説明

基礎用あと施工アンカー

【課題】設置物を支持するための基礎として機能させることができる基礎用あと施工アンカーの提供。
【解決手段】防水層60が設けられる下地3に立設される主柱部材30と、下地3に主柱部材30を固定する定着用アンカー20と、主柱部材30に外挿して下地3に外周部を当接させた状態で、外周部とその周囲に位置する下地3あるいは下地3を覆う外側層の表面との境界部52dを覆う防水層が形成される防水ベース部材50と、主柱部材30の主柱部32にその軸線方向に位置調整して固定されるボルト付き先端部材40と、ボルト付き先端部材40を主柱部材30の主柱部32に固定するための固定部材39とを具備する基礎用あと施工アンカーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あと施工アンカーに係り、コンクリート母材に定着状態にて高い剪断強度を確保することができ、太陽光発電パネル等の比較的大型の設置物をコンクリート母材に固定するための基礎として用いることが可能な基礎用あと施工アンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図37に示すように、ビル等のコンクリート造の建物屋上に太陽光発電パネル、太陽熱温水器等の比較的大型の設置物100を設置する場合、屋根のコンクリートスラブ110(以下、屋根スラブ)上に、例えばキュービック状、円錐台状等に形成されたコンクリートブロック121にアンカーボルト130が植設された構成の基礎120(以下、基礎ブロックとも言う)を複数設け、前記アンカーボルト130の前記コンクリートブロック121上に突出させた部分(突出ボルト部131)に、例えば支持フレーム140等の取り付けベースを介して設置物100を固定することが広く行われている。
【0003】
図示例の設置物100は架台101上にパネル状の機器本体102を固定した構造であり、前記アンカーボルト130の突出ボルト部131にナット132を用いて締結固定された前記支持フレーム140上にボルト締結等によって固定して、前記支持フレーム140を介して複数の基礎ブロック120上に支持されている。また、支持フレーム140等の取り付けベースを省略して、架台101をアンカーボルト130の突出ボルト部131に直接締結固定する固定構造が採られることもある。
【0004】
前記基礎ブロック120を屋根スラブ110上に設置する工法としては、概ね、工場等にて作製したものを現場に搬入、設置する工法(以下、置き基礎工法とも言う)、あるいは現場にて配筋、型枠設置、コンクリート打設、脱型、養生を行って作製する工法(以下、現場構築工法とも言う)の2通りである。
前記アンカーボルト130は、基礎ブロック120のコンクリート中に定着固定される部分である定着部133を、基礎ブロック120の作製工程にて配筋によって組み立てた鉄筋かごに溶接等によって固定した後、打設コンクリート中に前記定着部133を埋設固定するか、コンクリートブロック121を作製した後にあと施工にて固定してコンクリートブロック121に一体的に設けられる。
基礎ブロック120にあと施工によって固定するアンカーボルト130(あと施工アンカー)としては、接着系アンカーを用いることが一般的である。
なお、キュービック状、円錐台状等に形成された基礎ブロックを用いて設置物の架台を支持する技術としては例えば特許文献1記載のもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−145099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように建物屋上(屋根上)に設けた基礎ブロック上に設置物を固定する構造では、基礎ブロックの重量が大きいため建物躯体に与える負荷が大きく、建物に補強を施す必要が生じたり、場合によっては基礎ブロックを設置できないケースも発生する。
また、置き基礎工法は基礎ブロックの搬送、設置に要する労力が多大であり、現場構築工法は配筋、型枠の組み立てが現場作業となるため工場作製に比べて作業性が悪く、設置物の設置完了までの工事日数の増大、コストの増大を招くといった問題があった。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みて、設置物を支持するための基礎として機能させることができる強度を確保でき、しかも重量が軽く、容易に施工でき、工期短縮、低コスト化が可能な基礎用あと施工アンカーの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
本発明は、防水層が設けられる下地に設置物を固定するための基礎として用いることができる基礎用あと施工アンカーであって、前記下地に立設される主柱部材と、前記下地に前記主柱部材の片端の基端側当接部を固定する定着用アンカーと、前記主柱部材の前記基端側当接部から延出する主柱部に外挿される外挿筒部の片端の全周から防水用張出部が張り出され、前記主柱部材に外挿し、前記防水用張出部の外周部を、前記下地あるいは前記下地を覆う外側層に当接させた状態で、前記防水用張出部の外周部とその周囲に位置する前記下地あるいは前記外側層との境界部を覆うカバー防水層が形成される防水ベース部材と、前記主柱部材の前記主柱部にその軸線方向に位置調整して固定される取付部の先端にボルト部が突設されたボルト付き先端部材と、このボルト付き先端部材の前記取付部を前記主柱部材の主柱部に固定するための固定部材とを具備することを特徴する基礎用あと施工アンカーを提供する。
本発明は、前記主柱部材の主柱部は前記ボルト付き先端部材の取付部を螺着するための雌ねじ孔又は雄ねじ部を有し、前記ボルト付き先端部材の取付部は、回転によって前記主柱部材の主柱部に対する螺着位置を変更することで、主柱部材の主柱部の軸線方向への位置調整が実現される構成も採用可能である。
本発明は、前記主柱部材の前記主柱部及び前記ボルト付き先端部材の取付部の一方が他方を収納可能な筒形部とされ、前記固定部材は、前記筒形部にその肉厚を貫通して形成されたねじ孔に螺合する固定用ねじであり、その先端で前記筒形部の内側の前記主柱部又は前記ボルト付き先端部材の取付部を押圧して前記筒形部に固定する構成も採用可能である。
本発明は、前記主柱部材の主柱部が、前記ボルト付き先端部材の取付部を収納可能な筒状に形成され、前記固定部材は、前記ボルト付き先端部材の取付部外周に形成された雄ねじ部に螺合した状態で前記主柱部材の主柱部の先端に当接させ締め付けることで前記取付部を前記主柱部に固定する固定用ナットである構成も採用可能である。
本発明は、前記ボルト付き先端部材の取付部は前記ボルト部に比べて外形が太い棒状又は筒状に形成されている構成も採用可能である。
本発明は、前記ボルト付き先端部材の前記主柱部材先端から突出された部分に取り付けられることで、前記ボルト付き先端部材の外周面と前記主柱部材の主柱部の外周面との境界を覆うカップ状カバーを具備する構成も採用可能である。
本発明は、前記防水ベース部材を前記主柱部材の主柱部に固定する防水ベース固定部材を備えている構成も採用可能である。
本発明は、前記主柱部材の主柱部に外挿されることで前記カバー防水層の内周端を覆うカップ状に形成されその開口縁部が前記カバー防水層に当接される防水層カバーを有する構成も採用可能である。本発明は、さらに、前記主柱部材に取り付けられて、前記防水層カバーをカバー防水層に向かって押圧する防水層カバー押圧機構を具備する構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、定着用アンカーを用いて主柱部材を下地に固定、立設し、この主柱部材の支柱部にその軸線方向にボルト付き先端部材を位置調整して固定部材により固定するだけで、主柱部材とボルト付き先端部材とからなる基礎部を簡単に組み立てることができる。このため、高い施工作業性を確保でき、工期短縮を図ることができる。基礎部は、主柱部材の主柱部の軸線方向においてボルト付き先端部材の取付部の少なくとも一部が前記主柱部と重なり合った状態で、固定部材を用いて前記取付部を主柱部に固定して組み立てることで、高い強度を容易に確保できる。基礎部は、従来のコンクリート製の基礎ブロックに比べて大幅な軽量化、低コスト化を実現できる。
【0010】
また、前記基礎部は、ボルト付き先端部材に取り付けられた設置物から作用する剪断方向の荷重(剪断荷重)がボルト付き先端部材から主柱部材に伝達される構造であり、設置物からの剪断荷重を、下地に当接された主柱部材の基端側当接部と定着用アンカーとが分散負担して抵抗力を発揮する。このため、基礎部は、高い剪断強度(剪断耐力)を確保できる。
【0011】
また、設置物が取り付けられるボルト付き先端部材は、主柱部材に対してその軸線方向に位置調整することで、下地に対する高さ調整が容易である。このため、この基礎用あと施工アンカーは、設置物の支持高さ(下地からの距離)に対する汎用性を確保できる。
また、この基礎用あと施工アンカーは、防水ベース部材も、支柱部材の支柱部に対してその軸線方向に位置調整可能であり、しかも、ボルト付き先端部材、防水ベース部材は、それぞれ個々に支柱部材の支柱部に対する軸線方向の位置調整を行える。このため、この基礎用あと施工アンカーにおいて、ボルト付き先端部材の主柱部材に対するその軸線方向への位置調整は、下地あるいは下地に設けられた外側層に外周部を当接させた防水ベース部材に対する自由度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の基礎用あと施工アンカーを屋根スラブ(下地)上に施工した(組み立てた)状態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の定着用アンカーの固定段階を示す断面図である。
【図3】第1実施形態の定着用アンカーと基端側当接部との組み付けを示す斜視図である。
【図4】第1実施形態の主柱部材の固定段階を示す断面図である。
【図5】第1実施形態の主柱部材の主柱部を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態の主柱部材の主柱部に外挿した防水ベース部材の防水用張出部を下地に当接させ、防水用張出部の外周とその周囲に位置する下地表面との境界を覆う防水層(カバー防水層)を形成する段階を示す断面図である。
【図7】第1実施形態の防水ベース部材を示す斜視図である。
【図8】第1実施形態の主柱部材の主柱部にボルト付き先端部材を取り付ける段階を示す断面図である。
【図9】第1実施形態のボルト付き先端部材を示す斜視図である。
【図10】第1実施形態のカップ状カバーを取り付ける状態を示す斜視図である。
【図11】第1実施形態のカップ状カバーを示す斜視図である。
【図12】第1実施形態によって設置物を支持した状態を示す断面図である。
【図13】第1実施形態の基礎用あと施工アンカーの、下地表面(上面)に外側層が設けられた構成の施工対象構造物に対する施工状態の一例を示す断面図である。
【図14】本発明の第2実施形態の基礎用あと施工アンカーを示す断面図である。
【図15】第2実施形態の定着用アンカーの固定段階を示す断面図である。
【図16】第2実施形態の定着用アンカーと基端側当接部との組み付けを示す斜視図である。
【図17】第2実施形態の主柱部材の固定段階を示す断面図である。
【図18】第2実施形態の主柱部材の主柱部を示す斜視図である。
【図19】第2実施形態の防水ベース部材の固定段階を示す断面図である。
【図20】第2実施形態の防水ベース部材を示す斜視図である。
【図21】第2実施形態のボルト付き先端部材を取り付ける段階を示す断面図である。
【図22】第2実施形態の固定用ナットを取り付ける状態を示す斜視図である。
【図23】第2実施形態の固定用ナットを示す斜視図である。
【図24】本発明の第3実施形態の基礎用あと施工アンカーを示す断面図である。
【図25】本発明の第4実施形態の基礎用あと施工アンカーを示す断面図である。
【図26】本発明の第5実施形態の基礎用あと施工アンカーを示す断面図である。
【図27】第5実施形態の定着用アンカーを固定する段階を示す断面図である。
【図28】第5実施形態の主柱部材を示す斜視図である。
【図29】第5実施形態の防水ベース部材を取り付ける段階を示す断面図である。
【図30】第5実施形態の防水ベース部材を示す斜視図である。
【図31】第5実施形態の防水ベース部材に対するカバー防水層の施工後に固定用ブロックを取り付ける状態を示す断面図である。
【図32】第5実施形態の固定用ブロックを示す平面図である。
【図33】第5実施形態の固定用ブロックを示す正面図である。
【図34】第5実施形態の防水層カバーを取り付ける段階を示す断面図である。
【図35】第5実施形態の防水層カバーを示す斜視図である。
【図36】第5実施形態のボルト付き先端部材を取り付ける段階を示す断面図である。
【図37】基礎ブロックを用いた設置物の支持状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る基礎用あと施工アンカーの1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の基礎用あと施工アンカー10(以下、基礎用アンカーとも言う)を示す。この基礎用アンカー10は、表面に防水層が施工される下地3に組み立てられて、下地3に対し設置物2を固定するために用いられる。図1に例示するこの実施形態の基礎用アンカー10は、図12に示すように、前記下地3としてコンクリート構造物1のコンクリート母材に対し設置物2を固定するために用いられる。
図1、図12に例示するコンクリート母材3は、具体的には、ビル等のコンクリート造建物(コンクリート構造物1)の屋根スラブである。図1、図12において、基礎用アンカー10は、屋根スラブ上に組み立てられている。
以下、図1、図2、図4、図6、図8、図10、図12において、上側を上、下側を下として説明する。また、図13についても、上側を上、下側を下として説明する。
【0015】
図示例のコンクリート母材3は、具体的にはコンクリート造建物の陸屋根を例示する。但し、下地として機能するコンクリート母材としては陸屋根に限定されず、例えばバルコニー床、道や道路の高架橋等の各種橋梁の床版などであっても良い。また、下地(ここではコンクリート母材3)は、その上面が水平面であるものに限定されず、例えば水勾配を以て傾斜する傾斜面となっている勾配屋根等であっても良い。
【0016】
図13は、コンクリート構造物1(コンクリート造建物)の、屋根スラブ(コンクリート母材3)上に断熱材層5aと防水層5bとを有する外側層5を設けた構成の陸屋根に、基礎用アンカー10を組み立てて施工した状態を示す。
外側層5は、コンクリート母材3上に敷設状態に設けられた断熱材層5a上に該断熱材層5aを覆う防水層5bを形成したもの(以下、断熱防水層とも言う)である。なお、断熱防水層としては、発泡ポリスチレン等の硬質樹脂発泡体からなる断熱材プレートの片面に繊維強化樹脂(FRP)等の防水層(既存防水層)が設けられたパネルを複数敷き並べ、パネル間に防水処理を施したものであっても良い。
基礎用アンカー10は、外側層5にその上下に貫設された施工用穴5cの穴底に位置するコンクリート母材3に定着用アンカー20を用いて固定して前記コンクリート母材3上に立設した主柱部材30に、ボルト付き先端部材40と、防水ベース部材50と、カップ状カバー70とを設けて組み立てられている。
【0017】
図1、図13に示すように、基礎用アンカー10を施工する対象の構造物(以下、施工対象構造物)としては、図1に例示した下地3、及び図13に例示したように下地3に外側層5を設けたもの、のいずれも適用可能である。
この実施形態の基礎用アンカー10は、コンクリート母材3に固定して立設される主柱部材30と、この主柱部材30をコンクリート母材3に固定するための定着用アンカー20と、主柱部材30のコンクリート母材3に当接される基端側当接部31から延出する主柱部32の先端に固定されるボルト付き先端部材40と、主柱部材30に外挿される防水ベース部材50とを備えている。また、この基礎用アンカー10は、ボルト付き先端部材40に取り付けられるカップ状カバー70も有している。
【0018】
図示例の定着用アンカー20は金属拡張アンカーであり、具体的には、芯棒打ち込み式アンカーを例示している。
前記金属拡張アンカーは、スリーブ状本体の中心軸線方向片端の先端部に、例えば芯棒の打ち込み、内部コーンの打ち込み、コーンの引き上げ等によって拡張される拡張部を備える。この金属拡張アンカーは、コンクリート母材3にその表面(図示例では上面3a)側から穿孔された下孔11に、スリーブ状本体をその先端部から挿入し、前記拡張部を拡張してコンクリート母材3に食い込ませることでコンクリート母材3に固着する。金属拡張アンカーにおいて、拡張部は、コンクリート母材3に定着、固定するための定着部21として機能する。以下、定着部21が拡張部を指す場合、拡張部と称して説明する場合がある。
【0019】
図2に示すように、図示例の芯棒打ち込み式アンカーの定着部21は、スリーブ状本体23内側の内孔23aへの芯棒24の打ち込みによって拡張される拡張部である。前記内孔23aは、スリーブ状本体23の後端に開口している。
図1及び図2に示すように、芯棒打ち込み式アンカーは、スリーブ状本体23を先端側からコンクリート母材3の下孔11に挿入した後、スリーブ状本体23の内孔23aに挿入された芯棒24を、スリーブ状本体23後側からの叩打によって打ち込んで拡張部を拡張させることで、コンクリート母材3に固着する。
定着用アンカー20としての金属拡張アンカーは、その後端側から、先端側の拡張部を拡張する作業を行える構成のものである。
【0020】
定着用アンカー20として採用可能な金属拡張アンカーとしては芯棒打ち込み式アンカーに限定されず、例えば、コーン引き上げ式アンカー、ウェッジ式アンカー、本体打ち込み式アンカー等、周知のものを採用できる。
また、本発明に係る定着用アンカー20としては、金属拡張アンカーに限定されず接着系アンカーであっても良い。
但し、工期短縮の点では、金属拡張アンカーを採用することがより好ましい。
【0021】
図示例の定着用アンカー20は、スリーブ状本体23の定着部21とは反対の後端部外周に雄ねじ部22が形成されたボルト部を有している。この定着用アンカー20は、下地(コンクリート母材3)に固着したときにボルト部の一部又は全部が下地の上面3aから突出するように施工される。
【0022】
金属拡張アンカーの前記ボルト部としては、拡張部が形成されたスリーブ状本体の後端部に雄ねじ部22を形成したものに限定されない。ボルト部としては、例えば、拡張部の拡張によってコンクリート母材(ここではコンクリートスラブ)に定着固定した本体打ち込み式アンカーのスリーブ状本体にねじ込んで固定したボルト等、コンクリート母材に対する固定後にスリーブ状本体に螺着して設けられるものであっても良い。
【0023】
図示例の基礎用アンカー10の主柱部材30は、リング板状のベース部33の片面側にスリーブ状(円筒状)の筒状ねじ部34を突設した構成の基端側当接部31と、この基端側当接部31の筒状ねじ部34に螺着して基端側当接部31に固定される筒状(具体的には円筒状)の主柱部32とを備えている。基端側当接部31及び主柱部32は、それぞれ金属製の部材である。
【0024】
図1〜図3に示すように、図示例の基端側当接部31は金属製の一体成形品である。但し、基端側当接部31は、複数の部材によって組み立てられたものであっても良い。
この基端側当接部31の筒状ねじ部34は、ベース部33の下地表面(コンクリート母材表面)に当接される底面33bとは反対の表面33a側に突出されている。
また、基端側当接部31には、筒状ねじ部34内側の孔部がリング板状のベース部33内側の孔部と同一の内径を以て連続してなるアンカー孔35が貫設されており、このアンカー孔35に基端側当接部31を下地3に固定する定着用アンカー20が挿入される。
基端側当接部31の前記ベース部33は、前記アンカー孔35の径方向において前記筒状ねじ部34よりも外側にフランジ状に張り出されている。
【0025】
図1、図2に示すように、図示例の基端側当接部31のアンカー孔35は具体的には、その軸線方向全長にわたって内周面に雌ねじ部が形成された雌ねじ孔(以下、アンカー孔35を雌ねじ孔とも言う)である。定着用アンカー20は、スリーブ状本体23後端部の雄ねじ部22を基端側当接部31の雌ねじ孔35の雌ねじ部に螺合させて基端側当接部31に螺着できる。
また、筒状ねじ部34の外周面には、主柱部32を螺着するための外ねじ部36(雄ねじ部)が形成されている。
【0026】
図1及び図5に示すように、図示例の主柱部材30において、主柱部32は基端側当接部31とは別体の円筒状の部材であり、その内周面に内ねじ部38(雌ねじ部)が形成されている。前記内ねじ部38は、主柱部32の軸線方向全長にわたって形成されている。
前記主柱部32は、内ねじ部38を基端側当接部31の筒状ねじ部34外周の外ねじ部36に螺合させ、締め付けることにより基端側当接部31に立設状態で固定される。
【0027】
図示例の主柱部材30は、例えば、定着用アンカー20によって下地3に固定した基端側当接部31の筒状ねじ部34に主柱部32を螺着して組み立てることで、下地3に立設状態に設けられる。
基端側当接部31に主柱部32を一体化してなる主柱部材30は、その中心軸線(主柱部32の中心軸線に一致)に垂直の方向において、基端側当接部31のベース部33が前記筒状ねじ部31から外側に張り出された部分(張出部)を有する構造となっている。このように、軸線方向基端側(基端側当接部31の側)に張出部を有する主柱部材30の構造は、ボルト付き先端部材40のボルト部43(後述)に取り付けられる設置物2等の取付物から作用する剪断荷重に対する剪断耐力の確保に有利である。
なお、図示例の基端側当接部31のベース部33は、筒状ねじ部34と同心円状のリング板状に形成されているが、ベース部33の外周形状は筒状ねじ部34と同心円状に限定されず、適宜、変更可能である。
【0028】
図1、図9に示すように、ボルト付き先端部材40は、金属によって形成された所定長さの円柱状の取付部42と、取付部42の先端部に突設されたボルト部43とによって形成されている。ボルト部43は、取付部42よりも外形が細いボルトが使用される。
前記ボルト付き先端部材40の取付部42の外周には、主柱部材30の主柱部32の内ねじ部38に螺合可能な外ねじ部45(雄ねじ部)が形成されている。ボルト付き先端部材40は、前記取付部42を、基端側当接部31に螺着した主柱部32の基端側当接部31とは反対側の端部(先端部)から、その内側にねじ込んで主柱部32に螺着される。
【0029】
図5に示すように主柱部32の先端部には、主柱部32内側にねじ込んだボルト付き先端部材40の取付部42を主柱部32に固定するための固定用ねじ41が螺合される固定用ねじ孔39が形成されている。図4、図5に示すように、固定用ねじ孔39は、主柱部32の肉厚を貫通して形成されている。図8に示すように、前記固定用ねじ41は、固定用ねじ孔39に螺合して、主柱部32外側から固定用ねじ孔39奥側(主柱部32内側)へねじ込み操作することで、その先端で、主柱部32内側にねじ込んだボルト付き先端部材40の取付部42を押圧して、主柱部32に固定するものである。
【0030】
図8、図9に示すように、図示例のボルト付き先端部材40のボルト部43は、その長手方向の片端の端部を、取付部42の軸線方向片端の端面から窪む螺着孔44にねじ込んで締め付け固定して、取付部42に突設されている。螺着孔44の内周面には、ボルト付き先端部材40のボルト部43外周の雄ねじ部が螺合可能な雌ねじ部44aが形成されている。
前記取付部42の軸線方向両端の端面のうち、前記ボルト部43が突設されている面を、以下、先端面42aとも言う。
なお、図8に示すように、図示例のボルト付き先端部材40の取付部42の螺着孔44は、その孔奥底部に、雌ねじ部44aが内周面に螺刻されていない領域(ねじ無し部44b)を有している。ボルト部43は、その外周の雄ねじ部が螺着孔44のねじ無し部44bに突き当たることで、螺着孔44へのそれ以上のねじ込みが規制される。
【0031】
前記取付部42の螺着孔44内にはボルト部43を接着固定するための接着剤を充填しても良い。この場合、接着剤は防水性を有するものを採用することが好ましい。
ボルト部43と取付部42とは金属により一体形成しても良く、この場合には、取付部42に螺着孔44を形成する必要がなくなる。
【0032】
取付部42外周の外ねじ部45は、棒状(具体的には円柱状)の取付部42の全長にわたって形成されている。ボルト付き先端部材40は、取付部42外周の外ねじ部45を主柱部32の内ねじ部38に螺合させて、取付部42の主柱部32に対する螺合長(ねじ込み長)、すなわち主柱部32の軸線方向において主柱部32に対して取付部42が重なり合った部分の長さを調整することにより、主柱部32に対してその軸線方向に位置調整できる。つまり、ボルト付き先端部材40は、コンクリート母材3に固定して立設した主柱部32に取り付けるとき、主柱部32に対する取付部42の螺合長の調整によって、主柱部32に対して高さ調整可能である。そして、ボルト付き先端部材40は、かかる高さ調整の後、固定用ねじ41を主柱部32の固定用ねじ孔39に螺合状態の固定用ねじ41のねじ込みにより、主柱部32に対して所望の位置(高さ)で固定できる。
前記主柱部材30の前記主柱部32は、前記ボルト付き先端部材40の取付部42を収納可能な筒形部として機能する。
【0033】
ボルト付き先端部材40のボルト部43には、設置物2が固定される支持フレーム4(図12参照)等の取付物を取り付けることができる。取付物は、例えばボルト部43に螺着したナット4aを用いた締め付け固定等によってボルト部43に固定できる。
また、図12に示すように、支持フレーム4等の取付物としては、ボルト付き先端部材40のボルト部43を通すためのボルト挿通孔が形成されたものを採用できる。この取付物は、ボルト付き先端部材40のボルト部43に外挿して、ボルト部43に螺着したナット4aを用いた締め付け固定等によってボルト部43に固定できる。
【0034】
図1及び図7に示すように、防水ベース部材50は、主柱部材30の主柱部32に外挿される円筒状の外挿筒部53と、この外挿筒部53の、前記主柱部32に外挿したときに前記主柱部材30の基端側当接部31の側に位置する端部(軸線方向片端側の端部)の全周から張り出す末広がり形状の防水用張出部50aとを有している。
図示例の防水ベース部材50は、円筒状の筒状部51の軸線方向片側の端部に、テーパ筒状のカバー部52bを有する防水ベース本体52を取り付けた構成になっている。防水ベース本体52は、先端リング部52aと、先端リング部52aから末広がりに広がるテーパ筒状の前記カバー部52bと、カバー部52bの先端リング部52aとは反対の基端部の外周に突設されたフランジ状の当接部52cとを有している。カバー部52bは、リング状(あるいは円筒状)の先端リング部52aと同軸に設けられている。防水ベース本体52は、前記先端リング部52aを円筒状の筒状部51の軸線方向の端部に取り付けて一体化して、筒状部51と同軸に設けられている。
【0035】
図示例の防水ベース部材50の外挿筒部53は、筒状部51とこの筒状部51にその同軸上に配置して取り付けた防水ベース本体52の先端リング部52aとを一体化したものである。図示例の防水ベース部材50の外挿筒部53は、柱部材30の主柱部32の外径と略同じ(主柱部32の外径と同じ又は僅かに大きい)内径の円筒状に形成されている。外挿筒部53の内側は、主柱部32に外挿するための貫通孔である主柱部材挿通孔53a(図7参照)とされている。
また、この防水ベース部材50は、防水ベース本体52の先端リング部52a以外の部分全体が、前記防水用張出部50aとして機能する。
なお、図7に示すように、図示例の防水ベース部材50の当接部52cは、その外周形状が四角形の板状になっているが、当接部としてはその外周形状が、四角以外の多角形板状、あるいは円形になっているものも採用可能である。
【0036】
防水ベース部材50は、基礎用アンカー10を、外側層5が設けられていない下地3(図1参照)、あるいは下地3に設けられた外側層5(図13参照)といった施工対象構造物に組み立てて施工する作業において、主柱部材30をコンクリート母材3に固定して立設した主柱部材30の支柱部32に、その先端側(先端部側)から外挿して主柱部32に対してその軸線方向にスライド移動することで、前記防水用張出部50aの外周部(ここでは当接部52c)を、その全周にわたって、施工対象構造物の表面に当接して設けられる。そして、この防水ベース部材50は、施工対象構造物表面に当接させた当接部52cと該当接部52cの周囲に位置する施工対象構造物表面との境界部52dを覆う防水層(カバー防水層)を施工することで、前記境界部52dからカバー部52b内側(内面側)への水の侵入を防ぐために、下地3に固定して立設された主柱部材30の支柱部32に外挿して設けられる。前記境界部52dを覆うカバー防水層(図1の防水層60、図13のカバー防水層61を参照)は、防水用張出部50a外周の当接部52cの周囲に位置する施工対象構造物表面から防水ベース部材50の防水用張出部50aの施工対象構造物とは反対側の面(張出部表面)にわたって連続して形成される。
但し、防水ベース部材50は、外挿筒部53が、主柱部32の固定用ねじ孔39を避けて、固定用ねじ孔39よりも主柱部32基端側となる位置に配置される。
防水層としては、塗膜防水層、防水シート等の公知のものを採用できる。
【0037】
図1に示すように、基礎用アンカー10を、外側層5が設けられていない下地3上に組み立てる場合、防水ベース部材50は、コンクリート母材3に固定して立設した主柱部材30の支柱部32に外挿した状態で、防水ベース本体52のカバー部52b内側に主柱部材30の基端側当接部31を収納することで、当接部52cを下地(コンクリート母材3)の上面3aに当接できる。
【0038】
当接部52cは、その全周(図示例では全体)にわたって、防水ベース部材50の中心軸線に垂直の仮想面上に、施工対象構造物(図1では下地3表面)に当接させる当接領域を形成しており、平坦な下地表面に対して、全周の当接領域を当接させることができる。
この当接部の構成は、本発明に係る他の実施形態の防水ベース部材についても共通の構成である。また、図13に例示したように、防水ベース部材50の当接部52cと、下地表面に設けられた平坦な外側層5表面との関係も、当接部52cと下地表面との関係と同様である。当接部52cはその全周にわたって、平坦な外側層5表面に当接させることができる。
【0039】
前記当接部52cは薄板状に形成されている。このため、防水ベース部材50は、前記境界部52dにおける当接部52cとその周囲の下地表面との間の段差が小さい。このため、防水ベース部材50は、当接部52cの周囲に位置する施工対象構造物表面から防水ベース部材50の防水用張出部50aの張出部表面にわたって連続する防水層(図1の防水層60、図13のカバー防水層61を参照)の形成に有利である。
また、図1、図13に示すように、防水ベース部材50は、防水用張出部50aの張出部表面及び外挿筒部53の外周面からなる外側面全体が防水層を形成可能な防水層施工面となっている。前記境界部52dを覆う防水層は、防水用張出部50aの張出部表面のみならず、張出部表面から外挿筒部53の外周面に延在形成しても良い。
前記防水層施工面は、防水用張出部50a外周(当接部52c外周)から外挿筒部53の外周面にわたって実質的に段差が無い。このため、防水用張出部50aの外周の周囲の施工対象構造物表面から外挿筒部53の外周面にわたって連続する防水層を容易に形成できる。
また、防水ベース部材50の外側面に位置する防水層60、61の端部は、シーリング材55を用いて覆うことで防水性を確保できる。
【0040】
図示例の防水ベース部材50の筒状部51、及び防水ベース本体52はそれぞれ金属製の一体成形品であるが、筒状部51、防水ベース本体52の材質に限定は無い。また、防水ベース部材としては、防水ベース本体の他に該防水ベース部材とは別体の筒状部51を有する構成に限定されず、防水ベース本体に筒状部51が一体化された構成のものも採用可能である。さらに、防水ベース本体及び筒状部としては、複数の部材によって形成されている構成も採用可能である。
【0041】
図1、図13に示すように、図示例の防水ベース部材50は、外挿筒部53の内側(具体的には筒状部51の内側)に、該外挿筒部53を外挿した支柱部32の外周面に密接するOリング54を有している。このOリング54は、外挿筒部53の上端とその内側の主柱部32外周面との間の隙間に浸入した水が防水ベース部材50から下側の下地3に達することを防ぐ。
前記Oリング54は外挿筒部53の内周に沿って設けられており、外挿筒部53を支柱部32に外挿したときに支柱部32に外挿される。また、支柱部32に外挿されたOリング54は、前記支柱部32の外周面に対して支柱部32の軸線方向に摺動可能であり、この摺動によって、防水ベース部材50の支柱部32に対するその軸線方向の位置を調整できる。
【0042】
以上に加えて、この実施形態の基礎用アンカー10は、ボルト付き先端部材40に取り付けられるカップ状カバー70を有している。図示例のカップ状カバー70は、支柱部32に螺着したときの支柱部32先端から上側に位置する部分に取り付けられる。
カップ状カバー70は、図1及び図11に示すように、筒状の側壁部70bの軸線方向の一端に天板部70aを有し、軸線方向他端が開口された有底筒状に形成されている。カップ状カバー70は、金属または樹脂によって成形されるものである。また、天板部70aには、ボルト付き先端部材40のボルト部43を通すためのボルト用孔71が形成されている。
図示例のカップ状カバー70は、天板部70aの前記ボルト用孔71に通したボルト付き先端部材40のボルト部43に外挿して、例えば前記ボルト部43に螺着したナットによる締め付け固定等によって、ボルト付き先端部材40に固定される。また、前記カップ状カバー70は、その開口部が下端、天板部70aが上端の向きでボルト付き先端部材40に固定されて、その内側に主柱部材30の主柱部32とボルト付き先端部材40との境界部47を覆い、境界部47からの水の侵入を防止する機能を果たす。
【0043】
図1は、ボルト部43に外挿したカップ状カバー70の天板部70aをボルト付き先端部材40の取付部42の先端面42aに当接させ、ボルト部43に螺着したナット4aの締め付けによって、カップ状カバー70と、ボルト部43に外挿した取付物(支持フレーム4の一部)とを、ボルト付き先端部材40に固定する構成を例示している。ボルト付き先端部材40の取付部42の先端面42aは、ボルト部43に外挿したカップ状カバー70の天板部70aにおける前記ボルト用孔71の周囲全周にわたって当接可能に形成されている。
但し、カップ状カバー70をボルト付き先端部材40に固定する構造としては、図示例の構成に限定されず、例えば、ボルト部43に外挿したカップ状カバー70の天板部70aを、ボルト部43の長手方向の互いに離隔する2箇所に螺着したナットの間に締め付け固定する構成等も採用可能である。カップ状カバー70の天板部70aとボルト付き先端部材40の取付部42との間には、ボルト部43に外挿したスペーサを介挿しても良い。
【0044】
次に、この実施形態の基礎用アンカー10の施工方法を説明する。
ここでは、まず、図1に示すように、基礎用アンカー10を、外側層5が設けられていない下地3上に組み立てて施工する場合の施工方法の一例を説明する。
図2に示すように、まず、コンクリート母材3にドリル等によって下孔11を穿設し、下孔11に充填材12を充填する。そして図3に示すように、雄ねじ部22と雌ねじ孔35とを螺合させることにより基端側当接部31に組み付けた定着用アンカー20のスリーブ状本体23を先端側から下孔11に挿入し、主柱部材30の基端側当接部31(詳細にはその底面33b)をコンクリート母材3の表面3aに当接させる。次いで、定着用アンカー20の拡張部を拡張させて定着用アンカー20をコンクリート母材3に固定する。基端側当接部31は、コンクリート母材3に対する定着用アンカー20の固定と同時に、コンクリート母材3の表面3aに当接した状態で固定される。
【0045】
充填材12としては、例えば定着用アンカー20をコンクリート母材3に接着固定できる液状の接着剤を用いることができる。この接着剤としては、接着系アンカーのコンクリート母材に対する固着に用いられる例えばエポキシ系接着剤等を用いることができる。基端側当接部31は、コンクリート母材3に対する定着用アンカー20の機械的固定力によって、コンクリート母材3に対する充分な固定強度を確保できる。接着剤の使用は、コンクリート母材3に対する定着用アンカー20の固定強度を高めることができる。また、接着剤としては、硬化後に、防水性を発揮する樹脂系接着剤を好適に用いることができる。
また、充填材12としては、硬化性の液状充填材であって、硬化によって定着用アンカー20をコンクリート母材3に接着固定する接着力を発揮するもの、あるいは、硬化によって防水性を発揮するものであれば良く、接着剤に限定されない。
【0046】
基端側当接部31のベース部33の底面33bには凹部37が形成されている。凹部37は、雌ねじ孔35の周囲に形成されており、しかも、雌ねじ孔35に連通している。このため、基端側当接部31は、ベース部33の底面33bをコンクリート母材3の平坦な表面3aに当接させたとき、下孔11から溢出させた充填材12を凹部37に充填できる。したがって、基端側当接部31の凹部37は、充填材12が接着剤であるとき、充填材12の充填によって、基端側当接部31のコンクリート母材3に対する固定強度の向上に有効に寄与する。
【0047】
コンクリート母材3に対する基端側当接部31の固定を完了したら、次いで、図4に示すように、基端側当接部31の筒状ねじ部34に対して主柱部32を取り付けて主柱部材30を組み立てる。主柱部32は内ねじ部38を基端側当接部31の筒状ねじ部34に形成された外ねじ部36に螺合させて、基端側当接部31に締め付けてしっかりと固定する。
【0048】
その後、図6に示すように、防水ベース部材50を主柱部材30の主柱部32にその先端側から外挿して、主柱部32外側をその軸線方向に沿ってスライド移動させ、当接部52cをコンクリート母材3の表面3aに当接させる。
次に防水層60を施工する。また、防水ベース部材50の外挿筒部53先端(上端)と主柱部32との間、及び防水ベース部材50の防水層施工面(外側面)に形成された防水層60の端部の防水性を確保するため、シーリング材55を施工する。
図12に示すように、防水層60は、コンクリート母材3の表面3aの、防水ベース部材50によって覆われた部位を除く全体にわたって設けられるものである。図6に示すように、この防水層60は、防水ベース部材50の防水用張出部50aの外周の周囲に位置するコンクリート母材3の表面3aから防水ベース部材50の防水層施工面にも連続して延在形成して、防水用張出部50a外周とその周囲に位置するコンクリート母材3の表面3aとの境界部52d(図1参照)を覆う。
【0049】
防水層60の施工の後、図10に示すように、カップ状カバー70をボルト付き先端部材40のボルト部43に外挿して、ボルト付き先端部材40に取り付ける。そして、基礎用アンカー10は、例えばボルト付き先端部材40のボルト部43に螺着したナット4a(図1参照)を利用した締め付け等によって、カップ状カバー70を、ボルト付き先端部材40に固定することで組み立て(施工)が完了する。
【0050】
図13に示すように、基礎用アンカー10を、下地3表面に外側層5が設けられた構成の外側層付き構造物に組み立てて施工する場合は、まず、外側層5に下地3に達する施工用穴5cを形成し、この施工用穴5cの穴底に露出させた下地3に、定着用アンカー20を用いて主柱部材30の基端側当接部31を固定して、主柱部材30を立設状態に施工する。
次いで、主柱部材30の主柱部32に前記防水ベース部材50を外挿して、その当接部52cを外側層5に当接させて、外側層5上に載置状態に設ける。防水ベース部材50の主柱部32に対するその軸線方向の位置は、外側層5の厚みによって決まる。図1における鎖線は、主柱部32に対する防水ベース部材50の高さ方向の調整を示す。
【0051】
主柱部材30の施工が完了したら、防水ベース部材50を主柱部材30の主柱部32にその先端側から外挿して外側層5上に載置し、防水ベース部材50の当接部52cと、その周囲に位置する外側層5表面との境界部を覆うカバー防水層61の形成、防水ベース部材50の外側面に位置するカバー防水層61の端部へのシーリング材55の設置等といった防水処理を行う。外側層5の施工用穴5cは、外側層5表面に開口する開口部全体が、主柱部材30の主柱部32に外挿した防水ベース部材50の当接部52cの当接領域の内側に位置するように形成される。
次いで、図1について説明したのと同様に、ボルト付き先端部材40にカップ状カバー70を取り付け(固定)ることで、基礎用アンカー10の組み立て(施工)が完了する。
【0052】
主柱部材30の主柱部32に外挿して外側層5上に載置した防水ベース部材50は、その当接部52cと該当接部52cの周囲に位置する外側層5表面との境界部52dを覆うカバー防水層61の形成によって、カバー部52b内側(内面側)、特に施工用穴5cへの水の侵入防止、防水性の確保に機能する。
図13に例示した外側層5は、その表面を形成する防水層5b(既存防水層)を有する構成であり、カバー防水層61は、防水ベース部材50の当接部52cとその周囲に位置する外側層5表面との境界部を覆うリング状に形成すれば足りる。但し、カバー防水層61は、防水ベース部材50の当接部52cの周囲に位置する外側層5表面を広範囲にわたって覆う構成としても良い。
【0053】
なお、外側層としては、その表面(上面)を形成する防水層5b(既存防水層)を有するものの、断熱材層を有していない構成であっても良い。
また、外側層としては、その表面(上面)を形成する防水層5bを有する構成に限定されず、例えば断熱材層等の防水層以外の層によってその表面が形成されたものであっても良い。この場合は、例えば、主柱部32に外挿して外側層表面に当接させた防水ベース部材50の当接部52cの周囲に位置する外側層5表面を広範囲にわたって覆う防水層自体を、防水ベース部材50の外側面にまで延在形成して、当接部52cとその周囲の外側層表面との境界部を覆うカバー防水層とする。
【0054】
図12は、以上によって施工された基礎用アンカー10に設置物2を支持した状態の一例を示す。設置物2は、太陽光パネル、太陽熱温水器等の機器本体2aと、機器本体2aの据え付け用の架台2bとを有しており、架台2bの下面に支持フレーム4がボルト2cによって取り付けられている。そして、支持フレーム4をボルト付き先端部材40におけるボルト部43に固定することで、基礎用アンカー10による設置物2の支持が実現される。図示例では、支持フレーム4の下部にボルト付き先端部材40におけるボルト部43を貫通させ、締付ナット4aを締め付けることにより基礎用アンカー10による設置物2の支持を行っている。
【0055】
基礎用アンカー10は、主柱部材30と、該主柱部材30に固定したボルト付き先端部材40の取付部42とが強固な基礎部を構成し、設置物2からの剪断方向の荷重(剪断荷重)がボルト付き先端部材40から主柱部材30に伝達される構造となっている。このため、基礎用アンカー10は、定着用アンカー20におけるコンクリート母材3に埋め込まれた部分とコンクリート母材3から突出した部分との境界部分を中心とする回転方向に作用する荷重を、主柱部材30の基端側当接部31と定着用アンカー20とが分散負担して抵抗力を発揮する。したがって、基礎用アンカー10は、高い剪断強度(剪断耐力)を確保でき、太陽光発電パネル、太陽熱温水器等の大型の設置物2を安定して支持することができる。
【0056】
また、設置物2が取り付けられるボルト付き先端部材40は、主柱部材30に対して軸線方向に位置調整可能(高さ調整可能)であることから、ボルト付き先端部材40はコンクリート母材3に対する高さ調整が容易である。このため、設置物2の大きさや形状、所望の支持位置に対応することが容易であり、汎用性のあるものとすることができる。この基礎用アンカー10は、防水ベース部材50に防水層60を形成した後に、主柱部材30に対してその軸線方向にボルト付き先端部材40を位置調整して、固定する作業を行える。
【0057】
また、この基礎用アンカー10は、ボルト付き先端部材40のボルト部43長手方向における設置物2の取付位置の調整を行わなくても、ボルト付き先端部材40の主柱部材30の軸線方向の位置調整(下地3に対する高さ調整)によって設置物2の高さ調整を行うことが可能である。
例えば、図1に示すように、支持フレーム4は、該支持フレーム4に形成されたボルト挿通孔4bに通したボルト付き先端部材40のボルト部43に外挿し、カップ状カバー70の天板部70aに当接させてボルト付き先端部材40に固定できる。この場合、ボルト付き先端部材40に対する支持フレーム4の固定位置の基礎部からの距離を、非常に短くできるため、設置物2から作用する剪断荷重に対する強度確保の点で有利であり、しかも、ボルト付き先端部材40の主柱部材30の軸線方向の位置調整(下地3に対する高さ調整)によって設置物2の高さ調整を行える。
【0058】
主柱部材30とボルト付き先端部材40の取付部42とからなる基礎部は、定着用アンカー20を用いてコンクリート母材3に主柱部材30を固定し、この主柱部材30にボルト付き先端部材40を固定用ねじ41により固定するだけで簡単に組み立てることができる。また、この基礎用アンカー10は、前記基礎部を組み立てた後に、主柱部材30に外挿して下地3(図13においては外側層5)に当接させた防水ベース部材50への防水層60、61(カバー防水層)の形成、シーリング材55の設置といった防水処理、及びカップ状カバー70の取り付け作業を効率良く行うことができる。このため、この基礎用アンカー10は、高い施工作業性を確保でき、工期短縮を図ることができる。
主柱部材30とボルト付き先端部材40の取付部42とからなる基礎部は、従来のコンクリート製の基礎ブロックに比べて大幅な軽量化、低コスト化を実現できる。
【0059】
(第2実施形態)
図14〜図23は本発明の第2実施形態の基礎用あと施工アンカー(基礎用アンカー)10Aを示す。なお、図14、図15、図17、図19、図21、図22において、上側を上、下側を下として説明する。
この実施形態の基礎用アンカー10Aは、ボルト付き先端部材40を主柱部材30に固定する固定部材として、前記ボルト付き先端部材40の取付部42外周の雄ねじ部45に螺合する固定用ナット48を用いる点で第1実施形態と異なっている。ボルト付き先端部材40は、第1実施形態にて説明したものと同様の構成のものを用いている。
【0060】
図22、図23に示すように、前記固定用ナット48は、ボルト付き先端部材40の取付部42に螺着するリング状の部材である。図23に示すように、この固定用ナット48の内側の貫通孔48a内面には、ボルト付き先端部材40の取付部42の外ねじ部45に螺合する雌ねじ48bが形成されている。
【0061】
この実施形態の基礎用アンカー10Aの主柱部材30の主柱部32は、その内面に、ボルト付き先端部材40の取付部42外周の外ねじ部45と螺合可能な雌ねじ部が形成された円筒状に形成されている。前記主柱部32は、その先端側からボルト付き先端部材40の取付部42をねじ込んで螺着できる筒形部として機能する。
図14に示すように、固定用ナット48は、主柱部材30の主柱部32内側にねじ込んだボルト付き先端部材40の取付部42の主柱部32先端から突出された部分に螺着される。そして、この実施形態の基礎用アンカー10Aは、主柱部材30にボルト付き先端部材40を固定して構成される基礎部の組み立てにおいて、ボルト付き先端部材40の取付部42を主柱部材30の主柱部32にねじ込み、前記取付部42の主柱部32先端から突出された部分に螺着した固定用ナット48を回転操作して主柱部32先端に当接させ、締め付けることで、主柱部材30にボルト付き先端部材40を固定できる。
【0062】
図23に示すように、固定用ナット48は、その外周面の2箇所に形成された平面状の切り欠き部48cを利用して工具を係合することで、ボルト付き先端部材40の取付部42の軸線回りの回転操作を楽に行え、主柱部材30の主柱部32に対する締め付け固定を確実に行える。
図14に示すように、さらに、固定用ナット48の貫通孔48aの軸線方向両端部の一方には、押え用テーパ部48dが形成されている。押え用テーパ面48dは、ボルト付き先端部材40の取付部42に螺着した固定用ナット48を主柱部材30の主柱部32の軸線方向の先端部(上端部)に対して締め付けたときに、主柱部材30の主柱部32の軸線方向の先端部(上端部)に形成されたテーパ面32aに嵌合する。固定用ナット48は、この嵌合によってボルト付き先端部材40の取付部42を主柱部32に確実に固定することができる。
【0063】
図14〜図16に示すように、この実施形態の基礎用アンカー10Aの主柱部材30の基端側当接部31は、ベース部33から立設された筒状ねじ部34の基端部(ベース部33側の端部)の外周に形成された溝49aにシールリング49が外嵌めされている点が、第1実施形態の主柱部材30の基端側当接部31と異なる。この基端側当接部31の前記溝49a及びシールリング49以外の構成は、第1実施形態の基端側当接部31と同様である。
シールリング49は、筒状ねじ部34に主柱部32を螺合したときに主柱部32内周面に圧接して、筒状ねじ部34と主柱部32との間を水密にシールする。これにより、主柱部32と基端側当接部31の筒状ねじ部34との間の防水性を高めることができる。
【0064】
なお、基礎用アンカー10Aの固定部材30の基端側当接部31及び主柱部32としては、図14、図18等に例示したものにかえて、第1実施形態と同様のものを採用することも可能である。
【0065】
図17及び図18に示すように、主柱部材30の主柱部32には、その内面に上側内ねじ部38a及び下側内ねじ部38bが互いに離隔して形成されている。上側内ねじ部38aには、ボルト付き先端部材40の取付部42に形成された外ねじ部45が螺合し、下側内ねじ部38bは、基端側当接部31の筒状ねじ部34に形成された外ねじ部36が螺合する。
【0066】
図14、図19、図20に示すように、この実施形態の基礎用アンカー10Aの防水ベース部材50Aは、円筒状の筒状部51の軸線方向片端に、円筒状の先端リング部57aと、この先端リング部57aの軸線方向片端全周からその外周側にフランジ状に張り出された防水ベース張出部とからなる防水ベース本体52を連結して一体化した構成になっている。
前記防水ベース部材50Aは、防水ベース本体52の前記先端リング部57aを、筒状部51の軸線方向片端に連結して同軸上に一体化した外挿筒部53を有する。また、防水ベース本体52の防水ベース張出部は、防水ベース部材50Aの防水用張出部57bとして機能する。
なお、図20に示すように、図示例の防水ベース部材50Aの防水用張出部57bはその外周形状が矩形状になっているが、防水用張出部57bの形状はこれに限定されない。防水用張出部57bは、例えばその外周形状が、四角以外の多角形板状になっているものや、全体形状がリング板状になっているものも採用可能である。
【0067】
前記防水ベース部材50Aは、筒状部51の軸線方向の先端側(防水ベース本体52とは反対の側)に、主柱部材30の主柱部32に外挿した該防水ベース部材50Aを前記主柱部32に固定するための止めねじ56を螺合させるねじ穴51aが形成されている。
前記防水ベース部材50Aは、主柱部材30の主柱部32に外挿した状態で、筒状部51を肉厚方向に貫通する前記ねじ穴51aに螺合する前記止めねじ56を筒状部51外側からねじ込み操作し、前記止めねじ56の先端部によって主柱部材30の主柱部32を押圧することで、主柱部材30の主柱部32に固定される。このような止めねじ56は、防水ベース部材50Aを主柱部材30の主柱部32に固定する防水ベース固定部材として機能するものである。
【0068】
下地3(コンクリート母材)に外側層5が設けられた構成の施工対象構造物に対する基礎用アンカー10Aの組み立て(施工)にあたり、防水ベース部材50Aは、定着用アンカー20を用いて基端側当接部31を下地3に固定して下地3に立設した主柱部材30にその先端から外挿して、防水ベース本体52の防水用張出部57bを外側層5に当接させ、ねじ穴51aに螺合する止めねじ56の締め付けによって主柱部材30に固定する。主柱部材30に対するその軸線方向(高さ方向)の防水ベース部材50Aの固定位置は、下地3に積層されている外側層5の厚さによって決まる(例えば図14の実線位置及び鎖線位置)。
【0069】
筒状部51の内側には、筒状部51内面に形成された凹溝51bに嵌め込まれたOリング54が設けられており、Oリング54が主柱部32外周面に密接して、筒状部15と主柱部材30の主柱部32との間の防水性を向上させることができる。
【0070】
図14に示すように、この基礎用アンカー10Aの施工対象の施工対象構造物は、外側層5の厚みが主柱部材30の基端側当接部31のベース部33の張出部と同じ又は大きいものを採用できる。また、下地表面3aから窪んだ施工用穴5cを形成し、この施工用穴5cに基端側当接部31を収納し、この基端側当接部31の前記張出部を外側層5表面から下地3側あるいは外側層5表面と面一に配置することも可能である。
【0071】
前記防水ベース部材50Aの防水用張出部57bは、外挿筒部53の軸線方向片端の全周からその外周側へ外挿筒部53の軸線方向に垂直に張り出す板状に形成されている。このため、下地3に立設した主柱部材30の主柱部32に外挿した防水ベース部材50Aの防水用張出部57bは、施工対象構造物表面(図示例においては、断熱防水層5表面)に当接させたときに、施工対象構造物表面に沿って延在する平坦面を形成する。したがって、この基礎用アンカー10Aは、カバー防水層61の施工後に、支柱部材30の周囲に、平坦な足場(作業者の足場)を確保できる。その結果、カバー防水層61の施工後の、防水ベース部材50Aの外挿筒部53上端(筒状部51上端)と支柱部材30外周面との間の隙間のシーリング材55による密封、支柱部材30に対するボルト付き先端部材40の螺着及び固定といった、支柱部材30付近で行う作業の作業性を良好に確保できる。
【0072】
施工対象構造物への基礎用アンカー10Aの施工において、防水ベース部材50Aの外側面(防水用張出部57bの張出部表面及び外挿筒部53)に形成したカバー防水層61の端部は、シーリング材55を用いて防水処理する。
また、防水ベース部材50Aを主柱部材30の主柱部32に固定する止めねじ56が螺合されたねじ穴51aは、カバー防水層61あるいはシーリング材を用いて防水処理する。
【0073】
支柱部材30に対するその軸線方向へのボルト付き先端部材40の位置調整は、ボルト付き先端部材40を軸回り回転させて、主柱部材30の主柱部32の上側内ねじ部38aに対する、ボルト付き先端部材40の取付部42の螺合長を調整することで実現される。
このボルト付き先端部材40の位置調整及び固定用ナット48の締め付けによる固定が完了したら、ボルト付き先端部材40にカップ状カバー70を取り付ける。
【0074】
図14に示すように、カップ状カバー70は、天板部70aのボルト用孔71にボルト付き先端部材40のボルト部43を挿通させることによりボルト付き先端部材40における取付部42の先端面42aに当接した状態で取り付けられる。この取り付け状態では、カップ状カバー70は、ボルト付き先端部材40の取付部42を主柱部材30に固定してなる基礎部のうち、その先端(ボルト付き先端部材40の取付部42先端)から固定用ナット48の固定位置を含む範囲を覆った状態となる。このことによりカップ状カバー70は、主柱部32先端と、ボルト付き先端部材40の取付部42の主柱部32先端から延出する部分との境界部からの水の侵入を防止する。
【0075】
(第3実施形態)
図24は本発明の第3実施形態の基礎用あと施工アンカー(基礎用アンカー)10Bを示す。なお、図中上側を上、下側を下として説明する。
この実施形態の基礎用アンカー10Bは、下地3(コンクリート母材)に固定して立設される主柱部材30と、この主柱部材30をコンクリート母材3に固定するための定着用アンカー20と、主柱部材30の下地3に当接される基端側当接部31から延出する主柱部32に外挿される防水ベース部材50B及び防水層カバー63と、主柱部材30の主柱部32の先端に固定されるボルト付き先端部材40とを備えている。また、この基礎用アンカー10Bは、ボルト付き先端部材40に取り付けられるカップ状カバー70も有している。
【0076】
この基礎用アンカー10Bは、主柱部32外周に雄ねじ部32eが形成されている主柱部材30(主柱部材30A)を採用し、ボルト付き先端部材40として、前記主柱部32に螺着して主柱部32を収納する筒状の取付部42を有するものを採用している。
主柱部32に図中符号32A、ボルト付き先端部材40に符号40A、取付部42に符号42Aを付記する。
【0077】
図示例の主柱部材30Aは、基端側当接部31と主柱部32とが金属によって一体に形成された構成のものを採用している。
主柱部材30Aの基端側当接部31は、主柱部材30Aの中心軸線(主柱部32の中心軸線に一致)方向一端部であり、主柱部材30A外周にフランジ状に突設された張出部31aを含む。主柱部材30Aは、施工対象構造物の下地表面に当接させた基端側当接部31の前記張出部31aの複数箇所を定着用アンカー20を用いて下地3に固定して、下地3に立設される。定着用アンカー20は、主柱部材30Aの周方向における前記張出部31aの複数箇所に、主柱部材30Aの中心軸線と平行な軸線を以て貫設されたアンカー孔31bに挿入して下地3に固着される。
【0078】
この主柱部材30Aの主柱部32Aは、基端側当接部31側に位置する大径部32cと、先端側の小径部32dとによって形成されている。主柱部32の雄ねじ部32eは、小径部32dの外周面に形成されている。
なお、図示例の基礎用アンカー10Bの主柱部材30Aは、全体が金属製の中実部材であり、主柱部32Aは金属製の中実棒状(具体的には中実の円柱状)に形成されている。
但し、主柱部材30Aは、その中心軸線に沿って延在する貫通孔を有する筒状に構成されたものも採用可能である。
また、主柱部32Aは、必ずしも大径部32c及び小径部32dを有する構成に限定されず、その軸線方向全長にわたって外径が一定の構成であっても良い。主柱部32A外周の雄ねじ部32eは、少なくとも主柱部32の先端部に形成されていれば良く、主柱部32Aの軸線方向全長にわたって形成されていても良い。但し、主柱部32Aに螺着したボルト付き先端部材40Aの取付部42Aから下方に設けられる防水ベース部材50B及び防水層カバー63と主柱部32A外周面との間の防水を容易にする点で、主柱部32Aは、その軸線方向全長において、雄ねじ部32eが形成された領域の基端側に雄ねじ部32eが形成されていない領域(ねじ無し外周面)を確保し、このねじ無し外周面を防水ベース部材50B及び防水層カバー63の主柱部32Aに対する取り付け部とすることが好ましい。
【0079】
ボルト付き先端部材40Aの取付部42Aは、主柱部32の小径部32d外周の雄ねじ部32eに螺合する雌ねじ部42eが内周面に形成された螺着筒部42dと、この螺着筒部42dの軸線方向片端を塞ぐ頂板部42cとを有する有底円筒状に構成されている。図示例の取付部42の頂板部42cは、螺着筒部42dの軸線方向片端からその内周側に張り出す端板部42bの中央部に螺着筒部42dの軸線方向に沿って貫設された雌ねじ孔42cを、該雌ねじ孔42cにねじ込んで端板部42bに固定したボルト部43の端部によって塞いだ構成になっている。このボルト付き先端部材40Aは、取付部42Aの螺着筒部42d内側の雌ねじ部42eを、前記螺着筒部42dの前記頂板部42cとは反対側の開口端側から、主柱部材30Aの主柱部32の小径部32d外周の雄ねじ部32eに螺合させて、前記小径部32dに螺着できる。
なお、本発明に係る実施形態のボルト付き先端部材40の取付部42及びボルト部43はそれぞれ金属製であり、このことは、この実施形態のボルト付き先端部材40Aの取付部42A及びボルト43についても同様である。
【0080】
ボルト付き先端部材40Aのボルト部43は、前記頂板部42cから取付部42A(詳細には螺着筒部42d)の開口端とは反対側へ突設されている。
また、頂板部42cの雌ねじ孔42cは、例えばシーリング材(図示略)の塗布等によって防水性が確保される。
なお、ボルト付き先端部材40Aとしては、ボルト部43が取付部42Aに一体に形成された金属製部材であっても良い。
【0081】
前記ボルト付き先端部材40Aは、その取付部42A(詳細には螺着筒部42d)の、主柱部材30Aの主柱部32の小径部32dに対する螺合長(ねじ込み長)を調整することで、主柱部材30Aに対する軸線方向の位置(高さ位置)を調整できる。
また、このボルト付き先端部材40Aの取付部42Aの軸線方向中央部には、その肉厚を貫通する雌ねじ孔である固定用ねじ孔42fが形成されている。ボルト付き先端部材40Aは、取付部42Aを主柱部材30Aの主柱部32の小径部32dに螺着し、前記固定用ねじ孔42fに螺合した固定用ねじ42gを取付部42外側から固定用ねじ孔42f奥側(取付部42内側)へねじ込み操作して取付部42内側の前記小径部32dを押圧することで、主柱部32Aに固定される。これにより、ボルト付き先端部材40Aの取付部42Aを主柱部材30Aに固定してなる基礎部が組み立てられる。
【0082】
この基礎用アンカー10Bは、前記ボルト付き先端部材40Aの取付部42Aが前記主柱部材30Aの前記主柱部32Aを収納可能な筒形部として機能する。このような構造では、ボルト付き先端部材40Aの取付部42Aが主柱部32Aの小径部32dを覆った状態となる。このため、組み立ての完了した基礎用アンカー10B(アンカー組立体)にあっては、例えばボルト付き先端部材40Aの取付部42Aの外周面を流下した水は、取付部42A(詳細には螺着筒部42d)の開口端(図24における下端部)と主柱部32A外周面との境界部42hから主柱部32A外周面に沿って流下することになり、前記境界部42hからの浸水は生じない。この基礎用アンカー10Bを組み立てたアンカー組立体は、その構造上、前記境界部42hから、主柱部32Aの大径部32cに外挿して設けられた後述の防水ベース部材50B内面側への浸水が生じる心配が無い。
したがって、この基礎用アンカー10Bにあっては、前記境界部42hにシーリング材を設ける等の防水処理を省略あるいは簡略化することができる。また、この基礎用アンカー10Bはカップ状カバー70を省略しても、防水性の確保に与える影響が小さいため、カップ状カバー70の省略が可能である。
このように、この基礎用アンカー10Bは、防水処理の箇所を少なくでき、その組み立て作業における防水処理の手間を軽減できるため、施工対象構造物に対する組み立ての作業時間を短縮できるといった利点がある。
【0083】
なお、カップ状カバー70は、アンカー組立体が直射日光に曝されることによる、アンカー組立体の構成部材の劣化(特に、Oリング等のシール部材の劣化)を防ぎ、シール部の防水性能の長期安定維持の実現に有効に寄与する。
このことは、本発明に係る他の実施形態の基礎用アンカー、そのアンカー組立体についても同様である。
【0084】
図示例の基礎用アンカー10Bの防水ベース部材50Bは、円筒状の筒状部51に、支柱部材30Aの基端側当接部31を収納可能なカバー部52bを有する防水ベース本体58を取り付けて一体化したものである。
この防水ベース部材50の防水ベース本体58は、後述の第5実施形態の防水ベース部材59と同様の構成である。この防水ベース本体58は、金属薄板によって形成された一体成形品であり、図24、図30に示すように、円筒状の先端リング部52aと、この先端リング部52aの軸線方向片端の全周からその外周側に突出するフランジ状のリング板部52b1の外周全周に円筒板部52b2を垂直に立ち上げた構成のカバー部52bと、このカバー部52bの前記円筒板部52b2の前記リング板部52b1とは反対の端部からその外周全周にわたって突出された板状の当接部52cとを有している。先端リング部52a、カバー部52b、当接部52cは、同軸上に配置されている。また、カバー部52bの円筒板部52b2及び当接部52cは、防水ベース本体58の中心軸線方向において、リング板部52b1を介して先端リング部52aとは反対の側に設けられている。
【0085】
そして、この防水ベース部材50Bは、図24に示すように、前記筒状部51に防水ベース本体58の先端リング部52aを取り付けて一体化してなる外挿筒部53の軸線方向片端から、防水ベース本体58の先端リング部52a以外の部分である防水用張出部50aが張り出された構成になっている。前記外挿筒部53は主柱部32Aの大径部32cに外挿可能に形成されており、防水ベース部材50Bはその全体を主柱部32Aの大径部32cに外挿できる。防水ベース部材50Bは、外挿筒部53を主柱部32Aの大径部32cに外挿し、当接部52cを施工対象構造物表面に当接させて設けられる。
なお、防水ベース部材50Bの構成部材は金属製のものに限定されず、プラスチック製のものであっても良い。
【0086】
図示例の基礎用アンカー10Bの防水層カバー63は、主柱部32Aの大径部32cに外挿して、防水ベース部材50Bの外挿筒部53及びカバー部52bを収納する概略カップ状に形成されている。
図示例の防水層カバー63は、金属薄板によって形成された一体成形品である。但し、防水層カバー63の材質は防水性を確保できるものであれば良く、例えばプラスチック製のものであっても良い。
【0087】
この防水層カバー63は、主柱部32Aの大径部32cに外挿可能な円筒状の先端リング部63aと、この先端リング部63aの軸線方向片端の全周からその外周側に張り出すフランジ状の天板部63d及び該天板部63dの外周全周に垂直に立ち上げられた円筒状側板部63gからなるカバー部63bと、このカバー部63bの前記円筒状側板部63gの前記天板部63dとは反対の端部からその外周全周にわたって突出された板状の押さえ部63cとを有している。この防水層カバー63は、主柱部32Aの大径部32cに外挿した状態で、概略カップ状のカバー部63の開口端を、防水ベース部材50Bの当接部52cを覆うカバー防水層に当接させることで、カバー防水層の端部を収納して防水性を保つ機能を果たす。
この防水層カバー63は、主柱部32Aの大径部32cに外挿した固定用リング86の内側に内挿した先端リング部63aを、固定用リング86の肉厚を貫通する雌ねじ孔に螺合した固定用ねじ87によって主柱部32Aに押圧することで主柱部32Aに固定される。これにより、防水層カバー63は、カバー部63の開口端の押さえ部63cをカバー防水層61に密接させた状態を保つことができ、カバー部63とカバー防水層61との間からカバー部63内側への浸水を防ぐことができる。
【0088】
また、固定用リング86と主柱部32A外周面との間は、固定用リング86内側に設けられたOリング54によって水密にシールされ、浸水を生じない。このため、カバー部63内側の防水性が確実に保たれる。したがって、防水ベース部材の外側面に形成したカバー防水層の端部の防水処理を省略できる。
【0089】
本発明に係る実施形態の基礎用アンカーは、例えば第1〜3実施形態に例示した防水ベース部材を選択的に使用できる。また、防水ベース部材としては、主柱部材の主柱部に外挿可能な外挿筒部と、この外挿筒部の軸線方向片端全周から該外挿筒部の軸線に垂直のフランジ状あるいは末広がりに張り出され前記主柱部に外挿したときに施工対象構造物表面に当接される防水用張出部とを有するものであれば良く、この点、第1〜3実施形態に例示した以外の構成のものを使用することも可能である。
また、本発明に係る実施形態の基礎用アンカーは、防水層カバー63の設置の有無、及びカップ状カバーの設置の有無を選択できる。
また、本発明に係る実施形態の基礎用アンカーを施工する施工対象構造物は、下地(コンクリート母材)のみからなるもの、下地に外側層が設けられた構成のもの、のいずれでも良い。また、基礎用アンカーは、下地に、主柱部材の基端側当接部を収納可能な凹所を形成し、この凹所底面に基端側当接部を当接させた主柱部材を下地に固定して立設しても良い。この場合、凹所に収納した基端側当接部の張出部が下地表面に面一に配置されるように、凹所の深さを調整することも可能である。
【0090】
本発明に係る実施形態の基礎用アンカーの主柱部材は、主柱部が基端側当接部に一体に形成された金属製のもの、基端側当接部に該基端側当接部とは別体の主柱部を螺着して一体化して組み立てられるもの(例えば第1実施形態あるいは第2実施形態に例示した主柱部材)、のいずれも採用可能である。
前者の金属製一体成形品の主柱部材としては、全体が中実の棒状、あるいは全体が筒状のものに限定されず、基端側当接部及び主柱部の片方のみが中実構造、他方が筒状(あるいはリング状)の構成であっても良い。
後者の別体構造の主柱部材は、例えば、第1実施形態あるいは第2実施形態に例示した基端側当接部31と、この基端側当接部31の筒状ねじ部外周に螺着して前記筒状ねじ部を収納する雌ねじ孔が形成された構成の主柱部とを有する構成を採用できる。
【0091】
基端側当接部の下地に対する固定に用いる金属拡張アンカー(定着用アンカー20)としては、スリーブ状本体の後端部に、基端側当接部に設けられたアンカー係合部に係合して基端側当接部を下地表面3aに押さえ込むための押圧用係合部を有するものを好適に採用できる。
第1実施形態、第2実施形態に例示した基端側当接部31は、該基端側当接部31に貫設された雌ねじ孔35内周面の雌ねじ部(内ねじ部)が、定着用アンカー20のスリーブ状本体後端のボルト部と螺合して係合するアンカー係合部として機能する。定着用アンカー20は、スリーブ状本体後端のボルト部が押圧用係合部として機能する。
また、図24に例示した基端側当接部は、押圧用係合部として機能するボルト部をスリーブ状本体後端に有する定着用アンカーを用いた固定を可能にするために、張出部31aのアンカー孔31bを、定着用アンカーの前記ボルト部と螺合する雌ねじ部を形成した雌ねじ孔とし、この雌ねじ孔の雌ねじ部をアンカー係合部としても良い。
【0092】
金属拡張アンカーの押圧用係合部としては、スリーブ状本体後端部に設けたボルト部に限定されず、例えば、スリーブ状本体後端部外周にフランジ部等の突片(以下、押圧用突片とも言う)が突設された構成のもの(以下、押圧用突片付きアンカーとも言う)であっても良い。例えば、図24に例示する定着用アンカー20(図中符号20Aを付記する)は、スリーブ状本体23後端部の外周に押圧用突片として機能するフランジ部25が張り出された構成の押圧用突片付きアンカー(以下、フランジ部付きアンカーとも言う)である。押圧用突片付きアンカーとしては、スリーブ状本体23後端部のボルト部に螺着したナットを、基端側当接部31の張出部31aに当接(係合)させる押圧用突片として機能させる構成のもの(以下、ナット付きアンカーとも言う)であっても良い。図24に例示した基端側当接部31の張出部31aは、押圧用突片付きアンカーの押圧用突片が下地3とは反対の側から当接(係合)されるアンカー係合部として機能する。
上述の押圧用突片付きアンカーは、第1実施形態、第2実施形態に例示した基端側当接部31のように、筒状の主柱部内側の空間に連通する位置にアンカー孔35が貫設(定着用アンカーが挿入されていない空の状態において主柱部内側の空間に連通する位置に貫設)された基端側当接部の下地に対する固定にも適用できる。この場合、アンカー孔35は雌ねじ部(内ねじ部)が形成されていないものを好適に採用できる。
【0093】
(第4実施形態)
図25は本発明の第4実施形態の基礎用あと施工アンカー(基礎用アンカー)10Cを示す。基礎用アンカー10Cは、第2実施形態の基礎用アンカー10Aに対し、防水ベース部材が変更されているのに加え、防水層カバー63が新たに設けられている点で相違する。
【0094】
この実施形態の防水ベース部材50Cは、既述のように、第3実施形態の防水ベース部材50Bの防水ベース本体58自体を防水ベース部材として使用するものである。
この防水ベース部材50Cは、先端リング部52a自体が外挿筒部、先端リング部52aから張り出すカバー部52b及び当接部52cが防水用張出部として機能するものである。
【0095】
先端リング部52aは、軸線方向に沿って延びており、下側クリップ部材65によって主柱部材30の主柱部32に固定される。すなわち、先端リング部52aは主柱部32に外挿され、先端リング部52aに並設される弾性材(例えばゴムシート)等の防水筒66と共に下側クリップ部材65によって主柱部32に固定されるものである。下側クリップ部材65は、先端リング部52a及び防水筒66の外周面を覆っており、これにより先端リング部52a及び防水筒66を主柱部32との間で挟み込んでいる。この下側クリップ部材65には、ボルトナット65aが取り付けられており、ボルトナット65aを締め付けることにより先端リング部52a及び防水筒66を主柱部32に押圧して固定する。
【0096】
防水ベース部材50Cのカバー部52bは、概略カップ状となっており、主柱部材30の基端側当接部31を覆っている。当接部52cは、カバー部52bから水平方向に屈曲されており、下地3(コンクリート母材)の表面3aに当接している。この当接部52cに対し、防水層60が施工されるものであり、防水層60は当接部52c外周の境界部52dを覆うと共に、境界部52dの周囲のコンクリート母材3の表面を覆っている。この防水層60はカバー防水層として機能する。
【0097】
防水層カバー63は既述の第3実施形態にて説明したものと同様の構成になっている。
この防水層カバー63は、上側クリップ部材67によって主柱部材30の主柱部32に固定される。すなわち、防水層カバー63は、先端リング部63aに、弾性材からなる防水筒68を並設して、防水筒68と共に上側クリップ部材67に挟み込まれる。これにより、先端リング部63aは主柱部32と上側クリップ部材67とに挟まれた状態となり、上側クリップ部材67のボルトナット67aを締め付けることにより主柱部32に固定される。
また、この防水層カバー63は、その内側への浸水を防止することにより、防水用張出部に形成された防水層(カバー防水層)の端部の防水性を担保する機能を果たす。
【0098】
(第5実施形態)
図26〜図36は本発明の第5実施形態の基礎用あと施工アンカー(基礎用アンカー)10Dを示す。この実施形態の基礎用アンカー10Dは、複数の定着用アンカー20を用いてコンクリート構造物1への固定を行うものである。また、防水ベース部材50Cを主柱部材30の主柱部32に固定する防水ベース固定部材として機能する固定用ブロック80を用いるものである。
【0099】
図27及び図28に示すように、主柱部材30は基端側当接部31と主柱部32とが金属によって一体に形成された構成となっている。主柱部32には、雌ねじからなる内ねじ部38が形成されており、ボルト付き先端部材40の螺合による固定が可能となっている。また、主柱部32の軸線方向の先端側(上部側)には、ねじ穴32bが形成されており、このねじ穴32bに止めねじ56がねじ込まれることによりボルト付き先端部材40が主柱部32に固定されるようになっている。
【0100】
主柱部材30の基端側当接部31は、第3実施形態に例示した基礎用アンカーの主柱部材30Aの基端側当接部31と同様の構成であり、主柱部材30の軸線に垂直の方向において主柱部32よりも外側に張り出された張出部31aの周方向複数箇所に、アンカー孔31bが主柱部材30の軸線と平行な軸線を以て貫設された構成になっている。
【0101】
図26及び図30に示すように、防水ベース部材50Cは、第3実施形態に例示したものと同様の構成のものを使用している。この実施形態の基礎用アンカー10Dにおいて、防水ベース部材50Cは、主柱部32に外挿し、カバー部52b内側に主柱部材30の基端側当接部31の張出部を含む全体を収納して、当接部52cを施工対象構造物表面(図示例では既設の防水層5b)に当接させる。
【0102】
この実施形態に用いる固定用ブロック80は、図32及び図33に示すように、円形リングを半分に分割した2つの分割駒81を用いるものである。分割駒81は、その内周面81aが円形となっており、分割駒81を組み付けることにより固定用ブロック80が主柱部材30の主柱部32に外挿される。2つの分割駒81には、軸線方向と交差する横方向に組付用ねじ穴82が形成されている。分割駒81においては、対応した組付用ねじ穴82が連通するように形成されており、分割駒81を組み付けることにより直線に連通した組付用ねじ穴82が形成される。それぞれの組付用ねじ穴82には、組付用ねじ83がねじ込まれる。これにより、分割駒81が組み付けられた固定用ブロック80が形成される。各分割駒81には、連結用ねじ穴84が形成されている。連結用ねじ穴84は防水層カバー63を固定するためのものであり、連結ねじ85が螺合する(図26参照)。
【0103】
この実施形態の基礎用アンカー10Dにおいても、カップ状の防水層カバー63が用いられる。この実施形態においては、防水層カバー63が固定用ブロック80によって固定されるものである。
【0104】
図26及び図35に示すように、カップ状の防水層カバー63は、第3実施形態にて説明した防水層カバー63の先端リング部63aを省略し、天板部63dに固定用ブロック80に螺合する連結ねじ85(図26参照)が貫通する連結穴部63fを形成した構成になっている。天板部63dはリング板状であり、その内側が主柱部材30の主柱部32が通される貫通穴63eとされている。
防水層カバー63は、カバー部63bが防水ベース部材50Cのカバー部52bを覆い、さらに、押え部63cが、防水ベース部材50Cの当接部52c上に形成されたカバー防水層61の上面に当接し、押え部63cとカバー防水層61との間の境界部からカバー部63b内側への水の侵入を防止する。
【0105】
この実施形態の基礎用アンカー10Dの施工は、図27に示すように、防水層5bに施工用穴5cを穿設し、定着用アンカー20を用いて主柱部材30をコンクリート母材3に固定して立設する。次いで、防水ベース部材50Cを主柱部材30の主柱部32に外挿して、カバー部52b内側に主柱部材30の基端側当接部31を収納し、当接部52cをカバー防水層5bに当接させる。
【0106】
次いで、図31に示すように、固定用ブロック80をその内周面81aと主柱部材30の主柱部32外周面との間に、防水ベース部材50Cの先端リング部52a及び先端リング部52aを覆う防水筒66を挟み込んだ状態で、分割駒81の組付用ねじ穴82に組付用ねじ83をねじ込んで、先端リング部52a及び防水筒66を主柱部32に締め付け固定する。そして、主柱部材30に取り付けられた防水ベース部材50Cに対してカバー防水層61を施工する。
【0107】
次に、図34に示すように、防水層カバー63を主柱部材30の主柱部32に外挿し、その押え部63cをカバー防水層61に当接させ、防水層カバー63に形成されている連結穴部63fに貫通させた連結ねじ85を固定用ブロック80の固定用ねじ穴84にねじ込んで、固定用ブロック80を介して防水層カバー63を主柱部32に取り付ける。
防水層カバー63の取り付けが完了したら、図36に示すように、主柱部材30の主柱部32先端から、その内側に、ボルト付き先端部材40の取付部42をねじ込んで螺着し、主柱部32のねじ穴32bに螺合する止めねじ56のねじ込み操作によって取付部42を主柱部32に固定する。その後、カップ状カバー70をボルト付き先端部材40のボルト部43に外挿して、取付部42に取り付ける。
【0108】
なお、下地としてはコンクリート母材に限定されない。防水層が設けられる下地は、例えば鋼板あるいは木製の構造物であっても良い。
【符号の説明】
【0109】
1…コンクリート構造物、2…設置物、3…コンクリート母材、5…断熱防水層、5a…断熱材層、5b…カバー防水層、10、10A、10B、10C、10D、10E…基礎用アンカー、20…定着用アンカー、21…定着部、30…主柱部材、31…基端側当接部、32…主柱部、40…ボルト付き先端部材、41…固定用ねじ、42…取付部、43…ボルト部、48…固定用ナット、50…防水ベース部材、51…筒状部、52…本体部、60…防水層、63…防水層カバー、70…カップ状カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水層(60)が設けられる下地(3)に設置物(2)を固定するための基礎として用いることができる基礎用あと施工アンカーであって、
前記下地に立設される主柱部材(30)と、
前記下地に前記主柱部材の片端の基端側当接部(31)を固定する定着用アンカー(20)と、
前記主柱部材の前記基端側当接部から延出する主柱部(32)に外挿される外挿筒部(53)の片端の全周から防水用張出部が張り出され、前記主柱部材に外挿し、前記防水用張出部の外周部を、前記下地あるいは前記下地を覆う外側層(5)に当接させた状態で、前記防水用張出部の外周部とその周囲に位置する前記下地あるいは前記外側層との境界部(52d)を覆うカバー防水層(61)が形成される防水ベース部材(50)と、
前記主柱部材の前記主柱部にその軸線方向に位置調整して固定される取付部(42)の先端にボルト部(43)が突設されたボルト付き先端部材(40)と、
このボルト付き先端部材の前記取付部を前記主柱部材の主柱部に固定するための固定部材(41、48)とを具備することを特徴する基礎用あと施工アンカー(10、10A、10B、10C、10D、10E)。
【請求項2】
前記主柱部材の主柱部は前記ボルト付き先端部材の取付部を螺着するための雌ねじ孔(35)又は雄ねじ部(36)を有し、前記ボルト付き先端部材の取付部は、回転によって前記主柱部材の主柱部に対する螺着位置を変更することで、主柱部材の主柱部の軸線方向への位置調整が実現されることを特徴とする請求項1に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項3】
前記主柱部材の前記主柱部及び前記ボルト付き先端部材の取付部の一方が他方を収納可能な筒形部とされ、前記固定部材は、前記筒形部にその肉厚を貫通して形成されたねじ孔(39)に螺合する固定用ねじであり、その先端で前記筒形部の内側の前記主柱部又は前記ボルト付き先端部材の取付部を押圧して前記筒形部に固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項4】
前記主柱部材の主柱部が、前記ボルト付き先端部材の取付部を収納可能な筒状に形成され、前記固定部材は、前記ボルト付き先端部材の取付部外周に形成された雄ねじ部(45)に螺合した状態で前記主柱部材の主柱部の先端に当接させ締め付けることで前記取付部を前記主柱部に固定する固定用ナット(48)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項5】
前記ボルト付き先端部材の取付部は前記ボルト部に比べて外形が太い棒状又は筒状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項6】
前記ボルト付き先端部材の前記主柱部材先端から突出された部分に取り付けられることで、前記ボルト付き先端部材の外周面と前記主柱部材の主柱部の外周面との境界を覆うカップ状カバー(70)を具備することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項7】
前記防水ベース部材を前記主柱部材の主柱部に固定する防水ベース固定部材(56、80)を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項8】
前記主柱部材の主柱部に外挿されることで前記カバー防水層の内周端を覆うカップ状に形成されその開口縁部が前記カバー防水層に当接される防水層カバー(63)を有することを特徴する請求項1〜7のいずれかに記載の基礎用あと施工アンカー。
【請求項9】
前記主柱部材に取り付けられて、前記防水層カバーをカバー防水層に向かって押圧する防水層カバー押圧機構(85)を具備することを特徴する請求項8に記載の基礎用あと施工アンカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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