基礎用溶接鉄筋ユニット
【課題】さらに低コストで、かつ高強度材料を用いた建物基礎にも適用できるユニット化された溶接鉄筋を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するため、例えば、構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、線径がJIS規格D10のとき、前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件、即ち1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力500N〜800N 2)電極電流値0.8kA〜12.6kA 3)通電時間40〜48サイクル/秒 4)前記溶接部の溶接後の溶接高11.1mm〜16.3mmで行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
【解決手段】上記課題を解決するため、例えば、構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、線径がJIS規格D10のとき、前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件、即ち1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力500N〜800N 2)電極電流値0.8kA〜12.6kA 3)通電時間40〜48サイクル/秒 4)前記溶接部の溶接後の溶接高11.1mm〜16.3mmで行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物基礎となる梁成の高い地中梁の剪断補強筋として用いられるユニット化された溶接鉄筋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RC(鉄筋コンクリート)造の基礎梁において、梁成が高いと、図35に示すように、途中でコンクリート4を打ち継ぐ必要がある。梁成の高い建物基礎1は、先ず型枠2に180°フック3a付きのコの字形の剪断補強筋3を所定間隔で複数配筋し、底部に主筋8を配筋する。フック3aは継ぎ手部分の強度を保つために必要であった。
【0003】
そして、剪断補強筋3が変形しないようにするため、必要に応じて腹筋9を主筋8に平行に剪断補強筋3の立ち上り部に固定し、下部コンクリート4を梁成の中間部(下部剪断補強筋3のフック3aを埋設しない位置(継目4a(波線))まで打設する。その上に、上部の剪断補強筋3、主筋8、腹筋9を配筋した上で、上部コンクリート4を打設する。このような工法は、配筋が煩雑な上、工期が長く、鉄筋コスト、施工コストが割高であった。
【0004】
そこで、特許文献1等などに公開されているような図36に示す剪断補強筋をユニット化した籠状溶接鉄筋ユニット5(A)、メッシュ状溶接鉄筋ユニット6(B)を用いた地中梁の鉄筋組立工法が提案されている。籠状溶接鉄筋ユニット5(A)は梁の下部、上部に、メッシュ状溶接鉄筋ユニット6(B)は上下を結ぶ側部に用いられる。
【0005】
なお、籠状溶接鉄筋ユニット5(A)では両端を縦筋5eとしたコの字形の底筋5aの底部5dに腹筋5cが、メッシュ状溶接鉄筋ユニット6(B)では縦筋5eに腹筋5cが横筋5bと平行に複数の剪断補強筋と連結されている。
【0006】
何れのユニットも縦筋5eの端部に2本の横筋5bを熔着している。そして、図37に示すように、コンクリート4内に埋設される。横筋5bは、継目4aの上部に位置して、打設される。建物基礎1aが高いと、上下籠状溶接鉄筋ユニット5、5の間にメッシュ状溶接ユニット6を介在させる。その時も、継目4aの上部に重なるように横筋5bが位置する。
【0007】
これにより強固な継ぎ手を実現でき、フック3aを設ける必要がなくなるというものである。従って、鉄筋量の節約、コスト低減、配筋の容易化等による施工コストの低減が図れるとともに、配筋精度も上がるというものである。しかしながら、鉄筋の熔着についてはなんら記載されていない。
【0008】
同様に、非特許文献1には、地中梁二線溶接工法が提案されている。しかしながら、非特許文献1の工法で適用できる剪断補強筋の鋼種は、鉄筋コンクリート用棒鋼(異型棒鋼)のJIS規格のSD295〜SD345まであり、高強度材料(SD390、SD490)を用いた建物は適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭63−16530号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】諏訪熔工株式会社「地中梁二線溶接工法」、日本建築センター評定、BCJ−C1165、昭和62年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、さらに低コストで、かつ高強度材料を用いた建物基礎にも適用できるユニット化された溶接鉄筋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(1)
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D10のとき、
前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
500N〜800N
2)電極電流値
10.8kA〜12.6kA
3)通電時間
40〜48サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
11.1mm〜16.3mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
(2)
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D13のとき、
前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
650N〜1,050N
2)電極電流値
15.3kA〜18.7kA
3)通電時間
54〜66サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
15.0mm〜21.2mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
(3)
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D16のとき、
前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
1,100N〜1,400N
2)電極電流値
19.4kA〜22.6kA
3)通電時間
78〜96サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
20.5mm〜26.4mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
(4)
前記横筋が縦筋の各端部に1本であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の
基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
【0013】
その結果、溶接部交点の剪断強度が、使用するせん断補強筋の引張り強さと同程度とする溶接方法の開発と、これによって2線溶接継手を1線溶接継手とすることが可能となる。また、1線溶接継手にすることによって、使用する鉄筋量の低減とこれによる鉄筋加工費、鉄筋組み立て費の低減が図れることを特徴とする。
【0014】
図1に示すように、本発明である基礎用溶接鉄筋ユニットには、構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、主に、籠状溶接鉄筋ユニット10(A)とメッシュ状溶接鉄筋ユニット11(B)の形状がある。
【0015】
籠状溶接鉄筋ユニット10(A)は、底部10dの両端部を略90°屈曲させて縦筋10eとした複数所定間隔で配置されるコの字形の底筋10aと、左右の縦筋10e、10eにそれぞれ直交して溶接され、縦筋10eを連結する左右1本、計2本の横筋10b、10bと、横筋10bと平行に底部10dに固定され、剪断補強筋である縦筋10e、横筋10bの変形を防止する複数の腹筋5cとからなり、梁の底部又は上部に配置される。縦筋10eが長い場合には、縦筋10eにも腹筋5cを横筋10bに平行に固定する。
【0016】
メッシュ状溶接鉄筋ユニットは、複数平行に所定間隔で配置された縦筋10eと、縦筋10eの上下に縦筋10eと直交して溶接され、縦筋10eを連結する上下1本、計2本の横筋10b、10bと、横筋10bと平行に縦筋10eに固定され、剪断補強筋である縦筋10e、横筋10bの変形を防止する複数の腹筋5cとからなり、梁の側部であって、上下籠状溶接鉄筋ユニット10、10の間に配置される。
【0017】
そして、これら籠状溶接鉄筋ユニット10及びメッシュ状溶接鉄筋ユニット11は、図2に示すように、建物基礎1bのコンクリート4内に剪断補強筋として埋設される。このとき、従来同様、下部籠状溶接鉄筋ユニット10及び上部籠状溶接鉄筋ユニット10の継ぎ手部分(縦筋5eに溶接された横筋5b)は、コンクリート4の継目4aより上部に位置する。なお、梁が高いときは、上下籠状溶接鉄筋ユニット10、10の間に、メッシュ状溶接鉄筋ユニット11を配置する。継ぎ手部分は、継目4aから上に位置する。
【0018】
本発明の基礎用溶接鉄筋ユニットに使用される剪断補強筋の鋼種は、建物基礎の強度に応じて、建物基礎に用いられる鉄筋コンクリート用棒鋼(異型棒鋼)のJIS規格SD295〜SD490まで可能、即ちSD295A、SD295B、SD345、SD390、SD490が採用できる。そして、縦筋10e、横筋10bは同種、同径のものを用い、溶接により、剪断強度は母材(溶接部以外)の最少規格降伏点以上とする。
【0019】
そのような溶接を可能にするため、本発明では、図3に示す電気抵抗スポット溶接12を採用することで実現した。電気抵抗スポット溶接は、溶接材料(溶化材)を用いるアーク溶接などの溶融溶接と異なり、溶接材料を用いずに、図3(A)に示すように、上下の電極12a、12bで縦筋10e、横筋10bの直交部を加圧して通電し、その抵抗発熱で縦筋10e、横筋10bの直交部を加熱溶解して接合(図1溶接部7a)する溶接方法である。
【0020】
そして、本発明では、電気抵抗スポット溶接の諸条件(加圧力、通電電流値、通電時間)を鋭意研究することにより、溶接部の強度を母材以上の剪断強度にできることを見出した。それは、図3(B)に示す溶接部の溶接高(縦筋10e底部〜横筋10b上部までの距離)と関連性があった。
【0021】
電気抵抗スポット溶接の諸条件について以下説明する。本発明である基礎用溶接鉄筋ユニットは、前提として、溶接部の強度が母材の規格降伏点以上の剪断強度を示すことである。そのため、縦筋10e、横筋10bの鋼種(規格、線径)は同一とする。研究の結果、母材の規格降伏点以上の剪断強度は示す条件は、鉄筋のJIS規格(機械的性質)に関係なく、線径(D)に依存した条件があることを見出した。
【0022】
その結果を図4に示す。図4(A)に示すように、D10のときは、溶接部7aの電気抵抗スポット溶接12の電極12a、12bによる加圧力は500N〜800N、電極電流値は10.8kA〜12.6kA、通電時間40〜48サイクル/秒であった。その結果、溶接高は図4(B)に示すように、11.1mm〜16.3mmの範囲に入る。
【0023】
D13のときは、溶接部7aの電気抵抗スポット溶接12の電極12a、12bによる加圧力は650N〜1,050N、電極電流値は15.3kA〜18.7kA、通電時間54〜66サイクル/秒であった。その結果、溶接高は図4(B)に示すように、15.0mm〜21.2mmの範囲に入る。
【0024】
D16のときは、溶接部7aの電気抵抗スポット溶接12の電極12a、12bによる加圧力は1、100N〜1,400N、電極電流値は19.4kA〜22.6kA、通電時間78〜96サイクル/秒であった。その結果、溶接高は図4(B)に示すように、20.5mm〜26.4mmの範囲に入る。
【0025】
上記線径において上記溶接条件を満たすことにより、横筋10bを縦筋10eの端部にそれぞれ1本、計2本溶接した剪断補強筋を、従来同様の継目4aの継ぎ手構造として基礎に埋設しても、基礎の剪断強度を維持することができ、180°フック3aと同等以上の強度を発揮することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記構成であるので、地中梁二線溶接工法同上に配筋の容易化、ユニット化されて剛性が保たれているため立ち上がり筋が不安定にならないことから、配筋精度も向上する。加えて、横筋1本でよいので、また縦筋の配置間隔を広げることができ、地中梁二線溶接工法以上に鉄筋量の節約、コスト低減等による施工コストの低減が図れる。さらに、高強度材料(SD390、SD490)を用いた建物基礎にも採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明である基礎用溶接鉄筋ユニットの斜視模式図である。
【図2】本発明である基礎用溶接鉄筋ユニットを用いた建物基礎の断面模式図である。
【図3】本発明に用いる電気抵抗スポット溶接の模式図である。
【図4】本発明の電気抵抗スポット溶接条件の一覧表である。
【図5】電気抵抗スポット溶接条件の変動範囲を示す表である。
【図6】SD490規格の溶接試験結果をまとめた一覧表である。
【図7】SD490規格、線径D10の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図8】SD490規格、線径D10の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図9】SD490規格、線径D10の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図10】SD490規格、線径D10の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図11】SD490規格、線径D13の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図12】SD490規格、線径D13の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図13】SD490規格、線径D13の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図14】SD490規格、線径D13の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図15】SD490規格、線径D16の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図16】SD490規格、線径D16の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図17】SD490規格、線径D16の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図18】SD490規格、線径D16の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図19】SD490規格、線径D16の溶接部付近の顕微鏡写真である。
【図20】SD295A規格の溶接試験結果をまとめた一覧表である。
【図21】SD295A規格、線径D10の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図22】SD295A規格、線径D10の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図23】SD295A規格、線径D10の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図24】SD295A規格、線径D10の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図25】SD295A規格、線径D13の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図26】SD295A規格、線径D13の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図27】SD295A規格、線径D13の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図28】SD295A規格、線径D13の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図29】SD295A規格、線径D16の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図30】SD295A規格、線径D16の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図31】SD295A規格、線径D16の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図32】SD295A規格、線径D16の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図33】SD295A規格、線径D10の溶接部付近の顕微鏡写真である。
【図34】溶接部の溶接高をまとめた一覧表である。
【図35】従来の建物基礎の断面模式図である。
【図36】従来の基礎用溶接鉄筋ユニットの斜視模式図である。
【図37】従来の基礎用溶接鉄筋ユニットを用いた建物基礎の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。図6〜図19にSD490、図20〜図33にSD295A規格の鉄筋の溶接条件を検討した結果を示した。図5(A)に電極での加圧力を固定して電流値及び通電時間を変動させたときの試験範囲(No.1〜No.9及びA〜H)、図5(B)に通電時間を固定して電極の電流値及び電極での加圧力を変動させたときの試験範囲(No.1〜No.9、A〜H及びA’)を示した。
【実施例1】
【0029】
図6に鋼種SD490の試験結果のまとめを示した。図6、1)が加圧力を固定し他の2要素(電流値、通電時間)を変動させたときの試験結果、図6、2)が通電時間を固定し他の2要素(電流値、加圧力)を変動させたときの試験結果である。そして、図7〜図18に各線径(D10、D13、D16)ごとの試験結果の詳細を示した。○は、溶接部が母材の規格降伏点以上の剪断強度(σu)を示したことを意味する。
【0030】
また、図19に、SD490−D16を上記溶接条件内で溶接したときの溶接部の硬さ測定結果及び組織観察(顕微鏡写真)を示した。硬さ測定では、鉄筋の直径(d)の中心軸(d/2○)と中心軸からd/4(◇)の位置で、溶接部か中心から20mmの範囲について、ビッカース硬さを測定した。組織観察では、溶接部中心から熱影響部境界を3等分した1〜4と溶接部中心から100mm離れた位置5について観察した。図33(SD295A)においても同じ。同様にSD490−D10、13においても硬度、組織観察を行っている(データ示さず)。
【0031】
硬さは、概ね、溶接中心から(3/4)dを境に、溶接部側の硬度が高く、母材側の硬度は低くほぼ一定値となる。なお、溶接部中心から(3/4)dの位置は、溶接部破断位置とほぼ一致する。
【0032】
組織観察結果から、熱影響側の結晶粒度が母材側より細かい。これは、加熱後の冷却速度が母材製造時より速いことによると推定されるが、特に異常な状態でない。硬さ、組織観察結果は、図33のSD295Aの場合も同様であった。
【実施例2】
【0033】
図20に鋼種SD295Aの試験結果のまとめを示した。図20、1)が加圧力を固定し他の2要素(電流値、通電時間)を変動させたときの試験結果、図20、2)が通電時間を固定し他の2要素(電流値、加圧力)を変動させたときの試験結果である。そして、図21〜図32に各線径(D10、D13、D16)ごとの試験結果の詳細を示した。○は、溶接部が母材以上の剪断強度(σu)を示したことを意味する。
【0034】
図34に、実施例1の結果、及び実施例2の結果から、溶接部の溶接高についてその最小値、最大値を示した。その結果、D10においては11.1〜16.3mm、D13においては15.0mm〜21.2mm、D16においては20.5mm〜26.4mmであった。
【0035】
以上の通り、本発明によれば、縦筋、横筋が直交する溶接部の電気抵抗スポット溶接を、鋼種に関係なく、線径に依存した溶接条件を特定することで、縦筋の端部に1本の横筋を溶接することで、横筋が端部に1本であっても、従来同様の剪断強度で基礎の継ぎ手構造を実現することができ、かつ高強度材料(SD395、SD490)であっても採用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 建物基礎
1a 建物基礎
1b 建物基礎
2 型枠
3 剪断補強筋
3a フック
4 コンクリート
4a 継目
5 籠状溶接鉄筋ユニット
5a 底筋
5b 横筋
5c 腹筋
5d 底部
5e 縦筋
6 メッシュ状溶接鉄筋ユニット
7 溶接部
7a 溶接部
8 主筋
9 腹筋
10 籠状溶接鉄筋ユニット
10a 底筋
10b 横筋
10d 底部
10e 縦筋
11 メッシュ状溶接鉄筋ユニット
12 電気抵抗スポット溶接
12a 電極
12b 電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物基礎となる梁成の高い地中梁の剪断補強筋として用いられるユニット化された溶接鉄筋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RC(鉄筋コンクリート)造の基礎梁において、梁成が高いと、図35に示すように、途中でコンクリート4を打ち継ぐ必要がある。梁成の高い建物基礎1は、先ず型枠2に180°フック3a付きのコの字形の剪断補強筋3を所定間隔で複数配筋し、底部に主筋8を配筋する。フック3aは継ぎ手部分の強度を保つために必要であった。
【0003】
そして、剪断補強筋3が変形しないようにするため、必要に応じて腹筋9を主筋8に平行に剪断補強筋3の立ち上り部に固定し、下部コンクリート4を梁成の中間部(下部剪断補強筋3のフック3aを埋設しない位置(継目4a(波線))まで打設する。その上に、上部の剪断補強筋3、主筋8、腹筋9を配筋した上で、上部コンクリート4を打設する。このような工法は、配筋が煩雑な上、工期が長く、鉄筋コスト、施工コストが割高であった。
【0004】
そこで、特許文献1等などに公開されているような図36に示す剪断補強筋をユニット化した籠状溶接鉄筋ユニット5(A)、メッシュ状溶接鉄筋ユニット6(B)を用いた地中梁の鉄筋組立工法が提案されている。籠状溶接鉄筋ユニット5(A)は梁の下部、上部に、メッシュ状溶接鉄筋ユニット6(B)は上下を結ぶ側部に用いられる。
【0005】
なお、籠状溶接鉄筋ユニット5(A)では両端を縦筋5eとしたコの字形の底筋5aの底部5dに腹筋5cが、メッシュ状溶接鉄筋ユニット6(B)では縦筋5eに腹筋5cが横筋5bと平行に複数の剪断補強筋と連結されている。
【0006】
何れのユニットも縦筋5eの端部に2本の横筋5bを熔着している。そして、図37に示すように、コンクリート4内に埋設される。横筋5bは、継目4aの上部に位置して、打設される。建物基礎1aが高いと、上下籠状溶接鉄筋ユニット5、5の間にメッシュ状溶接ユニット6を介在させる。その時も、継目4aの上部に重なるように横筋5bが位置する。
【0007】
これにより強固な継ぎ手を実現でき、フック3aを設ける必要がなくなるというものである。従って、鉄筋量の節約、コスト低減、配筋の容易化等による施工コストの低減が図れるとともに、配筋精度も上がるというものである。しかしながら、鉄筋の熔着についてはなんら記載されていない。
【0008】
同様に、非特許文献1には、地中梁二線溶接工法が提案されている。しかしながら、非特許文献1の工法で適用できる剪断補強筋の鋼種は、鉄筋コンクリート用棒鋼(異型棒鋼)のJIS規格のSD295〜SD345まであり、高強度材料(SD390、SD490)を用いた建物は適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭63−16530号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】諏訪熔工株式会社「地中梁二線溶接工法」、日本建築センター評定、BCJ−C1165、昭和62年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、さらに低コストで、かつ高強度材料を用いた建物基礎にも適用できるユニット化された溶接鉄筋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(1)
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D10のとき、
前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
500N〜800N
2)電極電流値
10.8kA〜12.6kA
3)通電時間
40〜48サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
11.1mm〜16.3mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
(2)
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D13のとき、
前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
650N〜1,050N
2)電極電流値
15.3kA〜18.7kA
3)通電時間
54〜66サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
15.0mm〜21.2mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
(3)
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D16のとき、
前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
1,100N〜1,400N
2)電極電流値
19.4kA〜22.6kA
3)通電時間
78〜96サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
20.5mm〜26.4mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
(4)
前記横筋が縦筋の各端部に1本であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の
基礎用溶接鉄筋ユニットの構成とした。
【0013】
その結果、溶接部交点の剪断強度が、使用するせん断補強筋の引張り強さと同程度とする溶接方法の開発と、これによって2線溶接継手を1線溶接継手とすることが可能となる。また、1線溶接継手にすることによって、使用する鉄筋量の低減とこれによる鉄筋加工費、鉄筋組み立て費の低減が図れることを特徴とする。
【0014】
図1に示すように、本発明である基礎用溶接鉄筋ユニットには、構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、主に、籠状溶接鉄筋ユニット10(A)とメッシュ状溶接鉄筋ユニット11(B)の形状がある。
【0015】
籠状溶接鉄筋ユニット10(A)は、底部10dの両端部を略90°屈曲させて縦筋10eとした複数所定間隔で配置されるコの字形の底筋10aと、左右の縦筋10e、10eにそれぞれ直交して溶接され、縦筋10eを連結する左右1本、計2本の横筋10b、10bと、横筋10bと平行に底部10dに固定され、剪断補強筋である縦筋10e、横筋10bの変形を防止する複数の腹筋5cとからなり、梁の底部又は上部に配置される。縦筋10eが長い場合には、縦筋10eにも腹筋5cを横筋10bに平行に固定する。
【0016】
メッシュ状溶接鉄筋ユニットは、複数平行に所定間隔で配置された縦筋10eと、縦筋10eの上下に縦筋10eと直交して溶接され、縦筋10eを連結する上下1本、計2本の横筋10b、10bと、横筋10bと平行に縦筋10eに固定され、剪断補強筋である縦筋10e、横筋10bの変形を防止する複数の腹筋5cとからなり、梁の側部であって、上下籠状溶接鉄筋ユニット10、10の間に配置される。
【0017】
そして、これら籠状溶接鉄筋ユニット10及びメッシュ状溶接鉄筋ユニット11は、図2に示すように、建物基礎1bのコンクリート4内に剪断補強筋として埋設される。このとき、従来同様、下部籠状溶接鉄筋ユニット10及び上部籠状溶接鉄筋ユニット10の継ぎ手部分(縦筋5eに溶接された横筋5b)は、コンクリート4の継目4aより上部に位置する。なお、梁が高いときは、上下籠状溶接鉄筋ユニット10、10の間に、メッシュ状溶接鉄筋ユニット11を配置する。継ぎ手部分は、継目4aから上に位置する。
【0018】
本発明の基礎用溶接鉄筋ユニットに使用される剪断補強筋の鋼種は、建物基礎の強度に応じて、建物基礎に用いられる鉄筋コンクリート用棒鋼(異型棒鋼)のJIS規格SD295〜SD490まで可能、即ちSD295A、SD295B、SD345、SD390、SD490が採用できる。そして、縦筋10e、横筋10bは同種、同径のものを用い、溶接により、剪断強度は母材(溶接部以外)の最少規格降伏点以上とする。
【0019】
そのような溶接を可能にするため、本発明では、図3に示す電気抵抗スポット溶接12を採用することで実現した。電気抵抗スポット溶接は、溶接材料(溶化材)を用いるアーク溶接などの溶融溶接と異なり、溶接材料を用いずに、図3(A)に示すように、上下の電極12a、12bで縦筋10e、横筋10bの直交部を加圧して通電し、その抵抗発熱で縦筋10e、横筋10bの直交部を加熱溶解して接合(図1溶接部7a)する溶接方法である。
【0020】
そして、本発明では、電気抵抗スポット溶接の諸条件(加圧力、通電電流値、通電時間)を鋭意研究することにより、溶接部の強度を母材以上の剪断強度にできることを見出した。それは、図3(B)に示す溶接部の溶接高(縦筋10e底部〜横筋10b上部までの距離)と関連性があった。
【0021】
電気抵抗スポット溶接の諸条件について以下説明する。本発明である基礎用溶接鉄筋ユニットは、前提として、溶接部の強度が母材の規格降伏点以上の剪断強度を示すことである。そのため、縦筋10e、横筋10bの鋼種(規格、線径)は同一とする。研究の結果、母材の規格降伏点以上の剪断強度は示す条件は、鉄筋のJIS規格(機械的性質)に関係なく、線径(D)に依存した条件があることを見出した。
【0022】
その結果を図4に示す。図4(A)に示すように、D10のときは、溶接部7aの電気抵抗スポット溶接12の電極12a、12bによる加圧力は500N〜800N、電極電流値は10.8kA〜12.6kA、通電時間40〜48サイクル/秒であった。その結果、溶接高は図4(B)に示すように、11.1mm〜16.3mmの範囲に入る。
【0023】
D13のときは、溶接部7aの電気抵抗スポット溶接12の電極12a、12bによる加圧力は650N〜1,050N、電極電流値は15.3kA〜18.7kA、通電時間54〜66サイクル/秒であった。その結果、溶接高は図4(B)に示すように、15.0mm〜21.2mmの範囲に入る。
【0024】
D16のときは、溶接部7aの電気抵抗スポット溶接12の電極12a、12bによる加圧力は1、100N〜1,400N、電極電流値は19.4kA〜22.6kA、通電時間78〜96サイクル/秒であった。その結果、溶接高は図4(B)に示すように、20.5mm〜26.4mmの範囲に入る。
【0025】
上記線径において上記溶接条件を満たすことにより、横筋10bを縦筋10eの端部にそれぞれ1本、計2本溶接した剪断補強筋を、従来同様の継目4aの継ぎ手構造として基礎に埋設しても、基礎の剪断強度を維持することができ、180°フック3aと同等以上の強度を発揮することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記構成であるので、地中梁二線溶接工法同上に配筋の容易化、ユニット化されて剛性が保たれているため立ち上がり筋が不安定にならないことから、配筋精度も向上する。加えて、横筋1本でよいので、また縦筋の配置間隔を広げることができ、地中梁二線溶接工法以上に鉄筋量の節約、コスト低減等による施工コストの低減が図れる。さらに、高強度材料(SD390、SD490)を用いた建物基礎にも採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明である基礎用溶接鉄筋ユニットの斜視模式図である。
【図2】本発明である基礎用溶接鉄筋ユニットを用いた建物基礎の断面模式図である。
【図3】本発明に用いる電気抵抗スポット溶接の模式図である。
【図4】本発明の電気抵抗スポット溶接条件の一覧表である。
【図5】電気抵抗スポット溶接条件の変動範囲を示す表である。
【図6】SD490規格の溶接試験結果をまとめた一覧表である。
【図7】SD490規格、線径D10の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図8】SD490規格、線径D10の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図9】SD490規格、線径D10の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図10】SD490規格、線径D10の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図11】SD490規格、線径D13の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図12】SD490規格、線径D13の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図13】SD490規格、線径D13の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図14】SD490規格、線径D13の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図15】SD490規格、線径D16の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図16】SD490規格、線径D16の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図17】SD490規格、線径D16の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図18】SD490規格、線径D16の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図19】SD490規格、線径D16の溶接部付近の顕微鏡写真である。
【図20】SD295A規格の溶接試験結果をまとめた一覧表である。
【図21】SD295A規格、線径D10の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図22】SD295A規格、線径D10の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図23】SD295A規格、線径D10の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図24】SD295A規格、線径D10の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図25】SD295A規格、線径D13の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図26】SD295A規格、線径D13の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図27】SD295A規格、線径D13の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図28】SD295A規格、線径D13の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図29】SD295A規格、線径D16の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(1)である。
【図30】SD295A規格、線径D16の溶接試験(電流値、通電時間変動)結果(2)である。
【図31】SD295A規格、線径D16の溶接試験(圧力変動)結果(3)である。
【図32】SD295A規格、線径D16の溶接試験(圧力変動)結果(4)である。
【図33】SD295A規格、線径D10の溶接部付近の顕微鏡写真である。
【図34】溶接部の溶接高をまとめた一覧表である。
【図35】従来の建物基礎の断面模式図である。
【図36】従来の基礎用溶接鉄筋ユニットの斜視模式図である。
【図37】従来の基礎用溶接鉄筋ユニットを用いた建物基礎の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。図6〜図19にSD490、図20〜図33にSD295A規格の鉄筋の溶接条件を検討した結果を示した。図5(A)に電極での加圧力を固定して電流値及び通電時間を変動させたときの試験範囲(No.1〜No.9及びA〜H)、図5(B)に通電時間を固定して電極の電流値及び電極での加圧力を変動させたときの試験範囲(No.1〜No.9、A〜H及びA’)を示した。
【実施例1】
【0029】
図6に鋼種SD490の試験結果のまとめを示した。図6、1)が加圧力を固定し他の2要素(電流値、通電時間)を変動させたときの試験結果、図6、2)が通電時間を固定し他の2要素(電流値、加圧力)を変動させたときの試験結果である。そして、図7〜図18に各線径(D10、D13、D16)ごとの試験結果の詳細を示した。○は、溶接部が母材の規格降伏点以上の剪断強度(σu)を示したことを意味する。
【0030】
また、図19に、SD490−D16を上記溶接条件内で溶接したときの溶接部の硬さ測定結果及び組織観察(顕微鏡写真)を示した。硬さ測定では、鉄筋の直径(d)の中心軸(d/2○)と中心軸からd/4(◇)の位置で、溶接部か中心から20mmの範囲について、ビッカース硬さを測定した。組織観察では、溶接部中心から熱影響部境界を3等分した1〜4と溶接部中心から100mm離れた位置5について観察した。図33(SD295A)においても同じ。同様にSD490−D10、13においても硬度、組織観察を行っている(データ示さず)。
【0031】
硬さは、概ね、溶接中心から(3/4)dを境に、溶接部側の硬度が高く、母材側の硬度は低くほぼ一定値となる。なお、溶接部中心から(3/4)dの位置は、溶接部破断位置とほぼ一致する。
【0032】
組織観察結果から、熱影響側の結晶粒度が母材側より細かい。これは、加熱後の冷却速度が母材製造時より速いことによると推定されるが、特に異常な状態でない。硬さ、組織観察結果は、図33のSD295Aの場合も同様であった。
【実施例2】
【0033】
図20に鋼種SD295Aの試験結果のまとめを示した。図20、1)が加圧力を固定し他の2要素(電流値、通電時間)を変動させたときの試験結果、図20、2)が通電時間を固定し他の2要素(電流値、加圧力)を変動させたときの試験結果である。そして、図21〜図32に各線径(D10、D13、D16)ごとの試験結果の詳細を示した。○は、溶接部が母材以上の剪断強度(σu)を示したことを意味する。
【0034】
図34に、実施例1の結果、及び実施例2の結果から、溶接部の溶接高についてその最小値、最大値を示した。その結果、D10においては11.1〜16.3mm、D13においては15.0mm〜21.2mm、D16においては20.5mm〜26.4mmであった。
【0035】
以上の通り、本発明によれば、縦筋、横筋が直交する溶接部の電気抵抗スポット溶接を、鋼種に関係なく、線径に依存した溶接条件を特定することで、縦筋の端部に1本の横筋を溶接することで、横筋が端部に1本であっても、従来同様の剪断強度で基礎の継ぎ手構造を実現することができ、かつ高強度材料(SD395、SD490)であっても採用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 建物基礎
1a 建物基礎
1b 建物基礎
2 型枠
3 剪断補強筋
3a フック
4 コンクリート
4a 継目
5 籠状溶接鉄筋ユニット
5a 底筋
5b 横筋
5c 腹筋
5d 底部
5e 縦筋
6 メッシュ状溶接鉄筋ユニット
7 溶接部
7a 溶接部
8 主筋
9 腹筋
10 籠状溶接鉄筋ユニット
10a 底筋
10b 横筋
10d 底部
10e 縦筋
11 メッシュ状溶接鉄筋ユニット
12 電気抵抗スポット溶接
12a 電極
12b 電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D10のとき、前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
500N〜800N
2)電極電流値
10.8kA〜12.6kA
3)通電時間
40〜48サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
11.1mm〜16.3mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニット。
【請求項2】
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D13のとき、前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
650N〜1,050N
2)電極電流値
15.3kA〜18.7kA
3)通電時間
54〜66サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
15.0mm〜21.2mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニット。
【請求項3】
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D16のとき、前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
1、100N〜1,400N
2)電極電流値
19.4kA〜22.6kA
3)通電時間
78〜96サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
20.5mm〜26.4mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニット。
【請求項4】
前記横筋が縦筋の各端部に1本であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の基礎用溶接鉄筋ユニット。
【請求項1】
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D10のとき、前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
500N〜800N
2)電極電流値
10.8kA〜12.6kA
3)通電時間
40〜48サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
11.1mm〜16.3mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニット。
【請求項2】
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D13のとき、前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
650N〜1,050N
2)電極電流値
15.3kA〜18.7kA
3)通電時間
54〜66サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
15.0mm〜21.2mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニット。
【請求項3】
構造物の基礎コンクリート内に剪断補強筋として埋設される鉄筋ユニットであって、
JIS規格SD295A〜SD490の内から選ばれた同一規格の複数の縦筋と、前記縦筋と同一規格で前記縦筋に直交して縦筋同士を電気抵抗スポット溶接で連結する横筋とからなり、
線径がJIS規格D16のとき、前記電気抵抗スポット溶接が次の1)〜4)の条件
1)前記縦筋及び横筋が交差する溶接部の電気抵抗スポット溶接の電極による加圧力
1、100N〜1,400N
2)電極電流値
19.4kA〜22.6kA
3)通電時間
78〜96サイクル/秒
4)前記溶接部の溶接後の溶接高
20.5mm〜26.4mm
で行われることを特徴とする基礎用溶接鉄筋ユニット。
【請求項4】
前記横筋が縦筋の各端部に1本であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の基礎用溶接鉄筋ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図19】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図19】
【図33】
【公開番号】特開2013−19240(P2013−19240A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155527(P2011−155527)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(500012916)昭和エンジニアリング有限会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(500012916)昭和エンジニアリング有限会社 (3)
【Fターム(参考)】
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