堆積後ウエハ洗浄配合物
【課題】
【解決手段】基板の表面から金属キャッピング層の腐食生成物を洗浄するための方法およびシステムが提供されている。一実施形態によると、処理溶液は、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤を含む。界面活性剤は、ウエハ表面を湿潤を改善し、キャッピング層のさらなる腐食を抑制するよう構成される。錯化剤は、基板表面から脱着した金属イオンと結合するよう構成される。pH調整剤は、基板表面からの腐食生成物の脱着を促進するために、pHを所望のレベルに調整するよう構成される。
【解決手段】基板の表面から金属キャッピング層の腐食生成物を洗浄するための方法およびシステムが提供されている。一実施形態によると、処理溶液は、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤を含む。界面活性剤は、ウエハ表面を湿潤を改善し、キャッピング層のさらなる腐食を抑制するよう構成される。錯化剤は、基板表面から脱着した金属イオンと結合するよう構成される。pH調整剤は、基板表面からの腐食生成物の脱着を促進するために、pHを所望のレベルに調整するよう構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造に関し、特に、基板表面を洗浄するため、より具体的には、基板表面から腐食生成物を除去するための配合物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、携帯電話、ラジオ、テレビなどの製品で利用される。半導体デバイスは、絶縁材料に埋め込まれた導線によって接続された集積回路を含む。半導体デバイスのサイズの減少と、材料を絶縁する低誘電率(low−k)層間絶縁膜(ILD)の利用によって、信頼性の高い半導体デバイスを得ることがますます困難になっている。特に、信頼性の問題は、銅線(Cu)と低誘電率ILD材料との接点において、漏れ、エレクトロマイグレーション、ストレスマイグレーション、降伏電圧、および、時間依存絶縁破壊(TDDB)などの形態で起こる。
【0003】
誘電体層は、製造処理(例えば、Cu化学機械研磨(CMP)、または、コバルト・タングステン・リン(CoWP)などの金属キャッピング層の無電解めっき)の間に表面汚染を受ける。これらの汚染物質は、特に、高温および高電場などのストレス下で帯電して移動しうる。これらの汚染物質の移動性は、高いリーク電流を引き起こすことがあり、界面に沿って移動する時に誘電材料への損傷を引き起こしうる。
【0004】
メタライゼーション構造のエレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーション特性を向上するために、電子デバイスにおいて無電解めっきキャップを用いることができる。無電解めっき処理は、湿式化学処理である。かかる処理は、基板を洗浄するための湿式洗浄処理と共に用いられることが多い。多くの洗浄用途のための溶液が知られているが、本発明の発明者は、電子デバイスの製造のために基板を洗浄するのに適した新規および/または改良された洗浄溶液配合物および方法の必要性を認識した。
【0005】
本発明の実施形態は、このような課題に対処するものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、電子デバイスの製造に関する。より詳細には、本発明は、基板表面から腐食生成物を除去するための処理溶液に関する。
【0007】
一実施形態において、処理溶液は、金属キャッピング層を備えるウエハ表面上に供給するよう構成される。処理溶液は、ウエハ表面から金属キャッピング層の腐食生成物をリンスしつつ金属キャッピング層の腐食を低減する効果がある。
【0008】
一実施形態において、溶液は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を改善し、キャッピング層のさらなる腐食を抑制するよう構成される。さらに、溶液は、ウエハ表面上への供給の際に約3未満のpHに維持される。
【0009】
一実施形態において、界面活性剤は、金属キャッピング層上に自己組織化単分子膜を形成するよう構成される。
【0010】
一実施形態において、界面活性剤は、両性界面活性剤である。
【0011】
一実施形態において、溶液中の界面活性剤の濃度は、およそ10ppmから2000ppmの範囲にある。別の実施形態において、溶液中の界面活性剤の濃度は、およそ300ppmから700ppmの範囲にある。
【0012】
一実施形態において、処理溶液は、さらに、錯化剤を含む。錯化剤は、ウエハ表面から溶液中に溶解した腐食生成物と結合するよう構成される。錯化剤は、腐食生成物の再堆積を防止するよう構成されてよい。
【0013】
具体的な一実施形態では、錯化剤は、ヒドロキシエチルジホスホン酸、シュウ酸二水和物、フィチン酸、および、ピロリン酸からなる群より選択される。
【0014】
一実施形態において、錯化剤の濃度は、およそ0.05g/Lから20g/Lの範囲にある。別の実施形態において、錯化剤の濃度は、約1g/Lである。
【0015】
一実施形態において、処理溶液は、さらに、pH調整剤を含む。pH調整剤は、ウエハ表面上への供給の際に溶液のpHを約3未満に下げるよう構成されてよい。
【0016】
一実施形態では、pH調整剤は、次亜リン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフリン酸、および、トリフルオロ酢酸からなる群より選択される。
【0017】
一実施形態において、pH調整剤の濃度は、およそ0.01g/Lから20g/Lの範囲にある。別の実施形態では、pH調整剤の濃度は、約8ml/L 50w/w%である。
【0018】
一実施形態において、処理溶液は、界面活性剤と、ウエハ表面から溶液中に溶解した腐食生成物と結合するよう構成され、ヒドロキシエチルジホスホン酸、シュウ酸二水和物、フィチン酸、および、ピロリン酸からなる群より選択された錯化剤とを含む。処理液体は、さらに、ウエハ表面上への供給の際に溶液のpHを約3未満に下げるよう構成され、次亜リン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフリン酸、および、トリフルオロ酢酸からなる群より選択されたpH調整剤を含む。
【0019】
一実施形態において、溶液は、堆積溶液と交差汚染した場合に、金属キャッピング層を生成するために用いられる再循環堆積溶液の機能を大きく阻害しない。
【0020】
一実施形態において、ウエハ表面は、誘電材料の領域を含み、誘電材料の領域は、溶液の供給の前に領域上に形成されたキャッピング層の腐食生成物を有する。
【0021】
一実施形態において、誘電材料は、約3.0以下のK値を有する。
【0022】
一実施形態において、金属キャッピング層は、コバルトまたはコバルト合金からなる。
【0023】
本発明は、その出願において、以下の説明に記載された構造の詳細および要素の構成に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な形態で実施および実行されることが可能である。さらに、本明細書で用いられている表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定と見なされるべきではない。本発明のその他の態様については、本発明の原理を例示した添付図面を参照して行う以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付の図面に関連して行う以下の説明から理解できる。
【0025】
【図1A】本発明の一実施形態に従って、CMP工程後の半導体相互接続を示す拡大図。
【0026】
【図1B】本発明の一実施形態に従って、酸化物除去工程後の半導体相互接続を示す拡大図。
【0027】
【図1C】本発明の一実施形態に従って、キャッピング工程後の半導体相互接続を示す拡大図。
【0028】
【図2A】本発明の一実施形態に従って、ウエハ表面上に供給された処理溶液を示す図。
【0029】
【図2B】本発明の一実施形態に従って、ウエハ表面上に供給された処理溶液を示す図。
【0030】
【図3A】本発明の一実施形態に従って、基板の表面から腐食生成物を脱着するためのメカニズムを示す図。
【図3B】本発明の一実施形態に従って、基板の表面から腐食生成物を脱着するためのメカニズムを示す図。
【0031】
【図4】本発明の一実施形態に従って、基板表面から腐食生成物を洗浄するための処理溶液を示す図。
【0032】
【図5A】本発明の一実施形態に従って、堆積処理中の処理チャンバを示す断面図。
【0033】
【図5B】本発明の一実施形態に従って、洗浄処理中の処理チャンバを示す断面図。
【0034】
【図6】本発明の一実施形態に従って、ディスプレイの外枠の検出を支援するためのパターンの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、キャップおよび誘電体と共に導電性金属を用いて、集積回路などの電子デバイスのためのダマシンメタライゼーション構造を形成する相互接続メタライゼーションに関する。より具体的には、本発明は、電子デバイス用の基板を洗浄するための洗浄溶液配合物に関する。いくつかの用途では、相互接続メタライゼーション層は、誘電体と、銅などの金属とを含む。
【0036】
以下では、本発明の実施形態について、主に、集積回路の製造に用いられるシリコンウエハなどの半導体ウエハの処理との関連で説明する。集積回路用のメタライゼーション層は、ダマシンおよび/またはデュアルダマシン誘電体構造に形成される金属線用の銅を含む。銅金属線は、無電解めっきキャップを有する。いくつかの好ましいキャップは、コバルト合金、コバルト−タングステン合金、コバルト−タングステン−リン−ホウ素合金、コバルト−ニッケル合金、および、ニッケル合金などの多元素合金である。任意選択的に、誘電体は、炭素ドープ酸化シリコン(SiOC:H)などの低誘電率材料である。ただし、本発明に従った実施形態は、他の半導体デバイス、銅以外の金属、ニッケルおよび/またはコバルト以外の金属を用いたキャップ、ならびに、半導体ウエハ以外のウエハに用いられてもよいことを理解されたい。
【0037】
いくつかの用途について、本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、キャップの堆積後に基板を洗浄するために利用可能である。洗浄溶液は、キャップを設けられた銅相互接続構造の間の誘電体表面上に残ったイオンなどの汚染物質を除去することができる。かかる汚染物質の除去は、リーク電流特性の改善、電圧破壊特性の改善、および、時間依存絶縁破壊性能の改善などの結果を生じうる。
【0038】
さらに、本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、湿式移送システムに関連して用いられてもよく、その場合、ウエハは、湿潤状態(すなわち、ここに記載する洗浄溶液のような溶液がウエハの表面上に存在する状態)に維持されつつ、移送されるか、もしくは、1つの処理工程から別の処理工程へと移行される。かかる湿式移送システムにおいて、洗浄溶液は、ウエハ表面の汚染と、液滴、浮遊微粒子による汚染、ならびに、ウエハ表面の乾燥および再湿潤に付随する複雑さなど、ウエハの乾式移送に関連するその他の問題を低減または防止するよう作用しうる。湿式移送システムに関するさらなる詳細は、2009年12月11日出願の米国特許仮出願第61/285,950号「INTEGRATED TOOL SETS AND PROCESS TO KEEP SUBSTRATE SURFACE WET DURING PLAYING AND CLEAN IN FABRICATION OF ADVANCED NANO-ELECTRONIC DEVICES」に記載されており、その開示は、参照によって本明細書に全体が組み込まれる。
【0039】
図1Aによると、本発明の一実施形態に従って、CMP工程後の半導体相互接続10の拡大図が示されている。
【0040】
半導体ウエハ12は、シリコン、ガリウムヒ素、ダイヤモンドなどの材料から形成されてよい。半導体ウエハ12は、その中および上にトランジスタなどの半導体素子を形成するために処理されている。
【0041】
ILDなどの誘電体層14が、半導体ウエハ12上に蒸着されている。誘電体層14は、酸化シリコン(SiOx)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ホウリンケイ酸(BPSG)ガラスなど、誘電率が約4.2から3.9の誘電材料、または、フッ素化テトラエトキシシラン(FTEOS)、水素シルセスキオキサン(HSQ)、ベンゾシクロブテン(BCB)、炭素ドープ二酸化シリコンなど、誘電率が約3.9未満の低誘電率誘電材料から形成される。超低誘電率の誘電材料は、誘電率が約2.5未満の誘電材料である。かかる材料の例としては、市販のテフロン(登録商標)、テフロン−AF、テフロンマイクロエマルション、ポリイミドナノフォーム、シリカエーロゲル、シリカキセロゲル、および、メソ多孔質シリカが挙げられる。
【0042】
誘電体層14は、その中に形成されたチャネルまたはビアを有するよう処理されており、チャネルまたはビアは、バリア層16で内張りされている。バリア層16は、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、チタン(Ti)、タングステン(W)、それらの合金、および、それらの化合物などの材料で形成されてよい。
【0043】
バリア層16は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、それらの合金、および、それらの化合物などの導電体18で満たされる。
【0044】
図1Bによると、本発明の一実施形態に従って、酸化物除去工程後の半導体相互接続10の拡大図が示されている。酸化物除去工程は、図1Aの酸化物層20を除去する。
【0045】
図1Cによると、本発明の第1の実施形態に従って、キャッピング工程後の半導体相互接続10の拡大図が示されている。
【0046】
次いで、キャッピング層22が、バリア層16および導電体18の上に堆積される。キャッピング層22は、無電解めっきによって堆積されたコバルト(Co)またはコバルト−タングステン−リン(CoWP)、コバルト−タングステン−ホウ素(CoWB)、コバルト−タングステン−リン−ホウ素(CoWPB)などの金属または金属化合物であってよい。
【0047】
図2Aによると、本発明の一実施形態に従って、処理溶液30が示されている。処理溶液30は、腐食防止剤としても作用する界面活性剤32と、錯化剤34と、pH調整剤36とを含む。任意選択的に、本発明のいくつかの実施形態では、洗浄溶液は、水溶液である。ただし、本発明の他の実施形態は、水の代わりに非水液体を用いた非水洗浄溶液であってもよい。
【0048】
図に示すように、処理溶液30は、基板40の表面に供給される。基板40の露出面は、誘電体14の領域および金属キャッピング層20の領域を含む。前の処理工程(例えば、金属キャッピング層22の堆積後の脱イオン水によるリンス工程)の間および後に、キャッピング層22の腐食が起こりうる。結果として生じる腐食生成物38は、基板40の表面上に吸着された様々な酸化物および水酸化金属イオンからなりうる。
【0049】
例えば、キャッピング層がコバルトを含む一実施形態においては、結果として生じるコバルトの腐食生成物は、Co(OH)2、Co(OH)3、CoOOH、CoO、Co2O3、Co3O4など、様々な水酸化物および酸化物を含みうる。
【0050】
基板40の表面からの腐食生成物38の脱着を促進するため、一般に、本発明の実施形態に従った処理溶液は、約3以下のpHを有する。任意選択的に、処理溶液のpHは、いくつかの実施形態については2以下であってもよい。本発明のいくつかの実施形態は、約1.8から1.9のpHを有する処理溶液を含む。特定の実施形態では、pHは、約1.85であってよい。
【0051】
処理溶液の低いpHは、高濃度の水素イオンの影響によって、基板40の表面からの腐食生成物38の脱着を促進する。第1に、高濃度の水素イオンが、基板40の表面を正に帯電させる。第2に、有効な水素イオンが、水酸化金属イオンとの脱水反応を促進して金属イオンを放出すると、金属イオンは正に帯電されるので、基板40の正に帯電した表面から電気的に反発する。
【0052】
しかしながら、処理溶液30の低いpHは、基板40からの腐食生成物38の脱着を促進するものの、キャッピング層22のさらなる腐食も促進する。したがって、処理溶液30の酸性に起因するキャッピング層22の腐食を防止することが望ましい。
【0053】
界面活性剤:
したがって、上述のように、処理溶液30は、腐食防止剤としても機能する界面活性剤32を含む。任意選択的に、処理溶液30は、2以上の界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤32は、処理溶液30の表面張力を低下させることにより、供給された時に基板40の誘電体領域およびキャッピング領域の両方の十分な湿潤を促進する。基板40の湿潤を促進することにより、界面活性剤32は、基板表面の均一な洗浄と、液滴および浮遊微粒子からの基板表面の保護とを実現する。
【0054】
界面活性剤32の機能の一つは、キャップ層22を実質的に保護して処理溶液30内でのキャッピング層22の腐食を防止することであってよい。いくつかの用途について、本発明の実施形態に従った処理溶液は、キャッピング層22の厚さをほとんどまたは実質的に全く減少させることなく基板を洗浄するよう構成される。この目的のために、1または複数の界面活性剤が、本発明の実施形態に含まれてよい。
【0055】
界面活性剤32は、低いpHでキャッピング層22に選択的に結合するよう構成されてよい。より具体的には、界面活性剤32の極性基がキャッピング層22に結合し、界面活性剤の疎水基がキャッピング層22の反対側に向く。したがって、界面活性剤32は、キャッピング層22上に(図2Bに示すように)保護層42を形成し、保護層42は、基板40の誘電体領域に影響を与えることなく、処理溶液30の存在およびその低いpHによってキャッピング層22の腐食を防止する。本発明の実施形態は、キャッピング層22上に自己組織化単分子膜(SAM)を形成するよう構成された界面活性剤32を含んでおり、界面活性剤分子の極性基はキャッピング層22の方を向き、疎水性尾部はキャッピング層22の反対側に向く。
【0056】
界面活性剤32は、pHがアルカリ性レベルに上げられるまで、キャッピング層22に結合したままであるよう構成されてよい。したがって、次の脱イオン水によるリンス工程(キャッピング層22をさらに腐食する可能性がある)の間も、キャッピング層22は、界面活性剤層42によって保護されたままである。しかしながら、堆積溶液などのアルカリ溶液が基板40の表面に供給されると、界面活性剤層42が破壊されてキャッピング層22から解離する。本発明の実施形態において、界面活性剤は、キャッピング層のための堆積溶液と適合するように構成されてよい。換言すると、限られた量の界面活性剤が堆積溶液を汚染しても、堆積溶液の機能が大きく阻害されることはない。
【0057】
数多くの化合物が、本発明の実施形態において腐食防止剤としても作用する界面活性剤としての利用に適している。本発明の実施形態のための界面活性剤のリストは、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、両性イオン、および、それらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態のための界面活性剤のいくつかは、硫酸基またはスルホン酸基を頭部基として有する界面活性剤である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態において、界面活性剤は、酸性官能基を有する両性界面活性剤からなることが好ましい。両性界面活性剤は、キャッピング層用のアルカリ性堆積溶液との適合を強化するため、かつ、処理溶液のpHに影響を与えるために、酸性官能基を含んでよい。酸性官能基は、キャッピング層上に界面活性剤によって形成された保護層が、アルカリ性堆積溶液にさらされた時に破壊されることを可能にするよう構成されてよい。
【0059】
本発明の特定の実施形態において、界面活性剤は、ベタイン、すなわち、N,N−ジメチルグリシンの置換アルキル誘導体の両性イオンであってよい。一実施形態において、界面活性剤は、コカミドプロピルベタインである。界面活性剤は、アルキル基、フルオロアルキル基、または、部分的にフッ素化したアルキル基を含んでよい。本発明の実施形態に従った界面活性剤は、酸性官能基を備えてよい。酸性官能基は、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基など、様々な酸性官能基の内の1つであってよい。本発明のいくつかの一実施形態に従った処理溶液は、各界面活性剤について配合物の活性成分に対して約10ppmから約2000ppmの範囲の量で存在する1または複数の界面活性剤を含む。界面活性剤の分子量は、既知であるとは限らない。
【0060】
一般に、有効量の界面活性剤が、本発明に従った処理溶液内に提供される。換言すると、処理溶液中の界面活性剤の量は、処理溶液が、基板を洗浄すると共にキャップの腐食を十分に防止するのに有効であるように選択される。本発明のいくつかの実施形態について、処理溶液は、1または複数の界面活性剤を含んでおり、各界面活性剤は、約10パーツ・パー・ミリオン(ppm)から約2000ppmの範囲の濃度で処理溶液中に存在する。本発明の実施形態に従ったいくつかの洗浄溶液に対する選択肢として、界面活性剤は、約300ppmから約700ppmまでの範囲の濃度、および、その範囲に含まれるすべての部分範囲の濃度で存在する。
【0061】
本発明の実施形態に従って、界面活性剤の構成および濃度は、処理溶液の所望のpHレベルを提供するために選択される。pHレベルは、ウエハの表面からの腐食生成物の脱着を促進するように界面活性剤の存在によって調節されうる。
【0062】
錯化剤:
本発明の実施形態に従った処理溶液は、任意選択的に錯化剤34を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態に従った錯化剤34は、金属イオンと錯体を形成することを可能にする官能基を含む。表面から脱着した金属イオンとの錯体を効果的に形成することによって、錯化剤34は、溶液中の金属イオンを安定化させるよう作用する。これは、金属イオンがウエハ表面上に再堆積するのを防ぐよう機能する。かかる再堆積は、後の工程(脱イオン水リンス工程など)中に起こる傾向がある場合があり、そのような工程中には、pHが増大して、金属イオンの水酸化および酸化と、その結果として起こるウエハ表面上への腐食生成物の再堆積とを引き起こしうる。
【0063】
したがって、本発明の実施形態は、3より小さいpH値および3より大きいpH値の両方を含む広範囲のpH値にわたって金属イオンと効果的に結合するように構成された錯化剤34を含むことが想定される。図2Bに示すように、腐食生成物38は、基板40の表面から脱着された後に、錯化剤34と錯体44を形成する。
【0064】
錯化剤34は、洗浄溶液のpHを調整することを可能にする1または複数の官能基を有してもよい。より具体的には、錯化剤は、さらに、洗浄溶液のpHを約3以下に維持するように溶液のpHに寄与および影響することができる。
【0065】
本発明の実施形態に従った洗浄溶液のための錯化剤は、Lars Gunnar SillenおよびArthur E.Martellによる「Stability Constants of Metal-Ion Complexes: Inorganic Ligands, Organic Ligands; and Supplement」、2巻セット(特別版第17号および補遺版第1号)、1972年、に記載されており、これは、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる。溶液のpHに影響を与えることができる錯化剤のリストは、以下を含むがこれらに限定されない:フィチン酸、シュウ酸(CAS#[6153−56−6])、ピロリン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(CAS#[2809−21−4]、エチドロン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、または、HEDPAとも呼ばれる)、フィチン酸、マロン酸、マレイン酸、および、それらの混合物。
【0066】
一般に、本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、(基板表面からの金属イオンの除去を容易にするために)、基板の表面から除去された金属イオンと錯体を形成し、所望のレベルへのpHの維持に寄与するように機能できる有効量の錯化剤を含む。必要とされる具体的な量は、錯化剤の特性に依存する。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態について、錯化剤の濃度は、およそ0.05g/Lから20g/Lの範囲である。他の実施形態において、錯化剤の濃度は、およそ0.5g/Lから2g/Lの範囲およびその範囲に含まれるすべての部分範囲であってもよい。
【0068】
pH調整剤:
本発明の実施形態に従った処理溶液は、さらに、pH調整剤36(または複数のpH調整剤)を含んでよい。本発明のいくつかの実施形態に従った洗浄溶液中のpH調整剤は、洗浄溶液のpHを所望のレベルに維持することを可能にする官能基を有する。上述のように、いくつかの実施形態において、所望のpHレベルは、約3または2未満であってよい。本発明の具体的な実施形態について、これは、pH調整剤36が、酸性洗浄溶液を生成するための官能基を有することを意味しうる。任意選択的に、pH調整剤は、錯化剤として機能してもよい。
【0069】
本発明の実施形態のためのpH調整剤のリストは、以下を含むがこれらに限定されない:硫酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびトリフル酸などを含むがこれらに限定されないスルホン酸;次亜リン酸;シュウ酸;トリフルオロ酢酸、トリフリン酸を含むがこれに限定されないハロゲン化カルボン酸;アセチレンジカルボン酸;スクアリン酸;ジヒドロキシフマル酸;マレイン酸;および、それらの混合物。一つの選択肢として、pH調整剤は、約2以下のpKaを有する1または複数の酸を含んでよく、pKaは酸解離定数Kaの負の対数であり、1または複数の酸は、洗浄剤を所望の酸性pHに調整することができる。あるいは、pH調整剤は、1.5以下のpKaを有する1または複数の酸を含んでもよく、1または複数の酸は、洗浄溶液を所望の酸性pHに調整することができる。
【0070】
本発明の特定の実施形態において、pH調整剤は、堆積溶液と適合するように構成される。換言すると、pH調整剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合に堆積溶液の機能が大きく阻害されないように選択される。
【0071】
一般に、本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、pHを所望のレベルに維持するために、有効量のpH調整剤を含む。必要とされる具体的な量は、pH調整剤の特性および所望のpHレベルに依存する。本発明のいくつかの実施形態について、pH調整剤の量は、およそ0.01g/Lから20g/Lの範囲である。本発明の他の実施形態では、pH調整剤の濃度は、およそ3g/Lから5g/Lの範囲である。
【0072】
pH調整剤を含有することは、処理溶液のpHレベルを所望のレベルに調整するコスト効率のよい方法でありうる。例えば、様々な実施形態において、界面活性剤または錯化剤のいずれかまたは両方が、溶液のpHを低下させる化学剤として機能してもよい。しかしながら、所望の低pHを達成するために、界面活性剤または錯化剤のいずれかを濃縮するには桁違いの費用がかかりうる。したがって、界面活性剤および錯化剤だけからなる溶液で実現できるよりも低いコストでpHを所望のレベルに調整するために、比較的安価なpH調整剤が選択されうる。
【0073】
処理溶液配合の例:
本発明の実施形態に従った処理溶液は、数多くの具体的な配合の内の任意の1つを有しうる。
【0074】
一実施形態では、処理溶液は、1または複数の界面活性剤を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を促進し、キャッピング層を腐食から保護すると同時に、ウエハ表面からの腐食生成物の脱着を引き起こすために低pHを生み出すよう構成される。界面活性剤の具体的な構成および濃度は、十分に低いpHとキャッピング層の腐食の十分な抑制とを実現するように選択できる。さらに、界面活性剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように構成されてよい。
【0075】
一実施形態では、処理溶液は、界面活性剤およびpH調整剤の両方を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を促進し、キャッピング層の腐食を抑制するが、単独では、処理溶液にとって望ましいpHレベルを生み出さない。pH調整剤は、溶液のpHを所望のレベル(例えば、3.0未満)に調整するよう構成される。界面活性剤およびpH調整剤の構成および具体的な濃度は、十分な湿潤、キャッピング層の腐食の十分な抑制、および、十分に低いpHを実現するように選択できる。さらに、界面活性剤およびpH調整剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように構成されてよい。
【0076】
一実施形態では、処理溶液は、界面活性剤および錯化剤の両方を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を促進し、キャッピング層の腐食を抑制するよう構成される。錯化剤は、ウエハ表面上への堆積(または再堆積)を防ぐために溶液中の金属イオンに結合するよう構成される。界面活性剤および錯化剤のいずれかまたは両方が、処理溶液にとって望ましいpHレベルを生み出すように構成されてもよい。界面活性剤および錯化剤の具体的な構成および濃度は、十分な湿潤、キャッピング層の腐食の十分な抑制、腐食生成物の再堆積の十分な防止、および、所望のpHレベルを実現するように選択できる。さらに、界面活性剤および錯化剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように選択されてよい。
【0077】
一実施形態では、処理溶液は、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を促進し、キャッピング層の腐食を抑制するよう構成される。錯化剤は、処理溶液中の金属イオンと結合するよう構成される。pH調整剤は、処理溶液のpHを所望のレベルに調整するよう構成される。界面活性剤または錯化剤のいずれかまたは両方が、pHレベルに影響するように構成されてもよい。
【0078】
界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤の具体的な構成および濃度は、十分な湿潤、キャッピング層の腐食の十分な抑制、ウエハ表面上への腐食生成物の再堆積の十分な防止、および、所望のpHレベルを実現するように選択できる。さらに、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように選択されてよい。
【0079】
図3Aおよび図3Bによると、本発明の一実施形態に従って、基板の表面から腐食生成物を脱着するためのメカニズムが示されている。図3Aに示すように、基板表面50は、二酸化シリコンなどの誘電体を含む。様々な実施形態において、他の誘電体および表面材料が、基板表面50を構成してもよい。二酸化シリコンは、一例として、約pH2から3のゼロ電荷点を有する。したがって、約2から3のpHでは、基板表面50は、電荷中性になる。二酸化シリコンが基板表面に含まれる図の例に示すように、二酸化シリコン表面の暴露したヒドロキシル基52は、正味ゼロ電荷を示す。
【0080】
さらに、溶液から沈殿する金属水酸化物などの金属腐食生成物が、基板表面50上に存在しうる。キャッピング層の堆積に続いて、堆積処理を停止させて堆積溶液を除去するために、脱イオン水でのリンス工程などの後続工程が施されうる。しかしながら、かかる工程は、さらに、キャッピング層の腐食を促進して、腐食生成物の形成につながりうる。図3Aに示した例において、腐食生成物54は、コバルト含有キャッピング層の腐食に起因するCo(OH)2を含む。コバルトイオンは、水溶液中でアクアイオンを形成し、加水分解反応を受けて、基板表面50上に沈殿する水酸化コバルトを形成する。本発明の様々な実施形態において、腐食生成物は、金属表面の腐食に起因する様々な金属水酸化物および錯体を含みうる。腐食生成物54は、基板表面50上に吸着される。
【0081】
しかしながら、pHが十分な程度(例えば、約2未満)まで下げられると、基板表面50は、図3Bに示すように、露出されたヒドロキシル基52のプロトン化によって正に帯電される。さらに、水酸化物の腐食生成物は、以下の一般的な反応に従って、低pHによって駆動される脱水反応を受ける:
M(OH)n+nH+→Mn++nH2O
ここで、Mは金属である。具体的に、水酸化コバルトの場合の反応は:
Co(OH)2+2H+→Co2++2H2O
【0082】
放出された金属イオン(図の例においてはCo2+)は、正に帯電した基板表面から静電的に反発される。したがって、約2未満の低pHは、基板表面50からの腐食生成物54の脱着を容易にする。
【0083】
図4によると、本発明の一実施形態に従って、基板表面から腐食生成物を洗浄するための処理溶液60が示されている。基板の表面は、誘電体70およびキャッピング層74の領域を含む。いくつかの実施形態において、キャッピング層74は、コバルトまたはコバルト合金からなり、銅層72などの導電層を酸化およびエレクトロマイグレーションから保護する。一実施形態では、処理溶液60は、界面活性剤62、錯化剤64、および、pH調整剤66を含む。
【0084】
界面活性剤62は、処理溶液60による基板表面の被覆を容易にするために、湿潤を促進する。一実施形態において、界面活性剤62は、キャッピング層74に選択的に結合し、自己組織化単分子膜を形成して、キャッピング層74を腐食から保護するよう構成される。
【0085】
一実施形態では、処理溶液は、およそ2から3未満のpHを有するよう構成される。かかる低いpHは、誘電体70の表面に吸着した腐食生成物(金属水酸化物など)の脱着を促進する。脱着は、符号68で示すように、脱水反応を介して起こりうる。処理溶液の低いpHは、キャッピング層74のさらなる腐食も促進するが、キャッピング層上の界面活性剤SAMが、処理溶液の低いpHによって起きるはずの腐食を抑制するよう作用する。
【0086】
基板表面からの腐食生成物の脱着により、金属イオンが処理溶液中に放出される。後続工程(例えば、リンス工程または脱イオン水などpHの高い液体を用いる後続の処理工程)においてpHが高く調整された時に再沈殿が起きる可能性が高いため、錯化剤64は、金属イオンと結合し、処理溶液中の金属イオンを安定化させて基板の表面上に水酸化物として再沈殿するのを抑制する錯体を形成する。錯化剤は、およそ2から3未満のpHなど、低いpHで金属イオンと結合するよう構成される。さらに、錯化剤は、酸性化合物であることによって、処理溶液のpH全体に影響を与えてもよい。
【0087】
したがって、例えば、コバルトキャッピング層の腐食生成物の場合、反応は、以下の化学式に従って進行しうる:
Co(OH)2+2H++Ac2-→CoAc+2H2O
ここで、Acは、コバルトイオンに結合するよう構成された錯化剤である。
【0088】
処理溶液60は、任意選択的にpH調整剤66も含んでよい。pH調整剤66は、処理溶液のpHを所望のレベルに調整するために提供される。錯化剤64は酸であってよいが、いくつかの実施形態においては、効率および費用を考慮すると、所望のpHレベルを実現するために錯化剤64を濃縮することが望ましくない場合がある。したがって、基板表面からの腐食生成物の脱着を促進するために所望のpHレベルをより効率的に実現するには、pH調整剤66を利用することが有利な場合がある。
【0089】
いくつかの実施形態において、処理溶液60は、pH調整剤を含まない。代わりに、錯化剤または界面活性剤が、酸性化合物として構成され、所望のpHレベルを提供するために適切な濃度に濃縮される。
【0090】
本発明の実施形態に従った処理溶液60は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように構成されてよい。堆積溶液および洗浄溶液の供給が同じ装置内で行われ、堆積溶液が再循環される場合に、かかる汚染が懸念されうる。したがって、処理溶液による意図しない汚染によって堆積溶液の機能が実質的に抑制されないように処理溶液を構成することが望ましい場合がある。
【0091】
このように、処理溶液の成分の各々は、堆積溶液と適合するように構成されてよい。換言すると、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤は、堆積溶液の機能を実質的に抑制しないように構成されてよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、低pHで金属キャッピング層と選択的に結合するよう構成される。上述のように、界面活性剤は、中性pHでもキャッピング層の上に残りうる界面活性剤SAMをキャッピング層上に形成する。ただし、界面活性剤は、界面活性剤SAMがアルカリ性pHで破壊されるように構成されてもよい。したがって、堆積溶液は、アルカリ性pHを有するよう構成されてよく、そうすれば、基板表面に供給された時に界面活性剤SAMの破壊を引き起こす。このように、界面活性剤は、堆積溶液の活性を妨げない。
【0093】
いくつかの実施形態において、錯化剤は、低pHでのみ溶液中の金属イオンと結合するように構成される。したがって、処理溶液の錯化剤が堆積溶液を汚染した場合に、錯化剤は、堆積溶液のアルカリ性pHによって不活性化される。このように、錯化剤は、堆積溶液中に存在する金属イオンと干渉しないので、堆積溶液内でその溶液の機能を実質的に阻害しない。
【0094】
いくつかの実施形態において、pH調整剤は、堆積溶液の機能を実質的に妨げないように構成される。いくつかの実施形態において、これは、堆積溶液中にすでに存在する酸をpH調整剤として選択することによって達成されうる。
【0095】
図5Aおよび5Bによると、異なる動作モードの処理チャンバ80の断面図が示されている。図5Aは、堆積処理中のウエハ処理チャンバ80を示している。処理チャンバ80は、ウエハ83を保持するためのウエハ支持体82を備えており、ウエハ支持体82は、様々な処理溶液がウエハ83の表面に供給される際にウエハ83を回転させるよう構成されている。処理チャンバ80は、さらに、上側仕切板84および下側仕切板86を備える。上側仕切板84は、下側仕切板86とシールを形成するために移動可能である。図5Aは、上側仕切板84が下側仕切板86に対して密閉された「閉」位置の処理チャンバ80を示す。上側仕切板84および下側仕切板86が合わさって、内部チャンバ88および外部チャンバ92を規定する。内部チャンバ88は、ウエハ支持体82およびウエハ83を含む。
【0096】
図5Aは、堆積処理中の処理チャンバ80を示しており、処理チャンバ80は閉位置であり、堆積溶液がウエハ83の表面に供給されている。ウエハ83がウエハ支持体82によって回転されるため、堆積溶液は、ウエハ83のエッジから流れ落ちる。上側仕切板84および下側仕切板86によって密閉されているため、堆積溶液は、内部チャンバ88の中に留まり、下方に流れて、内部チャンバ排液管90を介して内部チャンバから流れ出る。堆積溶液は、堆積液容器96に流れ、そこから、ウエハ処理チャンバ80内に再循環される。
【0097】
図5Bは、洗浄処理中の処理チャンバ80を示しており、処理チャンバ80は開位置にあり、上側仕切板84は、下側仕切板86から持ち上げられて分離されている。洗浄溶液が、ウエハ83の表面に供給されている。ウエハ83がウエハ支持体82によって回転されるため、洗浄溶液の大部分は、ウエハ83のエッジから流れ落ちて、外部チャンバ92に流入し、外部チャンバ排液管94を介して外部チャンバ92から流出する。しかしながら、洗浄溶液の一部は、内部チャンバ88内に落ちうるため、再循環される時に堆積溶液を汚染する。この理由から、かかる汚染が起こる場合に洗浄溶液が堆積溶液に適合するように、本発明の実施形態に従って洗浄溶液を構成することが望ましい。
【0098】
図6によると、本発明の一実施形態に従って、基板の表面を処理する方法が示されている。方法動作100で、界面活性剤が準備される。界面活性剤は、基板の湿潤を向上させ、キャッピング層の腐食を抑制するよう構成されてよい。一実施形態において、界面活性剤は、両性界面活性剤である。
【0099】
方法動作102で、錯化剤が準備される。錯化剤は、基板の表面の誘電体領域から放出されたキャッピング層の腐食生成物と結合するよう構成されてよい。
【0100】
方法動作104で、pH調整剤が準備される。pH調整剤は、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤の混合物のpHを所望のレベルに調整するよう構成される。所望のレベルは、腐食生成物が基板の表面から脱着されるpHレベルであってよい。
【0101】
方法動作106で、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤を含む混合物が形成される。
【0102】
方法動作108で、混合物は、基板表面からの腐食生成物の除去を実現するために、基板/ウエハの表面に一定期間供給される。
【0103】
一つの選択肢として、本発明の実施形態に従った洗浄溶液を用いて基板を洗浄する処理は、ブラシを用いて洗浄溶液を基板に塗布することによって実行されてよい。あるいは、処理は、基板を洗浄溶液内に浸漬する、洗浄溶液で基板をリンスする、洗浄溶液を基板上に噴霧する、近接ヘッドを用いて洗浄溶液を供給するなどの方法によって、洗浄溶液を基板に供給することにより実行されてもよい。
【0104】
本発明の実施形態に従った洗浄溶液の洗浄効率は、洗浄中に超音波またはメガソニックエネルギを基板に印加するなどの処理を用いることにより、および/または、洗浄中に温度を上昇させることにより、さらに高めることができる。いくつかの用途について、洗浄溶液は、約5℃から約90℃の範囲の温度で用いられる。本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、キャップ層の堆積後に基板を洗浄するために利用可能である。
【0105】
本明細書では、具体的な実施形態を参照しつつ、本発明を説明している。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変形例および変更例が可能であることを理解すべきである。したがって、本明細書は、例示を目的としたものであり、限定を意図したものではないと見なされるべきであり、かかる変形例すべてが、本発明の範囲に含まれるよう意図されている。
【0106】
利益、その他の利点、および、課題の解決法について、具体的な実施形態に関連して上述した。しかしながら、それらの利益、利点、課題の解決法、ならびに、任意の利益、利点、または、解決法を生じさせるもしくはより顕著にさせうる任意の要素は、任意またはすべての請求項の重要、必要、または必須の特徴または要素として解釈されない。
【0107】
理解を深めるために、本発明について、ある程度詳しく説明したが、添付の特許請求の範囲内でいくらかの変更と変形を行ってもよいことは明らかである。したがって、この実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではないとみなされ、本発明は、本明細書に示した詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲および等価物の範囲内で変形されてよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造に関し、特に、基板表面を洗浄するため、より具体的には、基板表面から腐食生成物を除去するための配合物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、携帯電話、ラジオ、テレビなどの製品で利用される。半導体デバイスは、絶縁材料に埋め込まれた導線によって接続された集積回路を含む。半導体デバイスのサイズの減少と、材料を絶縁する低誘電率(low−k)層間絶縁膜(ILD)の利用によって、信頼性の高い半導体デバイスを得ることがますます困難になっている。特に、信頼性の問題は、銅線(Cu)と低誘電率ILD材料との接点において、漏れ、エレクトロマイグレーション、ストレスマイグレーション、降伏電圧、および、時間依存絶縁破壊(TDDB)などの形態で起こる。
【0003】
誘電体層は、製造処理(例えば、Cu化学機械研磨(CMP)、または、コバルト・タングステン・リン(CoWP)などの金属キャッピング層の無電解めっき)の間に表面汚染を受ける。これらの汚染物質は、特に、高温および高電場などのストレス下で帯電して移動しうる。これらの汚染物質の移動性は、高いリーク電流を引き起こすことがあり、界面に沿って移動する時に誘電材料への損傷を引き起こしうる。
【0004】
メタライゼーション構造のエレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーション特性を向上するために、電子デバイスにおいて無電解めっきキャップを用いることができる。無電解めっき処理は、湿式化学処理である。かかる処理は、基板を洗浄するための湿式洗浄処理と共に用いられることが多い。多くの洗浄用途のための溶液が知られているが、本発明の発明者は、電子デバイスの製造のために基板を洗浄するのに適した新規および/または改良された洗浄溶液配合物および方法の必要性を認識した。
【0005】
本発明の実施形態は、このような課題に対処するものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、電子デバイスの製造に関する。より詳細には、本発明は、基板表面から腐食生成物を除去するための処理溶液に関する。
【0007】
一実施形態において、処理溶液は、金属キャッピング層を備えるウエハ表面上に供給するよう構成される。処理溶液は、ウエハ表面から金属キャッピング層の腐食生成物をリンスしつつ金属キャッピング層の腐食を低減する効果がある。
【0008】
一実施形態において、溶液は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を改善し、キャッピング層のさらなる腐食を抑制するよう構成される。さらに、溶液は、ウエハ表面上への供給の際に約3未満のpHに維持される。
【0009】
一実施形態において、界面活性剤は、金属キャッピング層上に自己組織化単分子膜を形成するよう構成される。
【0010】
一実施形態において、界面活性剤は、両性界面活性剤である。
【0011】
一実施形態において、溶液中の界面活性剤の濃度は、およそ10ppmから2000ppmの範囲にある。別の実施形態において、溶液中の界面活性剤の濃度は、およそ300ppmから700ppmの範囲にある。
【0012】
一実施形態において、処理溶液は、さらに、錯化剤を含む。錯化剤は、ウエハ表面から溶液中に溶解した腐食生成物と結合するよう構成される。錯化剤は、腐食生成物の再堆積を防止するよう構成されてよい。
【0013】
具体的な一実施形態では、錯化剤は、ヒドロキシエチルジホスホン酸、シュウ酸二水和物、フィチン酸、および、ピロリン酸からなる群より選択される。
【0014】
一実施形態において、錯化剤の濃度は、およそ0.05g/Lから20g/Lの範囲にある。別の実施形態において、錯化剤の濃度は、約1g/Lである。
【0015】
一実施形態において、処理溶液は、さらに、pH調整剤を含む。pH調整剤は、ウエハ表面上への供給の際に溶液のpHを約3未満に下げるよう構成されてよい。
【0016】
一実施形態では、pH調整剤は、次亜リン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフリン酸、および、トリフルオロ酢酸からなる群より選択される。
【0017】
一実施形態において、pH調整剤の濃度は、およそ0.01g/Lから20g/Lの範囲にある。別の実施形態では、pH調整剤の濃度は、約8ml/L 50w/w%である。
【0018】
一実施形態において、処理溶液は、界面活性剤と、ウエハ表面から溶液中に溶解した腐食生成物と結合するよう構成され、ヒドロキシエチルジホスホン酸、シュウ酸二水和物、フィチン酸、および、ピロリン酸からなる群より選択された錯化剤とを含む。処理液体は、さらに、ウエハ表面上への供給の際に溶液のpHを約3未満に下げるよう構成され、次亜リン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフリン酸、および、トリフルオロ酢酸からなる群より選択されたpH調整剤を含む。
【0019】
一実施形態において、溶液は、堆積溶液と交差汚染した場合に、金属キャッピング層を生成するために用いられる再循環堆積溶液の機能を大きく阻害しない。
【0020】
一実施形態において、ウエハ表面は、誘電材料の領域を含み、誘電材料の領域は、溶液の供給の前に領域上に形成されたキャッピング層の腐食生成物を有する。
【0021】
一実施形態において、誘電材料は、約3.0以下のK値を有する。
【0022】
一実施形態において、金属キャッピング層は、コバルトまたはコバルト合金からなる。
【0023】
本発明は、その出願において、以下の説明に記載された構造の詳細および要素の構成に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な形態で実施および実行されることが可能である。さらに、本明細書で用いられている表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定と見なされるべきではない。本発明のその他の態様については、本発明の原理を例示した添付図面を参照して行う以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付の図面に関連して行う以下の説明から理解できる。
【0025】
【図1A】本発明の一実施形態に従って、CMP工程後の半導体相互接続を示す拡大図。
【0026】
【図1B】本発明の一実施形態に従って、酸化物除去工程後の半導体相互接続を示す拡大図。
【0027】
【図1C】本発明の一実施形態に従って、キャッピング工程後の半導体相互接続を示す拡大図。
【0028】
【図2A】本発明の一実施形態に従って、ウエハ表面上に供給された処理溶液を示す図。
【0029】
【図2B】本発明の一実施形態に従って、ウエハ表面上に供給された処理溶液を示す図。
【0030】
【図3A】本発明の一実施形態に従って、基板の表面から腐食生成物を脱着するためのメカニズムを示す図。
【図3B】本発明の一実施形態に従って、基板の表面から腐食生成物を脱着するためのメカニズムを示す図。
【0031】
【図4】本発明の一実施形態に従って、基板表面から腐食生成物を洗浄するための処理溶液を示す図。
【0032】
【図5A】本発明の一実施形態に従って、堆積処理中の処理チャンバを示す断面図。
【0033】
【図5B】本発明の一実施形態に従って、洗浄処理中の処理チャンバを示す断面図。
【0034】
【図6】本発明の一実施形態に従って、ディスプレイの外枠の検出を支援するためのパターンの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、キャップおよび誘電体と共に導電性金属を用いて、集積回路などの電子デバイスのためのダマシンメタライゼーション構造を形成する相互接続メタライゼーションに関する。より具体的には、本発明は、電子デバイス用の基板を洗浄するための洗浄溶液配合物に関する。いくつかの用途では、相互接続メタライゼーション層は、誘電体と、銅などの金属とを含む。
【0036】
以下では、本発明の実施形態について、主に、集積回路の製造に用いられるシリコンウエハなどの半導体ウエハの処理との関連で説明する。集積回路用のメタライゼーション層は、ダマシンおよび/またはデュアルダマシン誘電体構造に形成される金属線用の銅を含む。銅金属線は、無電解めっきキャップを有する。いくつかの好ましいキャップは、コバルト合金、コバルト−タングステン合金、コバルト−タングステン−リン−ホウ素合金、コバルト−ニッケル合金、および、ニッケル合金などの多元素合金である。任意選択的に、誘電体は、炭素ドープ酸化シリコン(SiOC:H)などの低誘電率材料である。ただし、本発明に従った実施形態は、他の半導体デバイス、銅以外の金属、ニッケルおよび/またはコバルト以外の金属を用いたキャップ、ならびに、半導体ウエハ以外のウエハに用いられてもよいことを理解されたい。
【0037】
いくつかの用途について、本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、キャップの堆積後に基板を洗浄するために利用可能である。洗浄溶液は、キャップを設けられた銅相互接続構造の間の誘電体表面上に残ったイオンなどの汚染物質を除去することができる。かかる汚染物質の除去は、リーク電流特性の改善、電圧破壊特性の改善、および、時間依存絶縁破壊性能の改善などの結果を生じうる。
【0038】
さらに、本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、湿式移送システムに関連して用いられてもよく、その場合、ウエハは、湿潤状態(すなわち、ここに記載する洗浄溶液のような溶液がウエハの表面上に存在する状態)に維持されつつ、移送されるか、もしくは、1つの処理工程から別の処理工程へと移行される。かかる湿式移送システムにおいて、洗浄溶液は、ウエハ表面の汚染と、液滴、浮遊微粒子による汚染、ならびに、ウエハ表面の乾燥および再湿潤に付随する複雑さなど、ウエハの乾式移送に関連するその他の問題を低減または防止するよう作用しうる。湿式移送システムに関するさらなる詳細は、2009年12月11日出願の米国特許仮出願第61/285,950号「INTEGRATED TOOL SETS AND PROCESS TO KEEP SUBSTRATE SURFACE WET DURING PLAYING AND CLEAN IN FABRICATION OF ADVANCED NANO-ELECTRONIC DEVICES」に記載されており、その開示は、参照によって本明細書に全体が組み込まれる。
【0039】
図1Aによると、本発明の一実施形態に従って、CMP工程後の半導体相互接続10の拡大図が示されている。
【0040】
半導体ウエハ12は、シリコン、ガリウムヒ素、ダイヤモンドなどの材料から形成されてよい。半導体ウエハ12は、その中および上にトランジスタなどの半導体素子を形成するために処理されている。
【0041】
ILDなどの誘電体層14が、半導体ウエハ12上に蒸着されている。誘電体層14は、酸化シリコン(SiOx)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ホウリンケイ酸(BPSG)ガラスなど、誘電率が約4.2から3.9の誘電材料、または、フッ素化テトラエトキシシラン(FTEOS)、水素シルセスキオキサン(HSQ)、ベンゾシクロブテン(BCB)、炭素ドープ二酸化シリコンなど、誘電率が約3.9未満の低誘電率誘電材料から形成される。超低誘電率の誘電材料は、誘電率が約2.5未満の誘電材料である。かかる材料の例としては、市販のテフロン(登録商標)、テフロン−AF、テフロンマイクロエマルション、ポリイミドナノフォーム、シリカエーロゲル、シリカキセロゲル、および、メソ多孔質シリカが挙げられる。
【0042】
誘電体層14は、その中に形成されたチャネルまたはビアを有するよう処理されており、チャネルまたはビアは、バリア層16で内張りされている。バリア層16は、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、チタン(Ti)、タングステン(W)、それらの合金、および、それらの化合物などの材料で形成されてよい。
【0043】
バリア層16は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、それらの合金、および、それらの化合物などの導電体18で満たされる。
【0044】
図1Bによると、本発明の一実施形態に従って、酸化物除去工程後の半導体相互接続10の拡大図が示されている。酸化物除去工程は、図1Aの酸化物層20を除去する。
【0045】
図1Cによると、本発明の第1の実施形態に従って、キャッピング工程後の半導体相互接続10の拡大図が示されている。
【0046】
次いで、キャッピング層22が、バリア層16および導電体18の上に堆積される。キャッピング層22は、無電解めっきによって堆積されたコバルト(Co)またはコバルト−タングステン−リン(CoWP)、コバルト−タングステン−ホウ素(CoWB)、コバルト−タングステン−リン−ホウ素(CoWPB)などの金属または金属化合物であってよい。
【0047】
図2Aによると、本発明の一実施形態に従って、処理溶液30が示されている。処理溶液30は、腐食防止剤としても作用する界面活性剤32と、錯化剤34と、pH調整剤36とを含む。任意選択的に、本発明のいくつかの実施形態では、洗浄溶液は、水溶液である。ただし、本発明の他の実施形態は、水の代わりに非水液体を用いた非水洗浄溶液であってもよい。
【0048】
図に示すように、処理溶液30は、基板40の表面に供給される。基板40の露出面は、誘電体14の領域および金属キャッピング層20の領域を含む。前の処理工程(例えば、金属キャッピング層22の堆積後の脱イオン水によるリンス工程)の間および後に、キャッピング層22の腐食が起こりうる。結果として生じる腐食生成物38は、基板40の表面上に吸着された様々な酸化物および水酸化金属イオンからなりうる。
【0049】
例えば、キャッピング層がコバルトを含む一実施形態においては、結果として生じるコバルトの腐食生成物は、Co(OH)2、Co(OH)3、CoOOH、CoO、Co2O3、Co3O4など、様々な水酸化物および酸化物を含みうる。
【0050】
基板40の表面からの腐食生成物38の脱着を促進するため、一般に、本発明の実施形態に従った処理溶液は、約3以下のpHを有する。任意選択的に、処理溶液のpHは、いくつかの実施形態については2以下であってもよい。本発明のいくつかの実施形態は、約1.8から1.9のpHを有する処理溶液を含む。特定の実施形態では、pHは、約1.85であってよい。
【0051】
処理溶液の低いpHは、高濃度の水素イオンの影響によって、基板40の表面からの腐食生成物38の脱着を促進する。第1に、高濃度の水素イオンが、基板40の表面を正に帯電させる。第2に、有効な水素イオンが、水酸化金属イオンとの脱水反応を促進して金属イオンを放出すると、金属イオンは正に帯電されるので、基板40の正に帯電した表面から電気的に反発する。
【0052】
しかしながら、処理溶液30の低いpHは、基板40からの腐食生成物38の脱着を促進するものの、キャッピング層22のさらなる腐食も促進する。したがって、処理溶液30の酸性に起因するキャッピング層22の腐食を防止することが望ましい。
【0053】
界面活性剤:
したがって、上述のように、処理溶液30は、腐食防止剤としても機能する界面活性剤32を含む。任意選択的に、処理溶液30は、2以上の界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤32は、処理溶液30の表面張力を低下させることにより、供給された時に基板40の誘電体領域およびキャッピング領域の両方の十分な湿潤を促進する。基板40の湿潤を促進することにより、界面活性剤32は、基板表面の均一な洗浄と、液滴および浮遊微粒子からの基板表面の保護とを実現する。
【0054】
界面活性剤32の機能の一つは、キャップ層22を実質的に保護して処理溶液30内でのキャッピング層22の腐食を防止することであってよい。いくつかの用途について、本発明の実施形態に従った処理溶液は、キャッピング層22の厚さをほとんどまたは実質的に全く減少させることなく基板を洗浄するよう構成される。この目的のために、1または複数の界面活性剤が、本発明の実施形態に含まれてよい。
【0055】
界面活性剤32は、低いpHでキャッピング層22に選択的に結合するよう構成されてよい。より具体的には、界面活性剤32の極性基がキャッピング層22に結合し、界面活性剤の疎水基がキャッピング層22の反対側に向く。したがって、界面活性剤32は、キャッピング層22上に(図2Bに示すように)保護層42を形成し、保護層42は、基板40の誘電体領域に影響を与えることなく、処理溶液30の存在およびその低いpHによってキャッピング層22の腐食を防止する。本発明の実施形態は、キャッピング層22上に自己組織化単分子膜(SAM)を形成するよう構成された界面活性剤32を含んでおり、界面活性剤分子の極性基はキャッピング層22の方を向き、疎水性尾部はキャッピング層22の反対側に向く。
【0056】
界面活性剤32は、pHがアルカリ性レベルに上げられるまで、キャッピング層22に結合したままであるよう構成されてよい。したがって、次の脱イオン水によるリンス工程(キャッピング層22をさらに腐食する可能性がある)の間も、キャッピング層22は、界面活性剤層42によって保護されたままである。しかしながら、堆積溶液などのアルカリ溶液が基板40の表面に供給されると、界面活性剤層42が破壊されてキャッピング層22から解離する。本発明の実施形態において、界面活性剤は、キャッピング層のための堆積溶液と適合するように構成されてよい。換言すると、限られた量の界面活性剤が堆積溶液を汚染しても、堆積溶液の機能が大きく阻害されることはない。
【0057】
数多くの化合物が、本発明の実施形態において腐食防止剤としても作用する界面活性剤としての利用に適している。本発明の実施形態のための界面活性剤のリストは、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、両性イオン、および、それらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態のための界面活性剤のいくつかは、硫酸基またはスルホン酸基を頭部基として有する界面活性剤である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態において、界面活性剤は、酸性官能基を有する両性界面活性剤からなることが好ましい。両性界面活性剤は、キャッピング層用のアルカリ性堆積溶液との適合を強化するため、かつ、処理溶液のpHに影響を与えるために、酸性官能基を含んでよい。酸性官能基は、キャッピング層上に界面活性剤によって形成された保護層が、アルカリ性堆積溶液にさらされた時に破壊されることを可能にするよう構成されてよい。
【0059】
本発明の特定の実施形態において、界面活性剤は、ベタイン、すなわち、N,N−ジメチルグリシンの置換アルキル誘導体の両性イオンであってよい。一実施形態において、界面活性剤は、コカミドプロピルベタインである。界面活性剤は、アルキル基、フルオロアルキル基、または、部分的にフッ素化したアルキル基を含んでよい。本発明の実施形態に従った界面活性剤は、酸性官能基を備えてよい。酸性官能基は、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基など、様々な酸性官能基の内の1つであってよい。本発明のいくつかの一実施形態に従った処理溶液は、各界面活性剤について配合物の活性成分に対して約10ppmから約2000ppmの範囲の量で存在する1または複数の界面活性剤を含む。界面活性剤の分子量は、既知であるとは限らない。
【0060】
一般に、有効量の界面活性剤が、本発明に従った処理溶液内に提供される。換言すると、処理溶液中の界面活性剤の量は、処理溶液が、基板を洗浄すると共にキャップの腐食を十分に防止するのに有効であるように選択される。本発明のいくつかの実施形態について、処理溶液は、1または複数の界面活性剤を含んでおり、各界面活性剤は、約10パーツ・パー・ミリオン(ppm)から約2000ppmの範囲の濃度で処理溶液中に存在する。本発明の実施形態に従ったいくつかの洗浄溶液に対する選択肢として、界面活性剤は、約300ppmから約700ppmまでの範囲の濃度、および、その範囲に含まれるすべての部分範囲の濃度で存在する。
【0061】
本発明の実施形態に従って、界面活性剤の構成および濃度は、処理溶液の所望のpHレベルを提供するために選択される。pHレベルは、ウエハの表面からの腐食生成物の脱着を促進するように界面活性剤の存在によって調節されうる。
【0062】
錯化剤:
本発明の実施形態に従った処理溶液は、任意選択的に錯化剤34を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態に従った錯化剤34は、金属イオンと錯体を形成することを可能にする官能基を含む。表面から脱着した金属イオンとの錯体を効果的に形成することによって、錯化剤34は、溶液中の金属イオンを安定化させるよう作用する。これは、金属イオンがウエハ表面上に再堆積するのを防ぐよう機能する。かかる再堆積は、後の工程(脱イオン水リンス工程など)中に起こる傾向がある場合があり、そのような工程中には、pHが増大して、金属イオンの水酸化および酸化と、その結果として起こるウエハ表面上への腐食生成物の再堆積とを引き起こしうる。
【0063】
したがって、本発明の実施形態は、3より小さいpH値および3より大きいpH値の両方を含む広範囲のpH値にわたって金属イオンと効果的に結合するように構成された錯化剤34を含むことが想定される。図2Bに示すように、腐食生成物38は、基板40の表面から脱着された後に、錯化剤34と錯体44を形成する。
【0064】
錯化剤34は、洗浄溶液のpHを調整することを可能にする1または複数の官能基を有してもよい。より具体的には、錯化剤は、さらに、洗浄溶液のpHを約3以下に維持するように溶液のpHに寄与および影響することができる。
【0065】
本発明の実施形態に従った洗浄溶液のための錯化剤は、Lars Gunnar SillenおよびArthur E.Martellによる「Stability Constants of Metal-Ion Complexes: Inorganic Ligands, Organic Ligands; and Supplement」、2巻セット(特別版第17号および補遺版第1号)、1972年、に記載されており、これは、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる。溶液のpHに影響を与えることができる錯化剤のリストは、以下を含むがこれらに限定されない:フィチン酸、シュウ酸(CAS#[6153−56−6])、ピロリン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(CAS#[2809−21−4]、エチドロン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、または、HEDPAとも呼ばれる)、フィチン酸、マロン酸、マレイン酸、および、それらの混合物。
【0066】
一般に、本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、(基板表面からの金属イオンの除去を容易にするために)、基板の表面から除去された金属イオンと錯体を形成し、所望のレベルへのpHの維持に寄与するように機能できる有効量の錯化剤を含む。必要とされる具体的な量は、錯化剤の特性に依存する。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態について、錯化剤の濃度は、およそ0.05g/Lから20g/Lの範囲である。他の実施形態において、錯化剤の濃度は、およそ0.5g/Lから2g/Lの範囲およびその範囲に含まれるすべての部分範囲であってもよい。
【0068】
pH調整剤:
本発明の実施形態に従った処理溶液は、さらに、pH調整剤36(または複数のpH調整剤)を含んでよい。本発明のいくつかの実施形態に従った洗浄溶液中のpH調整剤は、洗浄溶液のpHを所望のレベルに維持することを可能にする官能基を有する。上述のように、いくつかの実施形態において、所望のpHレベルは、約3または2未満であってよい。本発明の具体的な実施形態について、これは、pH調整剤36が、酸性洗浄溶液を生成するための官能基を有することを意味しうる。任意選択的に、pH調整剤は、錯化剤として機能してもよい。
【0069】
本発明の実施形態のためのpH調整剤のリストは、以下を含むがこれらに限定されない:硫酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびトリフル酸などを含むがこれらに限定されないスルホン酸;次亜リン酸;シュウ酸;トリフルオロ酢酸、トリフリン酸を含むがこれに限定されないハロゲン化カルボン酸;アセチレンジカルボン酸;スクアリン酸;ジヒドロキシフマル酸;マレイン酸;および、それらの混合物。一つの選択肢として、pH調整剤は、約2以下のpKaを有する1または複数の酸を含んでよく、pKaは酸解離定数Kaの負の対数であり、1または複数の酸は、洗浄剤を所望の酸性pHに調整することができる。あるいは、pH調整剤は、1.5以下のpKaを有する1または複数の酸を含んでもよく、1または複数の酸は、洗浄溶液を所望の酸性pHに調整することができる。
【0070】
本発明の特定の実施形態において、pH調整剤は、堆積溶液と適合するように構成される。換言すると、pH調整剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合に堆積溶液の機能が大きく阻害されないように選択される。
【0071】
一般に、本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、pHを所望のレベルに維持するために、有効量のpH調整剤を含む。必要とされる具体的な量は、pH調整剤の特性および所望のpHレベルに依存する。本発明のいくつかの実施形態について、pH調整剤の量は、およそ0.01g/Lから20g/Lの範囲である。本発明の他の実施形態では、pH調整剤の濃度は、およそ3g/Lから5g/Lの範囲である。
【0072】
pH調整剤を含有することは、処理溶液のpHレベルを所望のレベルに調整するコスト効率のよい方法でありうる。例えば、様々な実施形態において、界面活性剤または錯化剤のいずれかまたは両方が、溶液のpHを低下させる化学剤として機能してもよい。しかしながら、所望の低pHを達成するために、界面活性剤または錯化剤のいずれかを濃縮するには桁違いの費用がかかりうる。したがって、界面活性剤および錯化剤だけからなる溶液で実現できるよりも低いコストでpHを所望のレベルに調整するために、比較的安価なpH調整剤が選択されうる。
【0073】
処理溶液配合の例:
本発明の実施形態に従った処理溶液は、数多くの具体的な配合の内の任意の1つを有しうる。
【0074】
一実施形態では、処理溶液は、1または複数の界面活性剤を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を促進し、キャッピング層を腐食から保護すると同時に、ウエハ表面からの腐食生成物の脱着を引き起こすために低pHを生み出すよう構成される。界面活性剤の具体的な構成および濃度は、十分に低いpHとキャッピング層の腐食の十分な抑制とを実現するように選択できる。さらに、界面活性剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように構成されてよい。
【0075】
一実施形態では、処理溶液は、界面活性剤およびpH調整剤の両方を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を促進し、キャッピング層の腐食を抑制するが、単独では、処理溶液にとって望ましいpHレベルを生み出さない。pH調整剤は、溶液のpHを所望のレベル(例えば、3.0未満)に調整するよう構成される。界面活性剤およびpH調整剤の構成および具体的な濃度は、十分な湿潤、キャッピング層の腐食の十分な抑制、および、十分に低いpHを実現するように選択できる。さらに、界面活性剤およびpH調整剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように構成されてよい。
【0076】
一実施形態では、処理溶液は、界面活性剤および錯化剤の両方を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を促進し、キャッピング層の腐食を抑制するよう構成される。錯化剤は、ウエハ表面上への堆積(または再堆積)を防ぐために溶液中の金属イオンに結合するよう構成される。界面活性剤および錯化剤のいずれかまたは両方が、処理溶液にとって望ましいpHレベルを生み出すように構成されてもよい。界面活性剤および錯化剤の具体的な構成および濃度は、十分な湿潤、キャッピング層の腐食の十分な抑制、腐食生成物の再堆積の十分な防止、および、所望のpHレベルを実現するように選択できる。さらに、界面活性剤および錯化剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように選択されてよい。
【0077】
一実施形態では、処理溶液は、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤を含む。界面活性剤は、ウエハ表面の湿潤を促進し、キャッピング層の腐食を抑制するよう構成される。錯化剤は、処理溶液中の金属イオンと結合するよう構成される。pH調整剤は、処理溶液のpHを所望のレベルに調整するよう構成される。界面活性剤または錯化剤のいずれかまたは両方が、pHレベルに影響するように構成されてもよい。
【0078】
界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤の具体的な構成および濃度は、十分な湿潤、キャッピング層の腐食の十分な抑制、ウエハ表面上への腐食生成物の再堆積の十分な防止、および、所望のpHレベルを実現するように選択できる。さらに、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように選択されてよい。
【0079】
図3Aおよび図3Bによると、本発明の一実施形態に従って、基板の表面から腐食生成物を脱着するためのメカニズムが示されている。図3Aに示すように、基板表面50は、二酸化シリコンなどの誘電体を含む。様々な実施形態において、他の誘電体および表面材料が、基板表面50を構成してもよい。二酸化シリコンは、一例として、約pH2から3のゼロ電荷点を有する。したがって、約2から3のpHでは、基板表面50は、電荷中性になる。二酸化シリコンが基板表面に含まれる図の例に示すように、二酸化シリコン表面の暴露したヒドロキシル基52は、正味ゼロ電荷を示す。
【0080】
さらに、溶液から沈殿する金属水酸化物などの金属腐食生成物が、基板表面50上に存在しうる。キャッピング層の堆積に続いて、堆積処理を停止させて堆積溶液を除去するために、脱イオン水でのリンス工程などの後続工程が施されうる。しかしながら、かかる工程は、さらに、キャッピング層の腐食を促進して、腐食生成物の形成につながりうる。図3Aに示した例において、腐食生成物54は、コバルト含有キャッピング層の腐食に起因するCo(OH)2を含む。コバルトイオンは、水溶液中でアクアイオンを形成し、加水分解反応を受けて、基板表面50上に沈殿する水酸化コバルトを形成する。本発明の様々な実施形態において、腐食生成物は、金属表面の腐食に起因する様々な金属水酸化物および錯体を含みうる。腐食生成物54は、基板表面50上に吸着される。
【0081】
しかしながら、pHが十分な程度(例えば、約2未満)まで下げられると、基板表面50は、図3Bに示すように、露出されたヒドロキシル基52のプロトン化によって正に帯電される。さらに、水酸化物の腐食生成物は、以下の一般的な反応に従って、低pHによって駆動される脱水反応を受ける:
M(OH)n+nH+→Mn++nH2O
ここで、Mは金属である。具体的に、水酸化コバルトの場合の反応は:
Co(OH)2+2H+→Co2++2H2O
【0082】
放出された金属イオン(図の例においてはCo2+)は、正に帯電した基板表面から静電的に反発される。したがって、約2未満の低pHは、基板表面50からの腐食生成物54の脱着を容易にする。
【0083】
図4によると、本発明の一実施形態に従って、基板表面から腐食生成物を洗浄するための処理溶液60が示されている。基板の表面は、誘電体70およびキャッピング層74の領域を含む。いくつかの実施形態において、キャッピング層74は、コバルトまたはコバルト合金からなり、銅層72などの導電層を酸化およびエレクトロマイグレーションから保護する。一実施形態では、処理溶液60は、界面活性剤62、錯化剤64、および、pH調整剤66を含む。
【0084】
界面活性剤62は、処理溶液60による基板表面の被覆を容易にするために、湿潤を促進する。一実施形態において、界面活性剤62は、キャッピング層74に選択的に結合し、自己組織化単分子膜を形成して、キャッピング層74を腐食から保護するよう構成される。
【0085】
一実施形態では、処理溶液は、およそ2から3未満のpHを有するよう構成される。かかる低いpHは、誘電体70の表面に吸着した腐食生成物(金属水酸化物など)の脱着を促進する。脱着は、符号68で示すように、脱水反応を介して起こりうる。処理溶液の低いpHは、キャッピング層74のさらなる腐食も促進するが、キャッピング層上の界面活性剤SAMが、処理溶液の低いpHによって起きるはずの腐食を抑制するよう作用する。
【0086】
基板表面からの腐食生成物の脱着により、金属イオンが処理溶液中に放出される。後続工程(例えば、リンス工程または脱イオン水などpHの高い液体を用いる後続の処理工程)においてpHが高く調整された時に再沈殿が起きる可能性が高いため、錯化剤64は、金属イオンと結合し、処理溶液中の金属イオンを安定化させて基板の表面上に水酸化物として再沈殿するのを抑制する錯体を形成する。錯化剤は、およそ2から3未満のpHなど、低いpHで金属イオンと結合するよう構成される。さらに、錯化剤は、酸性化合物であることによって、処理溶液のpH全体に影響を与えてもよい。
【0087】
したがって、例えば、コバルトキャッピング層の腐食生成物の場合、反応は、以下の化学式に従って進行しうる:
Co(OH)2+2H++Ac2-→CoAc+2H2O
ここで、Acは、コバルトイオンに結合するよう構成された錯化剤である。
【0088】
処理溶液60は、任意選択的にpH調整剤66も含んでよい。pH調整剤66は、処理溶液のpHを所望のレベルに調整するために提供される。錯化剤64は酸であってよいが、いくつかの実施形態においては、効率および費用を考慮すると、所望のpHレベルを実現するために錯化剤64を濃縮することが望ましくない場合がある。したがって、基板表面からの腐食生成物の脱着を促進するために所望のpHレベルをより効率的に実現するには、pH調整剤66を利用することが有利な場合がある。
【0089】
いくつかの実施形態において、処理溶液60は、pH調整剤を含まない。代わりに、錯化剤または界面活性剤が、酸性化合物として構成され、所望のpHレベルを提供するために適切な濃度に濃縮される。
【0090】
本発明の実施形態に従った処理溶液60は、処理溶液によって堆積溶液が汚染された場合にキャッピング層のための堆積溶液に適合するように構成されてよい。堆積溶液および洗浄溶液の供給が同じ装置内で行われ、堆積溶液が再循環される場合に、かかる汚染が懸念されうる。したがって、処理溶液による意図しない汚染によって堆積溶液の機能が実質的に抑制されないように処理溶液を構成することが望ましい場合がある。
【0091】
このように、処理溶液の成分の各々は、堆積溶液と適合するように構成されてよい。換言すると、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤は、堆積溶液の機能を実質的に抑制しないように構成されてよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、低pHで金属キャッピング層と選択的に結合するよう構成される。上述のように、界面活性剤は、中性pHでもキャッピング層の上に残りうる界面活性剤SAMをキャッピング層上に形成する。ただし、界面活性剤は、界面活性剤SAMがアルカリ性pHで破壊されるように構成されてもよい。したがって、堆積溶液は、アルカリ性pHを有するよう構成されてよく、そうすれば、基板表面に供給された時に界面活性剤SAMの破壊を引き起こす。このように、界面活性剤は、堆積溶液の活性を妨げない。
【0093】
いくつかの実施形態において、錯化剤は、低pHでのみ溶液中の金属イオンと結合するように構成される。したがって、処理溶液の錯化剤が堆積溶液を汚染した場合に、錯化剤は、堆積溶液のアルカリ性pHによって不活性化される。このように、錯化剤は、堆積溶液中に存在する金属イオンと干渉しないので、堆積溶液内でその溶液の機能を実質的に阻害しない。
【0094】
いくつかの実施形態において、pH調整剤は、堆積溶液の機能を実質的に妨げないように構成される。いくつかの実施形態において、これは、堆積溶液中にすでに存在する酸をpH調整剤として選択することによって達成されうる。
【0095】
図5Aおよび5Bによると、異なる動作モードの処理チャンバ80の断面図が示されている。図5Aは、堆積処理中のウエハ処理チャンバ80を示している。処理チャンバ80は、ウエハ83を保持するためのウエハ支持体82を備えており、ウエハ支持体82は、様々な処理溶液がウエハ83の表面に供給される際にウエハ83を回転させるよう構成されている。処理チャンバ80は、さらに、上側仕切板84および下側仕切板86を備える。上側仕切板84は、下側仕切板86とシールを形成するために移動可能である。図5Aは、上側仕切板84が下側仕切板86に対して密閉された「閉」位置の処理チャンバ80を示す。上側仕切板84および下側仕切板86が合わさって、内部チャンバ88および外部チャンバ92を規定する。内部チャンバ88は、ウエハ支持体82およびウエハ83を含む。
【0096】
図5Aは、堆積処理中の処理チャンバ80を示しており、処理チャンバ80は閉位置であり、堆積溶液がウエハ83の表面に供給されている。ウエハ83がウエハ支持体82によって回転されるため、堆積溶液は、ウエハ83のエッジから流れ落ちる。上側仕切板84および下側仕切板86によって密閉されているため、堆積溶液は、内部チャンバ88の中に留まり、下方に流れて、内部チャンバ排液管90を介して内部チャンバから流れ出る。堆積溶液は、堆積液容器96に流れ、そこから、ウエハ処理チャンバ80内に再循環される。
【0097】
図5Bは、洗浄処理中の処理チャンバ80を示しており、処理チャンバ80は開位置にあり、上側仕切板84は、下側仕切板86から持ち上げられて分離されている。洗浄溶液が、ウエハ83の表面に供給されている。ウエハ83がウエハ支持体82によって回転されるため、洗浄溶液の大部分は、ウエハ83のエッジから流れ落ちて、外部チャンバ92に流入し、外部チャンバ排液管94を介して外部チャンバ92から流出する。しかしながら、洗浄溶液の一部は、内部チャンバ88内に落ちうるため、再循環される時に堆積溶液を汚染する。この理由から、かかる汚染が起こる場合に洗浄溶液が堆積溶液に適合するように、本発明の実施形態に従って洗浄溶液を構成することが望ましい。
【0098】
図6によると、本発明の一実施形態に従って、基板の表面を処理する方法が示されている。方法動作100で、界面活性剤が準備される。界面活性剤は、基板の湿潤を向上させ、キャッピング層の腐食を抑制するよう構成されてよい。一実施形態において、界面活性剤は、両性界面活性剤である。
【0099】
方法動作102で、錯化剤が準備される。錯化剤は、基板の表面の誘電体領域から放出されたキャッピング層の腐食生成物と結合するよう構成されてよい。
【0100】
方法動作104で、pH調整剤が準備される。pH調整剤は、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤の混合物のpHを所望のレベルに調整するよう構成される。所望のレベルは、腐食生成物が基板の表面から脱着されるpHレベルであってよい。
【0101】
方法動作106で、界面活性剤、錯化剤、および、pH調整剤を含む混合物が形成される。
【0102】
方法動作108で、混合物は、基板表面からの腐食生成物の除去を実現するために、基板/ウエハの表面に一定期間供給される。
【0103】
一つの選択肢として、本発明の実施形態に従った洗浄溶液を用いて基板を洗浄する処理は、ブラシを用いて洗浄溶液を基板に塗布することによって実行されてよい。あるいは、処理は、基板を洗浄溶液内に浸漬する、洗浄溶液で基板をリンスする、洗浄溶液を基板上に噴霧する、近接ヘッドを用いて洗浄溶液を供給するなどの方法によって、洗浄溶液を基板に供給することにより実行されてもよい。
【0104】
本発明の実施形態に従った洗浄溶液の洗浄効率は、洗浄中に超音波またはメガソニックエネルギを基板に印加するなどの処理を用いることにより、および/または、洗浄中に温度を上昇させることにより、さらに高めることができる。いくつかの用途について、洗浄溶液は、約5℃から約90℃の範囲の温度で用いられる。本発明の実施形態に従った洗浄溶液は、キャップ層の堆積後に基板を洗浄するために利用可能である。
【0105】
本明細書では、具体的な実施形態を参照しつつ、本発明を説明している。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変形例および変更例が可能であることを理解すべきである。したがって、本明細書は、例示を目的としたものであり、限定を意図したものではないと見なされるべきであり、かかる変形例すべてが、本発明の範囲に含まれるよう意図されている。
【0106】
利益、その他の利点、および、課題の解決法について、具体的な実施形態に関連して上述した。しかしながら、それらの利益、利点、課題の解決法、ならびに、任意の利益、利点、または、解決法を生じさせるもしくはより顕著にさせうる任意の要素は、任意またはすべての請求項の重要、必要、または必須の特徴または要素として解釈されない。
【0107】
理解を深めるために、本発明について、ある程度詳しく説明したが、添付の特許請求の範囲内でいくらかの変更と変形を行ってもよいことは明らかである。したがって、この実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではないとみなされ、本発明は、本明細書に示した詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲および等価物の範囲内で変形されてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ表面上に供給するための溶液であって、前記ウエハ表面は金属キャッピング層を備え、前記溶液は、前記ウエハ表面から前記金属キャッピング層の腐食生成物をリンスしつつ前記金属キャッピング層の腐食を低減させる効果があり、前記溶液は、
前記ウエハ表面の湿潤を改善し、前記キャッピング層のさらなる腐食を抑制するよう構成された界面活性剤を含み、
前記溶液は、前記ウエハ表面上への前記供給の際に約3未満のpHに維持される溶液。
【請求項2】
請求項1に記載の溶液であって、前記界面活性剤は、前記金属キャッピング層上に自己組織化単分子膜を形成する溶液。
【請求項3】
請求項1に記載の溶液であって、前記界面活性剤は、両性界面活性剤である溶液。
【請求項4】
請求項3に記載の溶液であって、前記溶液中の前記界面活性剤の濃度は、約10ppmから2000ppmの範囲にある溶液。
【請求項5】
請求項3に記載の溶液であって、前記溶液中の前記界面活性剤の濃度は、約300ppmから700ppmの範囲にある溶液。
【請求項6】
請求項1に記載の溶液であって、さらに、前記ウエハ表面から前記溶液中に溶解した腐食生成物と結合するよう構成された錯化剤を含む溶液。
【請求項7】
請求項6に記載の溶液であって、前記錯化剤は、前記腐食生成物の再堆積を防止する溶液。
【請求項8】
請求項6に記載の溶液であって、前記錯化剤は、シュウ酸二水和物である溶液。
【請求項9】
請求項8に記載の溶液であって、前記錯化剤の濃度は、およそ0.05g/Lから20g/Lの範囲にある溶液。
【請求項10】
請求項8に記載の溶液であって、前記錯化剤の濃度は、約1g/Lである溶液。
【請求項11】
請求項1に記載の溶液であって、さらに、前記ウエハ表面上への前記供給の際に前記溶液の前記pHを約3未満に下げるよう構成されたpH調整剤を含む溶液。
【請求項12】
請求項11に記載の溶液であって、前記pH調整剤は、次亜リン酸である溶液。
【請求項13】
請求項11に記載の溶液であって、前記pH調整剤の濃度は、およそ0.01g/Lから20g/Lの範囲にある溶液。
【請求項14】
請求項11に記載の溶液であって、前記pH調整剤の濃度は、約8ml/L 50w/w%である溶液。
【請求項15】
請求項1に記載の溶液であって、前記界面活性剤は両性界面活性剤であり、前記溶液は、さらに、
前記ウエハ表面から前記溶液中に溶解した腐食生成物と結合するよう構成され、ヒドロキシエチルジホスホン酸、シュウ酸二水和物、フィチン酸、および、ピロリン酸からなる群より選択された錯化剤と、
前記ウエハ表面上への前記供給の際に前記溶液の前記pHを約3未満に下げるよう構成され、次亜リン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフリン酸、および、トリフルオロ酢酸からなる群より選択されたpH調整剤と
を含む溶液。
【請求項16】
請求項1に記載の溶液であって、前記溶液は、前記堆積溶液と交差汚染した場合に、前記金属キャッピング層を生成するために再循環されて用いられる堆積溶液の機能を大きく阻害しない溶液。
【請求項17】
請求項1に記載の溶液であって、前記ウエハ表面は、誘電材料の領域を含み、前記誘電材料の前記領域は、前記溶液の供給の前に前記領域上に形成された前記キャッピング層の前記腐食生成物を有する溶液。
【請求項18】
請求項17に記載の溶液であって、前記誘電材料は、約3.0以下のK値を有する溶液。
【請求項19】
請求項1に記載の溶液であって、前記金属キャッピング層は、コバルトまたはコバルト合金からなる溶液。
【請求項1】
ウエハ表面上に供給するための溶液であって、前記ウエハ表面は金属キャッピング層を備え、前記溶液は、前記ウエハ表面から前記金属キャッピング層の腐食生成物をリンスしつつ前記金属キャッピング層の腐食を低減させる効果があり、前記溶液は、
前記ウエハ表面の湿潤を改善し、前記キャッピング層のさらなる腐食を抑制するよう構成された界面活性剤を含み、
前記溶液は、前記ウエハ表面上への前記供給の際に約3未満のpHに維持される溶液。
【請求項2】
請求項1に記載の溶液であって、前記界面活性剤は、前記金属キャッピング層上に自己組織化単分子膜を形成する溶液。
【請求項3】
請求項1に記載の溶液であって、前記界面活性剤は、両性界面活性剤である溶液。
【請求項4】
請求項3に記載の溶液であって、前記溶液中の前記界面活性剤の濃度は、約10ppmから2000ppmの範囲にある溶液。
【請求項5】
請求項3に記載の溶液であって、前記溶液中の前記界面活性剤の濃度は、約300ppmから700ppmの範囲にある溶液。
【請求項6】
請求項1に記載の溶液であって、さらに、前記ウエハ表面から前記溶液中に溶解した腐食生成物と結合するよう構成された錯化剤を含む溶液。
【請求項7】
請求項6に記載の溶液であって、前記錯化剤は、前記腐食生成物の再堆積を防止する溶液。
【請求項8】
請求項6に記載の溶液であって、前記錯化剤は、シュウ酸二水和物である溶液。
【請求項9】
請求項8に記載の溶液であって、前記錯化剤の濃度は、およそ0.05g/Lから20g/Lの範囲にある溶液。
【請求項10】
請求項8に記載の溶液であって、前記錯化剤の濃度は、約1g/Lである溶液。
【請求項11】
請求項1に記載の溶液であって、さらに、前記ウエハ表面上への前記供給の際に前記溶液の前記pHを約3未満に下げるよう構成されたpH調整剤を含む溶液。
【請求項12】
請求項11に記載の溶液であって、前記pH調整剤は、次亜リン酸である溶液。
【請求項13】
請求項11に記載の溶液であって、前記pH調整剤の濃度は、およそ0.01g/Lから20g/Lの範囲にある溶液。
【請求項14】
請求項11に記載の溶液であって、前記pH調整剤の濃度は、約8ml/L 50w/w%である溶液。
【請求項15】
請求項1に記載の溶液であって、前記界面活性剤は両性界面活性剤であり、前記溶液は、さらに、
前記ウエハ表面から前記溶液中に溶解した腐食生成物と結合するよう構成され、ヒドロキシエチルジホスホン酸、シュウ酸二水和物、フィチン酸、および、ピロリン酸からなる群より選択された錯化剤と、
前記ウエハ表面上への前記供給の際に前記溶液の前記pHを約3未満に下げるよう構成され、次亜リン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフリン酸、および、トリフルオロ酢酸からなる群より選択されたpH調整剤と
を含む溶液。
【請求項16】
請求項1に記載の溶液であって、前記溶液は、前記堆積溶液と交差汚染した場合に、前記金属キャッピング層を生成するために再循環されて用いられる堆積溶液の機能を大きく阻害しない溶液。
【請求項17】
請求項1に記載の溶液であって、前記ウエハ表面は、誘電材料の領域を含み、前記誘電材料の前記領域は、前記溶液の供給の前に前記領域上に形成された前記キャッピング層の前記腐食生成物を有する溶液。
【請求項18】
請求項17に記載の溶液であって、前記誘電材料は、約3.0以下のK値を有する溶液。
【請求項19】
請求項1に記載の溶液であって、前記金属キャッピング層は、コバルトまたはコバルト合金からなる溶液。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【公表番号】特表2013−515855(P2013−515855A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546015(P2012−546015)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059968
【国際公開番号】WO2011/078982
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059968
【国際公開番号】WO2011/078982
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】
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