説明

堆積体の製造方法及び製造装置

【課題】繊維材料及び吸水性ポリマーを含む堆積体を製造するに際し、堆積体の厚み方向における吸水性ポリマーの分布状態を、複雑な設備を要することなく効率的に所望の状態に制御することのできる、堆積体の製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明の堆積体の製造方法は、ダクト3内を流れる繊維搬送気流42中に、ポリマー供給管5を介して吸水性ポリマーを導入し、飛散状態とされた繊維材料及び吸水性ポリマーを吸引により堆積させる工程を具備する堆積体8の製造方法であり、一つのポリマー供給管5からダクト3内に導入される吸水性ポリマー51に複数の流れ方向F1,F2を与え、堆積体8の厚み方向における吸水性ポリマー51の分布状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料に加えて吸水性ポリマーを含むものが汎用されている。
吸収体の厚さ方向における吸水性ポリマーの分散状態は、吸収体やそれを用いた吸収性物品の触感や性能の面などから重要である。
【0003】
吸収性ポリマーを含む吸収体の製造方法として、ダクト内を流れる空気流に載せて供給した繊維材料及び吸収性ポリマーを、積繊(回転)ドラムの外周面に設けた集積用凹部(堆積部)に堆積させ、その堆積体を、そのまま、あるいは紙や通気性の不織布等で被覆して吸収体とする方法が知られている。
このような方法において、吸水性ポリマーを、堆積体ないし吸収体の厚み方向に分散させる技術としては、回転ドラムに向けてダクト内を流れる繊維搬送気流中に、吸水性ポリマーを、繊維搬送気流の流れの向きに対して吸水性ポリマーの流れの向きが直交から正対向するように導入する技術(特許文献1参照)、ダクトに繊維搬送気流の流れ方向に離間させて複数のポリマー供給管を設け、ポリマー供給管のポリマー導出口の位置を調整することで複数種類の粒子を所望の態様に分散させるようにする技術(特許文献2参照)、ポリマー供給管を積繊(回転)ドラム近傍に設置し、吸水性ポリマーを層状に積繊する技術(特許文献3参照)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−337954号公報
【特許文献2】特開2000−343010号公報
【特許文献3】特開2006−115999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、吸水性ポリマーと繊維材料の混合を均一化する点では優れているが、厚み方向のポリマーの分布状態を意図的に制御することは困難である。
特許文献2の技術は、堆積体ないし吸収体の厚み方向に複数のポリマーリッチ層を形成する場合、その層と同数のポリマー供給管とそれぞれの供給管に吸水性ポリマーを供給する手段が必要となり、設備が、複雑で高価格なものとなってしまう。
特許文献3の技術は、吸水性ポリマーを供給する位置が積繊ドラムの表面に近いため、吸水性ポリマーと繊維材料との混合が充分ではなく、また、ポリマー供給管の存在が繊維材料の流れと干渉して、繊維材料の積繊状態に悪影響を与えるという不都合がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、繊維材料及び吸水性ポリマーを含む堆積体を製造するに際し、堆積体の厚み方向における吸水性ポリマーの分布状態を、複雑な設備を要することなく効率的に所望の状態に制御することのできる、堆積体の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ダクト内を流れる繊維搬送気流中に、ポリマー供給管を介して吸水性ポリマーを導入し、飛散状態とされた繊維材料及び吸水性ポリマーを吸引により堆積させる工程を具備する堆積体の製造方法であって、一つのポリマー供給管から前記ダクト内に導入される吸水性ポリマーに複数の流れ方向を与え、堆積体の厚み方向における吸水性ポリマーの分布状態を制御する堆積体の製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
本発明は、ダクト内を流れる繊維搬送気流中に、ポリマー供給管を介して吸水性ポリマーを導入し、飛散状態とされた繊維及び吸水性ポリマーを吸引により堆積部に堆積させるように構成されている堆積体の製造装置であって、一つのポリマー供給管から前記ダクト内に導入される吸水性ポリマーに複数の流れ方向を与える方向制御手段を備えている堆積体の製造装置を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の堆積体の製造方法及び製造装置によれば、繊維材料及び吸水性ポリマーを含む堆積体を製造するに際し、堆積体の厚み方向における吸水性ポリマーの分布状態を、複雑な設備を要することなく効率的に所望の状態に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明の一実施形態である堆積体の製造装置1は、図1に示すように、回転ドラム2に向けてダクト3内を流れる繊維搬送気流42中に、ポリマー供給管5を介して吸水性ポリマー51を導入し、飛散状態とされた繊維材料及び吸水性ポリマー51を吸引により所定形状に堆積させるように構成されている。
【0011】
本製造装置1は、外周面に複数の集積用凹部21(堆積部)が所定の間隔で形成された回転ドラム2と、回転ドラム2の外周面の一部を覆う一端部を有するダクト3を備えている。
回転ドラム2は、円筒状をなし、図1中の矢印A方向に回転駆動されるようになされている。回転ドラム2の外周面には、繊維材料及び吸水性ポリマーの堆積体に付与すべき形状に対応する形状の集積用凹部21,21・・が形成されている。回転ドラム2には、吸気ファン(図示せず)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム内の仕切られた空間B及びCを負圧に維持可能に構成されている。個々の集積用凹部21の底面部は、多数の細孔(図示せず)が形成されており、個々の集積用凹部21が、負圧に維持された空間B,C上を通過している間、各集積用凹部21の底面部の細孔が吸引孔として機能する。
【0012】
また、空間B上に位置する集積用凹部21の底面部からの吸引が行われることにより、ダクト3内に、回転ドラム2の外周面に向けて流れる空気流が生じる。
ダクト3における、回転ドラム2側とは反対側の端部付近には、パルプシート等のシート状の原料41を粉砕して、繊維材料としてダクト3内に供給する繊維材料供給装置4が設けられている。繊維材料は、前記吸気ファンの駆動によりダクト3内に生じた空気流と混合され、繊維搬送気流42となって、回転ドラム2の外周面に向けて搬送される。図1中、符号43は、粉砕機である。
【0013】
ダクト3は、上壁31、下壁32及び左右の側壁(図示せず)を有する断面矩形の筒状をなしており、ダクト3における回転ドラム2と繊維材料の導入部位44との間の上壁31に、吸水性ポリマー51をダクト3内に導入するためのポリマー供給管5が設けられている。
ポリマー供給管5は、図2及び図3に示すように、ダクト3内に位置する先端部に、ダクト3内に導入される吸水性ポリマー51に複数の流れ方向を与える分流プレート(分流部材,方向制御手段)53を備えている。
【0014】
図2に示すように、ポリマー供給管5は、断面円形の筒状本体50を主体として構成されている。本実施形態における分流プレート53は、板状体であり、図3及び図4に示すように、筒状本体50を斜めに切断して生じた端部の形状と一致する楕円形状の板の一部を直線状に切断して除去した形状を有している。分流プレート53は、筒状本体50の先端部に固定されている。分流プレート53は、筒状本体50の中心軸線Lに対して傾斜させて設けられており、また、ダクト3の上壁31に対して略平行に設けられている。
【0015】
ポリマー供給管5の先端部に分流プレート53が設けられていることによって、図2及び図3に示すように、ポリマー供給管5の先端部に、第1及び第2のポリマー導入口54a、54bが形成されている。
第1のポリマー導入口54aは、分流プレート53の後端53aと筒状本体50の円弧状の先端縁50cとに囲まれた開口部として形成されており、第2のポリマー導入口54bは、分流プレート53の上面と、筒状本体50の先端部近傍に設けられた切欠部の端縁50dとに囲まれた開口部として形成されている。
また、第1のポリマー導入口54aは、筒状本体50の中心軸線Lに対して、繊維搬送気流42の流れ方向(X方向)の上流側に開口しており、第2のポリマー導入口54bは、筒状本体50の中心軸線Lに対して、繊維搬送気流42の流れ方向(X方向)の下流側に開口している。
【0016】
ポリマー供給管5の中心軸線Lと分流プレート53とがなす角度θ1(本実施形態においては、筒状本体50の中心軸線Lと分流プレート53とがなす角度,図2参照)は、100〜170度、特に110〜150度であることが好ましい。
また、分流プレート53の配置位置は、ダクト3の上面からの距離h(図2参照)が、5〜30cm、特に5〜20cmであることが好ましい。
【0017】
図2に示すように、本実施形態におけるポリマー供給管5は、内部に圧縮空気を噴射する圧縮空気噴射口52を有している。具体的には、筒状本体50の内周面に噴射ノズル55の噴射口(圧縮空気噴射口)52が開口しており、該噴射ノズル55は、接続管56を介して、電磁弁を備えた圧縮空気のタンク(図示せず)に接続されている。そして、その電磁弁の開閉の制御により、圧縮空気の噴射を制御可能である。圧縮空気のタンクには、コンプレッサーが接続されており、タンク内の圧力が、常時、所定の範囲の圧力に維持されるようになされている。
【0018】
ポリマー供給管5の口径は10〜100mmが好ましく、圧縮空気噴射口52の口径は3〜30mmが好ましく、圧縮空気の供給圧力は圧縮空気噴射口の口径にもよるが、0.02〜1.5MPaであることが好ましい。
【0019】
ポリマー供給管5の筒状本体50のもう一方の端部には、ロート状のポリマー導入管57が接続されており、該ポリマー導入管57の逆円錐状のポリマー投入口58に、図示しないスクリューフィーダー等により吸水性ポリマーが投入され、投入された吸水性ポリマーが、ポリマー導入管57及びポリマー供給管5の筒状本体50を通って、第1及び第2のポリマー導入口54a,54bから、ダクト3内へ供給されるようになされている。
【0020】
ダクト内に供給する繊維材料としては、従来、生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等のセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン等の合成繊維の短繊維等が用いられる。これらの繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
繊維材料は、全体又は一部がパルプ繊維であることが好ましく、繊維材料中のパルプ繊維の割合は20〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%であり、更に好ましくは100質量%である。
尚、ダクト内には、繊維材料以外に、消臭剤や抗菌剤等を必要に応じ供給してよい。
【0021】
吸収性ポリマーとしては、従来、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系のもの等を用いることができる。吸収性ポリマーは、通常、粒子状である。吸収性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液吸収性保持力を有し且つゲル化する性質を有するものが好ましく、例えば、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、アクリル酸(塩)重合体などが好ましい。これらの吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
本実施形態の製造装置1は、図1に示すように、回転ドラム2に向けてダクト3内を流れる繊維搬送気流42中に、ポリマー供給管5を介して吸水性ポリマー51を導入し、飛散状態とされた繊維材料及び吸水性ポリマー51を、空間B上に位置する集積用凹部21の底面部からの吸引により集積用凹部21内に堆積させ、その堆積体8を、集積用凹部21内に吸引保持したまま、回転ドラム2の下端部まで搬送した後、バキュームコンベア6上の第1コアラップシート7A上に離型するように構成されている。バキュームコンベア6は、通気性の無端ベルト61及びバキュームボックス62を備えており、無端ベルト61上に、第1コアラップシート7Aが供給された後、第1コアラップシート7A上に、繊維材料及び吸水性ポリマーの堆積体8が載置され、その堆積体8上に、更に第2コアラップシート7Bが供給されるように構成されている。
尚、集積用凹部21からの離型は、回転ドラム2内の仕切られた空間Dを図示しない加圧手段により陽圧に維持して、集積用凹部21の底面部の細孔から空気を吹き出させると共に、バキュームコンベア6から吸引することにより行われる。
【0023】
上述した堆積体の製造装置1を用いた堆積体の製造方法、即ち本発明の堆積体の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の堆積体の製造方法は、ダクト3内を流れる繊維搬送気流42中に、ポリマー供給管5を介して吸水性ポリマー51を導入し、飛散状態とされた繊維材料及び吸水性ポリマー51を所定形状に堆積させる工程を具備しており、当該工程において、一つのポリマー供給管5からダクト3内に導入される吸水性ポリマー51に複数の流れ方向F1,F2を与え、堆積体8の厚み方向における吸水性ポリマー51の分布状態を所望の状態に制御する。
【0024】
本実施形態の製造方法について更に詳細に説明する。
堆積体の製造装置1を用いて堆積体8を製造するためには、回転ドラム2を回転させると共に、上記吸気ファンを作動させて空間B及びCを負圧にする。また、バキュームコンベア6を作動させ、更に第1及び第2コアラップシート7A,7Bの供給機構も作動させる。
吸気ファンの作動により、空間B上に位置する集積用凹部20の底面部に吸引力が生じると共に、ダクト3内に、回転ドラム2の外周面に向けて流れる空気流が生じる。
【0025】
そして、繊維材料供給装置4を作動させて、ダクト3内に繊維材料を供給すると、該繊維材料は、飛散状態となって、ダクト3内を流れる空気流に載って、繊維搬送気流42として、回転ドラム2の外周面に向けて搬送される。
【0026】
また、スクリューフィーダー等を作動させ、吸水性ポリマーをポリマー投入口58に投入する。また、必要に応じて、圧縮空気噴射口52から圧縮空気を噴射させる。
ポリマー投入口58に投入された吸水性ポリマーは、主としてダクトに生じた空気流の影響によりポリマー導入管57及びポリマー供給管5内に生じる空気の流れと、自重によって、ポリマー供給管5内へと導かれる。圧縮空気噴射口52から圧縮空気を噴射した場合は、
ポリマー供給管5内で吸水性ポリマー51が強く加速される。
そして、ポリマー供給管5内へと導かれた吸水性ポリマー51は、図1に示すように、第1のポリマー導入口54aからダクト内に導入される吸収性ポリマーと、第2のポリマー導入口54aからダクト3内に導入される吸収性ポリマーとに分かれ、相互に流れ方向の異なる流れF1,F2となってダクト3に導入される。
【0027】
図5は、本実施形態の方法により得られる堆積体8(離型後)の厚み方向の断面を示す図であり、ダクト3内に導入される吸収性ポリマー51に、相互に流れ方向の異なる流れF1,F2を形成してダクト3に導入したことによって、厚み方向に2つのポリマーリッチ層81,82が形成されている。図5及び後述する図6の各図においては、上下方向の上側の面が、集積用凹部の底面部に接していた面8aであり、ポリマーリッチ層81は、流れF1に対応し、ポリマーリッチ層82は、流れF2に対応する。尚、堆積体8は、図1に示すバキュームコンベア6上に位置する状態においては、集積用凹部の底面部に接していた面8aが上方を向いている。
【0028】
吸水性ポリマー51の分布状態は、図5に示すものに制限されず、分流プレート53の配置位置(ダクト3の上面からの距離)や、第1のポリマー導入口54aの面積等を変更することにより、堆積体8やそれを用いて製造する吸収体9の厚み方向における吸収性ポリマーの分布状態を所望の状態とすることができる。
例えば、分流プレート53の大きさに対する第1のポリマー導入口54aの大きさの比を、図5に示す堆積体を製造した場合よりも大きくことにより、図6(a)に示すような、ポリマーの分布状態を得ることができ、逆に、分流プレート53の大きさに対する第1のポリマー導入口54aの大きさの比を、図5に示す堆積体を製造した場合よりも小さくすることにより、図6(b)に示すような、ポリマーの分布状態を得ることができる。更に、堆積体8の厚み方向の全体に吸収性ポリマーが分布するものを製造することもできる。
【0029】
本実施形態においては、ポリマー散布は1つの散布管がダクトの幅方向中央に配置されて行われている。ポリマーの分散状態を厚み方向にコントロールするのは、本発明の分流によるところが大きい。ポリマーの供給は1箇所で行われることが好ましい。複数箇所から供給すると、それだけ設備の負荷が大きくなる。ポリマーは、ダクトの幅方向中央の一箇所から投入して、左右対称に分散させることが好ましい。幅方向の分散は、圧縮空気の流速によるところが大きく、これを調整することで、均一に分散させる事ができる。
一般に、分流プレートの角度調整において、空気流のベクトル(流れの水平方向)に角度を持たせる方法が厚み方向への分散性コントロールであり、空気流のベクトルと直交する方向に角度を持たせることが、幅方向への分散性コントロールである。
厚み方向の分散として、分流プレート位置を上に上げると、ドラムの外側表面にリッチな構成となり、逆に分流プレート位置を下げると、ドラムの内側にリッチな構成となる傾向がある。また、圧縮空気の流速を高めると、分散状態が広範囲にわたるようになるため、厚み方向と、幅方向の分散性が優れるようになる。
【0030】
図1に示す実施形態においては、集積用凹部21内の繊維材料21及び吸収性ポリマー51の堆積体8は、回転ドラム2の下端部まで搬送され、集積用凹部21の形状に対応する形状に成形された堆積体8として、集積用凹部21から離型される。そして、集積用凹部21から離型された堆積体8は、第1及び第2コアラップシート7A,7B間に配置されて、吸収体の連続体9Aとされる。この吸収体の連続体9Aは、公知の搬送手段により後の工程に搬送され、公知の切断手段により切断されて、個々の吸収性物品に使用される吸収体9となる。
このようにして製造した吸収体9も、上述のように製造した堆積体8を含むものであるため、厚み方向に所望の状態に吸水性ポリマー51が分布したものとなる。
【0031】
以上、本発明の堆積体の製造方法及び製造装置それぞれの一実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に制限されず適宜変更可能である。
例えば、分流プレートとしては、一つのポリマー供給管からダクト内に導入される吸水性ポリマーに複数の流れ方向を与え得る限り多様な形状のものを用いることができ、例えば、他の分流プレートの形状の例として、図7に示す分流プレート53Aを挙げることができる。分流プレート53Aにおいては、ダクト3内を流れる繊維搬送気流の流れ方向(X方向)の上流側に、櫛歯状に複数本のスリットが形成され、該各スリットが、第1のポリマー導入口54aである。分流部材としては、分流プレート53,53Aのように板状のものに代えて、ブロック状のもの等を用いることもできる。
【0032】
また、分流プレート53等の分流部材は、ポリマー供給管5の先端部に設けるのに代えて、図8に示すように、ポリマー供給管5から離間させ、該ポリマー供給管5の先端部の近傍に設けることもできる。
図8に示す実施形態においては、ダクトの左右の側壁から延びる支持棒(図示せず)に支持された分流プレート53Bが、ポリマー供給管5の中心軸線Lの延長線上に配されている。分流プレート53Bとしては、楕円形状のものや、繊維搬送気流の流れ方向(X方向)を短辺とする長方形状のもの、正方形状のもの等を用いることができる。
図8に示す実施形態においては、ポリマー供給管5から供給される吸水性ポリマーが、分流プレート53の前後に分かれて、流れ方向の異なる流れF1,F2として、ダクト3内に供給される。
【0033】
図9に示す実施形態における方向制御手段は、ポリマー供給管5の先端部近傍に設けられた噴射口59aから、圧縮空気を間欠的に噴射する圧縮空気の噴射装置である。
図9に示す実施形態においては、ダクト3の上壁31を貫通する接続管59bを介して、圧縮空気が先端部の噴射ノズル59cに供給され、該噴射ノズル59cの噴射口59から、圧縮空気が噴射される。接続管59bは、圧縮空気のタンク(図示せず)に接続されている。該噴射ノズル59cと圧縮空気のタンクとの間には、電磁弁が設けられており、図示しない制御装置(コンピュータ等)により電磁弁が所定のサイクルで開閉を繰り返すように制御され、それにより、圧縮空気が間欠的に噴射されるようになっている。圧縮空気のタンクには、コンプレッサーが接続されており、タンク内の圧力が、常時、所定の範囲の圧力に維持されるようになされている。
【0034】
図9に示す実施形態においては、ポリマー供給管5から導入される吸水性ポリマーは、ポリマー供給管5の先端部近傍の噴射口59aから圧縮空気が噴射されている間は、図9(a)に示すように、繊維搬送気流の流れ方向(X方向)と略平行な方向F1に流れ、圧縮空気が噴射されていない間は、図9(b)に示すように、繊維搬送気流の流れ方向(X方向)に対して大きな角度をなす方向F3に流れる。圧縮空気の噴射と停止とを短いサイクルで繰り返すことにより、吸水性ポリマーに、実質的に同時に複数の流れ方向F2,F3を与えることができる。圧縮空気の間欠的な噴射は、圧縮空気の噴射とその停止を、1秒間に10〜50回程度行うことが好ましく、1秒間に25〜50回程度行うことがより好ましい。
【0035】
また、本発明に係る製造装置は、分流プレートを一つではなく、複数備えたものであっても良い。例えば図10は、3つの分流プレート53C〜53Eを備えたポリマー供給管5を示している。
図10に示す実施形態において、ポリマー供給管5内へと導かれた吸水性ポリマーは、第一の分流プレート53Cにより、第一のポリマー導入口からダクト内に導入される吸水性ポリマーと第二のポリマー導入口から第二の分流プレート53Dに導かれる吸水性ポリマーとに分かれる。
そして、第二の分流プレート53Dにおいて吸水性ポリマーは、第三のポリマー導入口からダクト内に導入される吸水性ポリマーと第四のポリマー導入口から第三の分流プレート53Eに導かれる吸水性ポリマーとに分かれる。
そして、第三の分流プレート53Eにおいて吸水性ポリマーは、第五のポリマー導入口からダクト内に導入される吸水性ポリマーと第六のポリマー導入口からダクト内に導入される吸水性ポリマーとに分かれる。
このようにして、吸収性ポリマーは複数の分流プレートにより相互に流れ方向の異なる流れF4、F5、F6、F7となってダクトに導入される。
【0036】
図10に示す実施形態では、複数の分流プレート53C〜53Fを用いていることによって、ポリマーの流れを分流プレートの枚数に1を加えた数に分流することができ、得られる吸収体中のポリマーリッチ層も分流プレートの枚数に1を加えた数とすることができる。
分散プレートを複数にすると、ポリマーの分散を複数箇所(図10に示す例では4箇所)で行うこととなるため、分散プレートが単数の場合と比べて、厚み方向での分散状態をより高めることができる。
図8〜図10に示す実施形態について、特に説明しない点は、上述した堆積体の製造装置1及びそれを用いた堆積体の製造方法と同様とすることができる。尚、図10に示すように、3枚の分流プレートを用いるのに代えて2枚あるいは4枚以上の分流プレートを用いることもできる。
【0037】
また、集積用凹部21から離型させた、繊維材料及び吸水性ポリマーの堆積体8の上下面を、第1及び第2コアラップシート7A,7Bで被覆して吸収体を製造するのに代えて、当該堆積体8の上下面を一枚のコアラップシートで被覆した吸収体を製造しても良く、また、当該堆積体8の上下面の一方又は両方を被覆しない吸収体を製造しても良い。
また、集積用凹部21は、回転ドラム2の外周面に、周方向に連続する溝状の凹部として形成されていても良い。
また、本発明の方法及び装置においては、非凹状の堆積部に、吸水性ポリマーや繊維材料を堆積させても良い。例えば、ダクトに臨む面に凹部が形成されていないメッシュコンベアや外周面に凹部が形成されていない回転ドラムの外周面における一定の領域のみに吸引力を作用させ、該一定領域のみに吸水性ポリマーや繊維材料を堆積させても良い。この場合、その吸引力を作用させた部分が堆積部である。
【0038】
また、ポリマー供給管5は、断面円形の筒状本体50に代えて、中心軸線Lに直交する断面形状が非円形の筒状本体を備えたものであっても良い。例えば、中心軸線に直交する断面形状が、楕円形、正方形、長方形、台形、菱形、三角形等の筒状本体を備えたものを用いることもできる。また、ポリマー供給管5に設けた圧縮空気の噴射口52は無くしても良い。
【0039】
本発明で製造する、繊維材料及び吸収性ポリマーを含む堆積体は、生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体として好ましく用いられるが、それ以外の用途に用いることもできる。また、吸収性物品の吸収体として用いる場合、集積用凹部から離型した堆積体を、そのまま、吸収体として用いても良いし、堆積部に堆積した堆積体を、ティッシュペーパー(薄葉紙)や通気性の不織布等で被覆して吸収体としても良い。
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の堆積体の製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】図1に示す堆積体の製造装置におけるポリマー供給管付近の詳細を示す図(繊維搬送気流の流れ方向に沿う鉛直断面図)である。
【図3】図1に示す堆積体の製造装置におけるポリマー供給管を、繊維搬送気流の流れ方向の下流側のやや上方から見た斜視図である。
【図4】図1に示す堆積体の製造装置におけるポリマー供給管の先端部を、下方から見上げた状態を示す図である。
【図5】本発明で製造される堆積体の一例の厚み方向の断面を示す断面図である。
【図6】本発明で製造される堆積体の他の例の厚み方向の断面を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態における分流部材を示す図(図4相当図)である。
【図8】本発明の更に他の実施形態を示す図(繊維搬送気流の流れ方向に沿う鉛直断面図)である。
【図9】本発明の更に他の実施形態を示す図(繊維搬送気流の流れ方向に沿う鉛直断面図)であり、図9(a)は、圧縮空気を噴射している間の状態、図9(b)は、圧縮空気の噴射を停止している間の状態を示す。
【図10】本発明の更に他の実施形態を示す図(繊維搬送気流の流れ方向に沿う鉛直断面図)である。
【0041】
1 堆積体の製造装置
2 回転ドラム
21 集積用凹部
3 ダクト
4 繊維材料供給装置
41 シート状の原料
42 繊維搬送気流
5 ポリマー供給管
51 吸水性ポリマー
53,53A〜53E 分流プレート(分流部材、方向制御手段)
54a 第1のポリマー導入口
54b 第2のポリマー導入口
59a 圧縮空気の噴射口
6 バキュームコンベア
7A,7B 第1及び第2コアラップシート
8 繊維材料及び吸収性ポリマーを含む堆積体
9 吸収体
9A 吸収体の連続体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクト内を流れる繊維搬送気流中に、ポリマー供給管を介して吸水性ポリマーを導入し、飛散状態とされた繊維材料及び吸水性ポリマーを吸引により堆積させる工程を具備する堆積体の製造方法であって、
一つのポリマー供給管から前記ダクト内に導入される吸水性ポリマーに複数の流れ方向を与え、堆積体の厚み方向における吸水性ポリマーの分布状態を制御する堆積体の製造方法。
【請求項2】
ダクト内を流れる繊維搬送気流中に、ポリマー供給管を介して吸水性ポリマーを導入し、飛散状態とされた繊維及び吸水性ポリマーを吸引により堆積部に堆積させるように構成されている堆積体の製造装置であって、
一つのポリマー供給管から前記ダクト内に導入される吸水性ポリマーに複数の流れ方向を与える方向制御手段を備えている堆積体の製造装置。
【請求項3】
前記方向制御手段が、前記ポリマー供給管の先端部又はその近傍に設けられた分流部材である、請求項2記載の堆積体の製造装置。
【請求項4】
前記方向制御手段が、前記ポリマー供給管の先端部近傍に設けられた噴射口から、圧縮空気を間欠的に噴射する圧縮空気の噴射装置である、請求項2記載の堆積体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−114555(P2009−114555A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285480(P2007−285480)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】