ボルト17をより安定した状態で筒状ベース部材9に固定することができ、突出ボルト部16に取り付けられた設置物から作用した剪断方向の荷重(剪断荷重)により定着用アンカー5のコンクリート床2から外側に突出させた部分(突出部)に作用する回転モーメントに対する抵抗力をより高めることができ、より優れた剪断強度(剪断耐力)が得られる。
また、筒状ベース部品9に予め接着剤等で定着用アンカー5とハット部材13とを固定した複合部材を用い、ナット19を締め付けることで設置物固定用ボルト17とカバー部材20を筒状ベース部品9側に固定するようにしたので、より簡単かつ短時間の工事で下地1にあと施工にて基礎用アンカー40dを固定施工することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…下地、2…コンクリート床(コンクリート母材)、3…防水層、4…下穴、5…定着用アンカー、6…定着部、7…雄ねじ部、8…雌ねじ孔、8a…パッキン用凹部、9…筒状ベース部品、10…天板部、10a…穴、11…テーパ筒部、12…接地板部、13…ハット部材、14…回転操作部、15…螺着用ボルト部、16…突出ボルト部、17…設置物固定用ボルト、18…穴、19…ナット、20…カバー部材、21…Oリング、22…新規防水層、23…断熱層、24…凹所、25…筒状ベース部品、26…固定部、27…カバー部材、28…下端、29…ナット、30…ナット、31…回転操作部、32…補強材、33…スリーブ状本体、34…内孔、35…芯棒、36…接着剤、37…パッキン、38…打込み治具、39…ゴムシート、40a…基礎用アンカー(基礎用あと施工アンカー)、40b…基礎用アンカー(基礎用あと施工アンカー)、40c…基礎用アンカー(基礎用あと施工アンカー)、40d…基礎用アンカー(基礎用あと施工アンカー)、41…機器本体、42…架台、43…設置物、44…支持フレーム、45…ナット、46…回転操作部、47…外側凹部、48…内側凹部、49…パッキン用凹部、50…Oリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート母材を含む下地に取り付ける設置物を支持するための基礎として用いる基礎用あと施工アンカーであって、
前記コンクリート母材に穿設された下穴に挿入して定着される定着部を先端側に有する定着用アンカーと、
前記定着用アンカーの後端側に設けられた雄ねじ部に螺着するための雌ねじ孔が貫設された筒状ベース部品と、
前記筒状ベース部品の前記下地に当接される底部とは反対側の先端面に接する穴付きの天板部と、該天板部の周縁から斜め下方に向けて張設されたテーパ筒部と、該テーパ筒部の先端に張設され、前記下地の表面に接する接地板部とを有するハット部材と、
回転操作部と該回転操作部から両側に突出するボルト部とが一体化されてなり、一方のボルト部である螺着用ボルト部を、前記ハット部材の前記天板部の穴に通して前記筒状ベース部品の先端側から前記雌ねじ孔にねじ込み、両側のボルト部に比べて太く形成された前記回転操作部と前記筒状ベース部品の先端面との間に前記ハット部材の前記天板部を挟み込んで前記筒状ベース部品に固定される設置物固定用ボルトと、
前記ハット部材の少なくとも上部を収納可能なカップ状に形成され、前記設置物固定用ボルトの他方のボルト部である突出ボルト部に挿通される穴を有し、該穴に前記突出ボルト部を挿通し、前記突出ボルト部に螺着したナットの締め付けにより該ナットと前記設置物固定用ボルトの前記回転操作部との間に挟みつけて固定されるカバー部材とを具備したことを特徴とする基礎用あと施工アンカー。
【請求項2】
前記筒状ベース部品をその前記雌ねじ孔に前記下地に固定された前記定着用アンカーの雄ねじ部を螺着して固定し、前記筒状ベース部品の先端側に前記ハット部材を載せ、前記天板部の穴を通して前記筒状ベース部品の雌ねじ孔の先端側に前記設置物固定用ボルトの前記螺着用ボルト部をねじ込んで、前記筒状ベース部品の先端面と前記設置物固定用ボルトの前記回転操作部との間に前記ハット部材を挟んで締め付けることで前記ハット部材の前記接地板部が前記下地の表面に接地された状態で前記ハット部材と前記設置物固定用ボルトとが前記下地側に固定され、前記設置物固定用ボルトの前記突出ボルト部に前記カバー部材を外挿し、かつ前記突出ボルト部にナットを螺着して該ナットと前記回転操作部との間に前記カバー部材を挟んで締め付けることで、前記カバー部材が前記ハット部の先端側を覆うように前記下地側に固定されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項3】
前記下地の前記コンクリート母材の表面に防水層が設けられ、前記下穴は前記防水層を貫通してコンクリート母材に到達するように穿設され、前記筒状ベース部品の底面に当たる部分の防水層が除去されて前記筒状ベース部品の底面がコンクリート母材に接しており、かつ前記ハット部材の前記接地板部の下面が前記防水層に接するように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項4】
前記筒状ベース部品の前記雌ねじ孔の先端側にパッキンが設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項5】
前記ハット部材の前記接地板部よりも外側の下地表面から前記天板部までの全域又は一部領域を覆う新規防水層が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項6】
前記新規防水層の少なくとも一部に補強材が埋設されていることを特徴とする請求項5に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項7】
前記新規防水層と前記ハット部材の前記接地板部との間にゴムシートが設けられたことを特徴とする請求項5又は6に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項8】
前記下地が、前記コンクリート母材上に断熱防水層が設けられてなり、前記筒状ベース部品の先端が前記断熱防水層の表面よりも上方に存在し、前記ハット部材の前記接地板部が前記断熱防水層の表面に接地していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項9】
前記カバー部材の下端が前記新規防水層に当接していることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項10】
前記設置物固定用ボルトの回転操作部が、前記ボルト部に螺着された複数のナットによって構成されたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の基礎用あと施工アンカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−226095(P2011−226095A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94986(P2010−94986)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(390022389)サンコーテクノ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】