説明

堆積材料の水底投下方法及びその施工管理装置

【課題】堆積材料を大量に水底へと投下することで水底に人工構造物を造成する際に、施工開始から完了に至るまで、可能な限り効率的にかつ安定して施工を行う
【解決手段】バージ14の船倉18における堆積材料28の積み込み形状と、バージ14の船倉18の開扉動作にかける時間(開扉パターン)との組み合わせからなる投入パターンに応じて変化する、バージ14の船倉18の開扉動作の際に積載された堆積材料28に生じるアーチフリクション(図7の格子模様を参照)を適宜利用し、船底からの堆積材料28の単位時間当たりの落下量を、一投毎に制御する。そして、投入パターンを一投毎に適宜見直すことで、船底からの堆積材料28の単位時間当たりの落下量を適宜調整し、一投毎に必要な堆積形状を得ることで、最終的に必要とされる水底での堆積形状となるよう、効率的に施工作業を導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積材料の水底投下方法及びその施工管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、海底に人工漁礁や港湾建造物の基礎を造成し、又は、海底パイプライン等の埋設物に覆土・盛土を行う等、石材、ブロック、土砂等の堆積材料を大量に水底へと投下することで人工構造物を造成する作業には、バージ(土運船)が広く用いられており、いわゆる全開バージも広く利用されている(例えば、特許文献1)。又、堆積材料の水底投下作業は、水面から水底に向けて高い位置精度で堆積材料を投下する必要があることから、GPSを用いてバージの位置を正確に割り出して操船することにより、高精度の堆積材料の投入を行う手法も発案されている(例えば、特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−155826号公報
【特許文献2】特開2007−255032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如き従来の堆積材料の水底投下方法によって、バージの位置(経度、緯度、方位)を正確に把握してバージの位置を制御しても、バージから水中へと投下された堆積材料が、実際に必要とされる形状に堆積されているか否かは、投下後の出来高計測によって初めて明らかとなるものである。従って、従来は複数回の投入作業の工程中に一投毎の投下量や投下位置を、作業者の経験や勘を頼りに変更し、試行錯誤の末に必要な堆積形状を統計的に得るものであり、特に、全く新規の堆積目標位置に対する水底構造物の施工作業に際しては、効率的に施工作業を進めることが困難となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、堆積材料を大量に水底へと投下することで水底に人工構造物を造成する際に、堆積目標位置や施工時の諸条件の如何に関わらず、施工開始から完了に至るまで、作業者の経験や勘を拠り所とすることなく、可能な限り効率的にかつ安定して施工を行うことを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)堆積材料をバージによって水底に投下して人工構造物を造成する堆積材料の水底投下方法であって、
バージの船倉における堆積材料の積み込み形状と、バージの船倉の開扉動作にかける時間との組み合わせからなる投入パターンに応じて変化する、バージの船倉の開扉動作の際に積載された堆積材料に生じるアーチフリクションを適宜利用し、船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量を、一投毎に制御する堆積材料の水底投下方法(請求項1)。
【0008】
本項に記載の堆積材料の水底投下方法は、バージの船倉における堆積材料の積み込み形状と、バージの船倉の開扉動作にかける時間との組み合わせからなる投入パターンに応じて変化する、バージの船倉の開扉動作の際に積載された堆積材料に生じるアーチフリクションを適宜利用し、船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量を、一投毎に制御する。そして、投入パターンを一投毎に適宜見直すことで、船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量を適宜調整し、一投毎に必要な堆積形状を得ることで、最終的に必要とされる水底での堆積形状となるよう、効率的に施工作業を導くものである。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記投入パターン及び施工条件毎に、水底へと投下される堆積材料の堆積形状について予めシミュレーションを行うステップと、
該シミュレーション結果に照らして、予定される施工条件に適した投入パターンを選択して、堆積材料の投下を行うステップと、
一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行うステップと、
必要な再現性が得られた投入回に係る投入パターン及び施工条件を、前記シミュレーション結果と併せて、次回の投下時に求められる堆積形状の再現に適した投入パターンを対象として選択するステップと、
選択した投入パターンに基づき、次回の投下作業を行うステップの一部若しくは全部を含む堆積材料の水底投下方法(請求項2)。
【0010】
本項に記載の堆積材料の水底投下方法は、堆積材料を水底へと投下することで人工構造物を造成するにあたり、少なくとも投入作業の初期段階では、シミュレーション結果に照らして、又、利用可能な場合には過去に行った作業で得られた投入パターンも考慮に入れて、予定される施工条件に適した投入パターンを選択して、堆積材料の投下を行う。
そして、一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行い、必要な再現性が得られた投入回に係る投入パターン及び施工条件を、シミュレーション結果とあわせて選択対称に加え、次回の投下時に求められる堆積形状の再現に適した投入パターンを選択して、次回の投下作業を行う。かかる作業の一部若しくは全部を必要に応じ繰り返すことで、投入作業の進行に伴い、最終的に必要とされる水底での堆積形状となるための最適な投入パターンを選択して投入を行い、効率的に、必要とされる水底での堆積形状へと導くものである。
【0011】
(3)上記(1)項において、前記投入パターン及び施工条件毎に、水底へと投下される堆積材料の堆積形状について予めシミュレーションを行い、これを堆積形状モデルデータベースとして管理するステップと、
該堆積形状モデルデータベースから、予定される施工条件に適した投入パターンを選択して、堆積材料の投下を行うステップと、
投下後の水底における実際の堆積形状を一投毎に把握して実績データベースとして管理するステップと、
一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行い、堆積形状の再現性の良否を評価するステップと、
必要な再現性が得られた投入回に係る投入パターン及び施工条件を、前記堆積形状モデルデータベースに加え若しくは置換することで、前記堆積形状モデルデータベースの適正化を行うステップと、
該適正化された堆積形状モデルデータベースの中から、次回の投下時に求められる堆積形状の再現に適した投入パターンを選択して、次回の投下作業を行うステップの一部若しくは全部を含む堆積材料の水底投下方法(請求項3)。
【0012】
本項に記載の堆積材料の水底投下方法は、堆積材料を水底へと投下することで人工構造物を造成するにあたり、堆積材料の複数の投入作業の一回目或いは一回目から所定の回数までの投入作業に係る投入パターンを、堆積形状モデルデータベースから選択することで、少なくとも投入作業の初期段階では、計算上最適な投入パターンで投入作業を行う。
そして、一回目或いは一回目から所定の回数までの投入作業について、一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状を把握し、実績データベースとして管理する。
又、一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行い、堆積形状の再現性の良否を評価する。ここで、必要な再現性が得られた投入回に係る投入パターン及び施工条件を、堆積形状モデルデータベースに加え若しくは置換することで、当初、シミュレーションデータのみ含まれていた堆積形状モデルデータベースに、再現性の高い実施工結果を反映させ、堆積形状モデルデータベースの適正化を行う。
更に、次回以降の投下作業を、適正化された堆積形状モデルデータベースの中から、次回の投下時に求められる堆積形状の再現に適した投入パターンを選択して行う。かかる作業の一部若しくは全部を必要に応じ繰り返すことで、投入作業の進行に伴い、最終的に必要とされる水底での堆積形状となるための最適な投入パターンを選択して投入を行い、効率的に、必要とされる水底での堆積形状へと導くものである。
【0013】
(4)上記(2)、(3)項において、前記施工条件には、堆積材料の堆積目標位置の水深、深浅データ、堆積材料の石材条件、施工時の気象・海象条件、水底の底質条件、バージの動揺状態及びバージの船倉形状のうち少なくとも一つを含む堆積材料の水底投下方法(請求項4)。
本項に記載の堆積材料の水底投下方法は、施工条件に堆積材料の堆積目標位置の水深(施工前の水底の水深)、深浅データ(一投完了毎の堆積形状を示す座標データ)、堆積材料の石材条件(石材、砂礫、ブロック等堆積材料の形状、大きさ、重さ、水中における粘性(散らばり易さ)等)及び施工時の気象・海象(潮流を含む)条件、水底の底質条件(土壌等)、バージの動揺状態(揺れに伴う堆積材料の積み込み形状の変化)及びバージ(使用船舶)の船倉形状(縦、横、深さ、床形状等)のうち少なくとも一つを含ませることで、堆積形状についてのシミュレーション精度を確保し、かつ、投入パターンの選択の適正化を図るものである。
【0014】
(5)上記(2)から(4)項において、投入パターン及び施工条件毎のシミュレーションを行う際に、個別要素法を用いた三次元固液混層流モデルによる堆積形状シミュレーションを利用する堆積材料の水底投下方法(請求項5)。
本項に記載の堆積材料の水底投下方法は、個別要素法を用いた三次元固液混層流モデルによる堆積形状シミュレーション(以下、本説明では、「個別要素法シミュレーション」とも言う。)を利用して投入パターン及び施工条件毎のシミュレーションを行うことで、堆積形状についてのシミュレーション精度を確保するものである。
なお、個別要素法を用いた三次元固液混層流モデルによる堆積形状シミュレーションは、水中沈降粒子群の三次元挙動の特性を把握し、併せて沈降粒子群に冷機される流体運動の三次元特性について把握するものとして公知の技術であり(重松孝昌,小田一紀,田野雅彦,廣瀬真由,海岸工学論文集,第47巻(2000)土木学会,p996−1000)、水底へと投下される堆積材料の堆積形状を精度良く把握するに適したものであることから、本発明に採用したものであるが、適宜他の方法を用いることも可能である。
【0015】
(6)バージの船倉における堆積材料の積み込み形状と、バージの船倉の開扉動作にかける時間との組み合わせからなる投入パターンに応じて変化する、バージの船倉の開扉動作の際に積載された堆積材料に生じるアーチフリクションを適宜利用し、船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量を、一投毎に制御する堆積材料の水底投下施工管理装置であって、
前記投入パターン及び施工条件毎に、水底に投下される堆積材料の堆積形状について予めシミュレーションを行う堆積形状計画手段と、
該堆積形状計画手段によりシミュレーションされた堆積形状を管理する堆積形状モデルデータベース管理手段と、
該堆積形状モデルデータベースから、予定される施工条件に適した投入パターンを選択する投入計画作成支援手段と、
投下後の水底における実際の堆積形状を一投毎に把握する深浅測量手段と、
該深浅測量手段により測量された実際の堆積形状、投入パターン及び施工条件を管理する実績データベース管理手段と、
一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行う出来形評価手段と、
該出来形評価手段の評価に基づき、一投毎の堆積形状の再現性の良否を評価して、必要な再現性が得られると評価された投入回に係る投入パターン及び施工条件を、前記堆積形状モデルデータベースに加え若しくは置換し、前記堆積形状モデルデータベースの適正化を行う堆積形状評価手段のうちの、一部若しくは全部が含まれる堆積材料の水底投下施工管理装置(請求項6)。
【0016】
本項に記載の堆積材料の水底投下施工管理装置は、バージの船倉における堆積材料の積み込み形状と、バージの船倉の開扉動作にかける時間との組み合わせからなる投入パターンに応じて変化する、バージの船倉の開扉動作の際に積載された堆積材料に生じるアーチフリクションを適宜利用し、船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量を、一投毎に制御するものである。そして、投入パターンが一投毎に適宜見直されることで、船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量が適宜調整され、一投毎に必要な堆積形状が得られることで、最終的に必要とされる水底での堆積形状となるよう、効率的に施工作業が導かれるものである。
【0017】
このため、堆積形状計画手段によって、投入パターン及び施工条件毎に、水底に投下される堆積材料の堆積形状について予めシミュレーションを行い、このシミュレーションされた堆積形状を、堆積形状モデルデータベース管理手段によって管理する。
又、堆積材料を水底へと投下することで人工構造物を造成するにあたり、堆積材料の複数の投入作業の一回目或いは一回目から所定の回数までの投入作業に係る投入パターンを、投入計画作成支援手段によって、堆積形状モデルデータベースの中から予定される施工条件に適した投入パターンを選択することで、少なくとも投入作業の初期段階では、計算上最適な投入パターンで、又、利用可能な場合には過去に行った作業で得られた投入パターンも考慮に入れて投入作業を行うように、施工管理が行われる。
そして、深浅測量手段によって、各回の投入作業について、投下後の水底における実際の堆積形状を一投毎に把握し、深浅測量手段により測量された実際の堆積形状、投入パターン及び施工条件を、実績データベース管理手段によって管理する。
更に、出来形評価手段において、一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行い、堆積形状評価手段において、出来形評価手段の比較結果に基づき、一投毎の堆積形状の再現性の良否を評価して、必要な再現性が得られると評価された投入回に係る投入パターン及び施工条件を、堆積形状モデルデータベースに加え若しくは置換し、前記堆積形状モデルデータベースの適正化を行う。
従って、次回以降の投下作業は、前述の投入計画作成支援手段によって、適正化された堆積形状モデルデータベースの中から、次回の投下時に求められる堆積形状の再現に適した投入パターンを選択して行う作業の一部若しくは全部を必要に応じ繰り返され、投入作業の進行に伴い、最終的に必要とされる水底での堆積形状となるための最適な投入パターンを選択して投入が行われ、効率的に、必要とされる水底での堆積形状へと導くように施工管理が行われる。
【0018】
(7)上記(6)項において前記施工条件には、堆積材料の堆積目標位置の水深、深浅データ、堆積材料の石材条件、施工時の気象・海象条件、水底の底質条件、バージの動揺状態及びバージの船倉形状のうち少なくとも一つが含まれる堆積材料の水底投下施工管理装置(請求項7)。
本項に記載の堆積材料の水底投下施工管理装置は、施工条件に堆積材料の堆積目標位置の水深(施工前の水底の水深)、深浅データ(一投完了毎の堆積形状を示す座標データ)、堆積材料の石材条件(石材、砂礫、ブロック等堆積材料の形状、大きさ、重さ、水中における粘性(散らばり易さ)等)及び施工時の気象・海象条件のうち少なくとも一つが含まれることで、堆積形状計画手段における堆積形状についてのシミュレーション精度が確保され、かつ、投入計画作成支援手段における、投入パターンの選択の適正化が図られるものである。
【0019】
(8)上記(6)、(7)項において、前記堆積形状計画手段には、投入パターン及び施工条件毎のシミュレーションを行うための、個別要素法を用いた三次元固液混層流モデルによる堆積形状シミュレーションを実行する演算ロジックが含まれる堆積材料の水底投下施工管理装置(請求項8)。
本項に記載の堆積材料の水底投下施工管理装置は、堆積形状計画手段において個別要素法に基づく演算ロジックが含まれることで、堆積形状についてのシミュレーション精度が確保されるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明はこのように構成したので、堆積材料を大量に水底へと投下することで水底に人工構造物を造成する際に、堆積目標位置や施工時の諸条件の如何に関わらず、施工開始から完了に至るまで、作業者の経験や勘を拠り所とすることなく、可能な限り効率的にかつ安定して施工を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下方法は、概略的には、図1に示されるように、事前検討工程S100(ステップS110〜ステップS140)と、施工中工程S200(ステップS210〜ステップS290)とに区分けされる。又、各工程において、図2に示される堆積材料の水底投下施工管理装置(施工管理支援システム)50が用いられるものである。
【0022】
また、本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下作業には、図4、図5に示されるバージ14が用いられる。このバージ14は、船体中央を前後に貫く回転軸16を中心として、船体が二分割するように開扉することで、船倉18に積載された積載材料を船底20から水中へと投下する形式の全開バージである。船倉の開扉動作には油圧シリンダが用いられ、図5(b)〜(d)に示されるように、任意の開扉量で開扉動作を停止させることも可能である。例えば、一定速度で所定の開放量になった時点で、一定時間開扉動作を停止させ、再び一定速度で開放量を増大させる等の開扉操作(開扉パターン)を行うことができる。又、バージ14には、船倉の開扉量を把握するためのゲージ22(ゲージの形式は問わない)が設けられている。そして、図示の例では、バージ14の後端部にはドッキングベイ24が設けられており、図6(a)、(b)に示されるように、このドッキングベイ24にタグボート26が必要に応じ直接接触することで、バージ14の操船がタグボート26によって行うことが可能である。
なお、図示の全開バージのみならず、必要に応じ、船底の扉のみが開閉することで船倉を開放する形式の底開バージも利用される。
【0023】
又、バージ14の船倉18に積載された堆積材料28には、図7に示されるように、バージ14の船倉の開扉動作の際に、堆積材料28の各石片同士が単に接触した状態で互いに支え合うことで、船底20からの落下が阻害され、船倉の開扉量と船底20からの堆積材料28の単位時間当たりの落下量とが比例しなくなる、いわゆる「アーチフリクション」の現象が生じる。このアーチフリクションは、図7(a)に示される船倉の全閉状態から開扉量が増加するに従い、船倉18の堆積材料28に発生し(図7中に格子模様で示している。)、アーチフリクションが生じた範囲の下方に位置する堆積材料のみ落下する。そして、開扉量増加に伴う堆積材料28の一部落下によるアーチフリクションの崩壊と、各石片の位置変化による新たなアーチフリクションの発生とを繰り返し、最終的に図7(b)〜(f)に示される全開に至るまでに、アーチフリクションは船倉18に残存する堆積材料28に断続的に生じる。そして、最終的には、船倉18内の堆積材料28の減少によりアーチフリクションも解消し、全ての堆積材料28は船底20から落下する。従って、本発明の実施の形態によれば、船倉の開扉量によって、船倉18の堆積材料28のアーチフリクションの発生及び崩壊を制御し、船底20からの堆積材料28の単位時間当たりの落下量を、積極的に調整することが可能である。
【0024】
又、アーチフリクションは、船倉18内で堆積材料28に掛かる荷重が大きい程、すなわち、堆積材料28の嵩が大きい程、アーチフリクションが発生し易くなることから、本発明の実施の形態によれば、図8に太線で示されるように、バージ14の船倉18における堆積材料28の積み込み形状を変えることで、船底20からの堆積材料28の単位時間当たりの落下量を、積極的に調整することが可能である。
【0025】
例えば、図8(a)に示されるように、船倉18の全長にわたって均等に堆積材料28が積み込まれた場合には、船倉18の前後端に隣接する堆積材料28には、前方又は後方からの荷重が加わらないために、アーチフリクションの発生が抑えられる。よって、船倉18の前後端に隣接する堆積材料28から落下が始まり、船倉18の前後方向中央寄りに向けて徐々にアーチフリクションが消滅して落下が進行していく。これに対し、図8(b)の例では、船倉18の前後端に隣接する堆積材料28の嵩が小さく抑えられていることから、船倉18の前後端に隣接する堆積材料28の落下が更に促進される。一方、図8(c)の例のごとく、船倉18の前後端に隣接する堆積材料28の嵩が大きくなっていることから、船倉18の前後端に隣接する堆積材料28に発生するアーチフリクションが増大し、船倉18の前後端に隣接する堆積材料28の落下が先行することが抑えられる。又、図8(d)、(e)に示されるように、船倉18の前後方向中央の堆積材料28の嵩を小さく押えることで、船倉18の前後方向中央でのアーチフリクションの発生が抑えられ、船倉18の前後方向中央と、船倉18の前後端に隣接する堆積材料28とから落下が始まることとなる。
更には、図8(f)に示されるように、船倉18に積載される堆積材料28の上面高さを水平にする場合に比べ、図8(g)に示されるように、船倉18の床面からの嵩を幅方向で均等にすることで、アーチフリクションの発生が抑えられ(最小の状態で、アーチフリクションの発生を無くすことも可能である。)、堆積材料28の落下が促進される。
【0026】
以上の点を考慮して、本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下方法では、バージ14の船倉の開扉動作の際に積載された堆積材料28に生じるアーチフリクションを、図8に例示されるバージ14の船倉における堆積材料の積み込み形状と、バージの船倉の開扉動作にかける時間との組み合わせからなる投入パターンによって制御し、船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量を一投毎に見直して適宜調整する。
【0027】
ここで、一つの施工例を参照しながら、図1の事前検討工程(ステップS100)、施工中工程(ステップS200)、及び、これらの各工程中に用いられる施工管理支援システム(図2)についての説明を行う。
例えば、図3に示されるような人工海底山脈10を造成するに当たり、先工区10aに続いて今回工区10bを施工し、後工区10cへと引き継ぐような場合には、先工区10aの尾根12に連続する尾根を今回工区10bで正しく造成し、かつ、後工区10cの作業を阻害するような仕上がりを避け、堆積材料の水底投下作業を効率的に行うことが求められる。
【0028】
そこで、本発明の実施の形態では、実施工前の準備工程である事前検討工程(ステップS100)において、予め、バージから水底へと投入される堆積材料の、海底における堆積形状についてシミュレーションを行う(ステップS110)。
海底における堆積形状についてシミュレーション(ステップS110)は、バージ14の船倉18における堆積材料28の積み込み形状と、バージ14の船倉の開扉動作にかける時間との組み合わせからなる投入パターン、及び、堆積材料の堆積目標位置の水深、深浅データ、堆積材料の石材条件及び施工時の気象・海象条件のうち少なくとも一つを含む施工条件を設定して、水底へと投下される堆積材料の堆積形状について、予め、個別要素法シミュレーションを行うものである。
【0029】
図9には、個別要素法シミュレーションにより求められた堆積材料の堆積形状と、実際の出来高計測により得られた堆積形状とを、バージ14の船倉18における堆積材料28の積み込み形状を変えて、比較した例が示されている。積み込み形状P1は図8(a)に相当する積み込み形状であり、バージ14の船倉18に、堆積材料28を満載した状態である。又、積み込み形状P2は、バージ14の船倉18に、堆積材料28を満載時の50%だけ積載した積み込み形状である。一方、積み込み形状P3は、図8(b)(d)の特徴を合わせた積み込み形状であり、船倉18の前後方向中央及び前後端に隣接する堆積材料28の嵩が小さく抑えられている。そして、夫々の積み込み形状P1、P2、P3に設定し、個別要素法シミュレーションにより得られた堆積材料の堆積形状が、P1c、P2c、P3cで示されるように等高線で表されている。このようにして、投入パターン及び施工条件毎にシミュレーションされた堆積材料の堆積形状は、図2に示される堆積材料の水底投下施工管理装置(施工管理支援システム)50に取り込まれる(ステップS120)。
なお、図9の符号P1r、P2r、P3rで示される堆積形状の立体図は、各積み込み形状P1、P2、P3にて投下された堆積材料の、実際の堆積形状を現す深浅データ(後述の出来高計測(ステップS280)により得られる座標データ)である。
【0030】
又、本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下方法においても、従来と同様にバージが用いられるが、堆積材料の水底投下作業は、水面から水底に向けて高い位置精度で堆積材料を投下する必要がある。そこで、堆積材料を船倉に積み込んだバージの位置を、投入位置修正システムによるGPSを用いて正確に割り出すと共に(ステップS130)、バージの操船を、バージ誘導システムによって行うものである。
具体的には、図1に示されるように、堆積材料の堆積目標位置の現況地形測量を行い(ステップS210)、捨石(堆積材料)投入予定座標(緯度・経度・水深)を設定し、必要に応じ、堆積目標位置に予定される施工条件を考慮して堆積形状シミュレーションを行う(ステップS220)。又、投入海域の流向・流速を観測し(ステップS230)、流向・流速を考慮し、堆積目標位置へと適切に堆積材料を投入するための投入座標の修正を行う(ステップS240)。又、堆積目標位置への進入方向・投入座標等を、バージへ情報伝達する(ステップS250)。そして、いわゆるRTK−GPSシステムを用い、堆積目標位置の投入座標へとバージを誘導し(ステップS260)、石材投入を行う(ステップS270)。その後、出来高計測(ナローマルチビーム)を行い(ステップS280)、施工管理支援システムへのフィードバックを行う(ステップS290)。
【0031】
なお、図6(b)に示されるように、バージ14から人工海底山脈10の今回工区10bへの、堆積材料28の水底投下作業には、測量船30が随行し、投入海域の潮流WFの流向・流速の観測(ステップS230)、RTK−GPSシステムによるバージ14の位置の把握、堆積目標位置の投入座標へのバージの誘導(ステップS260)、ナローマルチビーム音響測深器32による出来高計測(ステップS280)等の、必要な施工条件の観測が適宜行われる。
【0032】
又、図1の事前検討工程(ステップS100)及び施工中工程(ステップS200)のいずれにも使用される堆積材料の水底投下施工管理装置50(図2)は、堆積形状計画手段52、堆積形状モデルデータベース管理手段54、投入計画作成支援手段56、深浅測量手段58、実績データベース管理手段60、出来形評価手段62及び堆積形状評価手段64を含み、これらの各手段は、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の演算プログラム等によって構築することが可能である。なお、図2に示された、積み込み・搬入・搬出手段は、バージ14、測量船30及びこれらに搭載された各計測機器が用いられる。
以下に、堆積材料の水底投下施工管理装置50を構成する各手段(50〜64)の機能について説明する。図2中、実線の矢印は作業及びデータの流れを表し、点線の矢印はデータの流れを表している。
【0033】
まず、堆積形状計画手段(堆積形状計画サブシステム)52は、前述の投入パターン及び施工条件毎に、水底に投下される堆積材料の堆積形状について、予め、個別要素法シミュレーション(図1の(ステップS110))を行う手段である。かかるシミュレーションの際には、水深、投入パターン、石材条件(堆積材料の大きさ、形状、重さ、水中における粘性(散らばり易さ)等)、使用船舶(バージ)、機器等の諸条件が、シミュレーションに適するように近似された係数としてインプットされることで、堆積形状モデル(解析モデル)及び適切な投入パターンがアウトプットされる。
堆積形状モデルデータベース管理手段(堆積形状モデルデータベース)54は、堆積形状計画手段52によりシミュレーションされた堆積形状(P1c、P2c、P3c)を記憶・管理する手段である。ここでは、投入パターン、投入底面形状に応じた堆積形状モデル(解析モデルと後述する実績モデル)が蓄積される。
投入計画作成支援手段(投入計画作成支援サブシステム)56は、堆積形状モデルデータベース管理手段54によって管理される堆積形状モデルデータベースから、予定される施工条件に適した投入パターンを選択する手段である。ここでは、投入底面の深浅データ(一投毎の水深の差分)及び人為的に選択される堆積形状モデル(候補)がインプットされることで、次回の投入時に採用される堆積形状モデル、施工情報(投入パターン、堆積目標位置)がアウトプットされる。堆積形状モデル(候補)は、例えば、底面・法裾用の広く拡散堆積するモデル、峰・主堆積用の楕円形に拡散堆積するモデル、尾根用の直線的に拡散堆積するモデル、スポット用の拡散範囲が狭く堆積するモデル等が挙げられる。
【0034】
深浅測量手段(深浅測量システム)58は、投下後の水底における実際の堆積形状を一投毎に把握する手段であり、前述の出来高計測(ナローマルチビーム)(ステップS280)によって、堆積目標位置の水深値(生データ)が得られ、かかる堆積目標位置の水深値がインプットされることで、ナローマルチビーム深浅測量結果に基づく深浅データ、一投分の堆積形状がアウトプットされる。
実績データベース管理手段(実績データベース)60は、深浅測量手段58により測量された実際の堆積形状、投入パターン及び施工条件を記憶・管理する手段であり、堆積形状モデル(採用)、実測データ、投入条件、使用材料(堆積材料)、気象・海象条件、使用船舶(バージ14)に関するデータ、人工海底山脈10の今回工区10bの設計値等も併せて蓄積される。
出来形評価手段(出来形評価サブシステム)62は、一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行う手段であり、深浅測量データ、堆積形状モデル(採用)、人工海底山脈10の今回工区10bの設計値がインプットされ、実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較図(図9参照)、及び、管理に必要な数値及び評価をまとめた帳票がアウトプットされる。
堆積形状評価手段(堆積形状評価システム)64は、出来形評価手段62の評価に基づき、一投毎の堆積形状の再現性の良否を評価して、必要な再現性が得られると評価された投入回に係る投入パターン及び施工条件を、堆積形状モデルデータベース管理手段54に加え若しくは置換し、堆積形状モデルデータベースの適正化(施工管理支援システムへのフィードバック(ステップS290))を行う手段である。ここでは、一投分の堆積形状、堆積形状モデル(実績)(堆積形状、投入パターン(積み込み形状、開扉時間))がインプットされることで、必要な再現性が得られると評価された投入回に係る堆積形状モデル(実績)がアウトプットされる。
これらの堆積材料の水底投下施工管理装置50を構成する各手段は、施工現場の状況や許容されるコスト等も勘案して、必要に応じ一部若しくは全部が含まれるものである。
【0035】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。
まず、本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下方法によれば、バージ14の船倉18における堆積材料28の積み込み形状(図8(a)〜(g)参照)と、バージ14の船倉18の開扉動作にかける時間(開扉パターン)との組み合わせからなる投入パターンに応じて変化する、バージ14の船倉18の開扉動作の際に積載された堆積材料28に生じるアーチフリクション(図7の格子模様を参照)を適宜利用し、船底からの堆積材料28の単位時間当たりの落下量を、一投毎に制御する。そして、投入パターンを一投毎に適宜見直すことで、船底からの堆積材料28の単位時間当たりの落下量を適宜調整し、一投毎に必要な堆積形状を得ることで、最終的に必要とされる水底での堆積形状となるよう、効率的に施工作業を導くものである。
【0036】
又、堆積材料を水底へと投下することで人工構造物10を造成するにあたり、少なくとも投入作業の初期段階(例えば、1回目から5回目まで)では、シミュレーション結果に照らして、予定される施工条件に適した投入パターンを選択して、堆積材料の投下を行う。
そして、一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行い、必要な再現性が得られた投入回に係る投入パターン及び施工条件を、シミュレーション結果とあわせて選択対称に加え(ステップS290)、次回の投下時に求められる堆積形状の再現に適した投入パターンを選択して、次回の投下作業を行う。かかる作業の一部若しくは全部を必要に応じ繰り返すことで、投入作業の進行に伴い、最終的に必要とされる水底での堆積形状となるための最適な投入パターンを選択して投入を行い、効率的に、必要とされる水底での堆積形状へと導くものである。
【0037】
より具体的には、水底投下施工管理装置50において、堆積形状計画手段52によって、投入パターン及び施工条件毎に、水底に投下される堆積材料28の堆積形状について予めシミュレーションを行い、このシミュレーションされた堆積形状を、堆積形状モデルデータベース管理手段54によって管理する。
又、堆積材料を水底へと投下することで人工構造物を造成するにあたり、堆積材料の複数の投入作業の一回目或いは一回目から所定の回数までの投入作業に係る投入パターンを、投入計画作成支援手段56によって、堆積形状モデルデータベースの中から予定される施工条件に適した投入パターンを選択することで、少なくとも投入作業の初期段階では、計算上最適な投入パターンで投入作業を行うように、施工管理が行われる。
そして、深浅測量手段58によって、各回の投入作業について、投下後の水底における実際の堆積形状を一投毎に把握し、深浅測量手段58により測量された実際の堆積形状、投入パターン及び施工条件を、実績データベース管理手段60によって管理する。
更に、出来形評価手段62において、一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行い(図9の等高線P1c、P2c、P3cと、堆積形状の立体図P1r、P2r、P3rとを参照)、堆積形状評価手段64において、出来形評価手段の比較結果に基づき、一投毎の堆積形状の再現性の良否を評価して、必要な再現性が得られると評価された投入回に係る投入パターン及び施工条件を、堆積形状モデルデータベース54に加え若しくは置換し、堆積形状モデルデータベース54の適正化を行う。
従って、次回以降の投下作業は、投入計画作成支援手段56によって、適正化された堆積形状モデルデータベース54の中から、次回の投下時に求められる堆積形状の再現に適した投入パターンを選択して行う作業が繰り返される。よって、投入作業の進行に伴い、最終的に必要とされる水底での堆積形状となるための最適な投入パターンを選択して投入が行われ、効率的に、必要とされる水底での堆積形状へと導くように施工管理が行われるものである。
【0038】
又、堆積材料の水底投下施工管理装置50は、施工条件に堆積材料の堆積目標位置の水深(施工前の水底の水深)、深浅データ(一投完了毎の堆積形状を示す座標データ)、堆積材料の石材条件(石材、砂礫、ブロック等堆積材料の形状、大きさ、重さ、水中における粘性(散らばり易さ)等)、施工時の気象・海象条件、水底の底質条件、バージの動揺状態及びバージの船倉形状のうち少なくとも一つが含まれることで、堆積形状計画手段52における堆積形状についてのシミュレーション精度が確保され、かつ、投入計画作成支援手段56における、投入パターンの選択の適正化が図られるものである。
又、堆積形状計画手段52には、投入パターン及び施工条件毎のシミュレーションを行うための、個別要素法を用いた三次元固液混層流モデルによる堆積形状シミュレーションに基づく演算ロジックが含まれることで、堆積形状についてのシミュレーション精度が確保されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下方法を実施するための、堆積材料の水底投下施工管理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下方法により造成される人工海底山脈の模式図であり、(a)(c)は側面図、(b)は平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下方法における水底投下作業に用いられるバージを示すものであり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図5】図4に示されるバージの動作説明図であり、(a)は操船室部分の平面図、(b)は船体の前閉状態を示す(a)のA−A断面図、(b)は船体の中間の開扉状態を示す(a)のA−A断面図、(c)は船体の前開状態を示す(a)のA−A断面図である。
【図6】図4に示されるバージを用いた堆積材料の水底投下作業を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は水面から水底までを示した側面図である。
【図7】図4に示されるバージの、船倉の開扉量と船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量とが比例しなくなる現象である、アーチフリクションの説明図であり、(a)船体の全閉状態を示し、(b)〜(f)は船倉の開扉量が増大することによる、アーチフリクションの発生の変化の様子を示している。
【図8】(a)〜(g)は、図4に示されるバージの、船倉における堆積材料の積み込み形状を例示するものである。
【図9】本発明の実施の形態に係る堆積材料の水底投下方法において、バージの船倉における堆積材料の積み込み形状を変えた場合の、個別要素法シミュレーションにより求められた堆積材料の堆積形状と、実際の出来高計測により得られた堆積形状との比較図である。
【0040】
14:バージ、18:船倉、20:船底、28:堆積材料、50:堆積材料の水底投下施工管理装置、52:堆積形状計画手段、54:堆積形状モデルデータベース管理手段、56:投入計画作成支援手段、58:深浅測量手段、60:実績データベース管理手段、62:出来形評価手段、64:堆積形状評価手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積材料をバージによって水底に投下して人工構造物を造成する堆積材料の水底投下方法であって、
バージの船倉における堆積材料の積み込み形状と、バージの船倉の開扉動作にかける時間との組み合わせからなる投入パターンに応じて変化する、バージの船倉の開扉動作の際に積載された堆積材料に生じるアーチフリクションを適宜利用し、船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量を、一投毎に制御することを特徴とする堆積材料の水底投下方法。
【請求項2】
前記投入パターン及び施工条件毎に、水底へと投下される堆積材料の堆積形状について予めシミュレーションを行うステップと、
該シミュレーション結果に照らして、予定される施工条件に適した投入パターンを選択して、堆積材料の投下を行うステップと、
一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行うステップと、
必要な再現性が得られた投入回に係る投入パターン及び施工条件を、前記シミュレーション結果と併せて、次回の投下時に求められる堆積形状の再現に適した投入パターンを対象として選択するステップと、
選択した投入パターンに基づき、次回の投下作業を行うステップの一部若しくは全部を含むことを特徴とする請求項1記載の堆積材料の水底投下方法。
【請求項3】
前記投入パターン及び施工条件毎に、水底へと投下される堆積材料の堆積形状について予めシミュレーションを行い、これを堆積形状モデルデータベースとして管理するステップと、
該堆積形状モデルデータベースから、予定される施工条件に適した投入パターンを選択して、堆積材料の投下を行うステップと、
投下後の水底における実際の堆積形状を一投毎に把握して実績データベースとして管理するステップと、
一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行い、堆積形状の再現性の良否を評価するステップと、
必要な再現性が得られた投入回に係る投入パターン及び施工条件を、前記堆積形状モデルデータベースに加え若しくは置換することで、前記堆積形状モデルデータベースの適正化を行うステップと、
該適正化された堆積形状モデルデータベースの中から、次回の投下時に求められる堆積形状の再現に適した投入パターンを選択して、次回の投下作業を行うステップの一部若しくは全部を含むことを特徴とする請求項1記載の堆積材料の水底投下方法。
【請求項4】
前記施工条件には、堆積材料の堆積目標位置の水深、深浅データ、堆積材料の石材条件、施工時の気象・海象条件、水底の底質条件、バージの動揺状態及びバージの船倉形状のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2又は3記載の堆積材料の水底投下方法。
【請求項5】
投入パターン及び施工条件毎のシミュレーションを行う際に、個別要素法を用いた三次元固液混層流モデルによる堆積形状シミュレーションを利用することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の堆積材料の水底投下方法。
【請求項6】
バージの船倉における堆積材料の積み込み形状と、バージの船倉の開扉動作にかける時間との組み合わせからなる投入パターンに応じて変化する、バージの船倉の開扉動作の際に積載された堆積材料に生じるアーチフリクションを適宜利用し、船底からの堆積材料の単位時間当たりの落下量を、一投毎に制御する堆積材料の水底投下施工管理装置であって、
前記投入パターン及び施工条件毎に、水底に投下される堆積材料の堆積形状について予めシミュレーションを行う堆積形状計画手段と、
該堆積形状計画手段によりシミュレーションされた堆積形状を管理する堆積形状モデルデータベース管理手段と、
該堆積形状モデルデータベースから、予定される施工条件に適した投入パターンを選択する投入計画作成支援手段と、
投下後の水底における実際の堆積形状を一投毎に把握する深浅測量手段と、
該深浅測量手段により測量された実際の堆積形状、投入パターン及び施工条件を管理する実績データベース管理手段と、
一投毎に投下後の水底における実際の堆積形状とシミュレーションによる堆積形状モデルとの比較を行う出来形評価手段と、
該出来形評価手段の評価に基づき、一投毎の堆積形状の再現性の良否を評価して、必要な再現性が得られると評価された投入回に係る投入パターン及び施工条件を、前記堆積形状モデルデータベースに加え若しくは置換し、前記堆積形状モデルデータベースの適正化を行う堆積形状評価手段のうちの、一部若しくは全部が含まれることを特徴とする堆積材料の水底投下施工管理装置。
【請求項7】
前記施工条件には、堆積材料の堆積目標位置の水深、深浅データ、堆積材料の石材条件、施工時の気象・海象条件、水底の底質条件、バージの動揺状態及びバージの船倉形状のうち少なくとも一つが含まれることを特徴とする請求項6記載の堆積材料の水底投下施工管理装置。
【請求項8】
前記堆積形状計画手段には、投入パターン及び施工条件毎のシミュレーションを行うための、個別要素法を用いた三次元固液混層流モデルによる堆積形状シミュレーションを実行する演算ロジックが含まれることを特徴とする請求項6又は7記載の堆積材料の水底投下施工管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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